特許第5722988号(P5722988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5722988少なくとも1つの実行すべきオペレーションの時間又は当該時間に関する他の物理量を予測するためのデータ処理システムの回路構成及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722988
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】少なくとも1つの実行すべきオペレーションの時間又は当該時間に関する他の物理量を予測するためのデータ処理システムの回路構成及び方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20150507BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20150507BHJP
   G05B 13/02 20060101ALI20150507BHJP
   H03L 7/06 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   F02D45/00 372F
   G05B11/36 M
   G05B13/02 A
   H03L7/06 B
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-501733(P2013-501733)
(86)(22)【出願日】2011年3月16日
(65)【公表番号】特表2013-528735(P2013-528735A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2011053981
(87)【国際公開番号】WO2011120808
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2012年9月28日
(31)【優先権主張番号】102010003539.4
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】ベール、エバーハルト
(72)【発明者】
【氏名】バーソロミュー、ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンペル、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】トス、ディーター
(72)【発明者】
【氏名】メルカー、アンドレアス
【審査官】 本庄 亮太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−517591(JP,A)
【文献】 特表2002−540344(JP,A)
【文献】 特開平9−303242(JP,A)
【文献】 特開平8−84377(JP,A)
【文献】 特開2005−201250(JP,A)
【文献】 特開平9−236071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00−45/00
G05B 1/00−21/02
H03L 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーケンサ(10)及びデジタル位相ロックループ(20)を含み、少なくとも1つの実行すべきオペレーションの時間又は当該時間に関する他の物理量を予測するためのデータ処理システムの回路構成であって、
前記予測は、少なくとも1つの入力信号と関連し、かつ、前記オペレーションの遅延時間に対応する第1の所定の時間値と、時間とは異なる物理量であって前記オペレーションを実行すべき時間に関する他の物理量を表す少なくとも第1の所定値と、に依存し、
前記少なくとも1つの入力信号が変化する度に、
前記オペレーションを実行すべき時間までに十分な時間が残っていない場合には、前記シーケンサ(10)から出力ユニット(30)に対して前記第1の所定の時間値及び/又は前記第1の所定値を送信し、
前記オペレーションを実行すべき時間までに十分な時間が残っている場合には、前記シーケンサ(10)からデジタル位相ロックループ(20)に対して前記第1の所定の時間値及び前記第1の所定値を送信し、
前記デジタル位相ロックループ(20)は、現在の時間パラメータ及び/又は時間とは異なる状態パラメータであって前記現在の時間に関連する他の状態パラメータを用いて、前記第1の所定値から第2の時間値を算出し、かつ、前記第2の時間値から前記第1の所定の時間値を減算して第3の時間値を形成し、及び/又は、前記第1の所定の時間値から前記他の物理量を表す第2の値を算出し、前記第1の所定値から前記第2の値を減算して前記他の物理量を表す第3の値を形成し、前記第3の時間値及び/又は前記第3の値から、前記少なくとも1つのオペレーションを作動すべき状態が定められるよう構成される、回路構成。
【請求項2】
前記回路構成はさらに、前記シーケンサ(10)が、前記第3の時間値から前記第3の値を定め、又は、前記第3の値から前記第3の時間値を定め、前記第3の時間値又は前記第3の値の少なくとも一つを前記出力ユニット(30)に転送するよう構成される、請求項1に記載の回路構成。
【請求項3】
前記回路構成は前記出力ユニット(30)を含み、
前記出力ユニット(30)は、前記第3の時間値を時間基準と比較し、及び/又は、前記第3の値を前記他の物理量の基準と比較し、前記比較に従って、出力信号の変更を行うよう構成される、請求項2に記載の回路構成。
【請求項4】
前記回路構成はさらに、前記入力信号が変化した場合に、前記デジタル位相ロックループ(20)が、前記第3の時間値及び/又は前記第3の値と同様の手順で第4の時間値及び/又は第4の値を算出し、前記第3の時間値及び/又は前記第3の値あるいは前記第4の時間値及び/又は前記第4の値を用いて出力信号を変更するために、前記出力ユニット(30)に、前記第4の時間値及び/又は前記第4の値を渡すよう構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路構成。
【請求項5】
前記回路構成は、前記デジタル位相ロックループ(20)が、前記第3の時間値又は前記第4の時間値のどちらを時間基準と比較し、又は、前記第3の値又は前記第4の値のどちらを前記他の物理量の基準と比較するのかを決定する少なくとも1つの追加的な制御信号を、前記出力ユニット(30)に渡すよう構成される、請求項4に記載の回路構成。
【請求項6】
前記出力ユニット(30)はさらに、前記第3の時間値か又は前記第4の時間値かについて、あるいは、前記第3の値か又は前記第4の値かについての前記決定の情報を与える状態信号を出力するよう構成される、請求項5に記載の回路構成。
【請求項7】
前記出力ユニット(30)は制御ビットを備え、かつ、前記制御ビットに従って、前記他の物理量の基準についての比較を実行するために構成された比較ユニットを、第1の比較モードと第2の比較モードとの間で切り替えるよう構成され、前記第1の比較モードでは、より大きいか又は等しいかについて比較され、前記第2の比較モードでは、より小さいか又は等しいかについて比較される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の回路構成。
【請求項8】
少なくとも1つの実行すべきオペレーションの時間又は当該時間に関する他の物理量を予測するためのデータ処理システムのための方法であって、
前記予測は、少なくとも1つの入力信号と関連し、かつ、前記オペレーションの遅延時間に対応する第1の所定の時間値と、時間とは異なる物理量であって前記オペレーションを実行すべき時間に関する他の物理量を表す少なくとも第1の所定値と、に依存し、
前記少なくとも1つの入力信号が変化する度に、
前記オペレーションを実行すべき時間までに十分な時間が残っていない場合には、シーケンサ(10)から出力ユニット(30)に対して前記第1の所定の時間値及び/又は前記第1の所定値を送信し、
前記オペレーションを実行すべき時間までに十分な時間が残っている場合には、前記シーケンサ(10)からデジタル位相ロックループ(20)に対して前記第1の所定の時間値及び前記第1の所定値を送信し、
前記デジタル位相ロックループ(20)は、現在の時間パラメータ及び/又は時間とは異なる状態パラメータであって前記現在の時間に関する他の状態パラメータを用いて、前記第1の所定値から第2の時間値を算出し、前記第2の時間値から前記第1の所定の時間値を減算して第3の時間値を形成し、又は、前記第1の所定の時間値から第2の値を算出し、前記第1の所定値から前記第2の値を減算して第3の値を形成し、
前記出力ユニット(30)は、前記第3の時間値及び/又は前記第3の値から、前記少なくとも1つのオペレーションを作動すべき状態を定める、方法。
【請求項9】
前記シーケンサ(10)が前記第3の時間値から前記第3の値を定め、又は、前記第3の値から前記第3の時間値を定め、前記第3の時間値又は前記第3の値の少なくとも一つを前記出力ユニット(30)に転送し、前記出力ユニット(30)は、前記第3の時間値を時間基準と比較し、及び/又は、前記第3の値を前記他の物理量の基準と比較し、前記比較に従って、出力信号の変更を行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記入力信号が変化した場合に、前記デジタル位相ロックループ(20)は、前記第3の時間値及び/又は前記第3の値と同様の手順で第4の時間値及び/又は第4の値を算出し、前記第3の時間値及び/又は前記第3の値あるいは前記第4の時間値及び/又は前記第4の値を用いて出力信号を変更するために、前記出力ユニット(30)に前記第4の時間値及び/又は前記第4の値を渡し、前記第3の時間値及び/又は前記第3の値、又は、前記第4の時間値及び/又は前記第4の値のどちらが時間基準又は前記他の物理量の基準と比較されるか決定する少なくとも1つの追加的な制御信号を、前記出力ユニット(30)に渡し、前記出力ユニット(30)は、前記第3の時間値及び/又は前記第3の値か又は前記第4の時間値及び/又は前記第4の値かについての前記決定の情報を与える状態信号を出力する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な命令シーケンスにおいてポジションマイナスタイムを簡単に定めるための仕組みを実現する回路構成及び対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在公知のエンジン制御装置では、複雑なソフトウェア構造、及び、膨大な演算リソースを必要とする非常に複雑な制御アルゴリズムが提供されることが多い。その際に、提供される制御アルゴリズムは、通常、非常に動的な入力信号を処理し、各アクチュエータの物理的特性も取り入れた出力パラメータを計算する必要がある。このような出力パラメータは、例えばアクチュエータの駆動時の、当該アクチュエータの慣性又は遅延特性であり、これによって、例えば、或るイベントが発生すべき特定の回転角にエンジンが到達する前の特定の時間に、当該イベント又はこれに関連する演算を開始することが必要になる。その際に、エンジンは、加速又は遅延に従って様々な速さで回転し、これに従って、別の時点に上記回転角(位置、Position)に到達するであろう。従って、上記回転角に割り当てられる時点は、上記パラメータの変化に従って変化する。所謂ポジションマイナスタイム演算によって、予定された実行すべきオペレーション(Operation)を実行し又開始する必要がある状態にいつ到達するのか、現在の時間パラメータ又は状態パラメータから出発して予測することが可能となる(例えば、特表2002−540344号を参照)
【0003】
例えば、噴射ポンプの場合、各噴射は、エンジンの各加速又は遅延に従って、噴射ポンプと連結された軸が或る特定の角度位置にあるときに常に行われるため、対応する角度位置にいつ達成し噴射が行われるのか、上記軸の目下の現在の状態に基づいて予測できることが構想可能である。その際に、アクチュエータの上記の慣性又は遅延特性が考慮され、さらに、例えばエンジン自体の加速又は遅延のような、実施すべきオペレーションに影響を与える全パラメータの全状態が考慮される。
【0004】
従来では、所謂ポジションマイナスタイム演算は、通常ソフトウェア内で実行され、最適な位置/時間値が分かるまでポジションマイナスタイム演算が行われることを特徴とする。しかしながら、これには、システムに供給されるCPUの迅速な割り込み動作が必要であり、さらに、多くの演算時間が必要となる。このことは特に、エンジンの回転数が高い場合に問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような背景から、本発明の課題は、先に記載したソフトウェアによるポジションマイナスタイム演算の欠点を調整し、当該欠点に対して、エンジン回転数が高い場合にも、対応する値の確実な演算を提供すると共に、システムに提供されるCPUに対する高い割り込み負荷及び複雑な演算の負荷を大幅に軽減することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような背景から、特許請求項1に記載の回路構成と、特許請求項8の特徴を備えた対応する方法が提供される。
【0007】
本発明に基づいて設けられる回路構成、及び、本発明に基づいて構想される方法は、例えばデータ処理構造において実装可能であり、データ処理システムに提供されるCPUの負荷を、適切な形態で軽減することが可能である。本発明に基づき提示される回路構成及び本発明に基づいて提示される方法の適切な実施形態は、各従属請求項、及び、以下の記載から明らかとなろう。
【発明の効果】
【0008】
特許請求項1に従って、少なくとも1つの実行すべきオペレーションの、例えば時点又は角度のような、座標を予測するためのデータ処理システムの回路構成が提供され、上記予測は、例えばトリガホイールのセンサ信号のような、少なくとも1つの入力信号と関連し、かつ、第1の所定の時間値と、他の物理量を表す少なくとも第1の所定値と、に依存する。提供される回路構成は、少なくとも1つの入力信号が変化する度に、例えば回転数のような、各現在の時間パラメータ及び/又は他の状態パラメータを用いて、第1の値から第2の時間値を算出し、第2の時間値から第1の時間値を減算して第3の時間値を形成し、及び/又は、第1の時間値から第2の値を算出し、第の値から第の値を減算して第3の値を形成し、第3の時間値及び/又は第3の値から、少なくとも1つのオペレーションを作動すべき状態を定めるよう構成される。
【0009】
第1の所定の時間値は、例えば、対応するアクチュエータの慣性を反映する遅延時間であってもよい。この遅延時間又は第1の時間値は、オペレーションをいつ作動すべきかという計算又は予測の際に、一緒に考慮されうる。他の物理量の第1の所定値は、例えば、実行すべきオペレーションが実行される際の、或る軸の所定の角度位置であってもよい。対応する軸が1つの又は幾つかの特定の角度位置にあるときに、実行すべきオペレーションが実行可能であるため、対応して、上記角度位置が予め設定され、他の物理量を表す上記の第1の所定値として計算に含められるということも可能である。従って、例えば、現在の時間値又は現在の角度位置から出発して、アクチュエータの慣性又は遅延時間を考慮せずに、特定の、即ち第1の所定値に対応する軸の角度位置に、次回いつ到達するのか決定することが可能であり、これにより第2の時間値が決定される。但し、追加的に、第1の時間値に対応する遅延時間が考慮される場合には、実行すべきオペレーションを開始又は作動することが必要となるまで、第3の時間値に相当する時間がどのくらい残っているのか求めるために、算出された第2の時間値から上記第1の時間値を減算する必要がある。
【0010】
代替的に、この種の決定は、第1の時間値に基づいても行うことが可能であり、即ち、第1の時間値に基づいて、対応するアクチュエータの遅延時間に対応して、当該時間内に進む角度回転と、これに伴い到達される角度位置と、が定められ、実施すべきオペレーションが実際にはいつ実行されるのかを示す所定の角度位置から、上記角度位置が減算され、従って、或る角度位置に到達し次第実行すべきオペレーションが開始されることを予め設定する当該角度位置が、第3の値として獲得される。即ち、第3の時間値及び/又は他の物理量の第3の値であれ、算出された第3の値から、少なくとも1つのオペレーションを作動し又は開始すべき状態を定めることが可能である。
【0011】
提案される回路構成の可能な実施形態において、さらに、第3の時間値から第3の値を定め、又は、第3の値から第3の時間値を定め、上記値の少なくとも1つ、第3の時間値又は第3の値を出力ユニットに転送することが構想される。その際に、出力ユニットは、提案される回路構成の構成要素であってもよく、又は、回路構成の外部に適切な形態で接続されてもよい。
【0012】
出力ユニットは、獲得された第3の時間値を時間基準と比較し、及び/又は、獲得された他の物理量の第3の値を、他の物理量の対応する基準と比較し、このように実行された比較に従って、対応する出力信号の変更を行うよう構成されることが構想されうる。
【0013】
さらに、出力信号の変更について第4の時間値及び/又は他の物理量の第4の値を考慮するために、回路構成によって、出力ユニットに、第4の時間値及び/又は他の物理量の第4の値が渡されることが構想されうる。
【0014】
その際に、回路構成が、第3の値又は第4の値のどちらを時間基準と比較し、又は、第3の値又は第4の値のどちらを他の物理量の基準と比較するのかを決定する少なくとも1つの追加的な制御信号を、出力ユニットに渡すよう構成されることが構想されうる。
【0015】
出力ユニットは、第3の値か又は第4の値かについての上記決定の情報を与える状態信号を出力するよう構成されることが構想されうる。
【0016】
さらに、本発明に基づいて提案される回路構成の更なる別の実施形態において、出力ユニットは制御ビットを備え、かつ、制御ビットに従って、他の物理量の基準についての比較を実行するために構成された比較ユニットを、第1の比較モードと第2の比較モードとの間で切り替えるよう構成され、第1の比較モードでは、「より大きいか」又は「より大きいか/等しいか」について比較され、第2の比較モードでは、「より小さいか」又は「より小さいか/等しいか」が比較される。
【0017】
さらに、本発明は、少なくとも1つの実行すべきオペレーションを予測するためのデータ処理システムのための方法であって、上記予測は、少なくとも1つの入力信号と関連し、かつ、第1の所定の時間値と、他の物理量を表す少なくとも第1の所定値と、に依存する、上記方法に関する。本方法は、先に導入され提案された回路構成により実行することが可能な全てのステップを含む。
【0018】
本発明の更なる別の利点及び構成は、以下の記載、及び、添付の図面から明らかとなろう。
【0019】
先に挙げた特徴、及び、以下で解説される特徴は、各示される組み合わせのみならず他の組み合わせにおいても、又は、単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ポジションマイナスタイム演算を実行するための、本発明にかかる回路構成の基本となる構造の一実施形態を示す。
図2】本発明にかかる回路構成の更なる別の回路構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、図面の実施形態を用いて概略的に示され、図を参照しながら、概略的に詳細に記載される。その際に、構造及び機能において詳細な記載が与えられる。
【0022】
本発明に基づき提案される方法、又は、本発明に基づき設けられる回路構成は、例えば、多重チャネルシーケンサ(MCS:Multi Channel Sequencer)10と、出力ユニット30と、デジタル位相ロックループ(DPLL:Digital Phase Lock Loop)20と、を組み合わせて実装することが可能である。本構造は、本発明に基づいて提案される回路構成の可能な実施形態として、以下に詳細に記載される。即ち、本実施形態では、回路構成は、例えば、多重チャネルシーケンサ10、DPLLユニット20、及び出力ユニット30等の処理ユニットを備える。
【0023】
実行すべきオペレーションを実行しうるために、例えば、最初に、想定される所望の位置値であって、或るオペレーションを実行すべき上記位置値と、対応する時間的許容値と、を決定する必要がある。その際に、想定される所望の位置値は、他の物理量の第1の値により表される。時間的許容値は、各第1の時間値に対応する。この値を予め設定するために、システムに提供されるCPU(Central Processing Unit)は、例えば、回転数、温度、バッテリ電圧、レール圧力、及び、排ガス値のような、対応する境界条件を評価する。対応する値及び境界条件も、多重チャネルシーケンサMCS10に伝達される。その後、MCS10は、直接的なオペレーションを、場合により優先される条件のために(演算結果が出るのが遅すぎるほど近い将来にもう時間値又は角度値が存在する可能性がある)実施すべきか決定し、この場合には、対応するルーティングユニット(ARU:Advanced Routing Unit)を介して直接的に、出力ユニット30(ATOM:Advanced Timer Output Module)に値を送信する。MCS10からATOM30への出力は、図1では、信号経路13を介して象徴的に示される。
【0024】
これに対して、ポジションマイナスタイム演算が必要な場合には、即ち、演算のために十分な時間が未だに残っている場合のことであるが、多重チャネルシーケンサ10は、位置値及び時間値を、ルーティングユニット(ARU)を介して、示されるDPLLユニット20へと送信する。MCS10からDPLユニット20への出力は、図1では、信号経路12を介して象徴的に示される。DPLLユニット20は、例えば上記の第1の値としての角度値のような所定の位置値と、DPLLユニット20内で求められた回転数情報(最新の2つの関連する入力変更の時間間隔)と、から、角度値又は位置値に対応する時間値を算出し、当該時間値から、例えば遅延時間に対応する第1の所定の時間値を減算する。このように算出された第3の時間値は、第1の所定値としての所定の位置値又は角度値において、実行すべきオペレーションを実際に実行することを実現するために、当該実施すべきオペレーションを開始又は作動すべき時間値に対応する。代替的に、第1の時間値に対応する所定の時間値から、第2の角度値又は位置値を定めることが可能であり、実行すべきオペレーションを、第1の値に対応する所定の角度値で実際に実行するために、どの位置に達するまでに開始する必要があるのかを示す第3の角度値を獲得するために、第の角度値から第の角度値が減算される。このように算出された第3の時間値、及び/又は、同様に当該時間値に対応する、第3の値としての算出された角度値を、DPLLユニット20は、ルーティングユニット(ARU)を介して、出力ユニット30に提供することが出来る。DPLLユニット20からATOM30への出力は、図1では、信号経路23を介して象徴的に示される。
【0025】
その際に、DPLLユニット20とATOM30との間の接続は、図2に信号経路21を介して象徴的に示されるように、MCS10を介して間接的にも行われる。さらに、DPLLユニット20の出力値は、最初に、象徴的に示される信号経路21を介して多重チャネルシーケンサ10へと伝送され、続いて、多重チャネルシーケンサ10は、このデータを、場合によっては自身で修正した後に、象徴的に示される信号経路13を介して、出力ユニット30へと伝送する。出力ユニット30は、第3の時間値又は第3の角度値に基づいて、実行すべきオペレーションをいつ、即ち、どの位置で又はどの時点に開始すべきかについての情報を与える対応する出力信号を生成する。多重チャネルシーケンサ10を介したDPLLユニット20からATOM30への経路上で、多重チャネルシーケンサ10はまた、第3の時間値を、更なる別の角度値により置換し、又は、第3の値を、更なる別の時間値により置換することも可能である。出力ユニットの出力は、図1及び図2の信号経路50により象徴的に示される。
【0026】
しかしながら、例えば、加速又は遅延による回転数の変化に基づいて、上記の演算が、多かれ少なかれ、実際に存在する条件に合致しないということも起こりうる。従って、DPLLユニット20内で、高精度化を可能とし予測をより正確にする各情報を評価することが構想されうる。従って、例えば、クランク軸のトリガホイールの新しい値は、回転時間情報と、これに対応する予測値であって、行うべきオペレーションを適時に開始するために利用される上記予測値と、の精度を向上させることに適している。これらの値は、DPLLユニット20の入力信号40として提供される。
【0027】
従って、第3の時間値に対応する算出された時間値が、提案される回路構成に従って将来に存在する場合には、各新しい入力情報により新たな演算が行われ、従って、最後に出力される出力信号は、出力ユニットによって常に、現在の条件に対して最適に調整される。
【0028】
DPLLユニット20は、時間値であれ、位置値であれ、他の物理量の値であれ、自身が算出した値に応答する必要かあるかどうか決定せずに、この算出された値を、場合によっては未だに不正確な形であり、また、遥か遠い将来の値であっても、出力ユニット30に送ることが固く守られる。出力ユニット30内では、提案される回路構成の一実施形態によれば、出力口での信号変更により対応して応答するために、所定の位置値及び/又は時間値に既に到達したかどうか検査される。同時に、出力ユニット30は常に、新たに算出された値をDPLLユニット20に要求する。
【0029】
さらに、回路構成によって、第4の時間値及び/又は第4の位置値が、出力信号の変更について当該第4の時間値又は第4の位置値を考慮するために、出力ユニット30に渡されることが構想されうる。
【0030】
その際に、回路構成が、第3の時間値又は第4の時間値のどちらを時間基準と比較し、又は、第3の位置値又は第4の位置値のどちらを対応する角度基準と比較するのかを決定する少なくとも1つの追加的な制御信号を、出力ユニット30に渡すよう構成されることが構想されうる。
【0031】
出力ユニット30は、第3の対応する値か又は第4の対応する値かについての上記決定の情報を与える状態信号を、図1及び図2の信号経路31により示されるように、出力するよう構成されることが構想されうる。
【0032】
ルーティングユニット(ARU)に繋がれた他のソース又はモジュールと異なり、DPLLユニット20は、同じ情報を複数回読み出すことも許容するデータソースという意味において、非ブロック化ソースとして構成されてもよい。これにより、多重チャネルシーケンサ10及び他のユニットも、同じ情報を、出力ユニット30のように、DPLLユニット20から取り出すことが可能であり、その際に、他の場合には設けられるブロードキャストユニットによる遅延に耐える必要はない。
【0033】
DPLLユニット20が新しい値、即ち、上記の第3の時間値又は他の物理量の値を算出し、当該値が間接的又は直接的にATOM30に伝達され次第、これら新しい値は自動的に出力ユニット30内で、当該出力ユニット30内で実行される比較のために援用される。出力ユニット30内では、DPLLユニット20側から伝達された値が、対応する値基準に対して比較される。即ち、算出された時間値が、時間基準に対して比較され、他の物理量の値が、対応する他の物理量の基準と比較される。その後、この比較は、対応する出力信号を出力し、又はこの種の比較に従って出力信号の変更を行う必要があるのかを検査するために利用される。最終的に、出力信号の変更は、通常、入力信号の変更又は変化を実現する。即ち、例えばエンジンの加速のためにアクセルペダルを踏む場合に、更なる別の入力信号として例えばCPUに対して出力信号が出力され、対応して、以下で更に詳細に記載するように、この出力信号によって最終的に、より多くの燃料が特定の時点に噴射される。これにより得られた加速は、トリガホイールのセンサ信号がより高い周波数により到着することで、DPLLユニット20の入力信号40に表れる。
【0034】
既に記載したように、より強い加速が望まれ、従ってより多くの燃料を噴射すべき場合には、場合によっては、新しいポジションマイナスタイム値も、システムに提供されたCPUによって予め設定される。以前に算出された値、即ち、第3の時間値及び/又は他の物理量の第3の値が未だに将来に存在し、即ちシステムが当該値に未だ到達していない場合でも、DPLLユニット20は、多重チャネルシーケンサ10を介して新しい値を獲得する。その間に追い抜かれた値は、DPLLユニット20内で置換され、第3の時間値としての新しい時間値、又は、他の物理量の第3の値としての位置値が計算される。その際に、データ整合性の理由から、新しいポジションマイナスタイム値の受信は、DPLLユニット20内で正に計算が行われていない場合に可能である。新たな計算は場合によって、例えばクランク軸のトリガホイールのようなセンサ信号の新たな入力がある場合に開始されうる。なぜならば、このイベントにより、逸することが出来ない他の重要な計算が行われるからである。従って、例えば入力信号の変更に対して、第2の物理量の基準についてのパルスの出力により、直接的に応答する必要がある。しかしながら、この直接的な応答をどのように実現出来るかは、DPLLユニット20の実装に依存する。上記他の重要な計算が行われた後にようやく、新しい入力イベントにより再び計算することが必要となるまでの間、新しい時間値又は位置値の計算のために十分な時間が提供される。しかしながら、第1の演算の後に、新しいポジションタイム値を、新たな入力信号変更がその間に起きたかに依存せずに、常に処理することが可能なDPLLユニット20の実装も可能である。
【0035】
算出された第3の時間値又は位置値は、非ブロック化実現においては、当該算出された時間値が過去のものとなるまで、又は、例えば位置値のような、算出された他の物理量の値に到達するまで、ルーティングユニット(ARU)を介して出力ユニット30のために提供される。その後、通常では、新しいポジションマイナスタイム設定により新たな演算が引き起こされるまで、もはや値は出力されない。ブロック化実現にいては、新たに算出された各値が一回のみ提供される。当該値が例えばATOM30により取り出され次第、新しい入力信号又は新しいポジションタイム値に基づき新たな計算が行われるまで、もはや値は提供されない。
【0036】
各算出された時間値を対応する位置値に換算し、この算出された位置値を、所定の位置値から引くことも可能である。結果として、出力ユニット30内では、この算出された位置値に到達したかどうかが検査される。
【0037】
ポジションマイナスタイム演算と、それに基づく出力信号の出力と、のシーケンスに対して非常に遅い時点に介入しうるために、対応するCPUは、直接的に出力ユニット30を介して出力を制御しうる状態に置かれる必要がある。さらに、ルーティングユニット(ARU)からの恒常的な、値の再ロードを中断し、代わりに、CPUから値を受け取ることが可能なインタロックの仕組み(Verriegelungsmechanismus)が、出力ユニット30内に設けられる。出力ユニットのシーケンスへのCPUによるこのような介入のために、当該CPUが例えば新しい比較値を出力ユニット30の演算レジスタに書き込みたい場合に設定する書き込み問い合わせビットWR_REQが存在する。しかしながら、その際に、出力ユニット30がルーティングユニット(ARU)から既に獲得した比較値であって、設定されたデータアクチュアル・ビット(DV−data valid)によりラベル付される上記比較値は破棄されず、出力ユニット30は引き続き、対応する比較レジスタ内に格納された比較値を比較し、ルーティングユニット(ARU)には、更なる別の新しい比較値を要求しない。CPUはここで、出力ユニット30のシャドーレジスタに新しい比較値を書き込み、強制更新ビット(FORC_UPDATE)を介して、出力ユニット30に、当該出力ユニットが対応する比較レジスタに上記比較値を渡せることをシグナリングする。
【0038】
上記の書き込み問い合わせビットWR_REQが設定され、比較イベントが行われる場合には、出力ユニット30は、シャドーレジスタ及び比較レジスタへの各書き込みアクセスをブロックし、現在の時間値及び位置値が、シャドーレジスタ内に取り込まれる。CPUが上記の強制更新ビット(FORC_UPDATE)を未だに設定していない場合には、このことが、書き込みエラービット(WRF−write failed)が示され又はシグナリングされる。WR_REQビット及びDVビットは、比較イベントの際には、対応するハードウェアによりリセットされる。
【0039】
CPUは、自身の強制更新問い合わせの後にビットWR_REQ、DV、及びWRFが設定されていない場合には、遅い時点での比較値の「更新」(Update)が成功したことが分かる。WRFビットが設定されている場合は、CPUは、自身の強制更新に成功しなかったのである。
【0040】
さらに、順方向動作及び逆方向動作のために、特に位置値の演算を利用することが可能である。時間基準についての出力ユニットの比較値は、順方向動作又は逆方向動作かどうかに依存しない。しかしながら、このことは、位置値及び対応する基準の場合は該当しない。なぜならば、当該位置値及び対応する基準は、逆方向動作の際にどんどん小さくなるからである。即ち、将来について予め設定された位置と比較しうるために、逆方向動作の場合には、「より小さいか」又は「より小さいか又は等しいか」が比較され、順方向動作の場合には、「より大きいか」又は「より大きいか又は等しいか」が比較される必要がある。追加的な制御信号が、動作方向を示し、従って、出力ユニット内に設けられた比較モードの切り替えを行うために提供される。DPLLユニット20の角度・時間演算が、時間値の比較に関する場合は、順方向動作に対して変更が生じず、他の物理量の値としての、場合により算出された位置の比較が行われる際に、変更が生じる。
図1
図2