【課題を解決するための手段】
【0011】
プロジェクタから生じる物体像から得られる虚像を運転者の視野内に表示するためのこの独立した光学ユニットは、最終虚像を位置決めするために運転者の視野内に配置された第2の光学部品に向けて、プロジェクタから放出される入射光線を反射する第1の光学部品を備える。本発明のユニットは、第1の光学部品および第2の光学部品の相対位置を調整するための手段を備える。
【0012】
これは、第1の部品が物体像を拡大して焦点深度を大きくし、第2の部品が虚像を垂直面に位置決めし、前記第2の部品が、片面が平坦で、最終虚像を位置決めするための回折格子を備えたレンズ形状の透明材料から形成され、前記形状および回折格子が、第2の部品を通して運転者が見ることのできる外部場面を変形しないように設計されることを特徴とする。
【0013】
より正確には、前記第2の部品が、運転者側の面が平坦で、最終虚像を位置決めするための回折格子を備えたレンズ形状の透明材料から形成され、この回折格子が、0.4μm〜1μmのピッチの平行かつ等距離の少なくとも1組の直線を含み、線の幅とピッチとの比率が0.3〜0.6であり、運転者が第2の部品を通して見ることのできる外部場面を変形させることなく、垂直面に虚像を位置決めすることができるようにする。
【0014】
前記値を有するこの回折格子により、PMMA、PCまたはPETタイプの非常に透明度の高い材料で製造時に設けられた第2の部品の透明度が低下しないようにすることができる。
【0015】
第2の部品は、運転者と反対側の面で、平坦であるか、または物体像をさらに拡大するように設計された湾曲を有して構成された面を呈し、曲率半径は、第2の部品を通して運転者が見ることのできる外部場面を変形させないように十分な大きさになっている。
【0016】
外部画像の歪みをできるだけ避けるために、凸面が実際に非常に大きな曲率半径を有していなければならず、これは、言い換えると、この凸面がごくわずかに湾曲していることを意味する。この湾曲は、画像をg2倍に拡大するために設けられる。
【0017】
実際には、運転者と反対側の面は、曲率半径が5mよりも大きい凸面を有する。
言い換えると、運転者の視野内に配置された部品は、外部場面の歪みを生じることがなく、逆に、外側から生じる光線に光学的な乱れを起こすことなくその機能を果たし、特に十分な大きさおよび輝度の虚像を正確に位置決めすることに寄与する。虚像の位置決めは、運転者の視野内に位置するある距離で垂直面において行われ、第2の部品により、この画像の高さ調整、すなわち前記垂直面における変位が可能になる。 焦点深度の拡大および増加の主な機能は、第1の部品によって行われ、この第1の部品は運転者の視野内に現れないため、透明性の要件を損なうことなくこのような機能を最適化する光学的処理を受けることができる。
【0018】
先行技術のシステムでは、このような機能が運転者の視野内に位置する部品により行われるため、必要かつ規則により要求されてもいる透明性を顕著に低下させる。これは、虚像を表示するための結合器としてフロントガラスの反射を使用するシステムにも当てはまるが、反射率が低く強力な光源を必要とし、長距離で虚像を投射するには、投射モジュールにおいて複数の光学部品を使用する必要があるという欠点を有する。
【0019】
第1の部品は、実際には、入射光線を受ける面が凹面の反射鏡である。凹面は、例えば、プロジェクタの物体像に対して第1の拡大を行う曲率半径により定義される。
この凹面は、放物線状、球状、楕円状等の面により形成することができる。第1の部品による焦点深度は、プロジェクタを前記第1の部品から分離する、必然的に限定される距離よりも大きい。
【0020】
凹面は、重ね合わせた選択的な反射層を含み、これらの反射層が有する屈折率は、プロジェクタから生じ、かつ単色レーザ源またはエレクトロルミネセントダイオード(LED)であり得る少なくとも1つの発光源から放出される、十分に決定された偏光により、光線の波長を選択的に反射する。
【0021】
あるいは、凹面が、1つの反射層のみを含むことができる。
選択的な反射率を有する層は、物体像に対応する光線のみを反射し、近環境から放出される光線を、事実上「フィルタリング」するものである。実際に、入射光線の色に合わせた数および厚さの、1つまたは複数の選択的な層が凹面に重ね合わされる。
【0022】
異なるジオプターレベルでの反射が、非常に正確な相を有する光線のみに対して行われるため、広いスペクトル帯を有する入射光線が、実際に、重ね合わせた層を通って伝搬する。同じ相を有する反射光線が合わさって1つにまとめられる。
【0023】
その後、ヘッドアップディスプレイシステムの操作波長については、反射レベルが非常に高くなるが、周辺光、すなわちプロジェクタから生じたものではない光については、はっきりした反射は行われない。
【0024】
運転者の視野内に拡大画像を位置決めする第2の部品は、実際に、第1の部品から生じる第1垂直画像の拡大レベルよりもはるかに小さい残りの拡大を行う。これは、第2の部品の主な機能ではなく、とりわけ、透明性および外部画像の正確なレンダリングという主な目的を損なうことなく行われなければならない。
【0025】
したがって、第2の部品の湾曲は十分に小さく、運転者が第2の光学部品を通して車両周りの景色を見ることができるときに、その景色の現実性を歪めることのないようになっている。
【0026】
平坦面に含まれる回折格子は多重化することができる。すなわち、この回折格子は、例えば第1の色に対応する異なる波長の虚像を位置決めするための異なるピッチを有する、複数組の等距離で平行な直線を表すことができる。
【0027】
ヘッドアップディスプレイの可能性を高めるために、異なる色の情報を実際に表示して、最終虚像の異なる色のモチーフを、(垂直面の高さに対応する)所与の傾斜を有する正確なゾーンに位置決めできるようにする。
【0028】
この画像は、その後、第1の部品により得られる中間虚像の位置決め深さよりも深いところで、運転者の視野内に配置され、その画像の拡大は、2つの拡大率の増倍に等しい。
このような部品の製造は、例えば射出成形により困難なく行われる。任意の適切な技術により型の平坦面に直線を浮き彫りにして設け、計算された間隔で、並進移動によりそれを繰り返せばよいからである。このような型には、反対側の面に必要な湾曲が設けられており、低費用で第2の光学部品を大量生産できるようになる。
【0029】
代替形態によれば、平坦面に線のない型を設け、平坦面に線を正確に描けるようにするプロセスによって自動的に線が得られるようにすることができる。
直線の回折格子と同じくらい簡単な、光線の配向についての解決法があることにより、本発明の主な目的、すなわち、周囲環境から生じる光線が、ほとんど修正されることなく第2の部品を通過することが確実になる。したがって、第2の部品は透明なままであり、車両の周囲環境が、運転者に完全に見える状態になることが保証される。
【0030】
本発明によれば、2つの部品の相対位置を調整するための手段により、部品の光軸を含む面に垂直な軸の周りで、第2の部品を第1の部品に対して枢動させることができる。
2つの部品間の角度を変更することにより、特に、運転者の位置および高さに適合するように、最終垂直画像の垂直位置をより細かく調整することができる。
【0031】
さらに、前記調整手段により、第1の部品の凹面の頂点を通る垂線に平行な方向に、第2の部品を並進変位させることができる。
このような変位により、以下でさらに詳細に説明するように、最終虚像の光学ユニットに対する距離、したがって運転者に対する距離を変更することができる。この第2の部品の並進変位は、電動駆動手段または手動で行うことができる。
【0032】
このような調整の可能性は、ヘッドアップ表示機能についての大きな利点となる。
本発明の他の主な利点の中で強調すべきなのは、2つの部品をプラスチックから非常に簡単に製造することができ、加えて、第2の部品が一枚である、すなわち単一の基板を含む点である。したがって、これらの部品は、大量に複製することができるため、工業的に容易に製造可能である。
【0033】
第2の部品は、完全に透明であるため、適用において要求される透明度が非常に高く、規則により定められているヘッドアップ表示に十分に適している。2つの部品間の機能が本発明に適切に分配されているため、部品の形状および透明性が、行われる機能によって妨げられることはない。
【0034】
特に、拡大機能は第1の光学部品から主に行われるため、湾曲面がごくわずかである。第1の光学部品は少なくとも1つの反射層を含むことができ、それにより生じる不透明化はもはや問題にならない。複数の層がある想定では、これらの層は選択的であることが好ましく、これにより、寄生光線(太陽他)の反射を最小にする機械保護マスクの必要性がなくなる。
【0035】
本発明の光学ユニットは、車両のダッシュボード上または隣接して装着可能な支持体を備えることができる。第1および第2の部品が支持体上に配置され、調整手段により、2つの部品のうち少なくとも1つの、支持体に対する相対位置を修正することができる。
【0036】
本発明はさらに、前述したような光学ユニットと、ディスプレイの光線が第1の部品に向かって放出されるように構成された投射装置とを備えたヘッドアップディスプレイシステムに関する。
【0037】
第1の代替形態によれば、車両のユーザは、本発明による光学ユニットを購入して、それを、例えば車両の天井に固定された従来のノマディックプロジェクタと関連付けることができ、本発明のユニットはダッシュボードに装着される。
【0038】
第2の代替形態によれば、第2の部品は、運転者側に位置する支持体の一端部で、運転者の視野の軸方向にほぼ直角な平面に延び、投射装置は、第1および第2の部品間で支持体上に配置される。
【0039】
この想定の下で、本発明の光学ユニットは、すべての機能を集中させ、ダッシュボードに一回装着するだけで、完全かつ機能的なヘッドアップディスプレイシステムを得られるようになっている。
【0040】
好ましくは、投射装置が第2の部品の下に配置される。いずれの場合にも、本発明は、実施が容易な調整の可能性を提供する。
以下、非限定的な例として提示された添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。