特許第5722998号(P5722998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722998
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20150507BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60K35/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-510564(P2013-510564)
(86)(22)【出願日】2011年5月10日
(65)【公表番号】特表2013-532303(P2013-532303A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2011057472
(87)【国際公開番号】WO2011144487
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2014年5月12日
(31)【優先権主張番号】1053935
(32)【優先日】2010年5月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】599023978
【氏名又は名称】デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】511139453
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ・ドゥ・ストラスブール
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】ムサ,ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】エル・ハフィディ,アイドリス
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−123333(JP,A)
【文献】 特開2009−067333(JP,A)
【文献】 特開2008−070867(JP,A)
【文献】 米国特許第03892474(US,A)
【文献】 国際公開第2009/035783(WO,A1)
【文献】 特表2010−539525(JP,A)
【文献】 特開平10−278630(JP,A)
【文献】 特開平06−027408(JP,A)
【文献】 特開平04−138492(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02722582(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 − 27/02
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタ(9、12)から生じる物体像(3)から得られる最終虚像(7)を運転者(8)の視野内に表示するための、自動車用ヘッドアップディスプレイシステムのための独立した光学ユニットであって、
記プロジェクタ(9、12)から放出される入射光線を反射する第1の光学部品(1)と、
一方の面が平坦で反対側の面が5mよりも大きい曲率半径の凸面を有する平凸レンズを含み、最終虚像(7)を位置決めするために平坦面を運転者(8)側にして運転者(8)の視野内に垂直に配置された第2の光学部品(2)と、
前記第1の光学部品(1)および前記第2の光学部品(2)の相対位置を調整するための手段(24)とを備え、
前記第1の光学部品(1)が前記物体像(3)を拡大(g1)し、
前記第2の光学部品の前記平坦面が最終虚像(7)を位置決めするための回折格子を備え、当該回折格子が、0.4μm〜1μmのピッチPの平行かつ等距離の少なくとも1組の直線を含み、線の幅とピッチとの比率が0.3〜0.6であり、運転者(8)が前記第2の光学部品(2)を通して見ることのできる外部場面を変形させることなく、当該平坦面最終虚像(7)を位置決めすることができ、前記レンズ形状および前記回折格子が、前記第2の光学部品(2)を通して運転者(8)が見ることのできる外部場面を変形しないように設計されることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記第2の光学部品(2)が、運転者(8)と反対側の面で、物体像をさらに拡大(g2)するように設計された湾曲を有して構成された面を呈し、曲率半径が、前記第2の光学部品(2)を通して運転者(8)が見ることのできる外部場面を変形させないように十分な大きさになっていることを特徴とする、請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記第1の光学部品(1)が、前記プロジェクタ(9、12)から生じる入射光線を受ける面が凹面の反射鏡であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記凹面が、重ね合わせた選択的な反射層を含み、当該反射層が有する屈折率が、前記プロジェクタ(9、12)から生じ、かつ単色レーザ源またはエレクトロルミネセントダイオード(LED)であり得る少なくとも1つの発光源から放出される、十分に決定された偏光により、光線の波長を選択的に反射することを特徴とする、請求項3に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記凹面が反射層を含むことを特徴とする、請求項4に記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記第1および第2の光学部品(1、2)の相対位置を調整するための手段(24)により、当該第1および第2の光学部品(1、2)の光軸(A0、A1)を含む面に垂直な軸の周りで、前記第2の光学部品(2)の軸(O)を前記第1の光学部品(1)に対して枢動(F)させることができることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記第1および第2の光学部品(1、2)の相対位置を調整するための手段(24)により、前記第1の光学部品(1)の光軸(A1)に平行な方向に、前記第2の光学部品(2)を並進変位させることができることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項8】
車両のダッシュボード(13)上または付近に装着可能な支持体(11)をさらに備え、前記第1および第2の光学部品(1、2)が当該支持体(11)上に配置され、前記第1および第2の光学部品(1、2)の相対位置を調整するための手段(24)により、当該第1および第2の光学部品(1、2)のうち少なくとも1つの当該支持体(11)に対する相対位置を修正することができることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の光学ユニットと、ディスプレイの光線が第1の光学部品(1)に向かって放出されるように構成されたプロジェクタ(9、12)とを備えたことを特徴とするヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項10】
請求項8に記載の前記光学ユニットを備え、前記第2の光学部品(2)が、運転者(8)側に位置する前記支持体(11)の一端部(22)で運転者(8)の視野の軸(A0)方向に直角な平面に延び、前記プロジェクタ(12)が、当該支持体(11)上に配置されることを特徴とする、請求項9に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項11】
前記プロジェクタ(12)が前記第2の光学部品(2)の下に配置されることを特徴とする、請求項10に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の視野内に虚像を表示するための、自動車用ヘッドアップディスプレイシステムの分野に関する。このシステムにより、車両の乗員空間に配置されたプロジェクタのディスプレイ上の、背面から照らされた物体像から得られた車両の操作パラメータを表示することができる。
【背景技術】
【0002】
既存のヘッドアップディスプレイシステムの多くは、製造時に車両に装着され、すなわち、組立て時に取り付けられ調整される。この場合、車両は、このような装着が、特に運転者の視野に対する位置決めの最良の条件下で行われるように設計される。調整は、複雑な場合もあるが、車両の製造時に組立ての際に行われる。
【0003】
ユーザが必要とする場合に装着可能な独立した機器として後から設置される構成もあるが、多くの場合、このような構成は調整が非常に困難で、かつ/または容易に車両に組み込むことができない。これは特にこの構成を装着できる場所が非常に限られているためである。
【0004】
このような困難が生じる主な理由の1つは、このシステムが、ユーザの視野内に配置された光学部品を備えることに関連する。この光学部品は、ユーザの視野内に虚像を正しく位置決めすることを含む光学的機能を提供するが、これまで使用されてきた技術によりこの機能を実施すると、有効な安全基準に関して部品の透明性が不十分なものになる。
【0005】
このようなシステムは、さらなる機能性を提供して車両の使用を改善させるものであるが、同時に、快適性の要素を排除するものであってはならず、さらに運転の安全性に支障をきたすものであってはならない。
【0006】
一般に、既存のシステムでは、視野内に配置された部品は、投射深さや、運転者の視覚的注意の対象である周囲環境に車両の運転パラメータを組み込むことに関連付けられた感応パラメータを管理する。前記深さは、一般に、車両および実際の場面の大きさ(その値は一般に1.80mよりも大きい)に一致しなければならないと考えられる。
【0007】
同様に、運転者の視野内に投射された虚像は、十分な大きさおよび輝度を有するが、運転に有用な情報を明瞭に表示しつつ、車両の周りで起こっていることに対する運転者の注意を妨げないように妥協しなければならない。最後に、虚像の位置決めを垂直面で制御可能にしなければならない。これらのパラメータにより、実際の周囲環境と車両の形状との両方に関して、虚像を快適に判読できるようにしなければならない。
【0008】
現在、機器市場で市販されているヘッドアップディスプレイシステムは、主にその技術により、前述した点に関していくつかの制約がある。したがって、現在使用可能な解決法の多くの場合がそうであるように、ヘッドアップディスプレイシステムが、例えば感光材料から形成された、または半反射鏡に形成されたホログラムに基づくものであるため、得られる透明度が低く、実際には運転者の視野を低下させる。
【0009】
この透明度は、特に、フロントガラスに関連する規則により要求される最低値よりもはるかに低い。
二次的に、実際に虚像の判読性を低下させる不十分な透明性によっても、このような解決法により得られる輝度のレベルは限られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特別な技術なしに容易に調整可能な、ヘッドアップディスプレイの実施に必要なパラメータを最適に管理するように設計された光学ユニットを提案することにより、前述した欠点を改善する。最後に、提案されたシステムは、製造が容易で、このタイプの市場に適した費用で工業的に大量生産可能である。有効な基準を満たす、あらゆるタイプの投射システムに適合するように設計された光学ユニットのコンパクトさにより、運転者が、後から、必要な場合に自分で自動車に容易に装着することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
プロジェクタから生じる物体像から得られる虚像を運転者の視野内に表示するためのこの独立した光学ユニットは、最終虚像を位置決めするために運転者の視野内に配置された第2の光学部品に向けて、プロジェクタから放出される入射光線を反射する第1の光学部品を備える。本発明のユニットは、第1の光学部品および第2の光学部品の相対位置を調整するための手段を備える。
【0012】
これは、第1の部品が物体像を拡大して焦点深度を大きくし、第2の部品が虚像を垂直面に位置決めし、前記第2の部品が、片面が平坦で、最終虚像を位置決めするための回折格子を備えたレンズ形状の透明材料から形成され、前記形状および回折格子が、第2の部品を通して運転者が見ることのできる外部場面を変形しないように設計されることを特徴とする。
【0013】
より正確には、前記第2の部品が、運転者側の面が平坦で、最終虚像を位置決めするための回折格子を備えたレンズ形状の透明材料から形成され、この回折格子が、0.4μm〜1μmのピッチの平行かつ等距離の少なくとも1組の直線を含み、線の幅とピッチとの比率が0.3〜0.6であり、運転者が第2の部品を通して見ることのできる外部場面を変形させることなく、垂直面に虚像を位置決めすることができるようにする。
【0014】
前記値を有するこの回折格子により、PMMA、PCまたはPETタイプの非常に透明度の高い材料で製造時に設けられた第2の部品の透明度が低下しないようにすることができる。
【0015】
第2の部品は、運転者と反対側の面で、平坦であるか、または物体像をさらに拡大するように設計された湾曲を有して構成された面を呈し、曲率半径は、第2の部品を通して運転者が見ることのできる外部場面を変形させないように十分な大きさになっている。
【0016】
外部画像の歪みをできるだけ避けるために、凸面が実際に非常に大きな曲率半径を有していなければならず、これは、言い換えると、この凸面がごくわずかに湾曲していることを意味する。この湾曲は、画像をg2倍に拡大するために設けられる。
【0017】
実際には、運転者と反対側の面は、曲率半径が5mよりも大きい凸面を有する。
言い換えると、運転者の視野内に配置された部品は、外部場面の歪みを生じることがなく、逆に、外側から生じる光線に光学的な乱れを起こすことなくその機能を果たし、特に十分な大きさおよび輝度の虚像を正確に位置決めすることに寄与する。虚像の位置決めは、運転者の視野内に位置するある距離で垂直面において行われ、第2の部品により、この画像の高さ調整、すなわち前記垂直面における変位が可能になる。 焦点深度の拡大および増加の主な機能は、第1の部品によって行われ、この第1の部品は運転者の視野内に現れないため、透明性の要件を損なうことなくこのような機能を最適化する光学的処理を受けることができる。
【0018】
先行技術のシステムでは、このような機能が運転者の視野内に位置する部品により行われるため、必要かつ規則により要求されてもいる透明性を顕著に低下させる。これは、虚像を表示するための結合器としてフロントガラスの反射を使用するシステムにも当てはまるが、反射率が低く強力な光源を必要とし、長距離で虚像を投射するには、投射モジュールにおいて複数の光学部品を使用する必要があるという欠点を有する。
【0019】
第1の部品は、実際には、入射光線を受ける面が凹面の反射鏡である。凹面は、例えば、プロジェクタの物体像に対して第1の拡大を行う曲率半径により定義される。
この凹面は、放物線状、球状、楕円状等の面により形成することができる。第1の部品による焦点深度は、プロジェクタを前記第1の部品から分離する、必然的に限定される距離よりも大きい。
【0020】
凹面は、重ね合わせた選択的な反射層を含み、これらの反射層が有する屈折率は、プロジェクタから生じ、かつ単色レーザ源またはエレクトロルミネセントダイオード(LED)であり得る少なくとも1つの発光源から放出される、十分に決定された偏光により、光線の波長を選択的に反射する。
【0021】
あるいは、凹面が、1つの反射層のみを含むことができる。
選択的な反射率を有する層は、物体像に対応する光線のみを反射し、近環境から放出される光線を、事実上「フィルタリング」するものである。実際に、入射光線の色に合わせた数および厚さの、1つまたは複数の選択的な層が凹面に重ね合わされる。
【0022】
異なるジオプターレベルでの反射が、非常に正確な相を有する光線のみに対して行われるため、広いスペクトル帯を有する入射光線が、実際に、重ね合わせた層を通って伝搬する。同じ相を有する反射光線が合わさって1つにまとめられる。
【0023】
その後、ヘッドアップディスプレイシステムの操作波長については、反射レベルが非常に高くなるが、周辺光、すなわちプロジェクタから生じたものではない光については、はっきりした反射は行われない。
【0024】
運転者の視野内に拡大画像を位置決めする第2の部品は、実際に、第1の部品から生じる第1垂直画像の拡大レベルよりもはるかに小さい残りの拡大を行う。これは、第2の部品の主な機能ではなく、とりわけ、透明性および外部画像の正確なレンダリングという主な目的を損なうことなく行われなければならない。
【0025】
したがって、第2の部品の湾曲は十分に小さく、運転者が第2の光学部品を通して車両周りの景色を見ることができるときに、その景色の現実性を歪めることのないようになっている。
【0026】
平坦面に含まれる回折格子は多重化することができる。すなわち、この回折格子は、例えば第1の色に対応する異なる波長の虚像を位置決めするための異なるピッチを有する、複数組の等距離で平行な直線を表すことができる。
【0027】
ヘッドアップディスプレイの可能性を高めるために、異なる色の情報を実際に表示して、最終虚像の異なる色のモチーフを、(垂直面の高さに対応する)所与の傾斜を有する正確なゾーンに位置決めできるようにする。
【0028】
この画像は、その後、第1の部品により得られる中間虚像の位置決め深さよりも深いところで、運転者の視野内に配置され、その画像の拡大は、2つの拡大率の増倍に等しい。
このような部品の製造は、例えば射出成形により困難なく行われる。任意の適切な技術により型の平坦面に直線を浮き彫りにして設け、計算された間隔で、並進移動によりそれを繰り返せばよいからである。このような型には、反対側の面に必要な湾曲が設けられており、低費用で第2の光学部品を大量生産できるようになる。
【0029】
代替形態によれば、平坦面に線のない型を設け、平坦面に線を正確に描けるようにするプロセスによって自動的に線が得られるようにすることができる。
直線の回折格子と同じくらい簡単な、光線の配向についての解決法があることにより、本発明の主な目的、すなわち、周囲環境から生じる光線が、ほとんど修正されることなく第2の部品を通過することが確実になる。したがって、第2の部品は透明なままであり、車両の周囲環境が、運転者に完全に見える状態になることが保証される。
【0030】
本発明によれば、2つの部品の相対位置を調整するための手段により、部品の光軸を含む面に垂直な軸の周りで、第2の部品を第1の部品に対して枢動させることができる。
2つの部品間の角度を変更することにより、特に、運転者の位置および高さに適合するように、最終垂直画像の垂直位置をより細かく調整することができる。
【0031】
さらに、前記調整手段により、第1の部品の凹面の頂点を通る垂線に平行な方向に、第2の部品を並進変位させることができる。
このような変位により、以下でさらに詳細に説明するように、最終虚像の光学ユニットに対する距離、したがって運転者に対する距離を変更することができる。この第2の部品の並進変位は、電動駆動手段または手動で行うことができる。
【0032】
このような調整の可能性は、ヘッドアップ表示機能についての大きな利点となる。
本発明の他の主な利点の中で強調すべきなのは、2つの部品をプラスチックから非常に簡単に製造することができ、加えて、第2の部品が一枚である、すなわち単一の基板を含む点である。したがって、これらの部品は、大量に複製することができるため、工業的に容易に製造可能である。
【0033】
第2の部品は、完全に透明であるため、適用において要求される透明度が非常に高く、規則により定められているヘッドアップ表示に十分に適している。2つの部品間の機能が本発明に適切に分配されているため、部品の形状および透明性が、行われる機能によって妨げられることはない。
【0034】
特に、拡大機能は第1の光学部品から主に行われるため、湾曲面がごくわずかである。第1の光学部品は少なくとも1つの反射層を含むことができ、それにより生じる不透明化はもはや問題にならない。複数の層がある想定では、これらの層は選択的であることが好ましく、これにより、寄生光線(太陽他)の反射を最小にする機械保護マスクの必要性がなくなる。
【0035】
本発明の光学ユニットは、車両のダッシュボード上または隣接して装着可能な支持体を備えることができる。第1および第2の部品が支持体上に配置され、調整手段により、2つの部品のうち少なくとも1つの、支持体に対する相対位置を修正することができる。
【0036】
本発明はさらに、前述したような光学ユニットと、ディスプレイの光線が第1の部品に向かって放出されるように構成された投射装置とを備えたヘッドアップディスプレイシステムに関する。
【0037】
第1の代替形態によれば、車両のユーザは、本発明による光学ユニットを購入して、それを、例えば車両の天井に固定された従来のノマディックプロジェクタと関連付けることができ、本発明のユニットはダッシュボードに装着される。
【0038】
第2の代替形態によれば、第2の部品は、運転者側に位置する支持体の一端部で、運転者の視野の軸方向にほぼ直角な平面に延び、投射装置は、第1および第2の部品間で支持体上に配置される。
【0039】
この想定の下で、本発明の光学ユニットは、すべての機能を集中させ、ダッシュボードに一回装着するだけで、完全かつ機能的なヘッドアップディスプレイシステムを得られるようになっている。
【0040】
好ましくは、投射装置が第2の部品の下に配置される。いずれの場合にも、本発明は、実施が容易な調整の可能性を提供する。
以下、非限定的な例として提示された添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】車両の天井に配置された投射装置が設けられた車両に、本発明による光学ユニットを組み込んだ状態を示す概略図である。
図2】第1の部品の光学動作を示す図である。
図3】第2の部品の光学動作を示す図である。
図4】投射装置が2つの部品の支持体に組み込まれた、本発明の光学ユニットの代替形態を示す図である。
図5】この第2の形態において、運転者に対する最終虚像の距離を変更可能にする第2の光学部品の調整を示す図である。
図6】虚像を運転者から分離する距離を変更可能にするシステムの光学動作を説明する図である。
図7】虚像を運転者から分離する距離を変更可能にするシステムの光学動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1を参照すると、例えば車両のダッシュボード(13)に固定された本発明の光学ユニットが、2つの部品(1、2)を備え、これらの部品は、運転者の視野内に物体像(3)を拡大して位置決めする機能を有する。この物体像(3)は、この場合、天井(10)に固定されて、例えばほぼ単色のレーザ光線またはLEDにより背面から照らされた出力ディスプレイに前記画像を表示する従来の投射装置(9)から生じる。
【0043】
1つの可能性によれば、本発明のユニットは、図1において第1の部品(1)に組み込まれた支持体(11)に基づき、第1の部品(1)は、より正確には、2つの対向する縁部(21)、(22)を含む支持体(11)の凹面窪み(20)に組み込まれる。部品(1)は、少なくとも部分的に窪み(20)に凹面を呈する。第2の部品(2)は、縁部(22)に取り付けられる。ノマディックプロジェクタ(9)の相対位置決めのために、車両乗員空間の特定の形状と、ヘッドアップディスプレイシステム等の光学システムについて空間内で使用可能な距離とを特に考慮し、部品(1)の形状に対応する面と光軸Aとの交点にある第1の部品(1)の凹面の頂点Sを、図1に示すように縁部(21)側に片寄らせて、入射光線の傾斜を考慮する。
【0044】
支持体(11)は、平坦な基部(23)または車両のダッシュボード(13)の形状に従った基部(23)を備え、支持体(11)を、このダッシュボード(13)上、またはこの目的で前記ダッシュボード(13)に設けられたハウジング内に容易に配置し固定することができる。支持体(11)の位置決めは、前記運転者(8)が見るような外部場面を視覚的に見えにくくすることなく、第2の部品(2)が運転者(8)の視野の光軸(A)に交差するようになっていなければならない。
【0045】
第1の部品(1)により拡大された第1虚像または中間虚像(4)(図2参照)は、プロジェクタ(9)を第1の部品(1)から分離する距離d0よりも大きい第1の焦点深度d1を形成し、第2の部品(2)側に反射される(図3参照)。第2の部品(2)の機能は、最終虚像(7)を運転者(8)に対して正確に位置決めすること、すなわち、一方では好ましくはd1よりもさらに大きい第2の焦点深度d2で、他方では、特に運転者に対して下方角度で位置決め(垂直面における高さ位置決め)することである。
【0046】
したがって、図2に分離して示す第1の部品(1)は、プロジェクタ(9)から生じる物体像(3)から、曲率半径R1の凹面反射鏡の頂点Sから距離d1のところに第1の虚像(4)を形成する。この反射鏡(1)の曲率半径は、距離d1が、前記頂点から物体像(3)を分離する距離d0よりも大きくなるように計算される。さらに、この曲率半径は、距離d0が常に、車両の乗員空間で使用可能な距離、特に、プロジェクタを受けることのできるルーフヘッドのモジュールと、運転者に面したダッシュボードの左側部分との間の距離の限界内にあるように計算される。
【0047】
したがって、焦点距離f、およびこれによる曲率半径R1は、距離d0、d1から計算することができる。凹面鏡について、焦点距離fの選択は、実際に、プロジェクタ(9)と第1の部品(1)の鏡との距離d0、および以下の関係式
【0048】
【数1】
【0049】
を使用して求められる第1虚像(4)の距離d1に応じて決まる。
第1の部品(1)の凹面鏡の曲率半径R1は、関係式
f=R1/2
により焦点距離に関連付けられる。
【0050】
さらに、球状、放物線状、楕円状等であり得る反射鏡は、物体像(3)の反対側に第1虚像(4)を位置決めしなければならず、図3に示すように、反射光を第2の部品(2)に向けなければならない。非選択的な反射層または複数の選択的な反射層(5)が、反射鏡の表面に配置される。
【0051】
運転者の視野内に配置されない部品(1)は、製造要件や使用される材料に応じて不透明にしてもよい。
図3に示すように、部品(2)は、逆に、必ず透明な要素であり、平坦面と、大きな曲率半径R2(R2>>R1)を有する面とを備える。
【0052】
小さい曲率により、運転者(8)の周囲環境の正確なレンダリングを損なうことのない、さらなる拡大レベルg2を得ることができる。均一なピッチで分離された直線の少なくとも1つの回折格子(6)、または表示する複数の色の想定下のこのような回折格子(6)の多重化が、部品(2)の平坦面に形成される。前述したように、第1の部品(1)により選択的に反射され、例えば赤、緑、青を中心に選択された、波長が異なる光線の相互作用が、前記多重化により可能になる。
【0053】
この回折格子(6)により、運転者(8)に対して所与の傾斜を有して最終虚像を位置決めすることができ、すなわち、ボンネット上で明らかに見ることのできる、車両のフロントガラス前方の垂直面において、最終虚像を変化させることができる。
【0054】
次に、最終虚像(7)は、第1虚像の深さよりも深いところで、運転者の視野内にg1×g2の拡大率で配置される。最終虚像(7)は、運転者が周囲の場面を全体的に見るのを妨げることはない。
【0055】
第2の部品(2)の角度を、調整手段(24)を使用して第1の部品(1)に対して変化させることにより、例えば、図1の湾曲した両矢印により図示されるように軸(O)の周りを回転することにより、最終虚像(7)の垂直位置決めを調整することができることに注目されたい。調整手段(24)は、部品(1、2)の一方を他方に固定してこの枢動を可能にするのに寄与する。
【0056】
あるいは、プロジェクタ(12)を第1の部品(1)が固定された支持体(11)に組み込んで(図4参照)、そこに第2の部品(2)を接続する。この場合、入射光線を放出するプロジェクタ(12)は、第1の部品(1)の直近に配置される。
【0057】
支持体(11)は、図1の構成においてよりはっきりと示された窪み(20)を有し、第2の部品(2)の位置の調整手段(24)のための突起として形成された縁部(22)の基部にプロジェクタ(12)を組み込むことができ、プロジェクタ(12)が、実際には前記光線に面した縁部(21)側へ縁部(21)まで実質的により傾斜した部品(1)に向かって、光線を放出するようになっている。
【0058】
この支持体(11)を、ダッシュボード(13)に配置して固定し、またはこの目的で設けられたハウジング内に組み込むことができる。調整手段(24)は、軸(O)の周りで矢印Fの方向に枢動調整することに加えて、第1の部品(1)を形成する半径R1の凹面反射鏡の頂点Sを通る光軸Aにほぼ平行な方向の並進変位により、第2の部品(2)を手動または電動で調整することができるようになっている。これは、図5に示される。
【0059】
第2の部品(2)の2つの別個の位置により、最終虚像(7)が、2つの均等に別個の位置に変位する。システムの一般的な挙動を光学的にモデル化した説明を図6および図7に示すが、図7を分かりやすくするために、部品(2)の位置を逆にしている。距離d3により、第1の光学部品(図2および図3参照)を介して得られた中間虚像(4)を第2の部品(2)から分離する。光学的に、図6および図7は同等であり、図7から式を引き出すことができる。
【0060】
【数2】
【0061】
この式は、図5の軸Dに沿って部品(2)を部品(1)に近付けることにより、実際に、最終虚像(7)を運転者(8)に近付け、これらを離すことにより、前記画像(7)を離すことを示す。
【0062】
[00140] 前記の図により示された例は、本発明を網羅するものと考えてはならず、例えば、支持体(11)、その基部(23)、窪み(20)および縁部(21、22)についての形状の変更を含むものである。
〔態様1〕
プロジェクタ(9、12)から生じる物体像(3)から得られる虚像(7)を運転者(8)の視野内に表示するための、自動車用ヘッドアップディスプレイシステムのための独立した光学ユニットであって、
最終虚像(7)を位置決めするために前記運転者(8)の視野内に配置された第2の光学部品(2)に向けて、前記プロジェクタ(9、12)から放出される入射光線を反射する第1の光学部品(1)と、
第1の光学部品(1)および第2の光学部品(2)の相対位置を調整するための手段(24)とを備え、
前記第1の部品(1)が前記物体像(3)を拡大(g1)して焦点深度を大きくし、前記第2の部品(2)が前記虚像(7)を垂直面に位置決めし、前記第2の部品が、前記運転者(8)側の面が平坦で、前記運転者(8)側と反対側の面が5mよりも大きい曲率半径の凸面を有し、前記運転者(8)側の面が前記最終虚像(7)を位置決めするための回折格子を備えたレンズ形状の透明材料から形成され、前記回折格子が、0.4μm〜1μmのピッチPの平行かつ等距離の少なくとも1組の直線を含み、線の幅とピッチとの比率が0.3〜0.6であり、前記運転者(8)が前記第2の部品(2)を通して見ることのできる外部場面を変形させることなく、垂直面に前記虚像(7)を位置決めすることができ、前記レンズ形状および前記回折格子が、前記第2の部品(2)を通して前記運転者(8)が見ることのできる前記外部場面を変形しないように設計されることを特徴とする光学ユニット。
〔態様2〕
前記第2の部品(2)が、前記運転者(8)と反対側の面で、前記物体像をさらに拡大(g2)するように設計された湾曲を有して構成された面を呈し、曲率半径が、前記第2の部品(2)を通して前記運転者(8)が見ることのできる前記外部場面を変形させないように十分な大きさになっていることを特徴とする、態様1に記載のヘッドアップディスプレイシステムのための光学ユニット。
〔態様3〕
前記第1の部品(1)が、前記プロジェクタ(9、12)から生じる入射光線を受ける面が凹面の反射鏡であることを特徴とする、態様1または2に記載のヘッドアップディスプレイシステムのための光学ユニット。
〔態様4〕
前記凹面が、重ね合わせた選択的な反射層を含み、前記反射層が有する屈折率が、前記プロジェクタ(9、12)から生じ、かつ単色レーザ源またはエレクトロルミネセントダイオード(LED)であり得る少なくとも1つの発光源から放出される、十分に決定された偏光により、光線の波長を選択的に反射することを特徴とする、態様3に記載のヘッドアップディスプレイシステムのための光学ユニット。
〔態様5〕
前記凹面が反射層を含むことを特徴とする、態様4に記載のヘッドアップディスプレイシステムのための光学ユニット。
〔態様6〕
前記2つの部品(1、2)の相対位置を調整するための手段(24)により、前記部品(1、2)の光軸(A0、A1)を含む面に垂直な軸の周りで、前記第2の部品(2)の軸(O)を前記第1の部品(1)に対して枢動(F)させることができることを特徴とする、態様1ないし5のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステムのための光学ユニット。
〔態様7〕
前記2つの部品(1、2)の相対位置を調整するための前記手段(24)により、前記第1の部品(1)の光軸(A1)に平行な方向に、前記第2の部品(2)を並進変位させることができることを特徴とする、態様1ないし6のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステムのための光学ユニット。
〔態様8〕
車両のダッシュボード(13)上または付近に装着可能な支持体(11)をさらに備え、前記第1および第2の部品(1、2)が前記支持体(11)上に配置され、前記調整手段(24)により、前記2つの部品(1、2)のうち少なくとも1つの、前記支持体(11)に対する相対位置を修正することができることを特徴とする、態様1ないし7のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステムのための光学ユニット。
〔態様9〕
態様1ないし8のいずれか一項に記載の光学ユニットと、ディスプレイの光線が第1の部品(1)に向かって放出されるように構成された投射装置(9、12)とを備えたことを特徴とするヘッドアップディスプレイシステム。
〔態様10〕
態様8に記載の光学ユニットを備え、第2の部品(2)が、運転者(8)側に位置する支持体(11)の一端部(22)で、前記運転者(8)の視野の軸(A0)方向にほぼ直角な平面に延び、前記投射装置(12)が、前記第1および第2の部品(1、2)間で前記支持体(11)上に配置されることを特徴とする、態様9に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
〔態様11〕
前記投射装置(12)が前記第2の部品(2)の下に配置されることを特徴とする、態様10に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7