特許第5723312号(P5723312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5723312四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723312
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20150507BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20150507BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20150507BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20150507BHJP
   F16H 61/16 20060101ALI20150507BHJP
   F16H 61/28 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   B60W10/00 104
   B60W10/06
   B60W10/10
   F02D29/02 321A
   F02D29/02 321B
   F16H61/16
   F16H61/28
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-67696(P2012-67696)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199963(P2013-199963A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2013年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】木下 貴博
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩一
【審査官】 河端 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−104816(JP,A)
【文献】 特開2000−352329(JP,A)
【文献】 特開2003−156140(JP,A)
【文献】 特開2002−227994(JP,A)
【文献】 特開2008−057728(JP,A)
【文献】 特開2008−185022(JP,A)
【文献】 特開平03−292447(JP,A)
【文献】 特開2010−280360(JP,A)
【文献】 実開昭62−148429(JP,U)
【文献】 特開2005−297652(JP,A)
【文献】 特開2003−097694(JP,A)
【文献】 特開2006−132418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/04
B60W 10/06
B60W 10/10
F02D 29/02
F16H 61/16
F16H 61/28
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータを用いて前進用係合要素及び後退用係合要素の係合又は解除を切替えるレンジ切替装置と、
ドライバがレンジ切替操作を入力するレンジ切替操作部と、
前記レンジ切替操作部の状態に基いて前記レンジ切替装置の前記アクチュエータを制御するレンジ切替制御手段と
を備える四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムであって、
四輪自動車のエンジンを停車時に自動的に停止させかつ発進準備動作に応じて自動的に再始動させるともに、所定の自動再始動禁止条件が充足された場合に前記エンジンの自動再始動を禁止するアイドルストップ制御手段を備え、
前記レンジ切替制御手段は、前記アイドルストップ制御手段が前記エンジンの自動再始動を禁止している場合に、前記レンジ切替操作部の状態に関わらず、前記前進用係合要素及び前記後退用係合要素をともに解除する走行禁止制御を実行するとともに、ドライバのエンジン始動操作に応じたスタータモータの駆動を許容する状態とすること
を特徴とする四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム。
【請求項2】
車両の発進準備状態を判別する発進準備状態判別手段を備え、
前記レンジ切替制御手段は、前記発進準備状態判別手段が前記発進準備状態が不成立であると判別した場合に、前記レンジ切替操作部の状態に関わらず、前記前進用係合要素及び前記後退用係合要素をともに解除する走行禁止制御を実行すること
を特徴とする請求項1に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム。
【請求項3】
前記発進準備状態判別手段は、運転席シートベルトが未装着である場合に前記発進準備状態が不成立であると判別すること
を特徴とする請求項2に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム。
【請求項4】
前記発進準備状態判別手段は、運転席ドアが開放状態である場合に前記発進準備状態が不成立であると判別すること
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム。
【請求項5】
前記レンジ切替制御手段は、電源からの供給電圧が所定値以下である場合に、前記走行禁止制御を実行すること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム。
【請求項6】
車両が停止状態でありかつ前記走行禁止制御を実行する場合に、路面の前後方向傾斜が所定値以上である場合には前記自動変速機の出力軸をロック機構によりロックすること
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム。
【請求項7】
車両の停止状態でありかつ前記走行禁止制御を実行する場合に、路面の前後方向傾斜が所定値以上である場合には車輪に設けられたブレーキ装置を制動状態とすること
を特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム。
【請求項8】
イグニッションスイッチのオフ操作後、所定時間経過後に前記レンジ切替装置への電力供給を遮断するセルフシャットリレーと、
車両の走行速度が所定値以上である場合に、イグニッションスイッチからの入力信号の状態に関わらず前記セルフシャットリレーによる電力供給の遮断を禁止するセルフシャット禁止手段と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機のレンジ切替をアクチュエータを用いて行なう四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムに関し、特に車両の状態に応じて適切に非走行レンジへの切替を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に設けられるCVTや、プラネタリギヤ式ステップAT等の自動変速機においては、前進クラッチ、後退クラッチ等の係合要素への供給油圧を制御することによって、前進、後退、中立レンジ等の切り替えを行っている。
従来、一般にこのような前進、後退、中立レンジの切り替えは、ドライバが操作する操作レバーと機械的なリンケージで接続されたマニュアルバルブによって行っていた。
また、近年では、操作レバーと変速機との間に機械的なリンケージを設けず、電気的な信号のみによって走行レンジの切り替えを行う、いわゆるシフトバイワイヤ化が提案されている。
【0003】
このような自動変速機のシフトバイワイヤ化に関する従来技術として、例えば特許文献1には、3個のソレノイドバルブによってそれぞれスプールバルブを作動させ、前進用及び後退用の油圧サーボへの供給油圧を切り替えるレンジ切替装置が記載されている。
また、特許文献2には、イグニッションスイッチがオフの状態で自動的にパークロック機構が作動するシフトバイワイヤシステムにおいて、イグニッションスイッチがオフの状態で自動変速機のレンジがPレンジと異なるときに、シフトスイッチの位置とは無関係に自動変速機のレンジをPレンジにするとともに、イグニッションスイッチがオンからオフにされた状態で、シフトスイッチがPレンジ以外である場合に、シフトスイッチがPレンジとなるまで自動変速機のレンジ切替を禁止することが記載されている。
また、特許文献3には、変速指示スイッチからの信号に基づいて変速レンジを切替操作する駆動モータを制御するシフトバイワイヤシステムにおいて、車速センサの車速センサとイグニッションスイッチのオンオフ信号とを制御回路に入力し、イグニッションスイッチをオフした駐停車時にパーキングレンジに自動復帰するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−128475号公報
【特許文献2】特開2004−324849号公報
【特許文献3】実開昭64−17059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シフトバイワイヤ制御を行っている車両において、ドライバがシートベルトを着用していなかったり、運転席ドアが開放され、発進準備が整わない状態で車両が走行可能な状態になることは、安全上好ましくない。
また、システムへの供給電圧が低下している場合も、CPUやアクチュエータ等の誤作動が懸念されるため、車両が走行可能な状態とすることは好ましくない。
【0006】
また、アイドルストップ制御において、エンジンを自動的に停止させた後、何らかの理由によりエンジンの自動再始動が禁止された場合、通常はドライバが手動でエンジン始動操作をしても、自動変速機が走行レンジであるためインヒビタ回路が遮断されてスタータモータへの通電が不可能であり、エンジンを再始動させることはできない。
また、例外処理としてインヒビタ回路をオンとして、スタータモータへの通電を許可したとしても、走行レンジのまま始動操作を行うことは危険である。
このようは場合、正規な運転操作としては、一旦非走行レンジにシフトしてからエンジン始動操作を行ない、その後走行レンジに戻すことになるが、非常時にこのような動作をドライバに強いることは負担が大きく、また、ドライバがパニックに陥ることが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、車両の状態に応じて適切に非走行レンジへの切替を行うことが可能な四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、アクチュエータを用いて前進用係合要素及び後退用係合要素の係合又は解除を切替えるレンジ切替装置と、ドライバがレンジ切替操作を入力するレンジ切替操作部と、前記レンジ切替操作部の状態に基いて前記レンジ切替装置の前記アクチュエータを制御するレンジ切替制御手段とを備える四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムであって、四輪自動車のエンジンを停車時に自動的に停止させかつ発進準備動作に応じて自動的に再始動させるともに、所定の自動再始動禁止条件が充足された場合に前記エンジンの自動再始動を禁止するアイドルストップ制御手段を備え、前記レンジ切替制御手段は、前記アイドルストップ制御手段が前記エンジンの自動再始動を禁止している場合に、前記レンジ切替操作部の状態に関わらず、前記前進用係合要素及び前記後退用係合要素をともに解除する走行禁止制御を実行するとともに、ドライバのエンジン始動操作に応じたスタータモータの駆動を許容する状態とすることを特徴とする四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムである。
これによれば、アイドルストップ制御によるエンジンの自動再始動が何らかの理由により禁止された場合に、ドライバが手動で非走行レンジに切り替えることなくスタータモータの駆動が可能となり、さらにこのとき車両が動き出すことがないため、ドライバの操作負担が軽減され、パニック等に陥ることを防止できる。
請求項2に係る発明は、車両の発進準備状態を判別する発進準備状態判別手段を備え、前記レンジ切替制御手段は、前記発進準備状態判別手段が前記発進準備状態が不成立であると判別した場合に、前記レンジ切替操作部の状態に関わらず、前記前進用係合要素及び前記後退用係合要素をともに解除する走行禁止制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムである。
これによれば、車両の発進準備が整わない場合に、前進用係合要素及び後退用係合要素をともに解除することによって、車両の動き出しを防止し、安全性を向上することができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記発進準備状態判別手段は、運転席シートベルトが未装着である場合に前記発進準備状態が不成立であると判別することを特徴とする請求項2に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムである。
請求項4に係る発明は、前記発進準備状態判別手段は、運転席ドアが開放状態である場合に前記発進準備状態が不成立であると判別することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムである。
これらの各発明によれば、一般的な車両に設けられている既存のセンサ、スイッチ等を用いて、簡易かつ低コストに車両の発進準備状態を判別することができる。
【0009】
請求項5に係る発明は、前記レンジ切替制御手段は、電源からの供給電圧が所定値以下である場合に、前記走行禁止制御を実行することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムである。
これによれば、システムへの供給電圧が低下して制御用のCPUやアクチュエータ等の誤作動が懸念される場合に、車両の走行を防止して信頼性、安全性を確保できる。
【0013】
請求項6に係る発明は、車両が停止状態でありかつ前記走行禁止制御を実行する場合に、路面の前後方向傾斜が所定値以上である場合には前記自動変速機の出力軸をロック機構によりロックすることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムである。
請求項7に係る発明は、車両の停止状態でありかつ前記走行禁止制御を実行する場合に、路面の前後方向傾斜が所定値以上である場合には車輪に設けられたブレーキ装置を制動状態とすることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムである。
これらの各発明によれば、走行禁止制御を実行した際に車両が傾斜路に停車している場合に、車両の動き出しを防止して安全性をより向上できる。
【0014】
請求項8に係る発明は、イグニッションスイッチのオフ操作後、所定時間経過後に前記レンジ切替装置への電力供給を遮断するセルフシャットリレーと、車両の走行速度が所定値以上である場合に、イグニッションスイッチからの入力信号の状態に関わらず前記セルフシャットリレーによる電力供給の遮断を禁止するセルフシャット禁止手段とを備えることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムである。
これによれば、例えばイグニッションスイッチ及びその配線等に故障等が発生した場合であっても、セルフシャットが作動してシステムへの供給電圧が遮断され、制御不能となることを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、車両の状態に応じて適切に非走行レンジへの切替を行うことが可能な四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用した四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システムの実施例の構成を模式的に示すブロック図である。
図2図1のシフトバイワイヤ制御システムにおける発進準備未完了時及び低電圧時の制御を示すフローチャートである。
図3図1のシフトバイワイヤ制御システムにおけるアイドルストップ再始動禁止時の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、車両の状態に応じて適切に非走行レンジへの切替を行うことが可能な四輪自動車用のシフトバイワイヤ制御システム(以下単に「シフトバイワイヤ制御システム」と称する)を提供する課題を、運転席ドア開放時、シートベルト未装着時、バッテリ供給電圧低下時、アイドルストップシステムの自動再始動禁止時等に前進クラッチ及び後退クラッチをともに解除することによって解決した。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を適用したシフトバイワイヤ制御システムの実施例について説明する。
実施例のシフトバイワイヤ制御システムは、例えば、ガソリンエンジン等のエンジンを走行用動力源とする乗用車等の自動車に設けられ、CVT、ステップAT等の自動変速機のレンジ切替を行うものである。
図1は、実施例のシフトバイワイヤ制御システムの構成を模式的に示すブロック図である。
シフトバイワイヤ制御システムは、レンジ切替装置10、アクチュエータ20、シフトバイワイヤ制御ユニット30等を有して構成されている。
【0019】
レンジ切替装置10は、自動変速機の前進(D)レンジ、後退(R)レンジ、ニュートラル(N)レンジ、パーキング(P)レンジをアクチュエータ20によって切替えるものである。
レンジ切替装置10は、前進クラッチ及び後退クラッチをそれぞれ締結、解除する油圧制御機構、及び、出力軸を機械的にロックするパーキングロック機構等を有して構成されている。
Dレンジは、前進クラッチが締結され、後退クラッチは解除された状態となっている。
Rレンジは、前進クラッチが解除され、後退クラッチは締結された状態となっている。
Nレンジは、前進クラッチ、後退クラッチがともに解除された状態となっている。
Pレンジは、前進クラッチ、後退クラッチがともに解除されるとともに、パーキングロック機構が作動した状態となっている。
【0020】
アクチュエータ20は、レンジ切替装置10を駆動してレンジの切替動作を行なわせる例えばモータ、ソレノイド等の電動アクチュエータである。
アクチュエータ20は、内部の駆動部材の位置等に基いて、レンジ切替装置10がどのレンジ(シフト位置)にあるかを検出するシフト位置センサ21を備えている。
シフト位置センサ21が検出したシフト位置情報は、シフトバイワイヤ制御ユニット30に伝達される。
【0021】
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、アクチュエータ20を制御してレンジ切替装置10にレンジ切替動作を行なわせるものである。
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、CPU等の情報処理装置、RAMやROM等の記憶装置、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を有して構成されている。
【0022】
シフトバイワイヤ制御ユニット30には、セルフシャットリレー31、レンジスイッチ32、運転席ドアスイッチ33、シートベルトスイッチ34、アイドリングストップシステム(ISS)制御ユニット35、バッテリ電圧センサ36、前後Gセンサ37、車速センサ38等が、車載LANの一種であるCAN通信システム等を介して接続されている。
【0023】
セルフシャットリレー31は、シフトバイワイヤ制御ユニット30に電力を供給するとともに、ドライバが図示しないイグニッションスイッチをオフした場合には、シフトバイワイヤ制御ユニット30のシャットダウンが完了するまで電力を供給した後に、シフトバイワイヤ制御ユニット30からのセルフシャット制御信号に応じて電源供給を遮断するものである。
【0024】
レンジスイッチ32は、ドライバがレンジ切替操作(選択操作)を入力するシフトレバー等の操作部に設けられ、シフトレバーによって選択されたレンジに応じたレンジ要求信号をシフトバイワイヤ制御ユニット30に伝達する。
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、レンジスイッチ32からのレンジ要求信号に応じて、アクチュエータ20を駆動し、レンジ切替装置10を動作させる。
【0025】
運転席ドアスイッチ33は、運転席ドアのキャッチャ部に設けられ、運転席ドアの開閉状態を検出し、検出結果をシフトバイワイヤ制御ユニット30に伝達する。
【0026】
シートベルトスイッチ34は、運転席のシートベルトアンカ部に設けられ、シートベルトの着脱状態を検出し、検出結果をシフトバイワイヤ制御ユニット30に伝達する。
運転席ドアスイッチ33及びシートベルトスイッチ34は、ドライバがシートベルトを装着しかつ運転席ドアを閉めた発進準備状態を判別する、本発明にいう発進準備状態判別手段として機能する。
【0027】
ISS制御ユニット35は、車両の停車時に所定のアイドルストップ条件が成立した場合に、エンジンを自動的に停止させるとともに、例えばブレーキオフ等の所定の再始動条件が成立した場合に、エンジンを自動的に再始動させるアイドルストップ制御を行うものである。
また、ISS制御ユニット35は、所定の再始動禁止条件が充足した場合には、エンジンの自動停止後の自動再始動を禁止する機能を備えている。
【0028】
バッテリ電圧センサ36は、シフトバイワイヤ制御システムに電力を供給するバッテリの電圧を検出し、シフトバイワイヤ制御ユニット30に伝達する。
【0029】
前後Gセンサ37は、車体の前後方向に作用する加速度を検出することによって、自車両が停車している路面の前後方向の傾斜(勾配)を判別するものである。
前後Gセンサ37は、判別された勾配値をシフトバイワイヤ制御ユニット30に伝達する。
【0030】
車速センサ38は、例えば車輪ハブ部に設けられたトーンホイールの回転速度に応じた車速パルス信号を生成するとともに、車速パルス信号の間隔に応じて車速を検出するものである。
車速センサ38は、検出された車速をシフトバイワイヤ制御ユニット30に伝達する。
【0031】
また、シフトバイワイヤ制御ユニット30は、電動パーキングブレーキ制御ユニット40、ブレーキ制御ユニット50等に接続されている。
【0032】
電動パーキングブレーキ制御ユニット40は、機械式のパーキングブレーキ41と機械的なリンケージによって接続されたアクチュエータ42を制御し、パーキングブレーキ41の制動、解除を切替えるものである。
【0033】
ブレーキ制御ユニット50は、液圧式のサービスブレーキ51のフルード液圧を発生するハイドロリックコントロールユニット52を制御し、サービスブレーキ51の制動、解除を切替えるものである。
【0034】
上述した実施例のシフトバイワイヤ制御システムは、ドライバの発進準備が未了である場合に車両の走行を防止する制御、バッテリからの供給電圧が低下した場合に車両の走行を防止する制御、及び、アイドルストップ制御によってエンジンが自動停止した後、自動再始動が禁止された場合に非走行レンジへ切替えてインヒビタ回路をオンする制御等を実行している。
以下、これらの制御について詳細に説明する。
【0035】
図2は、図1のシフトバイワイヤ制御システムにおける発進準備未完了時及び低電圧時の制御を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS11:イグニッションスイッチ・車速状態判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、図示しないイグニッションスイッチからの入力信号がオフ状態でありかつ車速センサが検出する車速が所定値以上であるか否かを判別し、これらがともに成立した場合にはステップS12に進む。
また、これらの一方又は両方が不成立である場合にはステップS13に進む。
【0036】
<ステップS12:セルフシャット禁止>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、セルフシャットリレー31によるシフトバイワイヤ制御ユニット30への電力供給遮断(リレー接点開動作)を禁止し、ステップS13に進む。
【0037】
<ステップS13:運転席ドア状態判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、運転席ドアスイッチ33からの入力に基いて、運転席ドアの開閉状態を判別し、運転席ドアが開放されている場合はステップS16に進む。
また、運転席ドアが閉塞されている場合はステップS14に進む。
【0038】
<ステップS14:運転席シートベルト状態判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、シートベルトスイッチ34からの入力に基いて、運転席乗員のシートベルト装着状態を判別し、シートベルトが装着されていない場合はステップS16に進む。
また、シートベルトが装着されている場合はステップS15に進む。
【0039】
<ステップS15:バッテリ低電圧判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、電圧センサ36からの入力に基いて、バッテリの電圧を判別し、電圧が所定の閾値以下である低電圧状態である場合はステップS16に進む。
また、低電圧状態でない場合は一連の処理を終了(リターン)する。
【0040】
<ステップS16:勾配値判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、前後Gセンサ37からの入力に基いて、現在自車両が停車している路面の前後方向の勾配値を判別し、勾配値が所定の閾値以上である場合はステップS17に進む。
また、勾配値が閾値未満である場合はステップS18に進む。
【0041】
<ステップS17:車速判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、車速センサ38からの入力に基いて、現在の自車両の車速を判別し、車速が所定の閾値以下である場合はステップS19に進む。
また、車速が閾値超である場合はステップS18に進む。
【0042】
<ステップS18:Nレンジシフト>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、自動変速機の前進クラッチ及び後退クラッチがともに解除され、パーキングロック機構は解除されたNレンジ状態とする。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
【0043】
<ステップS19:Pレンジシフト>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、自動変速機の前進クラッチ及び後退クラッチがともに解除され、パーキングロック機構がロックされたPレンジ状態とする。
ここで、パーキングロック機構をロックするとともに、あるいは、パーキングロック機構をロックすることに代えて、電動パーキングブレーキ制御ユニット40とブレーキ制御ユニット50の一方又は両方に作動要求信号を送信し、パーキングブレーキ41、サービスブレーキ51の一方又は両方を制動状態としてもよい。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
【0044】
図3は、図1のシフトバイワイヤ制御システムにおけるアイドルストップ再始動禁止時の制御を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS21:イグニッションスイッチ・車速状態判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、図示しないイグニッションスイッチからの入力信号がオフ状態でありかつ車速センサが検出する車速が所定値以上であるか否かを判別し、これらがともに成立した場合にはステップS22に進む。
また、これらの一方又は両方が不成立である場合にはステップS23に進む。
【0045】
<ステップS22:セルフシャット禁止>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、セルフシャットリレー31によるシフトバイワイヤ制御ユニット30への電力供給遮断(リレー接点開動作)を禁止し、ステップS23に進む。
【0046】
<ステップS23:アイドルストップ制御判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、ISS制御ユニット35からの入力に基いて、現在アイドルストップ制御の実行中か否かを判別する。
アイドルストップ制御を実行中である場合は、ステップS24に進む。
また、アイドルストップ制御を実行中でない場合は、一連の処理を終了(リターン)する。
【0047】
<ステップS24:再始動禁止判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、ISS制御ユニット35からの入力に基いて、再始動禁止状態であるか否かを判別する。
再始動禁止状態である場合は、ステップS25に進む。
また、再始動禁止状態でない場合は、一連の処理を終了(リターン)する。
【0048】
<ステップS25:前進・後退クラッチ開放、インヒビタ回路オン>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、自動変速機の前進クラッチ、後退クラッチをともに解除状態にするとともに、通常時Dレンジにおいてスタータモータへの通電を禁止する図示しないインヒビタ回路を制御し、Dレンジである場合にも、ドライバによるイグニッションスイッチのエンジン始動操作に応じて、スタータモータへの通電が可能な状態とする。
その後、ステップS26に進む。
【0049】
<ステップS26:勾配値判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、前後Gセンサ37からの入力に基いて、現在自車両が停車している路面の前後方向の勾配値を判別し、勾配値が所定の閾値以上である場合はステップS27に進む。
また、勾配値が閾値未満である場合は一連の処理を終了(リターン)する。
【0050】
<ステップS27:車速判断>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、車速センサ38からの入力に基いて、現在の自車両の車速を判別し、車速が所定の閾値以下である場合はステップS28に進む。
また、車速が閾値超である場合は一連の処理を終了(リターン)する。
【0051】
<ステップS28:Pレンジシフト>
シフトバイワイヤ制御ユニット30は、自動変速機の前進クラッチ及び後退クラッチがともに解除され、パーキングロック機構がロックされたPレンジ状態とする。
ここで、パーキングロック機構をロックするとともに、あるいは、パーキングロック機構をロックすることに代えて、電動パーキングブレーキ制御ユニット40とブレーキ制御ユニット50の一方又は両方に作動要求信号を送信し、パーキングブレーキ41、サービスブレーキ51の一方又は両方を制動状態としてもよい。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
【0052】
以上説明した実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)運転席ドアが開放され、あるいは運転席シートベルトが未装着であり、車両の発進準備が整わない場合に、Nレンジ又はPレンジにシフトすることによって、車両の動き出しを防止し、安全性を向上することができる。
このような制御に用いるドアスイッチ、シートベルトスイッチ等は、一般的な車両に通常設けられているものであり、新たなセンサ、スイッチ類を追加する必要がない。
(2)システムへの供給電圧が低下して制御用のCPUやアクチュエータ等の誤作動が懸念される場合に、Nレンジ又はPレンジにシフトすることにより、車両の走行を防止して信頼性、安全性を確保できる。
(3)アイドルストップ制御によるエンジンの自動再始動が何らかの理由により禁止された場合に、Nレンジ又はPレンジにシフトしかつインヒビタ回路をオンすることによって、ドライバが手動で非走行レンジに切り替えることなくスタータモータの駆動が可能となり、ドライバの操作負担が軽減され、パニック等に陥ることを防止できる。
(4)上述した各制御の実行時に、自車両が所定以上の勾配値の傾斜路上にある場合には、パーキングロック機構、パーキングブレーキ、サービスブレーキの一部又は全部を作動させることによって、車両の動き出しを防止することができる。
(5)イグニッションスイッチがオフかつ車速が所定値以上である場合に、セルフシャットを禁止することによって、イグニッションスイッチ及びその配線等に故障等が発生した場合であっても、セルフシャットが作動して制御不能となることを防止できる。
【0053】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、シフトバイワイヤ制御システムの構成は、上述した実施例の構成に限らず、適宜変更することができる。
例えば、実施例においては、運転席ドア及び運転席シートベルトの状態に応じて前進、後退クラッチを解除しているが、運転席以外のドアやシートベルトの状態も加味した制御としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 レンジ切替装置 20 アクチュエータ
21 シフト位置センサ 30 シフトバイワイヤ制御ユニット
31 セルフシャットリレー 32 レンジスイッチ
33 運転席ドアスイッチ 34 シートベルトスイッチ
35 ISS制御ユニット 36 バッテリ電圧センサ
37 前後Gセンサ 38 車速センサ
40 電動パーキングブレーキ制御ユニット
41 パーキングブレーキ 42 アクチュエータ
50 ブレーキ制御ユニット 51 サービスブレーキ
52 ハイドロリックコントロールユニット
図1
図2
図3