【0010】
(特徴1)モジュールは、銅板と、回路素子と、銅板と回路素子の電極を接合する合金層を備えている。合金層は、銅板側に位置しており、すずと銅からなる第1種類の合金である第1部分を備えていてもよい。第1種類の合金は、すずと銅のみの合金であり、他の金属を含んでいなくてもよい。また、合金層は、回路素子の電極側に位置しており、金、ニッケル、銀の少なくとも1種の金属とすずを含む第2種類の合金である第2部分を備えていてもよい。さらに、合金層は、第1部分と第2部分の間に位置しており、第1種類の合金と第2種類の合金が混在している第3部分を有していてもよい。第3部分では、少なくとも第1種類の合金と第2種類の合金が混在しており、他の種類の合金が含まれていてもよい。ここで、「種類」とは、広義に解釈されるものである。例えば、含有する金属原子が同一であり、それらの組成比が異なる場合も、同一の「種類」と解釈されるものである。
(特徴2)銅板は、絶縁基板に含まれる回路パターンであってもよい。絶縁基板は、回路素子と冷却器の間に配置され、回路素子と冷却器を電気的に絶縁するために用いられる。
(特徴3)回路素子は、縦型の半導体素子であってもよい。また、縦型の半導体素子の一例には、IGBT,MOSFET,ダイオード,サイリスタが挙げられる。
(特徴4)合金層は、銅板と回路素子の電極を結ぶ方向で観測したときに、複数種類の合金のみで構成されており、単一の金属層が含まれていなく。
(特徴5)第2種類の合金は、ニッケルを含んでいてもよい。ニッケルを含む合金は、第1部分に向けて突出しやすい。そのため、第1種類の合金と第2種類の合金が混在した第3部分が形成されやすい。
(特徴6)第2種類の合金は、Cu
xNi
3−xSn(0≦x≦2)で表される合金であってもよい。第2種類の合金に含まれる銅(Cu)は、銅板に由来する。第2種類の合金が上記式で表されることは、銅板を構成していた銅原子が、すずを越えて、電極を構成していたニッケル(Ni)と合金化したことを示している。銅板と回路素子の電極との間に介在していたすずが、確実に合金化したことを示している。Cu
2Ni
3−xSn(0≦x≦2)で表される合金は、[Cu(Ni)]
3Sn,CuNi
2Snであってもよい。
(特徴7)第2部分には、電極を構成していた金(Au)が含まれている部分が存在してもよい。
(特徴8)第1部分の合金は、Cu
3Snで表される合金であってもよい。
【実施例】
【0011】
図1〜
図3に示すように、半導体モジュール100は、冷却器2と、放熱板4と、絶縁基板12と、合金層20と、半導体素子30を備える。半導体素子30は、半導体層34と裏面電極32を有している。なお、半導体素子30は、表面電極及びゲート電極等の他の要素も有しているが、説明の便宜のために省略する。冷却器2は、複数の水路2aを備えている。放熱板4は、冷却器2と絶縁基板12に接合されており、半導体素子30で発生した熱を冷却器2に伝熱する。絶縁基板12は、銅板6と絶縁体8と銅板10が積層されたDBC(Direct Bonding Copper)基板である。絶縁体8の材料として、窒化珪素(Si
3N
4),窒化アルミニウム(AlN),酸化アルミニウム(Al
2O
3)等を用いることができる。絶縁基板12は、半導体素子30の裏面電極32と放熱板4を絶縁しながら、半導体素子30で発生した熱を放熱板4に伝熱する。
【0012】
合金層20は、銅板10と半導体素子30の裏面電極32との間に介在している。合金層20の厚みT20は、5〜20μmに調整されている。合金層20は、合金に含まれている金属の種類により、第1部分22と第2部分26と第3部分24に区別することができる。第1部分22は、銅板10側に位置しており、すず(Sn)と銅(Cu)からなる合金である。第1部分22は、銅板10上に形成されたすずと銅板10とが合金化したものである。第1部分22の合金は、Cu
3Snである。すずと銅からなる合金は、第1種類の合金の一例である。
【0013】
第2部分26は、裏面電極32側に位置しており、銅とニッケル(Ni)とすずを主体とする合金である。第2部分26は、裏面電極32を構成している金属(ニッケル)と、銅板10上に形成されたすずと、銅板10から拡散された銅とが合金化したものである。第2部分26の合金は、Cu
xNi
3−xSn(0≦x≦2)で表すことができる。第2部分26の合金は、[Cu(Ni)]
3Snである。銅とニッケルとすずを主体とする合金は、第2種類の合金の一例である。
【0014】
第3部分24は、第1部分22と第2部分26の間に位置している。第3部分24では、第2部分26の合金26aが、第1部分22の合金22a内に樹枝状に突出している。合金26aは、合金22aに囲まれている。その結果、第3部分24では、第1種類の合金と第2種類の合金が混在している。第3部分24によって、第1部分22と第2部分26が強固に接合される。
【0015】
上記したように、半導体モジュール100では、銅板10と裏面電極32の間に合金層20だけが存在する。合金層20の融点が高いので、半導体素子30が発熱しても、合金層20の軟化が抑制される。その結果、半導体素子30の裏面電極32と銅板10との接合が維持される。また、半導体素子30が発熱しても、合金化していないすずの合金化が進行することがない。半導体モジュール100の使用中に合金化が進行すると、銅板10と裏面電極32の間にボイドが発生することがある。銅板10と裏面電極32の間に合金層20だけが存在することにより、信頼性の高い半導体モジュール100を実現することができる。
【0016】
半導体モジュール100の製造方法を説明する。ここでは、銅板10と半導体素子30の裏面電極32の接合方法のみを説明する。なお、絶縁基板12の製造方法、冷却器2と放熱板4の接合方法、放熱板4と絶縁基板12の接合方法は、公知の方法を用いることができる。
【0017】
まず、
図4に示すように、銅板10上にすず膜40を蒸着する。すず膜40は、スパッタ法、めっき法、EB(Electron Beam)法、抵抗加熱法等を用いて蒸着することができる。蒸着によって銅板10上にすず膜40を形成するので、薄膜のすず膜40を形成することができる。すず膜40の厚みT40は、5〜10μmに調整する。
【0018】
ここで、銅板10に接合される前の半導体素子30について説明する。半導体素子30は、半導体層34と裏面電極32を備えている。裏面電極32は、アルミニウム(Al)とチタン(Ti)とニッケルと金がこの順に積層された積層電極である。アルミニウムが、半導体層34に接触している。アルミニウムとチタンがオーミック接触部36を形成し、ニッケルと金が接合部38を形成している。銅板10と裏面電極32を接合するときは、接合部38をすず膜40に接触させる。
【0019】
次に、
図5に示すように、接合部38をすず膜40に接触させた状態で、半導体素子30と銅板10を250〜450℃で熱処理する。熱処理を行うことにより、矢印50に示すように、すず膜40と接合部38の金属が相互に拡散する。また、矢印52,54に示すように、すず膜40と銅板10の金属も相互に拡散する。なお、銅は拡散しやすい金属なので、矢印54に示すように、すず膜40を超えて、接合部38にまで拡散する。その結果、
図3に示すように、第1部分22が銅板10側に形成され、第2部分26が裏面電極32側に形成される。その後、第2部分26の合金26aが、第1部分22に向けて樹枝状に突出して、第1部分22の合金22aに囲まれる。その結果、第1部分22の合金(第1種類の合金)と第2部分26の合金(第2種類の合金)が混在した第3部分が形成される。
【0020】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。