(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のガスセンサでは、電極パッドの先端縁までロウ材部が配置されている。このため、ロウ材部及びセラミック基体の表面上に大気中の水分が付着することで、セラミック基体の表面上において、ロウ材部から接触端子部材(セラミック基体に接触する部位)に向かって、ロウ材に含まれる金属が移動するマイグレーションが発生し、ロウ材部と接触端子部材との間で短絡する虞があった。
【0007】
また、特許文献2のガスセンサでは、ヒータ端子部材の端子接続部が、一定の幅寸法で軸線方向に延びる板状をなし、その先端縁(端子先端縁)が直線形状(軸線に直交する直線)となっている。このような形態の端子接続部を用いた場合、電極パッドと端子接続部とをロウ材で接合する工程において、ロウ材が、端子先端縁から軸線方向先端側に向けて濡れ拡がるときに、電極パッドの第1パッド側縁(軸線方向に平行に延びる2つのパッド側縁のうちの一方)側及び第2パッド側縁(上記パッド側縁のうちの他方)側のうち一方側の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなることがあった。これにより、一方側においてロウ材が電極パッドの先端縁に届いてしまうことがあった。このため、前述のように、ロウ材に含まれる金属が移動するマイグレーションが発生し、ロウ材部と接触端子部材との間で短絡する虞があった。
特に、Agを含有するロウ材を用いた場合は、ロウ材部と接触端子部材との間でマイグレーションが発生しやすくなる。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、ロウ材部と接触端子部材との間において、Agのマイグレーションを発生し難くできるセラミックヒータ、このセラミックヒータを備えたガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、軸線方向に延びる棒状で、内部に発熱抵抗体を有するセラミック基体、上記セラミック基体のうち上記軸線方向の基端側の表面に設けられ、上記発熱抵抗体に導通する電極パッドであって、上記軸線方向に平行に延びる第1パッド側縁及び第2パッド側縁と、これらに対し上記軸線方向の先端側に位置し、上記第1パッド側縁の先端と上記第2パッド側縁の先端とを結ぶパッド先端縁と、を有する電極パッド、上記パッド先端縁よりも上記軸線方向基端側に配置された端子接続部を有するヒータ端子部材、及び、Agを含むロウ材からなり、上記電極パッド上に配置され、上記電極パッドと上記端子接続部との間に介在してこれらを接合するロウ材部、を有するセラミックヒータと、上記電極パッドに対して相対的に負電位とされ、上記パッド先端縁よりも上記軸線方向先端側で上記セラミック基体に接触する接触端子部材と、を備え、上記端子接続部は、一定の幅寸法で上記軸線方向に延びる板状をなし、
当該端子接続部の先端縁である端子先端縁が、上記軸線方向先端側に凸で、上記幅寸法の0.5倍以上0.8倍以下の半径を有する円弧形状で、上記電極パッド上のうち、上記第1パッド側縁と上記第2パッド側縁との間の中央に配置されてなり、上記ロウ材部は、
上記端子先端縁に接触して、上記端子接続部よりも上記軸線方向先端側に拡がる形態をなし、上記ロウ材部の先端縁であるロウ材先端縁は、上記軸線方向先端側に凸の円弧形状で、上記パッド先端縁と離間してなるガスセンサである。
【0010】
上述のガスセンサでは、Agを含有するロウ材部の先端縁(軸線方向先端側の縁)が、軸線方向先端側に凸の円弧形状で、パッド先端縁と離間している。これにより、ロウ材部と接触端子部材との間において、Agのマイグレーションを発生し難くできる。
【0011】
ところで、上述のガスセンサでは、以下のようにして、ロウ材先端縁(ロウ材部の先端縁)を上記のような形態としている。
具体的には、端子接続部を、一定の幅寸法で軸線方向に延びる板状をなし、その端子先端縁が、軸線方向先端側に凸で、幅寸法の0.5倍以上0.8倍以下の半径を有する円弧形状としている。さらに、この端子接続部を、電極パッド上のうち、第1パッド側縁と第2パッド側縁との間の中央に配置している。
【0012】
このようにすることで、電極パッドと端子接続部とをロウ材で接合するとき、ロウ材が、端子先端縁から、軸線方向先端側に向けて、左右ほぼ均等に円弧状に濡れ拡がる。すなわち、電極パッドの第1パッド側縁側におけるロウ材の濡れ拡がりと、電極パッドの第2パッド側縁側におけるロウ材の濡れ拡がりとを、同程度にできる。これにより、「第1パッド側縁側及び第2パッド側縁側のうち一方側の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなることで、一方側においてロウ材が電極パッドの先端縁に届いてしまう形態」となるのを防止できる。かくして、ロウ材部について、その先端縁が、軸線方向先端側に凸の円弧形状で、パッド先端縁と離間した形態とすることができる。
【0013】
ところで、パッド先端縁の形態を、平面視で軸線に直交する先端辺(換言すれば、軸線に直交する平面上に位置する先端辺)と、この先端辺の一端と第1パッド側縁の先端とを結ぶ円弧状の第1コーナー部と、上記先端辺の他端と第2パッド側縁の先端とを結ぶ円弧状の第2コーナー部とからなる形態とすることがある。このような形態のパッド先端縁とした場合、第1コーナー部及び第2コーナー部に電界が集中しやすいので、Agのマイグレーションは、特に、第1コーナー部及び第2コーナー部において発生しやすくなる。
【0014】
これに対し、上述のガスセンサでは、ロウ材先端縁の形状を、軸線方向先端側に凸の円弧形状としている。これにより、ロウ材先端縁を、第1コーナー部及び第2コーナー部から大きく離すことができる。従って、ロウ材部と接触端子部材との間におけるAgのマイグレーションを発生し難くできる。
【0015】
さらに、上記のガスセンサであって、前記端子接続部を、前記電極パッド上のうち、前記パッド先端縁から前記軸線方向基端側へ上記端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離を空けた位置に配置してなるガスセンサとすると良い。
【0016】
ロウ材により、電極パッドに端子接続部を接合(ロウ付け)するとき、溶融したロウ材の一部が、端子接続部の先端から軸線方向先端側に向けて濡れ拡がる。その濡れ拡がる距離は、端子接続部の板厚に応じて決まる。本発明者が検討した結果、端子接続部の先端から軸線方向先端側へのロウ材の濡れ拡がり距離は、端子接続部の板厚の6.6倍程度になることが判明した。従って、端子接続部を、パッド先端縁から軸線方向基端側へ端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離を空けて配置しておくことで、ロウ材(ロウ材部)が、電極パッドの先端縁まで濡れ拡がる(パッド先端縁に届く)のを抑制することができる。かくして、上述のガスセンサは、ロウ材部の先端縁(ロウ材先端縁)がパッド先端縁から離間した形態となる。
【0017】
さらに、上記いずれかのガスセンサであって、前記ロウ材部を被覆する、ニッケル、クロム、及び、金のいずれかからなるメッキ層を備えるガスセンサとすると良い。
【0018】
ロウ材部を、ニッケルメッキ層、クロムメッキ層、及び、金メッキ層のいずれかで被覆することで、ロウ材部の腐食を防止することができる。また、前述のマイグレーションも、より一層発生し難くなる。
【0019】
本発明の他の態様は、軸線方向に延びる棒状で、内部に発熱抵抗体を有するセラミック基体、上記セラミック基体のうち上記軸線方向の基端側の表面に設けられ、上記発熱抵抗体に導通する電極パッドであって、上記軸線方向に平行に延びる第1パッド側縁及び第2パッド側縁と、これらに対し上記軸線方向の先端側に位置し、上記第1パッド側縁の先端と上記第2パッド側縁の先端とを結ぶパッド先端縁と、を有する電極パッド、上記パッド先端縁よりも上記軸線方向基端側に配置された端子接続部を有するヒータ端子部材、及び、Agを含むロウ材からなり、上記電極パッド上に配置され、上記電極パッドと上記端子接続部との間に介在してこれらを接合するロウ材部、を備え、上記端子接続部は、一定の幅寸法で上記軸線方向に延びる板状をなし、
当該端子接続部の先端縁である端子先端縁が、上記軸線方向先端側に凸で、上記幅寸法の0.5倍以上0.8倍以下の半径を有する円弧形状で、上記電極パッド上のうち、上記第1パッド側縁と上記第2パッド側縁との間の中央に配置されてなり、上記ロウ材部は、
上記端子先端縁に接触して、上記端子接続部よりも上記軸線方向先端側に拡がる形態をなし、上記ロウ材部の先端縁であるロウ材先端縁は、上記軸線方向先端側に凸の円弧形状で、上記パッド先端縁と離間してなるセラミックヒータである。
【0020】
上述のセラミックヒータでは、Agを含有するロウ材部の先端縁(軸線方向先端側の縁)が、軸線方向先端側に凸の円弧形状で、パッド先端縁と離間している。これにより、ロウ材部と接触端子部材との間において、Agのマイグレーションを発生し難くできる。
【0021】
なお、上述のセラミックヒータでは、前述のガスセンサと同様に、端子接続部を、一定の幅寸法で軸線方向に延びる板状をなし、その端子先端縁が、軸線方向先端側に凸で、幅寸法の0.5倍以上0.8倍以下の半径を有する円弧形状としている。さらに、この端子接続部を、電極パッド上のうち、第1パッド側縁と第2パッド側縁との間の中央に配置している。このようにすることで、前述のガスセンサと同様に、電極パッドと端子接続部とをロウ材で接合したとき、ロウ材部を、その先端縁が、軸線方向先端側に凸の円弧形状で、パッド先端縁と離間した形態とすることができる。
【0022】
また、上述のセラミックヒータでは、ロウ材先端縁を軸線方向先端側に凸の円弧形状としている。これにより、前述のガスセンサと同様に、ロウ材部を、パッド先端縁の第1コーナー部及び第2コーナー部から大きく離すことができる。従って、ロウ材部と接触端子部材との間におけるAgのマイグレーションを発生し難くできる。
【0023】
さらに、上記のセラミックヒータであって、前記端子接続部を、前記電極パッド上のうち、前記パッド先端縁から前記軸線方向基端側へ上記端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離を空けた位置に配置してなるセラミックヒータとすると良い。
【0024】
前述のように、ロウ材により電極パッドに端子接続部を接合(ロウ付け)するとき、端子接続部の先端から軸線方向先端側へのロウ材の濡れ拡がり距離は、端子接続部の板厚の6.6倍程度になる。従って、端子接続部を、パッド先端縁から軸線方向基端側へ端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離を空けて配置しておくことで、ロウ材(ロウ材部)が、電極パッドの先端縁まで濡れ拡がる(パッド先端縁に届く)のを抑制することができる。かくして、上述のセラミックヒータは、ロウ材部の先端縁(ロウ材先端縁)がパッド先端縁から離間した形態となる。
【0025】
さらに、上記いずれかのセラミックヒータであって、前記ロウ材部を被覆する、ニッケル、クロム、及び、金のいずれかからなるメッキ層を備えるセラミックヒータとすると良い。
【0026】
ロウ材部を、ニッケルメッキ層、クロムメッキ層、及び、金メッキ層のいずれかで被覆することで、ロウ材部の腐食を防止することができる。また、前述のマイグレーションも、より一層発生し難くなる。
【0027】
また、軸線方向に延びる棒状で、内部に発熱抵抗体を有するセラミック基体、上記セラミック基体のうち上記軸線方向の基端側の表面に設けられ、上記発熱抵抗体に導通する電極パッドであって、上記軸線方向に平行に延びる第1パッド側縁及び第2パッド側縁と、これらに対し上記軸線方向の先端側に位置し、上記第1パッド側縁の先端と上記第2パッド側縁の先端とを結ぶパッド先端縁と、を有する電極パッド、上記パッド先端縁よりも上記軸線方向基端側に配置された端子接続部を有するヒータ端子部材、及び、Agを含むロウ材からなり、上記電極パッド上に配置され、上記電極パッドと上記端子接続部との間に介在してこれらを接合するロウ材部、を有するセラミックヒータと、上記電極パッドに対して相対的に負電位とされ、上記パッド先端縁よりも上記軸線方向先端側で上記セラミック基体に接触する接触端子部材と、を備え、上記端子接続部は、一定の幅寸法で上記軸線方向に延びる板状をなすガスセンサの製造方法であって、上記ロウ材により、上記電極パッドと上記端子接続部とを接合する接合工程を有し、上記接合工程では、上記ヒータ端子部材として、上記端子接続部の端子先端縁が、上記軸線方向先端側に凸で、上記幅寸法の0.5倍以上0.8倍以下の半径を有する円弧形状であるヒータ端子部材を用い、上記端子接続部を、上記電極パッド上のうち、上記第1パッド側縁と上記第2パッド側縁との間の中央に配置し、溶融した上記ロウ材を、上記電極パッド及び上記端子接続部に接触させて上記電極パッドと上記端子接続部との間に浸透させると共に、上記電極パッド上に濡れ拡がらせるガスセンサの製造方法が好ましい。
【0028】
上述の製造方法では、接合工程において、「一定の幅寸法で軸線方向に延びる板状をなし、端子先端縁が、軸線方向先端側に凸で、幅寸法の0.5倍以上0.8倍以下の半径を有する円弧形状である」端子接続部を、電極パッド上のうち第1パッド側縁と第2パッド側縁との間の中央に配置した状態で、溶融したロウ材(Agを含有するロウ材)を、電極パッド及び端子接続部に接触させて電極パッドと端子接続部との間に浸透させると共に、電極パッド上に濡れ拡がらせて、電極パッドと端子接続部とをロウ材により接合している。
【0029】
このようにすることで、接合工程において、ロウ材が、端子先端縁から、軸線方向先端側に向けて、左右ほぼ均等に円弧状に濡れ拡がる。すなわち、電極パッドの第1パッド側縁側におけるロウ材の濡れ拡がりと、電極パッドの第2パッド側縁側におけるロウ材の濡れ拡がりとを、同程度にできる。これにより、「第1パッド側縁側及び第2パッド側縁側のうち一方側の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなることで、一方側においてロウ材が電極パッドの先端縁に届いてしまう形態」となるのを防止できる。かくして、上述の製造方法によれば、ロウ材部について、その先端縁が、軸線方向先端側に凸の円弧形状で、パッド先端縁と離間した形態とすることができる。これにより、ロウ材部と接触端子部材との間において、Agのマイグレーションを発生し難くできる。
【0030】
さらに、上記のガスセンサの製造方法であって、前記接合工程では、前記端子接続部を、前記電極パッド上のうち、前記パッド先端縁から前記軸線方向基端側へ上記端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離を空けた位置に配置するガスセンサの製造方法とするのが好ましい。
【0031】
上述の製造方法では、端子接続部を、パッド先端縁から軸線方向基端側へ端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離を空けて配置している。これにより、接合工程において、溶融したロウ材が、確実に、電極パッドの先端縁まで濡れ拡がらない(パッド先端縁に届かない)ようにできる。従って、ロウ材部の先端縁と電極パッドの先端縁とを、確実に離間させることができる。
【0032】
また、軸線方向に延びる棒状で、内部に発熱抵抗体を有するセラミック基体、上記セラミック基体のうち上記軸線方向の基端側の表面に設けられ、上記発熱抵抗体に導通する電極パッドであって、上記軸線方向に平行に延びる第1パッド側縁及び第2パッド側縁と、これらに対し上記軸線方向の先端側に位置し、上記第1パッド側縁の先端と上記第2パッド側縁の先端とを結ぶパッド先端縁と、を有する電極パッド、上記パッド先端縁よりも上記軸線方向基端側に配置された端子接続部を有するヒータ端子部材、及び、Agを含むロウ材からなり、上記電極パッド上に配置され、上記電極パッドと上記端子接続部との間に介在してこれらを接合するロウ材部、を備え、上記端子接続部は、一定の幅寸法で上記軸線方向に延びる板状をなすセラミックヒータの製造方法であって、上記ロウ材により、上記電極パッドと上記端子接続部とを接合する接合工程を有し、上記接合工程では、上記ヒータ端子部材として、上記端子接続部の端子先端縁が、上記軸線方向先端側に凸で、上記幅寸法の0.5倍以上0.8倍以下の半径を有する円弧形状であるヒータ端子部材を用い、上記端子接続部を、上記電極パッド上のうち、上記第1パッド側縁と上記第2パッド側縁との間の中央に配置し、溶融した上記ロウ材を、上記電極パッド及び上記端子接続部に接触させて上記電極パッドと上記端子接続部との間に浸透させると共に、上記電極パッド上に濡れ拡がらせるセラミックヒータの製造方法が好ましい。
【0033】
上述の製造方法では、接合工程において、「一定の幅寸法で軸線方向に延びる板状をなし、端子先端縁が、軸線方向先端側に凸で、幅寸法の0.5倍以上0.8倍以下の半径を有する円弧形状である」端子接続部を、電極パッド上のうち第1パッド側縁と第2パッド側縁との間の中央に配置した状態で、溶融したロウ材(Agを含有するロウ材)を、電極パッド及び端子接続部に接触させて電極パッドと端子接続部との間に浸透させると共に、電極パッド上に濡れ拡がらせて、電極パッドと端子接続部とをロウ材により接合している。
【0034】
このようにすることで、接合工程において、ロウ材が、端子先端縁から、軸線方向先端側に向けて、左右ほぼ均等に円弧状に濡れ拡がる。これにより、「第1パッド側縁側及び第2パッド側縁側のうち一方側の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなることで、一方側においてロウ材が電極パッドの先端縁に届いてしまう形態」となるのを防止できる。かくして、上述の製造方法によれば、ロウ材部について、その先端縁が、軸線方向先端側に凸の円弧形状で、パッド先端縁と離間した形態とすることができる。これにより、ロウ材部と接触端子部材との間において、Agのマイグレーションを発生し難くできる。
【0035】
さらに、上記のセラミックヒータの製造方法であって、前記接合工程では、前記端子接続部を、前記電極パッド上のうち、前記パッド先端縁から前記軸線方向基端側へ上記端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離を空けた位置に配置するセラミックヒータの製造方法とするのが好ましい。
【0036】
上述の製造方法では、端子接続部を、パッド先端縁から軸線方向基端側へ端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離を空けて配置している。これにより、接合工程において、溶融したロウ材が、確実に、電極パッドの先端縁まで濡れ拡がらない(パッド先端縁に届かない)ようにできる。従って、ロウ材部の先端縁と電極パッドの先端縁とを、確実に離間させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態のガスセンサ30は、
図1に示すように、検出素子20と、この検出素子20を包囲する筒状の主体金具31とを備える。さらに、ガスセンサ30は、外側端子部材50と、内側端子部材32と、セラミックヒータ100とを備える。
【0039】
検出素子20は、軸線方向X(軸線AXに沿う方向、
図1において上下方向)に延びる形態をなしている。この検出素子20は、有底筒状の基体1と、基体1の外表面に形成された貴金属(例えば、白金)からなる外側電極23と、基体1の内表面に形成された貴金属(例えば、白金)からなる内側電極21(貴金属メッキ層)を有する。この検出素子20は、被測定ガス(排気ガス)中の特定ガス成分(酸素成分)を検出する。
【0040】
基体1は、ジルコニアを主成分とする固体電解質からなり、軸線方向Xに延びる形態で、軸線方向先端側X1(
図1において下側)が閉塞されると共に、軸線方向基端側X2(
図1において上側)が開放された有底筒状をなしている。基体1の軸線方向Xの略中間部には、径方向外側に突出する環状の鍔部2が形成されている。このような基体1は、例えば、公知のプレス成形法を用いて、ジルコニアを主成分とする固体電解質を有底筒状の成形体とした後、これを1500℃程度の温度で2時間程度焼成して得ることができる。
【0041】
主体金具31は、その中空筒内部に、金属製パッキン34,35,36、インシュレータ37,38、及びタルク粉末39を介在させて、検出素子20(基体1)の鍔部2を係合保持している。これにより、検出素子20は、その先端部20bを主体金具31の先端側開口部31bから突出させた状態で、主体金具31によって保持されている。
【0042】
さらに、主体金具31には、主体金具31の先端側開口部31bから突出する検出素子20の先端部20bを覆うように、プロテクタ40が取り付けられている。このプロテクタ40は、外側プロテクタ40aと内側プロテクタ40bとを有する二重構造をなしている。外側プロテクタ40a及び内側プロテクタ40bには、排気ガスを通過させる複数の通気口が形成されている。このため、基体1の外表面に形成されている外側電極23に、プロテクタ40の通気口から導入された排気ガスを接触させることができる。
【0043】
また、主体金具31の後端側(
図1において上側)に位置する接続部31cに、筒状の金属外筒41の先端部が、外側からの全周レーザ溶接により固着されている。また、この金属外筒41の後端側開口部は、フッ素ゴムで構成されたグロメット42を嵌入させて、加締封止されている。このグロメット42の先端側(
図1において下側)には、絶縁性のアルミナセラミックからなるセパレータ43が設けられている。そして、グロメット42の貫通孔及びセパレータ43の貫通孔(保持孔43d)内には、センサ出力リード線44,45及びヒータリード線46,47が挿入されている。ヒータリード線46,47は、セラミックヒータ100のヒータ端子部材130に接続されている。
【0044】
なお、グロメット42の中央にも、軸線AXに沿う貫通孔が形成されている。この貫通孔には、撥水性及び通気性を兼ね備えるシート状のフィルタ48によって被覆された金属パイプ49が嵌め込まれている。これにより、ガスセンサ30の外部に存在する大気を、フィルタ48を通じて金属外筒41内に導入し、さらには、検出素子20の内部に導入して、内側電極21に接触させることができる。
【0045】
セラミックヒータ100は、軸線方向X(軸線AXに沿う方向、
図1において上下方向)に延びる棒状(詳細には、円柱形状)をなしている。このセラミックヒータ100は、
図2に示すように、セラミック基体102と、電極パッド121と、ヒータ端子部材130と、ロウ材部124とを有している。このうち、セラミック基体102は、軸線方向Xに延びる棒状で、内部に発熱抵抗体141を有している(
図2、
図3参照)。
【0046】
電極パッド121は、パッド本体部121bと、これを被覆するニッケルメッキ層121cとからなる(
図5、
図6参照)。パッド本体部121bは、タングステン、モリブデンから選ばれる少なくとも1種類以上の元素からなる主体材料(本実施形態では、タングステン)を90重量%以上含み、絶縁性セラミック(本実施形態では、アルミナ粉末)の含有量が10重量%以下のパッド状の金属層である。なお、パッド本体部121bに含有させる絶縁性セラミックとしては、アルミナ以外に、ムライト、スピネル等を用いることもできる。
【0047】
また、ニッケルメッキ層121cの一部(ロウ材部124と接触する部位)は、ロウ材部124に拡散している。これは、後述する接合工程において、電極パッド121と端子接続部133とをロウ材124Aにより接合したときに、ニッケルメッキ層121cの一部(ロウ材124Aと接触する部位)が、ロウ材124A(ロウ材部124)中に拡散してゆくからである。
【0048】
電極パッド121は、セラミック基体102のうち軸線方向基端側X2(
図1において上側)の表面102dに設けられ、ビア144(充填ビア導体)を通じて、発熱抵抗体141に導通している(
図2、
図3、
図5参照)。この電極パッド121は、軸線方向Xに平行に延びる第1パッド側縁121j及び第2パッド側縁121kと、これらに対し軸線方向先端側X1に位置し、第1パッド側縁121jの先端121j1と第2パッド側縁121kの先端121k1とを結ぶパッド先端縁121dとを有する(
図4及び
図7参照)。
【0049】
なお、パッド先端縁121dは、平面視で軸線AXに直交する先端辺121f(換言すれば、軸線AXに直交する平面上に位置する先端辺121f)と、この先端辺121fの一端と第1パッド側縁121jの先端とを結ぶ円弧状の第1コーナー部121gと、直交辺121fの他端と第2パッド側縁121kの先端とを結ぶ円弧状の第2コーナー部121hとからなる(
図7参照)。なお、
図7は、
図4においてメッキ層125を取り除いた(透視した)図に相当する。
【0050】
ヒータ端子部材130は、ヒータリード線46,47を通じて、図示しない外部回路と電気的に接続する。このヒータ端子部材130は、板状の端子接続部133と、加締部135と、両者を接続する接続部134とを有している(
図2参照)。加締部135は、ヒータリード線46,47(
図1参照)の芯線を、それぞれ、加締によって把持し、ヒータリード線46,47と電気的に接続する。
【0051】
端子接続部133は、ニッケル合金からなり、電極パッド121上のうち第1パッド側縁121jと第2パッド側縁121kとの間の中央で、且つ、パッド先端縁121dよりも軸線方向基端側X2(
図4、
図5、
図7において右側)に配置されている。
【0052】
ロウ材部124は、Agを含むロウ材124A(詳細には、Agを72wt%、Cuを28wt%含有するロウ材)からなり、電極パッド121上に配置されている。このロウ材部124は、電極パッド121と端子接続部133との間に介在して、これらを接合している(
図5、
図6参照)。
【0053】
なお、本実施形態では、ロウ材部124を、メッキ層125で被覆している。これにより、ロウ材部124の腐食を防止することができる。また、後述するマイグレーションの発生を抑制することもできる。なお、メッキ層125は、ニッケルメッキ、クロムメッキ、及び、金メッキのいずれかからなる。
【0054】
ここで、セラミック基体102について詳細に説明する。
図3に示すように、セラミック基体102は、丸棒状(円柱形状)のアルミナセラミック製の碍管101の外周に、絶縁性の高いアルミナセラミック製のグリーンシート140,146が巻き付けられ、これらを焼成することにより製造される。
【0055】
グリーンシート140上には、発熱抵抗体141(ヒータパターン)が形成されている。発熱抵抗体141は、発熱部142と、発熱部142の両端にそれぞれ接続される一対のリード部143(陽極と陰極)とを備える。発熱抵抗体141の材料としては、タングステンやモリブデン等の種々の導電材料を採用可能である。グリーンシート140の後端側には、各リード部143に2個のビア144が形成されている。このビア144を介して、電極パッド121が、発熱抵抗体141のリード部143と電気的に接続されている。
【0056】
グリーンシート146は、グリーンシート140(発熱抵抗体141が形成された面)に圧着されている。グリーンシート146のうち、グリーンシート140が圧着された面と反対側の面には、アルミナペーストが塗布されている。このペースト塗布面を内側にしてグリーンシート140,146が碍管101に巻き付けられ、外周から内向きに押圧されることにより、セラミックヒータ成形体が形成される。その後、セラミックヒータ成形体が焼成されることにより、セラミック基体102が形成される。
【0057】
セラミックヒータ100は、検出素子20の内部(基体1の筒内)に配置されると共に、内側端子部材32によって姿勢が保持されている(
図1参照)。詳細には、セラミックヒータ100のセラミック基体102が、内側端子部材32(接触端子部材)の素子挿入部32kによって把持される形態で、その先端部102bが、検出素子20の内側電極21に接触した状態に保持されている。これにより、セラミックヒータ100によって、検出素子20(基体1)を適切に加熱することができる。
【0058】
また、外側端子部材50は、ステンレス鋼板からなり、軸線AXの直交方向断面が略C字状をなす外嵌部50pと、この外嵌部50pの後端側中央付近から後端側に延びるセパレータ挿入部50sと、さらにこの後端側に位置するコネクタ部50cとを含む。このうちコネクタ部50cは、センサ出力リード線45の芯線を加締めにより把持して、外側端子部材50とセンサ出力リード線45とを電気的に接続する。
【0059】
また、セパレータ挿入部50sは、セパレータ43内に挿入されると共に、このセパレータ挿入部50sから分岐して突出するセパレータ当接部50dが、セパレータ43の保持孔43dに弾性的に当接することにより、外側端子部材50自身をセパレータ43内に保持している。また、外嵌部50pは、検出素子20の外側電極23と接触している。これにより、外側電極23と外側端子部材50とが電気的に接続する。
【0060】
また、内側端子部材32(接触端子部材に相当する)は、ステンレス銅板からなり、軸線AXの直交方向断面が略馬蹄形状の素子挿入部32kと、素子挿入部32kの後端側中央付近から後端側に延びるセパレータ挿入部32sと、さらにこの後端側に位置するコネクタ部32cとを有する。このうち、コネクタ部32cは、センサ出力リード線44の芯線を加締めにより把持して、内側端子部材32とセンサ出力リード線44とを電気的に接続する。
【0061】
また、セパレータ挿入部32sは、セパレータ43内に挿入されると共に、このセパレータ挿入部32sから分岐して突出するセパレータ当接部32dが、保持孔43dに弾性的に当接して、内側端子部材32自身をセパレータ43内に保持している。
また、内側端子部材32の素子挿入部32kは、検出素子20の内部に挿入されて、内側電極21と接触している。これにより、内側電極21と内側端子部材32とが電気的に接続する。
【0062】
この内側端子部材32は、電極パッド121に対して相対的に負電位となる。また、この内側端子部材32は、パッド先端縁121dよりも軸線方向先端側X1(
図1において下側)の位置で、セラミック基体102に接触している(
図1参照)。詳細には、内側端子部材32の素子挿入部32kが、セラミック基体102を把持する形態で、セラミック基体102に接触している。
【0063】
このガスセンサ30では、外側電極23と内側電極21との間に所定の電圧を印加すると、外側電極23に接触する排気ガス(被測定ガス)中の酸素濃度と、内側電極21に接触する大気の酸素濃度との濃度差に応じた電流が流れる。この電流値を検知することで、排気ガス中の酸素濃度を把握することができる。
【0064】
ところで、従来のように、電極パッド121の先端縁121dまでロウ材部が配置されている場合には、ロウ材部及びセラミック基体の表面上に大気中の水分が付着することで、セラミック基体の表面上において、ロウ材部から内側端子部材32(詳細には、セラミック基体に接触する素子挿入部32k)に向かって、ロウ材に含まれる金属が移動するマイグレーションが発生し、ロウ材部と接触端子部材との間で短絡する虞がある。特に、Agを含有するロウ材を用いた場合は、ロウ材部と内側端子部材32の素子挿入部32kとの間でマイグレーションが発生しやすくなる。
【0065】
これに対し、本実施形態では、ロウ材部124のうち軸線方向先端側X1(
図4及び
図7において左側)の縁を構成するロウ材先端縁124b(ロウ材部124の先端縁)が、軸線方向先端側X1に凸の円弧形状で、パッド先端縁121dから軸線方向基端側X2(
図4及び
図7において右側)に離れている。
【0066】
このように、Agを含有するロウ材部124のロウ材先端縁124bを、パッド先端縁121dと離間させることで、ロウ材部124と内側端子部材32の素子挿入部32kとの間において、Agのマイグレーションを発生し難くできる。
【0067】
ところで、パッド先端縁121dのうち、第1コーナー部121g及び第2コーナー部121hは電界が集中しやすいので、Agのマイグレーションは、特に、第1コーナー部121g及び第2コーナー部121hにおいて発生しやすくなる。このため、Agを含有するロウ材124Aは、できる限り、第1コーナー部121g及び第2コーナー部121hから遠ざけるのが好ましい。
【0068】
これに対し、本実施形態では、ロウ材先端縁124bを、軸線方向先端側X1に凸の円弧形状としている(
図4及び
図7参照)。これにより、ロウ材部124を、第1コーナー部121g及び第2コーナー部121hから大きく離すことができる。従って、ロウ材部124と内側端子部材32(素子挿入部32k)との間におけるAgのマイグレーションを、より一層発生し難くできる。
【0069】
また、本実施形態では、ロウ材先端縁124b(ロウ材部124の先端縁)が、第1パッド側縁121j及び第2パッド側縁121kに届く形態(換言すれば、第1パッド側縁121jから第2パッド側縁121kまで延びる形態)とされている。
【0070】
しかも、このロウ材部124が、電極パッド121のうちロウ材先端縁124bよりも軸線方向基端側X2の全領域にわたって配置されている(
図4〜
図7参照)。すなわち、電極パッド121のうちロウ材先端縁124bよりも軸線方向基端側X2(
図4、
図6、及び
図7において右側)の領域では、ロウ材部124が、第1パッド側縁121j、第2パッド側縁121k、及びパッド基端縁121mに届いている。これにより、電極パッド121と端子接続部133との接合強度を高めることができる。なお、パッド基端縁121mは、第1パッド側縁121j及び第2パッド側縁121kよりも基端側に位置し、第1パッド側縁121jの基端と第2パッド側縁121kの基端とを結ぶ縁である。
【0071】
また、本実施形態では、後述する接合工程において、板状の端子接続部133を、電極パッド121上のうち第1パッド側縁121jと第2パッド側縁121kとの間の中央に配置した状態で、溶融したロウ材124Aを、電極パッド121及び端子接続部133に接触させて、電極パッド121と端子接続部133との間に浸透させると共に、電極パッド121上に濡れ拡がらせて、電極パッド121と端子接続部133とをロウ材124Aにより接合している。
【0072】
ところで、上述のようにして、ロウ材124Aにより電極パッド121に端子接続部133を接合(ロウ付け)するとき、溶融したロウ材124Aの一部が、端子接続部133の先端から軸線方向先端側X1に濡れ拡がるが、その濡れ拡がる距離は、端子接続部133の板厚Tに応じて決まる。
【0073】
後述する試験結果より、端子接続部133の先端から軸線方向先端側X1へのロウ材の濡れ拡がり距離は、端子接続部133の板厚Tの6.6倍程度になることが判明した。従って、端子接続部133を、パッド先端縁121dから軸線方向基端側X2へ端子接続部133の板厚Tの6.6倍よりも大きな距離を空けて配置しておけば、ロウ材124A(ロウ材部124)が、パッド先端縁121dまで濡れ拡がる(パッド先端縁121dに届く)のを抑制することができる。
【0074】
このため、本実施形態の接合工程では、端子接続部133を、パッド先端縁121dから軸線方向基端側X2へ端子接続部133の板厚Tの6.6倍よりも大きな距離Eを空けて配置した状態で、上述のようにして、電極パッド121と端子接続部133とをロウ材124Aにより接合している。これにより、接合工程後、ロウ材部124の先端縁(ロウ材先端縁124b)とパッド先端縁121dとを、確実に離間させることができる。
【0075】
また、本実施形態の端子接続部133は、一定の幅寸法Wで軸線方向Xに延びる板状をなしている。しかも、この端子接続部133の先端縁(端子先端縁133d)を、軸線方向先端側X1(
図4及び
図7において左側)に凸で、幅寸法Wの0.5倍以上0.8倍以下の半径Rを有する円弧形状としている(
図4及び
図7参照)。なお、本実施形態では、幅寸法W=1.0mmとしている。
【0076】
端子先端縁133dを上述のような形状とすると、前述のように電極パッド121と端子接続部133とをロウ材124Aで接合するとき、ロウ材124Aが、端子先端縁133dから、軸線方向先端側X1(
図4及び
図7において左側)に向けて、左右ほぼ均等(
図4及び
図7において上下ほぼ均等)に濡れ拡がる。すなわち、電極パッド121の第1パッド側縁121j側におけるロウ材124Aの濡れ拡がりと、第2パッド側縁121k側におけるロウ材124Aの濡れ拡がりとを、同程度にできる。
【0077】
これにより、「第1パッド側縁121j側及び第2パッド側縁121k側のうち一方側の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなることで、一方側においてロウ材124Aが電極パッド121の先端縁121dに届いてしまうこと」を防止できる。これにより、接合工程後、ロウ材部124の先端縁(ロウ材先端縁124b)とパッド先端縁121dとを、確実に離間させることができる。すなわち、ロウ材部124を、端子接続部133よりも軸線方向先端側X1に拡がる形態としながらも、ロウ材先端縁124bが、パッド先端縁121dから軸線方向基端側X2に離れた形態となる。
【0078】
次に、本実施形態にかかるガスセンサ30の製造方法について説明する。
まず、セラミックヒータ100を製造する。具体的には、
図3に示すように、発熱抵抗体141及び電極パッド121等が形成された、アルミナセラミック製のグリーンシート140を用意する。さらに、アルミナセラミック製のグリーンシート146を用意する。そして、グリーンシート146をグリーンシート140に圧着し、これらを碍管101に巻き付けて、セラミックヒータ成形体を形成する。その後、セラミックヒータ成形体を焼成することにより、セラミック基体102を得る。
【0079】
次に、ヒータ端子部材130を用意した後、接合工程に進み、ロウ材124Aにより、セラミック基体102の表面上に位置する電極パッド121とヒータ端子部材130の端子接続部133とを接合する。具体的には、
図7に示すように、端子接続部133を、電極パッド121上のうち、第1パッド側縁121jと第2パッド側縁121kとの間の中央で、且つ、パッド先端縁121dから軸線方向基端側X2へ端子接続部133の板厚T(
図5参照)の6.6倍よりも大きな距離Eを空けた位置に配置する。
【0080】
次いで、ロウ材124Aを、電極パッド121及び端子接続部133に接触する位置に配置した状態で、加熱し溶融させる。これにより、溶融したロウ材124Aを、電極パッド121及び端子接続部133に接触させて、電極パッド121と端子接続部133との間に浸透させると共に、電極パッド121上に濡れ拡がらせる。その後、ロウ材124Aを冷却することで、ロウ材部124が形成され、ヒータ端子部材130(端子接続部133)が電極パッド121に接合する。これにより、
図2に示すセラミックヒータ100が完成する。
【0081】
本実施形態では、接合工程において、溶融したロウ材124Aが、電極パッド121の先端縁121dまで濡れ拡がる(パッド先端縁121dに届く)ことがない。端子接続部133を、パッド先端縁121dから軸線方向基端側X2へ端子接続部の板厚Tの6.6倍よりも大きな距離Eを空けて配置しているからである。従って、ロウ材部124を、電極パッド121の先端縁121dから離間させることができる。
【0082】
しかも、本実施形態では、端子接続部133の先端縁(端子先端縁133d)を、軸線方向先端側X1(
図7において左側)に凸で、幅寸法Wの0.5倍以上0.8倍以下の半径Rを有する円弧形状としている(
図7、
図8参照)。これにより、接合工程において、ロウ材124Aが、端子先端縁133dから、軸線方向先端側X1(
図7において左側)に向けて、左右(
図7において上下)ほぼ均等に濡れ拡がる。すなわち、電極パッド121の第1パッド側縁121j側におけるロウ材124Aの濡れ拡がりと、第2パッド側縁121k側におけるロウ材124Aの濡れ拡がりとを、同程度にできる。
【0083】
従って、「第1パッド側縁121j側及び第2パッド側縁121k側のうち一方側の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなることで、一方側においてロウ材124Aが電極パッド121の先端縁121dに届いてしまうこと」を防止できる。これにより、接合工程後、ロウ材先端縁124bとパッド先端縁121dとを、確実に離間させることができる。すなわち、ロウ材部124が、パッド先端縁121dに届くことなく、端子接続部133よりも軸線方向先端側X1に拡がる形態にできる。
【0084】
さらには、ロウ材先端縁124bを、軸線方向先端側X1に凸の円弧形状とすることができる(
図7参照)。これにより、ロウ材部124を、第1コーナー部121g及び第2コーナー部121hから大きく離すことができる。
【0085】
その後、組立工程において、公知の組立方法(例えば、特開2004−053425参照)により、上述のようにして製造したセラミックヒータ100、検出素子20、主体金具31、外側端子部材50、及び、内側端子部材32等を組み付ける。これにより、
図1に示すガスセンサ30が完成する。
【0086】
(端子接続部の先端縁形状の検討)
接合工程において、溶融したロウ材が電極パッド上を先端側に濡れ拡がる形態は、端子接続部の先端縁(端子先端縁)の形状によって異なると考えられる。特に、ロウ材が、端子先端縁から、軸線方向先端側に向けて、左右ほぼ均等に濡れ拡がるようにできれば、ロウ材が電極パッドの先端縁まで濡れ拡がる(パッド先端縁に届く)のを、抑制することができるといえる。反対に、電極パッドの第1パッド側縁側及び第2パッド側縁側のうち一方側の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなると、一方側においてロウ材が電極パッドの先端縁に届きやすくなると考えられる。そこで、端子先端縁の好ましい形状を調査した。
【0087】
具体的には、以下のように端子先端縁の形状が異なる端子接続部(サンプルA〜F)を用意し、接合工程におけるロウ材124Aの濡れ拡がり形態を調査した。
サンプルA(比較形態)は、
図9に示すように、一定の幅寸法Wで軸線方向Xに延びる平板状で、端子先端縁233dを直線形状とした端子接続部233である。また、サンプルB〜Fは、一定の幅寸法Wで軸線方向Xに延びる平板状で、端子先端縁を、軸線方向先端側に凸の円弧形状とした端子接続部である点で共通しているが、端子先端縁の円弧の半径Rが異なっている。
【0088】
具体的には、サンプルBでは、端子先端縁の半径Rを、幅寸法Wの0.9倍としている。また、サンプルCでは、端子先端縁の半径Rを、幅寸法Wの0.8倍としている。また、サンプルDでは、端子先端縁の半径Rを、幅寸法Wの0.7倍としている。また、サンプルEでは、端子先端縁の半径Rを、幅寸法Wの0.6倍としている。また、サンプルFでは、端子先端縁の半径Rを、幅寸法Wの0.5倍としている。なお、幅寸法Wは、いずれも1.0mmである。サンプルA,Bは比較形態、サンプルC〜Fは実施形態である。
【0089】
各サンプルの結果を表1に示す。なお、表1では、
図8に示すように、ロウ材124Aが、端子先端縁から軸線方向先端側X1に向けて左右ほぼ均等に濡れ拡がった場合を、○で示している。一方、
図9に示すように、電極パッド121の第1パッド側121j縁側及び第2パッド側縁121k側のうち一方側(
図9の例では第2パッド側縁121k側)の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなった場合は、×で示している。
【0090】
詳細には、
図8及び
図9に示すように、ロウ材124Aの先端縁124Bが第1パッド側縁121jと接触する位置(第1接触点P1とする)、及び、ロウ材124Aの先端縁124Bが第2パッド側縁121kと接触する位置(第2接触点P2とする)を検出し、第1接触点P1と第2接触点P2との軸線方向位置の差Dが閾値Th未満となった場合は、ロウ材124Aが左右ほぼ均等に濡れ拡がった(○)と判断し、閾値Th以上となった場合は、一方側の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなった(×)と判断している。
なお、閾値Thは、端子接続部133の幅寸法Wの半分(すなわち、1.0mm/2=0.5mm)とした。
【0092】
表1に示す結果より、端子接続部の先端縁(端子先端縁)は、軸線方向先端側に凸で、幅寸法Wの0.5倍以上0.8倍以下の半径Rを有する円弧形状とするのが良いと言える。端子先端縁をこのような形状とすることで、接合工程において、ロウ材124Aが、端子先端縁から、軸線方向先端側X1(
図8において左側)に向けて、左右(
図8において上下)ほぼ均等に濡れ拡がるようにできた。すなわち、電極パッド121の第1パッド側縁121j側におけるロウ材124Aの濡れ拡がりと、第2パッド側縁121k側におけるロウ材124Aの濡れ拡がりとを、同程度にできた。
【0093】
ところで、パッド先端縁121dのうち、第1コーナー部121gと第2コーナー部121hとは電界が集中するので、Agのマイグレーションは、特に、第1コーナー部121g及び第2コーナー部121hにおいて発生しやすくなる。このため、Agを含有するロウ材124Aは、できる限り、第1コーナー部121g及び第2コーナー部121hから遠ざけるのが好ましい。この観点からも、ロウ材は、端子先端縁から軸線方向先端側に向けて、左右ほぼ均等に濡れ拡がるのが好ましい。
【0094】
具体的には、
図8に示すように、ロウ材124Aが、端子先端縁から軸線方向先端側X1に向けて左右ほぼ均等に濡れ拡がった場合は、ロウ材124Aの先端縁124Bを、第1コーナー部121g及び第2コーナー部121hから大きく離すことができる。一方、
図9に示すように、電極パッド121の第1パッド側121j縁側及び第2パッド側縁121k側のうち一方側(
図9の例では第2パッド側縁121k側)の濡れ拡がりの程度が他方側に比べて大きくなった場合は、ロウ材124Aの先端縁124Bが、一方のコーナー部(
図9の例では第2コーナー部121h)に近づく形態となる。
【0095】
なお、この試験では、いずれのサンプルについても、端子接続部を、パッド先端縁から軸線方向基端側へ、端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離(10倍)を空けて配置しておいた。このため、いずれのサンプルにおいても、ロウ材124Aが、電極パッド121の先端縁121dまで濡れ拡がる(パッド先端縁121dに届く)ことはなかった。
【0096】
(ロウ材濡れ拡がり試験)
実施形態の接合工程において、ロウ材124Aにより、電極パッド121と端子接続部133とを接合するとき、電極パッド121上において、溶融したロウ材124Aの一部が、端子接続部133の先端から軸線方向先端側X1に濡れ拡がるが、その濡れ拡がる距離は、端子接続部133の板厚に応じて変動すると考えられる。そこで、端子接続部133の板厚を一定(0.3mm)として、パッド先端縁121dから端子接続部133までの軸線方向距離Eを変動させて、電極パッド121上においてロウ材124Aが濡れ拡がる距離を調査した。
【0097】
具体的には、パッド先端縁121dから端子接続部133までの軸線方向距離E(
図7参照)を、0.6mm〜4.6mmの範囲内で異ならせて、接合工程において、ロウ材124Aが、パッド先端縁121dまで濡れ拡がる(届く)か否かを調査した。その結果を表2に示す。なお、表2では、ロウ材124Aがパッド先端縁121dまで濡れ拡がった(届いた)場合を×、パッド先端縁121dまで濡れ拡がらなかった(届かなかった)場合を○で示している。
【0099】
表2に示すように、軸線方向距離Eを1.8mm以下とした場合には、ロウ材124Aが、パッド先端縁121dまで濡れ拡がった(届いた)。一方、軸線方向距離Eを2.0mm以上とした場合には、ロウ材124Aが、パッド先端縁121dまで濡れ拡がらなかった(届かなかった)。この結果より、端子接続部133の先端から軸線方向先端側X1へのロウ材124Aの濡れ拡がり距離は、端子接続部133の板厚の6.6倍程度になるといえる。なお、端子接続部133の板厚は0.3mmである。
【0100】
以上の結果より、端子接続部を、パッド先端縁から軸線方向基端側へ、端子接続部の板厚の6.6倍よりも大きな距離を空けて配置しておけば、ロウ材(ロウ材部)が、電極パッドの先端縁まで濡れ拡がる(パッド先端縁に届く)のを確実に防止することができるといえる。
【0101】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。