(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723384
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】水素誘起応力割れに曝される海中設備の設計方法
(51)【国際特許分類】
G06F 17/50 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
G06F17/50 650C
G06F17/50 612G
G06F17/50 612H
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-542449(P2012-542449)
(86)(22)【出願日】2010年11月26日
(65)【公表番号】特表2013-527506(P2013-527506A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2010068336
(87)【国際公開番号】WO2011069847
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2013年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】505347503
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】トグナレッリ,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】ディ・シスト,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリッチ,ミケランジェロ
(72)【発明者】
【氏名】メルロ,ロベルト
【審査官】
早川 学
(56)【参考文献】
【文献】
RECOMMENDED PRACTICE DNV-RP-F112 DESIGN OF DUPLEX STAINLESS STEEL SUBSEA EQUIPMENT EXPOSED TO CATHODIC PROTECTION,2008年10月,pp.1〜20,[検索日 2014.10.30],インターネット<URL: http://exchange.dnv.com/publishing/codes/download.asp?url=2008-10/rp-f112.pdf >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中配管システムに付随する水素誘起応力割れをコンピュータで評価する方法であって、
(a)前記コンピュータにより、前記海中配管システムの要素の一次元モデルを決定するステップと、
(b)前記コンピュータにより、少なくとも1つの点について前記一次元モデルから局所的応力評価を求めるために、少なくとも1つの伝達関数を前記少なくとも1つの点に適用するステップと、
(c)前記コンピュータにより、前記局所的応力評価を出力するステップと、
(d)前記コンピュータにより、第一の所定適合性について前記局所的応力評価を解析するステップと、
(e)前記コンピュータにより、前記局所的応力評価が適合しない場合に、前記要素向けの三次元サブモデルを決定及び実行し、第二の所定適合性向けの前記三次元サブモデルからの出力を解析するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記第一の所定適合性は線形水素誘起応力割れ適合性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三次元サブモデルからの前記出力は局所的歪み評価である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二の所定適合性は非線形水素誘起応力割れ適合性である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記要素は、屈曲部、T字部、マニホールド、結合部、溶接部、及びハブ部を含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
海中配管システムが水素誘起応力割れ評価に適合していることを検証するためにプロセッサ上で実行されるコンピュータ実行可能プログラムを格納したメモリを含むシステムであって、
前記プログラムが、
(a)伝達関数を生成するための伝達関数発生器コンポーネントと、
(b)前記伝達関数を実行するための伝達関数エンジンコンポーネントと、
(c)前記伝達関数をアーカイブするための伝達関数格納コンポーネントと、
(d)前記海中配管システムの要素の一次元モデルを決定するコンポーネントと、
(e)少なくとも1つの点について、前記一次元モデルから局所的応力評価を求めるために、少なくとも1つの伝達関数を前記少なくとも1つの点に適用するコンポーネントと、
(f)前記局所的応力評価を出力するコンポーネントと、
(g)第一の所定適合性について前記局所的応力評価を解析するコンポーネントと、
(h)前記局所的応力評価が適合しない場合に、前記要素向けの三次元サブモデルを決定及び実行し、第二の所定適合性向けの前記三次元サブモデルからの出力を解析するコンポーネントと、
を含む、
システム。
【請求項7】
前記伝達関数エンジンコンポーネントと前記伝達関数格納コンポーネントとが異なるコンピュータに配置されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記伝達関数格納コンポーネントは、コンピュータに、入力データを配管要素局所的応力値に変換するために、別のコンピュータシステムに配置された第二伝達関数エンジンコンポーネントに前記入力データを送信させる、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第一の所定適合性は線形水素誘起応力割れ適合性である、請求項6から8のいすれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記三次元サブモデルからの前記出力は局所的歪み評価である、請求項6から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記第二の所定適合性は非線形水素誘起応力割れ適合性である、請求項6から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記要素は、屈曲部、T字部、マニホールド、結合部、溶接部、及びハブ部を備える、請求項7から11のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に海中設備配管設計に関し、より具体的には、水素誘起応力割れ(HISC)に曝される海中配管システムの設計に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の化石燃料の使用量は、過去数十年にわたって急激に増加してきた。この成長に伴って、石油及びガス産業は、更に増加する消費者需要を満たすために、新しい石油及びガス資源の調査を拡大してきた。新しい石油及びガス資源の調査は今や、以前は探査が考えられなかった領域を含む。これらの新しい地域から石油及びガスを生産する必要性は、新たに発見された石油及びガス資源の生産に使用される設備の設計及び検証に関する一連の問題を提示した。
【0003】
かなりの石油及びガス資源を生産している新しい領域のうちの幾つかは、海底に位置している。海中環境において、フローライン及び生産設備に関する新しい問題によって、「水素誘起応力割れ」(HISC)と称されることもある、新しい種類の設備設計問題が生じている。一般的に、HISC問題は、2つの環境要因、具体的には水溶液中への設備の浸漬による、クロム合金鋼で構築された海中設備の表面におけるイオン水素の利用可能性によって作り出される。
【0004】
このようなHISC関連問題の結果は、合金鋼部品及び構造の脆弱化によって明らかになる。これに続く部品及び/又は構造故障が発生し、安全問題、周囲の海中立地への汚染による環境被害、及び設備立地に基づく高額な修理費用を招く可能性がある。故障した海中システムの解析は、石油及びガスの海中資源の獲得及び回収に使用される特定の材料(例えば二相及び超二相ステンレス鋼)で作られた海中システムに関する全体的な設計プロセスに、HISC要因の検討が含まれるべきであることを示している。
【0005】
海中石油及びガス生産システムを解析及び設計する現在の方法は、HISCの検討を許容する一方で、1組の条件の解析を完了するために、何時間ものコンピュータ演算時間を要する。例えば、第一の設計/評価ステップにおいて、中心線が配管システムの軸を表す、一次元フレームモデルが開発される。フレームモデルが完成した後、軸線は、有限の配管要素に置き換えられる。配管要素は、様々なタイプの動作及び非動作条件の全てをシミュレートすることができ、ASME要件の評価(すなわちASME B31.8)を可能にする。
【0006】
第二ステップにおいて、配管要素は、部分的又は完全に、シェル要素に置き換えられる。置き換えられる要素の数は、検討中の設計の部分に依存する。配管要素と同様に、シェル要素も動作及び非動作条件の両方をシミュレートすることができる。しかしながら、設計プロセスにおけるシェル要素の重要な特徴は、シェル要素が局所的応力の予測、従って線形HISCの評価(すなわちDNV RP−F112)を可能にすることである。しかしながら、負荷条件の多くの集合、及びこの第二ステップにおけるシェ要素の処理に付随する計算実行の関連する集合は、時間及び計算要件の両方の意味において法外に高くなる可能性がある。
【0007】
第三ステップにおいて、ステップ2の線形解析に基づく必要条件に適合していないと見なされた要素は、三次元サブモデルに置き換えられる。解析は、非線形HISC条件の評価を可能にする弾塑性材料特性を用いて実行される。三次元サブモデル解析の結果は、解析される要素上の局所的歪みの予測を可能にする。
【発明の概要】
【0008】
従って、市場圧力は、既存の手法の解析時間及び計算要件に関して、法外に高額な費用を伴わずに海中環境の厳しさに耐えられる海中の石油及びガス設備を設計する方法を求めている。
【0009】
実施例は、海中環境及びHISCに付随する問題に耐えられる、石油及びガス回収のための海中部品及びシステムを解析及び設計するためのシステム及び方法に関する。この方法論は、各タイプの配管要素向けの伝達関数(TF)の開発を含む。例えば、伝達関数を、海中配管に付随する屈曲部、T字部、結合部、溶接部等用に開発できる。
【0010】
一実施例によれば、現在の方法論の第一ステップから収集されたデータは、適切なTFに提供される。適切な伝達関数は、調査中の配管要素に基づいている。TFは、収集された配管データを、解析のユーザ指定条件に合わせて配管要素に関連付けられた局所的応力に変換する。しかしながら、このような利点は、これらが添付の特許請求の範囲のうちの1つ以上に明確に挙げられる程度までを除いて、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことは、当業者によって理解されるだろう。
【0011】
別の実施例によれば、各条件集合のための新しい伝達関数を開発することなく、異なる条件を用いて対象の配管要素に対して一連のシミュレーションを実行可能である。一連のシミュレーションの結果は、異なる条件に基づいて、局所的応力のプロファイルを作り出し、関連する配管要素のより正確で信頼できる設計を可能にする。すると、TFによって提供される線形HISC解析に適合しないと判定されたいずれの配管要素も、既存のHISC解析の先に記載された第三ステップによって解析可能である。既存のHISC解析の時間及び資源が集中する第二ステップの廃止は、現在の産業及び市場の要求によって求められる経済的で適時な解析及び設計位相を提供しながら、海中環境の条件に耐えられる海中石油及びガスシステムの設計を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】背景技術に関する3つの異なるシミュレーションを表すシステムモデルを示す図である。
【
図2】3つの異なるタイプのシミュレーションにおいて必要なFEM要素の量を説明するための、90度の屈曲部を有する配管を示す図である。
【
図3】一実施例による、配管モデル、伝達関数、及び三次元サブモデルに基づいてHISC評価を行う方法を示す図である。
【
図4】一実施例による、伝達関数を生成し、一連のユーザ定義条件に基づいてHISC評価を行う方法を示す図である。
【
図5】一実施例による、伝達関数の生成及びHISC評価の実行に付随する計算を実行するための一般的な計算環境を示す図である。
【
図6】一実施例による、伝達関数発生器、伝達関数エンジン、及び伝達関数格納装置を備える伝達関数コンポーネントを示す図である。
【
図7】一実施例による、伝達関数の誘導に付随する代表的な独立変数を説明する、屈曲配管要素を示す図である。
【
図8】一実施例による、屈曲配管要素に対して作用する力及びモーメントを説明する、屈曲配管要素を示す図である。
【
図9】一実施例による、屈曲配管要素に対する最大応力の予測位置を説明する、屈曲配管要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施例の詳細な説明は、添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号で、同じ又は類似の要素を識別する。また、以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0015】
これらの実施例による伝達関数生成及び生成された伝達関数のHISC評価システムでの使用に関する以下の議論の背景を提供するために、
図1は、現在のシステム設計方法に付随する配管モデルを概略的に示す。前述のように、方法は、システム100によって示される3つのモデリングシステムを使用し、3つのステップを含む。第一ステップにおいて、配管システムのフレームモデルは、配管108を三次元配管の軸と一致させて構築される。フレームモデルを構築した後、この配管は、配管システムを表し、所望の配管システムに付随するデータ(面積、慣性等)を提供する、配管要素104に置き換えられる。第一ステップの結果は、配管モデル102の生成である。
【0016】
次に、第二ステップにおいて、第一ステップによって生成された配管モデルは、完全に又は部分的にシェル要素110に置き換えられる。結果的なシェルモデル106は、線形HISC条件の評価を可能にする、動作条件、偶発的な条件、ストロークの条件をシミュレートできる。このモデルの背後にある原動力は、配管要素の局所的応力の予測である。
【0017】
第三ステップに進むと、線形HISC評価が適合しているかを判定するために、各配管要素について判定がなされる。特定の配管要素が線形HISC評価に適合していないと判定された場合には、配管要素114について三次元サブモデル112が生成される。次に三次元サブモデル112が弾塑性材料特性を用いて実行され、非線形HISC評価を展開する。三次元サブモデル112を実行した後、その現在の設計に基づいて、配管要素の容認性に関して判定がなされる。
【0018】
ここで
図2及び現在の配管システム設計方法の別の実施例200を見ると、3つの異なるモデルの屈曲配管要素の描写は、異なるモデルの相対的な複雑性を表している。単軸要素202の屈曲部は、前述の第一ステップ102で使用されるモデルである。このモデルは、最低量の入力データ及び最低量の計算時間を必要とする。例えば、代表的な屈曲単軸要素202は12度、すなわち各要素の末端で6度ずつの自由度を有する。
【0019】
シェル要素206を備える屈曲配管要素204は、24度の自由度を有する各シェル要素206を備える、より複雑なモデルである。シェル要素206は、まとめると屈曲配管要素204の表面を表し、屈曲配管要素204の表面を表すのに必要な多数のシェル要素206に加えて、シェル要素206ごとにより多くの計算を必要とする。固体要素210を備える三次元サブモデル208は、屈曲部の全体構造をモデリングするので、最も複雑なモデルである。固体要素210及びシェル要素206は、類似の自由度と、これに伴って計算複雑性を有するが、三次元サブモデル208は、構造を定義するためにより多くの固体要素を必要とする。従って、固体要素でモデリングされた屈曲部に必要な計算時間は、シェル要素でモデリングされた屈曲部に必要な計算時間よりもはるかに長い。しかしながら、現在の設計方法において、第二ステップ106のシェルモデリングは、全配管システムにわたって実行されるが、その一方で第三ステップ112の三次元サブモデリングは、シェルモデル解析に基づいて線形HISCに適合しないと見なされた配管要素にのみ適用される。
【0020】
ここで
図3を参照すると、一実施例による、配管モデル、伝達関数、及び三次元サブモデルに基づいてHISC評価を行う方法300が示されている。ステップ302から始まり、配管システムを表す配管モデルが生成される。最初にフレームモデルが、システムの配管の軸を表す線で構築される。次に、枠線がその対応する配管要素に置き換えられる。各配管要素は、実際の配管システム構成を表す面積、慣性等の、関連する実データを提供する。
【0021】
次にステップ304において、各配管要素の配管モデルの結果が収集され、配管要素に関連付けられた伝達関数に供される。伝達関数は、配管モデルの力及びモーメントを後処理することによって、要素の局所的応力の予測を計算する。このような伝達関数を実施例によって決定する方法を、以下に記載する。次にステップ306において、計算された局所的応力値は、線形HISC適合性のために評価される。適合性は計算された局所的応力値を標準的な設計公差と比較することによって、判定される。具体的には、線形適合性は、各部品について:1)主方向の最大膜応力、2)主方向の最大膜及び曲げ応力、及び3)膜及び曲げ応力のみを用いるミーゼス(相当応力)をリスティングすることによって、評価される。
【0022】
ステップ308に進むと、配管要素が線形応力に適合するか否かの判定がなされる。配管要素が線形応力に適合しない場合には、方法300はステップ310に進む。ステップ310において、本方法は、三次元サブモデルを用いて配管要素をシミュレートする。三次元サブモデルは、配管要素上の局所的歪みを予測することによって、非線形HISC評価を実行する。配管要素が非線形HISC評価に適合しない場合には、配管要素の再設計が必要とされる。配管要素が非線形HISC評価に適合する場合には、方法300はステップ312に進み、その他いずれかの配管要素が評価を必要とするか否かについて判定がなされる。追加の配管要素が評価を必要とする場合には、方法300はステップ306に戻り、次の配管要素について繰り返す。例えば、非線形HISC適合性を一通り評価し、必要であれば、精密に評価する。一実施例によれば、前述の評価は、予測された歪みがHISC限界を十分に下回っていない配管要素についてのみ、行われる。この実施例による方法は、壁厚の5パーセント内外の結果をもたらし、壁厚に対する歪みのグラフを生成するが、当業者は、その他の限界も使用できることを理解するだろう。グラフは、応力が集中するいずれの部分についても、自動的に生成される。この実施例の別の態様において、グラフは、屈曲部の末端部分から規則的に離間した部分においても、生成される。
【0023】
ここで
図4を見ると、一実施例による、伝達関数を生成し、新しい伝達関数を生成することなく異なるユーザ定義条件を用いる反復計算に伝達関数を用いる方法400が、示されている。ステップ402から始まり、本方法は、配管要素に適用可能ないずれかのタイプの負荷について、配管要素寸法の組み合わせの集合を実行することによって伝達関数を生成する。次に、ステップ404において、ユーザ定義条件が、入力として伝達関数に提供される。ステップ406に進むと、伝達関数が実行され、伝達関数によって計算された局所的配管要素応力が収集される。
【0024】
次にステップ408において、ユーザ定義条件の異なる集合を用いる追加計算に関して、判定がなされる。ユーザ定義条件の別の集合を用いる追加変換が必要な場合には、本方法はステップ404に戻り、更新されたユーザ定義条件に基づいて新しい伝達関数を生成することなく、変換を繰り返す。この実施例による方法の最適化ポイントは、新しいユーザ定義条件に基づいて伝達関数を生成する必要性を伴わずに、異なるユーザ定義条件について局所的配管要素応力を計算する能力であることは、特筆すべきである。
【0025】
ここで
図5を参照すると、特許請求の対象が実現可能な、適切な計算システム環境500の例が示されている。計算システム環境500は、携帯機器向けの適切な計算環境の一例に過ぎず、特許請求の対象の使用又は機能性の範囲に付随するいずれの制限も示唆するように意図されないことは、特筆すべきである。更に、計算環境500は、例示的動作環境500に示される部品のいずれの1つの、又はいずれの組み合わせに対しても、特許請求の対象に関するいずれの依存性又は要件も示唆するように意図されるものではない。
【0026】
図5を参照すると、本明細書に記載の様々な態様を実現するための遠隔装置の例は、コンピュータ510の形態の汎用計算装置を含む。コンピュータ510の部品は、処理装置520、システムメモリ530、及びシステムメモリ530を含む様々なシステムコンポーネントを処理装置520に結合するシステムバス521を含むことができるが、これらに限定されない。システムバス521は、多様なバスアーキテクチャのいずれかを用いる、メモリバス又はメモリコントローラ、周辺機器用バス、及びローカルバスを含む、幾つかのタイプのバス構造のうちのいずれであってもよい。
【0027】
コンピュータ510は、多様なコンピュータ読み取り可能媒体を含むことができる。コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ510によってアクセス可能な、いずれの利用可能媒体であってもよい。一例として、ただし限定的ではないが、コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ格納媒体及び通信媒体を含み得る。コンピュータ格納媒体は、コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラムモジュール、又はその他のデータ等の情報の格納のためのいずれかの方法又は技術において実現される、揮発性及び不揮発性、並びにリムーバブル及び非リムーバブル媒体を含む。コンピュータ格納媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CDROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又はその他の光ディスク格納装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク格納装置又はその他の磁気格納装置、或いは所望の情報を格納するために使用可能であってコンピュータ510によってアクセス可能な、その他いずれかの媒体を含むが、これらに限定されない。通信媒体は、搬送波又はその他の搬送機構等の復調データ信号に含まれる、コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラムモジュール、又はその他のデータを具体化することができ、いずれかの適切な情報伝達媒体を含むことができる。
【0028】
システムメモリ530は、読み取り専用メモリ(ROM)及び/又はランダムアクセスメモリ(RAM)等の揮発性及び/又は不揮発性メモリの形態の、コンピュータ格納媒体を含むことができる。起動中等、コンピュータ510内の要素の間で情報を伝達するのに役立つ基本ルーチンを含む、基本入出力システム(BIOS)が、メモリ530に格納されてもよい。メモリ530は、処理装置520によってただちにアクセス可能な、及び/又は現在動作中の、データ及び/又はプログラムモジュールも、収容することができる。非限定的な例として、メモリ530は、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、その他のプログラムモジュール、及びプログラムデータも含むことができる。
【0029】
コンピュータ510は、その他のリムーバブル/非リムーバブル、揮発性/不揮発性コンピュータ格納媒体も、含むことができる。例えば、コンピュータ510は、非リムーバブル不揮発性磁気媒体に読み書きするハードディスクドライブ、リムーバブル不揮発性磁気ディスクに読み書きする磁気ディスクドライブ、及び/又はCD−ROM又はその他の光媒体等のリムーバブル不揮発性光ディスクに読み書きする光ディスクドライブを、含むことができる。例示的動作環境で使用可能な、その他のリムーバブル/非リムーバブル、揮発性/不揮発性コンピュータ格納媒体は、磁気テープカセット、フラッシュメモリカード、デジタル多用途ディスク、デジタルビデオテープ、固体RAM、固体ROM等を含むが、これらに限定されない。ハードディスクドライブは、インターフェース等の非リムーバブルメモリインターフェースを通じてシステムバス521に接続可能であり、磁気ディスクドライブ又は光ディスクドライブは、インターフェース等のリムーバブルメモリインターフェースによってシステムバス521に接続可能である。
【0030】
ユーザは、キーボード等の入力装置、又はマウス、トラックボール、タッチパッド、及び/又はその他のポインティングデバイス等のポインティングデバイスを通じて、コンピュータ510にコマンド及び情報を入力できる。その他の入力装置は、マイクロフォン、ジョイスティック、ゲームパッド、パラボラアンテナ、スキャナ等を含むことができる。これら及びその他の入力装置は、システムバス521に結合されたユーザ入力540及び関連するインターフェースを通じて処理装置520に接続可能であるが、パラレルポート、ゲームポート、又はユニバーサルシリアルバス(USB)等、その他のインターフェース及びバス構造によっても接続可能である。グラフィックサブシステムも、システムバス521に接続可能である。加えて、モニタ又はその他のタイプのディスプレイ装置を、出力インターフェース550等のインターフェースを経由してシステムバス521に接続可能であり、これは同様にビデオメモリと通信することができる。モニタに加えて、コンピュータは、スピーカ及び/又はプリンタ等、その他の周辺出力装置にも接続可能であり、これも出力インターフェース550を通じて接続可能である。
【0031】
コンピュータ510は、遠隔サーバ570等の1つ以上のその他の遠隔コンピュータとの論理接続を用いて、ネットワーク接続又は分散環境において動作可能であり、これは同様に、装置510とは異なる媒体能力を有することができる。遠隔サーバ570は、パーソナルコンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピアデバイス、又はその他の一般的なネットワークノード、及び/又はその他いずれかの遠隔媒体消費又は送信装置であってもよく、コンピュータ510に関して上述した要素のいずれか又は全てを含むことができる。
図5に示す論理接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)又は広域ネットワーク(WAN)等のネットワーク571を含むが、その他のネットワーク/バスを含むこともできる。このようなネットワーク環境は、家庭、オフィス、企業規模のコンピュータネットワーク、イントラネット、及びインターネットにおいて一般的である。
【0032】
LANネットワーク環境で使用される場合、コンピュータ510は、ネットワークインターフェース又はアダプタを通じてLAN571に接続される。WANネットワーク環境で使用される場合には、コンピュータ510は、モデム等の通信コンポーネント、又はインターネット等、WANを通じて通信を確立するその他の手段を含むことができる。内蔵又は外付けであってもよい、モデム等の通信コンポーネントは、入力540及び/又はその他の適切な機構において、ユーザ入力インターフェースを経由してシステムバス521に接続可能である。ネットワーク環境において、コンピュータ510に関連して示されるプログラムモジュール、又はその部分は、遠隔メモリ格納装置に格納可能である。図示及び記載されるネットワーク接続は例示的であり、コンピュータ間の通信リンクを確立するその他の手段が使用されることも可能であることは、理解されるべきである。
【0033】
ここで
図6を見ると、一実施例による伝達関数コンポーネント602は、伝達関数発生器604、伝達関数エンジン606、及び伝達関数格納装置608を備える。伝達関数コンポーネントは、この実施例において、計算環境510のシステムメモリ530に格納され、計算環境510の処理装置520によって実行されることは、特筆すべきである。伝達関数発生器は、配管要素への局所的応力を配管要素に印加される負荷と相互関連させる、配管要素に関連付けられた伝達関数の生成を提供する。特定位置(ノード)における単一負荷の二次伝達関数方程式は、以下のようになる:
SFi=c+(a
1×Ro)+(a
2×Ri)+(a
3×Rb)+(a
4×Ab)+(a
5×Ro×Ri)+(a
7×Ro×Rb)+(a
8×Ro×Ab)+(a
9×Ri×Rb)+・・・+(a
n+1×Ro
2)+(a
n+2×Rb
2)+…+(a
n+5*Ab
2) 数式1
ここでS
Fi=ある方向(i)の特定の力又はモーメント(F、M)によって発生した応力(S);
c=定数、a
1・・・a
n=係数、Ro=外径、Ri=内径、Ab=曲げ角度、Rb=曲げ半径であり、
図7に示される変数700も参照されたい。
応力分布は負荷に線形依存するという事実に基づいて、伝達関数は非単一負荷について、数式1によって評価されるように、ノードにおける非単一負荷とノードにおける応力との積として生成される(S
Fi@ノード=Li*S
Fi@ノート゛)。例えば、伝達関数は、各応力成分(例えば、半径方向応力、軸方向応力、周方向応力等)、及び評価された総分応力を備える各タイプの負荷について、
S半径
@ノート゛=L1×S
F1半径
@ノート゛+L2×S
F2半径
@ノート゛+L4×S
M1半径
@ノート゛・・・+L6×S
M3半径
@ノート゛
として生成され、
ここでS=応力、L=負荷、F=力、M=モーメントであり、
図8に示される力/モーメント800も参照されたい。周方向応力、軸方向応力等にも類似の数式が導き出されることは、特筆すべきである。実施例によれば、伝達関数は各々の負荷タイプについて生成され、従って総局所的応力は各々の負荷タイプの応力値を加算することによって計算されることも、特筆すべきである。応力は、周方向応力、半径方向応力等の分応力なので、総和が有効である。
【0034】
一実施例によれば、伝達関数は、応力が集中するノードについてのみ生成される。例えば屈曲部において、応力は、
図9に示されるような設計の下で、システムの3つの応力位置900のうちの1つに集中する。
図9において、図示される部分は、応力が集中する典型的な位置を示す。負荷組み合わせに基づいて、ある部分は、他よりも大きい応力を生じることになる。例えば、圧力は1/2角度部分を加圧し、その一方で面外運動は1/3角度部分を加圧する。更に、角度位置は、負荷組み合わせに基づいて変更可能である。精査された理由のため、伝達関数は、24カ所の異なる角度位置において生成される。最大値はいずれか2つの連続する位置の間に存在する可能性があり、従って最終評価は補間によって実行される。全体で、この実施例における屈曲部の解析は、位置、力成分、及び力のタイプに基づいて、232個の伝達関数を採用する。
【0035】
伝達関数エンジン606は、構造的入力データを局所的配管要素応力値に変換するために、先に構築された配管モデルからの必要なデータを用いる適切な伝達関数の実行を提供する。別の実施例において、伝達関数エンジン606は、一連の入力データ収集を通じてループし、入力データを対応する一連の配管要素局所的応力値に変換できる。或いは、局所的伝達関数エンジン606は、配管要素局所的応力値への入力データを処理するために、配管モデルから収集されたデータを、局所的伝達関数エンジン606に通信可能に接続された別のコンピュータ上に位置する遠隔伝達関数エンジン606に送信できる。このようにして、データ処理は、ローカルコンピュータ及び遠隔コンピュータのいずれか(又は両方)において実現可能である。
【0036】
伝達関数格納コンポーネント608は、後に別のシミュレーションを実行するために伝達関数が再利用されるように、生成された伝達関数の格納を提供する。非限定的な一例において、配管構成の変更の結果として新しいユーザ定義条件が出現するかも知れず、適用可能な伝達関数は、新しい伝達関数の集合を生成する必要性を伴わずに、呼び出し可能である。別の非限定例において、格納された伝達関数を、別のコンピュータシステムに送信し、遠隔地で格納及び実行することが可能である。
【0037】
本願において使用される際に、「コンポーネント」、「ディスプレイ」、「インターフェース」等の用語は、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、又はHISCに曝される海中設備の検証のためにシステムに適用される際の実行中のソフトウェアのうちのいずれかの、コンピュータ関連実態を指すように意図される。例えばコンポーネントは、プロセッサ上で実行される処理、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、実行のスレッド、プログラム、及びコンピュータであってもよいが、ただしこれらに限定されない。実例として、サーバ上で実行中のアプリケーション及びそのサーバは、いずれもコンポーネントであり得る。プロセス及び/又は実行のスレッド内に1つ以上のコンポーネントが存在してもよく、コンポーネントは、1つのコンピュータに局部集中してもよく、及び/又は2つ以上のコンピュータ、工業用制御装置、及び/又はこれらと通信するモジュールの間に分布されてもよい。加えて、本願において使用される際に、「システムユーザ」、「ユーザ」、「オペレータ」等の用語は、上記で参照されたコンピュータ関連実態を操作する人を指すように意図される。
【0038】
上記の実施例は、本発明の全ての局面において、限定的というよりむしろ、例示的であるように意図される。このため本発明は、当業者によって本明細書に含まれる説明から導出可能な、詳細な実行における多くの変形が可能である。このような変形及び修正は、以下の請求項によって定義される通りの本発明の範囲及び概念に含まれると見なされる。本願の説明において用いられる要素、行為、又は命令のいずれも、そのように明記されない限り、本発明にとって重要又は必須であると解釈されるべきではない。また、本明細書で使用される際に、冠詞の「a」は、1つ以上の事項を含むように意図される。