特許第5723436号(P5723436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5723436ウェブの間欠搬送方法および間欠搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5723436
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ウェブの間欠搬送方法および間欠搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/192 20060101AFI20150507BHJP
   B65H 20/14 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   B65H23/192
   B65H20/14
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-256127(P2013-256127)
(22)【出願日】2013年12月11日
【審査請求日】2015年2月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】北村 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】松尾 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐木 暁
(72)【発明者】
【氏名】柳原 英彦
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−213557(JP,A)
【文献】 特開2013−216450(JP,A)
【文献】 特開2001−328756(JP,A)
【文献】 特開2010−222071(JP,A)
【文献】 特開平02−025219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 20/00−20/40
B65H 23/00−27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のウェブへの所定の加工に応じて、当該ウェブを間欠的に搬送するウェブの間欠搬送方法であって、
前記ウェブを連続的に繰り出し供給する供給過程と、
ダンサローラの変位によって前記ウェブの張力を検出する第1検出過程と、
前記第1検出過程の検出結果に応じて、ウェブの送り量を操作して張力を調整する第1張力調整過程と、
前記ダンサローラから送り出されるウェブの張力をアキュムレータの手前で検出器によって検出する第2検出過程と、
前記第1張力調整過程で操作されたウェブの送り量および第2検出過程の検出結果に応じて、アキュムレータによるウェブの引込み量および繰出し量を操作して張力を目標値に調整しながらウェブを加工工程に間欠的に送り出す第2張力調整過程と、
前記アキュムレータによるウェブの引き込み開始と同期して加工工程の下流側でウェブを保持する保持過程と、
前記アキュムレータによるウェブの繰り出しに同期させて、ウェブを巻き取る巻取り過程と、
を備えたことを特徴とするウェブの間欠搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載のウェブの間欠搬送方法において、
前記第2張力調整過程は、アキュムレータによってウェブに気体を吹き付けながら非接触で引き込みおよび繰り出す
ことを特徴とするウェブの間欠搬送方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のウェブの間欠搬送方法において、
前記保持過程は、アキュムレータから下流側の複数の加工工程のうち優先度の高い工程の下流でウェブを保持する
ことを特徴とするウェブの間欠搬送方法。
【請求項4】
長尺のウェブへの所定の加工に応じて、当該ウェブを間欠的に搬送するウェブの間欠搬送装置であって、
前記ウェブを連続的に供給するウェブ供給部と、
前記ウェブ供給部から繰り出されたウェブの張力を検出するダンサローラと、
前記ウェブ供給部から連続的に繰り出されるウェブを、下流側の加工工程に間欠的に送り出すアキュムレータと、
前記ダンサローラから送り出されるウェブの張力をアキュムレータの手前で検出する検出器と、
前記加工工程の下流側でウェブの間欠送りに同期してウェブを保持する保持機構と、
加工後の前記ウェブを巻き取る巻取り部と、
前記ダンサローラの検出結果に応じて、ウェブ供給部からのウェブの繰出し量を操作して張力を調整するとともに、ウェブ供給部のウェブの繰出し量と検出器の検出結果に応じて、アキュムレータによるウェブの引込み量および繰出し量を操作して張力を目標値に調整しながら加工工程にウェブを間欠的に送り出す制御部と、
を備えることを特徴とするウェブの間欠搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載のウェブの間欠搬送装置において、
アキュムレータは、ウェブに気体を吹き付けながら非接触で引き込みおよび繰り出す
を備えたことを特徴とするウェブの間欠搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ、光学フィルム、樹脂フィルムなどの長尺のウェブを間欠的に搬送しながら加工を施すウェブの間欠搬送方法および間欠搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺のウェブを搬送する過程で、ウェブに皺や弛みの発生、厚みの変化および蛇行を防止するために、ウェブに一定の張力を付与している。例えば、長尺のグリーンシートを搬送する過程で、張力検出手段によってウェブの張力を検出し、当該検出結果と目標張力を比較する。比較の結果、偏差が生じた場合に、ダンサローラを変位させて張力変動を吸収させてウェブに一定の張力を付与している(特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001ー213557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の間欠搬送方法では、次のような問題が生じている。すなわち、原反ロールから連続的に繰り出されるウェブは、上流側でダンサローラによって張力を一定に調整しているにも関わらず、加工工程に搬送されるまでに伸びや皺が生している。その原因は、ガイドローラによる摩擦、或いはアキュームローラによるウェブの引き込み動作などによって不必要にウェブに作用する張力の影響であることが、発明者等の鋭意検討により分かった。また、アキュームローラによって貯留されたウェブを加工工程に送り出すときに、ウェブに作用する張力不足によって弛みや皺を発生させ、加工工程でウェブを精度よく加工することができない場合もあることが分かった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、間欠搬送されるウェブの送り量およびウェブに作用する張力を精度よく一定に保つことができるウェブの間欠搬送方法および間欠搬送装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0007】
すなわち、長尺のウェブへの所定の加工に応じて、当該ウェブを間欠的に搬送するウェブの間欠搬送方法であって、
前記ウェブを連続的に繰り出し供給する供給過程と、
ダンサローラの変位によって前記ウェブの張力を検出する第1検出過程と、
前記第1検出過程の検出結果に応じて、ウェブの送り量を操作して張力を調整する第1張力調整過程と、
前記ダンサローラから送り出されるウェブの張力をアキュムレータの手前で検出器によって検出する第2検出過程と、
前記第1張力調整過程で操作されたウェブの送り量および第2検出過程の検出結果に応じて、アキュムレータによるウェブの引込み量および繰出し量を操作して張力を目標値に調整しながらウェブを加工工程に間欠的に送り出す第2張力調整過程と、
前記アキュムレータによるウェブの引き込み開始と同期して加工工程の下流側でウェブを保持する保持過程と、
前記アキュムレータによるウェブの繰り出しに同期させて、ウェブを巻き取る巻取り過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
(作用・効果) この方法によれば、ウェブ供給部から繰り出されるウェブの張力をダンサローラによって一定に調整することにより、張力を一定に調整されたウェブをアキュムレータに送り出すことができる。また、アキュムレータの手前で張力を検出し、ダンサローラによって調整された張力の変化を検出した場合、当該変化量を考慮しつつアキュムレータによるウェブの引込み量および繰出し量を操作して張力を一定に保ったまま加工工程にウェブを間欠的に送り出すことができる。また、加工処理の施されたウェブを一定の張力を保持したまま巻き取り回収することができる。したがって、ウェブを高品位に加工および製造することができる。
【0009】
なお、上記方法において、第2張力調整過程では、アキュムレータによってウェブに気体を吹き付けながら非接触でウェブを引き込みおよび繰り出すことが好ましい。
【0010】
この方法によれば、ローラとの摩擦抵抗によってウェブに作用する不要な張力を除去した状態で加工工程にウェブを送り出すことができる。
【0011】
また、上記方法において、アキュムレータから下流側の複数の加工工程のうち優先度の高い工程の下流でウェブを保持することが好ましい。
【0012】
この方法によれば、アキュムレータから優先度の高い加工工程を越えた下流の位置までの間で、ウェブを非接触状態に保つことができる。したがって、アキュムレータで調整したウェブの張力を保ったまま優先度の高い加工工程でウェブに加工をすることができる。
【0013】
また、この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0014】
すなわち、長尺のウェブへの所定の加工に応じて、当該ウェブを間欠的に搬送するウェブの間欠搬送装置であって、
前記ウェブを連続的に供給するウェブ供給部と、
前記ウェブ供給部から繰り出されたウェブの張力を検出するダンサローラと、
前記ウェブ供給部から連続的に繰り出されるウェブを、下流側の加工工程に間欠的に送り出すアキュムレータと、
前記ダンサローラから送り出されるウェブの張力をアキュムレータの手前で検出する検出器と、
前記加工工程の下流側でウェブの間欠送りに同期してウェブを保持する保持機構と、
加工後の前記ウェブを巻き取る巻取り部と、
前記前記ダンサローラの検出結果に応じて、ウェブ供給部からのウェブの繰出し量を操作して張力を調整するとともに、ウェブ供給部のウェブの繰出し量と検出器の検出結果に応じて、アキュムレータによるウェブの引込み量および繰出し量を操作して張力を目標値に調整しながら加工工程にウェブを間欠的に送り出す制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
(作用・効果) この構成によれば、制御部が、ダンサローラの検出結果に応じて、ウェブ供給部からのウェブの繰出し量を操作して張力を調整するとともに、ウェブ供給部のウェブの繰出し量と検出器の検出結果に応じて、アキュムレータによるウェブの引込み量および繰出し量を操作して張力を目標値に調整しながら加工工程にウェブを間欠的に送り出すので、上記方法を好適に実施することができる。
【0016】
なお、上記構成において、アキュムレータは、ウェブに気体を吹き付けながら非接触で引き込みおよび繰り出すことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、アキュムレータから加工工程まで間でウェブを非接触状態にすることができる。したがって、アキュムレータで調整したウェブの張力を維持したままウェブを加工することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のウェブの間欠搬送方法および間欠搬送装置によれば、加工工程の直前のアキュムレータで張力が一定に調整されたウェブを当該加工工程に間欠的に送り出すことができるので、ウェブを精度よく加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】間欠搬送装置の全体構成を示す正面図である。
図2】ウェブ供給部の主要部の正面図である。
図3】間欠搬送装置の制御ブロック図である。
図4】間欠搬送装置の動作を説明する正面図である。
図5】変形例装置の全体構成を示す正面図である。
図6】変形例装置におけるウェブ供給部の主要部の正面図である。
図7】変形例装置の動作を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明のウェブの間欠搬送装置の実施例を説明する。なお、実施例では、粘着テープを製造する場合の間欠搬送装置を例にとって説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施例に係り、間欠搬送装置の全体構成を示した正面図である。
【0022】
この間欠搬送装置は、図1に示すように、大きく分けてウェブ供給部1、加工装置2および巻取り部3から構成されている。以下、各部および装置の構成について具体的に説明する。
【0023】
ウェブ供給部1は、図2および図3に示すように、ウェブ供給機構4、ダンサローラ5およびアキュムレータ6から構成されている。
【0024】
ウェブ供給機構4は、巻取り軸7にボビンを介して装填された原反ロールからウェブWを繰り出す。すなわち、巻取り軸7に連結されたモータ10の回転動作に連動してウェブWを繰り出す。また、ウェブ供給機構4は、モータ10の回転数を検出するエンコーダ11が備わっている。
【0025】
ダンサローラ5は、ウェブWの搬送方向の前後に水平配備された一対のガイドローラG1、G2の間に配備されている。このダンサローラ5は、予め設定された長さのウェブWを下方に引き込むように揺動アーム12の先端に装着されている。
【0026】
揺動アーム12は、非作動状態で鉛直姿勢を保っている。また、当該揺動アーム12の回転軸14には、電磁ブレーキなどによって適宜にトルク設定できるよう構成されている。また、回転軸14の軸受け側に、エンコーダ15が装着されている。すなわち、エンコーダ15は、ダンサローラ5に巻きかけられたウェブWと当該ダンサローラ5との摩擦抵抗により揺動する揺動アーム12の揺動角度θ1、θ2を検出する。検出信号は、後述する制御部60に送信される。
【0027】
アキュムレータ6は、ウェブWの搬送方向の前後に水平配備された一対のガイドローラG3、G4の間で昇降するアキュームローラ20によって構成されている。アキュームローラ20は、その回転軸の両端をモータ24に連結されたボール軸上で昇降する可動台に回転自在に軸支受けされている。なお、アキュームローラ20は、可動台に回転自由に軸支されている。
【0028】
上流側のガイドローラG3には、張力検出器26が付設されている。張力検出器26は、例えば、ウェブWの通過に伴ってガイドローラG3に作用する荷重を検出する。検出信号は、後述する制御部60に送信される。
【0029】
加工装置2は、例えば前処理工程30、塗布工程31、乾燥工程32および検査工程33などから構成されている。
【0030】
前処理工程30は、例えばイオナイザーなどによってイオン風をウェブWに吹き付けて静電気の除去、或いは、ウェブWの表裏面に付着している塵埃を除去する。
【0031】
塗布工程31は、例えばダイコータ、コンマコータまたはリップコータなどによってウェブWの少なくとも一方の面に粘着剤を塗布する。
【0032】
乾燥工程32は、例えばボックス形状のオーブン34によって構成されており、粘着剤の塗布されたウェブWを通過させながら不要な溶剤を揮発させながら適度に乾燥させる。
【0033】
検査工程13は、光学カメラなどセンサ35によって、ウェブWの表面に発生しているボイドなどの外観不良を検査する。
【0034】
なお、前処理工程30、塗布工程31、乾燥工程32および検査工程33のそれぞれの下流にニップローラ36〜39が配備されている。これらニップローラ36〜39は、少なくとも一方のローラが昇降してウェブWをニップするとともに、一方のローラが駆動ローラとなっている。つまり、ニップローラ36〜39は、加工時に加工工程の下流側でウェブWをニップするとともに、加工処理後のウェブWを下流側に間欠的に送り出すよう構成されている。各工程の下流でウェブWを保持して送り出す形態は、ニップローラ36〜39に限定されず、例えば、サクションローラであってもよい。また、ニップローラ36〜39およびサクションローラは、本発明の保持機構に相当する。
【0035】
巻取り部8は、上流側からアキュムレータ50、ダンサローラ51および巻取り機構52とから構成されている。
【0036】
アキュムレータ50は、ウェブ供給部1に備わったアキュムレータ6と同じ構成である。したがって、ウェブWの搬送方向の前後に水平配備された一対のガイドローラG5、G6の間で昇降するアキュームローラ53によって構成されている。アキュームローラ53は、回転軸の両端をモータなどの駆動機構に連結されたボール軸上で昇降する可動台に回転自在に軸支受けされている。
【0037】
ダンサローラ51は、ウェブWの搬送方向の前後に水平配備された一対のガイドローラG7、G8の間に配備されている。このダンサローラ51は、予め設定された長さのウェブWを下方に引き込むように揺動アーム54の先端に装着されている。
【0038】
巻取り機構52は、巻取り軸55に装填されたボビンに加工処理が完了して製造された粘着テープを巻き取り回収する。すなわち、ウェブ供給機構4のモータ8の回転と同期して作動するモータによりウェブWを巻取り軸55に巻き取る。また、巻取り機構4には、モータの回転を検出するエンコーダが備わっている。
【0039】
制御部60は、各エンコーダ15、11、25、44、張力検出器26およびセンサ35からの検出信号を利用し、ウェブ供給機構1から巻取り装置8の間で間欠搬送されるウェブWの張力が一定となるように、各機構を統括的に制御している。なお、制御部55による各機構の制御については、次の装置の動作説明において詳述する。
【0040】
次に、上述の実施例装置によって、ウェブ供給部1から加工装置2の各工程30〜34にウェブWを間欠的に送り出し、加工処理によって製造された粘着テープを、検査工程34を経て巻取り部3に巻き取り回収する一巡の動作を図1から図4の記載に基づいて説明する。
【0041】
図1に示す操作部70を操作して装置の初期設定を制御部60に対して行う。先ず、ウェブ供給部1において、図3に示すように、ウェブ供給機構4から繰り出されるウェブWに付与する張力(目標値)を設定する。当該目標値に基づいて、ウェブWの特性ごとに予め決められたウェブ供給部1のモータ10の回転速度が選択設定される。さらに、加工工程で処理されるウェブWの長さに応じて、アキュームローラ20を昇降させる距離が設定される。
【0042】
加工装置2において、処理精度が要求される加工工程を選択する。本実施例では、塗布工程31でのウェブWの処理精度を高めるために、当該塗布工程31の下流側のニップローラ37について初期設定をする。当該選択に応じて、ニップローラ37を作動させてウェブWを常時ニップさせるよう設定する。また、ニップローラ37を構成する駆動ローラ37aの作動時間、停止時間および作動時間内の速度が設定される。作動時間および停止時間は、加工工程での処理時間によって適宜に設定される。作動時間内の速度設定は、例えば次のように設定される。ウェブWの引き取り長さに応じて、ウェブWの引き取り開始位置から終了位置までにおいて、駆動ローラ37aを徐々に加速させて中間位置でのピークを起点に徐々に減速させて停止させるよう設定される。
【0043】
巻取り部3において、ウェブ供給部1と同様に、巻取り機構52の巻取り軸55に連結されたモータ56の回転速度(一定)、アキュームローラ53を昇降させる距離などが設定される。なお、アキュームローラ53の昇降速度は、駆動ローラ37aの回転速度に略同期している。
【0044】
初期設定が完了すると、装置を作動させる。制御部60は、初期設定に基づいて、図4(a)に示すように、所定長さのウェブWを予め繰り出した後に、図4(b)に示すように、ニップローラ37よってウェブWをニップする。その後、駆動ローラ37a、モータ10およびモータ56が同期して駆動する。
【0045】
駆動ローラ37aは、所定長さのウェブWを速度制御しながら引き取る。他方、モータ10は、設定速度で回転しながら原反ロールからウェブWを連続的に送り出す。さらに、駆動ローラ37aの回転に同期してアキュームローラ53の速度を変化させながら昇降させ、巻取り軸55に一定速度でウェブWを巻き取ってゆく。
【0046】
装置の作動と同時に、エンコーダ11、25、44および張力検出器26からの信号が、制御部60に送信されている。
【0047】
制御部60は、ウェブWに付与する張力の目標値を維持しているか否かをモニタしながら制御する。
【0048】
先ず、張力検出器26から送信される検出信号からウェブWに付与されている張力の実測値を張力演算器13で求める。すなわち。ウェブWに付与される荷重の変化に応じてウェブWに作用している張力の変化を、ウェブWの特性に応じて実験やシミュレーションで予め決めた相関データとして求めてメモリなどの記憶装置に記憶しておく。張力検出器26で検出された荷重と当該相関データから実測値を求める。また、張力演算器13は、目標値と実測値から偏差を求める。さらに、張力演算器13は、エンコーダ15から検出される揺動アーム12の揺動角度θの変化をモニタしながら、張力の実測値が目標値と同じになるように、トルク指令により揺動角度をリニアに修正させる。
【0049】
モータ10の回転速度は、ダンサローラ5に備わったエンコーダ15によって求まる揺動角度θの変化に応じて調整される。すなわち、速度演算器8が、揺動角度の実測値に応じたモータ10の回転速度を求める。例えば、速度演算器8は、揺動角度の変化と回転速度の変化の相関データを予めメモリなどの記憶装置に記憶しており、エンコーダ15からリニアに送信される揺動角度の実測値に応じた回転速度(理論値)を求める。さらに、速度演算器8は、その時点の回転速度の実測値と理論値との偏差を求め、当該偏差の修正指令をモータドライバ9に送信する。モータドライバ9は、エンコーダ11から検出される回転速度をモニタしながら回転速度をリニアに修正する。
【0050】
制御部60の位置演算器21が、所定範囲内で昇降するアキュームローラ20の位置をエンコーダ25の回転角度から求める。
【0051】
速度演算器22が、アキュームローラ20の昇降速度を求める。すなわち、ウェブ供給機構4のモータ10の回転角度と巻取り部3のウェブの巻き取り長さが入力され、これらに同期してアキュームローラ20の昇降速度が制御される。具体的には、当該同期制御により、アキュームローラ20の移動量=(ウェブの引き取り量−ウェブの繰出し量)/2になるようモータ10の回転速度と巻取り部3へのウェブWの送り出し速度に追従させる。なお、モータドライバ23は、エンコーダ25の回転角度をモニタしながら、アキュームローラ20の昇降速度をリニアに制御する。
【0052】
したがって、制御部60は、ウェブWは、塗布工程で所定の処理が施されるよう、塗布工程で停止する。その間、アキュムレータ6のアキュームローラ20が、モータ10の回転速度に同期して、図4(b)の一点鎖線で示すように、速度制御されながら所定の高さまで下降する。このとき、モータ10の回転速度は、ダンサローラ5によって変化する張力のみならず、アキュームローラ20の昇降によって変化する張力を補正する値となっている。
【0053】
ウェブWを加工している最中、下流側の巻取り部3は、アキュムレータ50によって貯め込んでいたウェブWの張力を調整しながら巻取り軸の回転速度に同期させて巻き取る。すなわち、巻取り軸55に連結されたモータ56の回転速度を一定に保ったまま、アキュムレータ50は、アキュームローラ53の昇降位置、昇降速度および張力検出器57とダンサローラ51の揺動角度に基づき張力を調整する。この張力の調整された加工後の粘着テープを巻取り軸55が巻き取ってゆく。
【0054】
次に、塗布工程31で、ウェブWから粘着テープへの加工が終了すると、エンコーダ44の回転角度を利用して位置演算器40によって求められた、加工後に引き取られる粘着テープの位置情報(長さ)およびウェブ供給機構4のモータ10の回転角が、アキュムレータ用の速度演算器22に入力される。速度演算器22は、粘着テープの長さおよび回転角に基づいて、アキュームローラ20を上昇させる最適な速度を算出する。
【0055】
すなわち、制御部60は、駆動ローラ37aによって粘着テープを巻取り部3に送り出させるとともに、当該駆動ローラ37aの回転速度に同期させて、アキュームローラ20を上昇させる。
【0056】
このとき、巻取り部3は、ウェブWの加工時間内に巻取り機構53に送り出すのに適した所定長さの粘着テープを、アキュームローラ50の下降によって貯め込む。
【0057】
上述の間欠動作を繰り返すことにより粘着テープを製造する過程でウェブWを間欠的に搬送する一巡の動作が完了する。
【0058】
上記実施例装置によれば、ダンサローラ5によって変化するウェブWの張力およびアキュームローラ20の昇降によって変化する張力を補正し、予め設定した張力の目標値に修正する。したがって、目標値との偏差の小さい低張力なウェブWをアキュムレータ6の直後に配備された加工装置に間欠的に搬送供給することができる。したがって、伸び、弛みおよび皺などをウェブWに発生させることなく加工することができるので、高品位の粘着テープなどの加工製品を製造することができる。
【0059】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0060】
(1)上記実施例装置において、例えば、アキュームローラの前後に水平配備したガイドローラG2−G6のうち、下流側のG2、G4およびアキュームローラ13、24をエアーターンバーに置換したエアーダンサに構成してもよい。
【0061】
すなわち、図5および図6に示すように、エアーターンバー80、81は、半円または半楕円の断面形状を有している。当該エアーターンバー80、81の周面には複数個の孔が形成されており、外部のコンプレッサから供給される圧縮エアーを当該孔から均等な圧力で吐出する。したがって、ウェブWは、エアーターンバー80、81上を非接触で搬送される。
【0062】
この構成によれば、上記メイン実施例のように、ウェブWが、アキュームローラ20およびガイドローラG2と接触することがないので、張力を調整されたウェブWに摩擦抵抗が作用しない。したがって、張力調整されたウェブWを加工工程により精度よく間欠的に搬送することができる。
【0063】
(2)上記各実施例において、図7(a)および図7(b)に示すように、加工装置2Aおよび加工装置2Bの間にダンサローラ90、とアキュムレータ91を備えた構成であってもよい。この構成の場合、アキュームローラ20、92、53のそれぞれは、例えば、加工装置2Aおよび巻き取り機構24の手間のアキュームローラの同期をとって同じタイミングで下降させ、加工装置2Aと加工装置2Bの間のアキュームローラ92を上昇させるよう移動制御させればよい。なお、ダンサローラとアキュムレータの組み合わせの配備数は、加工工程の数、加工精度を要求する工程など各種条件に応じて、適宜に設定変更することができる。
【0064】
(3)上記各実施例では、各工程36〜39の処理時間を同じにしていたが、処理時間を適宜に設定変更してもよい。この場合、例えば、隣接する工程間のウェブWの搬送距離を適宜に変更すればよい。例えば、ダンサローラまたはアキュームローラによるウェブWの引込み量によって調整することができる。
【0065】
(4)なお、上記実施例では、粘着テープを製造する場合の間欠搬送について説明したが、間欠搬送する対象物は、粘着テープに限定されない。例えば、偏向フィルム、高機能フィルムなどの各種ウェブを間欠搬送することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 … ウェブ供給部
2 … 加工装置
3 … 巻取り部
4 … ウェブ供給機構
5 … ダンサローラ
6 … アキュムレータ
10 … モータ
11 … エンコーダ
12 … 揺動アーム
11 … エンコーダ
20 … アキュームローラ
26 … 張力検出器
36〜39 … ニップローラ
37a… 駆動ローラ
11 … エンコーダ
60 … 制御無
W … ウェブ
【要約】
【課題】低負荷状態で均一な張力を付与しながらウェブを間欠的に搬送する。
【解決手段】ウェブWを連続的に繰り出し供給する過程で、ダンサローラ5の変位によってウェブWの張力を検出し、検出結果に応じて、ウェブWの送り量を操作して張力を調整する。さらに、ダンサローラ5から送り出されるウェブWの張力をアキュムレータ6の手前で張力検出器26によって検出し、ダンサローラ5の変位から求めたウェブWの送り量およびアキュムレータ6の手前で検出した検出結果に応じて、アキュムレータ6によるウェブの引込み量および繰出し量を操作して張力を目標値に調整しながらウェブWを加工工程に間欠的に送り出す。加工工程の下流側でニップローラ37によってウェブWをニップした状態で加工し、加工処理完了後にニップローラ37を構成する駆動ローラ37aを作動させて巻取り部3にウェブWを送り出す。ウェブの繰り出しに同期させて、ウェブWを巻き取る。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7