(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723438
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】複数の噴射形式を有するエンジンシステムで噴射弁を制御するための調整値を適合させるための方法および装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/04 20060101AFI20150507BHJP
F02D 41/34 20060101ALI20150507BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
F02D41/04 325C
F02D41/34 C
F02D41/02 325A
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-500430(P2013-500430)
(86)(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公表番号】特表2013-522536(P2013-522536A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011053888
(87)【国際公開番号】WO2011117114
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2012年9月24日
(31)【優先権主張番号】102010003209.3
(32)【優先日】2010年3月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】シェンク ツー シュヴァインスベルク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ロート,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス,カイ
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−138249(JP,A)
【文献】
特開昭64−029651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 − 45/00
F02M 39/00 − 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの噴射形式の混合運転により燃料を供給可能な内燃機関(2)の燃料噴射量を調整するための調整値を調整するための方法において、第1噴射形式は吸気管噴射であり、第2噴射形式は直接噴射であり、前記方法は、
第1噴射形式により内燃機関(2)を運転させる第1噴射量指示(rKSaugrohr)を調整するための第1調整値、および第2噴射形式によって内燃機関(2)を運転させる第2噴射量指示(rKDirekt)を調整するための第2調整値を調整するステップであって、前記第1調整値は、前記第1噴射量指示を調整するための乗算係数である吸気管調整値(fra_PFI)と加算値である吸気管オフセット調整値(ora_PFI)とを含み、前記第2調整値は、前記第2噴射量指示を調整するための乗算係数である直接噴射調整値(fra_DI)と加算値である直接噴射オフセット調整値(ora_DI)とを含み、前記第1噴射量指示は式rKSaugrohr=rK×R×fra_PFI+ora_PFI×Rによって計算され、前記第2噴射量指示は式rKDirekt=rK×(1−R)×fra_DI+ora_DI×(1−R)によって計算され、ここでrKは総噴射量であり、Rは配分である、ステップと、
エンジン回転数および負荷によって規定される運転状態に関して、それぞれが重ならない運転状態の範囲において、前記吸気管調整値と、前記直接噴射調整値と、前記吸気管オフセット調整値及び前記直接噴射オフセット調整値とをそれぞれ調整するステップとを含み、
少なくともいずれかの運転状態の範囲が、2つの噴射形式によって内燃機関(2)に燃料が供給される運転状態を含む、方法。
【請求項2】
前記オフセット調整値(ora_PFI、ora_DI)が低回転、低負荷の運転状態で調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1噴射形式は吸気管噴射であり、第2噴射形式は直接噴射であり、燃料が吸気管噴射および直接噴射によって前記内燃機関(2)に供給される運転状態で第1調整値の調整を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
70%、80%、90%または95%を超える燃料が直接噴射によって前記内燃機関(2)に供給される運転状態で、第2調整値の調整を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
当該噴射形式のための現在の調整値を算出することによってそれぞれの調整値の調整を行い、当該噴射形式のために算出され、重み付け係数によって重み付された調整値を以前の調整値に適用することによって当該噴射形式のためにあらかじめ算出された調整値を調整する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
2つの噴射形式の混合運転により燃料を供給することができる前記内燃機関(2)への燃料の噴射を制御するために第1噴射量指示(rKSaugrohr)および第2噴射量指示(rKDirekt)を調整するための方法において、
エンジン回転数および負荷によって決定される前記内燃機関(2)の運転状態に関係して配分(R)を設定するステップと、
前記内燃機関(2)のシリンダ(3)における燃焼のために供給されるべき所定の総燃料量(rK)を、第1噴射量指示および第2噴射量指示を算出するための配分(R)にしたがって分配するステップであって、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法によって調整された第1もしくは第2調整値に関係して、第1噴射量指示および第2噴射量指示を、それぞれ、式rKSaugrohr=rK×R×fra_PFI+ora_PFI×RおよびrKDirekt=rK×(1−R)×fra_DI+ora_DI×(1−R)によって算出する、ステップと
を含む方法。
【請求項7】
2つの噴射形式の混合運転により燃料を供給可能な内燃機関(2)の燃料噴射量のための調整値を調整させるための装置(15)において、
制御装置(15)が、第1噴射形式によって内燃機関(2)を運転させる第1噴射量指示(rKSaugrohr)を調整するための第1調整値、および第2噴射形式によって内燃機関を運転させる第2噴射量指示(rKDirekt)を調整するための第2調整値を調整するように構成され、前記第1調整値は、前記第1噴射量指示を調整するための乗算係数である吸気管調整値(fra_PFI)と加算値である吸気管オフセット調整値(ora_PFI)とを含み、前記第2調整値は、前記第2噴射量指示を調整するための乗算係数である直接噴射調整値(fra_DI)と加算値である直接噴射オフセット調整値(ora_DI)とを含み、前記第1噴射量指示は式rKSaugrohr=rK×R×fra_PFI+ora_PFI×Rによって計算され、前記第2噴射量指示は式rKDirekt=rK×(1−R)×fra_DI+ora_DI×(1−R)によって計算され、ここでrKは総噴射量であり、Rは配分であり、前記制御装置(15)はさらに、
エンジン回転数および負荷によって規定される運転状態に関して、それぞれが重ならない運転状態の範囲において、前記吸気管調整値と、前記直接噴射調整値と、前記吸気管オフセット調整値及び前記直接噴射オフセット調整値とをそれぞれ調整するように構成されており、
少なくともいずれかの運転状態の範囲が、2つの噴射形式によって内燃機関(2)に燃料が供給される運転状態を含む、装置。
【請求項8】
前記オフセット調整値(ora_PFI、ora_DI)が低回転、低負荷の運転状態で調整される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記内燃機関(2)と、
請求項7または8に記載の装置(15)と
を備える、エンジンシステム(1)。
【請求項10】
データ処理ユニットで構成された場合に、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法を実施するプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダが複数の噴射弁を介して、特に吸気管噴射および直接噴射によって燃料を供給可能である内燃機関を備えるエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複合噴射システムにより吸気管噴射および直接噴射を可能とする内燃機関では、このために設けられた噴射弁の制御部を調整することが不可欠である。このような調整により、噴射量指示によってあらかじめ規定された燃料量を噴射するように噴射弁を制御することができる。調整は、一般に、噴射が完全に吸気管を介して実施されるか、または完全に直接噴射として実施される運転状態で行われる。このために、内燃機関の運転状態に関して、噴射すべき燃料量に適用する調整値の適合が許可される範囲を規定する調整範囲が設けられる。しかしながら、内燃機関の現在の運転状態が調整範囲外にある場合であっても、算出された調整値は燃料量の計算する際に常に取り込まれる。
【0003】
構成部品許容差および老朽化により、規則的に、またはあらかじめ規定された時点で、調整に用いた調整値を適合させることが不可欠である。上記方法にしたがった調整値の補正もしくは適合は、当該噴射が完全に吸気管を介して実施されるか、または完全に直接噴射によって実施された場合にのみ行われる。任意の時点で適合を行うべき場合には、このために運転状態が調整範囲内となるように運転状態を適合させなければならない。特に、運転状態は、内燃機関がほぼ完全に、調整値を適合させたい運手形式で運転されるように変更される。しかしながら、その結果、可能であれば直接噴射および吸気管噴射の複合的な使用を想定した内燃機関のそれ自体は最適な運転状態を放棄しなければならない。このようなことは、特に燃料消費、排ガス組成、および、例えば内燃機関のノッキングに代表され得るように運転特性のためには不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、複合的な吸気管噴射と直接噴射とを備える内燃機関における噴射弁の制御部を調整するための装置および方法において、特にいずれかの噴射形式への完全な切換が調整値の適合のために行われない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載の燃料噴射量のための調整値を適合させるための方法、内燃機関への燃料の噴射を制御するために噴射量指示を調整するための方法、その他の独立請求項に記載の制御装置、エンジンシステムならびにコンピュータプログラム製品によって解決される。
【0006】
その他の有利な構成が従属請求項に記載されている。
【0007】
第1の態様によれば、2つの噴射形式の混合運転により燃料を供給可能な内燃機関の燃料噴射量を調整するための調整値を適合させるための方法が得られる。第1噴射形式によって内燃機関を運転させる第1噴射量指示を調整するための第1調整値、および第2噴射形式によって内燃機関を運転させる第2噴射量指示を調整するための第2調整値が適合され、調整値は、運転状態に関係した重ならない規定された調整範囲でそれぞれ適合され、少なくともいずれかの調整範囲は、混合運転時に2つの噴射形式によって燃料が内燃機関に供給される運転状態を含む。
【0008】
本発明の思想は、内燃機関の運転状態が所定の調整範囲内にある場合には、複数の噴射形式を備える内燃機関で当該噴射弁を制御するための調整値の適合が行われることである。これは内燃機関が混合運転状態にあるか否かを考慮せずに行われる。
【0009】
吸気管噴射の第1噴射形式および直接噴射の第2噴射形式を対応させることもでき、第1調整値の適合は、燃料が吸気管噴射および直接噴射によって内燃機関に供給される運転状態で行うことができる。
【0010】
一実施形態によれば、第2調整値の適合は、60%、70%、80%、90%または95%を超える燃料が直接噴射によって内燃機関に供給される運転状態で行うことができる。
【0011】
当該噴射形式のための現在の調整値を算出することによってそれぞれの調整値の適合が行われ、当該噴射形式のために算出され、重み付け係数によって重み付けされた調整値を以前の調整値に適用することによって当該噴射形式のためにあらかじめ算出された調整値が適合されるようにしてもよい。
【0012】
別の態様によれば、2つの噴射形式の混合運転により燃料を供給することができる内燃機関への燃料の噴射を制御するために第1噴射量指示および第2噴射形式指示を調整するための方法が提供される。作用点に関係して配分が設定され、内燃機関のシリンダにおける燃焼のために供給されるべき、所定の総燃料量が、第1噴射量指示および第2噴射量指示を算出するために配分に応じて分配され、第1噴射量指示および第2噴射量指示は、上記方法によって適合された第1もしくは第2調整値に関係して、特に加算または乗算によって、算出される。
【0013】
さらに、調整値オフセットを適合させることができ、調整値オフセットは、配分にしたがって分配され、対応した噴射量指示を算出するために用いられる。
【0014】
別の実施形態によれば、対応した噴射量指示に適用する吸気管調整値オフセットおよび直接噴射調整値オフセットを適合させることができる。
【0015】
さらに、吸気管調整値オフセットおよび直接噴射調整値オフセットを適合させ、それぞれ配分を適用することができる。
【0016】
別の態様によれば、2つの噴射形式の混合運転により燃料を供給可能な内燃機関の燃料噴射量のための調整値を適合させるための装置が設けられており、制御装置が、第1噴射形式によって内燃機関を運転させるために第1噴射量指示を調整するための第1調整値、および第2噴射形式によって内燃機関を運転させるために第2噴射量指示を調整するための第2調整値を適合させ、運転状態に関係した重ならない所定の調整範囲で調整値をそれぞれ適合させるように構成されており、少なくともいずれかの調整範囲は、2つの噴射形式によって内燃機関に燃料が供給される運転状態を含む。
【0017】
別の態様によれば、エンジンシステムが設けられている。このエンジンシステムは:
内燃機関と、
上記制御装置と
を備える。
【0018】
別の態様によれば、データ処理ユニットで構成された場合に上記方法を実施するプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品が設けられている。
【0019】
以下に好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】2つの噴射形式で運転することのできる内燃機関を備えるエンジンシステムの概略図である。
【
図2】個々の噴射形式のための噴射量を決定する場合の調整値の考察を示す機能図である。
【
図3】吸気管噴射および直接噴射のためのそれぞれの調整値の適合を行ってもよい調整範囲を示す図である。
【
図4】個々の噴射形式のための噴射量を決定する場合の調整値の考察を示す別の機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、内燃機関2を備えるエンジンシステム1を示す。内燃機関2は、それぞれの燃焼室を有する4つのシリンダ3を備える。シリンダ3には、空気供給システム4を介して、シリンダの燃焼室への入口に設けられた適宜な吸気弁7によって制御されて空気が供給される。燃焼排ガスは適宜な排気弁(図示しない)および排ガス吐出部5を介してシリンダ3の燃焼室から排出される。
【0022】
空気供給システム4には、シリンダ3に流れる空気流、すなわち、空気量を制御するスロットルバルブ6が配置されている。空気供給システム4の領域では、スロットルバルブ6と吸気弁7との間に吸気管8が設けられている。吸気管8には、内燃機関2の運転時に吸気管噴射により燃料を噴射するための噴射弁9が配置されている。さらに、シリンダ3には、シリンダ3に直接に燃料を噴射するための直接噴射弁10が設けられている。代替的な実施形態では、それぞれのシリンダ3に吸気管噴射弁が設けられていてもよい。吸気管噴射弁は、吸気管8と、対応した吸気弁7との間のそれぞれの供給導管にそれぞれ設けられていてもよい。
【0023】
エンジンシステム1はさらに制御装置15を備え、制御装置15は、規定にしたがって内燃機関を運転するために、噴射弁9,10、吸気弁7および排気弁の機能、スロットルバルブ6ならびにエンジンシステム1の他の調節器を制御する。
【0024】
制御装置15は、内燃機関の作用点、例えば、エンジン回転数nおよび/または負荷Mに関係して、噴射弁9.10を介して燃料の噴射を制御する。噴射弁9,10の制御変数は、噴射弁9,10のための対応した制御ユニットで適宜な燃料量の噴射に置き換えられる噴射量指示である。特に噴射量指示により噴射継続時間が決定される。
【0025】
図2には、どのようにして噴射量指示が算出されるかを表す機能図が概略的に示されている。噴射量ブロック21では、所定の運転手要求トルクFWM、および、例えばエンジン回転数nおよびエンジン負荷Mによって示される作用点に関係して、総噴射量r
Kが算出される。総噴射量は、所望のトルクを提供するためにシリンダ内に燃焼のために噴射されるべき燃料量の指示に相当する。代替的に、総噴射量によって所望の空燃比(ラムダ)を提供することもできる。
【0026】
吸気管噴射のための吸気管-噴射量指示K
Saugrohrを算出するためには、総噴射量r
Kに所定の吸気管調整値fra_PFIが適用され、本実施例では、第1乗算ブロック23で乗算される。このようにして算出された積には第1加算部24で吸気管調整値オフセットora_PFIが加算される。次いで、得られた和は第2乗算ブロック25で配分Rによって乗算され、これにより、吸気管-噴射弁-制御ユニット26で吸気管-噴射弁9のための適宜な制御に変換される吸気管-噴射量指示r
KSaugrohrが得られる。
【0027】
同様に、直接噴射のための直接噴射-噴射量指示r
KDirektを計算するためには、総噴射量r
Kに所定の直接噴射調整値fra_DIが適用され、本実施例では、第3乗算ブロック27で乗算される。このようにして算出された積には、第2加算部28で直接噴射調整値オフセットora_DIが加算される。直接噴射調整値オフセットora_DIは、例えば、直接噴射弁10の調節器における電圧-電流経過の評価に基づいた別の方法によって算出することもできる。このような方法は従来技術により既知であり、ここではさらに詳述しない。
【0028】
次いで、得られた和は第4乗算ブロック29で配分1-Rによって乗算され、これにより、直接噴射-制御ユニット30で直接-噴射弁10のための適宜な制御に変換される直接噴射-噴射量指示r
KDirektが得られる。
【0029】
吸気管-噴射弁-制御ユニット26および直接噴射-制御ユニット30は制御装置15に設けられていてもよい。吸気管調整値オフセットora_PFI、直接噴射調整値オフセットora_DI、吸気管調整値fra_PFI、直接噴射調整値fra_DIおよび配分Rは、エンジン回転数nおよび/またはエンジン負荷Mによって決定されていてもよい内燃機関の作用点に関係して、および/または所定の、もしくは得られた特性マップまたは所定の、もしくは得られた関数に関係して調整値ブロック22によって規定される。
【0030】
調整関数ブロック22によって提供された配分Rは、運転状態に関係した、すなわち、内燃機関の回転数および/または負荷に関係して、総噴射量r
Kが個々の噴射形式にどのように分配されるべきかを示す。例えば、吸気管-噴射量指示r
KSaugrohrを規定することができ、この場合、噴射管-調整値オフセットora_PFIを適用した調整総噴射量に配分Rが乗算され、直接噴射-噴射量指示r
KDirektを得るために、直接噴射調整値オフセットora_DIを適用した調整総噴射量に逆の配分1-Rが適用される。逆の配分1-Rは、1と差分ブロック31で算出された配分Rとの間の差から生じる。
【0031】
このようにして得られた噴射量指示r
KSaugrohr, r
KDirektを適合させるためには、(吸気管噴射量r
KSaugrohrのための)調整値fra_PFIおよび(直接噴射量
rKDirektのための)調整値fra_DIが設けられている。調整値fra_PFI, fra_DIは、調整値ブロック22によって、場合によっては作用点(回転数n、トルクM)に関係して提供される。直接噴射調整値オフセットora_DI、直接噴射調整値fra_DI、吸気管調整値オフセットora_PFIおよび吸気管調整値fra_PFIは、調整値ブロック22に記憶されている。実質的に、調整された吸気管噴射量指示r
KSaugrohrは、次のように総噴射量r
Kから生じる:
r
KSaugrohr=r
K×R×fra_PFI+ora_PFI×R。
【0032】
同様に、調整された直接噴射量r
KDirektは、次のように総噴射量r
Kから生じる:
r
KDirekt=r
K×(1-R)×fra_DI+ora_DI×(1-R)。
【0033】
調整値は、所定の作用点が生じている場合に調整ブロック22で適合される。このような適合は、構成部品許容差および老朽化を考慮するために不可欠である。このために、これまでは吸気管のための調整値の適合は、ほぼ完全な吸気管噴射時に噴射量指示を行い、ほぼ完全な直接噴射時に直接-噴射量指示の適合を行うことが想定されており、提案された方法では、所定の調整範囲内にある運転状態が生じるとすぐに調整ブロック22で調整値の適合が行われる。運転状態は、この場合、内燃機関を運転する混合運転に割り当てられていてもよい。例えば、吸気管調整値の適合は、配分比Rにおける吸気管噴射の割合が直接噴射の割合よりも高い場合、例えば、R≧70%、≧80%または≧90%の配分で行うことができる。
【0034】
さらに、吸気管調整値fra_PFIの調整は、作用点との十分な間隔が提供されており、直接噴射調整値オフセットora_DIまたは吸気管調整値オフセットora_PFIの調整を行うことができる場合にのみ行われる。
【0035】
調整値は種々異なる形式で算出することができる。最も簡単な場合、ラムダ値の形態で空燃比が測定され、所定の目標値とのずれから調整値が算出される。代替的には、所定の運転状態で噴射量が増大もしくは低減され、内燃機関の回転数に生じた反応が評価される。調整値の適合は、一般に、調整値が飛躍的に変化しないように行われる。むしろ、それぞれ新たに算出された調整値が重み付けされ、加算または乗算により既存の調整値を更新するために用いられる。このようにして、算出される調整値における個々の外れ値の影響を低減することができる。
【0036】
調整を行う調整範囲が例えば
図3に示されており、対応領域を白で特徴づけている。吸気管調整値fra_PFIが、調整範囲を規定する作用点が、吸気管噴射および直接噴射の両方が行われる配分Rをとる調整範囲で適合されることがわかる。さらに、直接噴射調整値の適合は、配分Rによる規定により、主に直接噴射が生じる運転領域で行われる。
【0037】
さらに、調整値の適合は、一度に1つの調整値のみが適合されるように行われる。このために、調整範囲は、調整値fra_PFI, fra_DIおよび調整値オフセットora_PFI, ora_DIについて重ならないように規定されるべきである。
【0038】
代替的な実施形態によれば、
図4の機能図に示すように、吸気管噴射量r
KSaugrohrもしくは直接噴射量r
KDirektに対して調整値オフセットora_DI, ora_PFIを適宜な配分による乗算後に考慮することができる。このために、実質的にブロック25,24もしくは28,29の配置が入れ換えられていることがわかる。