特許第5723513号(P5723513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン軽金属株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5723513-車両用スロープ装置 図000002
  • 特許5723513-車両用スロープ装置 図000003
  • 特許5723513-車両用スロープ装置 図000004
  • 特許5723513-車両用スロープ装置 図000005
  • 特許5723513-車両用スロープ装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723513
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】車両用スロープ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/02 20060101AFI20150507BHJP
   A61G 3/02 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   B60R3/02
   A61G3/00 501
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2008-114464(P2008-114464)
(22)【出願日】2008年4月24日
(65)【公開番号】特開2009-262756(P2009-262756A)
(43)【公開日】2009年11月12日
【審査請求日】2011年2月24日
【審判番号】不服2014-1398(P2014-1398/J1)
【審判請求日】2014年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】木戸 耕介
(72)【発明者】
【氏名】川口 聡
【合議体】
【審判長】 丸山 英行
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 氏原 康宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5813071(US,A)
【文献】 実用新案登録第2568735(JP,Y2)
【文献】 特許第3116770(JP,B2)
【文献】 特開2003−226186(JP,A)
【文献】 特開2006−56408(JP,A)
【文献】 特開2001−47927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に基端部を連結した第1スロープ部と第1スロープ部の展開側にスライド伸縮自在に連結した第2スロープ部とを備え、
第1スロープ部は、アウタパネルとその幅方向両側にアウタレールを有し、
第2スロープ部は、インナパネルとその幅方向両側にインナレールを有し、インナパネルはインナレール先端部より突出した接地先端部を有し、
インナレールはアウタレールの内側に形成した溝の先端部に取り付けた摺動支持部材に摺動支持され、且つインナレールの車両側端部に取り付けた端部側摺動支持部材がアウタレールの前記溝をスライドするものであり、
第2スロープ部が第1スロープ部にスライド収納された状態でインナレール先端部が前記アウタレールの先端部に取り付けた摺動支持部材よりも先に突出した外側の位置になるように摺動支持され
前記摺動支持部材は前記アウタレールの溝とインナレールとの間に隙間が生じないようにしたことでインナレールとアウタレールの溝との間に異物が混入するのを防止してあり、
インナパネルの接地先端部の先端がアウタレールの先端部から突出して、且つ当該接地先端部の両サイドがインナレールの左右方向外側まで突出した末広がり形状になっていることを特徴とする車両用スロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に格納し、使用時には車外に伸長展開し、車両の床部と地上との間にスロープを形成する車両用スロープ装置に関し、特に、スライド式タイプのスロープ装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用スロープ装置としては、未使用時に車内に格納搭載できるように、複数のスロープ部を折り畳み式にしたものとスライド伸縮可能にしたものが公知である。
折り畳み式のスロープ装置であっては、展開状態の全長が一定であるので地上が平坦でなく、車両側の地上高さに比較してスロープの展開接地高さが大きく上下すると谷折りタイプであっても山折りタイプであっても、スロープ先端が地上に接地しなかったり、スロープ傾斜面が途中で少し、山折れ、又は谷折れ状態になる恐れがあった。
【0003】
これに対して、スライド式のスロープ装置は、スロープを引き出して先端部を地面や床に接地させて使用するタイプである(特許文献1)。
【0004】
このようなスライド式であっては、先端部が地面等に接地するまでスロープを引き出せばよく、かならずしも最大長になるまで伸長する必要がない利点がある。
しかし、従来のスライド式スロープ装置においては次のような技術的課題があった。
スロープ装置は車両に格納する際に、車両に対して基端側を回動自在に連結した例えば第1スロープ部に第2スロープ部をスライド収納し、起立格納する方式になっている。
起立させたスロープ装置の先端部付近の従来の構造例を図5に示す。
図5は収納状態の要部側面視である。
第1スロープ部は、アウタパネル111の幅方向両側にアウタレール112を有し、第2スロープ部は、インナパネル121の幅方向両側にインナレール122を有し、インナパネルの先端はインナレールから突出した接地先端部123を設けてあり、このインナレール122がアウタレール112に設けられている摺動支持部材113に支持されながら伸縮スライドする構造になっている。
第2スロープ部が第1スロープ部に収納された位置では、第2スロープ部がアウタレールに設けた摺動支持部材113の先端よりも車両側に納まるようになっていた。
このような構造では、インナレール122と摺動支持部材113との間に隙間aが生じるために、万が一、この部分に異物が侵入した場合に第2スロープ部の伸長時の摺動性能が低下する恐れがある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−47927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スライド式タイプの車両用スロープ装置であって、スライド構造部に異物が侵入するのを防止できるスライド性に優れた車両用スロープ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用スロープ装置は、車体側に基端部を連結した第1スロープ部と第1スロープ部の展開側にスライド伸縮自在に連結した第2スロープ部とを備え、第1スロープ部は、アウタパネルとその幅方向両側にアウタレールを有し、第2スロープ部は、インナパネルとその幅方向両側にインナレールを有し、インナパネルはインナレール先端部より突出した接地先端部を有し、インナレールはアウタレールの内側に形成した溝の先端部に取り付けた摺動支持部材に摺動支持され、且つインナレールの車両側端部に取り付けた端部側摺動支持部材がアウタレールの前記溝をスライドするものであり、第2スロープ部が第1スロープ部にスライド収納された状態でインナレール先端部が前記アウタレールの先端部に取り付けた摺動支持部材よりも先に突出した外側の位置になるように摺動支持され、前記摺動支持部材は前記アウタレールの溝とインナレールとの間に隙間が生じないようにしたことでインナレールとアウタレールの溝との間に異物が混入するのを防止してあり、インナパネルの接地先端部の先端がアウタレールの先端部から突出して、且つ当該接地先端部の両サイドがインナレールの左右方向外側まで突出した末広がり形状になっていることを特徴とする。
【0008】
ここで第2スロープ部が第1スロープ部の展開側にスライド伸縮自在になっているとは、スロープ装置を車外側に展開する方向に第2スロープ部が第1スロープ部からスライド伸長するタイプのスロープ装置である趣旨をいい、本発明は、第2スロープ部がさらに複数のスロープ部に分割され、スライド伸長するものを含む。
【0009】
本発明においては、インナレールはアウタレールに設けてある摺動支持部材に摺動支持されていて、第2スロープ部が第1スロープ部にスライド収納された状態でインナレール先端部が当該スライド支持部材よりも接地側に位置しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、第2スロープ部が第1スロープ部にスライド収納された状態で第2スロープ部が第1スロープ部のアウタレールの先端部から突出しているのでスライド摺動部に異物が侵入するのを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図2は、スロープ装置を搭載した車両の斜視図で、スロープ装置1を展開した状態を示しており、車体2の後部を開閉するドア3を開き車室内4に車椅子(図示せず)を積載するようになっている。
車室内4のフロア後端に車椅子3を出し入れ可能にするスロープ装置1は、図3に示すように未使用時には収納された状態で起立させることにより車室内4後側に搭載され、使用時には図2に示すようにスロープ装置1先端が地上に接しスロープ装置1全体の傾斜がゆるやかな形状になるように展開される。
【0012】
図4は、本発明に係る車両用スロープ装置の一実施形態を示した図である。
図4は、スロープ装置1が展開された状態を示している。
図4に示すように、スロープ装置1は、展開状態で隣り合う車両2側の第1スロープ部10と地上G側の第2スロープ部20の2つのスロープ部を有している。
また、図1に第2スロープ部を第1スロープ部に収納した要部を示す。
【0013】
第1スロープ部10は、スロープ幅方向の両端部でスライド方向(スロープ装置1の展開方向)に延在するアウタレール12と、スロープ幅方向に延在するアウタパネル11とからなりアウタパネル11は地上側のフロア部材11a、複数の中間部のフロア部材11b、及び車両側のフロア部材11cから構成されている。
同様に、第2スロープ部20は、スロープ幅方向の両端部でスライド方向に延在するインナレール22と、スロープ幅方向に延在するインナパネル21とからなり、インナパネル21は地上側のフロア部材21a、複数の中間部のフロア部材21b、及び車両側のフロア部材21cから構成されている。
地上側のフロア部材21aの先端部には一体又は別体として接地先端部23を有している。
【0014】
第1スロープ部10に第2スロープ部20が収納された状態では、第1スロープ部10に構成されている2つのアウタレール12の内側に、第2スロープ部20に構成されている2つのインナレール22が配置されている。
第1スロープ部のフロア部材11a、11b、11c、及び第2スロープ部のフロア部材21a、21b、21cのスロープ幅方向の両端部は、それぞれアウタレール12及びインナレール22の長手方向に延在する溝に嵌合されるとともに溶接又はビス止めにより固定されている。
これらのフロア部材(11a、11b、11c、21a、21b、21c)の表面上を車椅子等が移動可能となっており、アウタレール12及びインナレール22は、車椅子の脱輪を防止するようになっている。
【0015】
アウタレール12とインナレール22との間には、樹脂材からなる摺動支持部材13が介在され、アウタレール12とインナレール22とが摺動可能になっている。
この摺動支持部材は前後左右の4ヶ所に設けられている。
アウタレール12とインナレール22とが、それぞれアルミニウム合金の押出加工等により、前述した溝等の形状に成形されている。
【0016】
第1スロープ部10の両側のアウタレール12の車両2側には、内側に突出したストッパ部が形成されており、第2スロープ部20の第1スロープ部10に対するスライド方向車両2側への移動を規制するようになっている。
つまり、第2スロープ部20の収納状態における過剰スライドを防止するストッパ機構となっている。
【0017】
また、第2スロープ20の車両2側のフロア部材21cには、車両2側端部が下方へ突出することによる係合部が一体的に形成されている。
この係合部と、フロア部材11aの係合部とが互いに係合することにより、第2スロープ部20の第1スロープ部10に対するスライド方向地上G側への移動を規制するようになっている。
つまり、第2スロープ部20の展開状態における過剰スライドを防止するストッパ機構となっている。
【0018】
第2スロープ部20の車両2側のフロア部材21cには、車両側端部上方を傾斜させた傾斜部が形成されており、車椅子が通過する際の段差を低減するようになっている。
第2スロープ部20の地上側のフロア部材21aには、地上側端部下方を傾斜させた傾斜部が形成されるとともに、第2スロープ部20を地上に下ろしたときは、フロア部材21aの接地先端部23が地上Gと接するようになっている。
フロア部材21aの裏面にはゴム材からなる緩衝部材を固定することもでき、第2スロープ部20を地上に下ろしたときの接地状態が良好となるようになっている。
【0019】
フロア部材21aの車両側の端面には凸部が、フロア部材21aに隣り合うフロア部材21bの地上側の短面には凹部が形成されており、互いに嵌合するようになっている。
同様に、全てのフロア部材の互いに対向する端面には、互いに嵌合するように凸部又は凹部が形成されている。
フロア部材は、それぞれアルミニウム合金の押出加工等により、前述した形状に加えて、スロープ装置1の表面側に位置する面には、長手方向平行に延びる滑り止め用の突起部や中空部が一体的に成形されている。
【0020】
図4に示すように、第1スロープ部10の車両2側のフロア部材11cと、車室内4のフロア後端に固定されているヒンジ43は、ピン(回動中心)42を中心として回動可能に接続されている。
ヒンジ43は、アルミニウム合金の押出加工等により、嵌合溝や中空部が一体的に成形されている。
【0021】
図1に基づいて、第2スロープ部20が第1スロープ部10にスライド収納された状態の構造例を詳細に説明する。
図1(a)は、スロープ装置1を車外側に倒した状態の上面視を示し、図1(b)は、第1スロープ部20を第2スロープ部10に収納した状態の先端部付近、要部断面側面視を示し、分かりやすくするためにインナパネル21及びアウタパネル11の断面線は省略してある。
インナレール22は、アウタレール12の先端部に取り付けられた摺動支持部材13に支持されながらアウタレール12の内側をスライドする。
なお、図示を省略したがインナレール22の車両側においてはインナレール車両側先端部に摺動支持部材を取り付けてあり、アウタレールの内側を摺動スライドする。
両側のインナレール22,22から接地先端部23が突出して形成されている。
スロープ装置1が展開した状態では、この接地先端部23が地上に接地することになる。
本実施例では、接地先端部23の両サイドがインナレールの外側に突出(23a)した末広り形状になっていて車椅子等の昇降が容易になっているが、かならずしもこのような末広り形状にする必要はない。
図1(b)に示すように、第2スロープ部20が第1スロープ部10に収納した状態でも、インナレール22の先端部が摺動支持部材13の外側(地面側)に位置しているので従来のような隙間aが生じないので摺動部に異物が混入するのを防止している。
【0022】
本実施例は、第2スロープ部が1つの場合であるが、第2スロープ部をさらに複数に分割したスライド構造であっても同様に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るスライド構造例を示す。
図2】本発明に係る車両用スロープを展開した車両の斜視図である。
図3】本発明に係る車両用スロープを収納した状態を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態における車両用スロープの展開状態の斜視図である。
図5】従来の車両用スロープのスライド構造例を示す。
【符号の説明】
【0024】
1 車両用スロープ装置
2 車両
4 車室内
10 第1スロープ部
11 アウタパネル
12 アウタレール
20 第2スロープ部
21 インナパネル
22 インナレール
23 接地先端部
図1
図2
図3
図4
図5