(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る電子部品は、
(1) 結晶性無機化合物を主成分として形成された基体と、その基体の表面に形成された表面電極とを備える電子部品であり、かつ、
(2) 前記表面電極により被覆されていない前記基体の表面と前記表面電極の縁辺表面部分とを被覆するセラミック被覆層と、前記表面電極における前記セラミック被覆層に被覆されていない表面を直接被覆する金属めっき層とを有し、さらに、
(3) 前記金属めっき層は、少なくとも前記セラミック被覆層と前記表面電極との境界に跨っている。
ここで「跨っている」というのは、基体における表面電極及びセラミック被覆層が形成される面を平面とする場合に、表面電極の縁辺表面部分にまでセラミック被覆層が表面電極の表面を被覆した状態を基体の平面側から観察すると、金属めっき層が表面電極のセラミック被覆層に被覆されずに露出した表面電極の表面とセラミック被覆層の縁辺表面部分とを被覆した状態を指称する。
【0014】
ここで、この発明に係る電子部品の一実施態様について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1には、この発明の一実施態様である電子部品1が示されている。電子部品1は、基体2、表面電極3、セラミック被覆層4、金属めっき層5及びビア導体6を備えている。
【0016】
基体2は、主成分として結晶性無機化合物を含む。結晶性無機化合物としては、高誘電率を有するセラミックを挙げることができ、例えばチタン酸バリウム、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、ジルコン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、及びニオブ酸カリウムナトリウムリチウム等を挙げることができ、これらの化合物を単体で用いても良く、混合して用いても良い。なお、基体2を形成する材料としては、チタン酸バリウムを主体とするセラミックを用いるのが好ましい。詳述すると、基体2に主成分として含まれる結晶性無機化合物、例えば焼結前の原料でチタン酸バリウム等の含有割合は通常少なくとも90質量%である。この基体は、一定の焼結性及び高誘電率を維持することのできる範囲で、他のセラミックを含有していても良い。
【0017】
基体2を形成するために使用される材料として、焼成後に好ましい高誘電率を有する基体2と成るように、上記結晶性無機化合物に加えて、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、ブロムクロロメタン、エタノール、ブタノール、プロパノール、トルエン、及びキシレン等の溶剤、ポリアクリル酸エステル、及びポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、セルロースアセテートブチレート、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、並びにポリビニルブチラール等の結合剤、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、ジメチルフタレート、フタル酸エステル、ポリエチレングリコール誘導体、及びトリクレゾールホスフェート等の可塑剤、グリセリントリオレートを一例とする脂肪酸等の解膠剤、ベンゼンスルホン酸等の界面活性剤、並びに、アルキルアリルポリエーテルアルコール、ポリエチレングリコールエチルエーテル、エチルフェニルグリコール、及びポリオキシエチレンエステル等の湿潤剤等を挙げることができる。
【0018】
基体2の形状としては、基体2の表面に後述の表面電極3及びセラミック被覆層4を形成することができる形状であれば良く、例えば板状、棒状、塊状、及び筒状等を挙げることができる。
図1に示す基体2は、平滑な板状を成す部材である。
【0019】
また、基体2の大きさとしては、特に制限は無く、例えばこの発明に係る電子部品が積層セラミックコンデンサである場合に電子部品が組み込まれて成る配線基板の大きさに合わせて決定されても良い。電子部品1が積層セラミックコンデンサとして使用される場合には、基体2は300〜3000μm程度の厚みを有するように形成されることが多い。
【0020】
表面電極3は、基体2の表面に形成された導電体である。表面電極3は、電子部品1を使用するときに、後述の金属めっき層5を介して、適宜の導電体と電気的に接続される部材である。また、ビア導体6は、表面電極3から基体2の内部に向かって延在し、及び基体2の内部又は外部に設けられる適宜の表面電極3以外の導電体等と電気的に接続している導電体である。
【0021】
表面電極3及びビア導体6は、同一の材料により形成されても良く、異なる材料により形成されても良い。表面電極3及びビア導体6に含まれる金属成分としては、電子部品1の電極に求められる電気的特性を実現することができる金属成分が好ましく、例えばニッケル、銀、銅、金、白金、及び鉛、並びにこれらの金属成分の合金等を用いることができる。表面電極3及びビア導体6に含まれる好ましい金属成分としては、ニッケルを主体とする金属成分を挙げることができる。なお、表面電極3に含まれる金属成分としては、表面電極全質量に対して99.8質量%〜100質量%であるのが好ましい。
【0022】
表面電極3は、例えば上記金属成分の粉末とブチルジグリコール等の有機溶剤とを混合して得られるペーストを用いて、基材2の表面にスクリーン印刷等により塗工した後に、焼成することにより形成することができる。また、ビア導体6は、例えば上記ペーストに、基体2の結晶性無機化合物、酸化アルミニウム、二酸化珪素、及び酸化チタン等の無機化合物の粉末、並びに/又はエチルセルロース等の有機バインダを添加して、基材2における適宜の箇所に設けた貫通孔内に流し込み、更に焼成することで形成することができる。表面電極3の大きさとしては基体2の表面積に応じて決定されれば良く、ビア導体6の大きさとしては、基体2の厚みに応じて決定されれば良い。なお、表面電極3の厚みが2〜20μmであると、後述のセラミック被覆層4の厚みを大きくする必要が無く、セラミック被覆層4の材料を削減することができるので、好ましい。
【0023】
また、表面電極3の断面形状としては、半円状、方形状、横長の長方形状、
図1に示されるように、基体から垂直又は斜めに立上がり、その立上がり先が丸みを帯びて湾曲し、湾曲してから水平又は上に緩やかな凸状に形成され、次いで丸みを帯びて下方へと湾曲し、湾曲してから垂直又は斜めに基体へと続く断面輪郭を有する形状等を挙げることができる。
ビア導体6の形状としては、
図1に示す電子部品1のようにビア導体6が基体2を貫通する態様である場合は、棒状であれば良い。
【0024】
続いて、セラミック被覆層4は、表面電極3により被覆されていない基体2の表面を被覆すると共に、表面電極3の縁辺表面部分を被覆する。表面電極3はその縁辺表面部分がセラミック被覆層4により被覆されているが前記縁辺表面部分以外の表面は金属めっき層で直接に被覆されている。もっとも、金属めっき層5は、表面電極3におけるセラミック被覆層4に被覆されていない表面を被覆するとともに、少なくともセラミック被覆層4と表面電極3との境界に跨って、セラミック被覆層4の縁辺表面部分をも被覆している。
【0025】
電子部品1における基体2、表面電極3、セラミック被覆層4、及び金属めっき層5の厚み方向に切断した断面図である
図1において、基体2の表面は、表面電極3により被覆される部位と、セラミック被覆層4により被覆される部位とに分けられる。更に、表面電極3の表面は、セラミック被覆層4により被覆される部位と、金属めっき層5により直接被覆される部位とに分けられる。
図1においては、基体2の表面を示す輪郭線と、表面電極3の表面を示す輪郭線とが交わる点を、基体−電極接合点7として示している。また、表面電極3の表面を示す輪郭線と、セラミック被覆層4の基体2に接していない側の表面を示す輪郭線とが交わる点を、電極−被覆層接合点8として示している。換言すると、表面電極3とセラミック被覆層4と金属めっき層5との境界が電極−被覆層接合点8である。更に、セラミック被覆層4の基体2に接していない側の表面を示す輪郭線と、金属めっき層5の表面を示す輪郭線とが交わる点を、被覆層−めっき層接合点9として示している。
【0026】
上述の表面電極3及びセラミック被覆層4の配置の説明を換言すると、表面電極3は、その縁辺表面部分、つまり表面電極3の表面における基体−電極接合点7から電極−被覆層接合点8までの部分がセラミック被覆層4により被覆されている。よって、表面電極3の表面を示す輪郭線において、一方の電極−被覆層接合点8から他方の電極−被覆層接合点8までの部分は、セラミック被覆層4によっては被覆されていない。
【0027】
また、上述の表面電極3、セラミック被覆層4及び金属めっき層5の配置の説明を換言すると、表面電極3の表面を示す輪郭線において、一方の電極−被覆層接合点8から他方の電極−被覆層接合点8までの部分と、セラミック被覆層4の基体2に接していない側の表面を示す輪郭線において、電極−被覆層接合点8から被覆層−めっき層接合点9までの部分が、金属めっき層5により被覆されている。
【0028】
この発明に係る電子部品の好ましい態様としては、
図1のように電子部品の切断面を水平方向に観察したときに基体−電極接合点7、電極−被覆層接合点8、及び被覆層−めっき層接合点9が特定の位置関係にある態様を挙げることができる。
【0029】
詳述すると、電子部品1は、セラミック被覆層4が被覆する表面電極3の縁辺表面部分における、基体2の表面に平行な方向におけるセラミック被覆層4の被覆長さaが、金属めっき層5が被覆するセラミック被覆層4の縁辺表面部分における、基体2の表面に平行な方向における金属めっき層5の被覆長さbよりも大きい態様であるのが好ましい。換言すると、電子部品1は、
図1における基体−電極接合点7と電極−被覆層接合点8との水平距離であるa(以下において水平距離aと称する。)が、及び電極−被覆層接合点8と被覆層−めっき層接合点9との水平距離であるb(以下において水平距離bと称する。)よりも大きい態様であるのが好ましい。水平距離aが水平距離bよりも大きいと、金属めっき層5とセラミック被覆層4とが重なる面積が、水平距離aが水平距離bよりも小さい場合に比べて相対的に小さくなる。金属めっき層5とセラミック被覆層4とが重なる面積が小さければ、セラミック被覆層4と金属めっき層5との熱膨張係数差に起因する残留内部応力がかかったとしても、異種材料である金属めっき層5とセラミック被覆層4との界面に加わる前記残留内部応力が低減されるので、金属めっき層5とセラミック被覆層4との密着性を保持することができると共に、クラックを防止することができるという利点がある。逆に、水平距離aが水平距離bよりも小さいと、残留内部応力によりセラミック被覆層4の被覆層−めっき層接合点9付近でクラックが発生する虞がある。
【0030】
なお、基体−電極接合点7と電極−被覆層接合点8との水平距離であるaの好適な寸法は20μm以上125μm以下であり、電極−被覆層接合点8と被覆層−めっき層接合点9との水平距離であるbの好適な寸法は5μm以上124μm以下であるのが好ましい。
水平距離aが20μm以上125μm以下であると、表面電極3において基体2とセラミック被覆層4とで挟まれる領域が大きいので、基体2と表面電極3との界面にめっき液が浸入することを、より一層確実に防止可能になると共に、表面電極3が基体2から剥離することも抑制することができるようになり、一方、水平距離aが20μm未満であると、セラミック被覆層が表面電極を被覆する面積が相対的に小さくなるので、セラミック被覆層と表面電極との界面にめっき液が侵入して表面電極と基体との界面にめっき液が侵入し易くなるとともに、セラミック被覆層による表面電極に対する押さえの利きが悪くなって表面電極が基体から脱落する虞が大きくなり、また、水平距離aが125μmを超えると、表面電極3のセラミック被覆層4に被覆されていない表面(露出表面)の表面積が小さくなるので、通電状態の不良を引き起こすおそれがある。
更に、水平距離bが5μm以上124μm以下であると、セラミック被覆層4、特に、セラミック被覆層4における表面電極3の縁辺表面部分を被覆している部位に、クラック及びチッピング等が発生することを防止可能となる。クラック及びチッピング等の断面水平方向の長さが通常120μm以下であるから水平距離bを120μmを超えて長くする必要性は小さい。水平距離bが5μm未満であると、クラック及びチッピング等の成長が早いと短期間の内に表面電極3と基体2との間にめっき液が侵入する事態が将来する虞がある。
【0031】
セラミック被覆層4の材料としては、金属めっき層5を形成するときにめっき液がアルカリ性であることが多いので、アルカリ性めっき液によって侵されないセラミックが好ましく、例えばチタン酸バリウム、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、ジルコン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、及びニオブ酸カリウム・ナトリウム・リチウム等を挙げることができ、これらの化合物を単体で用いても良く、混合して用いても良い。
【0032】
セラミック被覆層4の好ましい実施態様としては、基体2に含まれる結晶性無機化合物と同じ材料を主体とする態様を挙げることができる。基体2とセラミック被覆層4とが同じ材料を主体とすることにより、基体2及びセラミック被覆層4を焼結したときに、基体2とセラミック被覆層4とが馴染み易く、セラミック被覆層4と基体2との接合強度が高くなる。その接合強度が高まることにより、基体2からセラミック被覆層4が剥離し難くなる。基体2からセラミック被覆層4が剥離し難いと、セラミック被覆層4の一部が基体2の表面と共に表面電極3を挟み込むようにして形成されているので、換言するとセラミック被覆層4により表面電極3が基体2に対して押し付けられるようにして形成されているので、表面電極3が基体2から剥離し難くなる。セラミック被覆層4に基体2の結晶性無機化合物と同種の材料が、セラミック被覆層4全質量に対して90質量%以上含まれる場合に、基体2とセラミック被覆層4との接合強度が高くなるという上記効果を得易くなる。
【0033】
セラミック被覆層4の大きさとしては、基体2の表面であって表面電極3によって被覆されていない部分の大きさに応じて決定されれば良く、セラミック被覆層4の厚みとしては、上述したように、基体−電極接合点7と電極−被覆層接合点8との水平距離であるaよりも、電極−被覆層接合点8と被覆層−めっき層接合点9との水平距離であるbが小さくなるようにして決定されれば良い。具体的には、例えば表面電極3の形状が
図1に示すような扁平なドーム状であり、表面電極3の最も隆起している部位の厚みが2〜20μmである場合、また、表面電極3の断面形状が方形又は長方形である場合、表面電極の厚みが2〜20μmである場合、セラミック被覆層4の厚みとしては1.5〜15μmである態様を挙げることができる。
【0034】
セラミック被覆層4の形状としては、基体2の表面であって表面電極3によって被覆されていない部分の形状、及び表面電極3の縁辺表面部分の形状に応じて決定されるので、特に制限は無い。
【0035】
また、セラミック被覆層4の形成方法としては、基体2の表面に表面電極3の材料を上述したようにスクリーン印刷で塗工し、未焼成の表面電極3を形成した後に、未焼成の基体2と未焼成の表面電極3の縁辺表面部分とに対して、セラミック被覆層4の上記材料をスクリーン印刷等で塗工した後に焼成する方法を挙げることができる。なお、電子部品1が所望の電気的特性を有し、かつこの発明の目的を達成することができる限り、基体2、表面電極3及びセラミック被覆層4の焼成は分けて行っても良く、同時に行っても良い。
【0036】
金属めっき層5の材料としては、表面電極3の酸化を防止し、かつ電子部品1に求められる電気的特性及び機械的特性を満たし、かつ電子部品1を内蔵する配線基板を作製するときに必要であるはんだの濡れ性を確保することができれば良く、例えば銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、錫、鉄、ロジウム、パラジウム及び白金、並びにこれらの合金等を挙げることができる。金属めっき層5の好ましい材料は銅である。
【0037】
金属めっき層5の形成方法としては、従来公知のめっき方法を採用することができ、例えば表面電極3及びセラミック被覆層4の境界を跨ぐようにしつつ、表面電極3のセラミック被覆層4に被覆されていない部分に金属めっき層5が形成されるように、アルカリ性のピロリン酸銅浴による電解銅めっきを用いてめっきをする方法を挙げることができる。なお、金属めっき層5は、
図1に示すような一層構造であっても良く、複数層構造であっても良い。
【0038】
電子部品1においては、表面電極3の縁辺表面部分がセラミック被覆層4により被覆されているので、金属めっき層5を形成するときのめっき液が基体2と表面電極3との界面に浸入し難い。めっき液が基体2と表面電極3との界面に浸入し難いと、基体2内部における本来は絶縁すべき部材同士が浸入しためっき液により導通状態となってしまう事態を防止することができる。
【0039】
また、電子部品1は、
図1に示すように、金属めっき層5により電極−被覆層接合点8が被覆され、かつセラミック被覆層4により基体−電極接合点7が被覆されているので、金属めっき層5とセラミック被覆層4との間、セラミック被覆層4と表面電極3との間、及び表面電極3と基体2との間に、湿気が浸入し難い。各部材間に湿気が浸入し難いと、基体2内部における本来は絶縁すべき部材同士が浸入した湿気により導通状態となってしまう事態、及び各部材が湿気により早期に劣化する事態を防止することができる。
【0040】
形成される金属めっき層5の厚みとしては、例えば10〜20μmであれば、容易に金属めっき層5が剥離又は破損することが無く、各部材間における湿気の浸入も防止することができるので、好ましい。
【0041】
電子部品1においては、基体2及びセラミック被覆層4にガラスを含んでいても良い。基体2及びセラミック被覆層4に含まれるガラスとしては結晶性及び非結晶性のいずれであっても良く、例えば二酸化珪素を挙げることができる。なお、基体2及びセラミック被覆層4に含まれるガラスが基体2及びセラミック被覆層4の全質量に対して1質量%以下であると、金属めっき層5を形成するときに用いることが多いアルカリ性のめっき液に侵されることが無いので好ましい。
好適な基体は、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、二酸化マンガン、酸化イットリウムの混合物で形成されることができ、好適な基体を形成するための組成物としては、チタン酸バリウム95〜99質量部、酸化マグネシウム0.1〜0.8質量部、二酸化ケイ素0.1〜1.0質量部、二酸化マンガン0.01〜0.4質量部、酸化イットリウム0.3〜2.7質量部、及び酸化カルシウム0〜0.1質量部からなる組成物により形成することができる。
【0042】
この発明に係る電子部品が積層セラッミックコンデンサである場合、その積層セラミックコンデンサの好ましい態様としては、基体が導体層とチタン酸バリウムを主体として成る誘電体層とが積層された積層体であり、かつ表面電極がニッケルを主体とし、かつ金属めっき層が銅めっき層である積層構造を挙げることができる。この好ましい態様であると、この発明に係る電子部品が積層セラッミックコンデンサとして使用することができる電気的及び機械的特性を有するようになる。
【0043】
この発明に係る電子部品の更に好ましい態様を、
図2に示す。
図2に示される電子部品101は、基体21の表面に対して垂直な方向に、グランド用導体層10Aと表面電極31とを接続するグランド用ビア導体601、及び、電源用導体層10Bと表面電極31とを接続する電源用ビア導体602が形成されている。また、基体21の表面に対して平行な面で前記基体21を切断したときに、前記グランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602が等間隔に整列して成るビアアレイ型積層セラミックコンデンサである。
【0044】
基体21は、上記の好ましい態様のようにグランド用導体層10Aと電源用導体層10Bと誘電体層11とを積層してなる積層体である。なお、グランド用導体層10Aと電源用導体層10Bとは交互に積層されている。
【0045】
グランド用導体層10Aは、導電性を有しており、グランド用ビア導体601に電気的に接続されている。更に、電源用導体層10Bは、導電性を有しており、電源用ビア導体602に電気的に接続されている。また、グランド用導体層10A及び電源用導体層10Bは、例えば板状の誘電体層11の表面にスクリーン印刷等により形成される。グランド用導体層10A及び電源用導体層10Bは、その形状及び大きさについて特に制限は無く、電子部品101に要求される部材間の電気的接続態様、及び基体21の大きさ等に応じて適宜に決定されれば良い。グランド用導体層10A及び電源用導体層10Bの材料としては、電子部品101に要求される電気的特性、並びに、誘電体層11に対する密着性及び親和性等に応じて決定されれば良く、例えばニッケルを主体とするのが好ましい。グランド用導体層10A及び電源用導体層10Bの材料として、ニッケルを主体として、例えばチタン酸バリウム、又は、チタン酸バリウムを主材として酸化マグネシウム、二酸化珪素、二酸化マンガン及び酸化イットリウム等を含む誘電体を含むのが更に好ましい。
【0046】
誘電体層11は、基体21の大部分を形成する部分であり、シート状物が積層されてなる部材である。また、誘電体層11は、板状を成し、前記グランド用導体層10A及び電源用導体層10Bを内部に挟み込むようにして積層されており、グランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602が厚み方向に貫通する部材である。誘電体層11の大きさ及び形状は、特に制限は無いが、例えば電子部品101がコンデンサであり、配線基板に組み込まれるときに、配線基板の大きさ及び形状に合うように決定されると良い。誘電体層11の材料としては、チタン酸バリウムを主体とするのが好ましい。また、誘電体層11の材料として、チタン酸バリウムを主体として、酸化マグネシウム、二酸化珪素、二酸化マンガン及び酸化イットリウム等の誘電体を含むのが更に好ましい。
【0047】
図2に示されるように、グランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602は、基体21の一表面から、基体21内のグランド用導体層10A及び電源用導体層10Bを反対側の表面まで貫通することにより、基体21の一表面及び反対側の表面に形成される表面電極31を電気的に接続している。なお、この発明に係る電子部品においては、基体の一表面と反対側の表面とに表面電極が形成される場合、基体の一表面から反対側の表面までを一本の棒状のビア導体が貫通する必要は無く、少なくとも導体層と表面電極とを電気的に接続している限り、基体の表面に対してビア導体が傾斜して形成されていても良く、また基体の厚み方向に短い棒状のビア導体が軸線をずらして配置されていても良い。グランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602の材料、形状及び大きさ等については、
図1に示すビア導体6と同様である。グランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602の好ましい態様としては、例えば複数のグランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602が基体21の一表面から反対側の表面までを貫通し、更に各グランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602の軸線が平行に成るように設置され、基体21の表面に対して平行な面で前記基体21を切断したときに、グランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602が等間隔に整列して成り、グランド用ビア導体601と電源用ビア導体602とが交互に配置されている態様を挙げることができる。この態様の電子部品は、隣接するビア導体の極性を互い違いにすることによって、インダクタンスの低減を図ることができる。
【0048】
図2に示す電子部品101の表面電極31とセラミック被覆層41と金属めっき層51との位置関係、つまり表面電極31の縁辺表面部分にセラミック被覆層41が形成され、表面電極31とセラミック被覆層41との境界を跨ぐようにして表面電極31の表面に金属めっき層51が形成される態様については、
図1に示す電子部品1の表面電極3とセラミック被覆層4と金属めっき層5との位置関係と同様である。
【0049】
ここで、
図2に示す電子部品101をX−X’面で切断した断面図を
図3に示すと共に、電子部品101をY−Y’面で切断した断面図を
図4に示す。
【0050】
前記電子部品101をX−X’面で切断すると、
図3に示すように、グランド用導体層10Aが露出し、かつグランド用ビア導体601と電源用ビア導体602とが7行7列で等間隔に配置されており、かつ各グランド用ビア導体601がグランド用導体層10Aによって電気的に接続されており、かつグランド用導体層10Aと各電源用ビア導体602とが電気的に接続されていないので、各グランド用ビア導体601と各電源用ビア導体602とは電気的に接続されていないことが分かる。
【0051】
前記電子部品101をY−Y’面で切断すると、
図4に示すように、電源用導体層10Bが露出し、かつグランド用ビア導体601と電源用ビア導体602とが7行7列で等間隔に配置されており、かつ各電源用ビア導体602が電源用導体層10Bによって電気的に接続されており、かつ電源用導体層10Bと各グランド用ビア導体601とが電気的に接続されていないので、各グランド用ビア導体601と各電源用ビア導体602とは電気的に接続されていないことが分かる。
【0052】
ここで、この発明に係る電子部品の製造方法について、説明する。
【0053】
この発明に係る電子部品の製造方法は、基体となる未焼成基体の表面に表面電極となる未焼成表面電極を形成する工程と、未焼成基体の表面における未焼成表面電極により被覆されていない表面と未焼成表面電極の縁辺表面部分とをセラミック被覆層となるセラミックペーストで被覆するセラミック被覆工程と、セラミックペーストを被覆した未焼成基体を焼成する焼成工程と、焼成工程により得られる表面電極において、セラミック被覆層に被覆されていない表面を少なくともセラミック被覆層と表面電極との境界に跨って金属めっき層で被覆する金属めっき工程とを挙げることができる。以下においては、具体例として、この発明の一実施態様である電子部品101の製造方法を例示しつつ説明する。
【0054】
電子部品101の基体21は、グランド用導体層10A及び電源用導体層10Bと誘電体層11とを有しており、それぞれを形成する工程は別である。
【0055】
基体21となる未焼成基体を形成するためには、先ず誘電体層11となる未焼成誘電体層を準備する。未焼成誘電体層は、例えばチタン酸バリウム粉末を主体として、酸化マグネシウム、二酸化珪素、二酸化マンガン及び酸化イットリウム等の誘電体粉末と、適宜の分散剤と、適宜の可塑剤とを、エタノール及びトルエン等の混合溶媒中で湿式混合し、バインダを添加して更に混合することにより得られるスラリーをドクターブレード法等でグリーンシートと称されることのあるシート状物に成形することで形成することができる。
【0056】
更に、電子部品101のように、基体21内にグランド用導体層10A及び電源用導体層10Bが設けられる場合は、未焼成誘電体層の表面にグランド用導体層10A及び電源用導体層10Bとなる未焼成導体層を形成する。未焼成導体層は、例えばニッケル粉末と、チタン酸バリウムを主材として酸化マグネシウム、二酸化珪素、二酸化マンガン、酸化イットリウム等を含む誘電体粉末と、テルピネオール及びブチルジグリコール系溶剤、並びにセルロース系樹脂等を含む有機ビヒクルとを適宜の体積比で湿式混合して得られるペーストをスクリーン印刷で未焼成誘電体層等の対象物に塗工することにより形成することができる。このとき、未焼成導体層のクリアランスホールの口径は100〜800μm程度であれば良い。もっとも、この発明に係る電子部品が基体内に導体層が設けられない態様である場合は、未焼成導体層を形成する工程は必要無い。
【0057】
未焼成基体を準備する工程は、未焼成導体層を表面に形成して成る複数枚の未焼成誘電体層を、例えば60〜80℃、200〜500kgf/cm
2という条件で、所望の基体21の厚みにまで積層及び圧着することで達成される。
【0058】
なお、電子部品101のように、グランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602が形成されている場合は、未焼成基体の表面に表面電極31となる未焼成表面電極を形成する工程の前に、未焼成ビア導体を未焼成基体内に形成すると良い。未焼成ビア導体は、ニッケル粉末と、チタン酸バリウムを主材とする酸化マグネシウム、二酸化珪素、二酸化マンガン、酸化イットリウム等の誘電体粉末と、テルピネオール及びブチルジグリコール系溶剤、並びにセルロース系樹脂等を含む有機ビヒクルとを適宜の体積比で湿式混合して得られるペーストを用いて形成することができる。未焼成ビア導体の形成方法としては、例えば、未焼成基体にレーザー成形機等によって口径100〜300μm程度の貫通孔を形成し、貫通孔内にスクリーン印刷等によって得られたペーストを充填する方法を挙げることができる。
【0059】
なお、電子部品101においてグランド用ビア導体601及び電源用ビア導体602は、基体21の表面に垂直な一本の棒状に形成されているが、短い棒状のビア導体をそれぞれの軸線をずらして配置するようにした場合、未焼成導体層が印刷されて成る未焼成誘電体層に貫通孔を設けてペーストを充填した上で、未焼成誘電体層同士を積層圧着することで未焼成ビア導体が形成された未焼成基体を作製することができる。
【0060】
次いで、未焼成基体の表面に表面電極31となる未焼成表面電極を形成する工程としては、先ずニッケル粉末と、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムを主材として酸化マグネシウム、二酸化珪素、二酸化マンガン、酸化イットリウム等を含む誘電体粉末と、テルピネオール及びブチルジグリコール系溶剤、並びにセルロース系樹脂等を含む有機ビヒクルとを適宜の体積比で湿式混合してペーストを作製してこれを表面電極形成用ペーストとし、未焼成基体の表面に前記表面電極形成用ペーストをスクリーン印刷等で所望の表面電極31の配置に成るように塗工すると、
図5に示されるように、未焼成基体21Aの表面に未焼成表面電極31Aが形成される。未焼成表面電極31Aは、未焼成基体21Aの裏面にも形成される。
図5において、61Aで示すのは未焼成ビア導体である。なお、表面電極形成用ペーストの印刷後に未焼成表面電極を乾燥させて、未焼成表面電極をある程度固化させると、一旦形成した未焼成表面電極の形状を崩すことなく、この後の工程でセラミック被覆層41を形成し易くなるので好ましい。
【0061】
更に、未焼成基体の表面における未焼成表面電極により被覆されていない表面と未焼成表面電極の縁辺表面部分とをセラミック被覆層41と成るセラミックペーストで被覆するセラミック被覆工程は、
図5に示されるように、未焼成表面電極31Aを形成した未焼成基体21Aの表面にマスク部材27を配設し、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、二酸化珪素、二酸化マンガン、及び酸化イットリウム等のセラミック粉末と、適宜の分散剤及びバインダと、テルピネオール及びブチルジグリコール系溶剤とを混練することにより得られるセラミック被覆層形成用ペースト28を、前記マスク部材27を介して、未焼成表面電極31Aの縁辺表面部分と未焼成基体21Aの表面とを被覆するようにするいわゆるスクリーン印刷等で塗工することにより、未焼成セラミック被覆層41Aが形成される。ここで、未焼成セラミック被覆層41Aには、二酸化珪素が含まれることになるが、二酸化珪素の含有量が未焼成セラミック被覆層41全質量に対して1質量%以下であるので、未焼成セラミック被覆層を焼成することにより形成されるセラミック被覆層41がアルカリ性のめっき液に侵されることは無い。
【0062】
なお、未焼成表面電極及び未焼成セラミック被覆層は、焼成による材料の変形又は収縮を考慮して、
図1に示すような基体−電極接合点7と電極−被覆層接合点8との水平距離aが所望の大きさになるように形成すると良い。
【0063】
続いて、セラミックペーストを被覆した未焼成基体を焼成する焼成工程は、未焼成基体と未焼成ビア導体と未焼成表面電極と未焼成セラミック被覆層とを焼成する工程であり、焼成条件としては例えば未焼成基体を大気中、200〜300℃で5〜20時間脱脂した後に、還元雰囲気下、1100〜1400℃で焼成するという条件を挙げることができる。焼成により、
図5に示されるように、基体21の表面に表面電極31及びセラミック被覆層41を備えた焼成体が形成される。
【0064】
次いで、焼成工程により得られる表面電極31においてセラミック被覆層41に被覆されていない表面を、少なくともセラミック被覆層41と表面電極31との境界に跨って金属めっき層51で被覆する金属めっき工程は、例えばセラミック被覆層41と表面電極31との境界を跨ぐようにして表面電極31の表面に、アルカリ性のピロリン酸銅浴による電解めっきを施すことで達成される。つまり、電子部品101における表面電極とセラミック被覆層と金属めっき層との位置関係が同じである電子部品1について言うと、金属めっき層5(51)は、
図1及び
図5に示すように、表面電極3(31)を直接被覆すると共に、電極−被覆層接合点8を跨いでセラミック被覆層4(41)の一部も被覆するように形成される。
【0065】
以上の工程により、例えば
図2に示されるような電子部品101を作製することができる。作製された電子部品101は、セラミック被覆層41が表面電極31の縁辺表面部分を被覆しているので、金属めっき層を形成するときに、表面電極31と基体21との界面からめっき液が浸入し難く、セラミック被覆層41を形成することにより表面電極31が露出する部分が小さくなるので、表面電極31が外部環境から受ける衝撃が小さくなり、結果として表面電極31が剥離し難くなり、更に、通常は基体の誘電体層とビア導体との間、及び、導体層と誘電体層との間に使用環境中の湿気等が浸入する可能性があるが、表面電極31の一部がセラミック被覆層41で被覆され、かつセラミック被覆層41の一部と表面電極31とが金属めっき層51で被覆されているので、高い耐湿性を有する。なお、電子部品が耐湿性を有していると、本来は絶縁すべき部材同士が浸入した湿気により導通状態となってしまう事態、及び各部材が湿気により早期に劣化する事態を防止することができる。
【0066】
この発明に係る電子部品は、積層セラミックコンデンサ、インダクタ、及び超音波振動子に適用することができ、特に、積層セラミックコンデンサに適している。
【0067】
更に、この発明に係る配線基板は、この発明に係る電子部品を内蔵して成る。通常、コンデンサ等の電子部品を内蔵する配線基板は、電子部品の表面の凹凸に合わせて配線基板の外形が形成され、積層電子部品の表面電極上に外部端子用の金属めっきを施す場合には、マスキングとして用いるフォトレジストフィルムを電子部品の表面の凹凸に合わせて密着させる必要がある。したがって、電子部品の表面における凹凸が大きい場合には、電子部品の表面にフォトレジストフィルムの密着性が低下し、外部端子用の金属めっきの厚みにおけるバラつき、及び、配線基板の外形における凹凸等が起こり得る。なお、配線基板の外形に凹凸が生じていると、配線基板と他の電子装置とを電気的な接続をするときに、接触不良を起こす可能性がある。
【0068】
この発明に係る電子部品は、従来の電子部品に比べて、基体から表面電極の突出している長さが小さい。詳述すると、セラミック被覆層を設けない場合の表面電極の厚み、つまり基体の表面から表面電極の最も突出している部位の表面電極の厚みに比べて、この発明に係る電子部品は、基体の表面にセラミック被覆層を設けて成るので、表面電極の厚みであるセラミック被覆層の表面から表面電極が突出する長さが小さい。換言すると、この発明に係る電子部品は、その表面における凹凸が、従来に比べて小さい。したがって、この発明に係る電子部品は、電子部品における凹凸の少ない表面に対してフォトレジストフィルムを密着させるときに、高い密着性を得ることができる。
【0069】
よって、この発明に係る電子部品が内蔵されているこの発明に係る配線基板は、この発明に係る電子部品の表面における凹凸が小さいので、外部端子用の金属めっきの厚みにバラつきが生じ難く、それによって配線基板の外形に凹凸も生じ難い。また、外部端子用の金属めっきの厚みにおけるバラつき、及び配線基板の外形における凹凸が生じたとしても、非常に小さい範囲で済む。したがって、この発明に係る配線基板は、外形に凹凸が生じないこと、又は凹凸が生じたとしても僅かであることにより、配線基板と他の電子装置との電気的な接触不良が発生し難い。
【0070】
ここで、この発明に係る配線基板の一実施態様について、図を参照しつつ説明する。
【0071】
図6は、この発明に係る配線基板の一例を示す概略断面図である。配線基板12は、コア主面13a及びコア裏面13bを有する基材141と、基材141のコア主面13a上に形成される配線積層部15aと、基材141のコア裏面13b上に形成される配線積層部15bと、前記基材141内、又は配線積層部15a、15b内に収容される電子部品101とを備える。また、基材141と後述の樹脂絶縁層23a及び23bとを積層して成る部材を、以下において「樹脂コア基板14」と称することがある。なお、
図6に示す電子部品101は、
図2に示す電子部品101と同様の部材により成るので、電子部品101についての詳細な説明は省略する。
【0072】
前記樹脂コア基板14は、電子部品101を収容し、配線基板12全体を支持するコア基板である。樹脂コア基板14は、通常、電子部品101を収容する収容部16を有する。収容部16は、樹脂コア基板14に設けられた貫通孔及び有底穴のうちの少なくとも一方により形成される。樹脂コア基板14の材料としては、特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の耐熱性を有する高分子材料を用いるのが好ましい。更に、より一層優れた強度及び熱特性を有する樹脂コア基板14とするために、ガラス繊維、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ポリアミド繊維織布等を芯材として備えていても良い。
【0073】
また、樹脂コア基板14には、コア主面13aとコア裏面13bとを導通するスルーホール導体17を設けることができる。スルーホール導体17は、貫通孔の内部に充填されても良く、また、貫通孔の内壁面に形成されたスルーホール導体17を除く他の部分が絶縁性硬化体18により閉塞された形態であっても良い。
【0074】
電子部品101は、通常、樹脂コア基板14を有する収容部16内に収容された状態で、エポキシ樹脂等の樹脂材料を含む充填剤19によって、収容部16内に固定されている。
【0075】
配線積層部部15a、15bは、通常、樹脂コア基板14と、樹脂コア基板14に収容された電子部品101との両面に積層されている。配線積層部15aは、導電層20a、20bと樹脂絶縁層22a、22b、23a、23bとが交互に積層して形成され、かつ最外層にはレジスト層24a、24bを備えている。この配線積層部15a、15bは、配線基板12の一面側のみに形成されても良いが、通常、両面側に形成され、更に積層方向に対称形状に形成されることが好ましい。
【0076】
一般に、積層電子部品等を内蔵する配線基板12の半導体素子26側に配置される接続端子25aの端子間ピッチと、配線基板12のマザーボード側に配置される接続端子25bの端子間ピッチとには、大きな差がある。したがって、配線積層部15a、15bを設けることで、この配線積層部15a、15b内でピッチを自在に調整して配線基板12の
図6における上面側から下面側へ異なる端子側ピッチの出力を行うようにすることができる。
【0077】
更に、配線積層部15a、15bにおける樹脂絶縁層22a、22b、23a、23bの材料としては、特に制限されないが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の耐熱性を有する高分子材料を用いることが好ましい。また、配線積層部15a、15bの導電層20a、20bは、必要に応じて他の層の導電層とビア等を用いて導通しても良い。
【0078】
ここで、
図6に示す配線基板12の製造方法について、説明する。
【0079】
先ず、例えば縦400mm×横400mm×厚さ0.65mmの基材141の両面に銅箔が貼付された銅張積層板(図示せず)を準備する。基材141の上面及び下面を粗化した後、基材141の上面及び下面に、無機フィラーが添加された厚さ80μmのエポキシ樹脂フィルムを熱圧着により貼付し、樹脂絶縁層23a及び23bを形成する。
【0080】
次に、樹脂絶縁層23aの上面及び樹脂絶縁層23bの下面に、厚さ50μmの導電層20aをパターン形成する。具体的には、樹脂絶縁層23aの上面及び樹脂絶縁層23bの下面に対する無電解銅めっきを行った後に、エッチングレジストを形成し、次いで電解銅めっきを行う。更に、エッチングレジストを除去してソフトエッチングを行う。次に、基材141、樹脂絶縁層23a及び23bから成る積層体に対してルータを用いて孔開け加工を行い、収容部16となる貫通孔を所定位置に形成し、樹脂コア基板14の中間製品を得る。
【0081】
続いて、コア主面13aと電子部品主面13cとを同じ側に向け、かつ、コア裏面13bと電子部品裏面13dとを同じ側に向けた状態で、収容部16内に電子部品101を適宜のマウント装置を用いて収容する。なお、収容部16のコア裏面13b側の開口部は剥離可能な粘着テープでシールされ、同テープの粘着面には電子部品101が貼り付けられて仮固定される。
【0082】
更に、収容部16の内面と電子部品101の側面との間隙に、適宜のディスペンサ装置を用いて、熱硬化性樹脂製の充填剤19を充填する。その後、加熱処理を行うと、充填剤19が硬化することにより、電子部品101が収容部16内に固定される。粘着テープはこの時点で剥離する。
【0083】
その後、電子部品101における表面電極31を覆う金属めっき層51の表面を粗化し、表面粗さRaが約0.3μmの粗面とする。
【0084】
更に、従来周知の手法に基づいて、コア主面13a上に配線積層部15aを形成すると共に、コア裏面13bの上に配線積層部15bを形成する。なお、レジスト層24a及び24bは、樹脂絶縁層23a及び23bの表面に形成されて成る導電層20a及び20bを含む層の表面に、感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより形成される。その後、所定のマスクを配置した状態で露光及び現像を行うことにより、レジスト層24a及び24bに、接続端子25a及び25bを形成するための開口部をパターニングする。更に、開口部内にはんだによって接続端子25a及び25bを形成することにより、配線基板12を完成させる。
【実施例】
【0085】
この発明に係る電子部品の、電子部品めっき液の浸入のし難さ、表面電極の剥離のし難さ、及びセラミック被覆層のクラックの生じ難さについて、検証を行った。
【0086】
(実施例1)
実施例1においては、導体層と誘電体層とを積層して成る積層体と、ビア導体と、表面電極と、セラミック被覆層と、金属めっき層とを備える積層電子部品を作製することとした。積層電子部品の作製工程は以下の通りである。
(1) グリーンシート
チタン酸バリウム98.5質量部、酸化マグネシウム0.3質量部、二酸化ケイ素0.4質量部、二酸化マンガン0.2質量部、及び酸化イットリウム0.6質量部を含む平均粒径0.5μmの誘電体粉末混合物と、分散剤として1.0質量部の高分子型陰イオン分散剤と、可塑剤として3.0質量部のジブチルフタレートとを、エタノール15質量部及びトルエン25質量部との混合溶媒を用いて湿式混合した。湿式混合により得られた混合物に、ブチラール系バインダとして9.0質量部の分子量約50000のポリビニルブチラールを添加して更に混合し、スラリーを得た。そのスラリーをドクターブレード法により、厚み7μmのシート状物と、厚み30μmのシート状物とを作製した。なお、厚み7μmのシート状物は、積層体である基体の表面以外の層、つまり内側に位置することになる層を形成するグリーンシートであり、厚み30μmのシート状物は、基体の表面層を形成するグリーンシートである。
(2) 表面電極用ペースト
次に、いずれも粒径0.4〜10.0μmである、ニッケル粉末80質量部と、チタン酸バリウム粉末19.7質量部、並びに、酸化マグネシウム0.06質量部、二酸化珪素0.08質量部、二酸化マンガン0.04質量部、及び酸化イットリウム0.12質量部の希土類酸化物を主に含み、かつチタン酸バリウムを主材とする誘電体磁器組成物粉末とを混合して成る無機固形分80質量部と、テルピネオール20質量部及びエチルセルロース80質量部を含む有機ビヒクルとを混練することにより表面電極用ペーストを作製した。なお、表面電極用ペーストは、3本ロールにより混練し、ペーストを塗工するときに粘度が約100Pa・sとなるように調整した。
(3) 導体層用ペースト
続いて、平均粒径が0.2μmであるニッケル粉末を12体積%、平均粒径0.1μmである前記誘電体粉末混合物を3体積%、及び前記有機ビヒクルを85体積%の割合で湿式混合することにより導体層用ペーストを作製した。なお、導体層用ペーストは、粘度が約11Pa・sとなるように調整した。
(4) ビア導体用ペースト
更に、平均粒径が2.5μmであるニッケル粉末を40体積%、平均粒径が0.5μmである前記誘電体粉末混合物を16体積%、及び前記有機ビヒクルを44体積%の割合で湿式混合することによりビア導体用ペーストを作製した。なお、ビア導体用ペーストは、粘度が約1000Pa・sとなるように調整した。
(5) セラミック被覆層用ペースト
スラリーの粘度が約100Pa/sと成るように調整したほかは(1)の工程におけるのと同様にして得られるスラリーをセラミック被覆層用ペーストとした。
(6) 未焼成積層体
次いで、(1)で作製した厚み7μmのグリーンシートの表面に、未焼成の状態で導体層のクリアランスホールの孔径が約400μmとなるように、導体層用ペーストをスクリーン印刷により塗工した。導体層用ペーストを塗工して成る100〜150枚のグリーンシートを、60〜80℃、約300kgf/cm
2の条件で圧着及び積層した。更に、導体層用ペーストが塗工されて成るグリーンシートの積層体の両面に、(1)で作製した厚み30μmのグリーンシートを60〜80℃、約300kgf/cm
2の条件で圧着することにより、厚み約1200μmの未焼成積層体を形成した。
(7) 貫通孔
上記未焼成積層体に、レーザー成形機によって、孔径約120μmの貫通孔を450〜700μm間隔で形成した。
(8) 未焼成ビア導体
未焼成積層体に形成された貫通孔に、ビア導体用ペーストをスクリーン印刷により充填することによって、未焼成積層体内部に未焼成ビア導体を形成した。
(9) 未焼成の表面電極
次に、内部に未焼成ビア導体が形成されている未焼成積層体をスクリーン印刷装置に設置する。設置された未焼成積層体の表面には、所望の位置に表面電極が形成されるように、適宜の形状の貫通孔が形成されたマスク部材を配置する。更に、マスク部材を配置したままで、表面電極用ペーストをマスク部材の表面に供給し、表面電極用ペーストをマスク部材に対して撫で付けるようにして、スキージをマスク部材に摺動させる。このスキージの摺動によって、表面電極用ペーストがマスク部材の貫通孔内に刷り込まれる。したがって、未焼成積層体の表面に、マスク部材の各貫通孔を介して、表面電極のパターンが印刷されることになる。印刷後には、マスク部材を未焼成積層体から取り外す。未焼成の表面電極が印刷された未焼成積層体を、スクリーン印刷装置から取り外して乾燥を行い、未焼成の表面電極をある程度固化させる。
(10) セラミック被覆層用ペーストの塗工
(9)で作製した未焼成積層体に、前記セラミック被覆層用ペーストを塗工した。セラミック被覆層用ペーストの塗工は、基本的には上記(9)で示した工程に沿って行うこととし、表面電極の位置に貫通孔が設けられて成るマスク部材に代えて、未焼成積層体の表面にマスク部材を配置したときに積層体の表面と未焼成の表面電極の縁辺表面部分とに当接する箇所に貫通孔が設けられて成るマスク部材を用いた。
(11) 焼成積層体
未焼成のビア導体と、未焼成の表面電極と、未焼成のセラミック被覆層とが形成されて成る未焼成積層体を、大気中250〜300℃で10〜20時間脱脂した後、還元雰囲気下1200〜1300℃で焼成することにより、焼成積層体を得た。
(12) 金属めっき層
焼成積層体の表面に対してウェットブラストを行うことにより、焼成積層体表面の酸化層を除去する等して清浄化した。更に、アルカリ性のピロリン酸銅浴による電解銅めっきによって、表面電極とセラミック被覆層との境界を跨ぎ、かつ表面電極を被覆する金属めっき層を、めっきの厚みが10〜20μmと成るように調整しつつ形成した。なお、めっきの厚みは蛍光X線により測定した。
以上の工程によって、基体と表面電極とビア導体とセラミック被覆層と金属めっき層とを備える積層電子部品を作製した。
【0087】
表面電極とセラミック被覆層との重なり状態、及びセラミック被覆層と金属めっき層との重なり状態を示すデータとして、
図1で示すような基体−電極接合点7と電極−被覆層接合点8との水平距離a、及び、電極−被覆層接合点8と被覆層−めっき層接合点9との水平距離bを測定した。水平距離aと水平距離bとの測定方法は、先ず作製した電子部品を基体、表面電極及びセラミック被覆層の厚み方向に切断し、切断面を鏡面研磨することにより、
図1に示すような電子部品の断面を観察可能にし、更に、切断面を走査型電子顕微鏡により、倍率1000倍で得られる画像に基づいて水平距離aと水平距離bとを測定する方法を採用することにした。実施例1で作製した電子部品の水平距離a及び水平距離bの測定結果を、表1に示す。
【0088】
(実施例2〜4及び6)
実施例2〜4及び6においては、実施例1で作製した積層電子部品の表面電極とセラミック被覆層との重複長さである水平距離aを変更したこと以外は、実施例1と同様の工程に沿って積層電子部品を作製した。実施例2〜4及び6の水平距離a及び水平距離bを、それぞれ表1に示す。
【0089】
(実施例5、6)
水平距離a及び水平距離bをそれぞれ表1に示す値にしたほかは前記実施例1と同様に実施して積層電子部品を作製した。
【0090】
(比較例1)
水平距離bを表1に示す値にしたほかは前記実施例1と同様にして積層電子部品を作製した。
【0091】
(比較例2)
比較例2においては、実施例1で作製した積層電子部品のセラミック被覆層及び金属めっき層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の工程に沿って積層電子部品を作製した。
【0092】
(比較例3)
比較例3においては、実施例1で作製した積層電子部品のセラミック被覆層に代えてガラス層を形成したこと以外は、実施例1と同様の工程に沿って積層電子部品を作製した。ガラス層は、次に述べるように、セラミック被覆層とは全く相違した。ガラス層の材料としては、ガラスペーストを用いることとした。先ず、二酸化珪素、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、及び酸化ジルコニウム等の粉末を混合して加熱溶融後、水に投入することにより急冷すると共に粉砕されたガラスフリットを得る。次に、ガラスフリットをボールミルにより平均粒径3μmの粉末状になるまで粉砕し、ガラス粉末を得る。次いで、得られたガラス粉末50質量%と、酸化アルミニウム粉末50質量%とをボールミルにより混合した。混合した粉末100質量部に、バインダとしてエチルセルロース18質量部、可塑剤としてジブチルフタレート2質量部、及び溶剤としてテルピネオール80質量部を添加し、混練することによって、ガラスペーストを作製した。
セラミック被覆層用ペーストの代わりに前記ガラスペーストを用いた他は前記実施例4と同様に実施して積層電子部品を製造した。
【0093】
表1では、実施例1〜6及び比較例1〜3におけるセラミック被覆層の形成に用いた材料が結晶性無機化合物である場合は「誘電体磁器組成物」と示し、二酸化珪素等のガラスである場合は「ガラスペースト」と示し、セラミック被覆層を形成しなかった場合は「−」と示すこととした。
【0094】
【表1】
【0095】
作製した電子部品におけるめっき液の浸入のし難さについては、金属めっき層の形成前後において絶縁抵抗率を測定し、絶縁抵抗率の低下率を算出することにより、評価した。絶縁抵抗値の測定には、超高抵抗計を用いて上記(12)の金属めっき層の形成前後における電気抵抗の測定を行った。なお、電気抵抗の測定前には、めっき前後のいずれであっても、ウェットブラストによる処理をした。めっき液が表面電極と基体との間、更にはビア導体、導体層及び誘電体層の間にまで浸入している場合は、絶縁抵抗値が低下した。また、評価基準としては、絶縁抵抗値の低下率が30%以上であった電子部品は、実用に耐えないとした。
【0096】
作製した電子部品における表面電極の剥離の有無については、断面を鏡面研磨し、操作型顕微鏡により倍率1000倍で表面電極を観察することにより評価した。
【0097】
作製した電子部品におけるセラミック被覆層のクラックの生じ難さについては、走査型電子顕微鏡により、電子部品のセラミック被覆層、特に表面電極の縁辺表面部分を被覆しているセラミック被覆層の厚みが小さくなっている部位を倍率1000倍で観察してクラックの有無により判断した。それぞれの測定結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
実施例1〜6の結果に示されるように、表面電極の縁辺表面部分を被覆するようにしてセラミック被覆層が形成され、かつ表面電極とセラミック被覆層との境界を跨ぐようにして表面電極を被覆する金属めっき層が形成されていると、めっき液の浸入が無く、又は少なく、表面電極の剥離を生じることが無く、セラミック被覆層にクラックが生じなかった。めっき液の浸入が無いこと又は少ないことは、絶縁抵抗値の低下率が大きかった比較例2及び3に比べて、実施例1〜6の電子部品には意図しない電気的接続が生じ難い。更に、セラミック被覆層にクラックが生じなかったことも合わせて考えると、比較例2及び3だけでなく、クラックが生じていた比較例1に比べても、実施例1〜6の電子部品は耐湿性が高い。セラミック被覆層を形成しなかった比較例2に比べて、実施例1〜6の電子部品は表面電極の剥離が生じ難かった。
【0100】
比較例3の電子部品については、セラミック被覆層に代えて形成したガラス層が金属めっき層を形成するときに、アルカリ性のめっき液にガラス層が侵されてめっき液の浸入を許容してしまっただけでなく、表面電極の一部を被覆して表面電極を基体に対して押え付ける応力が低下して表面電極の剥離を招いたとも考えられる。
【0101】
したがって、基体の表面における表面電極により被覆されていない表面を被覆するとともに表面電極の縁辺表面部分を被覆するセラミック被覆層と、表面電極におけるセラミック被覆層に被覆されていない表面を被覆する金属めっき層とを有し、かつ金属めっき層は、少なくともセラミック被覆層と表面電極との境界に跨っている電子部品は、めっき液の浸入、表面電極の剥離、及び、セラミック被覆層におけるクラックの発生を防止することができる。