【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0029】
[試験例1]
以下の試験用サンプルについて、寸法の変化を調べた。
(試験用サンプル)
黒鉛材を上記実施の形態と同様のCVI法で表面処理し、この表面処理された黒鉛材と、表面処理されていない未処理の黒鉛材の2種類について、試験用として以下の形状のサンプンを作製した。
3分割黒鉛ルツボの分割片 :各1片
以下、表面処理された黒鉛材を用いた分割片を本発明処理品と称し、未処理の黒鉛材を用いた分割片を未処理品と称する。
【0030】
(CVI処理)
CVI処理としては、以下の要領で行った。即ち、黒鉛材を真空炉内に配置し、1100℃まで昇温した後、CH
4ガスを10(l/min)の流速で流しながら、圧力を10Torrにコントロールしつつ100時間保持した。
【0031】
(試験結果)
本発明処理品と未処理品とについて、高さ、ルツボ上端から50mm及び150mmのそれぞれの内径、及び小R部の半径の各寸法の変化を調べたので、その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
(試験結果の評価)
表1より明らかなように、本発明処理品の寸法変化は極めて小さく、実用上何ら問題がないことが確認された。
【0034】
[試験例2]
以下の試験用サンプルについて、SiC化反応試験を行い、SiC反応前後の物理的特性(嵩密度、硬さ、電気抵抗率、曲げ強さ、細孔(開気孔)分布)の変化を調べた。
【0035】
(試験用サンプル)
形状が異なる以外は、試験例1と同様の本発明処理品と、未処理品の2種類を、試験用サンプンとして作製した。
試験用サンプルとしては、以下の形状のものを用いた。
10×10×60(mm)の棒状サンプル:以下、この棒状サンプルを試験用サンプルAと称する。
100×200×20(mm)の板状サンプル:以下、この板状サンプルを試験用サンプルBと称する。
試験用サンプルBから100×20×厚み20(mm)の試験片を切り出した切断片:(
図4に示すように6面中4面が被覆された面で、残り2面が被覆されていない面である。)以下、この切断片を試験用サンプルCと称する。
但し、試験用サンプルA、Bは本試験例2の他に、後述する試験例3、4のそれぞれのサンプルとして使用され、試験用サンプルCは後述する試験例4の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の場合にのみサンプルとして使用される。
なお、試験用サンプルA〜Cのうち、CVI法で表面処理されたものを本発明処理品と称し、表面処理されていない未処理のものを未処理品と称する。
【0036】
(SiC化反応試験)
試験用サンプルA〜Cを合成石英(高純度SiO
2)と高温熱処理し、SiC化の反応性を比較した。この場合の具体的条件は、以下の通りである。
処理炉 :真空炉
処理温度 :1600℃
炉内圧力 :10Torr
処理ガス :Ar 1ml/min
処理時間 :8時間保持
処理方法 :試験用サンプルを合成石英粉末に埋め込み、熱処理する。
【0037】
(試験結果)
上記試験用サンプルA、Bについて、表面処理前後の物理的特性(嵩密度、硬さ、電気抵抗率、曲げ強さ)を調べたので、その測定結果を表2、表3に示す。また、細孔(開気孔)分布の測定結果を
図5に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
(試験結果の評価)
表2、表3から明らかなように、未処理品に比べて本発明処理品は、嵩密度、硬さ、曲げ強さがいずれも向上しており、高密度化及び高強度化されたことが認められる。なお、表2と表3とでは、サンプルサイズが異なるため、嵩密度の値に差が確認された。
【0041】
また、表面処理前後の物理的特性として、細孔(開気孔)分布について調べたので、その測定結果を
図3に示す。なお、測定方法としては、本発明処理品の表層から約2.4mm厚さで測定用試験片を採取し、この測定用試験片について測定した。
図5において、L1は本発明処理品の分布を示し、L2は未処理品の分布を示す。
図5から明らかなように、本発明処理品は大きい細孔の容積が小さくなった。CVIは細孔の大きさを小さくしていた。
【0042】
[試験例3]
上記試験例2のSiC化反応試験を行った試験用サンプルA、Bについて、SiC反応前後の質量変化及び体積変化を調べた。
(試験結果)
SiC反応試験前後の質量変化及び体積変化の測定結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
(試験結果の評価)
表4から明らかなように、質量変化率について、サンプルサイズによらず、本発明処理品に比べて未処理品が質量減少が少ないことが認められる。また、体積変化率については、本発明処理品が未処理品に比べ値が低くなった。試験前後では、反応による減肉とSiC化による質量の増加が起こるため、一概に質量変化率と体積変化率で反応性を評価できないが、結果からCVI処理によるSiC化抑制効果があると考えられる。特に、処理時間が8時間という短い時間であったので、顕著な差はでなかったが、処理時間を100時間程度とすれば、顕著な差がでて明確な評価ができたものと考えられる。
【0045】
[試験例4]
上記試験例4と同様のSiC反応試験を行った試験用サンプルA〜Cについて、反応試験後のSiC層の厚さを以下、(1)灰化後の観察、(2)走査型電子顕微鏡による観察、の2種類の方法で観察した。
【0046】
(1)灰化後の観察の場合
SiC反応試験後の試験用サンプルA、Bで残存した黒鉛材部位を、800℃の大気雰囲気下で加熱灰化させ残ったSiC層の厚さついて調べたので、その結果を表5に示す。また、試験用サンプルA、Bについての灰化後の状態を
図6〜
図9に示す。なお、
図6は試験用サンプルA(本発明処理品)の灰化後の状態を示す写真、
図7は試験用サンプルB(本発明処理品)の灰化後の状態を示す写真、
図8は試験用サンプルA(未処理品)の灰化後の状態を示す写真、
図9は試験用サンプルB(未処理品)の灰化後の状態を示す写真である。
【0047】
【表5】
【0048】
(試験結果の評価)
図6〜
図9及び表5から明らかなように、未処理品と比較して、本発明処理品の方がSiC化抑制効果が認められる。サンプルサイズでSiC層の値に差があるものの、未処理品に比べて本発明処理品ではSiC層は約50%薄くなった。
【0049】
(2)走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の場合
SiC反応試験後の試験用サンプルA〜Cの表面状態についてのSEM写真を、
図10〜
図14に示す。なお、
図10は試験用サンプルA(本発明処理品)のSEM写真、
図11は試験用サンプルB(本発明処理品)のSEM写真、
図12は試験用サンプルC(本発明処理品)のSEM写真、
図13は試験用サンプルA(未処理品)のSEM写真、
図14は試験用サンプルC(未処理品)のSEM写真である。
図11〜
図14において、「}」はSiC層を示している。
(試験結果の評価)
SEM写真から、SiC層の厚さは灰化の結果と同じ傾向となった。未処理品に比べて本発明処理品による効果が確認できた。