(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723652
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】測光装置および露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20150507BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20150507BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G01J1/02 S
H01L21/30 515C
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-74420(P2011-74420)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-208351(P2012-208351A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】藤森 昭芳
(72)【発明者】
【氏名】金井 信夫
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和正
(72)【発明者】
【氏名】上条 圭
(72)【発明者】
【氏名】南雲 陽佑
【審査官】
松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−257846(JP,A)
【文献】
特開平04−142020(JP,A)
【文献】
特開平04−343032(JP,A)
【文献】
特開昭58−165324(JP,A)
【文献】
特開昭56−024532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60、11/00
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20−7/24、9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)の輝線を含む光を放射する放電ランプと、
受光部を有し、前記放電ランプから放射される光を測定する光測定手段と、
前記光測定手段における測定値に基づき、前記放電ランプへ供給する電力を調整する照明調整手段とを備え、
前記光測定手段が、g線、h線、i線のうち隣り合う2つの輝線間にピーク感度のある分光感度特性を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記分光感度特性における分光感度曲線の半値幅が、前記隣り合う2つの輝線間の波長域よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記分光感度特性において、前記隣り合う2つの輝線における感度が、ともに前記ピーク感度の85パーセント以下であることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
前記分光感度特性が、i線とh線との間の波長域(365nm〜405nm)にピーク感度を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の露光装置。
【請求項5】
前記分光感度特性が、h線とg線との間の波長域(405nm〜436nm)にピーク感度のある分光感度特性を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の露光装置。
【請求項6】
前記分光感度特性における分光感度曲線が、前記ピーク感度を中心とした略ガウス分布曲線によって表されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の露光装置。
【請求項7】
前記光測定手段が、前記放電ランプから放射される光の照度を測定し、
前記照明調整手段が、一定照度を維持するように供給電力を調整することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の露光装置。
【請求項8】
前記放電ランプが、水銀を0.2mg/mm3以上封入した水銀ランプであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の露光装置。
【請求項9】
受光素子と、入射光路上に配置されるフィルタとを有する受光部と、
前記受光素子に入射する光に基づいて、測光演算する測定部とを備え、
前記受光部が、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)のうち隣り合う2つの輝線間にピーク感度のある分光感度特性を有することを特徴とする測光装置。
【請求項10】
前記分光感度特性における分光感度曲線の半値幅が、前記隣り合う2つの輝線間の波長域よりも広いことを特徴とする請求項9に記載の測光装置。
【請求項11】
前記分光感度特性において、前記隣り合う2つの輝線における感度が、ともに前記ピーク感度の85パーセント以下であることを特徴とする請求項9に記載の測光装置。
【請求項12】
前記分光感度特性が、i線とh線との間の波長域(365nm〜405nm)にピーク感度を有することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の測光装置。
【請求項13】
前記分光感度特性が、h線とg線との間の波長域(405nm〜436nm)にピーク感度のある分光感度特性を有することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の測光装置。
【請求項14】
測光装置本体に信号ケーブルを介して接続可能であり、
受光素子と、
入射光路上に配置されるフィルタとを備え、
輝線であるg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)のうち隣り合う2つの輝線間にピーク感度のある分光感度特性を有することを特徴とする測光装置の受光部。
【請求項15】
受光素子と、入射光路上に配置されるフィルタとを有する受光部と、
前記受光素子に入射する光に基づいて、測光演算する測定部とを備え、
前記受光部が、放電ランプから発光される連続的スペクトル光に含まれる、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)のうち、あるいはその他の複数の輝線のうち、隣り合う2つの輝線間にピーク感度のある分光感度特性を有することを特徴とする測光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照度など光を測定する測光装置に関し、特に、露光装置等に使用される放電ランプの放射光に対する光測定に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置では、フォトレジストなどの感光材料を塗布した基板に対してパターン光を投影し、感光材料にパターンを形成する。高精度のパターンを形成するためには、露光動作中、一定の照射量で光を照射する必要がある。そのため、露光の合間に測光装置を用いて照度等を計測し、放電ランプへの供給電力を調整して点灯制御を行う(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
露光装置では、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)の輝線を含む光を発光する高圧/超高圧水銀ランプが使用されている(特許文献3参照)。感光材料も輝線に基づいた感度特性をもっており、照度測定装置においては、g線、h線、i線以外の光を除去するフィルタを設け、フィルタを透過した光に基づいて照度を測定する(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−8154号公報
【特許文献2】特開2002−5736号公報
【特許文献3】特開2010−85954号公報
【特許文献4】特開2002−340667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した放電ランプでは放電管内が高圧のため、放射照度が、放電変動によるノイズが支配的な状態になり易い。特に、輝線付近では、光エネルギーの自己吸収によって変化が生じ、計測される輝線付近のスペクトル値は、ノイズ的な放電変動に大きく影響される。
【0006】
そのため、ランプ出力低下が実質的に生じず、放射スペクトル分布全体の変化は小さくても、輝線付近の放射スペクトルだけが変動する場合が生じる。その一方、実際にランプの出力低下によって放射スペクトル分布全体が変動しても、その全体的変動量に比べて輝線付近の放射スペクトル変動が小さい場合もある。
【0007】
このような放射特性をもつ放電ランプに対し、輝線に合わせてピーク透過率をもつフィルタを使って照度検出すると、そのピーク付近でのノイズ的スペクトル変動に影響されてしまい、スペクトル全体に渡る照度を正確に検出できない。その結果、誤った照度計測に基づいた電力調整を行うことになり、ランプ点灯中、不必要な電力変動が頻繁に続き、ランプ寿命に影響を与える。また、照度以外の測光演算においても、誤った測光値を検出してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の露光装置は、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)の輝線を含むスペクトル光を発光する放電ランプと、放電ランプから放射される光を測定する照度測定手段と、測定値に基づき、放電ランプへ供給する電力を調整する光調整手段とを備える。
【0009】
放電ランプとしては、高圧もしくは超高圧水銀ランプが適用可能であり、この場合、g線、h線、i線の輝線スペクトルを含むスペクトルが生じ、放射光のスペクトル分布は、3つの輝線に応じた狭波長域において大きな相対的スペクトル強度をもつ連続的な分光分布曲線を呈する。例えば、放電ランプは、水銀0.2mg/mm
3以上放電管内に封入された水銀ランプとして適用可能である。
【0010】
光測定手段の受光部は、例えば、光電変換素子などの受光素子と、入射光路上に配置されるフィルタなどを備え、受光素子へ入射する光によって生じる電気信号に基づいて測定する。受光部の分光感度特性は、受光素子の分光感度特性およびフィルタの分光透過率特性に基づいて定められる。受光素子の分光感度が、特定波長域に偏向的感度をもつことなく、波長域全体に渡っておよそ一定である場合、フィルタの分光透過特性がそのまま受光部の分光感度特性として現れる。
【0011】
光測定手段は、測定値として、照度、輝度、光量など、放電ランプの放射光に関する様々な物理量のいずれかを測定することが可能である。光調整手段は、計測される測光値を適正な値あるいは一定の値で維持するように、供給電力を調整する。
【0012】
本発明では、光測定手段の分光感度特性が、隣り合う2つの輝線の間、すなわち、i線(365nm)とh線(405nm)の間、あるいは、h線(405nm)とg線(436nm)との間に、ピーク感度を設けている。
【0013】
すなわち、受光部のピーク感度は、本来注視すべきh線、i線からシフトした位置にあり、分光感度特性におけるh線とi線に応じた感度(スペクトル値)は、ピーク感度よりも低い。ピーク感度を頂点としてi線およびh線に向け感度(スペクトル値)が低くなるため、輝線付近におけるノイズの支配的な放電変動が生じても、その変動に大きく影響されることがなく、放電ランプの光を測定することができる。
【0014】
たとえば、定照度点灯制御が行われる場合、正確に測定される照度に応じて電力調整することが可能となり、誤った電力調整によって本来必要としない電力変動が生じることなく、安定した定照度点灯が実現される。
【0015】
分光感度特性は、ピーク感度を中心とした略ガウス分布曲線(正規分布)によって表すことが可能であり、あるいは、バンドパス(帯域)によって表すことも可能である。分光感度曲線としては、i線とh線あるいはg線、i線からピーク感度をできるだけ離すように構成すればよく、例えば、中間域にピークをもたせるようにしてもよい。
【0016】
ノイズの支配的な放電変動の影響を避ける一方、i線とh線間の波長域、もしくはh線とg線間の波長域の光を広範囲に漏れなく検出することが望ましい。例えば、光測定手段は、i線とh線の間の波長域よりも分光感度曲線の半値幅が広い有効な感度特性をもつようにするのがよい。これによって、i線とh線間の波長域におけるスペクトル強度が全体的に精度よく検出される。
【0017】
例えば、h線とi線の波長においてはピーク感度の85%以下の感度とし、h線とi線の間の波長域よりも分光感度曲線の半値幅が広い有効な感度特性を持つようにすればよい。これにより、ノイズによる影響を排除し、全体的スペクトル変動の検出をより確実にすることが可能である。
【0018】
一方、本発明の他の局面における測光装置は、光電変換素子などの受光素子と、入射光路上に配置されるフィルタとを有する受光部と、受光素子に入射する光に基づいて、測光演算する測定部とを備え、受光部は、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)のうち隣り合う2つの輝線間にピーク感度のある分光感度特性を有することを特徴とする。
【0019】
本発明においても、受光部の分光感度特性によって正確な照度、輝度、光量などを計測することが可能となり、放電ランプの正確な測光を実現することができる。より具体的な受光部の分光感度特性としては、上述した分光感度特性が適用可能である。
【0020】
測光装置は、例えば照度、輝度、光量などを検出可能であり、それぞれ照度計、輝度計、光量計として構成可能である。測光装置は、例えばハンディカムタイプの測光装置として構成可能であり、受光部と測定部を一体的にしてもよい。あるいは、受光部と測定部との間に信号ケーブルを介して接続するように構成することも可能である。
【0021】
一方、卓上タイプの測光装置本体に受光部をケーブル接続させるように構成してもよい。さらに、測光装置を露光装置、あるいは光源装置内に組み込んで使用し、あるいは、露光準備段階で測光装置を描画テーブル等に設置して測光するように構成することも可能である。
【0022】
本発明の他の局面における測光装置は、受光素子と、入射光路上に配置されるフィルタとを有する受光部と、受光素子に入射する光に基づいて、測光演算する測定部とを備え、隣り合う2つの輝線間にピーク感度のある分光感度特性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ノイズの支配的な放電変動に影響されることなく、放電ランプの光を適正に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態である露光装置の概略的ブロック図である。
【
図3】放電ランプの分光分布特性を示した図である。
【
図4】第2の実施形態における照度計の模式図である。
【
図5】第2の実施形態である照度計のブロック図である。
【
図6】第1の実施形態とは異なる受光部の分光感度特性を示した図である。
【
図7】i線(365nm)に応じた従来受光部(以下では、第1従来受光部という)の分光感度特性を示した図である。
【
図8】h線(405nm)に応じた従来受光部(以下では、第2従来受光部という)の分光感度特性を示した図である。
【
図9】
図7、
図8に示す第1、第2従来受光部を使って定照度点灯制御を行ったときのランプ供給電力の変動を示したグラフである。
【
図10】本実施例の受光部を使って定照度点灯制御を行ったときの電力変動を示したグラフである。
【
図11】供給電力を段階的に調整したときに測定される分光分布の変化を示した図である。
【
図12】スペクトル相対積算強度を電力ごとにプロットしたグラフである。
【
図13】スペクトル相対的積算強度の変化率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0026】
図1は、第1の実施形態である露光装置の概略的ブロック図である。
【0027】
露光装置10は、フォトレジストなどの感光材料を表面に形成した基板SWに直接パターンを形成するマスクレス露光装置であって、放電ランプ21、DMD(Digital Micro-mirror Device)24を備えている。放電ランプ21からの光に基づいて基板SWを照射し、基板SWの表面にパターンを形成する。
【0028】
放電ランプ21は、高圧もしくは超高圧水銀ランプであり、例えば、0.2mg/mm
3以上の水銀が含まれている。放電ランプのスペクトルは、およそ330nm〜480nmにおいて連続的なスペクトル分布であるとともに、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)の輝線スペクトル光を放射する。
【0029】
放電ランプ21から放射された光は、照明光学系23によって平行光に成形され、ミラー25、ハーフミラー27A、ミラー27Bを経てDMD24に導かれる。DMD24は、数μm〜数十μmの微小矩形状マイクロミラーをマトリクス状に2次元配列させた光変調素子アレイ(例えば、1024×768)であり、露光制御部60によって制御される。
【0030】
DMD24では、露光制御部60から送られてくる露光データに基づいて、各マイクロミラーがそれぞれ選択的にON/OFF制御される。ON状態のマイクロミラーにおいて反射した光は、ハーフミラー27を介して投影光学系28へ導かれる。そして、ON状態ミラーからの反射光によって形成される光束、すなわちパターン像の光が基板SWに照射される。基板SWを移動させながらパターンを基板全体に形成する。
【0031】
露光装置10は、照度演算制御部30、受光部40から構成される照度測定制御装置50を備えている。照度測定制御装置50は、放電ランプ21の照度を測定し、定照度点灯制御を行う。受光部40が投影光学系28の照射領域に移動することにより、放電ランプ21の光は受光部40へ導かれる。1つの基板に対する描画が終了してから次の基板への描画開始までの間、受光部40に入射した光に基づいて照度測定を行う。
【0032】
受光部40は、光電変換素子などで構成される受光素子41と、受光素子41の受光面に対向配置されるフィルタ42を備え、筐体部分の窓(図示せず)から入射した光は、入射光路上にあるフィルタ42を通って、受光素子41に入射する。
【0033】
後述するように、フィルタ42は、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)を含む所定帯域の光を透過する分光透過率特性を備えており、その帯域以外の波長域の光を除去する。受光素子41に入射した光によって生じた信号は、照度演算制御部30へ送られる。
【0034】
照度演算制御部30に入力された信号は、アンプ35によって増幅処理された後、A/D変換器34においてデジタル信号に変換される。そして、演算部36において照度が算出される。照度算出方法については、従来周知の方法によって求められる。
【0035】
照度制御部33は、照度データに基づいてランプ駆動部32から放電ランプ21へ供給される電力を調整する。これにより、ランプ点灯している間、照度一定で放電ランプ21から基板SWに対して光が照射される。
【0036】
図2は、受光部の分光感度特性を示した図である。
図3は、受光部の分光感度特性と放電ランプの分光分布特性を示した図である。
図2、3を用いて、受光部の分光感度特性について説明する。
【0037】
露光装置10によってパターンを形成する基板SWの感光材料は、水銀線としてg線、h線、あるいはi線に反応する感光特性を備えていることが多い。
図2に示すように、受光部40の分光感度曲線L1は、これら輝線に従った波長域340〜480nmに渡るガウス分布に近似した曲線であり、385nmにピーク感度P1がある。h線(405nm)における感度はP2、i線(365nm)における感度はP3であり、相対的スペクトル値の最も高いピークP1を中心にして、ほぼ対称的な分布曲線になっている。
【0038】
図3には、受光部の分光感度曲線L1とともに、放電ランプ21の分光分布曲線SPが図示されている。ただし、受光部の分光感度曲線L1は、フィルタ42の分光透過率特性と受光素子41の分光感度特性に基づく。放電ランプ21は、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)の輝線を含めた連続的なスペクトル光を放射し、436nm、405nm、365nm前後の狭い波長幅で鋭いスペクトルパワーをもつ。また、超高圧水銀ランプであるため、比較的スペクトル変化が緩やかであり、広範囲に広がった連続的な分布曲線になっている。
【0039】
ランプ点灯中、放電ランプ21の分光分布は、自己吸収(吸収スペクトル)によって変動する。
図3では、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)付近で急激にスペクトル値が下がる分光分布曲線を示しており、放電ランプ21の自己吸収現象が顕著に現れている分光分布特性が図示されている。このような特定の狭い波長域でのスペクトル変動が点灯中不規則に生じる。
【0040】
本実施形態の受光部40の分光感度曲線L1のピークP1は、h線(405nm)、i線(365nm)から離れており、隣り合う2つの輝線からほぼ中間の波長をもつ光に対して最大の感度がある。また、h線の波長における感度比R11と、i線の波長における感度比R12は、P1と比較して低くなり、P1=1.0に対して、R11=0.70、R12=0.61であり、ともにP1の85パーセント以下である。
【0041】
更に、h線とi線との間の波長域よりも分光感度曲線の半値幅(△λ/2)が広く、△λ/2=50nmである。このように、分光感度曲線L1の中で感度の高い波長域をh線、i線から外し、自己吸収による分光分布の変動に影響を受けず、かつ、h線とi線との間の波長域全体に渡って光が透過する。
【0042】
その結果、受光素子41に入射する光のスペクトルパワーは、ノイズ的なスペクトル変動に支配されていない光となり、実際の照度が適正に検出される。そして、適正に検出される照度に基づいて、放電ランプ21への供給電力を調整した定照度点灯が行われ、頻繁な電力調整が抑制される。
【0043】
このように本実施形態によれば、放電ランプ21を使用してパターンを形成する露光装置10が、照度演算制御部30および受光部40から構成される照度測定制御装置50を備え、受光部40の分光感度曲線L1は、ピークP1がh線(405nm)、i線(365nm)からシフトしており、隣り合う2つの輝線からほぼ中間の波長域に設けられている。ピーク感度よりもh線とi線における感度が低く、h線の波長における感度比R1と、i線の波長における感度比R2は、P1の85%以下である。更に、h線とi線との間の波長域よりも分光感度曲線の半値幅(△λ/2)が広い。
【0044】
次に、
図4〜
図6を用いて、第2の実施形態である測光装置について説明する。第2の実施形態では、露光装置から独立した測光装置が照度測定のため使用される。
【0045】
図4は、第2の実施形態における照度計の模式図である。
【0046】
ハンディカムタイプの照度計100は、表示部129を備えた本体120と受光部110とを備え、受光部110は、受光部110に取り付けられた信号ケーブル130を介して、本体120の接続部127に接続される。図示しない露光装置における照度測定のため、照度計100の受光部110を基板搭載ステージに設置し、所定の測定ポイントに受光部110を移動させる。そして、本体120の表示部129に表示される照度を確認し、放電ランプへの供給電力を調整する。
【0047】
図5は、第2の実施形態である照度計のブロック図である。
【0048】
受光部110は、受光部本体110Hの上面に設けられた窓112の下方に、フィルタ114および受光素子116を備えており、受光部110は、受光素子116に対向配置されている。ここでは、第1の実施形態と同様の分光感度特性を有する受光部110だけでなく、後述する分光感度特性を有する受光部110’が、選択的に本体120へ接続可能である。
【0049】
図6は、第1の実施形態とは異なる受光部の分光感度特性を示した図である。
【0050】
図6に示すように、受光部110’の分光感度分布曲線L2は、およそ422nmをピークP2としたガウス分布に近似した曲線であり、g線(436nm)とh線(405nm)の略中心位置にピークP2が存在する。また、g線の波長における感度比R21、h線の波長における感度比R22は、P2と比較して低くなり、P2=1.0に対して、R21=0.64、R22=0.71であって、ともにP1の85パーセント以下である。
【0051】
更に、g線とh線との間の波長域よりも分光感度曲線の半値幅(△λ/2)が広く、△λ/2=43nmである。このように分光感度曲線L2がg線とh線との略中間にピークP2があるため、自己吸収などによるノイズ支配のスペクトル変動の影響を受けることなく、かつ、h線とi線との間の波長域全体のスペクトル光を適切に透過し、受光素子116へ導く。
【0052】
受光部110の受光素子116、もしくは受光部110’の受光素子116’において生じた電気信号は、アンプ122によって増幅処理された後、A/D変換器124によってデジタル信号に変換される。そして、演算部128において照度が演算される。求められた照度データは、表示部129において表示される。コントローラ126は、本体内部の電源回路、信号処理回路を制御する。
【0053】
なお、第1、第2の実施形態では照度計が測光装置として構成されているが、輝度計、積算光量計、積算強度計など、他の測光装置を適用することも可能である。この場合、測光装置本体において、受光に基づいた信号から輝度、光量、強度などが従来知られた演算処理方法に従って算出される。また、本体120をハンディカムタイプだけでなく、卓上型装置として構成することも可能である。さらに、ガイド溝を用いたスライド機構などによって、選択的にフィルタを受光部へ着脱自在に装着してもよい。
【0054】
放電ランプとしては、上記以外の水銀ランプを使用することも可能であり、連続的スペクトルであるとともに、g線、h線、i線を輝線が含まれる連続的スペクトル光を発光する放電ランプが適用可能である。あるいは、他の複数の輝線を含まれる連続的スペクトル光を発光する放電ランプを使用してもよい。この場合、測光装置は、放電ランプの特性に合わせた分光感度特性をもつように構成される。また、第1の実施形態のように露光装置へ照度測定装置が組み込まれている場合、フィルタによって感度特性をもつ構成にしてもよい。
【0055】
以下では、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0056】
本実施例は、第1、2の実施形態で説明した分光感度特性をもつ受光部を備えた照度計によって構成される。従来の分光感度特性を有する受光部を備えた照度計との比較実験を行った。
【0057】
図7は、i線(365nm)に応じた従来受光部(以下では、第1従来受光部という)の分光感度特性を示した図である。
図8は、h線(405nm)に応じた従来受光部(以下では、第2従来受光部という)の分光感度特性を示した図である。
【0058】
図7に示す分光感度曲線L3は、およそ355nmをピーク感度とした分布曲線であり、i線(365nm)付近の短波長側に最大の感度がある。h線(405nm)の波長における感度比R31=0、i線(365nm)の波長における感度比R32=0.90であり、分光感度曲線の半値幅△λ/2=40nmである。
【0059】
図8に示す分光感度曲線L4は、およそ405nmをピーク感度とした分布曲線であり、h線(405nm)付近の短波長側に最大の感度がある。g線(436nm)の波長における感度比R41=0.75、h線(405nm)の波長における感度比42=0.99、i線(365nm)の波長における感度比R43=0.35であり、分光感度曲線の半値幅△λ/2=75nmである。いずれの分光感度曲線も、自己吸収などによるノイズ的スペクトル変動の影響を受け易い波長域にピーク感度を設けている。
【0060】
図9は、
図7、8に示す第1、第2従来受光部を使って定照度点灯制御を行ったときのランプ供給電力の変動を示したグラフである。
図10は、本実施例の受光部を使って定照度点灯制御を行ったときの電力変動を示したグラフである。ここでは、放電ランプとして、水銀0.2mg/mm
3以上の超高圧水銀ランプを使用し、定照度点灯制御を行った。
【0061】
図7、
図8に示す第1、第2従来受光部を使用した照度計の場合、ランプの使用中、大きな電力変動が連続的に絶え間なく生じている(
図9のM1、M2参照)。これは、ノイズが支配的な放電変動に影響されて不正確な照度を検出してしまい、それに合わせて大きな電力変動を伴う不必要な電力調整が行われていることを表す。
【0062】
図10は、本実施例の受光部を使って定照度点灯制御を行ったときのランプ供給電力の変動を示したグラフである。
図10に示すように、大きな電力変動がほとんど生じることなく電力調整が行われている。これは、上述した本実施例の受光部を使うことによって、ノイズが支配的となった放射スペクトル変動に影響されることなく、全体的なスペクトルパワーを的確に検出し、適正な電力調整が行われていることを示している。なお、
図10では第1実施形態に応じた実施例である放電ランプの電力変動を示しているが、第2実施形態に応じた実施例である放電ランプにおいても、同様に大きな電力変動を伴わない。
【0063】
次に、放電ランプへの供給電力を変化させたときのスペクトル相対的積算強度およびスペクトル相対的積算強度の変化について比較実験を行った。照度計については、本実施例のうち第1の実施形態に応じた実施例を使用し、従来例と比較した。
【0064】
図11は、供給電力を段階的に調整したときに測定される分光分布の変化を示した図である。電力を170W〜250Wの範囲で20Wずつ段階的に変化させ、そのときのスペクトル分布SL1〜SL5が図示されている。供給電力が減少するほど、分光分布曲線のスペクトル強度が全体的に下がる。なお、
図11に示すスペクトル分布は、放電ランプから放射され、光学系を通過した光をマルチ側光システムMC−3000−28C(大塚電子株式会社製)によって測定した分光分布曲線に基づき作成したグラフである。
【0065】
図12は、スペクトル相対積算強度を電力ごとにプロットしたグラフである。ここでは、供給電力ごとに計測される分光分布曲線に対し、受光部の感度曲線で乗算した値を積算した相対的積算値を、各受光部で対比してグラフ化している。ここで、供給電力が250Wのときの第2従来受光部の積算値を基準(100%)として、各受光部の供給電力における積算強度の割合を示している。
【0066】
例えば、本実施例の受光部については、
図11で示した供給電力ごとに計算される分光分布曲線に対して、
図2で示した分光感度曲線で単位波長(1nm)毎に乗算し、300nmから500nmの間での積算値を求め、同じ方法で算出した供給電力が250Wのときの第2従来受光部の積算値に対する割合として示している。
【0067】
図12に示すように、各受光部におけるスペクトル相対積算強度は、供給電力250Wを基準として低下し、電力変化量にほぼ比例して積算強度が低下していく。本実施例の受光部および第2従来受光部を使用したとき、全体的にスペクトル相対的積算強度が大きい。
【0068】
図13は、スペクトル相対的積算強度の変化率を示したグラフである。ここでは、入力電力170Wのときを基準としたときの積算強度の変化率が比によって表されている。変化率が大きいほど、分解能が高くより細かく積算強度の変化を検出することができ、精密に照度変動を把握することができる。
図13に示すように、本実施例の受光部を使用したときの変化率が最も大きい。
【0069】
以上に示すように、本実施例の受光部を使用することによって、ノイズが支配的な放電変動に影響されることなく、かつ、実際の放電変化(照度変化)を精密に把握することが可能となる。したがって、本実施例の受光部を使用することにより、輝度測定、光量測定など他の測光演算についても正確に行えることは明らかである。
【符号の説明】
【0070】
10 露光装置
21 放電ランプ
30 照度演算制御部
40 受光部
41 受光素子
42 フィルタ
50 照度測定制御装置
100 照度計
110 受光部
114 フィルタ
120 本体