【実施例1】
【0011】
まず、空気調和機の全体構成について
図1〜
図6を用いて説明する。
図1は実施例の空気調和機の構成図である。
図2は空気調和機の室内機の断面図である。
図3は空気調和機の室外機の断面図である。
図4は空気調和機の冷媒回路図、(a)は冷房・除湿運転時の冷媒の流れ方向を示す図、(b)は暖房運転時の冷媒の流れ方向を示す図である。
図5は室内機の外観斜視図である。
図6は室内機の上下風向板を開いた外観斜視図である。
【0012】
空気調和機1は、室内機2と室外機6とを接続配管8で繋ぎ、室内を空気調和する。室内機2は、筐体ベース21の中央部に室内熱交換器33を置き、室内熱交換器33の下流側に室内熱交換器33の幅と略等しい長さの横流ファン方式の室内送風機311を配置し、露受皿35等を取り付け、これらを化粧枠23で覆い、化粧枠23の前面に前面パネル25を取り付けている。この化粧枠23には、室内空気を吸い込む空気吸込み口27と、温湿度が調整された空気を吹出す空気吹出し口29とが上下に設けられている。室内熱交換器33の空気流下流には室内送風機311が設けられ、室内送風機311が回転すると室内空気が室内機2に設けられた空気吸込み口27から室内熱交換器33、室内送風機311を通って室内送風機311の長さに略等しい幅を持つ吹出し風路290に流れ、吹出し風路290途中に配した左右風向板295で気流の左右方向を偏向され、更に、空気吹出し口29に配した上下風向板291,292で気流の上下方向を偏向されて室内に吹出す。
【0013】
筐体ベース21には、室内送風機311,フィルタ231,231′,室内熱交換器33,露受皿35,上下風向板291,292,左右風向板295等の基本的な内部構造体が取り付けられ、これらの基本的な内部構造体は、筐体ベース21,化粧枠23,前面パネル25からなる筐体20に内包され室内機2を構成する。
【0014】
室外機6はベース61に圧縮機75,室外熱交換器73などが搭載され、外箱62に覆われ、室外送風機63で外気を室外熱交換器73に流し、内部を流れる冷媒と熱交換し、送風機カバー635を通って機外に吹出させる。
【0015】
冷房・除湿運転時には
図4(a)のように、冷媒を圧縮機75,冷媒流路切換弁72,室外熱交換器73,冷暖房絞り装置74,除湿加熱器332,除湿絞り装置34,除湿冷却器333,冷媒流路切換弁72の順に流して圧縮機75に戻し、冷房・除湿運転にあわせて冷暖房絞り装置74,除湿絞り装置34を適宜に絞りまたは開放して冷媒を制御し、圧縮機75,室外送風機63,室内送風機311を適切な回転数で運転して周知の冷房・除湿運転を行う。
【0016】
また、暖房運転時には
図4(b)のように、冷媒流路切換弁72を切換えて、冷媒を逆向きに流し、同様に周知の暖房運転を行う。
【0017】
また、前面パネル25の下部右側には、運転状況を表示する表示装置397と、別体のリモコン5からの赤外線の操作信号を受ける受光部396とが配置されている。
【0018】
化粧枠23の下面に形成される空気吹出し口29は、前面パネル25との分割部に隣接して配置され、奥の吹出し風路290に連通している。2枚の上下風向板291,292は、閉鎖状態で、吹出し風路290をほぼ隠蔽して室内機2の底面に連続する大きな曲面を有するように構成されている。これらの上下風向板291,292は、両端部に設けた回動軸を支点にして、リモコン5からの指示に応じて、駆動モータにより空気調和機1の運転時に回動して空気吹出し口29を開き、その状態に保持する。空気調和機1の運転停止時には、これらの上下風向板291,292は空気吹出し口29を閉じるように制御される。
【0019】
左右風向板295は、下端部に設けた回動軸を支点にして駆動モータにより回動され、リモコン5からの指示に応じて回動されてその状態に保持される。これによって、吹出し空気が左右の所望の方向に吹出される。なお、リモコン5から指示することにより、空気調和機1の運転中に上下風向板291,292,左右風向板295を周期的に揺動させ、室内の広範囲に周期的に吹出し空気を送ることもできる。
【0020】
可動パネル251は、下部に設けた回動軸を支点として駆動モータにより回動され、空気調和機1の運転時に前側空気吸込み部230′を開くように構成されている。これによって、室内空気は、運転時に前側空気吸込み部230′からも室内機2内に吸引される。空気調和機1の停止時には、前側空気吸込み部230′は閉じるように制御される。
【0021】
室内機2は、内部の電装品ボックスに制御基板を備え、この制御基板にマイコンが設けられる。このマイコンは、室内温度センサ,室内湿度センサ等の各種のセンサからの信号を受けると共に、リモコン5からの操作信号を受光部396を介して受ける。このマイコンは、これらの信号に基づいて、室内送風機311,可動パネル駆動モータ,上下風向板駆動モータ,左右風向板駆動モータ等を制御すると共に、室外機6との通信を司り、室内機2を統括して制御する。
【0022】
フィルタ231,231′は、吸い込まれた室内空気中に含まれる塵埃を取り除くためのものであり、室内熱交換器33の吸込側を覆うように配置されている。露受皿35は、室内熱交換器33の前後両側の下端部下方に配置され、冷房運転時や除湿運転時に室内熱交換器33に発生する凝縮水を受けるために設けられている。受けて集められた凝縮水はドレン配管37を通して室外に排出される。
【0023】
赤外線検知装置14、音声検知装置17は吹出し風路上方拡大部290eの長手方向の中央部に設け、運転時には
図6のように室内を検知できるようにしつつ、運転停止時には
図5のように上側上下風向板291で室内から遮蔽し、室内に違和感を与えないようにした。
【0024】
赤外線検知装置14は使用者の手、脚、顔など体の一部の動きを検知し、マイコンへ検知信号を送る。マイコンはこの信号を処理することで室内の在室者の有無を知ることができる。これにより室内の在室者の有無に応じて、例えば不在であれば運転をセーブする、停止するなどして省エネ性や利便性を向上することができる。
【0025】
音声検知装置17は室内の音を検知し、マイコンへ検知信号を送る。マイコンはこの信号を処理することで室内の音声状況を知ることができる。例えばエアコンの運転音であったり、掃除機などのモータ音であったり、TVやラジオであったり、会話を検知することができる。
【0026】
実施例では赤外線検知装置14として焦電型の赤外線センサを用い、音声検知装置17としてマイクロフォンを用いる。
【0027】
次に、在室者の有無に応じて空気調和機の運転を制御する方法について
図7〜
図9のフローチャートを用いて説明する。
図7は通常の運転からセーブ運転までのフローチャートである。
図8はセーブ運転から運転停止の仮判定までのフローチャートである。
図9は運転停止の仮判定から運転停止までのフローチャートである。
【0028】
空気調和機1が運転している状態において、まず使用者が運転を意図して停止しようとしているか、すなわち切タイマを設定しているか否かを判断し(Step1)、切タイマが設定されていれば使用者の意図を尊重し、そのままの状態で運転を継続する(Step2)。
【0029】
続いてカウンタを初期化し(Step3)、赤外線検知装置14で被検知体(使用者など)の有無を判断する(Step4)。被検知体を検知しなかったときにはカウンタを1進め(Step5)、カウンタが閾値1以上か判定し(Step6)、カウンタが閾値1以上になるまでStep4〜Step6を繰り返す。すなわちカウンタが閾値1以上になるまで赤外線検知装置14で被検知体の監視を行う。カウンタが閾値1以上になるまでの間に赤外線検知装置14で被検知体を検知したときにはStep3に戻り、カウンタを初期化し、赤外線検知装置14での被検知体の検知を再開する。
【0030】
このように閾値1になるまでの間に室内で被検知体を検知すると、通常の運転を継続することから、室内の快適性が保たれる。実施例では閾値1を30分としているが、この閾値1を使用者が例えばリモコン5で設定可能としても良い。また、閾値1を所定の時間ではなく、所定の回数としてよい。
【0031】
カウンタが閾値1以上となるとStep7へ進み、セーブ運転を行う。セーブ運転は、例えば冷房運転においてはリモコン5の設定温度に対して数度上げた目標温度になるように室温を制御することで省エネとする運転である。つまり閾値1の間、室内に被検知体がいないと判断できた場合には、必要最小限の運転とすることで省エネ性を向上することができる。
【0032】
セーブ運転を開始すると同時にカウンタを初期化し(Step8)、赤外線検知装置14で被検知体の検知を再開する(Step9)。被検知体を検知しなかったときにはカウンタを1進め(Step10)、カウンタが閾値2以上か判定し(Step11)、カウンタが閾値2以上になるまでStep9〜Step11を繰り返す。すなわちカウンタが閾値2以上になるまで赤外線検知装置14で被検知体の監視を行う。カウンタが閾値2以上になるまでの間に赤外線検知装置14で被検知体を検知したときには、リモコン5の設定にしたがって運転を行い(Step12)、Step3に戻る。すなわちセーブ運転を解除し、空気調和機の設定温度をセーブ運転を行う前の設定温度とすることで通常の運転に戻し、カウンタを初期化し、赤外線検知装置14での被検知体の検知を再開する。なお、通常の運転に戻す際に、空気調和機の設定温度を必ずしもセーブ運転を行う前の設定温度にしなくとも、他の設定温度に変更してもよい。
【0033】
このように閾値2になるまでの間に室内で被検知体を検知すると、セーブ運転から通常運転に戻ることで、室内の快適性を速やかに戻すことができる。これにより使用者が室内から移動し、その後、戻ってきたときの省エネ性と快適性を両立することができる。実施例では閾値2を110分としているが、この閾値2についても使用者が例えばリモコン5で設定可能としても良い。
【0034】
カウンタが閾値2以上となると、運転停止に向けた最終確認を行う。これは使用者などが室内にいるにもかかわらず、動きがなかったり、周囲の温度と使用者などの温度に差がなかったりして、検知できないことがあるからである。したがって、この最終確認では赤外線検知装置14に加えて、音声検知装置17で室内の音情報を検知することで、赤外線検知装置14で被検知体を検知できなかったのは本当に被検知体が室内にいなかったからなのか、何らかの理由で検知できなかったからなのか判定することができる。こうすることで使用者などが室内にいるにもかかわらず空気調和機の運転を停止して、快適性が悪化することを防止することができる。
【0035】
最終確認では、まず赤外線検知装置14で被検知体の検知を行う(Step13)。被検知体を検知しなかったときには音声検知装置17の検知能力を高めるために、風速を最小とする(Step14)。具体的には、音声検知センサが検知する送風ファンの回転音が50dB以下になるように、風速を下げる。続いて音声検知装置17で室内の音声情報を検知する(Step15)。検知結果が空気調和機の運転音のみであったときには、使用者が室内にはいないと判断し、空気調和機の運転を停止する。これにより使用者が長時間室内を空けて戻らなかったときには当該空気調和機の運転が停止されることから、待機電力のみとなり、大幅な省エネを図ることができる。
【0036】
音声検知装置17の検知結果が、例えば掃除機などのモータ音であったり、TVやラジオであったり、会話であったりしたときには、使用者がいる可能性が高いため、時間を置いて再確認を行う。そのために一旦Step14で変更した風速を変更する前の元の回転数に戻し、所定の時間だけセーブ運転を行う(Step16)。実施例では設定時間を30分としている。なお、一旦Step14で変更した風速を変更する前の元の回転数に戻すだけでなく、Step14で変更した風速を他の回転数になるように上昇させてもよい。
【0037】
空気調和機は、空気調和機の運転音、使用者の音声、掃除機のモータ音などにおける主な周波数を予め記憶している。ここで、音声検知装置17で検知した値から空気調和機の運転音、使用者の音声、掃除機のモータ音などに対応する所定の周波数域を取り出す計算を行う。そして、音声検知装置17の検知結果が空気調和機の運転音における周波数域における音声データのみ検知された場合は、使用者が室内にはいないと判断する。つまり、音声検知装置17は、空気調和機の運転音の周波数域を特定しており、音声検知装置17が検知した音情報が前記空気調和機の運転音の周波数域以外の音情報を含んでいるときは、在室者がいると判断し、音声検知装置17が検知した音情報が空気調和機の運転音の周波数域以外の音情報を含んでいないときは、在室者がいないと判断する。
【0038】
セーブ運転を設定時間行った後で、Step13〜Step15と同様に赤外線検知装置14および音声検知装置17で検知を行う(Step17〜Step19)。赤外線検知装置14で被検知体を検知できず、かつ音声検知装置17の検知結果が空気調和機の運転音のみであったときには、使用者が室内にはいないと判断し、空気調和機の運転を停止する。赤外線検知装置14で被検知体を検知できなかったが、音声検知装置17の検知結果が空気調和機の運転音のみではなかったときには、使用者がいる可能性が高いため、時間を置いて再々確認を行う。再々確認はStep16〜Step17と同様にセーブ運転を設定時間行い、赤外線検知装置14で検知を行う(Step20〜Step21)。実施例では設定時間を30分としている。
【0039】
Step21においても赤外線検知装置14で被検知体を検知できなかったときには、Step15、Step19での空気調和機の運転音のみではなかったとしても、これらは戸外の騒音など使用者などとは関係のない音声情報であったと判断し、空気調和機の運転を停止する。
【0040】
Step13、Step17、Step21において赤外線検知装置14で被検知体を検知したときには、リモコン5の設定にしたがって運転を行い(Step22)、Step3に戻る。すなわちセーブ運転を解除し、通常の運転に戻り、カウンタを初期化し、赤外線検知装置14での被検知体の検知を再開する。セーブ運転から通常運転に戻ることで、室内の快適性を速やかに戻すことができる。これにより使用者が室内から移動し、その後、戻ってきたときの快適性と省エネ性を両立することができる。
【0041】
ここでは、Step15及びStep19でのみ音声検知装置17による検知を行うことについて説明したが、他のStepで音声検知装置17による検知を行うようにしてもよい。但し、室内送風機311は音声検知装置17が設置された場所に近く、室内送風機311の運転音が音声検知装置17に検知されやすい。そのため、音声検知装置17による検知を行うときは、音声検知装置17の検知能力を高めるために、室内送風機311の回転数を弱める必要がある。つまり、音声検知装置17による検知に伴って、風量を減少させるため、使用者の快適性を損なう場合がある。そのため、赤外線検知装置14で使用者が検知されず、使用者が室内に在室している可能性が低いときに始めて音声検知装置17による検知を行うことで、使用者が室内に在室しているときに、風量を減少させる可能性を下げることができる。
【0042】
従って、在室者を検知する赤外線検知装置14と、室内の音を検知する音声検知装置17と、を備え、空気調和機の運転中に、赤外線検知装置14が設定時間在室者を検知しないときに、室内送風機311の回転数を下げ、且つ、室内送風機311の回転数を下げた後に音声検知装置17に室内の音を検知させ、音声検知装置17が在室者を検知したときは、室内送風機311の回転数を上げ、音声検知装置17が在室者を検知しないときは、空気調和機の運転を停止することにより、室内送風機311の運転音を低下させてから音声検知装置17に室内の音を検知させるため、在室者を検知する精度が高まる。また、赤外線検知装置14が設定時間在室者を検知しないときに始めて、室内送風機311の回転数を下げるため、在室者がいる状態で室内送風機311の回転数を下げる確率を低下させることができ、在室者の快適性を損なわない。
【0043】
ここで、空気調和機の運転中に、赤外線検知装置14が設定時間在室者を検知しないときは、室内送風機311の回転数を、通常運転時に設定可能な最低回転数まで下げる。なお、通常運転時に設定可能な回転数とは、例えば強風、中風、弱風、微風に対応する回転数である。この場合、通常運転時に設定可能な最低回転数とは微風となる。
【0044】
また、音声検知制御は、室内送風機13の回転数を、空気調和機の運転音が50dB以下となる回転数にすることにより、在室者の有無を判定する精度を高めることができる。
【0045】
また、音声検知装置が在室者を検知したときは、送風ファンの回転数を、送風ファンの回転数を下げる前の回転数に戻す。
【0046】
また、空気吸込み口及び空気吹出し口を有する筐体と、筐体内に配置された熱交換器と、室内空気を空気吸込み口より吸込み、空気吹出し口より吹出す室内送風機311と、室内送風機311の吹出し風路に設けた左右風向板と、室内送風機311の吹出し風路に設けた上下風向板と、在室者を検知する赤外線検知装置14と、室内の音を検知する音声検知装置17と、を備え、空気調和機の運転中に、赤外線検知装置14が第1の所定時間内に在室者を検知しない場合は、空気調和機の設定温度を変更してセーブ運転を第2の設定時間行い、セーブ運転時に赤外線検知装置14が在室者を検知した場合は、セーブ運転を通常の運転に戻し、セーブ運転時に赤外線検知装置14が在室者を検知しない場合は、室内送風機311の回転数を下げ、且つ、室内送風機311の回転数を下げた後に音声検知装置17に室内の音を検知させ、音声検知装置17が在室者を検知した場合は、室内送風機311の回転数を上げ、且つ、セーブ運転終了後にさらにセーブ運転を第3の設定時間行い、音声検知装置17が在室者を検知しないときは、空気調和機の運転を停止することにより、在室者の活動を阻害することなく、在室者の有無を判定する精度を高め、自動的に快適運転や省エネ運転を行うことができる。
【0047】
また、セーブ運転を所定の回数繰り返した時は、音声検知装置17が空気調和機の運転音以外を検知した場合であっても、空気調和機の運転を停止することにより、在室者の有無の最終確認において複数回検知動作をすることで、誤検知による運転停止を防止しつつ、在室者の有無に応じて自動的に快適運転や省エネ運転を行うことができる。
【0048】
また、音声検知装置17は、空気調和機の運転音の周波数域を特定しており、音声検知装置17が検知した音情報が空気調和機の運転音の周波数域以外の音情報を含んでいるときは、在室者がいると判断し、音声検知装置17が検知した音情報が空気調和機の運転音の周波数域以外の音情報を含んでいないときは、在室者がいないと判断することにより、音声検知装置が検知した音情報から在室者の有無をより精度良く判断することができる。なお、空気調和機の運転音は室内送風機13から吹出す気流に基づく音が支配的であるため、室内送風機13から吹出す気流に基づく音の周波数域を予め特定し、音声検知装置17が検知した音情報が室内送風機13から吹出す気流に基づく音の周波数域以外の音情報を含んでいるか分析するようにしてもよい。