【文献】
Wu et al,nature biotechnology,2007年10月14日,Vol. 25, No. 11,p. 1290-1297
【文献】
Morrison,nature biotechnology,2007年11月,Vol. 25, No. 11,p. 1233-1234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記疾患が、関節リウマチ、骨関節炎、若年性慢性関節炎、化膿性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性紅斑性狼瘡、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インシュリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、臓器移植に関連する急性又は慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固、川崎病、バセドウ病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーライン紫斑症、腎臓の顕微鏡的血管炎、慢性活動性肝炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染性疾患、寄生性疾患、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、発作、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、アジソン病、孤発性の、多内分泌腺機能低下症候群I型及び多内分泌腺機能低下症候群II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸促迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、関節炎、ライター病、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸性関節炎、腸疾患性滑膜炎、クラミジア、エルシニア及びサルモネラ関連関節炎、脊椎関節症、アテローム性疾患/アテローム性動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱性疾患、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA病、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳脊髄炎/ロイヤルフリー病、慢性粘膜皮膚カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、突発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全関連疾患、B型肝炎、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型原発性低γグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣機能不全、早期卵巣機能不全、繊維性肺疾患、突発性間質性肺炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織疾患関連間質性肺疾患、混合性結合組織疾患関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性紅斑性狼瘡関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、シェーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患(vasculitic diffuse lung disease)、ヘモシデローシス関連肺疾患、薬物によって誘導された間質性肺疾患、繊維症、放射性繊維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、通風関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性又はルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫媒介性低血糖症、黒色表皮腫を伴うB型インシュリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に関連する急性免疫疾患、臓器移植に関連する慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、1型乾癬、2型乾癬、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎臓病NOS、糸球体腎炎、腎臓の顕微鏡的血管炎、ライム病、円板状紅斑性狼瘡、男性不妊症特発性又はNOS、精子自己免疫、多発性硬化症(全てのサブタイプ)、交感性眼炎、結合組織疾患に続発する肺高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スチル病、全身性硬化症、シェーグレン症候群、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫(primary myxoedema)、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性血管炎、白斑急性肝疾患、慢性肝疾患、アルコール性肝硬変、アルコール誘発性肝障害、胆汁うっ滞(choleosatatis)、特異体質性肝疾患、薬物誘発性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、アレルギー及び喘息、B群連鎖球菌(GBS)感染、精神障害(うつ病、統合失調症)、Th2型及びTh1型によって媒介される疾病、急性及び慢性疼痛(疼痛の様々な形態)、並びに、肺癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌及び腎臓癌及び造血性悪性病変(白血病、リンパ腫)などの癌、無βリポタンパク質血症、先端チアノーゼ、急性及び慢性寄生性又は感染性プロセス、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性又は慢性細菌感染、急性膵炎、急性腎不全、腺癌、心房(aerial)異所性拍動、AIDS認知症複合、アルコール誘発性肝炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、同種移植拒絶、α−1−アンチトリプシン欠乏症、筋萎縮性側索硬化症、貧血、狭心症、前角細胞変性、抗cd3治療、抗リン脂質症候群、抗受容体過敏症反応(anti−receptor hypersensitivity reactions,)、大動脈(aordic)及び動脈瘤、大動脈解離、動脈性高血圧、動脈硬化症、動静脈痩、運動失調、心房細動(持続的又は発作性)、心房粗動、房室ブロック、B細胞リンパ腫、骨移植拒絶、骨髄移植(BMT)拒絶、脚ブロック、バーキットリンパ腫、火傷、心不整脈、心機能不全症候群(cardiac stun syndrome)、心臓腫瘍、心筋症、心肺バイパス炎症反応、軟骨移植拒絶、小脳皮質変性、小脳疾患、無秩序な又は多巣性心房頻脈、化学療法関連疾患、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性アルコール症、慢性炎症性病変、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性サリチル酸中毒、結腸直腸癌、うっ血性心不全、結膜炎、接触性皮膚炎、肺性心、冠動脈疾患、クロイツフェルト−ヤコブ病、培養陰性敗血症、嚢胞性繊維症、サイトカイン療法関連疾患、ボクサー脳、脱髄性疾患、デング出血熱、皮膚炎、皮膚科学的症状、糖尿病、真性糖尿病、糖尿病性動脈硬化疾患、瀰漫性レビー小体病、拡張型うっ血性心筋症、大脳基底核の疾患、中年のダウン症候群、中枢神経ドーパミン受容体を遮断する薬物によって誘発された薬物誘発性運動疾患、薬物感受性、湿疹、脳脊髄炎、心内膜炎、内分泌疾患、喉頭蓋炎、エプスタイン−バーウイルス感染、紅痛症、垂体外路及び小脳疾患、家族性血球貪食性リンパ組織球症(familial hematophagocytic lymphohistiocytosis)、致死的胸腺移植組織拒絶、フリードライヒ失調症、機能的末梢動脈疾患、真菌性敗血症、ガス壊疸、胃潰瘍、糸球体腎炎、何れかの臓器又は組織の移植片拒絶、グラム陰性敗血症、グラム陽性敗血症、細胞内生物に起因する肉芽腫、有毛細胞白血病、ハラーホルデン・スパッツ病、橋本甲状腺炎、枯草熱、心臓移植拒絶、血色素症、血液透析、溶血性尿毒症症候群/血栓溶解血小板減少紫斑病、出血、A型肝炎、ヒス束不整脈、HIV感染/HIV神経障害、ホジキン病、運動過剰疾患、過敏症反応、過敏性肺炎、高血圧、運動低下疾患、視床下部−下垂体−副腎皮質系評価、特発性アジソン病、特発性肺繊維症、抗体媒介性細胞毒性、無力症、乳児脊髄性筋萎縮症、大動脈の炎症、A型インフルエンザ、電離放射線曝露、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、虚血再灌流障害、虚血性発作、若年性関節リウマチ、若年性脊髄性筋萎縮症、カポジ肉腫、腎移植拒絶、レジオネラ、リーシュマニア症、ハンセン病、皮質脊髄系の病変、脂肪血症(lipedema)、肝臓移植拒絶、リンパ浮腫(lymphederma)、マラリア、悪性リンパ腫、悪性組織球増殖症、悪性黒色腫、髄膜炎、髄膜炎菌血症(meningococcemia)、代謝性/特発性、偏頭痛、ミトコンドリア多系疾患(mitochondrial multi−system disorder)、混合性結合組織病、モノクローナル高ガンマグロブリン血症、多発性骨髄腫、多系統変性(メンセル・デジェリーヌ−トーマス シャイ−ドレーガー及びマシャド−ジョセフ)、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ、マイコバクテリウム・チュバキュロシス、骨髄形成異常、心筋梗塞、真菌虚血疾患、上咽頭癌、新生児慢性肺疾患、腎炎、ネフローゼ、神経変性疾患、神経原性筋萎縮、好中球減少性発熱、非ホジキンリンパ腫、腹部大動脈及びその分枝の閉塞、閉塞性動脈疾患、okt3療法、精巣炎/精巣上体炎、精巣炎/精管復元術処置、臓器肥大、骨粗鬆症、膵臓移植拒絶、膵癌、腫瘍随伴性症候群/悪性腫瘍の高カルシウム血症、副甲状腺移植拒絶、骨盤内炎症性疾患、通年性鼻炎、心膜疾患、末梢アテローム硬化性疾患、末梢血管疾患、腹膜炎、悪性貧血、ニューモシスチス・カリニ肺炎、肺炎、POEMS症候群(多発神経炎、臓器肥大、内分泌疾患、単クローン性γグロブリン血症及び皮膚変化症候群(skin changes syndrome))、灌流後症候群(post perfusion syndrome)、ポンプ後症候群(post pump syndrome)、心筋梗塞後開心術症候群、子癇前症、進行性核上性麻痺、原発性肺高血圧、放射線療法、レイノー現象及び病、レイノー病、レフサム病、規則的なQRS幅の狭い頻脈症(regular narrow QRS tachycardia)、腎血管性高血圧、再灌流障害、拘束型心筋症、肉腫、強皮症、老年性舞踏病、レビー小体型の老年性認知症、血清反応陰性関節炎、ショック、鎌形赤血球貧血症、皮膚同種異系移植拒絶、皮膚変化症候群、小腸移植拒絶、固形腫瘍、固有不整脈(specific arrythmias)、脊髄性運動失調、脊髄小脳変性、連鎖球菌性筋炎、小脳の構造的病変、亜急性硬化性全脳炎、湿疹、心血管系の梅毒、全身性アナフィラキシー、全身性炎症反応症候群、全身性発症若年性関節リウマチ、T細胞又はFABALL、毛細血管拡張症、閉塞性血栓血管炎、血小板減少症、毒性、移植、外傷/出血、III型過敏症反応、IV型過敏症、不安定狭心症、尿毒症、尿路性敗血症、じんましん、心臓弁膜症、静脈瘤、血管炎、静脈疾患、静脈血栓症、心室細動、ウイルス及び真菌感染、ウイルス性脳炎(vital encephalitis)/無菌性髄膜炎、ウイルス関連血球貪食症候群、ウェルニッケ−コルサコフ症候群、ウィルソン病、何れかの臓器又は組織の異種移植拒絶、急性冠不全症候群、急性突発性多発性神経炎、急性炎症性脱髄性多発性神経障害、急性虚血、成体スチル病、アナフィラキシー、抗リン脂質抗体症候群、再生不良貧血、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎、自己免疫性皮膚炎、連鎖球菌感染を伴う自己免疫性疾患、自己免疫性腸疾患、自己免疫性難聴、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性早発閉経、眼瞼炎、気管支拡張症、水疱性類天疱瘡、心血管疾患、劇症型抗リン脂質抗体症候群、セリアック病、頚部脊椎症、慢性虚血、瘢痕性類天疱瘡、多発性硬化症に対するリスクを有する最初のエピソードからなる症候群(cis;clinically isolated syndrome)、小児発症精神疾患、涙嚢炎、皮膚筋炎、糖尿病性網膜症、椎間板ヘルニア、椎間板脱出、薬物によって誘導される免疫溶血性貧血、子宮内膜炎、眼内炎、上強膜炎、多型性紅斑、重症型多型性紅斑、妊娠性類天疱瘡、ギランバレー症候群(GBS)、ヒューズ症候群、突発性パーキンソン病、突発性間質性肺炎、IgE媒介性アレルギー、免疫溶血性貧血、封入体筋炎、感染性眼性炎症疾患、炎症性脱髄性疾患、炎症性心臓病、炎症性腎臓病、IPF/UIP、虹彩炎、角膜炎、乾性角結膜炎、クスマウル病又はクスマウル・マイヤー病、ランドリー麻痺、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、網状皮斑、黄斑変性、顕微鏡的多発性血管炎、ベフテレフ病、運動神経疾患、粘膜類天疱瘡、多発性臓器不全、重症筋無力症、骨髄異形成症候群、心筋炎、神経根疾患、神経障害、非A非B型肝炎、視神経炎、骨溶解、少関節性JRA、末梢動脈閉塞疾患(PAOD)、末梢血管疾患(PVD)、末梢動脈疾患(PAD)、静脈炎、結節性多発性動脈炎(又は結節性動脈周囲炎)、多発性軟骨炎、白毛症、多関節性JRA、多内分泌欠乏症候群、多発性筋炎、リウマチ性多発性筋痛(PMR)、原発性パーキンソン病、前立腺炎、純赤血球
形成不全、原発性副腎不全、再発性視神経脊髄炎、再狭窄、リウマチ性心疾患、sapho(滑膜炎、ざ瘡、嚢胞、骨肥大症及び骨炎)、続発性アミロイドーシス、ショック肺、強膜炎、坐骨神経痛、続発性副腎不全、シリコーン関連結合組織疾患、スネドン−ウィルキンソン皮膚病、強直性脊椎炎、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎、トキソプラズマ網膜炎、毒性表皮剥離症、横断性脊髄炎、TRAPS(腫瘍壊死因子受容体1型アレルギー性反応)、II型糖尿病、じんましん、通常型間質性肺炎(UIP)、血管炎、春季カタル、ウイルス性網膜炎、フォークト・コヤナギ・ハラダ症候群(VKH症候群)、滲出型黄斑変性、又は創傷治癒である、請求項9に記載の使用。
医薬が、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、嚢内、軟骨内、腔内(intracavitarily)、腔内(intracelially)、小脳内、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心臓周囲内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑膜内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、口内、舌下、鼻内、又は経皮投与される、請求項9又は10に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0079】
発明の詳細な記述
本発明は、2つ又はそれ以上の抗原を結合することが可能な多価及び/又は多重特異的結合タンパク質に関する。具体的には、本発明は、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD−Ig)及びその医薬組成物並びにこのようなDVD−Igを作製するための核酸、組み換え発現ベクター及び宿主細胞に関する。インビトロ又はインビボの何れかで、特異的抗原を検出するために本発明のDVD−Igを使用する方法も、本発明によって包含される。
【0080】
本明細書に別段の定義がなければ、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。しかしながら、何らかの潜在的な曖昧さが生じた場合には、用語の意味及び範囲は明瞭でなければならず、本明細書に提供されている定義があらゆる辞書又は外部的な定義に優越する。さらに、文脈上別段の要求がなければ、単数の用語は複数を含み、複数の用語は単数を含むものとする。本願において、別段の記載がなければ、「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。さらに、「含み」並びに「含む」及び「含んだ」などの他の形態の用語の使用は限定的でない。また、「要素」又は「成分」などの用語は、具体的に別段の表記がなければ、1つのユニットを含む要素及び成分並びに2以上のサブユニットを含む要素及び成分の両方を包含する。
【0081】
一般的に、本明細書に記載されている細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学並びにタンパク質及び核酸化学及びハイブリド形成に関連して使用される命名法及びこれらの技術は、周知のものであり、本分野において一般的に使用されている。本発明の方法及び技術は、別段の記載がなければ、本分野において周知の慣用方法に従い、並びに本明細書を通じて引用及び論述されている様々な一般的参考文献及びより具体的な参考文献中に記載されているように、一般に実施される。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、本分野で一般的に遂行されているように、又は本明細書に記載されているように、実施される。本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学及び医薬品化学及び薬化学に関して使用される命名法、並びに本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学及び医薬品化学及び薬化学の実験室操作及び技術は、周知のものであり、本分野で一般的に使用されているものである。化学合成、化学分析、医薬の調製、調合、及び送達、及び患者の治療に対しては、標準的な技術が使用される。
【0082】
本発明をさらに容易に理解し得るように、特定の用語を以下に定義する。
【0083】
本明細書において使用される「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のあらゆるポリマー鎖を表す。「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、ポリペプチドという用語と互換的に使用され、同じく、アミノ酸のポリマー鎖を表す。「ポリペプチド」という用語は、固有又は人工のタンパク質、タンパク質断片及びタンパク質配列のポリペプチド類縁体を包含する。ポリペプチドは、単量体又は多量体であり得る。本明細書における「ポリペプチド」の使用は、文脈上反対の記載がなければ、ポリペプチド並びにその断片及び変形物(変形物の断片を含む。)を包含するものとする。抗原性ポリペプチドに関しては、ポリペプチドの断片は、ポリペプチドの少なくとも1つの連続するエピトープ又は非直線エピトープを含有してもよい。少なくとも1つのエピトープ断片の正確な境界は、本分野における通常の技術を用いて確認することができる。断片は、少なくとも約10の連続するアミノ酸、少なくとも約15の連続するアミノ酸又は少なくとも約20の連続するアミノ酸など、少なくとも約5の連続するアミノ酸を含む。ポリペプチドの変形物は、本明細書に記載されているとおりである。
【0084】
「単離されたタンパク質」又は「単離されたポリペプチド」という用語は、その由来起源又は由来源のために、その固有の状態において当該タンパク質又はポリペプチドとともに存在する天然に随伴される成分を伴わないタンパク質又はポリペプチドであり、同じ種に由来する他のタンパク質を実質的に含まず、異なる種から得られた細胞によって発現され、又は天然には存在しない。従って、化学的に合成されたポリペプチド、又はポリペプチドが本来由来する細胞とは異なる細胞系の中で合成されたポリペプチドは、本来付随しているその成分から「単離」されている。タンパク質は、本分野で周知のタンパク質精製技術を使用し、単離によって、本来付随している成分が実質的に存在しないようにすることもできる。
【0085】
本明細書において使用される「回収する」という用語は、例えば、本分野で周知のタンパク質精製技術を使用して、単離によって、ポリペプチドなどの化学種を、本来付随する成分を実質的に含まないようにする過程を表す。
【0086】
本明細書において使用される「生物学的活性」は、分子のあらゆる1つ又はそれ以上の固有の生物学的特性(インビボで見出されるように天然に存在するか、又は組換え手段によって提供若しくは可能にされるかどうかを問わない。)を表す。生物学的特性には、受容体を結合すること;細胞増殖の誘導、細胞増殖を阻害すること、他のサイトカインの誘導、アポトーシスの誘導及び酵素活性が含まれるが、これらに限定されない。生物学的活性には、Ig分子の活性も含まれる。
【0087】
第二の化学種との抗体、タンパク質又はペプチドの相互作用に関して、本明細書において使用される「特異的結合」又は「特異的に結合する」という用語は、相互作用が、化学種、例えば、抗体上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存し、タンパク質一般ではなく、特異的なタンパク質構造を認識し、結合することを意味する。抗体がエピトープ「A」に対して特異的であれば、標識された「A」及び抗体を含有する反応中での、エピトープAを含有する分子(すなわち、標識されていない遊離のA)の存在は、抗体に結合した、標識されたAの量を減少させる。
【0088】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖(2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖)から構成されるあらゆる免疫グロブリン(Ig)分子又はIg分子の本質的なエピトープ結合特性を保持した全ての機能的分子、変異体、変形物又はこれらの誘導体を広く表す。このような変異体、変形物又は誘導体抗体のフォーマットは、本分野において公知である。これらの非限定的な実施形態は、以下に論述されている。
【0089】
完全長の抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、HCVR又はVHと略称される。)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において、LCVR又はVLと略称される。)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。VH及びVL領域は、より保存された領域(フレームワーク領域(FR)と称される。)が散在された超可変領域(相補性決定領域(CDR)と称される。)へ、さらに細分割することが可能である。各VH及びVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で、アミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。免疫グロブリン分子は、あらゆる種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであり得る。
【0090】
「Fc領域」という用語は、無傷の抗体のパパイン消化によって生成され得る、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は、固有配列のFc領域又は変形物Fc領域であり得る。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン(CH2ドメイン及びCH3ドメイン)を含み、任意にCH4ドメインを含む。抗体エフェクター機能を変化させるために、Fc部分中のアミノ酸残基を置換することが、本分野において公知である(Winter,et al.米国特許第5,648,260号及び米国特許第5,624,821号)。抗体のFc部分は、幾つかの重要なエフェクター機能、例えば、サイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞傷害(CDC)並びに抗体及び抗原−抗体複合体の半減期/排除速度を媒介する。幾つかの事例において、これらのエフェクター機能は、治療用抗体のために望ましいが、別の事例では、治療目的に応じて、必要でない場合があり得、又は有害である場合さえあり得る。ある種のヒトIgGイソタイプ、特に、IgG1及びIgG3は、それぞれ、FcγR及び補体C1qへの結合を介して、ADCC及びCDCを媒介する。新生児Fc受容体(FcRn)は、抗体の循環半減期を決定する重要な成分である。さらに別の実施形態において、少なくとも1つのアミノ酸残基は、抗体のエフェクター機能が変化されるように、抗体の定常領域、例えば、抗体のFc領域において置換されている。免疫グロブリンの2つの同一の重鎖の二量体化は、CH3ドメインの二量体化によって媒介され、ヒンジ領域内のジスルフィド結合によって安定化される(Huber et al.Nature;264:415−20;Thies et al 1999 J Mol Biol;293:67−79.)。重鎖−重鎖ジスルフィド結合を防止するための、ヒンジ領域内のシステイン残基の変異は、CH3ドメインの二量体化(dimeration)を不安定化させる。CH3二量体化にとって必要とされる残基が同定されている(Dall’ Acqua 1998 Biochemistry 37:9266−73.)。従って、一価の半Igを生成することが可能である。興味深いことに、これらの一価の半Ig分子は、IgG及びIgA両サブクラスに対して、天然に見出されている(Seligman 1978 Ann Immunol 129:855−70. ;Biewenga et al 1983 Clin Exp Immunol 51:395−400)。FcRn:IgFc領域の化学量論は、2:1であることが決定されており(West et al .2000 Biochemistry 39:9698−708)、半Fcは、FcRn結合を媒介するのに十分である(Kim et al 1994 Eur J Immunol;24:542−548.)。CH3二量体化にとって重要な残基がCH3bシート構造の内部界面上に位置しているのに対して、FcRn結合に必要とされる領域は、CH2−CH3ドメインの外側界面に位置しているので、CH3ドメインの二量体化を崩壊させるための変異は、そのFcRn結合に対して、より大きな悪影響を有さないかもしれない。しかしながら、半Ig分子は、通常の抗体よりサイズが小さいので、組織透過においてある種の利点を有し得る。一実施形態において、少なくとも1つのアミノ酸残基は、重鎖の二量体化が破壊されて、半DVDIg分子をもたらすように、本発明の結合タンパク質の定常領域、例えば、Fc領域において置換されている。IgGの抗炎症活性は、IgGFc断片のN結合型グリカンのシアル化に依存する。適切なIgG1Fc断片を作製することができ、これにより、大幅に増強された強度を有する完全な組換えシアル化IgG1Fcが作製され得るように、抗炎症活性のための正確なグリカンの必要性は決定されている(Anthony,R.M.,et al.,(2008)Science320:373−376)。
【0091】
本明細書において使用される抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つ又はそれ以上の断片を表す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行可能であることは示されている。このような抗体の実施形態は、二特異的、二重特異的又は多重特異的フォーマットでもあり得、2つ又はそれ以上の異なる抗原に特異的に結合する。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片)、(ii)F(ab’)
2断片(ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片)、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)単一の可変ドメインを含むdAb断片(Ward et al.(1989) Nature 341:544−546、Winter et al.,PCT公開WO90/05144A1、参照により、本明細書に組み込まれる。)及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは別個の遺伝子によってコードされているが、これらは、VL及びVH領域が対合して一価分子を形成している単一のタンパク質鎖として、これらの作製を可能とする合成リンカーによって、組み換え法を用いて連結することが可能である(一本鎖Fv(scFv)として知られている。例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423−426;及びHuston et al.(1988) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 85:5879−5883を参照)。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものとする。ダイアボディなどの一本鎖抗体の他の形態も包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現されているが、同一鎖上にある2つのドメイン間での対合を可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、両ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合するように強制し、2つの抗原結合部位を作出する二価の二特異的抗体である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure2:1121−1123を参照)。このような抗体結合部分は、本分野において公知である(Kontermann and Dubel eds.,Antibody Engineering(2001) Springer−Verlag.New York.790 pp.(ISBN 3−540−41354−5)。さらに、一本鎖抗体も、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒に、抗原結合領域の対を形成する直列Fvセグメントの対を含む「直鎖抗体」(VH−CH1−VH−CH1)に含まれる(Zapata et al.Protein Eng.8(10):1057−1062(1995);及び米国特許第5,641,870号)。
【0092】
本明細書を通じて、「多価結合タンパク質」という用語は、2つ又はそれ以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質を表すために使用される。一実施形態において、多価結合タンパク質は、3つ又はそれ以上の抗原結合部位を有するように加工され、一般に、天然に存在しない抗体である。「多重特異的結合タンパク質」という用語は、2つ又はそれ以上の関連する標的又は無関係な標的に結合することが可能な結合タンパク質を表す。本発明の二重可変ドメイン(DVD)結合タンパク質は、2つ又はそれ以上の抗原結合部位を含み、四価又は多価結合タンパク質である。DVDは、単一特異的であり得(すなわち、1つの抗原を結合することができる。)、又は多重特異的(すなわち、2つ又はそれ以上の抗原を結合することができる。)であり得る。2つの重鎖DVDポリペプチド及び2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合タンパク質は、DVDIgと表される。DVDIgの各半分は、重鎖DVDポリペプチド及び軽鎖DVDポリペプチド及び2つの抗原結合部位を含む。各結合部位は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、計6CDRが抗原結合部位当たりの抗原結合に関与する。
【0093】
本明細書に使用される「二特異的抗体」という用語は、クアドローマ技術(Milstein,C. and A.C. Cuello,Nature,1983.305(5934):p.537−40参照)によって、2つの異なるモノクローナル抗体の化学的連結によって(Staerz,U.D.,et al.,Nature,1985. 314(6012):p.628−31参照)、又はノブ・イントゥ・ホール若しくはFc領域中に変異を導入する類似のアプローチによって(Holliger,P.,T.Prospero,and G.Winter,Proc Natl Acad Sci U S A,1993.90(14):p.6444−8.18参照)作製され、そのうち1つのみが機能的な二特異的抗体である複数の異なる免疫グロブリン種をもたらす、完全長抗体を表す。分子機能によって、二特異的抗体は、その2つの結合アーム(HC/LCの1つの対)の1つの上に存在する1つの抗原(又はエピトープ)を結合し、その第二のアーム(HC/LCの異なる対)の上に存在する異なる抗原(又はエピトープ)を結合する。この定義によって、二特異的抗体は、(特異性及びCDR配列の両者において)2つの異なる抗原結合アームを有し、それが結合する各抗原に対して一価である。
【0094】
本明細書において使用される「二重特異的抗体」という用語は、その2つの結合アーム(HC/LCの対)の各々の中に存在する2つの異なる抗原(又はエピトープ)を結合することが可能な完全長抗体を表す(PCT公開WO02/02773参照)。従って、二重特異的結合タンパク質は、同一の特異性と同一のCDR配列を有する2つの同一の抗原結合アームを有し、これが結合する各抗原に対して二価である。
【0095】
結合タンパク質の「機能的抗原結合部位」とは、標的抗原を結合することが可能な部位である。抗原結合部位の抗原結合親和性は、必ずしも、当該抗原結合部位が由来する親抗体と同程度に強力であるとは限らないが、抗原を結合する能力は、抗原への抗体結合を評価するための公知の様々な方法の何れか1つを用いて測定可能でなければならない。さらに、本明細書において、多価抗体の抗原結合部位の各々の抗原結合親和性は、定量的に同一である必要はない。
【0096】
「サイトカイン」という用語は、1つの細胞集団によって放出され、細胞間媒介物質として別の細胞集団に対して作用するタンパク質に対する包括的用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモンなどの糖タンパク質ホルモン;肝細胞成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−α及び−β;ミュラー管抑制物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−αなどの神経細胞成長因子;血小板成長因子;胎盤成長因子;TGF−α及びTGF−βなどのトランスフォーミング成長因子(TGF);インシュリン様成長因子−1及び−11;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン−α、−β及び−γなどのインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージ−CSF(GM−CSF);及び顆粒球−CSF(G−CSF);IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−18、IL−21、IL−22、IL−23、IL−33などのインターロイキン(IL);TNF−α又はTNF−βなどの腫瘍壊死因子;並びにLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。本明細書において使用される、サイトカインという用語には、天然源から又は組み換え細胞培養から得られるタンパク質及び固有配列のサイトカインの生物学的に活性な均等物が含まれる。
【0097】
「リンカー」という用語は、ペプチド結合によって連結された2つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含むポリペプチドを表し、1つ又はそれ以上の抗原結合部分を連結するために使用される。このようなリンカーポリペプチドは、本分野において周知である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;Poljak,RJ.,et al.(1994) Structure 2:1121−1123参照)。典型的なリンカーには、X1は、AKTTPKLEEGEFSEAR(配列番号1);AKTTPKLEEGEFSEARV(配列番号2);AKTTPKLGG(配列番号3);SAKTTPKLGG(配列番号4);SAKTTP(配列番号5);RADAAP(配列番号6);RADAAPTVS(配列番号7);RADAAAAGGPGS(配列番号8);RADAAAA(G
4S)
4(配列番号9)
;SAKTTPKLEEGEFSEARV(配列番号10);ADAAP(配列番号11);ADAAPTVSIFPP(配列番号12);TVAAP(配列番号13);TVAAPSVFIFPP(配列番号14);QPKAAP(配列番号15);QPKAAPSVTLFPP(配列番号16);AKTTPP(配列番号17);AKTTPPSVTPLAP(配列番号18);AKTTAP(配列番号19);AKTTAPSVYPLAP(配列番号20);ASTKGP(配列番号21);ASTKGPSVFPLAP(配列番号22)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号23);GENKVEYAPALMALS(配列番号24);GPAKELTPLKEAKVS(配列番号25);及びGHEAAAVMQVQYPAS(配列番号26)が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
「免疫グロブリン定常ドメイン」は、重鎖又は軽鎖定常ドメインを表す。ヒトIgG重鎖及び軽鎖定常ドメインアミノ酸配列は、本分野において公知である。
【0099】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」又は「mAb」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を表す。すなわち、該集団を構成する各抗体は、僅かな量で存在する可能性がある天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原に対して誘導される。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して誘導された異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物と異なり、各mAbは、抗原上の単一の決定基に対して誘導される。「モノクローナル」という修飾語は、何れかの特定の方法によって、抗体を産生することを要求するものと解釈すべきではない。
【0100】
本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むものとする。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特にCDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムな突然変異導入若しくは部位特異的突然変異導入によって、又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含まないものとする。
【0101】
本明細書において使用される「組み換えヒト抗体」という用語は、宿主細胞中に形質移入された組み換え発現ベクターを用いて発現された抗体(以下のII節Cでさらに記載されている。)、組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(Hoogenboom H.R.,(1997) TIB Tech.15:62−70;Azzazy H.,and Highsmith W.E.,(2002) Clin.Biochem.35:425−445;Gavilondo J.V.,and Larrick J.W.(2002) BioTechniques 29:128−145;Hoogenboom H.,and Chames P.(2000) Immunology Today 21:371−378)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対して遺伝子導入されている動物(例えば、マウス)から単離された抗体(Taylor,L. D.,et al.(1992) Nucl.Acids Res.20:6287−6295;Kellermann S−A.,及びGreen L.L.(2002) Current Opinion in Biotechnology 13:593−597;Little M. et al(2000) Immunology Today 21:364−370参照)又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の、他のDNA配列へのスプライシングを含む他の何れかの手段によって調製され、発現され、作製され、若しくは単離された抗体など、組み換え手段によって調製され、発現され、作製され、若しくは単離された全てのヒト抗体を含むものとする。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する。しかしながら、ある種の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異導入(又は、ヒトIg配列に対して遺伝子導入された動物が使用される場合には、インビボ体細胞突然変異導入)に供され、従って、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、これらの配列に関連しつつも、インビボで、ヒト抗体生殖系列レパートリー内には、天然に存在しない場合があり得る配列である。
【0102】
「親和性成熟された」抗体とは、変化を有しない親抗体と比べて、抗体の1つ又はそれ以上のCDR中に、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす1つ又はそれ以上の変化を有する抗体である。典型的な親和性成熟された抗体は、標的抗原に対してnMの親和性を有し、又はpMの親和性さえ有する。親和性成熟された抗体は、本分野において公知の操作によって産生される。「Marks et al.Bid/Technology 10:779−783(1992)」は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基の無作為な突然変異導入は、Barbas et al.ProcNat.Acad.Sci,USA 91:3809−3813(1994);Schier et al.Gene 169:147−155(1995);Yelton et al.J. Immunol.155:1994−2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310−9(1995);Hawkins et al,J. Mol.BioL226:889−896(1992)によって記載されており、選択的な突然変異導入位置、接触又は高頻度変異位置での、活性増強アミノ酸残基による選択的変異は、米国特許第6,914,128号B1に記載されている。
【0103】
「キメラ抗体」という用語は、ヒト定常領域に連結されたマウス重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体など、ある種に由来する重鎖及び軽鎖可変領域配列並びに別の種に由来する定常領域配列を含む抗体を表す。
【0104】
「CDR移植された抗体」という用語は、マウスCDRの1つ又はそれ以上(例えば、CDR3)がヒトCDR配列で置換されているマウス重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体など、ある種に由来する重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVLのCDR領域の1つ又はそれ以上の配列が、別の種のCDR配列と置換されている抗体を表す。
【0105】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒト以外の種(例えば、マウス)由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部が、より「ヒト類似に」、すなわち、ヒト生殖系列可変配列により類似するように改変された抗体を表す。ヒト化抗体の1つの種類は、ヒトCDR配列がヒト以外のVH及びVL配列中に導入されて、対応する非ヒトCDR配列が置換されているCDR移植された抗体である。また、「ヒト化抗体」は、目的の抗原に免疫特異的に結合し、及びヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク(FR)領域と非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)を含む抗体又はその変形物、誘導体、類縁体若しくは断片である。本明細書において使用されるCDRの文脈での「実質的に」という用語は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有するCDRを表す。ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものに対応し、及びフレームワーク領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、FabC、Fv)の実質的に全てを含む。一実施形態において、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域)の少なくとも一部(Fc)も含む。幾つかの実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖及び重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含有する。抗体は、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3及びCH4領域も含み得る。幾つかの実施形態において、ヒト化抗体はヒト化軽鎖のみを含有する。幾つかの実施形態において、ヒト化抗体はヒト化重鎖のみを含有する。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/又はヒト化重鎖のみを含有する。
【0106】
「Kabat番号」、「Kabat定義」及び「Kabat標識」という用語は、本明細書において、互換的に使用される。本分野において認知されているこれらの用語は、抗体又はその抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域中の他のアミノ酸残基に比べて、より可変的な(すなわち、超可変的な)アミノ酸残基に付番するシステムを表す(Kabat et al.(1971) Ann.NY Acad,Sci.190:382−391 and ,Kabat,E.A.,et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication NO.91−3242)。重鎖可変領域の場合、超可変領域は、CDR1に対するアミノ酸位置31から35、CDR2に対するアミノ酸位置50から65及びCDR3に対するアミノ酸位置95から102にわたる。軽鎖可変領域の場合、超可変領域は、CDR1に対するアミノ酸位置24から34、CDR2に対するアミノ酸位置50から56及びCDR3に対するアミノ酸位置89から97にわたる。
【0107】
本明細書で使用される「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を表す。重鎖及び軽鎖の各可変領域中には3つのCDRが存在し、これらは、各可変領域に対して、CDR1、CDR2及びCDR3と表記される。本明細書において使用される「CDRセット」という用語は、抗原を結合することが可能な単一の可変領域中に存在する3つのCDRの群を表す。これらのCDRの正確な境界は、異なる系に従って、異なって定義されてきた。Kabatによって記載された系(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987) and(1991))は、抗体の何れの可変領域に対しても適用可能な明瞭な残基付番系を提供するのみならず、3つのCDRを定義する正確な残基境界を提供する。これらのCDRは、KabatCDRと称され得る。Chothia及び共同研究者(Chothia &Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987)及びChothia et al.,Nature 342:877−883(1989))は、KabatCDR内のある種の亜部分が、アミノ酸配列のレベルで大きな多様性を有するにも関わらず、ほぼ同一のペプチド骨格立体構造を採ることを見出した。これらの亜部分は、L1、L2及びL3又はH1、H2及びH3(「L」及び「H」は、それぞれ、軽鎖及び重鎖領域を表記する。)と表記される。これらの領域は、ChothiaCDRと称される場合があり、これは、KabatCDRと重複する境界を有する。KabatCDRと重複するCDRを定義する他の境界が、Padlan(FASEB J. 9:133−139(1995))及びMacCallum(J Mol Biol 262(5):732−45(1996))によって記載されている。さらに別のCDR境界定義が、本明細書の系の1つに厳格に従わない場合があり得るが、それにも関わらず、KabatCDRと重複するが、これらは、特定の残基又は残基の群又はCDR全体さえ、抗原結合に著しい影響を与えないという予測又は実験的な発見に照らして、短縮又は延長され得る。本明細書に使用されている方法は、これらの系の何れかに従って定義されたCDRを使用し得るが、ある種の実施形態は、Kabat又はChothiaによって定義されたCDRを使用する。
【0108】
本明細書で使用される「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」という用語は、CDRを差し引いた可変領域の残りの配列を表す。CDR配列の正確な定義は、異なる系によって決定され得るので、フレームワーク配列の意義は、これに対応して、異なる解釈に供せられる。6つのCDR(軽鎖のCDR−L1、−L2及び−L3並びに重鎖のCDR−H1、−H2及び−H3)は、軽鎖及び重鎖上のフレームワーク領域も、各鎖上の4つの亜領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)に分割し、CDR1はFR1とFR2の間に位置し、CDR2はFR2とFR3の間に、CDR3はFR3とFR4の間に位置する。他者によって表記されるように、FR1、FR2、FR3又はFR4として特定の亜領域を特定せずに、フレームワーク領域は、天然に存在する単一の免疫グロブリン鎖の可変領域内の組み合わされたFRを表す。本明細書において使用される、1つのFRは、4つの亜領域の1つを表し、複数のFRは、フレームワーク領域を構成する4つの亜領域の2つ又はそれ以上を表す。
【0109】
本明細書において使用される「生殖系列抗体遺伝子」又は「遺伝子断片」という用語は、特定の免疫グロブリンの発現のために遺伝的再編成及び変異をもたらす成熟プロセスを経ていない非リンパ系細胞によってコードされる免疫グロブリン配列を表す。(例えば、Shapiro et al.,Crit.Rev.Immunol.22(3):183−200(2002);Marchalonis et al.,Adv Exp Med Biol.484:13−30(2001)参照)。本発明の様々な実施形態によって提供される利点の1つは、生殖系列抗体遺伝子は、成熟した抗体遺伝子より、種内の個体に特徴的な必須のアミノ酸配列構造を保存する傾向がより大きく、このため、その種において治療的に使用された場合に、外来源に由来するものと認識される可能性がより低いという認識から生じる。
【0110】
本明細書において使用される「中和」という用語は、結合タンパク質が抗原に特異的に結合するときに、抗原の生物学的活性を減殺することを表す。一実施形態において、中和結合タンパク質はサイトカインを結合し、少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%又はそれ以上、その生物学的活性を低下させる。
【0111】
「活性」という用語は、2つ又はそれ以上の抗原に対するDVD−Igの結合特異性及び親和性などの活性を含む。
【0112】
「エピトープ」という用語には、免疫グロブリン又はT細胞受容体に特異的に結合することができる、あらゆるポリペプチド決定基が含まれる。ある種の実施形態において、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面基を含み、ある種の実施形態において、特異的な三次元構造的特徴及び/又は特異的な電荷特徴を有し得る。エピトープとは、抗体によって結合される抗原の領域である。ある種の実施形態において、抗体が、タンパク質及び/又は高分子の複雑な混合物中で、その標的抗原を認識する場合に、抗体は抗原を特異的に結合すると称される。抗体が交叉競合すれば(一方が他方の結合又は調節効果を妨げる。)、抗体は、「同じエピトープに結合する」と称される。さらに、エピトープの構造的定義(重複する、類似する、同一)は情報を与えるが、構造(結合)及び機能的(調節、競合)パラメータを包含するので、機能定義は、しばしば、より妥当である。
【0113】
本明細書において使用される「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えば、BIAcore
(R)システム(BIAcore International AB,a GE Health company Uppsala,Sweden and Piscataway,NJ)を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイムな生物特異的相互作用の分析を可能とする光学現象を表す。さらなる記載については、Jonsson,U.,et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19−26;Jonsson,U.,et al.(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnsson,B.,et al.(1995) J.Mol.Recognit.8:125−131;及びJohnnson,B.,et al.(1991)Anal.Biochem. 198:268−277を参照されたい。
【0114】
本明細書において使用される「K
on」という用語は、本分野において公知であるように、例えば、抗体/抗原複合体を形成するための抗原への結合タンパク質(例えば、抗体)の会合に対するオン速度定数を表すものとする。「K
on」は、本明細書において互換的に使用される「会合速度定数」または「k
a」という用語によっても知られている。標的抗原への抗体の結合速度又は抗体と抗原間の複合体形成の速度を示すこの値は、以下の式によっても示される。
【0115】
抗体(「Ab」)+抗原(「Ag」)−>Ab−Ag
本明細書において使用される「K
off」という用語は、本分野において公知であるように、例えば、抗体/抗原複合体からの結合タンパク質(例えば、抗体)の解離に対するオフ速度定数又は「解離速度定数」を表すものとする。この値は、以下の式によって示されるように、抗体のその標的抗原からの解離速度又は遊離の抗体及び抗原への経時的なAb−Ag複合体の分離を示す。
【0116】
Ab+Ag<−Ab−Ag
本明細書において使用される「K
D」という用語は、「平衡解離定数」を表すものであり、平衡状態での滴定測定で得られた又は解離速度定数(k
off)を会合速度定数(k
on)で割ることによって得られた値を表す。会合速度定数、解離速度定数及び平衡解離定数は、抗原への抗体の結合親和性を表すために使用される。会合及び解離速度定数を測定するための方法は、本分野において周知である。蛍光を基礎とする技術を使用することによって、平衡状態での生理的緩衝液中の試料を調べるための高い感度及び能力が得られる。BIAcore
(R)(biomolecular interaction analysis)アッセイなどの他の実験的アプローチ及び装置を使用することができる(例えば、BIAcore International AB,a GE Healthcare company,Uppsala,Swedenから入手可能な装置)。さらに、Sapidyne Instruments(Boise,Idaho)から入手可能なKinExA
(R) Kinetic Exclusion Assay)アッセイも使用することができる。
【0117】
「標識」及び「検出可能な標識」は、例えば、抗体及び分析物などの特異的結合対の要素間の反応を検出可能にするために、抗体又は分析物などの特異的結合対に付着される部分を意味し、このようにして標識された特異的結合対(例えば、抗体又は分析物)は、「検出可能に標識された」と称される。従って、本明細書において使用される「標識された結合タンパク質」という用語は、結合タンパク質の同定を与える取り込まれた標識を有するタンパク質を表す。一実施形態において、標識は、視覚的又は装置的手段(例えば、放射性標識されたアミノ酸の取り込み、又は印を付けたアビジン(例えば、光学的方法又は比色分析法によって検出することができる、蛍光マーカー又は酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出することができるビオチン部分のポリペプチドへの付着)によって検出可能なシグナルを生成することができる検出可能なマーカーである。ポリペプチド用の標識の例には、以下の放射性同位体又は放射性核種(例えば、
3H、
14C、
35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I、
177Lu、
166Ho又は
153Sm);発色原;蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体);酵素的標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ);及びガドリニウムキレートなどの磁気因子が含まれるが、これらに限定されない。イムノアッセイのために一般的に使用される標識の代表例には、光を生成する部分(例えばアクリジニウム化合物)及び蛍光を生成する部分(例えば、フルオレセイン)が含まれる。他の標識が、本明細書に記載されている。これに関して、部分そのものは検出可能に標識されなくてもよいが、さらに別の部分との反応に際して、検出可能となり得る。「検出可能に標識された」という使用は、検出可能な標識の後者の種類を包含するものとする。
【0118】
「連結体」という用語は、第二の化学部分(治療剤又は細胞毒性剤など)に化学的に連結された抗体などの結合タンパク質を表す。本明細書において、「因子」という用語は、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生物学的高分子又は生物学的物質から作製された抽出物を表記するために使用される。一実施形態において、治療剤又は細胞毒性因子には、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン並びにこれらの類縁体又は相同体が含まれるが、これらに限定されるものではない。イムノアッセイの文脈において使用される場合、連結体抗体は検出抗体として使用される検出可能に標識された抗体であり得る。
【0119】
本明細書において使用される「結晶」及び「結晶化された」という用語は、結晶の形態で存在する結合タンパク質(例えば、抗体)又はその抗原結合部分を表す。結晶は、物質の固体状態の一形態であり、これは、非晶質の固体状態又は液体の結晶状態などの他の形態とは異なる。結晶は、原子、イオン、分子(例えば、抗体などのタンパク質)又は分子集合体(例えば、抗原/抗体複合体)の規則的な反復する三次元配列から構成される。これらの三次元配列は、本分野においてよく理解されている特異的な数学的関係に従って整列されている。結晶中で反復されている基礎的単位又は構築ブロックは、非対称単位と呼ばれる。所定の十分に確定された結晶的対称性に合致する配置での非対称単位の反復は、結晶の「単位格子」を与える。三つの次元全てでの規則的な転換による単位格子の反復は、結晶を与える。「Giege,R. and Ducruix,A. Barrett,Crystallization of Nucleic Acids and Proteins,a Practical Approach,2nd ea.,pp.201−16,Oxford University Press,New York,New York,(1999)」を参照されたい。
【0120】
「ポリヌクレオチド」という用語は、2つ又はそれ以上のヌクレオチド(リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドの何れか又はヌクレオチドの何れかのタイプの修飾された形態)のポリマー形態を意味する。本用語は、DNAの一本鎖及び二本鎖形態を含む。
【0121】
「単離されたポリペプチド」という用語は、(例えば、ゲノム、cDNA若しくは合成起源又はこれらの幾つかの組み合わせの)ポリヌクレオチドを意味するものとし、その起源のために、「単離されたポリヌクレオチド」は、「単離されたポリヌクレオチド」が本来一緒に見出されるポリヌクレオチドの全部又は一部を伴っていない、本来連結されていないポリヌクレオチドに作用可能に連結されている、又はより大きな配列の一部として本来存在しない、ことを意味する。
【0122】
「ベクター」という用語は、核酸分子に連結されている別の核酸を輸送することができる該核酸分子を表すものとする。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは、その中にさらなるDNAセグメントを連結し得る環状二本鎖DNAループを表す。ベクターの別の種類はウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントはウイルスゲノム中に連結され得る。ある種のベクターは、当該ベクターがその中に導入された宿主細胞中で自律的複製を行うことができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中へ導入された際に、宿主細胞のゲノム中に組み込まれることが可能であり、これにより、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが作用可能に連結されている遺伝子の発現を誘導することが可能である。このようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(又は単に、「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形態である。プラスミドは、最も一般的に使用されるベクターの形態であるので、本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に使用され得る。しかしながら、本発明は、均等な機能を果たす、ウイルスベクターなどの(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)発現ベクターのような他の形態を含むものとする。
【0123】
「作用可能に連結された」という用語は、記載された成分がそれらを所期の様式で機能させることができる関係にある併置を表す。コード配列に対して「作用可能に連結された」制御配列は、制御配列と適合的な条件下で、コード配列の発現が達成されるように連結されている。「作用可能に連結された」配列は、目的の遺伝子と連続する発現調節配列及び目的の遺伝子を調節するように、トランス状態で又は離れて作用する発現調節配列の両方を含む。本明細書において使用される「発現調節配列」という用語は、連結されているコード配列の発現及びプロセッシングに影響を与えるために必要であるポリヌクレオチド配列を表す。発現調節配列には、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセッシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列;及び所望であれば、タンパク質分泌を増強させる配列が含まれる。このような調節配列の性質は、宿主生物に応じて異なる。原核生物では、このような調節配列は、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列を含む。真核生物では、一般に、このような調節配列には、プロモーター及び転写終結配列が含まれ得る。「調節配列」という用語は、その存在が発現及びプロセッシングに不可欠である成分を含むものとし、その存在が有利である追加の成分、例えば、リーダー配列及び融合対配列も含むことが可能である。
【0124】
「形質転換」とは、外来DNAが宿主細胞に入る全てのプロセスを表す。形質転換は、本分野で周知の様々な方法を用いて、自然の条件又は人工の条件下で起こり得る。形質転換は、原核又は真核宿主細胞中へ外来核酸配列を挿入するための何れかの公知の方法に依拠し得る。本方法は、形質転換されている宿主細胞に基づいて選択され、ウイルス感染、電気穿孔、リポフェション及び粒子照射を含み得るが、これらに限定されない。このような「形質転換された」細胞には、挿入されたDNAが、自律的に複製するプラスミドとして、又は宿主染色体の一部として、その中で複製することできる安定に形質転換された細胞が含まれる。これらには、挿入されたDNA又はRNAを、限られた時間にわたって一過性に発現する細胞も含まれる。
【0125】
「組換え宿主細胞」(又は単に、「宿主細胞」)という用語は、外来DNAがその中に導入されている細胞を表すものとする。一実施形態において、宿主細胞は、例えば、米国特許第7,262,028号に記載されている宿主細胞のように、抗体をコードする2つ又はそれ以上の(例えば、複数の)核酸を含む。このような用語は、当該細胞を表すのみならず、このような細胞の子孫も表すものとすることを理解すべきである。突然変異又は環境的な影響のために、後続の世代中にある種の修飾が生じ得るので、このような子孫は、実際には親細胞と同一でないことがあり得るが、本明細書において使用される「宿主細胞」という用語の範囲になお含まれる。一実施形態において、宿主細胞には、生物の何れかの界から選択される原核及び真核細胞が含まれる。別の実施形態において、真核細胞には、原生生物、真菌、植物及び動物細胞が含まれる。別の実施形態において、宿主細胞には、原核細胞株イー・コリ;哺乳動物細胞株CHO、HEK293、COS、NS0、SP2及びPER.C6;昆虫細胞株Sf9及び真菌細胞サッカロミセス・セレビシアエが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成及び組織培養及び形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に対しては標準的な技術が使用され得る。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様に従って、又は本分野で一般的に遂行されているように、又は本明細書に記載されているように、実施され得る。一般に、先述の技術及び操作は、本分野で周知の慣用的な方法に従い、並びに本明細書を通じて引用及び論述されている様々な一般的参考文献及びより具体的な参考文献中に記載されているように、実施し得る。例えば、「Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N. Y.(1989)、あらゆる目的のために、参照により、本明細書に組み込まれる。)」を参照されたい。
【0127】
本分野において公知である「トランスジェニック生物」とは、導入遺伝子を含有する細胞を有する生物を表し、生物中に導入された導入遺伝子(又は生物の子孫)は、生物中に自然に発現されていないポリペプチドを発現する。「導入遺伝子」とは、細胞のゲノム中に安定に及び作用可能に組み込まれているDNA構築物であり、この細胞からトランスジェニック生物が発達し、トランスジェニック生物の1つ又はそれ以上の細胞種又は組織中で、コードされた遺伝子産物の発現を誘導する。
【0128】
「制御する」又は「調節する」という用語は互換的に使用され、本明細書において使用される場合、目的の分子の活性(例えば、サイトカインの生物学的活性)の変化又は変更を表す。調節は、目的の分子の一定の活性又は機能の規模の増加又は減少であり得る。分子の典型的な活性及び機能には、結合特性、酵素活性、細胞受容体活性化及びシグナル伝達が含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
これに対応して、「調節物質」という用語は、目的の分子の活性又は機能(例えば、サイトカインの生物学的活性)を変化又は変更させることが可能な化合物である。例えば、調節物質は、調節物質の不存在下で観察される活性又は機能の規模と比べて、分子のある種の活性又は機能の規模の増加又は減少を引き起こし得る。ある種の実施形態において、調節物質は、分子の少なくとも1つの活性又は機能の規模を減少させる阻害剤である。典型的な阻害剤には、タンパク質、ペプチド、抗体、ペプチバディ、炭水化物又は小有機分子が含まれるが、これらに限定されるものではない。ペプチバディは、例えば、WO01/83525に記載されている。
【0130】
「アゴニスト」という用語は、目的分子と接触したときに、アゴニストの不存在下で観察される活性又は機能の規模と比べて、分子のある種の活性又は機能の規模の増加を引き起こす調節物質を表す。興味深い具体的なアゴニストには、ポリペプチド、核酸、炭水化物又は抗原に結合する他の全ての分子が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0131】
「アンタゴニスト」又は「阻害剤」という用語は、目的分子と接触したときに、アンタゴニストの不存在下で観察される活性又は機能の規模と比べて、分子のある種の活性又は機能の規模の減少を引き起こす調節物質を表す。興味深い具体的なアンタゴニストには、抗原の生物学的又は免疫学的活性を遮断又は調節するアンタゴニストが含まれる。抗原のアンタゴニスト及び阻害剤には、タンパク質、核酸、炭水化物又は抗原に結合する他の全ての分子が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0132】
本明細書において使用される「有効量」という用語は、疾患若しくはその1つ若しくはそれ以上の症候の重度及び/又は持続時間を低下若しくは軽減し、疾患の進行を抑制し、疾患の退行を引き起こし、疾患に伴う1つ若しくはそれ以上の症候の再発、発達、発症若しくは進行を予防し、疾患を検出し、又は別の療法(例えば、予防又は治療剤)の予防的又は治療的効果を増強若しくは改善するのに十分である療法の量を表す。
【0133】
「患者」及び「対象」は、霊長類(例えば、ヒト、サル及びチンパンジー)、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス、クジラ)などの哺乳動物、鳥(例えば、アヒル又はガチョウ)及びサメなどの動物を表すために本明細書において互換的に使用され得る。好ましくは、患者又は対象は、疾病、疾患若しくは症状に関して治療されている若しくは評価されているヒト、疾病、疾患若しくは症状に対してリスクを有するヒト、疾病、疾患若しくは症状を有するヒト及び/又は疾病、疾患若しくは症状に対して治療されているヒトなどのヒトである。
【0134】
本明細書で使用される「試料」という用語は、その最も広義で使用される。本明細書において使用される「生物学的試料」は、生物又は生物であったものから得られた物質の何れかの量を含むが、これらに限定されない。このような生物には、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギ及びその他の動物が含まれるが、これらに限定されない。このような物質には、血液(例えば、全血)、血漿、血清、尿、羊水、滑液、内皮細胞、白血球、単球、他の細胞、臓器、組織、骨髄、リンパ節及び脾臓が含まれるが、これらに限定されない。
【0135】
「成分」、「複数の成分」及び「少なくとも1つの成分」は、本明細書に記載されている方法及び本分野において公知の他の方法に従って、患者の尿、血清又は血漿試料などの検査試料のアッセイのために、キット中に含めることができる、捕捉抗体、検出又は連結体抗体、対照、検量物質、一連の検量物質、感度パネル、容器、緩衝液、希釈液、塩、酵素、酵素に対する補因子、検出試薬、前処理試薬/溶液、基質(例えば、溶液として)、停止溶液などを全般的に表す。従って、本開示の文脈において、「少なくとも1つの成分」、「成分」及び「複数の成分」は、抗分析物(例えば、抗ポリペプチド)抗体への結合などによって、固体支持体上に任意に固定化された、ポリペプチドなどの分析物を含む組成物などの、ポリペプチド又は上記他の分析物を含むことができる。幾つかの成分は、アッセイにおいて使用するために、溶液中に入れ又は再構成するために凍結乾燥され得る。
【0136】
「対照」は、分析物を含まない(「陰性対照)又は分析物を含む(「陽性対照」)ことが知られた組成物を表す。陽性対照は、分析物の既知濃度を含み得る。「対照」、「陽性対照」及び「検量物質」は、分析物の既知濃度を含む組成物を表すために、本明細書において互換的に使用され得る。「陽性対照」は、アッセイ性能特性を確立するために使用することができ、試薬(例えば、分析物)の完全性の有用な指標である。
【0137】
「所定のカットオフ」及び「所定のレベル」は、アッセイ結果を所定のカットオフ/レベルに対して比較することによって、診断/予後/治療の有効性結果を評価するために使用されるアッセイカットオフ値を全般的に表し、所定のカットオフ/レベルは、様々な臨床的パラメータ(例えば、疾病の重度、進行/非進行/改善など)と既に連関又は関連付けられている。本開示は、典型的な所定のレベルを提供し得るが、カットオフ値は、イムノアッセイの性質(例えば、使用される抗体など)に応じて変動し得ることが周知である。さらに、この開示を基礎として、他のイムノアッセイに対するイムノアッセイ特異的カットオフ値を得るために、他のイムノアッセイに対して本明細書の開示を適宜に改変することは、当業者の通常の技術水準に十分属する。所定のカットオフ/レベルの正確な値はアッセイ間で変動し得るが、(相関があれば)本明細書に記載されている相関が一般に適用可能なはずである。
【0138】
本明細書に記載されている診断アッセイにおいて使用される「前処理試薬」、例えば、溶解、沈殿及び/又は可溶化試薬は、検査試料中に存在するあらゆる細胞を溶解し及び/又はあらゆる分析物を可溶化する試薬である。本明細書中にさらに記載されているように、前処理は全ての試料に対して必要なわけではない。とりわけ、分析物(例えば、目的のポリペプチド)を可溶化することには、試料中に存在するあらゆる内在性結合タンパク質からの分析物の放出を伴い得る。前処理試薬は、均質(分離工程を必要としない。)又は不均質(分離工程を必要とする。)であり得る。不均質な前処理試薬を用いる場合、アッセイの次の工程に進む前に、検査試料からの沈殿したあらゆる分析物結合タンパク質の除去が存在する。
【0139】
本明細書に記載されているイムノアッセイ及びキットの文脈における「品質管理試薬」には、検量物質、対照及び感度パネルが含まれるが、これらに限定されない。「検量物質」又は「標準」は、分析物(抗体又は分析物など)の濃度を内挿するための検量(標準)曲線を確立するために、通例使用される(例えば、1つ又はそれ以上、複数など)。あるいは、所定の陽性/陰性カットオフ値に近い単一の検量物質を使用することができる。「感度パネル」を構成するために、複数の検量物質(すなわち、2以上の検量物質又は検量物質の変動する量)を組み合わせて使用することができる。
【0140】
「リスク」は、現在又は将来の何れかの時点で、ある事象が起こる可能性又は確率を表す。「リスク階層化」は、医師が、特定の疾病、疾患又は症状を発症する低、中、高又は最高のリスクへ患者を分類することを可能にする既知の臨床的リスク因子の列を表す。
【0141】
特異的な結合対(例えば、抗原(又はその断片)と抗体(又は抗原的に反応性のその断片)の要素間での相互作用の文脈における「特異的」及び「特異性」は、相互作用の選択的な反応性を表す。「〜に特異的に結合する」という用語及び類似の用語は、分析物(又はその断片)に特異的に結合し、他の物体には特異的に結合しない抗体(又は抗原的に反応性のその断片)の能力を表す。
【0142】
「特異的な結合パートナー」は、特異的結合対の要素である。特異的結合対は、化学的又は物理的な手段を通じて互いに特異的に結合する2つの異なる分子を含む。従って、一般的なイムノアッセイの抗原及び抗体特異的結合対の他に、他の特異的結合対には、ビオチンとアビジン(又はストレプトアビジン)、炭水化物とレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクターと受容体分子、補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素などが含まれ得る。さらに、特異的結合対には、元の特異的結合要素の類縁体である要素(例えば、分析物類縁体)が含まれ得る。免疫反応性特異的結合要素には、単離されたか又は組み換え的に産生されたかを問わず、抗原、抗原断片及び抗体(モノクローナル及びポリクローナル抗体を含む。)並びにこれらの複合体、断片及び変形物(変形物の断片を含む。)が含まれる。
【0143】
本明細書において使用される「変形物」は、アミノ酸の付加(例えば、挿入)、欠失又は保存的置換によってアミノ酸配列中の所定のポリペプチド(例えば、IL−18、BNP、NGAL又はHIVポリペプチド又は抗ポリペプチド抗体)と異なるが、所定のポリペプチドの生物学的活性を保持する(例えば、変形物IL−18は、IL−18への結合に関して、抗IL−18抗体と競合し得る。)ポリペプチドを意味する。アミノ酸の保存的置換(すなわち、アミノ酸を類似の特性(例えば、親水性並びに帯電した領域の程度及び分布)の異なるアミノ酸で置換すること)は、本分野において、通例僅かな変化を伴うものと認識されている。これらの僅かな変化は、本分野において理解されているように、アミノ酸のハイドロパチー指数を検討することによって、一部同定することができる(例えば、Kyte et al., J. Mol.Biol.157:105−132 (1982))参照)。アミノ酸のハイドロパチー指数は、アミノ酸の疎水性と電荷の検討に基づいている。類似のハイドロパチー指数のアミノ酸は置換すること可能であり、なおタンパク質機能を保持し得ることが本分野において知られている。一態様において、±2のハイドロパチー指数を有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性も、生物学的機能を保持するタンパク質をもたらす置換を明らかにするために使用することができる。ペプチドに関してアミノ酸の親水性を検討することによって、そのペプチドの最大局所平均親水性(抗原性及び免疫原性とよく相関すると報告されている有用な指標(例えば、米国特許第4,554,101号を参照)の計算が可能となる。類似の親水性値を有するアミノ酸の置換は、本分野において理解されているように、生物学的活性、例えば、免疫原性を保持するペプチドをもたらし得る。一態様において、互いの±2内の親水性値を有するアミノ酸を用いて置換が行われる。アミノ酸の疎水性指数及び親水性値は何れも、そのアミノ酸の特定の側鎖によって影響を受ける。その観察と合致して、生物学的機能と適合するアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ及び他の特性によって明らかとされるように、アミノ酸(特に、アミノ酸の側鎖)の相対的類似性に依存すると理解されている。「変形物」は、タンパク分解、リン酸化又は他の翻訳後修飾などによって異なってプロセッシングされているが、その生物学的活性又は抗原反応性(例えば、IL−18への結合能)をなお保持するポリペプチド又はその断片を記載するためにも使用することができる。文脈上反対の記載がなければ、本明細書における「変形物」の使用は、変形物の断片を包含するものとする。
【0144】
I.DVD結合タンパク質の作製
本発明は、1つ又はそれ以上の標的を結合することが可能な二重可変ドメイン結合タンパク質及びこれを作製する方法に関する。一実施形態において、結合タンパク質はポリペプチド鎖を含み、前記ポリペプチド鎖はVD1−(X1)
n−VD2−C−(X2)
n(VD1は第一の可変ドメインであり、VD2は第二の可変ドメインであり、Cは定常ドメインであり、X1はアミノ酸又はポリペプチドを表し、X2はFc領域を表し、及びnは0又は1である。)を含む。本発明の結合タンパク質は、様々な技術を用いて作製することが可能である。本発明は、発現ベクター、宿主細胞及び結合タンパク質を作製する方法を提供する。
【0145】
A.親モノクローナル抗体の作製
DVD結合タンパク質の可変ドメインは、目的の抗原を結合することができるポリクローナル及びモノクローナル抗体など、親抗体から取得することが可能である。これらの抗体は、天然に存在し得、又は組み換え技術によって作製され得る。
【0146】
mAbは、ハイブリドーマ、組み換え及びファージディスプレイ技術又はこれらの組み合わせの使用など、本分野で公知の多様な技術を用いて調製することが可能である。例えば、mAbは、本分野において公知であり、例えば、「Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed. 1988);Hammerling,et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981)」(前記参考文献の全体が、参照により、組み込まれる。)に教示されているものなど、ハイブリドーマ技術を用いて作製することが可能である。本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通じて産生された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、あらゆる真核、原核又はファージクローンなど、単一のクローンに由来する抗体を表し、それが産生される方法によらない。ハイブリドーマは、以下の実施例1に論述されているように、選択され、クローニングされ、頑強なハイブリドーマ増殖、高い抗体産生及び所望の抗体特性など、所望の特性についてさらにスクリーニングされる。ハイブリドーマは、培養され、同系の動物中において、免疫系を欠く動物(例えば、ヌードマウス)中においてインビボで増殖され又はインビトロでの細胞培養で増殖され得る。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、増殖させる方法は、当業者に周知である。特定の実施形態において、ハイブリドーマはマウスハイブリドーマである。別の実施形態において、ハイブリドーマは、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ又はウマなど、非ヒト非マウス種の中で産生され得る。別の実施形態において、ハイブリドーマは、ヒト非分泌性骨髄腫が、特異的抗原を結合することが可能な抗体を発現するヒト細胞と融合されているヒトハイブリドーマである。
【0147】
また、組み換えモノクローナル抗体は、米国特許第5,627,052号、PCT公開WO92/02551及びBabcock,J.S. et al.(1996) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843−7848に記載されているように、選択リンパ球抗体法(SLAM;selected lymphocyte antibody method)として本分野で呼ばれている手法を用いて、単一の単離されたリンパ球からも作製される。この方法では、目的の抗体を分泌する単一細胞、例えば、免疫された動物に由来するリンパ球が同定され、重鎖及び軽鎖可変領域cDNAが、逆転写酵素−PCRによって細胞から救出され、これらの可変領域は、次いで、COS又はCHO細胞などの哺乳動物宿主細胞中で、適切な免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト定常領域)に関連して発現することが可能である。増幅された免疫グロブリン配列で形質移入され、インビボで選択されたリンパ球に由来する宿主細胞は、次いで、例えば、目的の抗原に対する抗体を発現する細胞を単離するために、形質移入された細胞をパニングすることによって、インビトロで、さらに分析及び選択を行うことが可能である。増幅された免疫グロブリン配列は、さらに、PCT公開WO97/29131及びPCT公開WO00/56772に記載されているものなど、インビトロでのアフィニティー成熟法によるなど、インビトロで操作することが可能である。
【0148】
モノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の幾つか又は全てを含む非ヒト動物を目的の抗原で免疫することによっても産生される。一実施形態において、非ヒト動物は、XENOMOUSEトランスジェニックマウス(ヒト免疫グロブリン遺伝子座の巨大断片を含み、マウス抗体産生を欠失している改変されたマウス系統)である。例えば、Green et al.Nature Genetics 7:13−21(1994)並びに米国特許第5,916,771号、米国特許第5,939,598号、米国特許第5,985,615号、米国特許第5,998,209号、米国特許第6,075,181号、米国特許第6,091,001号、米国特許第6,114,598及び米国特許第6,130,364号を参照されたい。1991年7月25日に公開されたWO91/10741、1994年2月3日に公開されたWO94/02602、ともに1996年10月31日に公開されたWO96/34096及びWO96/33735、1998年4月23日に公開されたWO98/16654、1998年6月11日に公開されたWO98/24893、1998年11月12日に公開されたWO98/50433、1999年9月10日に公開されたWO99/45031、1999年10月21日に公開されたWO99/53049、2000年2月24日に公開されたWO0009560及び2000年6月29日に公開されたWO00/037504も参照されたい。XENOMOUSEトランスジェニックマウスは、完全なヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を生成する。XENOMOUSEトランスジェニックマウスは、ヒト重鎖遺伝子座及びx軽鎖遺伝子座のメガ塩基サイズの生殖系列配置YAC断片の導入を通じて、ヒト抗体レパートリーの約80%を含有する。Mendez et al.,Nature Genetics 15:146−156(1997),Green and Jakobovits J.Exp.Med.188:483−495(1998)(これらの開示は、参照により、本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。
【0149】
親抗体を作製するために、インビトロ法も使用することが可能であり、抗体ライブラリーは、所望の結合特異性を有する抗体を同定するためにスクリーニングされる。組み換え抗体ライブラリーのこのようなスクリーニングの方法は、本分野において周知であり、例えば、Ladner et al.米国特許第5,223,409号;Kang et al.PCT公開WO92/18619;Dower et al.PCT公開WO91/17271;Winter et al PCT公開WO92/20791;Markland et al.PCT公開WO92/15679;Breitling et al.PCT公開WO93/01288;McCafferty et al.PCT公開WO92/01047;Garrard et al.PCT公開WO92/09690;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992) Hum Antibod Hyhridomas 3:81−85;Huse et al.(1989) Science 246:1275−1281;McCafferty et al,Nature(1990)348:552−554;Griffiths et al(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkins et al.(1992) J Mol Biol 226:889−896;Clackson et al.(1991) Nature 352:624−628;Gram et al.(1992) PNAS 89:3576−3580;Garrad et al.(1991) Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboom et al.(1991) Nuc Acid Res 19:4133−4137;and Barbas et al(1991) PNAS 88:7978−7982,米国特許公開第20030186374号及びPCT公開WO97/29131(これらの各々の内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている方法が含まれる。
【0150】
本発明の親抗体は、本分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて作製することも可能である。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインは、これらをコードしているポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面上にディスプレイされる。特に、このようなファージは、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインをディスプレイするために使用することが可能である。目的の抗原を結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、例えば、標識された抗原又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉された抗原を用いて、選択又は同定することが可能である。これらの方法で使用されるファージは、典型的には、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質の何れかに組み換え的に融合されたFab、Fv又はジスルフィドで安定化されたFv抗体ドメインとともにファージから発現されたfd及びM13結合ドメインを含む糸状ファージである。本発明の抗体を作製するために使用することが可能なファージディスプレイ法の例には、「Brinkman et al.,J. Immunol.Methods182:41−50(1995);Ames et al.,J. Immunol.Methods 184:177−186(1995);Kettleborough et al.,Eur.J.Immunol.24:952−958(1994);Persic et al.,Gene 187 9−18(1997);Burton et al.,Advances in Immunology 57:191−280(1994);PCT出願PCT/GB91/01134;PCT国際公開WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;並びに米国特許第5,698,426号;米国特許第5,223,409号;米国特許第5,403,484号;米国特許第5,580,717号;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,750,753号;米国特許第5,821,047号;米国特許第5,571,698号;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,516,637号;米国特許第5,780,225号;米国特許第5,658,727号;米国特許第5,733,743号及び米国特許第5,969,108号」(これらの各々の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に開示されているものが含まれる。
【0151】
本明細書中の参考文献に記載されているように、ファージ選択後、ヒト抗体又は他の所望される全ての抗原結合断片を含む完全な抗体を作製するために、ファージから得た抗体コード領域を単離及び使用し、例えば、以下に詳述されているように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌など、あらゆる所望の宿主中で発現させることが可能である。例えば、PCT公開WO92/22324;Mullinax et al.,BioTechniques12(6):864−869(1992);及びSawai et al.,AJRI 34:26−34(1995);及びBetter et al.,Science 240:1041−1043(1988)(前記参考文献の全体が、参照により、組み込まれる。)に開示されている方法などの本分野で公知の方法を用いて、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片を組み換え的に産生するための技術も使用することが可能である。一本鎖Fv及び抗体を作製するために使用することが可能な技術の例には、米国特許第4,946,778号及び米国特許第5,258,498号;Huston et al.,Methods in Enzymology 203:46−88(1991);Shu et al.,PNAS 90:7995−7999(1993);並びにSkerra et al.,Science 240:1038−1040(1988)に記載されているものが含まれる。
【0152】
ファージディスプレイによる組み換え抗体ライブラリーのスクリーニングに代えて、巨大なコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための本分野で公知の他の方法を、親抗体の同定のために適用することが可能である。代替的発現系の1つの種類は、Szostak及びRobertsによるPCT公開WO98/31700並びにRoberts,R.W. and Szostak,J.W.(1997) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94,12297−12302に記載されているような、組み換え抗体ライブラリーがRNA−タンパク質融合物として発現されるものである。この系では、ピューロマイシン(ペプチジルアクセプター抗生物質)をその3’末端に担持する合成mRNAのインビトロ翻訳によって、mRNAとmRNAがコードするペプチド又はタンパク質との間で、共有結合的融合物が作製される。従って、特異的なmRNAは、コードされているペプチド又はタンパク質、例えば抗体又はその一部の特性(抗体又はその一部の、二重特異性抗原への結合など)に基づいて、mRNAの複雑な混合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー)から濃縮することが可能である。このようなライブラリーのスクリーニングから回収された、抗体又はその一部をコードする核酸配列は、本明細書に記載されている組み換え手段によって(例えば、哺乳動物宿主細胞中で)発現されることが可能であり、さらに、最初に選択された配列中に変異が導入されているmRNA−ペプチド融合物のスクリーニングのさらなるラウンドによって、又は本明細書に記載されているような、組み換え抗体のインビトロでの親和性成熟のためのその他の方法によって、さらなる親和性成熟に供することが可能である。
【0153】
別のアプローチにおいて、親抗体は、本分野で公知の酵母ディスプレイ法を用いて作製することも可能である。酵母ディスプレイ法では、抗体ドメインを酵母細胞壁に繋留し、これらを酵母の表面上にディスプレイするために、遺伝学的な方法が使用される。特に、このような酵母は、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインをディスプレイするために使用することが可能である。親抗体を作製するために使用することが可能な酵母ディスプレイ法の例には、Wittrup他の米国特許第6,699,658号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に開示されているものが含まれる。
【0154】
本明細書に開示されている抗体は、CDR移植された及びヒト化された親抗体を作製するために、さらに修飾を施すことが可能である。CDR移植された親抗体は、ヒト抗体由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み、V
H及び/又はV
LのCDR領域の1つ又はそれ以上が、目的の抗原を結合することが可能なマウス抗体のCDR配列と置換される。あらゆるヒト抗体から得られるフレームワーク配列が、CDR移植のためのテンプレートとしての役割を果たし得る。しかしながら、このようなフレームワーク上への直鎖の置換は、しばしば、抗原への結合親和性を若干喪失させる。元のマウス抗体に対して、ヒト抗体がより相同であるほど、ヒトフレームワークとマウスCDRの組み合わせは、親和性を低下させ得るCDR中の歪みを導入する可能性がより低くなる。従って、一実施形態において、CDR以外のマウス可変フレームワークを置換するために選択されたヒト可変フレームワークは、マウス抗体可変領域フレームワークと少なくとも65%の配列同一性を有する。一実施形態において、CDRを除くヒト及びマウス可変領域は、少なくとも70%の配列同一性を有する。特定の実施形態において、CDRを除くヒト及びマウス可変領域は、少なくとも75%の配列同一性を有する。別の実施形態において、CDRを除くヒト及びマウス可変領域は、少なくとも80%の配列同一性を有する。このような抗体を作製する方法は、本分野において公知である(EP239,400;PCT公開WO91/09967;米国特許第5,225,539号;米国特許第5,530,101号;及び米国特許第5,585,089号参照)、ベニアリング(veneering)又はリサーフェシング(resurfacing)(EP 592,106;EP 519,596;Padlan,Molecular Immunology 28(4/5):489−498(1991);Studnicka et al.,Protein Engineering7(6):805−814(1994);Roguska et al.,PNAS 91:969−973(1994)),及びチェーンシャッフリング(米国特許第5,565,352号)及び抗イディオタイプ抗体。
【0155】
ヒト化抗体は、非ヒト種に由来する1つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを有する所望の抗原を結合する非ヒト種抗体から得られる抗体分子である。公知のヒトIg配列は、開示されている。例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez−/query.fcgi;www.atcc.org/phage/hdb.html;www.sciquest.com/;www.abcam.com/;www.antibodyresource.com/onlinecomp.html;www.public.iastate.edu/.about.pedro/research
tools.html;www.mgen.uni−heidelberg.de/SD/IT/IT.html;www.whfreeman.com/immunology/CH−05/kuby05.htm;www.library.thinkquest.org/12429/Immune/Antibody.html;www.hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab/;www.path.cam.ac.Uk/.about.mrc7/m.−ikeimages.html;www.antibodyresource.com/;mcb.harvard.edu/BioLinks/Immunology.html.www.immunologylink.com/;pathbox.wustl.edu/.about.hcenter/index.−html;www.biotech.ufl.edu/.about.hcl/;www.pebio.com/pa/340913/340913.html−;www.nal.usda.gov/awic/pubs/antibody/;www.m.ehime−u.acjp/.about.yasuhito−/Elisa.html;www.biodesign.com/table.asp;www.icnet.uk/axp/facs/davies/lin−ks.html;www.biotech.ufl.edu/.about.fccl/protocol.html;www.isac−net.org/sites
geo.html;aximtl.imt.uni−marburg.de/.about.rek/AEP−Start.html;baserv.uci.kun.nl/.about.jraats/linksl.html;www.recab.uni−hd.de/immuno.bme.nwu.edu/;www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/public/INTRO.html;www.ibt.unam.mx/vir/V
mice.html;imgt.cnusc.fr:8104/;www.biochem.ucl.ac.uk/.about.martin/abs/index.html;antibody.bath.ac.uk/;abgen.cvm.tamu.edu/lab/wwwabgen.html;www.unizh.ch/.about.honegger/AHOseminar/Slide01.html;www.cryst.bbk.ac.uk/.about.ubcg07s/;www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.htm;www.path.cam.ac.uk/.about.mrc7/humanisation/TAHHP.html;www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat
aim.html;www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html;www.cryst.bioc.cam.ac.uk/.abo−ut.fmolina/Web−pages/Pept/spottech.html;www.jerini.de/fr roducts.htm;www.patents.ibm.com/ibm.html.Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S. Dept.Health(1983)(それぞれ、参照により、本明細書に完全に組み込まれる。)。このような導入された配列は、免疫原性を低下させるために、又は結合、親和性、結合速度、解離速度、結合力、特異性、半減期若しくは本分野で公知の他の何れかの適切な特性を減少、増強若しくは修飾するために使用することが可能である。
【0156】
ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、抗原結合を変化させるために、例えば、抗原結合を改善させるために、CDRドナー抗体由来の対応する残基で置換され得る。これらのフレームワーク置換は、本分野で周知の方法によって、例えば、抗原結合にとって重要なフレームワーク残基を同定するために、CDRとフレームワーク残基の相互作用をモデル化することによって、及び特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較によって同定される。(例えば、Queen et al.,米国特許第5,585,089号;Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)(これらの全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。)。三次元免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列が採り得る三次元立体構造を図式及び表示するコンピュータプログラムを利用可能である。これらのディスプレイの検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の推定される役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原を結合する能力に影響を与える残基の分析を可能とする。このようにして、FR残基は、所望される抗体特性(標的抗原に対する増加された親和性など)が達成されるように、コンセンサス及び輸入配列から選択され、組み合わせることが可能である。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を与えることに直接、及び最も実質的に関与する。抗体は、Jones et al.,Nature321:522(1986);Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988)),Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987),Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.89:4285(1992);Presta et al.,J. Immunol. 151:2623(1993),Padlan,Molecular Immunology 28(4/5):489−498(1991);Studnicka et al.,Protein Engineering 7(6):805−814(1994);Roguska. et al.,PNAS 91:969−973(1994);PCT公開WO91/09967、PCT/:US98/16280、US96/18978、US91/09630、US91/05939、US94/01234、GB89/01334、GB91/01134、GB92/01755;WO90/14443、WO90/14424、WO90/14430、EP229246、EP592,106;EP519,596、EP239,400、米国特許第5,565,332号、米国特許第5,723,323号、米国特許第5,976,862号、米国特許第5,824,514,5,817,483,5814476号、米国特許第5763192号、米国特許第5723323号、米国特許第5,766886号、米国特許第5,714,352号、米国特許第6,204,023号、米国特許第6,180,370号、米国特許第5,693,762号、米国特許第5,530,101号、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,225,539号、米国特許第4,816,567号(それぞれ、その中に引用されている参考文献を含み、参照により、本明細書に完全に組み込まれる。)に記載されているものなどの(但し、これらに限定されない。)、本分野で公知の様々な技術を用いてヒト化することが可能である。
【0157】
B.親モノクローナル抗体を選択するための基準
本発明の一実施形態は、DVD−Ig分子中に所望される少なくとも1つ又はそれ以上の特性を有する親抗体を選択することに関する。一実施形態において、所望の特性は1つ又はそれ以上の抗体パラメータから選択される。別の実施形態において、抗体パラメータは、抗原特異性、抗原に対する親和性、強度、生物学的機能、エピトープ認識、安定性、溶解度、産生効率、免疫原性、薬物動態、生物学的利用性、組織交叉反応性及びオーソロガス抗原結合から選択される。
【0158】
B1.抗原に対する親和性
治療用mAbの所望される親和性は、抗原の性質及び所望される治療的評価項目に依存し得る。一実施形態において、サイトカイン−サイトカイン受容体相互作用は通常高い親和性の相互作用(例えば、<pMから<nMの範囲)なので、モノクローナル抗体は、サイトカイン−サイトカイン受容体相互作用を遮断する場合に、より高い親和性(Kd=0.01から0.50pM)を有する。このような事例において、標的に対するmAbの親和性は、サイトカインの受容体に対するサイトカイン(リガンド)の親和性と等しく又はそれより優れているべきである。他方、より低い親和性を有するmAb(>nM範囲)は、例えば、病原性を有する可能性がある循環タンパク質、例えば、A−βアミロイドの循環種に結合し、取り囲み、及び排除するモノクローナル抗体を除去する上で、治療的に有効であり得る。他の事例では、起こり得る副作用(例えば、高親和性mAbは、その意図する標的の全てを取り囲み/中和することによって、標的とされるタンパク質の機能を完全に枯渇/除去し得る。)を回避するために、部位指定突然変異導入によって既存の高親和性mAbの親和性を低下させること又はその標的に対してより低い親和性を有するmAbを使用することを使用し得る。このシナリオでは、低親和性mAbは、疾病の症候の原因となり得る標的の一部を囲い込み/中和し得るので(病理学的な又は過剰産生されたレベル)、標的の一部はその正常な生理的機能を遂行し続けることが可能である。従って、用量を調整し、及び/又は副作用を低減するために、Kdを低下させることが可能であり得る。親mAbの親和性は、所望の治療的結果を達成するために、細胞表面分子に適切に標的化する上で役割を果たし得る。例えば、標的が、高い密度で癌細胞上に発現され、低い密度で正常な細胞上に発現されていれば、より低い親和性のmAbは、正常な細胞より腫瘍細胞上の標的のより多数を結合し、ADCC又はCDCを介した腫瘍細胞の除去をもたらし、従って、治療的に望ましい効果を有し得る。従って、所望の親和性を有するmAbを選択することは、可溶性及び表面標的の両方に関して妥当であり得る。
【0159】
そのリガンドと相互作用した際の受容体を通じたシグナル伝達は、受容体−リガンド相互作用の親和性に依存し得る。同様に、表面受容体に対するmAbの親和性は、細胞内シグナル伝達の性質及びそのmAbがアゴニスト又はアンタゴニストシグナルを伝達し得るかどうかを決定し得ると考えられる。mAb媒介性シグナル伝達の親和性を基礎とする性質は、その副作用特性に影響を有し得る。従って、治療用モノクローナル抗体の所望される親和性及び所望される機能は、インビトロ及びインビボ実験操作によって注意深く決定される必要がある。
【0160】
結合タンパク質(例えば、抗体)の所望されるK
dは、所望される治療結果に応じて実験的に決定され得る。一実施形態において、特定の抗原に対してDVD−Igの所望される親和性と等しい又はそれを上回る同抗原に対する親和性(Kd)を有する親抗体が選択される。抗原結合の親和性及び速度論は、Biacore又は別の類似の技術によって評価される。一実施形態において、各親抗体は、最大約10
−7M;最大約10
−8M;最大約10
−9M;最大約10
−10M;最大約10
−11M;最大約10
−12M及び最大10
−13Mからなる群から選択される、その抗原への解離定数(K
d)を有する。VD1がそこから得られる第一の親抗体及びVD2がそこから得られる第二の親抗体は、それぞれの抗原に対して、類似の又は異なる親和性(K
D)を有し得る。各親抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定された場合に、少なくとも約10
2M
−1s
−1、少なくとも約10
3M
−1s
−1、少なくとも約10
4M
−1s
−1、少なくとも約10
5M
−1s
−1及び少なくとも約10
6M
−1s
−1からなる群から選択される、抗原へのオン速度定数(K
on)を有する。VD1がそこから得られる第一の親抗体及びVD2がそこから得られる第二の親抗体は、それぞれの抗原に対して、類似の又は異なるオン速度定数(K
on)を有し得る。一実施形態において、各親抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定された場合に、最大約10
−3s
−1;最大約10
−4s
−1;最大約10
−5s
−1;及び最大約10
−6s
−1からなる群から選択される、抗原へのオフ速度定数(K
off)を有する。VD1がそこから得られる第一の親抗体及びVD2がそこから得られる第二の親抗体は、それぞれの抗原に対して、類似の又は異なるオフ速度定数(K
off)を有し得る。
【0161】
B2.強度
親モノクローナル抗体の所望される親和性/強度は、所望される治療結果に依存する。例えば、受容体−リガンド(R−L)相互作用に関して、親和性(k
d)は、R−Lのk
d(pM範囲)と等しく又はそれを上回る。病的な循環タンパク質の単純な排除のために、kdは、低nM範囲であり得る(例えば、循環しているA−βペプチドの様々な種の排除)。さらに、kdは、標的が同じエピトープの複数コピーを発現するかどうかにも依存する(例えば、Aβオリゴマー中の立体構造エピトープを標的とするmAb)。
【0162】
VD1とVD2が同じ抗原を結合するが、異なるエピトープを結合する場合には、DVD−Igは、同じ抗原に対する4つの結合部位を含有し、従って、結合力を増加させ、これにより、DVD−Igの見かけのkdを増加させる。一実施形態において、DVD−Igにおいて所望されるkdと等しく又はそれより低いkdを有する親抗体が選択される。親mAbの親和性の検討は、DVD−Igが4つ又はそれ以上の同じ抗原結合部位を含有するかどうかにも依存し得る(すなわち、単一のmAbに由来するDVD−Ig)。この場合には、見かけのkdは、結合力のために、mAbより大きい。このようなDVD−Igは、表面受容体を架橋し、中和能力を増加させ、病的タンパク質の排除を増大させるなどのために使用することができる。
【0163】
一実施形態において、特異的な抗原に対してDVD−Igの所望される中和能に等しい又はそれを上回る同じ抗原に対する中和能を有する親抗体が選択される。中和能は、標的刺激に応答して、適切な種類の細胞が測定可能なシグナル(すなわち、増殖又はサイトカインの産生)を生成し、mAbによる標的の中和が用量依存的な様式でシグナルを低下させ得る標的依存性バイオアッセイによって評価することができる。
【0164】
B3.生物学的機能
モノクローナル抗体は、潜在的に幾つかの機能を発揮し得る。これらの機能の幾つかが、表1に列記されている。これらの機能は、インビトロアッセイ(例えば、細胞を基礎とする生化学的アッセイ)及びインビボ動物モデルの両方によって評価することができる。
【0166】
表1中のこの例に記載されている異なる機能を有するMabが、所望される治療的結果を達成するために選択され得る。次いで、単一のDVD−Ig分子中で2つの異なる機能を達成するために、2つ又はそれ以上の選択された親モノクローナル抗体は、DVD−Igフォーマットで使用することができる。例えば、DVD−Igは、特異的なサイトカインの機能を中和する親mAbを選択し、及び病的タンパク質の排除を強化する親mAbを選択することによって作製され得る。同様に、2つの異なる細胞表面受容体を認識する2つの親モノクローナル抗体(一方のmAbはある受容体に対してアゴニスト機能を有し、及び他方のmAbは異なる受容体に対してアンタゴニスト機能を有する)を選択することができる。それぞれが異なる機能を有するこれら2つの選択されたモノクローナル抗体は、単一の分子中に選択されたモノクローナル抗体の2つの異なる機能(アゴニスト及びアンタゴニスト)を有する単一のDVD−Ig分子を構築するために使用することができる。同様に、それぞれの受容体リガンド(例えば、EGF及びIGF)の結合をそれぞれ遮断する細胞表面受容体に対する2つの拮抗性モノクローナル抗体を、DVD−Igフォーマット中に使用することができる。逆に、DVD−Igを作製するために、拮抗性抗受容体mAb(例えば、抗EGFR)及び中和抗可溶性媒介物質(例えば、抗IGF1/2)mAbを選択することができる。
【0167】
B4.エピトープ認識:
タンパク質の異なる領域は、異なる機能を発揮し得る。例えば、サイトカインの特異的な領域は、サイトカイン受容体と相互作用して受容体の活性化をもたらすのに対して、このタンパク質の他の領域はサイトカインを安定化させるために必要とされ得る。この事例では、サイトカイン上の受容体相互作用領域を特異的に結合することにより、サイトカイン−受容体相互作用を遮断するmAbを選択し得る。幾つかの事例では、例えば、複数のリガンドを結合するある種のケモカイン受容体、1つのリガンドのみと相互作用するエピトープ(ケモカイン受容体上の領域)に結合するmAbを選択することができる。他の事例では、モノクローナル抗体は、タンパク質の生理的機能に直接必要とされないが、これらの領域へのmAbの結合が生理機能を妨害し(立体的妨害)又はタンパク質が機能できないようにタンパク質の立体構造を変化させ得る(何れのリガンドも結合できないように、受容体の立体構造を変化させる、複数のリガンドを有する受容体に対するmAb)標的上のエピトープに結合することができる。その受容体へのサイトカインの結合を遮断しないが、シグナル伝達を遮断する抗サイトカインモノクローナル抗体も、同定されている(例えば、125−2H、抗IL−18mAb)。
【0168】
エピトープ及びmAb機能の例には、受容体−リガンド(R−L)相互作用を遮断すること(R−相互作用部位を結合する中和mAb)、減少したR−結合をもたらす又はR−結合をなくす立体的妨害が含まれるが、これらに限定されない。Abは、受容体結合部位以外の部位において標的を結合することができるが、立体構造の変化を誘導することによって、標的の受容体結合及び機能をなお妨害し、及び機能を喪失させ(例えば、Xolair)、Rに結合するが、シグナル伝達を遮断する(125−2H)。
【0169】
一実施形態において、親mAbは、最大の有効性のために、適切なエピトープを標的とする必要がある。このようなエピトープは、DVD−Ig中で保存されるべきである。mAbの結合エピトープは、共結晶回折学、mAb−抗原複合体の限定的タンパク質分解+質量分析的ペプチドマッピング(Legros V. et al 2000 Protein Sci.9:1002−10)、ファージによってディスプレイされたペプチドライブラリー(O’ConnorKH et al 2005 J Immunol Methods.299:21−35)及び突然変異導入(Wu C. et al.2003 J Immunol 170:5571−7)などの幾つかのアプローチによって決定することができる。
【0170】
B5.生理化学及び薬学的特性:
抗体を用いた治療的処置には、(典型的に高い分子量の結果、質量当りの能力が低いために)高い用量(しばしば、数mg/kg)の投与をしばしば必要とする。患者に服薬を遵守させ、及び慢性疾患の療法及び外来患者の治療に十分に対処するために、治療用mAbの皮下(s.c.)又は筋肉内(i.m.)投与が望ましい。例えば、皮下投与のための最大の望ましい容量は、約1.0mLであり、従って、>100mg/mLの濃度は、注射回数/投薬を限定することが望ましい。一実施形態において、治療用抗体は1回の投薬で投与される。しかしながら、タンパク質−タンパク質相互作用(例えば、免疫原性リスクを増大させる可能性を有する凝集)によって、並びに加工及び輸送の間の限界によって(例えば、粘度)、このような製剤の開発は制約される。その結果、臨床的な有効性のために必要とされる多量及び付随する開発の制約は、抗体製剤の可能性の完全な活用及び高用量治療計画での皮下投与を制約する。タンパク質分子及びタンパク質溶液の生理化学的及び薬学的特性(例えば、安定性、溶解度及び粘度特性)は、最も有用であると思われる。
【0171】
B5.1.安定性:
「安定な」抗体製剤は、保存に際して、その中の抗体がその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物活性を実質的に保持する抗体製剤である。安定性は、選択された期間にわたって、選択された温度で測定することができる。一実施形態において、製剤中の抗体は、室温で(約30℃)で又は40℃で少なくとも1ヶ月間及び/又は約2から8℃で、少なくとも1年間、少なくとも2年間安定である。さらに、一実施形態において、製剤は、凍結(例えば、−70℃への)、及び製剤の融解(以下、「凍結/融解サイクル」と称される。)後に安定である。別の例では、「安定な」製剤は、製剤中の凝集物として、タンパク質の約10%未満及び約5%未満が存在する製剤であり得る。
【0172】
様々な温度で長期間にわたってインビトロで安定なDVD−Igが望ましい。上昇した温度で、例えば、40℃で、2から4週間、インビトロで安定な親mAbの迅速なスクリーニングによってこれを達成し、次いで、安定性を評価することができる。2から8℃での保存の間、タンパク質は、少なくとも12ヶ月間、例えば、少なくとも24ヶ月間、安定性を示す。安定性(単量体、完全な状態の分子の%)は、陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS−PAGE及び生物活性検査などの様々な技術を用いて評価することができる。共有的及び立体構造的修飾を分析するために使用され得る分析技術のより包括的なリストに関しては、「Jones,A. J. S. (1993) Analytical methods for the assessment of protein formulations and delivery systems.In:Cleland,J. L.; Langer,R.,editors.Formulation and delivery of peptides and proteins,1
st edition,Washington,ACS,pg.22−45;及びPearlman,R.; Nguyen,T.H.(1990) Analysis of protein drugs.In:Lee,V. H.,editor.Peptide and protein drug delivery,1st edition,New York,Marcel Dekker,Inc.,pg.247−301」を参照されたい。
【0173】
不均一性及び凝集物の形成:抗体の安定性は、製剤が、凝集物として存在するGMP抗体材料中に、約10%未満、一実施形態において、約5%未満、別の実施形態において、約2%未満、又は一実施形態において、0.5%から1.5%又はそれ以下の範囲内を呈し得るような安定性であり得る。サイズ排除クロマトグラフィーは、タンパク質凝集物の検出において、高感度で、再現性があり、極めて強固な方法である。
【0174】
低い凝集物レベルに加えて、一実施形態において、抗体は化学的に安定でなければならない。化学的な安定性は、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン又は陰イオン交換クロマトグラフィー)、疎水性相互作用クロマトグラフィー又は等電点電気泳動若しくはキャピラリー電気泳動などの他の方法によって測定され得る。例えば、抗体の化学的安定性は、2から8℃での少なくとも12ヶ月の保存後に、保存検査の前の抗体溶液と比べて、陽イオン交換クロマトグラフィー中の修飾されていない抗体に相当するピークが20%以下、一実施形態において、10%以下、又は別の実施形態において、5%以下増加し得るような化学的安定性であり得る。
【0175】
一実施形態において、親抗体は、構造的な完全性;正しいジスルフィド結合の形成及び正しい折り畳みを示し、抗体の二次又は三次構造の変化による化学的な不安定性は抗体活性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体の活性によって示される安定性は、2から8℃での少なくとも12ヶ月の保存後に、保存検査前の抗体溶液と比べて、抗体の活性が50%以下、一実施形態において、30%以下若しくは10%以下、又は一実施形態において、5%若しくは1%以下減少し得るような安定性である。抗体の活性を測定するために、適切な抗原結合アッセイを使用することができる。
【0176】
B5.2.溶解度:
mAbの「溶解度」は、正確に折り畳まれた単量体IgGの産生と相関する。従って、IgGの溶解度がHPLCによって評価され得る。例えば、可溶性(単量体)IgGはHPLCクロマトグラフィー上に単一のピークを生じるのに対して、不溶性の(例えば、多量体及び凝集した)は複数のピークを生じる。従って、当業者は、定型的なHPLC技術を用いて、IgGの溶解度の増加又は減少を検出することができる。溶解度を分析するために使用され得る分析技術のより包括的なリストに関しては、Jones,A.G.Dep.Chem.Biochem.Eng.,Univ.Coll.London,London,UK.Editor(s):Shamlou,P.Ayazi.Process.Solid−Liq.Suspensions(1993),93−117.Publisher:Butterworth−Heinemann,Oxford,UK and Pearlman,Rodney;Nguyen,Tue H,Advances in Parenteral Sciences(1990),4(Pept.Protein Drug Delivery),247−301)を参照されたい。治療用mAbの溶解度は、十分な投薬のためにしばしば必要とされる高い濃度になるように調合するために不可欠である。本明細書に概説されているように、効率的な抗体投薬量を収容するためには、>100mg/mLの溶解度が必要とされ得る。例えば、抗体の溶解度は、初期研究期では約5mg/mL以上であり得、一実施形態において、進んだプロセス科学段階では約25mg/mL以上であり得、又は一実施形態において、約100mg/mL以上であり得、又は一実施形態において、約150mg/mL以上であり得る。タンパク質分子の固有の特性は、タンパク質溶液の重要な物理化学的特性(例えば、安定性、溶解度、粘度)であることが当業者に自明である。しかしながら、当業者は、最終のタンパク質製剤の特性に有益な影響を与えるための添加物として使用され得る幅広い様々な賦形剤が存在することを理解する。これらの賦形剤には、(i)液体溶媒、共溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール)、(ii)緩衝剤(例えば、ホスファート、アセタート、シトラート、アミノ酸緩衝液);(iii)糖又は糖アルコール(例えば、ショ糖、トレハロース、フルクトース、ラフィノース、マニトール、ソルビトール、デキストラン);(iv)界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、40、60、80、ポロキサマー);(v)等張性改変物質(例えば、NaClなどの塩、糖、糖アルコール)及び(vi)その他(例えば、防腐剤、キレート剤、抗酸化剤、キレート物質(例えば、EDTA)、生物分解性ポリマー、担体分子(例えば、HSA、PEG)が含まれ得る。
【0177】
粘度は、抗体の製造及び抗体の加工処理(例えば、透析ろ過/限外ろ過)、充填仕上げプロセス(ポンプ送出の側面、ろ過の側面)及び送達の側面(注射可能性、精巧な装置の送達)に関して、極めて重要なパラメータである。低い粘度は、より高い濃度を有する抗体の液体溶液を可能にする。これは、同じ用量がより少容量で投与され得ることを可能にする。小さな注射容量には、注射感覚に対するより小さな痛みという利点が備わっており、患者内への注射時に痛みを低減するために、必ずしも溶液を等張にする必要がない。抗体溶液の粘度は、100(1/s)の剪断速度で、抗体溶液の粘度が200mPasを下回るように、一実施形態において、125mPasを下回るように、別の実施形態において、70mPasを下回るように、さらに別の実施形態において、25mPa又は10mPasさえ下回るような粘度であり得る。
【0178】
B5.3製造効率
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞中で効率的に発現されるDVD−Igの作製は、一実施形態において、哺乳動物中でそれ自体効率的に発現される2つの親モノクローナル抗体を必要とする。安定な哺乳動物株(すなわち、CHO)からの作製収率は、約0.5g/L超、一実施形態において、約1g/L超、別の実施形態において、約2から5g/L又はそれ以上の範囲内とすべきである(Kipriyanov SM,Little M. 1999 Mol Biotechnol.12:173−201; Carroll S,Al−Rubeai M. 2004 Expert Opin Biol Ther.4:1821−9)。
【0179】
哺乳動物細胞中での抗体及びIg融合タンパク質の作製は、幾つかの因子によって影響を受ける。強力なプロモーター、エンハンサー及び選択マーカーの取り込みを介した発現ベクターの操作は、組み込まれたベクターコピーからの目的の遺伝子の転写を最大化し得る。遺伝子転写の高いレベルを許容するベクター組み込み部位の同定は、ベクターからのタンパク質の発現を増強し得る(Wurm et al,2004,Nature Biotechnology,2004,Vol/Iss/Pg.22/11(1393−1398))。さらに、産生のレベルは、抗体重鎖及び軽鎖の比並びにタンパク質の集合及び分泌の過程における様々な工程によって影響を受ける(Jiang et al.2006,Biotechnology Progress,Jan−Feb2006,vol.22,no.1,p。313−8)。
【0180】
B6.免疫原性
治療用mAbの投与は、免疫応答のある種の発生(すなわち、治療用mAbに対して誘導された内在性抗体の形態)をもたらし得る。免疫原性を誘導し得る潜在的な要素は、親モノクローナル抗体の選択の間に分析すべきであり、DVD−Igの構築の前に、親モノクローナル抗体を最適化するために、このようなリスクを低減させるための工程を踏むことができる。マウス由来の抗体は、患者内で高度に免疫原性であることが見出されている。マウスの可変領域とヒトの定常領域から構成されるキメラ抗体の作製が、治療用抗体の免疫原性を低下させるための論理的な次のステップを与える(Morrison and Schlom,1990)。あるいは、免疫原性は、Riechmann他、1988によって治療用抗体に関して記載されたように、ヒト抗体フレームワーク中にマウスCDR配列を転移させることによって低減させることができる(リシェーピング/CDRグラフティング/ヒト化)。別の方法は、げっ歯類の可変軽及び重ドメインから始まり、表面接近可能なフレームワークアミノ酸のみがヒトのアミノ酸に改変される一方、CDR及び埋没されたアミノ酸は親げっ歯類抗体のままである、「リサーフェシング」又は「ベニアリング」と称される(Roguska et al.,1996)。ヒト化の別の種類では、CDR全体を移植する代わりに、1つの技術は、抗体の標的への抗体の結合に関与するCDR残基の亜群と定義される「特異性決定領域」(SDR)のみを移植する(Kashmiri et al.,2005)。これには、抗体−標的複合体の利用可能な三次元構造の分析又は何れが標的と相互作用するかを決定するための抗体CDR残基の変異分析の何れかを通じたSDRの同定が必要とされる。あるいは、完全なヒト抗体は、マウス、キメラ又はヒト化抗体と比べて低下した免疫原性を有し得る。
【0181】
治療用抗体の免疫原性を低下させるための別のアプローチは、免疫原性であると予想されるある特定の配列を除去することである。1つのアプローチでは、第一世代の生物薬がヒトで検査され、許容できないほどに免疫原性であることが見出された後に、B細胞エピトープをマッピングし、次いで、免疫検出を回避するために変化させることができる。別のアプローチは、T細胞エピトープの候補を予測し、除去するための方法を使用する。MHCタンパク質に結合する可能性を有する生物的治療薬のペプチド配列を走査及び同定するために、コンピュータ法が開発されている(Desmet et al.,2005)。あるいは、タンパク質アレルゲン候補中のCD4
+T細胞エピトープを同定するために、ヒトの樹状細胞を基礎とする方法を使用することができる(Stickler et al.,2005; S.L. Morrison and J. Schlom,Important Adv.Oncol.(1990),pp.3−18; Riechmann,L.,Clark,M.,Waldmann,H. and Winter,G. “Reshaping human antibodies for therapy”Nature (1988) 332:323−327; Roguska−M−A,Pedersen−J−T,Henry−A−H,Searle−S−M,Roja−C−M,Avery−B,Hoffee−M,Cook−S,Lambert−J−M,Blattler−W−A,Rees−A−R,Guild−B−C.A comparison of two murine mAbs humanized by CDR−grafting and variable domain resurfacing.Protein engineering,{Protein−Eng},1996,vol.9,p.895−904; Kashmiri−Syed−V−S,De−Pascalis−Roberto,Gonzales−Noreen−R,Schlom−Jeffrey.SDR grafting− a new approach to antibody humanization.Methods (San Diego Calif.),{Methods},May 2005,vol.36,no.1,p.25−34;Desmet−Johan,Meersseman−Geert,Boutonnet−Nathalie,Pletinckx−Jurgen,De−Clercq−Krista,Debulpaep−Maja,Braeckman−Tessa,Lasters−Ignace.Anchor profiles of HLA−specific peptides:analysis by a novel affinity scoring method and experimental validation.Proteins,2005,vol.58,p.53−69; Stickler−M−M,Estell−D−A,Harding−F−A.CD4+ T−cell epitope determination using unexposed human donor peripheral blood mononuclear cells.Journal of immunotherapy 2000,vol.23,p.654−60)。
【0182】
B7.インビボでの有効性
所望のインビボ有効性を有するDVD−Ig分子を作製するために、組み合わせて与えられたときに、同様に所望のインビボ有効性を有するmAbを作製及び選択することが重要である。しかしながら、幾つかの事例において、DVD−Igは、2つの別個のmAbの組み合わせを用いて達成することができないインビボ有効性を示し得る。例えば、DVD−Igは2つの標的を近接させて、2つの別個のmAbの組み合わせを用いて達成することができない活性をもたらし得る。さらなる望ましい生物学的機能が、本明細書の節B3に記載されている。DVD−Ig分子において望ましい特徴を有する親抗体は、薬物動態t1/2;組織分布;可溶性対細胞表面標的及び標的濃度−可溶性/密度−表面などの要因に基づいて選択され得る。
【0183】
B8.インビボ組織分布
所望のインビボ組織分布を有するDVD−Ig分子を作製するために、一実施形態において、類似の所望のインビボ組織分布特性を有する親mAbを選択しなければならない。あるいは、二重特異的標的化戦略の機序に基づいて、別の時点では、組み合わせて与えられたときに、同様に所望のインビボ組織分布を有する親mAbを選択することが必要でない場合があり得る。例えば、1つの結合成分がDVD−Igを特異的な部位へ標的化するDVD−Igの場合には、これにより、第二の結合成分を同じ標的部位へもたらす。例えば、DVD−Igの一方の結合特異性は膵臓(膵頭細胞)を標的化することができ、他方の特異性はインシュリンを誘導するためにGLP1を膵臓にもたらすことができる。
【0184】
B9.イソタイプ:
イソタイプ、エフェクター機能及び循環半減期などの(但し、これらに限定されない。)所望の特性を有するDVD−Ig分子を作製するために、一実施形態において、治療用途及び所望の治療的評価項目に応じて適切なFc−エフェクター機能を有する親mAbが選択される。5つの主要な重鎖クラス又はイソタイプが存在し、そのうち幾つかは数個のサブタイプを有し、これらが抗体分子のエフェクター機能を決定する。これらのエフェクター機能は、抗体分子のヒンジ領域、CH2及びCH3ドメイン中に存在する。しかしながら、抗体分子の他の部分の残基も、エフェクター機能に影響を及ぼし得る。ヒンジ領域Fc−エフェクター機能には、(i)抗体依存性細胞性細胞傷害、(ii)補体(C1q)結合、活性化及び補体依存性細胞傷害(CDC)、(iii)抗原−抗体複合体の貪食作用/排除並びに(iv)幾つかの事例におけるサイトカインの放出が含まれる。抗体分子のこれらのFc−エフェクター機能は、クラス特異的な細胞表面受容体の組みとのFc領域の相互作用を通じて媒介される。IgG1イソタイプの抗体は最も活性が高いのに対して、IgG2及びIgG4は最小限のエフェクター機能を有し又はエフェクター機能を有さない。IgG抗体のエフェクター機能は、3つの構造的に相同的な細胞性Fc受容体のタイプ(及びサブタイプ)(FcgR1、FcgRII及びFcgRIII)との相互作用を通じて媒介される。IgG1のこれらのエフェクター機能は、FcgR及びC1q結合に必要とされるヒンジ領域下方の特定のアミノ酸残基(例えば、L234A、L235A)を変異させることによって除去することができる。Fc領域中のアミノ酸残基、特に、CH2−CH3ドメインも、抗体分子の循環半減期を決定する。このFc機能は、酸性リソゾームから全身循環へ抗体分子をリサイクルするために必要な新生Fc受容体(FcRn)へのFc領域の結合を通じて媒介される。
【0185】
mAbが活性なイソタイプ又は不活性なイソタイプを有するべきかどうかは、抗体に対して所望される治療的評価項目に依存する。イソタイプの使用及び所望される治療結果の幾つかの例が、以下に列記されている。
【0186】
a)所望の評価項目が可溶性サイトカインの機能的な中和である場合、不活性なイソタイプを使用し得る。
【0187】
b)所望の結果が病的タンパク質の排除である場合、活性なイソタイプを使用し得る。
【0188】
c)所望の結果がタンパク質凝集物の排除である場合、活性なイソタイプを使用し得る。
【0189】
d)所望の結果が表面受容体を拮抗することである場合、不活性なイソタイプが使用される(Tysabri、IgG4;OKT3、変異されたIgG1);
e)所望の結果が標的細胞を除去することである場合、活性なイソタイプが使用される(Herceptin、IgG1(及び増強されたエフェクター機能を有する。);及び
f)所望の結果が、中枢神経系に入らずに循環からタンパク質を除去することである場合、IgMイソタイプが使用され得る(例えば、循環Abペプチド種の除去)。
【0190】
親mAbのFcエフェクター機能は、本分野で周知の様々なインビトロ法によって測定され得る。
【0191】
論述されているように、イソタイプの選択、従って、エフェクター機能の選択は所望の治療的評価項目に依存する。循環標的の単純な中和(例えば、受容体−リガンド相互作用を遮断すること)が望まれる場合には、エフェクター機能は必要とされない場合があり得る。このような事例では、エフェクター機能を除去する抗体のFc領域中のイソタイプ又は変異が望ましい。標的細胞の除去、例えば、腫瘍細胞の除去が治療的評価項目である他の事例では、エフェクター機能を増強するFc領域中のイソタイプ又は変異又は脱フコシル化が望ましい(Presta GL,Adv.DrugDeliveryRev.58:640−656,2006;Satoh M.,Iida S.,Shitara K. Expert Opinion Biol.Ther.6:1161−1173,2006)。同様に、治療用途に応じて、Fc領域中に特異的な変異を導入することによって抗体−FcRn相互作用を調節することによって、抗体分子の循環半減期を短縮/延長することができる(Dall’Acqua WF,Kiener PA,Wu H. J.Biol.Chem.281:23514−23524,2006;PetkovaSB.,Akilesh S.,Sproule TJ. et al.Internat.Immunol.18:1759−1769,2006;Vaccaro C,Bawdon R.,Wanjie S et al.PNAS 103:18709−18714,2007)。
【0192】
正常な治療用mAbの異なるエフェクター機能に影響を及ぼす様々な残基に関する公表された情報が、DVD−Igに関して確認される必要があり得る。DVD−Igフォーマットでは、モノクローナル抗体エフェクター機能の調節に関して同定されたもの以外のさらなる(異なる)Fc領域残基が重要であり得ることが可能であり得る。
【0193】
総合すると、何れのFcエフェクター機能(イソタイプ)が最終的なDVD−Igフォーマットにおいて不可欠であるのかについての決定は、疾病の適応症、治療の標的、所望される治療の評価項目及び安全性についての考慮に依存する。以下に列記されているのは、
・IgG1−アロタイプ:G1mz
・IgG1変異体−A234、A235
・IgG2−アロタイプ:G2m(n−)
・κ−Km3
・λ
などの典型的な適切な重鎖及び軽鎖定常領域であるが、これらに限定されない。
【0194】
Fc受容体及びC1q研究:細胞膜上の何れかの過剰発現された標的への抗体の複合体形成による望ましくない抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)の可能性は、ヒンジ領域の変異(例えば、L234A、L235A)によって除去され得る。FcgR結合はIgG1ヒンジ領域上の重複する部位内で起こると考えられているので、mAbのIgG1ヒンジ領域中に存在するこれらの置換されたアミノ酸は、ヒトFc受容体へのmAbの減少した結合をもたらす(が、FcRnへの減少した結合はもたらさない)と予想される。mAbのこの特徴は、野生型IgGを含有する抗体に比べて改善された安全性特性をもたらし得る。ヒトFc受容体へのmAbの結合は、細胞株(例えば、THP−1、K562)及びFcgRIIb(又は他のFcgR)を発現する加工されたCHO細胞株を用いるフローサイトメトリー実験によって測定することができる。IgG1対照モノクローナル抗体と比べて、mAbはFcgRI及びFcgRIIaへの低下した結合を示すのに対して、FcgRIIbへの結合は影響を受けない。抗原/IgG免疫複合体によるC1qの結合及び活性化は、古典的な補体カスケードの引き金を引き、その結果、炎症性及び/又は免疫制御応答の引き金を引く。IgG上のC1q結合部位は、IgGヒンジ領域内の残基に局在化されている。mAbの増加する濃度へのC1qの結合は、C1qELISAによって評価された。結果は、野生型対照IgG1の結合と比較したときに予想通り、mAbがC1qに結合できないことを示す。総合すると、L234A、L235Aヒンジ領域の変異は、FcgRI、FcgRIIa及びC1qへのmAbの結合を失わせるが、FcgRIIbとのmAbの相互作用に影響を与えない。このデータは、インビボにおいて、変異体Fcを有するmAbは、阻害的FcgRIIbと正常に相互作用するが、活性化FcgRI及びFcgRIIa受容体又はC1qと相互作用できない可能性が高いことを示唆する。
【0195】
ヒトFcRn結合:新生受容体(FcRn)は、胎盤を横切るIgGの輸送及びIgG分子の異化的半減期の調節に必要である。有効性を改善するために、投与の用量若しくは頻度を減らすために、又は標的への局在化を改善するために、抗体の最終半減期を増加させることが望ましい場合があり得る。あるいは、これとは逆のことを行う、すなわち、全身曝露を減らすために、又は標的対非標的結合比を改善するために、抗体の最終半減期を減少させることが有利であり得る。IgGとそのサルベージ受容体FcRn間の相互作用を改変することは、IgGの最終半減期を増加又は減少させるための方法を提供する。IgGなどの循環中のタンパク質は、血管内皮の細胞などのある種の細胞による微小飲作用を通じて液体相へ取り込まれる。IgGは、僅かに酸性の条件下で(pH6.0から6.5)、エンドソーム中でFcRnを結合することができ、細胞表面へリサイクルされ、そこで、ほぼ中性の条件下で(pH7.0から7.4)放出される。FcRn80、16、17上のFc領域結合部位のマッピングは、種間で保存されている2つのヒスチジン残基His310及びHis435が、この相互作用のpH依存性に必要であることを示した。ファージディスプレイ技術を用いて、FcRnへの結合を増加させ、マウスIgGの半減期を延長するマウスFc領域の変異が同定された(Victor,G. et al.; Nature Biotechnology (1997),15(7),637−640参照)。pH6.0でFcRnに対するヒトIgGの結合親和性を増加させるが、pH7.4では増加させないFc領域の変異も同定されている(Dall’Acqua William F,et al.,Journal of Immunology (2002),169(9),5171−80参照)。さらに、ある事例では、結合の同様のpH依存性増加(最大27倍)は、アカゲザルFcRnに対しても観察され、これは、親IgGと比べて、アカゲザル中での血清半減期の2倍の増加をもたらした(Hinton,Paul R. et al.,Journal of Biological Chemistry (2004),279(8),6213−6216参照)。これらの知見は、FcRnとのFc領域の相互作用を改変することによって、抗体治療薬の血漿半減期を延長させることができることを示唆する。逆に、FcRnとの相互作用を弱めるFc領域の変異は抗体半減期を短縮し得る。
【0196】
B.10薬物動態(PK):
所望の薬物動態特性を有するDVD−Ig分子を作製するために、一実施形態において、同様に所望の薬物動態特性を有する親mAbが選択される。1つの考慮事項は、モノクローナル抗体に対する免疫原性応答(すなわち、ヒト抗ヒト抗体応答;HACA、ヒト抗キメラ抗体応答)がこれらの治療剤の薬物動態をさらに複雑にすることである。一実施形態において、得られたDVD−Igが最小限の免疫原性を有するように、又は免疫原性を有さないように、DVD−Ig分子を構築するために、最小限の免疫原性を有するモノクローナル抗体又は免疫原性を有さないモノクローナル抗体が使用される。mAbのPKを決定する要因の幾つかには、mAbの固有の特性(VHアミノ酸配列);免疫原性;FcRn結合及びFc機能が含まれるが、これらに限定されない。
【0197】
げっ歯類でのPK特性はカニクイザル及びヒトでのモノクローナル抗体のPK特性と良好に相関する(又は密接に予測する)ので、選択された親モノクローナル抗体のPK特性は、げっ歯類において容易に測定することができる。PK特性は、実施例の部1.2.2.3.Aに記載されているように測定される。
【0198】
所望のPK特徴(及び本明細書に論述されているような他の所望の機能的特性)を有する親モノクローナル抗体を選択した後、DVD−Igを構築する。DVD−Ig分子は2つの親モノクローナル抗体由来の2つの抗原結合ドメインを含有するので、DVD−IgのPK特性も評価される。従って、DVD−IgのPK特性を測定しながら、2つの親モノクローナル抗体由来の両抗原結合ドメインの機能性に基づいてPK特性を測定するPKアッセイが使用され得る。DVD−IgのPK特性は、実施例1.2.2.3.Aに記載されているように測定することができる。DVD−IgのPK特性に影響を及ぼし得るさらなる要因には、抗原結合ドメイン(CDR)の方向性;リンカーのサイズ及びFc/FcRn相互作用が含まれる。親抗体のPKの特徴は、以下のパラメータ:吸収、分布、代謝及び排泄を評価することによって評価することができる。
【0199】
吸収:現在まで、治療用モノクローナル抗体の投与は、非経口経路(例えば、静脈内[IV]、皮下[SC]又は筋肉内[IM])を介して行われている。皮下又は筋肉内投与の何れかの後の細胞間隙から全身循環中へのmAbの吸収は、主に、リンパ経路を通じて行われる。飽和性、前全身性、タンパク分解性の分解は、血管外投与後に可変的な絶対的生物学的利用性をもたらし得る。通常、より高い用量での飽和したタンパク分解能のために、モノクローナル抗体の増加する用量に伴う、絶対的生物学的利用性の増加が観察され得る。リンパ液は血管系内にゆっくり排出するので、mAbに対する吸収プロセスは、通常極めて遅く、吸収の期間は、数時間から数日に起こり得る。皮下投与後のモノクローナル抗体の絶対的生物利用可能性は、一般に、50%から100%の範囲である。DVD−Ig構築物によって標的とされる脳血液関門での輸送を媒介とする構造の場合には、中枢神経系区画(DVD−Igは、ここで解離されて、その第二の抗原認識部位を介した相互作用が可能となる。)内への脳血液関門(BBB)での増強された経細胞輸送のために、血漿中の循環時間が短縮され得る。
【0200】
分布:静脈投与後に、モノクローナル抗体は、急速な分布期から開始し、その後に遅い除去期が続く、二相性の血清(又は血漿)濃度−時間特性に通常従う。一般に、二相性の指数関数的薬物動態モデルが、この種の薬物動態特性を最もよく記載する。mAbに対する中枢コンパートメント(Vc)中での分布の容積は、通常、血漿容積(2から3L)と等しく、又はそれより僅かに大きい。長い吸収部分によって、血清(血漿)濃度−時間曲線の分布相が覆い隠されるので、血清(血漿)濃度対時間特性の明瞭な二相性パターンは、投与の他の非経口経路(筋肉内又は皮下など)では明白でない場合があり得る。物理化学的特性、部位特異的及び標的に向けられた受容体媒介性取り込み、組織の結合能力及びmAb用量などの多くの要因が、mAbの生物分布に影響を及ぼし得る。これらの要因の幾つかは、mAbに対する生物分布の非線形性に寄与し得る。
【0201】
代謝及び排泄:分子サイズのために、完全な状態のモノクローナル抗体は、腎臓を介して尿内に排泄される。完全な状態のモノクローナル抗体は、主に、代謝(例えば、異化)によって不活化される。IgGを基礎とする治療用モノクローナル抗体に関して、半減期は、通例、数時間又は1から2日ないし20日以上の範囲である。mAbの除去は、FcRn受容体に対する親和性、mAbの免疫原性、mAbのグリコシル化の程度、タンパク分解に対するmAbの感受性及び受容体媒介性の除去などの(但し、これらに限定されない。)、多くの因子によって影響を受け得る。
【0202】
B.11ヒト及びtox種に対する組織交叉反応性パターン:
同じ染色パターンは、tox種における、潜在的なヒト毒性を評価できることを示唆する。Tox種とは、無関係な毒性が研究される動物である。
【0203】
2つの基準を充足する個別の抗体を選択する。(1)抗体標的の既知の発現に関して適切な組織染色。(2)同じ臓器からのヒト及びtox種の組織間での類似の染色パターン。
【0204】
基準1:免疫化及び/又は抗体選択は、組換え又は合成された抗原(タンパク質、炭水化物又は他の分子)を典型的に使用する。天然の対応物への結合及び無関係の抗原に対する対比スクリーニングは、しばしば、治療用抗体のためのスクリーニング漏斗の一部である。しかしながら、多数の抗原に対するスクリーニングは、しばしば非現実的である。従って、全ての主要な臓器から得られるヒト組織との組織交叉反応性研究は、何れかの無関係の抗原への抗体の望ましくない結合を除外する役割を果たす。
【0205】
基準2:ヒト及びtox種の組織(カニクイザル、イヌ、おそらくげっ歯類及びその他、同じ36又は37の組織がヒトの研究におけるように検査されている。)を用いた比較組織交叉反応性研究は、tox種の選択の妥当性を確認するのに役立つ。凍結組織切片に関する典型的な組織交叉反応性研究では、治療用抗体は既知の抗原への予想される結合及び/又は、より低い程度で、低レベルの相互作用に基づく組織への結合(非特異的結合、類似の抗原への低レベルの結合、低レベルの電荷を基礎とする相互作用など)を示し得る。何れの場合でも、最も妥当な毒性学動物種は、ヒト及び動物組織への結合の一致の最も高い程度を有する動物種である。
【0206】
組織交叉反応性研究は、ECCPMPガイドラインIII/5271/94“Production and quality control of mAbs”及び1997USFDA/CBER“Points to Consider in the Manufacture and Testing of Monoclonal Antibody Products for Human Use”などの適切な規制ガイドラインに従う。剖検又は生検で得られたヒト組織の凍結切片(5μm)を対物グラス上に固定し、乾燥させた。アビジン−ビオチン系を用いて、組織切片のペルオキシダーゼ染色を行った。食品医薬品局の指針“Points to Consider in the Manufacture and Testing of Monoclonal Antibody Products for Human Use”。適切な参考文献には、「Clarke J 2004,Boon L. 2002a,Boon L 2002b,Ryan A 1999」が含まれる。
【0207】
組織交叉反応性研究は、しばしば、2段階で行われ、第一の段階は、1人のヒトドナーから得られる32の組織(典型的には、副腎、胃腸管、前立腺、膀胱、心臓、骨格筋、血液細胞、腎臓、皮膚、骨髄、肝臓、脊髄、乳房、肺、脾臓、小脳、リンパ節、精巣、大脳皮質、卵巣、胸腺、大腸、膵臓、甲状腺、内皮、副甲状腺、尿管、眼、下垂体、子宮、ファロピア管及び胎盤)の凍結切片を含む。第二相では、完全な交叉反応性研究は、3人の無関係な成人から得られる最大38の組織(副腎、血液、血管、骨髄、小脳、大脳、頚部、食道、眼、心臓、腎臓、大腸、肝臓、肺、リンパ節、乳房の乳腺、卵巣、卵管、膵臓、副甲状腺、末梢神経、下垂体、胎盤、前立腺、唾液腺、皮膚、小腸、脊髄、脾臓、胃、横紋筋、精巣、胸腺、甲状腺、扁桃腺、尿管、膀胱及び子宮を含む。)を用いて行われる。研究は、典型的には、最低2つの投薬レベルで行われる。
【0208】
治療用抗体(すなわち、検査品)及びイソタイプを合致させた対照抗体は、アビジン−ビオチン複合体(ABC)検出のためにビオチン化され得る。他の検出法には、FITC(又はその他の)標識された検査品のための三次抗体検出又は標識されていない検査品のための標識された抗ヒトIgGとの事前の複合体形成が含まれ得る。
【0209】
要約すれば、剖検又は生検で得られたヒト組織の凍結切片(約5μm)を対物グラス上に固定し、乾燥させる。アビジン−ビオチン系を用いて、組織切片のペルオキシダーゼ染色を行う。まず(事前に複合体を形成する検出系の場合)、ビオチン化された二次抗ヒトIgGとともに検査品を温置し、免疫複合体を生じさせる。検査品の2及び10μg/mLの最終濃度の免疫複合体を対物ガラス上の組織切片上に添加し、次いで、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼキットと組織切片を30分間反応させた。その後、組織染色のために、ペルオキシダーゼ反応に対する基質であるDAB(3,3’−ジアミノベンジジン)を4分間適用した。陽性対照組織切片として、抗原−セファロースビーズを使用する。
【0210】
何れの特異的染色も、問題となっている標的抗原の既知の発現に基づいて、予想された(例えば、抗原の発現と合致)反応性又は予想されない反応性の何れかであると判断される。特異的と判断された全ての染色には、強度と頻度に関してスコアを付与する。抗原又は血清競合又は遮断研究は、観察された染色が特異的又は非特異的であるかどうかの決定をさらに補助し得る。
【0211】
2つの選択された抗体が選択基準を充足する(適切な組織染色、ヒトと毒性学動物特異的組織間での合致する染色)ことが見出されたら、DVD−Ig作製のために、それらを選択することができる。
【0212】
組織交叉反応性研究は、最終のDVD−Ig構築物を用いて繰り返さなければならないが、2つの親抗体の何れかから何らかの結合が生じ得、複雑な抗原競合研究を用いて、何らかの説明されない結合を確認する必要があるので、これらの研究は、本明細書に概説されているものと同じプロトコールに従うものの、より評価が複雑である。
【0213】
(1)予想されない組織交叉反応性の知見の欠如に関して、並びに(2)対応するヒト及び毒性学動物種の組織間での、組織交叉反応性の知見の適切な類似性に関して、2つの親抗体が選択されれば、DVD−Igのような多重特異的分子を用いた組織交叉反応性研究の複雑な作業が大幅に簡略化されることは自明である。
【0214】
B.12特異性及び選択性:
所望の特異性と選択性を有するDVD−Ig分子を作製するために、同様に所望の特異性及び選択性特性を有する親mAbを作製及び選択することが必要である。
【0215】
DVD−Igを用いた特異性及び選択性に関する結合研究は、4つ又はそれ以上の結合部位(それぞれ2つが各抗原に対する)のために複雑であり得る。簡潔に述べれば、ELISA,BIAcore、KinExAを使用する結合研究又はDVD−Igとの他の相互作用研究は、DVD−Ig分子への1つ、2つ又はそれ以上の抗原の結合をモニターする必要がある。BIAcore技術は、複数の抗原の逐次的な独立した結合を分割することができるが、ELISAなどのより伝統的な方法又はKinExAのようなより近代的な技術は分割できない。従って、各親抗体の注意深い性質決定が不可欠である。それぞれの個別の抗体が特異性に関して性質決定された後、DVD−Ig分子中の個別の結合部位の特異性の保持の確認は大幅に簡略化される。
【0216】
DVD−Ig中に組み合わされる前に、特異性に関して2つの親抗体が選択されれば、DVD−Igの特異性を測定するという複雑な作業が大幅に簡略化されることは自明である。
【0217】
抗原−抗体相互作用の研究は、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、質量分析法、化学的架橋、光散乱を用いたSEC、平衡透析、ゲル浸透、限外ろ過、ゲルクロマトグラフィー、巨大ゾーン分析的SEC、微量調製超遠心(沈降平衡)、分光学的方法、滴定微量熱量測定、(分析的超遠心での)沈降平衡、(分析的遠心での)沈降速度、表面プラズモン共鳴(BIAcoreを含む。)などの多くの古典的なタンパク質−タンパク質相互作用研究など、多くの形態を採り得る。関連する参考文献には、John Wiley & Sons Inc.,によって出版された「“Current Protocols in Protein Science”John E. Coligan,Ben M. Dunn,David W. Speicher,Paul T,Wingfield (eds) Volume 3,chapters 19 and 20」及びその中に含まれる参考文献並びにJohn Wiley & Sons Inc.,によって出版された「“Current Protocols in Immunology”,John E. Coligan,Barbara E. Bierer,David H. Margulies,Ethan M. Shevach,Warren Strober (eds.)」及びその中に含まれる関連する参考文献が含まれる。
【0218】
全血中のサイトカイン放出:ヒト血液細胞とのmAbの相互作用は、サイトカイン放出アッセイによって調べることができる(John Wiley & Sons Incによって出版されたWing,M. G. Therapeutic Immunology(1995),2(4),183−190; “Current Protocols in Pharmacology”,S.J.Enna,Michael Williams,John W.Ferkany,Terry Kenakin,Paul Moser,(eds.);Madhusudan,S. Clinical Cancer Research (2004),10(19),6528−6534; Cox,J. Methods (2006),38(4),274−282; Choi,I. European Journal of Immunology (2001),31(1),94−106))。簡潔に述べれば、mAbの様々な濃度をヒト全血とともに24時間温置する。検査される濃度は、患者中の典型的な血液レベルを模倣する最終濃度を含む幅広い範囲を包含すべきである(100ng/mLから100μg/mLなど、これに限定されない。)。温置後、IL−1Rα、TNF−α、IL−1b、IL−6及びIL−8の存在に関して、上清及び細胞可溶化液を分析した。mAbに関して作製されたサイトカイン濃度特性を、陰性ヒトIgG対照及び陽性LPS又はPHA対照によって作製された特性と比較した。細胞上清及び細胞可溶化液の両方から得られたmAbによって示されたサイトカイン特性は、対照ヒトIgGと同等であった。一実施形態において、モノクローナル抗体は、炎症性サイトカインを自発的に放出するために、ヒト血液細胞と相互作用しない。
【0219】
4つ又はそれ以上の結合部位(各抗原に対してそれぞれ2つ)のために、DVD−Igに対するサイトカイン放出研究は複雑である。簡潔に述べれば、本明細書に記載されているサイトカイン放出研究は、全血又は他の細胞系に対する完全なDVD−Ig分子の効果を測定するが、分子の何れの部分がサイトカインの放出を引き起こすかを解決することはできない。サイトカインの放出が検出されたら、幾つかの同時精製された細胞成分が単独でサイトカインの放出を引き起こし得るので、DVD−Ig調製物の純度が確認されなければならない。純度が問題でなければ、何れかの観察結果を解析するために、DVD−Igの断片化(Fc部分の除去、結合部位の分離などを含むが、これらに限定されない。)、結合部位の突然変異導入又は他の方法を使用することが必要であり得る。DVD−Ig中に組み合わされる前に、サイトカインの放出の欠如に関して、2つの親抗体が選択されれば、この複雑な作業が大幅に簡略化されることは自明である。
【0220】
B.13毒性学的研究のための他の種への交叉反応性:
一実施形態において、適切なtox種(例えば、カニクイザル)への十分な交叉反応性を有する各抗体が選択される。親抗体は、オーソロガスな種の標的(すなわち、カニクイザル)に結合し、適切な応答(調節、中和、活性化)を惹起することが必要である。一実施形態において、オーソロガスな種の標的への交叉反応性(親和性/強度)は、ヒト標的の10倍以内とすべきである。実際に、親抗体は、マウス、ラット、イヌ、サル(及び他の非ヒト霊長類)及び疾病モデル種(すなわち、喘息モデル用のヒツジ)などの複数の種に関して評価される。親モノクローナル抗体からのtox種への許容可能な交叉反応性は、同じ種内のDVD−Ig−Igの将来の毒性学的研究を可能にする。この理由のために、2つの親モノクローナル抗体は、共通のtox種に対して許容可能な交叉反応性を有し、従って、同じ種内でのDVD−Igの毒性学的研究を可能にすべきである。
【0221】
親mAbは、特異的な標的を結合することができる様々なmAbから選択され得、本分野において周知である。これらには、抗TNF抗体(米国特許第6,258,562号)、抗IL−12及び/又は抗IL−12p40抗体(米国特許第6,914,128号);抗IL−18抗体(米国特許公開第2005/0147610A1号)、抗C5、抗CBL、抗CD147、抗gp120、抗VLA−4、抗CD11a、抗CD18、抗VEGF、抗CD40L、抗CD−40(例えば、WO2007124299参照)抗Id、抗ICAM−、抗CXCL13、抗CD2、抗EGFR、抗TGF−β2、抗HGF、抗cMet、抗DLL−4、抗NPR1、抗PLGF、抗ErbB3、抗E−セレクチン、抗VII因子、抗Her2/neu、抗Fgp、抗CD11/18、抗CD14、抗ICAM−3、抗RON、抗CD−19、抗CD80(例えば、WO2003039486参照)、抗CD4、抗CD3、抗CD23、抗β2−インテグリン、抗α4β7、抗CD52、抗HLADR、抗CD22(例えば、米国特許第5,789,554号参照)、抗CD20、抗MIF、抗CD64(FcR)、抗TCRαβ、抗CD2、抗HepB、抗CA125、抗EpCAM、抗gp120、抗CMV、抗gpIIbIIIa、抗IgE、抗CD25、抗CD33、抗HLA、抗IGF1,2、抗IGFR、抗VNRインテグリン、抗IL−1α、抗IL−1β、抗IL−1受容体、抗IL−2受容体、抗IL−4、抗IL−4受容体、抗IL5、抗IL−5受容体、抗IL−6、抗IL−6R、RANKL、NGF、DKK、αVβ3、IL−17A、抗IL−8、抗IL−9、抗IL−13、抗IL−13受容体、抗IL−17;抗IL−23;IL−23p19(Presta LG. 2005 Selection,design,and engineering of therapeutic antibodies J Allergy Clin Immunol.116:731−6及び http://www.path.cam.ac.uk/〜mrc7/humanisation/antibodies.html参照)。
【0222】
親mAbは、使用に関して、臨床試験において又は臨床的使用のための開発において承認を受けた様々な治療用抗体からも選択され得る。このような治療用抗体には、リツキシマブ(Rituxan
(R)、IDEC/Genentech/Roche)(例えば、米国特許第5,736,137号参照)、非ホジキンリンパ腫を治療するために承認を受けたキメラ抗CD20抗体;HuMax−CD20、Genmabによって現在開発されている抗CD20、米国特許第5,500,362号に記載されている抗CD20抗体、AME−133(Applied Molecular Evolution)、hA20(Immunomedics,Inc.)、HumaLYM(Intracel)及びPRO70769(PCT/US2003/040426、発明の名称「Immunoglobulin Variants and Uses Thereof」)、トラスツズマブ(Herceptin
(R),Genentech)(例えば、米国特許第5,677,171号参照)、乳癌を治療するために承認を受けたヒト化抗Her2/neu抗体;Genentecによって現在開発されているペルツズマブ(rhuMab−2C4,Omnitarg
(R));米国特許第4,753,894号に記載されている抗Her2抗体;セツキシマブ(Erbitux
(R)、Imclone)(米国特許第4,943,533号;PCTWO96/40210)、様々な癌に対する臨床試験におけるキメラ抗EGFR抗体;Abgenix−Immunex−Amgenによって現在開発されているABX−EGF(米国特許第6,235,883号);Genmabによって現在開発されているHuMax−EGFr(米国特許出願第10/172,317号);425、EMD55900、EMD62000及びEMD72000(Merck KGaA)(米国特許第5,558,864号;Murthy et al.1987,Arch Biochem Biophys.252(2):549−60; Rodeck et al.,1987,J Cell Biochem.35(4):315−20;Kettleborough et al.,1991,Protein Eng.4(7):773−83);ICR62(Institute of Cancer Research)(PCT WO95/20045;Modjtahedi et al.,1993,J. Cell Biophys.1993,22(l−3):129−46;Modjtahedi et al,1993,Br J Cancer.1993,67(2):247−53;Modjtahedi et al,1996,Br J Cancer,73(2):228−35;Modjtahedi et al,2003,Int J Cancer,105(2):273−80);TheraCIMhR3(YM Biosciences,Canada and Centro de Immunologia Molecular,Cuba (米国特許第5,891,996号;米国特許第6,506,883号;Mateo et al,1997,Immunotechnology,3(1):71−81);mAb−806(Ludwig Institue for Cancer Research,Memorial Sloan−Kettering)(Jungbluth et al.2003,Proc Natl Acad Sci USA.100(2):639−44);KSB−102(KS Biomedix);MR1−1(IVAX,National Cancer Institute)(PCT WO0162931A2);並びにSC100(Scancell)(PCTWO01/88138);アレムツズマブ(Campath
(R),Millenium)、B細胞慢性リンパ性白血病の治療に関して現在承認を受けているヒト化mAb;ムロモナブ−CD3(Orthoclone OKT3
(R))、Ortho Biotech/Johnson & Johnsonによって開発された抗CD3抗体、イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin
(R))、IDEC/Schering AGによって開発された抗CD20抗体、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(Mylotarg
(R))、Celltech/Wyethによって開発された抗CD33(p67タンパク質)抗体、アレファセプト(Amevive
(R))、Biogenによって開発された抗LFA−3Fc融合物)、Centocor/Lillyによって開発されたアブシキシマブ(ReoPro
(R))、Novartisによって開発されたバシリキシマブ(Simulect
(R))、Medimmuneによって開発されたパリビズマブ(Synagis
(R))、インフリキシマブ(Remicade
(R))、Centocorによって開発された抗TNFα抗体、アダリムマブ(Humira
(R))、Abbottによって開発された抗TNFα抗体、Humicade
(R)、Celltechによって開発された抗TNFα抗体、ゴリムマブ(CNTO−148)、Centocorによって開発された完全ヒトTNF抗体、エタネルセプト(Enbrel
(R))、Immunex/Amgenによって開発されたp75TNF受容体Fc融合物、レネルセプト、Rocheによって以前に開発されたp55TNF受容体Fc融合物、ABX−CBL、Abgenixによって開発されている抗CD147抗体、ABX−IL8、Abgenixによって開発されている抗IL−8抗体、ABX−MA1、Abgenixによって開発されている抗MUC18抗体、ペムツモマブ(R1549,90Y−muHMFG1)、Antisomaによって開発中の抗MUC1、Therex(R1550)、Antisomaによって開発されている抗MUC1抗体、Antisomaによって開発されているAngioMab(AS1405)、Antisomaによって開発されているHuBC−1、Antisomaによって開発されているThioplatin(AS1407)、Antegren
(R)(ナタリズマブ)、Biogenによって開発されている抗α−4−β−1(VLA−4)及びα−4−β−7−抗体、VLA−1mAb、Biogenによって開発されている抗VLA−1インテグリン抗体、LTBRmAb、Biogenによって開発されている抗リンホトキシンβ受容体(LTBR)抗体、CAT−152、Cambridge Antibody Technologyによって開発されている抗TGF−β2抗体、ABT874(J695)、Abbottによって開発されている抗IL−12p40抗体、CAT−192、Cambridge Antibody Technology及びGenzymeによって開発されている抗TGF−β1抗体、CAT213、Cambridge Antibody Technologyによって開発されている抗エオタキシン1抗体、LymphoStat−B
(R)、Cambridge Antibody Technology及びHuman Genome Sciences Inc.,によって開発されている抗Blys抗体、TRAIL−R1mAb、Cambridge Antibody Technology及びHuman Genome Sciences Inc.,によって開発されている抗TRAIL−R1抗体、Avastin
(R)ベバシズマブ、rhuMAb−VEGF、Genentechによって開発されている抗VEGF抗体、Genentechによって開発されている抗HER受容体ファミリー抗体、Anti−Tissue Factor (ATF)、Genentechによって開発されている抗組織因子抗体、Xolair
(R)(オマリズマブ)、Genentechによって開発されている抗IgE抗体、Raptiva
(R)(エファリズマブ)、Genentech及びXomaによって開発されている抗CD11a抗体、Genentech及びMillenium Pharmaceuticalsによって開発されているMLN−02抗体(以前には、LDP−02)、HuMaxCD4、Genmabによって開発されている抗CD4抗体、HuMax−IL15、Genmab及びAmgenによって開発されている抗IL−15抗体、Genmab及びMedarexによって開発されているHuMax−Inflam、Humax−Cancer、Genmab及びMedarex及びOxford GeoSciencesによって開発されている抗ヘパラナーゼI抗体、Genmab及びAmgenによって開発されているHuMax−Lymphoma、Genmabによって開発されているHuMax−TAC、IDEC−131及びIDECPharmaceuticalsによって開発されている抗CD40L抗体、IDEC−151(Clenoliximab)、IDEC Pharmaceuticalsによって開発されている抗CD4抗体、IDEC−114、IDEC Pharmaceuticalsによって開発されている抗CD80抗体、IDEC−152、IDEC Pharmaceuticalsによって開発されている抗CD23、IDEC Pharmaceuticalsによって開発されている抗マクロファージ遊走因子(MIF)抗体、BEC2、Imcloneによって開発されている抗イディオタイプ抗体、IMC−IC11、Imcloneによって開発されている抗KDR抗体、DC101、Imcloneによって開発されている抗flk−1抗体、Imcloneによって開発されている抗VEカドヘリン抗体、CEA−Cide
(R)(ラベツズマブ)、Immunomedicsによって開発されている抗癌胎児性抗原(CEA)抗体、LymphoCide
(R)(エプラツズマブ)、Immunomedicsによって開発されている抗CD22抗体、Immunomedicsによって開発されているAFP−Cide、Immunomedicsによって開発されているMyelomaCide、Immunomedicsによって開発されているLkoCide、Immunomedicsによって開発されているProstaCide、MDX−010、Medarexによって開発されている抗CTLA4抗体、MDX−060、Medarexによって開発されている抗CD30抗体、Medarexによって開発されているMDX−070、Medarexによって開発されているMDX−018、Osidem
(R)(IDM−1)並びにMedarex及びImmuno−Designed Moleculesによって開発されている抗Her2抗体、Humax
(R)−CD4、Medarex及びGenmabによって開発されている抗CD4抗体、HuMax−IL15、Medarex及びGenmabによって開発されている抗IL15抗体、CNTO148、Medarex及びCentocor/J&Jによって開発されている抗TNFα抗体、CNTO1275、Centocor/J&Jによって開発されている抗サイトカイン抗体、MOR101及びMOR102、MorphoSysによって開発されている抗細胞間接着分子−1(ICAM−1)(CD54)抗体、MOR201、MorphoSysによって開発されている抗繊維芽細胞成長因子受容体3(FGFR−3)抗体、Nuvion
(R)(ビシリズマブ)、Protein Design Labsによって開発されている抗CD3抗体、HuZAF
(R)、Protein Design Labsによって開発されている抗γインターフェロン抗体、Pro
tein Design Labsによって開発されている抗α5β1インテグリン、Protein Design Labsによって開発されている抗IL12、ING−1、Xomaによって開発されている抗Ep−CAM抗体、Xolair
(R)(オマリズマブ)、Genentech及びNovartisによって開発されているヒト化抗IgE抗体並びにMLN01、Xomaによって開発されている抗β2インテグリン抗体が含まれるが、これらに限定されない(このパラグラフに引用されている参考文献のすべてが、参照により、本明細書に組み込まれる。)。別の実施形態において、治療薬には、KRN330(Kirin);huA33抗体(A33,Ludwig Institute for Cancer Research);CNTO95(αVインテグリン,Centocor);MEDI−522(αVβ3インテグリン,Medimmune);ボロシキシマブ(αVβ1インテグリン,Biogen/PDL);ヒトmAb216(B細胞グリコシル化されたエピトープ,NCI);BiTEMT103(二特異的CD19×CD3,Medimmune);4G7xH22(二重特異的Bcell×FcgammaR1,Medarex/Merck KGa);rM28(二特異的CD28×MAPG、米国特許EP1444268);MDX447(EMD82633)(二特異的CD64×EGFR,Medarex);カツマキソマブ(レモバブ)(二特異的EpCAM×抗CD3,Trion/Fres);エルツマキソマブ(二特異的HER2/CD3,Fresenius Biotech);オレゴボマブ(OvaRex)(CA−125,ViRexx);Rencarex
(R)(WX G250)(炭酸脱水酵素IX、Wilex);CNTO888(CCL2,Centocor);TRC105(CD105(エンドグリン),Tracon);BMS−663513(CD137アゴニスト,Brystol Myers Squibb);MDX−1342(CD19,Medarex);シプリズマブ(MEDI−507)(CD2,Medimmune);オファツムマブ(Humax−CD20)(CD20,Genmab);リツキシマブ(Rituxan)(CD20,Genentech);ベルツズマブ(hA20)(CD20,Immunomedics);エプラツズマブ(CD22,Amgen);ルミリキシマブ(IDEC152)(CD23,Biogen);ムロモナブ−CD3(CD3,Ortho);HuM291(CD3fc受容体,PDL Biopharma);HeFi−1,CD30,NCI);MDX−060(CD30,Medarex);MDX−1401(CD30,Medarex);SGN−30(CD30,Seattle Genentics);SGN−33(リンツズマブ)(CD33,Seattle Genentics);ザノリムマブ(HuMax−CD4)(CD4,Genmab);HCD122(CD40,Novartis);SGN−40(CD40,Seattle Genentics);Campath1h(アレムツズマブ)(CD52,Genzyme);MDX−1411(CD70,Medarex);hLL1(EPB−1)(CD74.38,Immunomedics);ガリキシマブ(IDEC−144)(CD80,Biogen);MT293(TRC093/D93)(切断されたコラーゲン,Tracon);HuLuc63(CS1,PDL Pharma);イピリムマブ(MDX−010)(CTLA4,Brystol Myers Squibb);トレメリムマブ(チシリムマブ,CP−675,2)(CTLA4,Pfizer);HGS−ETR1(マパツムマブ)(DR4 TRAIL−R1アゴニスト、Human Genome Science/GlaxoSmithKline);AMG−655(DR5,Amgen);アポマブ(DR5,Genentech);CS−1008(DR5,Daiichi Sankyo);HGS−ETR2(レキサツマブ)(DR5 TRAIL−R2 アゴニスト,HGS);セツキシマブ(Erbitux)(EGFR,Imclone);IMC−11F8,(EGFR,Imclone);ニモツズマブ(EGFR,YM Bio);パニツムマブ(Vectabix)(EGFR,Amgen);ザルツムマブ(HuMaxEGFr)(EGFR,Genmab);CDX−110(EGFRvIII,AVANT Immunotherapeutics);アデカツムマブ(MT201)(Epcam,Merck);エドレコロマブ(Panorex,17−1A)(Epcam,Glaxo/Centocor);MORAb−003(葉酸受容体a、Morphotech);KW−2871(ガングリオシドGD3,Kyowa);MORAb−009(GP−9,Morphotech);CDX−1307(MDX−1307)(hCGb,Celldex);トラスツズマブ(Herceptin)(HER2,Celldex);ペルツズマブ(rhuMAb 2C4)(HER2(DI),Genentech);アポリズマブ(HLA−DRβ鎖,PDL Pharma);AMG−479(IGF−IR,Amgen);抗IGF−1R R1507(IGFl−R,Roche);CP 751871(IGF1−R,Pfizer);IMC−A12(IGF1−R,Imclone);BIIB022(IGF−1R,Biogen);Mik−β−1(IL−2Rb(CD122),Hoffman LaRoche);CNTO 328(IL6,Centocor);抗KIR(1−7F9)(Killer細胞Ig様受容体(KIR),Novo);Hu3S193(Lewis(y),Wyeth,Ludwig Institute of Cancer Research);hCBE−11(LTBR,Biogen);HuHMFGl(MUC1,Antisoma/NCI);RAV12(N結合型炭水化物エピトープ,Raven);CAL(副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTH−rP),University of California);CT−011(PD1,CureTech);MDX−1106(ono−4538)(PD1,Medarex/Ono);MAbCT−011(PD1,Curetech);IMC−3G3(PDGFRa,Imclone);バビツキシマブ(ホスファチジルセリン、Peregrine);huJ591(PSMA,Cornell Research Foundation);muJ591(PSMA,Cornell Research Foundation);GC1008(TGFb(pan)阻害剤(IgG4),Genzyme);インフリキシマブ(レミケイド)(TNFa,Centocor);A27.15(トランスフェリン受容体、Salk Institute,INSERNWO2005/111082);E2.3(トランスフェリン受容体、Salk Institute);ベバシズマブ(Avastin)(VEGF,Genentech);HuMV833(VEGF,Tsukuba Research Lab−WO/2000/034337,University of Texas);IMC−18F1(VEGFR1,Imclone);IMC−1121(VEGFR2,Imclone)が含まれる。
【0223】
B.DVD分子の構築:
二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD−Ig)分子は、2つの異なる親モノクローナル由来の2つの異なる軽鎖可変ドメイン(VL)が、組み換えDNA技術によって、直接又は短いリンカーを介して直列に連結され、その後に軽鎖定常ドメインが続くように設計される。同様に、重鎖は、直列に連結された2つの異なる重鎖可変ドメイン(VH)の後に、定常ドメインCH1及びFc領域(
図1A)を含む。
【0224】
可変ドメインは、本明細書に記載されている方法の何れか1つによって作製された親抗体から、組み換えDNA技術を用いて取得することが可能である。一実施形態において、可変ドメインは、マウス重鎖又は軽鎖可変ドメインである。別の実施形態において、可変ドメインは、CDR移植された又はヒト化された可変重鎖又は軽鎖ドメインである。一実施形態において、可変ドメインは、ヒト重鎖又は軽鎖可変ドメインである。
【0225】
一実施形態において、第一及び第二の可変ドメインは、組み換えDNA技術を用いて、互いに直接連結されている。別の実施形態において、可変ドメインは、リンカー配列を介して連結されている。一実施形態において、2つの可変ドメインが連結されている。3つ又はそれ以上の可変ドメインも、直接又はリンカー配列を介して連結され得る。可変ドメインは、同じ抗原を結合し得、又は異なる抗原を結合し得る。本発明のDVD分子は、1つの免疫グロブリン可変ドメイン及び受容体のリガンド結合ドメイン、酵素の活性ドメインなどの1つの非免疫グロブリン可変ドメインを含み得る。DVD分子は、2つ又はそれ以上の非Igドメインも含み得る。
【0226】
リンカー配列は、単一のアミノ酸又はポリペプチド配列であり得る。一実施形態において、リンカー配列は、AKTTPKLEEGEFSEAR(配列番号1);AKTTPKLEEGEFSEARV(配列番号2);AKTTPKLGG(配列番号3);SAKTTPKLGG(配列番号4);SAKTTP(配列番号5);RADAAP(配列番号6);RADAAPTVS(配列番号7);RADAAAAGGPGS(配列番号8);RADAAAA(G
4S)
4(配列番号9)
;SAKTTPKLEEGEFSEARV(配列番号10);ADAAP(配列番号11);ADAAPTVSIFPP(配列番号12);TVAAP(配列番号13);TVAAPSVFIFPP(配列番号14);QPKAAP(配列番号15);QPKAAPSVTLFPP(配列番号16);AKTTPP(配列番号17);AKTTPPSVTPLAP(配列番号18);AKTTAP(配列番号19);AKTTAPSVYPLAP(配列番号20);ASTKGP(配列番号21);ASTKGPSVFPLAP(配列番号22)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号23);GENKVEYAPALMALS(配列番号24);GPAKELTPLKEAKVS(配列番号25);及びGHEAAAVMQVQYPAS(配列番号26)からなる群から選択される。リンカー配列の選択は、幾つかのFab分子の結晶構造分析に基づいている。Fab又は抗体分子構造中の可変ドメインとCH1/CL定常ドメインの間には、天然の柔軟な連結が存在する。この天然の連結は、VドメインのC末端由来の4から6残基及びCL/CH1ドメインのN末端由来の4から6残基によって寄与される約10から12個のアミノ酸残基を含む。本発明のDVDIgは、それぞれ、DVD−Igの軽鎖及び重鎖中のリンカーとしてCL又はCH1のN末端の5から6アミノ酸残基、又は11から12アミノ酸残基を用いて作製された。CL又はCH1ドメインのN末端残基、特に最初の5から6個のアミノ酸残基は、強い二次構造なしにループ立体構造を採り、従って、2つの可変ドメイン間の柔軟なリンカーとして作用することが可能である。CL又はCH1ドメインのN末端残基は、Ig配列の一部であるので、可変ドメインの天然の伸長であり、従って、リンカー及び連結から生じ得るあらゆる免疫原性の大部分を最小限に抑える。
【0227】
他のリンカー配列は、CL/CH1ドメインのあらゆる長さのあらゆる配列を含み得るが、CL/CH1ドメインの全ての残基は含まない。例えば、CL/CH1ドメインの最初の5から12個のアミノ酸残基;軽鎖リンカーは、Cκ又はCλに由来することが可能であり;並びに重鎖リンカーは、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cα1、Cα2、Cδ、Cε及びCμを含む、何れかのイソタイプのCH1に由来することが可能である。リンカー配列は、Ig様タンパク質(例えば、TCR、FcR、KIR)、G/Sを基礎とする配列(例えば、G4Sリピート配列番号27);ヒンジ領域に由来する配列及び他のタンパク質から得られる他の天然配列などの他のタンパク質からも由来し得る。
【0228】
一実施形態において、定常ドメインは、組み換えDNA技術を用いて、2つの連結された可変ドメインに連結されている。一実施形態において、連結された重鎖可変ドメインを含む配列は、重鎖定常ドメインに連結され、連結された軽鎖可変ドメインを含む配列は、軽鎖定常ドメインに連結される。一実施形態において、定常ドメインは、それぞれ、ヒト重鎖定常ドメイン及びヒト軽鎖定常ドメインである。一実施形態において、DVD重鎖は、Fc領域にさらに連結されている。Fc領域は、固有配列のFc領域又は変形物Fc領域であり得る。別の実施形態において、Fc領域は、ヒトFc領域である。別の実施形態において、Fc領域には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE又はIgDから得られるFc領域が含まれる。
【0229】
別の実施形態において、2つの重鎖DVDポリペプチド及び2つの軽鎖DVDポリペプチドは組み合わされて、DVD−Ig分子を形成する。表2は、疾病を治療するのに(例えば、癌を治療するのに)有用な標的に対する典型的な抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列を列記する。一実施形態において、本発明は、何れの方向性でも、表2に列記されているVH及び/又はVL領域の少なくとも2つを含むDVDを提供する。
【0231】
特異的な標的を結合することができる特異的DVD−Ig分子の詳細な説明及びこれを作製する方法は、以下の実施例の部に記載されている。
【0232】
C.DVDタンパク質の作製
本発明の結合タンパク質は、本分野で公知の多数の何れかによって作製され得る。例えば、宿主細胞からの発現において、DVD重鎖及びDVD軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって、宿主細胞中に形質移入される。「形質移入」という用語の様々な形態は、原核又は真核宿主細胞中への外来DNAの導入のために一般に使用される多様な技術、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン形質移入などを包含するものとする。原核又は真核宿主細胞の何れの中でも、本発明のDVDタンパク質を発現することは可能であるが、真核細胞(特に、哺乳動物細胞)は、原核細胞に比べて、適切に折りたたまれ、免疫学的に活性なDVDタンパク質を組み立て及び分泌する傾向がより大きいので、DVDタンパク質は、真核細胞中、例えば、哺乳動物宿主細胞中で発現される。
【0233】
本発明の組換え抗体を発現するための典型的な哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin,(1980) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されており、例えば「R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621」に記載されているようにDHFR選択可能マーカーとともに使用されるdhfr
−CHO細胞を含む。)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2及びPER.C6細胞が含まれる。DVDタンパク質をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞中に導入されると、宿主細胞中でDVDタンパク質の発現を可能とするのに十分な期間にわたって又は、宿主細胞がその中で増殖されている培地中へのDVDタンパク質の分泌を可能とするのに十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって、DVDタンパク質が産生される。DVDタンパク質は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、培地から回収することが可能である。
【0234】
本発明のDVDタンパク質の組換え発現用の典型的なシステムにおいて、リン酸カルシウムによって媒介された形質移入によって、DVD重鎖及びDVD軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、dhfr
−CHO細胞中に導入される。組換え発現ベクター内で、DVD重鎖及び軽鎖遺伝子は、遺伝子の転写の高いレベルを誘導するために、各々、CMVエンハンサー/AdMPLプロモーター制御要素へ作用可能に連結されている。組換え発現ベクターは、メトトレキサート選択/増幅を用いて、ベクターで形質移入されたCHO細胞の選択を可能とするDHFR遺伝子も担持する。選択された形質転換体宿主細胞は、DVD重鎖及び軽鎖の発現を可能とするために培養され、完全な状態のDVDタンパク質が培地から回収される。組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞を形質移入し、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地からDVDタンパク質を回収するために、標準的な分子生物学的技術が使用される。さらに、本発明は、本発明のDVDタンパク質が合成されるまで、適切な培地中で、本発明の宿主細胞を培養することによって、本発明のDVDタンパク質を合成する方法を提供する。本方法は、培地からDVDタンパク質を単離することをさらに含むことが可能である。
【0235】
DVD−Igの重要な特徴は、DVD−Igが、旧来の抗体と同様の様式で作製及び精製され得ることである。DVD−Igの作製は、定常領域の何れの配列修飾もなしに、又は何れの種類の化学的修飾もなしに、所望される二重特異的活性を有する均一な単一主要産物をもたらす。「二特異的」、「多重特異的」及び「多重特異的多価」完全長結合タンパク質を作製するための他の以前に記載された方法は、単一の主要産物をもたらさず、代わりに、集合した不活性な単一特異的、多重特異的、多価の完全長結合タンパク質と、異なる結合部位の組み合わせを有する多価完全長結合タンパク質との混合物の細胞内産生又は分泌された産生をもたらす。例として、Miller and Presta(PCT公開WO2001/077342(A1))によって記載された設計に基づいて、重鎖及び軽鎖の16の可能な組み合わせが存在する。その結果、タンパク質の僅か6.25%が、所望の活性形態であり、他の15個の可能な可能性と比べて、単一の主要な産物又は単一の主な産物として存在しない可能性がある。典型的には、大規模な製造において使用される標準的クロマトグラフィー技術を用いて、タンパク質の所望される完全に活性な形態を、タンパク質の不活性な形態及び部分的に活性な形態から分離することは、未だ示されていない。
【0236】
驚くべきことに、本発明の「二重特異的多価完全長結合タンパク質」の設計は、主として、所望される「二重特異的多価完全長結合タンパク質」へ集合する二重可変ドメイン軽鎖及び二重可変ドメイン重鎖をもたらす。
【0237】
集合され、及び発現された二重可変ドメイン免疫グロブリン分子の少なくとも50%、好ましくは75%及びより好ましくは90%が、所望される二重特異的四価タンパク質である。本発明の本態様は、特に、本発明の商業的な利用を強化する。従って、本発明は、単一の細胞中で二重可変ドメイン軽鎖及び二重可変ドメイン重鎖を発現し、「二重特異的四価完全長結合タンパク質」の単一の主要産物をもたらす方法を含む。
【0238】
本発明は、単一の細胞中で二重可変ドメイン軽鎖及び二重可変ドメイン重鎖を発現し、「二重特異的四価完全長結合タンパク質」の「主要産物」をもたらす方法を提供し、ここで、「主要産物」は、二重可変ドメイン軽鎖及び二重可変ドメイン重鎖を含む全ての集合されたタンパク質の50%を上回る。
【0239】
本発明は、単一の細胞中で二重可変ドメイン軽鎖及び二重可変ドメイン重鎖を発現し、「二重特異的四価完全長結合タンパク質」の単一の「主要産物」をもたらすより方法を提供し、ここで、「主要産物」は、二重可変ドメイン軽鎖及び二重可変ドメイン重鎖を含む全ての集合されたタンパク質の75%を上回る。
【0240】
本発明は、単一の細胞中で二重可変ドメイン軽鎖及び二重可変ドメイン重鎖を発現し、「二重特異的四価完全長結合タンパク質」の単一の「主要産物」をもたらす方法を提供し、ここで、「主要産物」は、二重可変ドメイン軽鎖及び二重可変ドメイン重鎖を含む全ての集合されたタンパク質の90%を上回る。
【0241】
II.誘導体化されたDVD結合タンパク質:
一実施形態は、標識された結合タンパク質を提供し、ここで、本発明の結合タンパク質は、別の機能的分子(例えば、別のペプチド又はタンパク質)へ誘導体化され、又は連結される。例えば、本発明の標識された結合タンパク質は、別の抗体(例えば、二特異的抗体又はダイアボティ)、検出可能な因子、細胞毒性剤、薬剤及び/又は別の分子(ストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグなど)との、結合タンパク質の会合を媒介可能なタンパク質若しくはペプチドなどの1つ又はそれ以上の他の分子実体へ、(化学的カップリング、遺伝的融合、非共有会合又はその他によって)本発明の結合タンパク質を機能的に連結することによって誘導することが可能である。
【0242】
本発明の結合タンパク質を誘導体化し得る有用な検出可能因子には、蛍光化合物が含まれる。典型的な蛍光検出可能因子には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリンなどが含まれる。結合タンパク質は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出可能な酵素でも誘導体化され得る。結合タンパク質が検出可能な酵素で誘導体化される場合には、検出可能な反応産物を生成させるために、本酵素が使用するさらなる試薬を添加することによって結合タンパク質が検出される。例えば、検出可能因子西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合には、過酸化水素及びジアミノベンジジンの添加は、検出可能な発色した反応産物をもたらす。結合タンパク質は、ビオチンを用いて誘導体化し、アビジン又はストレプトアビジン結合の間接的な測定を通じても検出され得る。
【0243】
本発明の別の実施形態は、結晶化された結合タンパク質並びにこのような結晶を含む製剤及び組成物を提供する。一実施形態において、結晶化された結合タンパク質は、結合タンパク質の可溶性対応物より大きなインビボ半減期を有する。別の実施形態において、結合タンパク質は、結晶化後の生物活性を保持する。
【0244】
本発明の結晶化された結合タンパク質は、本分野で公知の方法に従って、及びWO02072636(参照により、本明細書に組み込まれる。)に開示されているように産生され得る。
【0245】
本発明の別の実施形態は、抗体又はその抗原結合部分が1つ又はそれ以上の炭水化物残基を含む、グリコシル化された結合タンパク質を提供する。新生インビボタンパク質産生は、翻訳後修飾として知られるさらなるプロセッシングを経ることがあり得る。特に、糖(グリコシル)残基は、酵素的に付加され得る(グリコシル化として知られる過程)。共有結合されたオリゴ糖側鎖を有する得られたタンパク質は、グリコシル化されたタンパク質又は糖タンパク質として知られる。抗体は、Fcドメイン中、及び可変ドメイン中に1つ又はそれ以上の炭水化物残基を有する糖タンパク質である。Fcドメイン中の炭水化物残基は、抗体の抗原結合又は半減期に対する効果を最小限に抑えながら、Fcドメインのエフェクター機能に対して重要な効果を有する(R.Jefferis,Biotechnol.Prog.21(2005),pp.11−16)。これに対して、可変ドメインのグリコシル化は、抗体の抗原結合活性に対して影響を及ぼし得る。可変ドメイン中のグリコシル化は、おそらくは、立体的な妨害のために、抗体結合親和性に対して負の影響を有し得(Co,M.S.,et al.,Mol.Immunol.(1993)30:1361−1367)又は抗原に対する増加した親和性をもたらし得る(Wallick,S.C.,et al.,Exp.Med.(1988)168:1099−1109;Wright,A.,et al.,EMBO J.(1991)10:2717 2723)。
【0246】
本発明の一態様は、結合タンパク質のO結合型又はN結合型グリコシル化部位が変異されているグリコシル化部位変異体を作製することに関する。当業者は、標準的な周知の技術を用いて、このような変異体を作製することが可能である。生物学的活性を保持するが、増加又は減少した結合活性を有するグリコシル化部位変異体が、本発明の別の目的である。
【0247】
さらに別の実施形態において、本発明の抗体又は抗原結合部分のグリコシル化は修飾される。例えば、無グリコシル化抗体を作製することが可能である(すなわち、抗体は、グリコシル化を欠如する。)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるために改変することが可能である。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ又はそれ以上の部位を変化させることによって達成することが可能である。例えば、それによって、当該部位のグリコシル化を除去するために、1つ又はそれ以上の可変領域グリコシル化部位の除去をもたらす1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を施すことが可能である。このような無グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。このようなアプローチは、PCT公開WO2003016466A2並びに米国特許第5,714,350号及び米国特許第6,350,861号(これらの各々の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に、さらに詳しく記載されている。
【0248】
これに加えて又はこれに代えて、フコシル残基の減少した量を有する低フコシル化抗体(Kanda, Yutaka et al., Journal of Biotechnology (2007), 130(3), 300−310参照)又は増加した二分岐GlcNAc構造を有する抗体など、グリコシル化の変化した種類を有する本発明の修飾された結合タンパク質を作製することが可能である。このような変化されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが示されている。このような炭水化物修飾は、例えば、変化したグリコシル化機構を有する宿主細胞中で抗体を発現させることによって達成することが可能である。変化したグリコシル化機構を有する細胞は本分野において記載されており、その中で、本発明の組み換え抗体を発現させることによって、変化したグリコシル化を有する抗体を産生するための宿主細胞として使用することができる。例えば、Shields,R.L. et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740;Umana et al.(1999) Nat.Biotech.17:176−1及び欧州特許EP1,176,195;PCT公開WO03/035835;WO99/5434280(これらの各々の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。
【0249】
タンパク質グリコシル化は、対象のタンパク質のアミノ酸配列及びその中でタンパク質が発現される宿主細胞に依存する。異なる生物は、異なるグリコシル化酵素(例えば、グリコシル転移酵素及びグリコシダーゼ)を産生し得、利用可能な異なる基質(ヌクレオチド糖)を有し得る。このような要因のために、タンパク質グリコシル化パターン及びグリコシル残基の組成は、当該タンパク質がその中で発現されている宿主系に応じて異なり得る。本発明において有用なグリコシル残基には、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n−アセチルグルコサミン及びシアル酸が含まれ得るが、これらに限定されない。一実施形態において、グリコシル化された結合タンパク質は、グリコシル化パターンがヒトであるように、グリコシル残基を含む。
【0250】
異なるタンパク質グリコシル化は異なるタンパク質特性をもたらし得ることが、当業者に公知である。例えば、酵母などの微生物宿主中で産生され、酵母内在経路を用いてグリコシル化された治療用タンパク質の効力は、CHO細胞株などの哺乳動物細胞中で発現された同じタンパク質の効力と比べて低下され得る。また、このような糖タンパク質は、ヒトにおいて免疫原性であり得、投与後に、減少したインビボ半減期を示し得る。ヒト及び他の動物中の特異的な受容体は、特異的なグリコシル残基を認識し得、血流からのタンパク質の迅速な排除を促進し得る。他の有害な効果は、タンパク質の折り畳み、溶解度、プロテアーゼに対する感受性、運搬、輸送、区画化、分泌、他のタンパク質又は因子による認識、抗原性又はアレルギー誘発性の変化が含まれ得る。従って、当業者は、グリコシル化の特異的な組成及びパターン、例えば、ヒト細胞中又は意図される対象動物の種特異的細胞中で産生されるものと同一又は少なくとも類似のグリコシル化組成及びパターンを有する治療タンパク質を選択し得る。
【0251】
宿主細胞のものとは異なるグリコシル化されたタンパク質を発現することは、異種グリコシル化酵素を発現するために宿主細胞を遺伝的に修飾することによって達成され得る。本分野で公知の技術を使用して、当業者は、ヒトタンパク質グリコシル化を呈する抗体又はその抗原結合部分を作製し得る。例えば、酵母株中で産生されたグリコシル化されたタンパク質(糖タンパク質)が、動物細胞、特にヒト細胞のものと同一のタンパク質グリコシル化を呈するように(米国特許出願第20040018590号及び米国特許出願第20020137134号並びにPCT公開WO2005100584A2)、酵母株は、天然に存在しないグリコシル化酵素を発現するように遺伝的に修飾されている。
【0252】
結合タンパク質に加えて、本発明は、本発明のこのような結合タンパク質に対して特異的な抗イディオタイプ(抗Id)抗体にも関する。抗Id抗体は、別の抗体の抗原結合領域に一般的に付随する固有の決定基を認識する抗体である。抗Idは、結合タンパク質又はそのCDR含有領域で動物を免疫化することによって調製することが可能である。免疫された動物は、免疫抗体のイディオタイプ決定基を認識し、これに応答し、及び抗Id抗体を産生する。DVD−Ig分子中に取り込まれた2つ又はそれ以上の親抗体に対する抗イディオタイプ抗体を作製し、各親抗体のイディオタイプに対して特異的な抗イディオタイプ抗体がDVD−Igにおけるイディオタイプ(例えば、抗原結合部位)も認識することを確かめるために、本分野で十分に認知されている方法(例えば、BIAcore、ELISA)による結合研究を確認することがより容易であることは自明である。DVD−Igの2つ又はそれ以上の抗原結合部位の各々に対して特異的な抗イディオタイプ抗体は、ヒト患者血清中のヒトDVD−IgのDVD−Ig濃度を測定するための理想的な試薬を提供する。DVD−Ig濃度アッセイは、第一の抗原結合領域に対する抗体が固相(例えば、BIAcoreチップ、ELISAプレートなど)上に被覆され、濯ぎ緩衝液で濯ぎ、血清試料との温置、別の濯ぎ工程及びそれ自体結合反応の定量用酵素で標識された別の抗原結合部位に対する別の抗イディオタイプ抗体とともに最終的に温置する「サンドイッチアッセイELISAフォーマット」を使用して確立することが可能である。一実施形態において、3以上の異なる結合部位を有するDVD−Igに関して、2つの最も外側の結合部位(定常領域から最も遠い及び近い)に対する抗イディオタイプ抗体は、ヒト血清中のDVD−Ig濃度を測定するのに役立つのみならず、インビボでの分子の完全性も記述する。各抗Id抗体は、いわゆる抗抗Id抗体を産生するさらに別の動物中に免疫応答を誘導するための「免疫原」としても使用し得る。
【0253】
さらに、ライブラリーのメンバー宿主細胞が変形物グリコシル化パターンを有する目的のタンパク質を産生するように、様々なグリコシル化酵素を発現するように遺伝学的に改変された宿主細胞のライブラリーを用いて、目的のタンパク質を発現させ得ることが、当業者によって理解されている。次いで、当業者は、特定の新規グリコシル化パターンを有する目的のタンパク質を選択及び単離し得る。一実施形態において、特に選択された新規グリコシル化パターンを有するタンパク質は、改善又は改変された生物学的特性を示す。
【0254】
III.DVD−Igの使用
本発明の結合タンパク質は2つ又はそれ以上の抗原に結合することができるので、本発明の結合タンパク質は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は組織免疫組織化学など慣用のイムノアッセイを用いて、(例えば、血清又は血漿などの生物学的試料中で)抗原を検出するために使用することが可能である。DVD−Igは、結合した又は結合していない抗体の検出を促進するために、検出可能な物質で直接又は間接的に標識される。適切な検出可能な物質には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質及び放射性物質が含まれる。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれる。適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれる。適切な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンが含まれる。発光物質の例には、ルミノールが含まれる;及び適切な放射性材料の例には、
3H、
14C
、35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I、
177Lu、
166Ho又は
153Smが含まれる。
【0255】
一実施形態において、本発明の結合タンパク質は、インビトロ及びインビボの両者で、抗原の活性を中和することができる。従って、このようなDVD−Igは、例えば、抗原を含有する細胞培地中で、ヒト対象中で、本発明の結合タンパク質が交叉反応する抗原を有するその他の哺乳動物対象中で、抗原活性を阻害するために使用することができる。別の実施形態において、本発明は、抗原活性が有害である疾病又は疾患に罹患している対象中の抗原活性を低下させる方法を提供する。本発明の結合タンパク質は、治療目的のために、ヒト対象に投与することができる。
【0256】
本明細書において使用される「抗原活性が有害である疾患」という用語は、本疾患に罹患している対象中での抗原の存在が、疾患の病態生理の原因であることが示され若しくは疑われ又は疾患の悪化に寄与している因子であることが示され若しくは疑われている疾病及びその他の疾患を含むものとする。従って、抗原活性が有害である疾患は、抗原活性の低下が疾患の症候及び/又は進行を緩和することが予測される疾患である。このような疾患は、例えば、本疾患に罹患している患者の生物学的液体中の抗原濃度の増加(例えば、対象の血清、血漿、滑液中などの抗原の濃度の増加)によって明らかとされ得る。本発明の結合タンパク質で治療することが可能な疾患の非限定的な例には、以下に、及び本発明の抗体の医薬組成物に関するセクションに論述されている疾患が含まれる。
【0257】
本発明のDVD−Igは、1つの抗原又は複数の抗原を結合し得る。このような抗原には、以下のデータベース(データベースは、参照により、本明細書に組み込まれる。)に列記されている標的が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの標的データベースには、以下のリストが含まれる。
【0258】
治療の標的(http://xin.cz3.nus.edu.sg/group/cjttd/ttd.asp);
サイトカイン及びサイトカイン受容体(http://www.cytokinewebfacts.com/、http://www.copewithcytokines.de/cope.cgi及びhttp://cmbi.bjmu.edu.cn/cmbidata/cgf/CGF
Database/cytokine.medic.kumamoto−u.ac.jp/CFC/indexR.html);
ケモカイン(http://cytokine.medic.kumamoto−u.ac.jp/CFC/CK/Chemokine.html);
ケモカイン受容体及びGPCR(http://csp.medic.kumamoto−u.ac.jp/CSP/Receptor.html、http://www.gpcr.org/7tm/);
嗅覚受容体(http://senselab.med.yale.edu/senselab/ORDB/default.asp);
受容体(http://www.iuphar−db.org/iuphar−rd/list/index.htm);
癌標的(http://cged.hgc.jp/cgi−bin/input.cgi);
潜在的な抗体標的としての分泌タンパク質(http://spd.cbi.pku.edu.cn/);
タンパク質キナーゼ(http://spd.cbi.pku.edu.cn/)並びに
ヒトCDマーカー(http://content.labvelocity.com/tools/6/1226/CD
table
final
locked.pdf)及び(Zola H,2005 CD molecules 2005:human cell differentiation molecules Blood,106:3123−6)。
【0259】
DVD−Igは、効力/安全を増強し、及び/又は患者の範囲を増加させるために、2つの異なる標的を同時に遮断するための治療剤として有用である。このような標的は、可溶性標的(TNF)及び細胞表面受容体標的(VEGFR及びEGFR)が含まれ得る。このような標的は、癌療法のために腫瘍細胞とT細胞(Her2とCD3)との間に、又は自己免疫疾患若しくは移植のために自己反応性細胞とエフェクター細胞の間に、又はある所定の疾病において疾病を引き起こす細胞を除去するために何れかの標的細胞とエフェクター細胞の間に、再誘導された細胞障害を誘導するために使用することも可能である。
【0260】
さらに、同一受容体上の2つの異なるエピトープを標的とするように設計されている場合には、DVD−Igは、受容体のクラスタリング及び活性化を惹起するために使用することが可能である。これは、アゴニスト及びアンタゴニスト作用を有する抗GPCR治療剤を作製する上で有用性を有し得る。この場合には、DVD−Igは、クラスタリング/シグナル伝達(2つの細胞表面分子)又はシグナル伝達(1つの分子上)のために、1つの細胞上に存在する2つの異なるエピトープ(ループ領域及び細胞外ドメインの両方の上のエピトープを含む。)を標的とするために使用することが可能である。同様に、DVD−Ig分子は、CTLA−4連結、及びCTLA−4細胞外ドメインの2つの異なるエピトープ(又は同一エピトープの2コピー)を標的として免疫応答の下方制御をもたらすことによって、負のシグナルを惹起するように設計することが可能である。CTLA−4は、多数の免疫学的疾患の治療的処置に対して、臨床的に妥当性が確認された標的である。CTLA−4/B7相互作用は、細胞周期の進行、IL−2産生及び活性化に続くT細胞の増殖を弱化することによって、T細胞活性化を負に制御し、CTLA−4(CD152)の拘束は、T細胞の活性化を下方制御し、免疫寛容の誘導を促進することができる。しかしながら、CTLA−4の活性化は連結を必要とするので、アゴニスト性抗体によるCTLA−4の拘束によって、T細胞の活性化を弱化するという戦略は成功を収めていない。CTLA−4/B7の分子相互作用は、結晶構造分析によって示されたように(Stamper 2001 Nature410:608)、「歪んだジッパー」アレイである。しかしながら、抗CTLA−4mAbを含む、現在利用可能なCTLA−4結合試薬は何れも、連結特性を有しない。この問題に対処するために、幾つかの試みが行われてきた。1つの事例では、細胞要素が結合された一本鎖抗体が作製され、マウス中での同種異系拒絶を著しく阻害した(Hwang 2002 JI 169:633)。別の事例では、人工のAPC表面に連結された、CLTA−4に対する一本鎖抗体が作製され、T細胞応答を弱化させることが示された(Griffin 2000 JI 164:4433)。何れの事例でも、人工の系内に近接して配置された膜結合型抗体によって、CTLA−4連結が達成された。これらの実験は、CTLA−4の負のシグナル伝達を引き起こすことによる免疫の下方制御という概念に対する証明を与えるが、これらの報告で使用された試薬は、治療的用途には適していない。この目的のために、CTLA−4細胞外ドメインの2つの異なるエピトープ(又は同一エピトープの2コピー)を標的とするDVD−Ig分子を使用することによって、CTLA−4連結が達成され得る。論拠は、IgGの2つの結合部位を貫く距離(約150から170Å)が、CTLA−4の活性な連結(2個のCTLA−4ホモ二量体間で30から50Å)には大きすぎるということである。しかしながら、DVD−Ig(1つのアーム)上の2つの結合部位間の距離はずっと短く、30から50Åの範囲にあるので、CTLA−4の適切な連結を可能とする。
【0261】
同様に、DVD−Igは、細胞表面受容体複合体の2つの異なる要素(例えば、IL−12Rα及びβ)を標的とすることが可能である。さらに、DVD−Igは、標的可溶性タンパク質/病原体の迅速な排除を誘導するために、CR1及び可溶性タンパク質/病原体を標的とすることが可能である。
【0262】
さらに、本発明のDVD−Igは、細胞内送達(内部移行受容体及び細胞内分子を標的化すること)、脳内への送達(脳血液関門を横切るために、トランスフェリン受容体及び中枢神経系疾患媒介物質を標的化すること)など、組織特異的な送達(増強された局所PKにより、より高い効力及び/又はより低い毒性を得るために、組織マーカー及び疾病媒介物質を標的とすること)のために使用することが可能である。DVD−Igは、その抗原の非中和エピトープへの結合を介して特異的な位置へ抗原を送達するための担体タンパク質としての役割も果たすことができ、抗原の半減期を増加させることも可能である。さらに、DVD−Igは、患者中に植え込まれた医療用具に物理的に連結され、又はこれらの医療用具を標的とするように設計することが可能である(Burke,Sandra E.;Kuntz,Richard E.;Schwartz,Lewis B.,Zotarolimus eluting stents.Advanced Drug Delivery Reviews(2006),58(3),437−446;Surface coatings for biological activation and functionalization of medical devices,Hildebrand,H.F.;Blanchemain,N.;Mayer,G.;Chai,F.;Lefebvre,M.;Boschin,F.,Surface and Coatings Technology(2006),200(22−23),6318−6324;Drug/ device combinations for local drug therapies and infection prophylaxis,Wu,Peng;Grainger,David W.,Biomaterials(2006),27(11),2450−2467;Mediation of the cytokine network in the implantation of orthopedic devices.,Marques,A. P.;Hunt,J. A.;Reis,Rui L.,Biodegradable Systems in Tissue Engineering and Regenerative Medicine(2005),377−397参照)。要約すれば、医療用インプラントの部位へ、細胞の適切な種類を誘導することは、正常な組織機能の治癒及び回復を促進し得る。あるいは、用具に連結されたDVD、又は用具を標的とするDVDによって、装置の植え込み時に放出される媒介物質(サイトカインが含まれるが、これに限定されない。)の阻害も提供される。例えば、封鎖された動脈をきれいにし、心筋への血流を改善するために、介入的心臓病学において、長年にわたってステントが使用されている。しかしながら、伝統的な地金ステントは、一部の患者に、再狭窄(治療された領域中の動脈が再び狭くなること)を引き起こすことが知られており、血栓を引き起こし得る。最近、抗CD34抗体によって被覆されたステントが記載されており、これは、再狭窄を軽減し、血液全体を循環している内皮前駆細胞(EPC)を捕捉することによって、血液凝固の発生を予防する。内皮細胞は、血管に整列している細胞であり、血液が滑らかに流れるようにしている。EPCは、ステントの硬い表面に付着して滑らかな層を形成し、この層は、治癒を促進するのみならず、従来ステントの使用に付随してきた合併症である再狭窄及び血液凝固を予防する(Aoji et al.2005 J Am Coll Cardiol.45(10):1574−9)。ステントを必要としている患者に対する結果を改善させることに加えて、心血管バイパス手術を必要としている患者に対しても改善が示唆されている。例えば、抗EPC抗体で被覆された人工血管導管(人工動脈)は、バイパス手術移植のために、患者の足又は腕からの動脈を使用する必要性をなくする。これは、手術及び麻酔時間を短縮し、それにより、冠動脈手術死を低下させる。DVD−Igは、細胞動員を促進するために、植え込まれた装置上に被覆された、細胞表面マーカー(CD34など)及びタンパク質(又は、タンパク質、脂質及び多糖を含む(但し、これらに限定されない。)あらゆる種類のエピトープ)に結合するように設計されている。このようなアプローチは、一般的に、他の医療用インプラントに対しても適用することが可能である。あるいは、DVD−Igは、医療用具上に被覆することも可能であり、植え込まれた時に、(又はすでに充填されたDVD−Igの老朽化及び変性など、さらなる新鮮なDVD−Igを必要とし得る全ての他の要請に応じて)用具から全てのDVDを放出し、装置は、新鮮なDVD−Igを患者に全身投与することによって、最充填することが可能であり、この場合、DVD−Igは、結合部位の1セットを有する目的標的(サイトカイン、細胞表面マーカー(CD34など)など)に結合し、及び結合部位の他のセットを有する装置上に被覆された標的(タンパク質、あらゆる種類のエピトープ(脂質、多糖及びポリマーを含むが、これらに限定されない。)を含む。)に結合するように設計されている。この技術は、被覆されたインプラントの有用性を拡張するという利点を有している。
【0263】
A.様々な疾病におけるDVD−Igの使用
本発明のDVD−Ig分子は、様々な疾病を治療するための治療分子としても有用である。このようなDVD分子は、特定の疾病に関与する1つ又はそれ以上の標的を結合し得る。様々な疾病におけるこのような標的の例が、以下に記載されている。
【0264】
1.ヒト自己免疫及び炎症性応答
C5、CCL1(1−309)、CCL11(エオタキシン)、CCL13(mcp−4)、CCL15(MIP−1d)、CCL16(HCC−4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19、CCL2(mcp−1)、CCL20(MIP−3a)、CCL21(MIP−2)、CCL23(MPIF−1)、CCL24(MPIF−2/エオタキシン−2)、CCL25(TECK)、CCL26、CCL3(MIP−1a)、CCL4(MIP−1b)、CCL5(RANTES)、CCL7(mcp−3)、CCL8(mcp−2)、CXCL1、CXCL10(IP−10)、CXCLIl(I−TAC/IP−9)、CXCL12(SDFl)、CXCL13、CXCL14、CXCL2、CXCL3、CXCL5(ENA−78/LIX)、CXCL6(GCP−2)、CXCL9、IL13、IL8、CCL13(mcp−4)、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CX3CR1、IL8RA、XCR1(CCXCR1)、IFNA2、IL10、IL13、IL17C、IL1A、IL1B、IL1F10、IL1F5、IL1F6、IL1F7、IL1F8、IL1F9、IL22、IL5、IL8、IL9、LTA、LTB、MIF、SCYE1(内皮単球活性化サイトカイン)、SPP1、TNF、TNFSF5、IFNA2、IL10RA、IL10RB、IL13、IL13RA1、IL5RA、IL9、IL9R、ABCF1
、BCL6、C3、C4A、CEBPB、CRP、ICEBERG、IL1R1、IL1RN、IL8RB、LTB4R、TOLLIP、FADD、IRAK1、IRAK2、MYD88、NCK2、TNFAIP3、TRADD、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、ACVR1、ACVR1B、ACVR2、ACVR2B、ACVRL1、CD28、CD3E、CD3G、CD3Z、CD69、CD80、CD86、CNR1、CTLA4、CYSLTR1、FCER1A、FCER2、FCGR3A、GPR44、HAVCR2、OPRD1、P2RX7、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、BLR1、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL11、CCL13、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCR4、GPR2、SCYE1、SDF2、XCL1、XCL2、XCR1、AMH、AMHR2、BMPR1A、BMPR1B、BMPR2、C19orf10(IL27w)、CER1、CSF1、CSF2、CSF3、DKFZp451J0118、FGF2、GFI1、IFNA1、IFNB1、IFNG、IGF1、IL1A、IL1B、IL1R1、IL1R2、IL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL4、IL4R、IL5、IL5RA、IL6、IL6R、IL6ST、IL7、IL8、IL8RA、IL8RB、IL9、IL9R、IL10、IL10RA、IL10RB、IL11、IL11RA、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL13、IL13RA1、IL13RA2、IL15、IL15RA、IL16、IL17、IL17R、IL18、IL18R1、IL19、IL20、KITLG、LEP、LTA、LTB、LTB4R、LTB4R2、LTBR、MIF、NPPB、PDGFB、TBX21、TDGF1、TGFA、TGFB1、TGFB1I1、TGFB2、TGFB3、TGFBI、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、TH1L、TNF、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF11A、TNFRSF21、TNFSF4、TNFSF5、TNFSF6、TNFSF11、VEGF、ZFPM2及びRNF110(ZNF144)など、多くのタンパク質が、一般的な自己免疫及び炎症性応答に関与していると推定されている。一態様において、本明細書に列記されている標的の1つ又はそれ以上を結合することが可能なDVD−Igが提供される。
【0265】
2.喘息
アレルギー性喘息は、好酸球増加症、杯細胞異形成、上皮細胞の変化、気道過敏症(AHR)並びにTh2及びTh1サイトカイン発現並びに上昇した血清IgEレベルの存在によって特徴付けられる。気道炎症が、喘息の発病の基礎を成す中心的な因子であることは、現在では広く受け入れられており、T細胞、B細胞、好酸球、肥満細胞及びマクロファージなどの炎症性細胞と、サイトカイン及びケモカインなどの分泌されるこれらの媒介物質の複雑な相互作用が関与している。コルチコステロイドは、今日、喘息に対する最も重要な抗炎症性治療であるが、それらの作用機序は非特異的であり、特に、若い患者集団では、安全性についての懸念が存在する。従って、より特異的で、標的化された治療の開発が必要とされる。マウス中のIL−13が、好酸球性炎症とは独立に、AHR、粘膜の過剰分泌及び気道繊維症など、喘息の特徴の多くを模倣するという、証拠が増加している。(Finotto et al.,International Immunology(2005),17(8),993−1007;Padilla et al.,Journal of Immunology(2005),174(12),8097−8105)。
【0266】
IL−13は、喘息を伴う病的応答を引き起こす上で中心的な役割を有すると推定されている。肺でのIL−13の効果を抑制するための抗IL−13mAb療法の開発は、喘息のための新規治療としてかなりの有望性を与える、刺激的な新しいアプローチである。しかしながら、異なる免疫学的経路の他の媒介物質も喘息の発病に関与しており、IL−13に加えて、これらの媒介物質を遮断することは、さらなる治療的利点を与え得る。このような標的対には、IL−13及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α)などの炎症促進性サイトカインが含まれるが、これに限定されるものではない。TNF−αは、喘息における炎症性応答を増幅し得、疾病の重度と関連し得る(McDonnell,et al.,Progress in Respiratory Research(2001),31(New Drugs for Asthma,Allergy and COPD),247−250)。これは、IL−13及びTNF−αの両方を遮断し、特に、重い気道疾病において、有益な効果を有し得ることを示唆する。別の実施形態において、本発明のDVD−Igは、標的であるIL−13及びTNFαを結合し、喘息を治療するために使用される。
【0267】
炎症及びAHRをともに評価することができる、OVAによって誘導された喘息マウスモデルなどの動物モデルが本分野において公知であり、様々なDVD−Ig分子が喘息を治療する能力を測定するために使用し得る。喘息を研究するための動物モデルは、Coffman,et al.,Journal of Experimental Medicine(2005),201(12),1875−1879;Lloyd,et al.,Advances in Immunology(2001),77,263−295;Boyce et al.,Journal of Experimental Medicine(2005),201(12),1869−1873;及びSnibson,et al.,Journal of the British Society for Allergy and Clinical Immunology(2005),35(2),146−52に開示されている。これらの標的対の定型的な安全性評価に加えて、免疫抑制の程度に対する特異的検査が保証され、最高の標的対を選択する上で役立ち得る(Luster et al.,Toxicology(1994),92(1−3),229−43;Descotes,et al.,Developments in biological standardization(1992),77 99−102;Hart et al.,Journal of Allergy and Clinical Immunology(2001),108(2),250−257参照)。
【0268】
本明細書に開示されている論拠に基づいて、並びに効力及び安全性のための同じ評価モデルを使用して、DVD−Ig分子が結合することができ、喘息を治療するために有用であり得る他の標的対を決定し得る。IL−1βは、喘息における炎症応答にも関与が推定されているので、一実施形態において、このような標的には、IL−13及びIL−1β;IL−13及びIL−9など、炎症に関与しているIL−13及びサイトカイン及びケモカイン;IL−13及びIL−4;IL−13及びIL−5;IL−13及びIL−25;IL−13及びTARC;IL−13及びMDC;IL−13及びMIF;IL−13及びTGF−β;IL−13及びLHRアゴニスト;IL−13及びCL25;IL−13及びSPRR2a;IL−13及びSPRR2b;並びにIL−13及びADAM8が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明は、CSF1(MCSF)、CSF2(GM−CSF)、CSF3(GCSF)、FGF2、IFNA1、IFNB1、IFNG、ヒスタミン及びヒスタミン受容体、IL1A、IL1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18、IL19、KTILG、PDGFB、IL2RA、IL4R、IL5RA、IL8RA、IL8RB、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL18R1、TSLP、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL13、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL22、CCL24,CX3CL1、CXCL1、CXCL2、CXCL3、XCL1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CX3CR1、GPR2、XCR1、FOS、GATA3、JAK1、JAK3、STAT6、TBX21、TGFB1、TNF、TNFSF6、YY1、CYSLTR1、FCER1A、FCER2、LTB4R、TB4R2、LTBR及びキチナーゼからなる群から選択される、喘息に関与している1つ又はそれ以上の標的を結合することが可能なDVD−Igも提供する。
【0269】
3.関節リウマチ
全身性疾患である関節リウマチ(RA)は、関節の滑液中の慢性的炎症反応によって特徴付けられ、軟骨の変性と隣接する関節骨の磨耗を伴う。TNF、ケモカイン及び成長因子など、多くの炎症促進性サイトカインが、罹患した関節中に発現されている。抗TNF抗体又はsTNFR融合タンパク質の、RAのマウスモデルへの全身投与は、抗炎症性及び関節保護的であることが示された。RA患者中のTNFの活性が、静脈内に投与されたインフリキシマブ(キメラ抗TNFモノクローナル抗体(mAB))で遮断された臨床的調査(Harriman G,Harper LK,Schaible TF.1999 Summary of clinical trials in rheumatoid arthritis using infliximab,an anti−TNFalpha treatment.Ann Rheum Dis 58 Suppl 1:161−4)は、TNFがIL−6、IL−8、MCP−1及びVEGF産生、免疫及び炎症性細胞の関節中への動員、血管新生並びにマトリックスメタロプロテイナーゼ−1及び−3の血液レベルの低下を制御するという証拠を提供した。関節リウマチにおける炎症性経路をより深く理解することによって、関節リウマチに関与する他の治療標的の同定に結びついた。過去、インターロイキン−6アンタゴニスト(Chugai,Rocheによって開発されたIL−6受容体抗体MRA(Nishimoto,Norihiro et al.,Arthritis & Rheumatism(2004)、50(6),1761−1769参照))、CTLA4Ig(アバタセプト、Genovese Mc et al 2005 Abatacept for rheumatoid arthritis refractory to tumor necrosis factor alpha inhibition.N Engl J Med.353:1114−23.)、及び抗B細胞療法(リツキシマブ、Okamoto H,Kamatani N. 2004 Rituximab for rheumatoid arthritis.N Engl J Med.351:1909)などの有望な治療が、無作為の対照化された臨床試験において既に検査されてきた。インターロイキン−15(治療用抗体HuMax−IL
15,AMG714 Baslund,Bo et al.,Arthritis & Rheumatism(2005),52(9),2686−2692)、インターロイキン−17及びインターロイキン−18など、他のサイトカインが同定され、動物モデルにおいて有益であることが示されており、これらの因子の臨床試験が現在進行中である。抗TNF及び別の媒介物質を組み合わせた二重特異的抗体療法は、臨床的効力及び/又は患者の対象範囲を増大させる上で大きな可能性を秘めている。例えば、TNFとVEGF(何れも、RAの病態生理学に関与している。)の両方を遮断することは、炎症及び血管新生を根絶することができる可能性を秘めている。TNF及びIL−18;TNF及びIL−12;TNF及びIL−23;TNF及びIL−1β;TNF及びMIF;TNF及びIL−17;並びにTNF及びIL−15を含む(但し、これらに限定されない。)、RAに関与している標的の他の対を、特異的DVDIgで遮断することも想定される。これらの標的対の定型的な安全性評価に加えて、免疫抑制の程度に対する特異的検査が保証され、最高の標的対を選択する上で役立ち得る(Luster et al.,Toxicology(1994),92(1−3),229−43;Descotes,et al.,Developments in biological standardization(1992),77 99−102;Hart et al.,Journal of Allergy and Clinical Immunology(2001),108(2),250−257参照)。DVDIg分子が関節リウマチの治療に対して有用であるかどうかは、コラーゲンによって誘導された関節炎マウスモデルなど、前臨床動物RAモデルを用いて評価することが可能である。他の有用なモデルも本分野において周知である(Brand DD.,Comp Med.(2005) 55(2):114−22参照)。ヒト及びマウスのオルソログ(例えば、ヒト及びマウスTNF、ヒト及びマウスIL−15に対する反応性など)に対する親抗体の交叉反応性に基づいて、マウスCIAモデルでの検証研究は、「合致されたサロゲート抗体」由来のDVD−Ig分子を用いて実施され得る。要約すると、2つ(又はそれ以上の)マウス標的特異的抗体を基礎とするDVD−Igを、ヒトDVD−Ig構築のために使用された親ヒト又はヒト化抗体の特徴に可能な限り合致させ得る(類似の親和性、類似の中和能、類似の半減期など)。
【0270】
4.SLE
SLEの免疫病原性の特徴は、ポリクローナルB細胞活性化であり、これは、高グロブリン血症、自己抗体産生及び免疫複合体形成をもたらす。基本的な異常は、全般的なT細胞の調節不全のために、T細胞が禁じられたB細胞クローンを抑制できないことであるように見受けられる。さらに、B及びT細胞の相互作用は、第二のシグナルを開始する、IL−10並びにCD40とCD40L、B7及びCD28及びCTLA−4などの共刺激分子などの幾つかのサイトカインによって促進される。これらの相互作用は、免疫複合体及びアポトーシス材料の食細胞性排除の異常とともに、生じた組織傷害によって免疫応答を永続化させる。以下の標的がSLEに関与し得、治療的介入のためのDVD−Igアプローチのために使用できる可能性を秘めている。B細胞標的化療法:CD−20、CD−22、CD−19、CD28、CD4、CD80、HLA−DRA、IL10、IL2、IL4、TNFRSF5、TNFRSF6、TNFSF5、TNFSF6、BLR1、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、ICOSL、IGBP1、MS4A1、RGS1、SLA2、CD81、IFNB1、IL10、TNFRSF5、TNFRSF7、TNFSF5、AICDA、BLNK、GALNAC4S−6ST、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、IL10、IL11、IL4、INHA、INHBA、KLF6、TNFRSF7、CD28、CD38、CD69、CD80、CD83、CD86、DPP4、FCER2、IL2RA、TNFRSF8、TNFSF7、CD24、CD37、CD40、CD72、CD74、CD79A、CD79B、CR2、IL1R2、ITGA2、ITGA3、MS4A1、ST6GAL1、CD1C、CHST10、HLA−A、HLA−DRA及びNT5E;共刺激シグナル:CTLA4又はB7.1/B7.2;B細胞生存の阻害:BlyS、BAFF;補体不活化:C5;サイトカイン調節。中心的な原理は、何れかの組織中での正味の生物応答が、炎症促進性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの局所レベル間のバランスの結果であるということである(Sfikakis PP et al 2005 Curr Opin Rheumatol 17:550−7参照)。SLEは、血清IL−4、IL−6、IL−10の文献に報告された上昇を伴う、Th2によって誘導される疾病であると考えられる。IL−4、IL−6、IL−10、INF−α及びTNF−αからなる群から選択される1つ又はそれ以上の標的に結合することが可能なDVDIgも想定される。本明細書において論述されている標的の組み合わせは、多数の狼瘡前臨床モデル中で検査することが可能なSLEに対して治療的な効力を増強する(Peng SL(2004) Methods Mol Med.;102:227−72参照)。ヒト及びマウスのオルソログ(例えば、ヒト及びマウスCD20、ヒト及びマウスインターフェロンαに対する反応性など)に対する親抗体の交叉反応性に基づいて、マウス狼瘡モデルでの検証研究は、「合致されたサロゲート抗体」由来のDVD−Ig分子を用いて実施され得る。要約すると、2つ(又はそれ以上の)マウス標的特異的抗体を基礎とするDVD−Igを、ヒトDVD−Ig構築のために使用された親ヒト又はヒト化抗体の特徴に可能な限り合致させ得る(類似の親和性、類似の中和能、類似の半減期など)。
【0271】
5.多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、主に病因が不明である複雑なヒト自己免疫型疾病である。神経系全体でのミエリン塩基性タンパク質(MBP)の免疫学的破壊が、多発性硬化症の主要な病因である。MSは、CD
4+及びCD
8+T細胞による浸潤を伴う複雑な病変の疾病であり、中枢神経系内の応答の疾病である。サイトカイン、反応性窒素種及び共刺激分子の中枢神経系中での発現は全て、MSにおいて記載されている。主に検討すべきであるのは、自己免疫の発達に寄与する免疫学的機序である。特に、Th1及びTh2細胞などの他のT細胞のバランス/調節を助ける、抗原発現、サイトカイン及び白血球相互作用並びに調節性T細胞は、治療標的の同定のための重要な領域である。
【0272】
IL−12は、APCによって産生される炎症促進性サイトカインであり、Th1エフェクター細胞の分化を促進する。IL−12は、MS患者及びEAEに罹患した動物中の発達している病変中で産生される。以前、IL−12経路中の妨害がげっ歯類中のEAEを効果的に抑制すること、及びコモンマモセット中のミエリン誘発性EAEモデル中で、抗IL−12mAbを用いたIL−12p40のインビボ中和が有益な効果を有することが示された。
【0273】
TWEAKは、中枢神経系(CNS)中で恒常的に発現されるTNFファミリーのメンバーであり、細胞の種類に応じて炎症促進性、増殖性又はアポトーシス効果を有する。その受容体Fn14は、内皮細胞、反応性星状膠細胞及び神経細胞によって、中枢神経系中で発現されている。TWEAK及びFN14mRNA発現は、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の間に、脊髄中で増加した。ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)によってC57BL/6マウス中に誘導されたEAEにおける抗TWEAK抗体治療は、マウスが初回刺激相後に治療された場合に、疾病の重度及び白血球の浸潤の低下をもたらした。
【0274】
本発明の一態様は、IL−12、TWEAK、IL−23、CXCL13、CD40、CD40L、IL−18、VEGF、VLA−4、TNF、CD45RB、CD200、IFNγ、GM−CSF、FGF、C5、CD52及びCCR2からなる群から選択される1つ又はそれ以上、例えば2つの標的を結合することができるDVDIg分子に関する。一実施形態には、MSの治療に対して有益な治療剤としての二重特異的抗IL−12/TWEAKDVDIgが含まれる。
【0275】
MSを治療するためのDVD分子の有用性を評価するための幾つかの動物モデルが、本分野において公知である(Steinman L,et al.,(2005) Trends Immunol.26(11):565−71;Lublin FD.,et al.,(1985)Springer Semin Immunopathol.8(3):197−208;Genain CP,et al.,(1997) J Mol Med.75(3):187−97;Tuohy VK,et al.,(1999) J Exp Med.189(7):1033−42;Owens T,et al.,(1995) Neurol Clin.l3(1):51−73;及び’t Hart BA,et al.,(2005) J Immunol 175(7):4761−8参照)。ヒト及び動物種のオルソログ(例えば、ヒト及びマウスIL−12、ヒト及びマウスTWEAKに対する反応性など)に対する親抗体の交叉反応性に基づいて、マウスEAEモデルでの検証研究は、「合致されたサロゲート抗体」由来のDVD−Ig分子を用いて実施され得る。要約すると、2つ(又はそれ以上の)マウス標的特異的抗体を基礎とするDVD−Igを、ヒトDVD−Ig構築のために使用された親ヒト又はヒト化抗体の特徴に可能な限り合致させ得る(類似の親和性、類似の中和能、類似の半減期など)。同じ概念が、他の非げっ歯類種の動物モデルにも当てはまる。「合致されたサロゲート抗体」由来のDVD−Igは、予想される薬理学及び可能であれば安全性研究のために選択される。これらの標的対の定型的な安全性評価に加えて、免疫抑制の程度に対する特異的検査が保証され、最高の標的対を選択する上で役立ち得る(Luster et al.,Toxicology(1994),92(1−3),229−43;Descotes,et al.,Developments in biological standardization(1992),77 99−102;Jones R. 2000 Rovelizumab(ICOS Corp)IDrugs.3(4):442−6)参照)。
【0276】
しかしながら、MSは、免疫疾患であるのみならず、極めて重要な神経変性成分である。MSにおける疾病の進行は、軸索の累積的な喪失及び損傷によるものであり、患者の最終的な疾病スコアは、これらの神経変性プロセスによって決定される(Compston A. & Coles A. (2008) Lancet 372:1502−1517; Trapp BD. & Nave KA. (2008) Annu.Rev. Neuroscience 31 :247 −269)。幾つかの機序が、MSにおける軸索の損傷を説明し得る。カルシウム媒介性神経毒性、一酸化窒素の放出及びその後の軸索の損傷、神経栄養性支持の喪失、RGMA、NOGOA、セマフォリン、エフリンのようなrepulsive 又は軸索成長阻害分子の大規模な蓄積を伴う、神経伝達物質グルタミン酸の過剰な放出が、軸索誘導性神経変性及び軸索再生に寄与し得る。IL−12、TWEAK、IL−23、CXCL13、CD40、CD40L、IL−18、VEGF、VLA−4、TNF、CD45RB、CD200、IFNγ、GM−CSF、FGF、C5、CD52及びCCR2のような炎症促進性サイトカインに対して誘導された中和活性を有するRGMA、NOGOA、セマフォリン、エフリンは、現在の治療的MS原理の何れによっても達成されていない最終目標である、炎症及び神経再生に対する同時の集中を可能にする。神経再生の刺激は、MS中に観察された大規模な軸索神経再生によって引き起こされる機能的な損傷を補い得、失われた脳機能の回復を可能にする。
【0277】
6.敗血症
敗血症の病態生理は、グラム陰性生物(リポ多糖[LPS]、リピドA、エンドトキシン)及びグラム陽性生物(リポテイコ酸、ペプチドグリカン)の両方の外膜成分によって開始される。これらの外膜成分は、単球の表面上のCD14受容体に結合することが可能である。最近記載されたトール様受容体によって、シグナルは、その後、細胞へと伝達され、炎症促進性サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNF−α)及びインターロイキン−1(IL−1)の最終的な産生をもたらす。圧倒的な炎症性応答及び免疫応答は、敗血症性ショックの本質的な特徴であり、敗血症によって誘導される組織損傷、多臓器不全及び死亡の発病において中心的な役割を果たす。サイトカイン、特に、腫瘍壊死因子(TNF)及びインターロイキン(IL)−1は、敗血症性ショックの極めて重要な媒介物質であることが示されている。これらのサイトカインは、組織に対して直接的な毒性効果を有しており、ホスホリパーゼA2も活性化させる。これらの効果及び他の効果は、血小板活性化因子の増加した濃度、一酸化窒素合成酵素活性の促進、好中球による組織浸潤の促進及び好中球活性の促進をもたらす。
【0278】
敗血症及び敗血症性ショックの治療は、なお臨床的な難問であり、炎症性応答を標的とした生物学的応答修飾物質(すなわち、抗TNF、抗MIF)を用いた最近の前向き臨床試験は、若干の臨床的有益性を示したに過ぎなかった。最近、免疫抑制の付随期間を逆転させることを目指した治療法に関心が移っている。実験動物及び重病の患者における研究は、リンパ系臓器及び幾つかの実質組織の増加したアポトーシスが、この免疫抑制、アネルギー及び臓器系機能不全に寄与することを示している。敗血症症候群の間、リンパ球アポトーシスは、IL−2の不存在によって又はグルココルチコイド、グランザイム若しくはいわゆる「死亡(death)」サイトカイン:腫瘍壊死因子α又はFasリガンドの放出によって引き金を引かれ得る。アポトーシスは、Bcl−2ファミリーのアポトーシス促進性のメンバー及びアポトーシス抑制性のメンバーによって影響を受け得る、細胞質及び/又はミトコンドリアのカスパーゼの自己活性化を介して進行する。実験動物では、アポトーシスの阻害剤を用いた治療はリンパ系細胞のアポトーシスを抑制することができるのみならず、予後も改善し得る。抗アポトーシス因子を用いた臨床試験は、主にそれらの投与及び組織標的化に伴う技術的困難さが原因で、実現性が低いままであるが、リンパ球アポトーシスの阻害は、敗血症患者に対する魅力的な治療の標的である。同様に、炎症媒介物質及びアポトーシス媒介物質の両方を標的とする二重特異的因子は、さらなる有益性を有し得る。本発明の一態様は、TNF、IL−1、MIF、IL−6、IL−8、IL−18、IL−12、IL−23、FasL、LPS、トール様受容体、TLR−4、組織因子、MIP−2、ADORA2A、CASP1、CASP4、IL−10、IL−1B、NFKB1、PROC、TNFRSF1A、CSF3、CCR3、IL1RN、MIF、NFKB1、PTAFR、TLR2、TLR4、GPR44、HMOX1、ミッドカイン、IRAK1、NFKB2、SERPINA1、SERPINE1及びTREM1からなる群から選択される、敗血症に関与する1つ又はそれ以上の標的(一実施形態では、2つの標的)を結合することができるDVD−Igに関する。敗血症に対するこのようなDVDIgの有効性は、本分野において公知の前臨床動物モデルにおいて評価することが可能である(Buras JA,et al.,(2005) Nat Rev Drug Discov.4(10):854−65及びCalandra T,et al,(2000)Nat Med.6(2):164−70)参照)。
【0279】
7.神経疾患
7.1神経変性疾患
神経変性疾患は、通常年齢依存性である慢性又は急性(例えば、発作、外傷性脳傷害、脊髄傷害など)の何れかである。神経変性疾患は、神経細胞機能の進行性の喪失(神経細胞死、軸索喪失、神経突起、神経炎性萎縮症(neuritic dystrophy)、脱ミエリン化)、運動の喪失及び記憶の喪失によって特徴付けられる。慢性神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)の基礎を成す機序として明らかになりつつある知見は、複雑な病因を示しており、それらの発達及び進行に、様々な要因、例えば、年齢、血糖状態、アミロイド産生及び多量体化、RAGE(AGEに対する受容体)に結合する糖化終末産物(AGE;advanced glycation−end product)の蓄積、増加した脳の酸化的ストレス、減少した脳の血流、炎症性サイトカイン及びケモカインの放出を含む神経炎症、神経細胞の機能不全及びミクログリアの活性化が寄与していることが認められている。従って、これらの慢性神経変性疾患は、複数の細胞種及び媒介物質の間で複雑な相互作用を示す。このような疾病に対する治療戦略は限られており、非特異的な抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、COX阻害剤)又は神経細胞の喪失及び/又はシナプス機能を抑制するための因子で炎症プロセスを遮断することが大部分を占める。これらの治療は、疾病の進行を停止させることができない。最近の研究は、可溶性A−bペプチド(A−bオリゴマー形態を含む。)に対する抗体などのより標的化された療法が、疾病の進行を停止させるのに役立つことができるのみならず、記憶及びその他の認知機能を維持するのにも役立ち得ることを示唆している。これらの予備的な観察は、2以上の疾病媒介物質を標的とする特異的な療法(例えば、A−b及び炎症促進性サイトカイン(TNFなど))が、単一の疾病機序を標的化する場合に観察されたものより、慢性神経変性疾患に対して、ずっと優れた治療的効果を提供し得ることを示唆している(例えば、可溶性A−バロン)(C.E.Shepherd,et al,Neurobiol Aging.2005 Oct 24;Nelson RB.,Curr Pharm Des.2005;11:3335;William L. Klein.;Neurochem Int.2002 ;41 :345;Michelle C Janelsins,et al.,J Neuroinflammation.2005 ;2:23;Soloman B.,Curr Alzheimer Res.2004;1:149;Igor Klyubin,et al.,Nat Med.2005;11:556−61;Arancio O,et al.,EMBO Journal(2004)1−10;Bornemann KD,et al.,Am J Pathol.2001;158:63;Deane R,et al.,Nat Med.2003;9:907−13;及びEliezer Masliah,et al.,Neuron.2005;46:857参照)。
【0280】
本発明のDVD−Ig分子は、アルツハイマー病などの慢性神経変性疾患に関与する1つ又はそれ以上の標的を結合することができる。このような標的には、ADの発病に関与すると推定されている全ての媒介物質(可溶性又は細胞表面)、例えば、AGE(S100A、アムホテリン)、炎症促進性サイトカイン(例えば、IL−1)、ケモカイン(例えば、MCP1)、神経再生を阻害する分子(例えば、Nogo、RGM−A)、神経突起の成長を増強する分子(ニューロトロフィン)及び脳血液関門での輸送を媒介することができる分子(例えば、トランスフェリン受容体、インシュリン受容体又はRAGE)が含まれるが、これらに限定されない。DVD−Ig分子の効力は、アミロイド前駆体タンパク質又はRAGEを過剰発現し、アルツハイマー病様の症候を発症するトランスジェニックマウスなどの前臨床動物モデルで妥当性を確認することが可能である。さらに、DVD−Ig分子を構築し、動物モデルで効力について検査することが可能であり、ヒト患者での検査のために、最良の治療的DVD−Igを選択することができる。DVD−Ig分子は、パーキンソン病などの他の神経変性疾患の治療のためにも使用することが可能である。α−シヌクレインが、パーキンソン病に関与している。α−シヌクレイン及び炎症性媒介物質(TNP、IL−1、MCP−1など)を標的とすることができるDVD−Igは、パーキンソン病に対する有効な治療であることを証明することが可能であり、本発明において想定される。
【0281】
RGMAは、PD患者中の黒質中で強く上方制御されることが最近示されたので、あるいは、α−シニュクレイン及びRGMAを標的とすることができるDVD−Igは、パーキンソン病患者の黒質中の病的進行を停止させることができるのみならず、損傷を受けた神経突起の再生的増殖をもたらすことができる(BossersK.et al.(2009)Brain Pathol.19:91−107)。
【0282】
7.2神経細胞の再生及び脊髄損傷
病的機序の知見の増大に関わらず、脊髄損傷(SCI)は、なお、多大な損害を与える症状であり、高い医学的な要求を特徴とする医学的な適応症である。多くの脊髄損傷は、挫傷又は圧迫傷害であり、通常、原発性損傷に続いて、最初の損傷を悪化させ、病変部位の著しい拡大(特には、10倍超)をもたらす続発性損傷機序(炎症媒介物質、例えば、サイトカイン及びケモカイン)が起こる。SCIにおけるこれらの原発及び続発性の機序は、他の手段、例えば外傷及び発作によって引き起こされた脳損傷における機序と極めて類似している。満足する治療は存在せず、メチルプレドニゾロン(MP)の高用量大量瞬時注射は、損傷から8時間後という狭い時間枠内で使用される唯一の療法である。しかしながら、この治療は、顕著な機能的回復が全くなしに、続発性損傷を予防することのみを目的としている。明瞭な効果の欠如並びにその後の感染症を伴う免疫抑制及び重い組織病理学的な筋肉の変化などの重い副作用に対して大きな批判が為されている。内在性の再生能を刺激する他の薬物、生物物質又は小分子は承認されていないが、有望な治療原理及び薬物候補が、近年、SCIの動物モデルにおいて有効性を示しており、最初の有望な臨床データが、ごく最近に提示されている。多くの場合、ヒトSCIにおける機能的回復の欠如は、病変部位における、瘢痕組織中、ミエリン中及び損傷を伴う細胞上における神経突起の増殖を阻害する因子によって引き起こされる。このような因子は、ミエリン随伴タンパク質NogoA、OMgp及びMAG、RGMA、瘢痕随伴CSPG(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)及び反応性星状膠細胞に対する阻害因子(一部のセマホリン及びエフリン)である。しかしながら、病変部位では、増殖阻害分子が見出されるのみならず、ニューロトロフィン、ラミニン、L1及びその他のような神経突起成長刺激因子も見出される。阻害的な影響の低下が、バランスを、増殖阻害から増殖促進へとシフトさせ得るので、神経突起成長阻害分子と神経突起成長促進分子のこの協調は、NogoA又はRGMAのような単一の因子を遮断することが、げっ歯類SCIモデルにおいて著しい機能回復をもたらしたことを説明し得る。しかしながら、単一の神経突起成長阻害分子を遮断することによって観察された回復は完全ではなかった。より速く、より顕著な回復を達成するためには、2つの神経突起成長阻害分子(例えば、Nogo及びRGMA)を遮断し、又は神経突起成長阻害分子を遮断し、及び神経突起成長増強分子の機能を増強し(例えば、Nogo及びニューロトロフィン)、又は神経突起成長阻害分子(例えば、Nogo)及び炎症促進性分子(例えば、TNF)を遮断することが、望ましい場合があり得る(McGee AW,et al.Trends Neurosci.2003;26:193;Marco Domeniconi,et al.J.Neurol.Sci.2005;233:43;Milan Makwanal,et al.FEBS J.2005;272:2628;Barry J. DicksonScience2002;298:1959;Felicia Yu Hsuan Teng,et al.J Neurosci Res.2005;79:273;Tara Karnezis,et al.Nature Neuroscience2004;7:736;Gang Xu,et al.J. Neurochem.2004;91:1018参照)。
【0283】
一態様において、NgR及びRGMA;NogoA及びRGMA;MAG及びRGMA;OMGp及びRGMA;RGMA及びRGMB;RGMA及びセマホリン3A;RGMA及びセマホリン4;CSPG及びRGMA;アグレカン、ミッドカイン、ニューロカン、ベルシカン、ホスファカン、Te38及びTNF−α;樹状突起及び軸索の出芽を促進する抗体と組み合わされたAβ球状体(globulomer)特異的抗体などの標的対を結合することができるDVD−Igが提供される。樹状突起、軸索の損傷又は神経炎性萎縮症の病変は、ADの極めて早期の兆候であり、NOGOAが樹状突起の成長を制限すること、及びミエリンに付随し、上記されている他の分子、例えば、RGMA、MAG、OMGpが軸索の再成長を損なうことが知られている。abのこのような種類を、SCI候補(ミエリンタンパク質)Abの何れかと組み合わせることが可能である。他のDVD−Ig標的は、NgR−p75、NgR−Troy、NgR−Nogo66(Nogo)、NgR−Lingo、Lingo−Troy、Lingo−p75、MAG又はOmgpのあらゆる組み合わせを含み得る。さらに、標的には、神経突起の阻害に関与すると推定されている全ての媒介物質(可溶性又は細胞表面)、例えば、Nogo、Ompg、MAG、RGMA、セマフォリン、エフリン、可溶性A−b、炎症促進性サイトカイン(例えば、IL−1)、ケモカイン(例えば、MIP1a)、神経再生を阻害する分子も含まれ得る。抗nogo/抗RGMA又は類似のDVD−Ig分子の効力は、脊髄損傷の前臨床動物モデルにおいて、妥当性を確認することが可能である。さらに、これらのDVD−Ig分子を構築し、動物モデルで効力について検査することが可能であり、ヒト患者での検査のために、最良の治療的DVD−Igを選択することができる。さらに、単一の受容体、例えば3つのリガンドNogo、OMPG及びMAGを結合するNogo受容体並びにA−b及びS100Aを結合するRAGE上の2つの異なるリガンド結合部位を標的とするDVD−Ig分子を構築することが可能である。さらに、神経突起成長阻害剤、例えば、nogo及びnogo受容体は、多発性硬化症のような免疫学的疾患において神経再生を抑制する上でも役割を果たす。nogo−nogo受容体の相互作用の阻害は、多発性硬化症の動物モデルの回復を増強させることが示されている。従って、1つの免疫媒介物質、例えば、IL−12のようなサイトカイン、及び神経突起成長阻害分子、例えば、nogo又はRGMの機能を遮断することができるDVD−Ig分子は、免疫又は神経突起成長阻害剤分子のみを遮断するより、より速く、より大きな効力を与え得る。
【0284】
一般に、抗体は、脳血液関門(BBB)を効率的及び適切な様式で横切らない。しかしながら、ある種の神経疾患(例えば、発作、外傷性脳傷害、多発性硬化症など)では、BBBが損なわれる場合があり得、DVD−Ig及び抗体の脳内への増加した透過を許容する。BBBの漏出が起こらない他の神経症状では、グルコース及びアミノ酸担体などの担体媒介性輸送体並びにBBBの血管内皮における受容体媒介性トランスサイトーシス媒介細胞構造/受容体を含む内在性輸送系の標的化を使用し得、これにより、DVD−Igの経BBB輸送が可能になる。このような輸送を可能にするBBBでの構造には、インシュリン受容体、トランスフェリン受容体、LRP及びRAGEが含まれるが、これらに限定されない。さらに、戦略は、低分子量の薬物、ナノ粒子及び核酸を含む、中枢神経系内へ薬物候補を輸送するためのシャトルとしてDVD−Igを使用することも可能にする(Coloma MJ, et al.(2000)Pharm Res.17(3):266−74;Boado RJ, et al.(2007)Bioconjug.Chem.18(2):447−55)。
【0285】
神経学的疾患を治療するために標的の以下の対を結合することができるDVDIgが想定される。Aβ(配列1)及びAβ(配列3);TNF−α及びAβ(配列2);IL−1β及びAβ(配列2);Aβ(配列1)及びAβ(配列2);IGF1,2及びAβ(配列2);Aβ(配列2)及びIL−18;IL−6及びAβ(配列2);TNF−α及びAβ(配列3);IL−1β及びAβ(配列3);Aβ(配列1)及びAβ(配列3);IGF1,2及びAβ(配列3);Aβ(配列3)及びIL−18;IL−6及びAβ(配列3);TNF−α及びAβ(配列1);IL−1β及びAβ(配列1);IGF1,2及びAβ(配列1);Aβ(配列1)及びIL−18;IL−6及びAβ(配列1);Aβ(配列1)及びRAGE;NGF及びIL−18;NGF及びIL−1β;NGF及びIL−6;TNF−α及びEGFR(配列2);TNF−α及びRAGE;CD−20及びEGFR(配列1);CD−20及びEGFR(配列2);RGMA及びTNF−αからなる群から選択される標的の結合対を結合することができる(実施例2.1から2.27参照)。
【0286】
8.腫瘍疾患
モノクローナル抗体療法が、癌に対する重要な治療様式として登場している(von Mehren M,et al.(2003)Annu.Rev.Med.54:343−69)。抗体は、アポトーシス、再誘導された細胞毒性、リガンド−受容体相互作用の妨害を誘導し、又は新生物表現型にとって不可欠なタンパク質の発現を抑制することによって、抗腫瘍効果を発揮し得る。さらに、抗体は、腫瘍微小環境の成分を標的とすることが可能であり、腫瘍に付随する脈管構造の形成など不可欠な構造を擾乱する。抗体は、そのリガンドが増殖因子である受容体(上皮増殖因子受容体など)を標的とすることも可能である。従って、抗体は、細胞増殖を刺激する天然のリガンドが標的とされる腫瘍細胞へ結合することを阻害する。あるいは、抗体は、抗イディオタイプネットワーク、補体媒介性細胞傷害又は抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を誘導し得る。2つの別個の腫瘍媒介物質を標的とする二重特異的抗体の使用は、単一特異的療法に比べて、さらなる有利さを与えるものと思われる。
【0287】
別の実施形態において、本発明のDVDは、VEGF及びホスファチジルセリン;VEGF及びErbB3;VEGF及びPLGF;VEGF及びROBO4;VEGF及びBSG2;VEGF及びCDCP1;VEGF及びANPEP;VEGF及びc−MET;HER−2及びERB3;HER−2及びBSG2;HER−2及びCDCP1;HER−2及びANPEP;EGFR及びCD64;EGFR及びBSG2;EGFR及びCDCP1;EGFR及びANPEP;IGF1R及びPDGFR;IGF1R及びVEGF;IGF1R及びCD20;CD20及びCD74;CD20及びCD30;CD20及びDR4;CD20及びVEGFR2;CD20及びCD52;CD20及びCD4;HGF及びc−MET;HGF及びNRP1;HGF及びホスファチジルセリン;ErbB3及びIGF1R;ErbB3及びIGF1,2;c−Met及びHer−2;c−Met及びNRP1;c−Met及びIGF1R;IGF1,2及びPDGFR;IGF1,2及びCD20;IGF1,2及びIGF1R;IGF2及びEGFR;IGF2及びHER2;IGF2及びCD20;IGF2及びVEGF;IGF2及びIGF1R;IGF1及びIGF2;PDGFRa及びVEGFR2;PDGFRa及びPLGF;PDGFRa及びVEGF;PDGFRa及びc−Met;PDGFRa及びEGFR;PDGFRb及びVEGFR2;PDGFRb及びc−Met;PDGFRb及びEGFR;RON及びc−Met;RON及びMTSP1;RON及びMSP;RON及びCDCP1;VGFR1及びPLGF;VGFR1及びRON;VGFR1及びEGFR;VEGFR2及びPLGF;VEGFR2及びNRP1;VEGFR2及びRON;VEGFR2及びDLL4;VEGFR2及びEGFR;VEGFR2及びROBO4;VEGFR2及びCD55;LPA及びS1P;EPHB2及びRON;CTLA4及びVEGF;CD3及びEPCAM;CD40及びIL6;CD40及びIGF;CD40及びCD56;CD40及びCD70;CD40及びVEGFR1;CD40及びDR5;CD40及びDR4;CD40及びAPRIL;CD40及びBCMA;CD40及びRANKL;CD28及びMAPG;CD80及びCD40;CD80及びCD30;CD80及びCD33;CD80及びCD74;CD80及びCD2;CD80及びCD3;CD80及びCD19;CD80及びCD4;CD80及びCD52;CD80及びVEGF;CD80及びDR5;CD80及びVEGFR2;CD22及びCD20;CD22及びCD80;CD22及びCD40;CD22及びCD23;CD22及びCD33;CD22及びCD74;CD22及びCD19;CD22及びDR5;CD22及びDR4;CD22及びVEGF;CD22及びCD52;CD30及びCD20;CD30及びCD22;CD30及びCD23;CD30及びCD40;CD30及びVEGF;CD30及びCD74;CD30及びCD19;CD30及びDR5;CD30及びDR4;CD30及びVEGFR2;CD30及びCD52;CD30及びCD4;CD138及びRANKL;CD33及びFTL3;CD33及びVEGF;CD33及びVEGFR2;CD33及びCD44;CD33及びDR4;CD33及びDR5;DR4及びCD137;DR4及びIGF1,2;DR4及びIGF1R;DR4及びDR5;DR5及びCD40;DR5及びCD137;DR5及びCD20;DR5及びEGFR;DR5及びIGF1,2;DR5及びIGFR,DR5及びHER−2,EGFR及びDLL4を結合することができる。他の標的の組み合わせには、EGF/erb−2/erb−3ファミリーの1つ又はそれ以上のメンバーが含まれる。DVDIgが結合し得る、腫瘍疾患に関与する他の標的(1つ又はそれ以上)には、CD52、CD20、CD19、CD3、CD4、CD8、BMP6、IL12A、IL1A、IL1B、IL2、IL24、INHA、TNF、TNFSF10、BMP6、EGF、FGF1、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF2、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、GRP、IGF1、IGF2、IL12A、IL1A、IL1B、IL2、INHA、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、VEGF、CDK2、FGF10、FGF18、FGF2、FGF4、FGF7、IGF1R、IL2、BCL2、CD164、CDKN1A、CDKN1B、CDKN1C、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2C、CDKN3、GNRH1、IGFBP6、IL1A、IL1B、ODZ1、PAWR、PLG、TGFB1I1、AR、BRCA1、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK9、E2F1、EGFR、ENO1、ERBB2、ESR1、ESR2、IGFBP3、IGFBP6、IL2、INSL4、MYC、NOX5、NR6A1、PAP、PCNA、PRKCQ、PRKD1、PRL、TP53、FGF22、FGF23、FGF9、IGFBP3、IL2、INHA、KLK6、TP53、CHGB、GNRH1、IGF1、IGF2、INHA、INSL3、INSL4、PRL、KLK6、SHBG、NR1D1、NR1H3、NR1I3、NR2F6、NR4A3、ESR1、ESR2、NR0B1、NR0B2、NR1D2、NR1H2、NR1H4、NR1I2、NR2C1、NR2C2、NR2E1、NR2E3、NR2F1、NR2F2、NR3C1、NR3C2、NR4A1、NR4A2、NR5A1、NR5A2、NR6A1、PGR、RARB、FGF1、FGF2、FGF6、KLK3、KRT1、APOC1、BRCA1、CHGA、CHGB、CLU、COL1A1、COL6A1、EGF、ERBB2、ERK8、FGF1、FGF10、FGF11、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF2、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、GNRH1、IGF1、IGF2、IGFBP3、IGFBP6、IL12A、IL1A、IL1B、IL2、IL24、INHA、INSL3、INSL4、KLK10、KLK12、KLK13、KLK14、KLK15、KLK3、KLK4、KLK5、KLK6、KLK9、MMP2、MMP9、MSMB、NTN4、ODZ1、PAP、PLAU、PRL、PSAP、SERPINA3、SHBG、TGFA、TIMP3、CD44、CDH1、CDH10、CDH19、CDH20、CDH7、CDH9、CDH1、CDH10、CDH13、CDH18、CDH19、CDH20、CDH7、CDH8、CDH9、ROBO2、CD44、ILK、ITGA1、APC、CD164、COL6A1、MTSS1、PAP、TGFB1I1、AGR2、AIG1、AKAP1、AKAP2、CANT1、CAV1、CDH12、CLDN3、CLN3、CYB5、CYC1、DAB2IP、DES、DNCL1、ELAC2、ENO2、ENO3、FASN、FLJ12584、FLJ25530、GAGEB1、GAGEC1、GGT1、GSTP1、HIP1、HUMCYT2A、IL29、K6HF、KAI1、KRT2A、MIB1、PART1、PATE、PCA3、PIAS2、PIK3CG、PPID、PR1、PSCA、SLC2A2、SLC33A1、SLC43A1、STEAP、STEAP2、TPM1、TPM2、TRPC6、ANGPT1、ANGPT2、ANPEP、ECGF1、EREG、FGF1、FGF2、FIGF、FLT1、JAG1、KDR、LAMA5、NRP1、NRP2、PGF、PLXDC1、STAB1、VEGF、VEGFC、ANGPTL3、BAI1、COL4A3、IL8、LAMA5、NRP1、NRP2、STAB1、ANGPTL4、PECAM1、PF4、PROK2、SERPINF1、TNFAIP2、CCL11、CCL2、CXCL1、CXCL10、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL9、IFNA1、IFNB1、IFNG、IL1B、IL6、MDK、EDG1、EFNA1、EFNA3、EFNB2、EGF、EPHB4、FGFR3、HGF、IGF1、ITGB3、PDGFA、TEK、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFBR1、CCL2、CDH5、COL18A1、EDG1、ENG、ITGAV、ITGB3、THBS1、THBS2、BAD、BAG1、BCL2、CCNA1、CCNA2、CCND1、CCNE1、CCNE2、CDH1(E−カドヘリン)、CDKN1B(p27Kip1)、CDKN2A(p16INK4a)、COL6A1、CTNNB1(b−カテニン)、CTSB(カテプシンB)、ERBB2(Her−2)、ESR1、ESR2、F3(TF)、FOSL1(FRA−1)、GATA3、GSN(ゲルソリン)、IGFBP2、IL2RA、IL6、IL6R、IL6ST(糖タンパク質130)、ITGA6(a6インテグリン)、JUN、KLK5、KRT19、MAP2K7(c−Jun)、MKI67(Ki−67)、NGFB(NGF)、NGFR、NME1(NM23A)、PGR、PLAU(uPA)、PTEN、SERPINB5(マスピン)、SERPINE1(PAI−1)、TGFA、THBS1(トロンボスポンジン−1)、TIE(Tie−1)、TNFRSF6(Fas)、TNFSF6(FasL)、TOP2A(トポイソメラーゼIia)、TP53、AZGP1(亜鉛−a−糖タンパク質)、BPAG1(プレクチン)、CDKN1A(p21Wap1/Cip1)、CLDN7(クラウジン−7)、CLU(クラステリン)、ERBB2(Her−2)、FGF1、FLRT1(フィブロネクチン)、GABRP(GABAa)、GNAS1、ID2、ITGA6(a6インテグリン)、ITGB4(b4インテグリン)、KLF5(GC Box BP)、KRT19(ケラチン19)、KRTHB6(毛髪特異的II型ケラチン)、MACMARCKS、MT3(メタロチオネクチン−III)、MUC1(ムチン)、PTGS2(COX−2)、RAC2(p21Rac2)、S100A2、SCGB1D2(リポフィリンB)、SCGB2A1(マンマグロビン2)、SCGB2A2(マンマグロビン1)、SPRR1B(Spr1)、THBS1、THBS2、THBS4及びTNFAIP2(B94)、RON、c−Met、CD64、DLL4、PLGF、CTLA4、ホスファチジルセリン(phophatidylserine)、ROBO4、CD80、CD22、CD40、CD23、CD28、CD80、CD55、CD38、CD70、CD74、CD30、CD138、CD56、CD33、CD2、CD137、DR4、DR5、RANKL、VEGFR2、PDGFR、VEGFR1、MTSP1、MSP、EPHB2、EPHA1、EPHA2、EpCAM、PGE2、NKG2D、LPA、SIP、APRIL、BCMA、MAPG、FLT3、PDGFRα、PDGFRβ、ROR1、PSMA、PSCA、SCD1及びCD59からなる群から選択されるものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0288】
IV.医薬組成物
本発明は、本発明の結合タンパク質と、及び医薬として許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。本発明の結合タンパク質を含む医薬組成物は、疾患を診断し、検出し、若しくはモニタリングし、疾患又は1つ若しくはそれ以上のその症候を予防し、治療し、管理し、若しくは軽減する上で、及び/又は研究において使用されるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、組成物は、1つ又はそれ以上の本発明の結合タンパク質を含む。別の実施形態において、医薬組成物は、1つ又はそれ以上の本発明の結合タンパク質と、及び疾患を治療するための、本発明の結合タンパク質以外の1つ又はそれ以上の予防又は治療剤とを含む。一実施形態において、予防剤又は治療剤は、疾患又は1つ若しくはそれ以上のその症候の予防、治療、管理又は軽減に有用であることが知られており、又は疾患又は1つ若しくはそれ以上のその症候の予防、治療、管理又は軽減においてこれまで使用されており、若しくは現在使用されている。これらの実施形態に従えば、組成物は、担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含み得る。
【0289】
本発明の結合タンパク質は、対象への投与に適した医薬組成物中に取り込ませることができる。典型的には、医薬組成物は、本発明の結合タンパク質と医薬として許容される担体とを含む。本明細書において使用される、「医薬として許容される担体」には、生理的に適合的であるあらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などが含まれる。医薬として許容される担体の例には、水、生理的食塩水、リン酸緩衝化された生理的食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つ又はそれ以上並びにこれらの組み合わせが含まれる。幾つかの実施形態において、等張剤(例えば、糖、マニトール、ソルビトールなどの多価アルコール又は塩化ナトリウム)が組成物中に含められる。医薬として許容される担体は、抗体又は抗体部分の保存寿命又は有効性を増強する湿潤又は乳化剤、防腐剤又は緩衝剤などの補助物質の微量をさらに含み得る。
【0290】
様々な送達系が公知であり、例えば、リポソーム、微粒子、ミクロカプセル、抗体又は抗体断片を発現することができる組み換え細胞、受容体によって媒介されるエンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu,J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987)参照)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築物などの中に封入して、本発明の1つ若しくはそれ以上の抗体又は本発明の1つ若しくはそれ以上の抗体及び疾患又は1つ若しくはそれ以上のその症候を予防し、管理し、治療し、若しくは軽減するのに有用な予防剤又は治療剤の組み合わせを投与するために使用することが可能である。本発明の予防剤又は治療剤を投与する方法には、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)、硬膜外投与、腫瘍内投与及び粘膜投与(例えば、鼻内及び経口経路)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、例えば、吸入装置又は噴霧器及びエアロゾル化剤を加えた製剤の使用によって、経肺投与を使用することが可能である。例えば、米国特許第6,019,968号、米国特許第5,985,320号、米国特許第5,985,309号、米国特許第5,934,272号、米国特許第5,874,064号、米国特許第5,855,913号;米国特許第5,290,540及び米国特許第4,880,078号;並びにPCT公開WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346及びWO99/66903(これらの各々の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。一実施形態において、本発明の結合タンパク質、組み合わせ療法又は本発明の組成物は、AlkermesAIR
(R)経肺薬物送達技術(Alkermes,Inc.,Cambridge,Mass.)を用いて投与される。特定の実施形態において、本発明の予防剤又は治療剤は、筋肉内、静脈内、腫瘍内、経口、鼻内、経肺又は皮下投与される。予防剤又は治療剤は、あらゆる都合のよい経路によって、例えば、注入若しくはボーラス注射によって、上皮又は粘膜皮下の裏打ち(例えば、口粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通じた吸収によって投与され得、及び生物学的に活性な他の因子と一緒に投与され得る。投与は、全身又は局所であり得る。
【0291】
一実施形態において、抗体連結されたカーボンナノチューブ(CNT)のインビトロでの腫瘍細胞への特異的結合に続く、近赤外(NIR)光による極めて特異的な切除を、腫瘍細胞を標的とするために使用することができる。例えば、その後、1つ又はそれ以上の腫瘍抗原(例えば、CD22)に対して誘導された、1つ又はそれ以上の異なるneutraliteアビジン誘導体化されたDVD−Igに付着される、安定で、生物適合的な非細胞障害性CNT分散物を調製するために、ビオチン化された極性脂質を使用することができる(Chakravarty,P.et al.(2008)Proc.Natl.Acad.Sci.USA105:8697−8702)。
【0292】
特定の実施形態において、治療を必要としている部位へ局所的に、本発明の予防剤又は治療剤を投与することが望ましい場合があり得る。これは、例えば、局所的注入によって、注射によって、又はインプラントの手段によって達成され得るが、これらに限定されるものではなく、前記インプラントは、シアラスチック(sialastic)膜、ポリマー、繊維性マトリックス(例えば、Tissuel
(R))又はコラーゲンマトリックスなどの、膜及びマトリックスを含む多孔性又は非多孔性材料である。一実施形態において、本発明の1つ又はそれ以上の抗体アンタゴニストの有効量は、疾患又はその症候を予防し、治療し、管理し、及び/又は軽減するために、対象の罹患した部位へ局所的に投与される。別の実施形態において、本発明の1つ又はそれ以上の抗体の有効量は、疾患又は1つ若しくはそれ以上のその症候を予防し、治療し、管理し、及び/又は軽減するために、本発明の結合タンパク質以外の1つ又はそれ以上の治療薬(例えば、1つ又はそれ以上の予防剤又は治療剤)の有効量と組み合わせて、対象の罹患した部位へ局所的に投与される。
【0293】
別の実施形態において、予防剤又は治療剤は、調節された放出系又は徐放系に入れて送達することが可能である。一実施形態において、調節された放出又は徐放を達成するためにポンプを使用し得る(Langer,上記;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:20;Buchwald et al,1980,Surgery 88:507;Saudek et al.,1989,N.Engl.J.Med.321:574参照)。別の実施形態において、本発明の治療薬の調節された放出又は徐放を達成するために、ポリマー材料を使用することが可能である。(例えば、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,1983,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照されたい。Levy et al.,1985,Science 228:190;During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351;Howard et al.,1989,J. Neurosurg.71:105);米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号;PCT公開WO99/15154;及びPCT公開WO99/20253も参照されたい。徐放製剤中で使用されるポリマーの例には、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−コビニルアセタート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)及びポリオルトエステルが含まれるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、徐放製剤中で使用されるポリマーは、不活性であり、溶脱可能な不純物を含まず、保存時に安定であり、無菌であり、及び生物分解性である。さらに別の実施形態において、調節された放出系又は徐放系は、予防剤又は治療剤の近くに配置されて、全身投薬量の一部のみを必要とするようにすることができる(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,上記,vol.2,pp.115−138(1984)参照)。
【0294】
徐放系は、Langer(1990,Science 249:1527−1533)による概説中に論述されている。本発明の1つ又はそれ以上の治療剤を含む徐放製剤を作製するために、当業者に公知のあらゆる技術を使用することが可能である。例えば、米国特許第4,526,938号、PCT公開WO91/05548、PCT公開WO96/20698、Ning et al.,1996,“Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained− Release Gel,” Radiotherapy &Oncology 39:179−189,Song et al.,1995,“Antibody Mediated Lung Targeting of Long−Circulating Emulsions,” PDA Journal of Pharmaceutical Science &Technology 50:372−397,Cleek et al.,1997,“Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application,” Pro.Lnt’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.24:853−854,and Lam et al.,1997,”Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery,“ Proc.lnt’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.24:759−760(これらの各々の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。
【0295】
本発明の組成物が予防剤又は治療剤をコードする核酸である特定の実施形態において、適切な核酸発現ベクターの一部として、核酸を構築し、例えば、レトロウイルスベクター(米国特許第4,980,286号参照)の使用によって、核酸が細胞内となるように核酸を投与することによって、又は直接の注射によって、又は微粒子照射(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupon)の使用によって、又は脂質若しくは細胞表面受容体若しくは形質移入剤でコーティングし、又は核内に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドに連結して核酸を投与することによって(例えば、Joliot et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:1864−1868参照)、核酸がコードしている予防剤又は治療剤の発現を促進するために、核酸をインビボで投与することができる。あるいは、相同的組み換えによる発現のために、核酸を細胞内に導入し、宿主細胞DNA内に取り込むことができる。
【0296】
本発明の医薬組成物は、その予定された投与経路と適合的であるように製剤化される。投与の経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口、鼻内(例えば、吸入)、経皮(例えば、局所)、経粘膜及び直腸投与が含まれるが、これらに限定されない。特異的な実施形態において、組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻内又は局所投与に適合された医薬組成物として、定型的な操作に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌の等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合には、組成物は、可溶化剤及び注射の部位における痛みを和らげるための局所麻酔剤(リグノカムン(lignocamne)など)も含み得る。
【0297】
本発明の組成物が局所的に投与されるべき場合には、組成物は、軟膏、クリーム、経皮パッチ、ローション、ゲル、シャンプー、スプレー、エアロゾル、溶液、エマルジョンの形態で又は当業者に周知の他の形態で製剤化することが可能である。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,19th ed.,Mack Pub.Co.,Easton,Pa.(1995)」を参照されたい。一実施形態において、噴霧不能な局所剤形の場合には、局所適用に適合性のある担体又は1つ若しくはそれ以上の賦形剤を含み、及び水より大きな動粘性係数を有する粘性ないし半固体又は固体の形態が使用される。適切な製剤は、所望であれば、滅菌され、又は、例えば、浸透圧などの様々な特性に影響を及ぼすための補助剤(例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、緩衝剤又は塩)と混合された、溶液、懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏(ointment)、粉末、リニメント剤、軟膏(salve)など(これらに限定されない)を含む。他の適切な局所剤形には、一実施形態において、固体又は液体不活性担体と組み合わされた活性成分が、加圧された揮発性物質(例えば、フレオンなどの気体状噴射剤)との混合物中又は搾り出し瓶中に梱包されている噴霧可能なエアロゾル調製物が含まれる。所望であれば、医薬組成物及び剤形に、加湿剤又は湿潤剤も添加することが可能である。このような追加の成分の例は、本分野において周知である。
【0298】
本発明の方法が組成物の鼻内投与を含む場合には、組成物は、エアロゾル形態、スプレー、ミスト中に、又は点鼻薬の形態で製剤化することができる。特に、本発明に従って使用するための予防剤又は治療剤は、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又はその他の適切な気体)を用いて、加圧されたパック又は噴霧器からエアロゾルスプレー提示の形態で都合よく送達することが可能である。加圧されたエアロゾルの場合には、投薬単位は、定量された量を送達するためのバルブを付与することによって決定され得る。化合物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有する、吸入装置又はガス注入装置で使用するためのカプセル及びカートリッジ(例えば、ゼラチンから構成される。)を製剤化し得る。
【0299】
本発明の方法が経口投与を含む場合、錠剤、カプセル、カシェ剤、ゲルキャップ、溶液、懸濁液などの形態で、組成物を経口的に製剤化することができる。錠剤又はカプセルは、従来の手段によって、結合剤(例えば、予めゼラチン化されたトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、イモデンプン又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの、医薬として許容される賦形剤とともに調製することが可能である。錠剤は、本分野において周知な方法によって被覆され得る。経口投与用の液体調製物は、溶液、シロップ若しくは懸濁液の形態(これらに限定されない。)を採り得、又は、使用前に、水若しくは他の適切なビヒクルを用いて構成するための乾燥製品として与えられ得る。このような液体調製物は、慣用の手段によって、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油状エステル、エチルアルコール又は分画された植物油);及び防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸)などの医薬として許容される添加物とともに調製され得る。調製物は、適宜、緩衝液塩、着香剤、着色剤及び甘味剤も含有し得る。経口投与用調製物は、予防剤又は治療剤の遅い放出、調節された放出又は徐放のために、適切に製剤化され得る。
【0300】
本発明の方法は、例えば、吸入装置又は噴霧器の使用、エアロゾル化剤とともに製剤化された組成物の使用による経肺投与を含み得る。例えば、米国特許第6,019,968号、米国特許第5,985,320号、米国特許第5,985,309号、米国特許第5,934,272号、米国特許第5,874,064号、米国特許第5,855,913号、米国特許第5,290,540号及び米国特許第4,880,078号;並びにPCT公開WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346及びWO99/66903(これらの各々の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。特定の実施形態において、本発明の結合タンパク質、組み合わせ療法及び/又は本発明の組成物は、AlkermesAIR
(R)経肺薬物送達技術(Alkermes,Inc.Cambridge,Mas.)を用いて投与される。
【0301】
本発明の方法は、注射による(例えば、大量瞬時注射又は連続的注入による)非経口投与のために製剤化された組成物の投与を含み得る。注射用製剤は、添加された防腐剤とともに、単位剤形で(例えば、アンプル又は複数投薬容器に入れて)与え得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンなどの形態を採り得、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの処方剤を含有し得る。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない無菌水)で構成するための粉末形態であり得る。
【0302】
本発明の方法は、さらに、デポ調製物として製剤化された組成物の投与を含み得る。このよな長期作用製剤は、(例えば、皮下又は筋肉内への)植え込みによって、又は筋肉内注射によって投与され得る。従って、例えば、組成物は、適切なポリマー材料若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂とともに、又は難溶性誘導体として(例えば、難溶性塩として)調合され得る。
【0303】
本発明の方法は、中性又は塩形態として製剤化された組成物の投与を包含する。医薬として許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの陰イオンとともに形成された塩、及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなど、陽イオンとともに形成された塩が含まれる。
【0304】
一般に、組成物の成分は、別個に、又は単位剤形中に(例えば、活性剤の量を示した注射器又はにおい袋など、密閉された容器中の凍結乾燥された乾燥粉末又は無水濃縮物として)一緒に混合されて供給される。投与の様式が注入である場合には、組成物は、医薬等級の無菌水又は生理的食塩水を含有する注入瓶を用いて分配することが可能である。投与の様式が注射による場合には、注射用の無菌水又は生理的食塩水の注射器は、投与前に成分が混合され得るように提供することが可能である。
【0305】
特に、本発明は、本発明の予防剤若しくは治療剤の1つ若しくはそれ以上又は医薬組成物が、薬剤の量を示した注射器又はにおい袋など、密閉された容器中に梱包されることも提供する。一実施形態において、本発明の予防剤若しくは治療剤の1つ若しくはそれ以上又は医薬組成物は、密閉された容器中の凍結乾燥された乾燥無菌粉末又は無水濃縮物として供給され、対象に投与するための適切な濃度になるように(例えば、水又は生理的食塩水で)再構成することができる。一実施形態において、本発明の予防剤若しくは治療剤の1つ若しくはそれ以上又は医薬組成物は、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg又は少なくとも100mgの単位投薬量で、密封された容器中の凍結乾燥された乾燥無菌粉末として供給される。本発明の凍結乾燥された予防若しくは治療剤又は医薬組成物は、その元の容器中で、2℃と8℃の間で保存されるべきであり、本発明の予防剤若しくは治療剤又は医薬組成物は、再構成された後、1週以内、例えば、5日以内、72時間以内、48時間以内、24時間以内、12時間以内、6時間以内、5時間以内、3時間以内又は1時間以内に投与されるべきである。別の実施形態において、本発明の予防剤若しくは治療剤の1つ若しくはそれ以上又は本発明の医薬組成物は、薬剤の量及び濃度を示す密閉された容器中に、液体形態で供給される。一実施形態において、投与された組成物の液体形態は、少なくとも0.25mg/ml、少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/kg、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml又は少なくとも100mg/mlで、密封された容器中に供給される。液体形態は、その元の容器中で、2℃と8℃の間で保存されるべきである。
【0306】
本発明の結合タンパク質は、非経口投与に適した医薬組成物中に取り込ませることが可能である。一実施形態において、抗体又は抗体部分は、0.1から250mg/mLの結合タンパク質を含有する注射可能溶液として調製される。注射可能溶液は、フリント容器又は琥珀色の容器、注射器又は予め充填されたシリンジ中の液体又は凍結乾燥された剤形から構成され得る。緩衝液は、pH5.0から7.0(最適にはpH6.0)のL−ヒスチジン(1から50mM)、最適には5から10mMであり得る。他の適切な緩衝液には、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムが含まれるが、これらに限定されない。0から300mMの濃度に(最適には、液体剤形に対して150mM)の溶液の毒性を修飾するために、塩化ナトリウムを使用することが可能である。凍結乾燥された剤形に対して、凍結保護剤、主に、0から10%のスクロース(最適には、0.5から1.0%)を含めることが可能である。他の適切な凍結保護剤には、トレハロース及びラクトースが含まれる。凍結乾燥された剤形に対して、充填剤、主に、1から10%のマニトール(最適には、2から4%)を含めることが可能である。液体及び凍結乾燥された両剤形において、安定化剤、主に1から50mMのL−メチオニン(最適には、5から10mM)を使用することができる。他の適切な充填剤には、グリシン、アルギニンが含まれ、0から0.05%のポリソルベート−80(最適には、0.005から0.01%)として含めることが可能である。さらなる界面活性剤には、ポリソルベート20及びBRIJ界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。非経口投与用の注射可能な溶液として調製された本発明の結合タンパク質を含む医薬組成物は、治療用タンパク質(例えば、抗体)の吸収又は分散を増加させるために使用されるものなど、アジュバントとして有用な因子をさらに含むことができる。特に有用なアジュバントは、Hylenex
(R)(組み換えヒトヒアルロニダーゼ)などのヒアルロニダーゼである。注射可能な溶液中へのヒアルロニダーゼの添加は、非経口投与、特に皮下投与後に、ヒト生物学的利用可能性を改善する。注射可能な溶液中へのヒアルロニダーゼの添加は、痛み及び不快感がより小さく、及び注射部位反応の発生を最小限に抑えながら、より大きな注射部位容量(すなわち、1mLより大きい)も可能にする(WO2004078140及びUS2006104968(参照により、本明細書に組み込まれる。)を参照)。
【0307】
本発明の組成物は、様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体溶液(例えば、注射可能な溶液及び注入可能な溶液)など、分散液又は懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソーム及び坐薬)などの、液体、半固体及び固体剤形が含まれる。選択された形態は、予定される投与の様式及び治療用途に依存する。典型的な組成物は、他の抗体を用いたヒトの受動免疫に対して使用される組成物と同様の組成物など、注射可能溶液又は注入可能溶液の形態である。選択される投与の様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。一実施形態において、抗体は、静脈内注入又は注射によって投与される。別の実施形態において、抗体は、筋肉内注入又は皮下注射によって投与される。
【0308】
治療組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下で、無菌及び安定でなければならない。組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、分散液、リポソーム又は高薬物濃度に適したその他の秩序化された構造として製剤化することができる。無菌注射可能溶液は、本明細書に列記されている成分の1つ又は組み合わせを加えた適切な溶媒中に、必要な量で活性な化合物(すなわち、抗体、抗体部分)を取り込ませ、その後、必要に応じて、ろ過された滅菌によって調製することが可能である。一般に、分散液は、塩基性分散溶媒及び本明細書に列記されたものから得られる必要なその他の成分を含有する無菌ビヒクル中に活性化合物を取り込ませることによって調製される。無菌注射可能溶液の調製のための凍結乾燥された無菌粉末の場合には、調製の方法は、予め滅菌ろ過されたその溶液から、あらゆる追加の所望される成分を加えた活性成分の粉末を与える真空乾燥及び粉末乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合には、必要とされる粒径を維持することによって、及び界面活性剤を使用することによって維持することができる。注射可能組成物の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に含めることによって実現することができる。
【0309】
本発明の結合タンパク質は、本分野で公知の様々な方法によって投与することが可能であるが、多くの治療用途に関して、一実施形態では、投与の経路/様式は皮下注射、静脈内注射又は注入である。当業者によって理解されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望される結果に応じて変動する。ある種の実施形態において、活性化合物は、インプラント、経皮パッチ及び微小封入された送達系を含む徐放製剤など、迅速な放出に対して化合物を保護する担体とともに調製され得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸など、生物分解可能な生物適合性ポリマーを使用することが可能である。このような製剤を調製するための多くの方法は、特許が付与されており、又は、一般的に当業者に公知である。例えば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R. Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978」を参照されたい。
【0310】
ある種の実施形態において、本発明の結合タンパク質は、例えば、不活性希釈剤又は同化可能な食用担体とともに経口投与され得る。また、化合物(及び、所望であれば、その他の成分)は、硬い若しくは軟い殻のゼラチンカプセル中に封入され、錠剤へと圧縮され、又は対象の食事中に直接取り込ませ得る。経口治療投与の場合、化合物は、賦形剤とともに取り込まれ、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの形態で使用され得る。非経口投与以外によって本発明の化合物を投与するために、その不活化を妨げるための物質で化合物を被覆し、又はその不活化を妨げるための物質とともに化合物を同時投与することが必要であり得る。
【0311】
補助的活性化合物も、組成物中に取り込ませることが可能である。ある種の実施形態において、本発明の結合タンパク質は、本発明の結合タンパク質を用いて疾患を治療するのに有用である、1つ又はそれ以上のさらなる治療剤とともに共製剤化され、及び/又は同時投与される。例えば、本発明の結合タンパク質は、他の錠剤を結合する1つ又はそれ以上のさらなる抗体(例えば、他のサイトカインを結合する抗体又は細胞表面分子を結合する抗体)とともに共製剤化され、及び/又は同時投与され得る。さらに、本発明の1つ又はそれ以上の抗体は、先述の治療剤の2つ又はそれ以上と組み合わせて使用され得る。このような組み合わせ療法は、投与される治療剤のより低い投薬量を有利に使用し得るので、様々な単独療法に付随する可能性がある毒性又は合併症が回避される。
【0312】
ある種の実施形態において、結合タンパク質は、本分野で公知の半減期延長ビヒクルに連結される。このようなビヒクルには、Fcドメイン、ポリエチレングリコール及びデキストランが含まれるが、これらに限定されない。このようなビヒクルは、例えば、米国特許出願第09/428,082号及び公開されたPCT出願WO99/25044(これらは、あらゆる目的のために、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0313】
特定の実施形態において、本発明の結合タンパク質又は本発明の別の予防剤若しくは治療剤をコードする核酸配列は、遺伝子治療によって、疾患又は1つ若しくはそれ以上のその症候を治療し、予防し、管理し、又は軽減するために投与される。遺伝子治療は、発現された核酸又は発現可能な核酸の、対象への投与によって実行される治療を表す。本発明のこの実施形態において、核酸は、予防的効果又は治療的効果を媒介する、本発明のコードされたそれらの抗体又は予防剤若しくは治療剤を産生する。
【0314】
本発明に従って、本分野で利用可能な遺伝子治療のためのあらゆる方法を使用することが可能である。遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspiel et al.,1993,Clinical Pharmacy 12:488−505;Wu and Wu,1991,Biotherapy 3:87−95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596;Mulligan,Science 260:926−932(1993);及びMorgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191−217;May,1993,TIBTECH 11(5):155−215を参照されたい。使用可能な組み換えDNA技術の分野で一般的に知られた方法は、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley &Sons,NY(1993);及びKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載されている。遺伝子治療の様々な方法の詳細な記述は、参照により本明細書に組み込まれるUS200500042664A1に開示されている。
【0315】
本発明の結合タンパク質は、結合タンパク質によって認識される標的が有害である様々な疾病を治療する上で有用である。このような疾病には、関節リウマチ、骨関節炎、若年性慢性関節炎、化膿性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性紅斑性狼瘡、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インシュリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、臓器移植に関連する急性又は慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固、川崎病、バセドウ病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーライン紫斑症、腎臓の顕微鏡的血管炎、慢性活動性肝炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染性疾患、寄生性疾患、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、発作、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、孤発性の、多内分泌腺機能低下症候群I型及び多内分泌腺機能低下症候群II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸促迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清反応陰性関節症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、潰瘍性大腸性関節症、腸疾患性滑膜炎、クラミジア、エルシニア及びサルモネラ関連関節症、脊椎関節症、アテローム性疾患/動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱性疾患、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA病、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、慢性粘膜皮膚カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、突発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全症関連疾患、B型肝炎、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型低γグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣機能不全、早期卵巣機能不全、繊維性肺疾患、突発性繊維化性肺胞炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織疾患関連間質性肺疾患、混合性結合組織疾患関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性紅斑性狼瘡関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、シェーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患(vasculitic diffuse lung disease)、ヘモシデローシス関連肺疾患、薬物によって誘導された間質性肺疾患、繊維症、放射性繊維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、通風関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性又はルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫媒介性低血糖症、黒色表皮腫を伴うB型インシュリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に関連する急性免疫疾患、臓器移植に関連する慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、1型乾癬、2型乾癬、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎臓病NOS、糸球体腎炎、腎臓の顕微鏡的血管炎、ライム病、円板状紅斑性狼瘡、男性不妊症特発性又はNOS、精子自己免疫、多発性硬化症(全てのサブタイプ)、交感性眼炎、結合組織疾患に続発する肺高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スチル病、全身性硬化症、シェーグレン症候群、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫(primary myxoedema)、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性血管炎、白斑急性肝疾患、慢性肝疾患、アルコール性肝硬変、アルコール誘発性肝障害、胆汁うっ滞(choleosatatis)、特異体質性肝疾患、薬物誘発性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、アレルギー及び喘息、B群連鎖球菌(GBS)感染、精神障害(例えば、うつ病及び統合失調症)、Th2型及びTh1型によって媒介される疾病、急性及び慢性疼痛(疼痛の様々な形態)、並びに、肺癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌及び直腸癌及び造血性悪性病変(白血病及びリンパ腫)などの癌、無βリポタンパク質血症、先端チアノーゼ、急性及び慢性寄生性又は感染性プロセス、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性又は慢性細菌感染、急性膵炎、急性腎不全、腺癌、心房(aerial)異所性拍動、AIDS認知症複合、アルコール誘発性肝炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、同種移植拒絶、α−1−アンチトリプシン欠乏症、筋萎縮性側索硬化症、貧血、狭心症、前角細胞変性、抗cd3治療、抗リン脂質症候群、抗受容体過敏症反応(anti−receptor hypersensitivity reactions,)、大動脈及び末梢動脈瘤、大動脈解離、動脈性高血圧、動脈硬化症、動静脈痩、運動失調、心房細動(持続的又は発作性)、心房粗動、房室ブロック、B細胞リンパ腫、骨移植拒絶、骨髄移植(BMT)拒絶、脚ブロック、バーキットリンパ腫、火傷、心不整脈、心機能不全症候群(cardiac stun syndrome)、心臓腫瘍、心筋症、心肺バイパス炎症反応、軟骨移植拒絶、小脳皮質変性、小脳疾患、無秩序な又は多巣性心房頻脈、化学療法関連疾患、慢性(chromic)骨髄性白血病(CML)、慢性アルコール症、慢性炎症性病変、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性サリチル酸中毒、結腸直腸癌、うっ血性心不全、結膜炎、接触性皮膚炎、肺性心、冠動脈疾患、クロイツフェルト−ヤコブ病、培養陰性敗血症、嚢胞性繊維症、サイトカイン療法関連疾患、ボクサー脳、脱髄性疾患、デング出血熱、皮膚炎、皮膚科学的症状、糖尿病、真性糖尿病、糖尿病性動脈硬化疾患、瀰漫性レビー小体病、拡張型うっ血性心筋症、大脳基底核の疾患、中年のダウン症候群、中枢神経系ドーパミン受容体を遮断する薬物によって誘発された薬物誘発性運動障害、薬物感受性、湿疹、脳脊髄炎、心内膜炎、内分泌疾患、喉頭蓋炎、エプスタイン−バーウイルス感染、紅痛症、錐体外路及び小脳疾患、家族性血球貪食性リンパ組織球症(familial hematophagocytic lymphohistiocytosis)、致死的胸腺移植拒絶、フリードライヒ失調症、機能的末梢動脈疾患、真菌性敗血症、ガス壊疸、胃潰瘍、糸球体腎炎、何れかの臓器又は組織の移植片拒絶、グラム陰性敗血症、グラム陽性敗血症、細胞内生物に起因する肉芽腫、有毛細胞白血病、ハラーホルデン・スパッツ病、橋本甲状腺炎、枯草熱、心臓移植拒絶、血色素症、血液透析、溶血性尿毒症症候群/血栓溶解血小板減少紫斑病、出血、肝炎(A型)、ヒス束不整脈、HIV感染/HIV神経障害、ホジキン病、運動過剰性運動障害、過敏症反応、過敏性肺炎、高血圧、運動低下性運動障害、視床下部−下垂体−副腎皮質系評価、特発性アジソン病、特発性肺繊維症、抗体媒介性細胞傷害、無力症、乳児脊髄性筋萎縮症、大動脈の炎症、A型インフルエンザ、電離放射線曝露、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、虚血再灌流障害、虚血性発作、若年性関節リウマチ、若年性脊髄性筋萎縮症、カポジ肉腫、腎移植拒絶、レジオネラ、リーシュマニア症、ハンセン病、皮質脊髄系の病変、脂肪血症(lipedema)、肝臓移植拒絶、リンパ浮腫(lymphederma)、マラリア、悪性リンパ腫、悪性組織球増殖症、悪性黒色腫、髄膜炎、髄膜炎菌血症(meningococcemia)、代謝性/特発性疾患、偏頭痛、ミトコンドリア多系疾患(mitochondrial multi−system disorder)、混合性結合組織病、モノクローナル高ガンマグロブリン血症、多発性骨髄腫、多系統変性(メンセル・デジェリーヌ−トーマス シャイ−ドレーガー及びマシャド−ジョセフ)、重症筋無力症、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ、マイコバクテリウム・チュバキュロシス、骨髄異形成症候群、心筋梗塞、心筋虚血疾患、上咽頭癌、新生児慢性肺疾患、腎炎、ネフローゼ、神経変性疾患、神経原性I筋萎縮、好中球減少性発熱、非ホジキンリンパ腫、腹部大動脈及びその分枝の閉塞、閉塞性動脈疾患、okt3療法、精巣炎/精巣上体炎、精巣炎/精管復元術処置、臓器肥大、骨粗鬆症、膵臓移植拒絶、膵癌、腫瘍随伴性症候群/悪性腫瘍の高カルシウム血症、副甲状腺移植拒絶、骨盤内炎症性疾患、通年性鼻炎、心膜疾患、末梢性アテローム性動脈硬化疾患、末梢血管疾患、腹膜炎、悪性貧血、ニューモシスチス・カリニ肺炎、肺炎、POEMS症候群(多発神経炎、臓器肥大、内分泌疾患、単クローン性γグロブリン血症及び皮膚変化症候群(skin changes syndrome))、灌流後症候群(post perfusion syndrome)、ポンプ後症候群(post pump syndrome)、心筋梗塞後開心術症候群、子癇前症、進行性核上性麻痺、原発性肺高血圧、放射線療法、レイノー現象及び病、レイノー病、レフサム病、規則的なQRS幅の狭い頻脈症(regular narrow QRS tachycardia)、腎血管性高血圧、再灌流障害、拘束型心筋症、肉腫、強皮症、老年性舞踏病、レビー小体型の老年性認知症、血清反応陰性関節症、ショック、鎌形赤血球貧血症、皮膚同種異系移植拒絶、皮膚変化症候群、小腸移植拒絶、固形腫瘍、固有不整脈(specific arrythmias)、脊髄性運動失調、脊髄小脳変性、連鎖球菌性筋炎、小脳の構造的病変、亜急性硬化性全脳炎、失神、心血管系の梅毒、全身性アナフィラキシー、全身性炎症反応症候群、全身性発症若年性関節リウマチ、T細胞又はFABALL、毛細血管拡張症、閉塞性血栓血管炎、血小板減少症、毒性、移植、外傷/出血、III型過敏症反応、IV型過敏症、不安定狭心症、尿毒症、尿路性敗血症、じんましん、心臓弁膜症、静脈瘤、血管炎、静脈疾患、静脈血栓症、心室細動、ウイルス及び真菌感染、ウイルス性脳炎(vital encephalitis)/無菌性髄膜炎、ウイルス関連血球貪食症候群、ウェルニッケ−コルサコフ症候群、ウィルソン病、何れかの臓器又は組織の異種移植拒絶が含まれるが、これらに限定されない(Peritt et al.PCT公開WO2002097048A2,Leonard et al.,PCT公開WO9524918A1及びSalfeld et al.,PCT公開WO00/56772A1参照)。
【0316】
本発明のDVD−Igは、以下の疾病の1つ又はそれ以上も治療し得る。急性冠動脈症候群、急性突発性多発性神経炎、急性炎症性脱髄性多発性神経障害、急性虚血、成体スチル病、円形脱毛症、アナフィラキシー、抗リン脂質抗体症候群、再生不良貧血、動脈硬化症、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎、自己免疫性皮膚炎、連鎖球菌感染を伴う自己免疫性疾患、自己免疫性難聴、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性血小板減少症(AITP)、眼瞼炎、気管支拡張症、水疱性類天疱瘡、心血管疾患、劇症型抗リン脂質抗体症候群、セリアック病、頚部脊椎症、慢性虚血、瘢痕性類天疱瘡、多発性硬化症に対するリスクを有する最初のエピソードからなる症候群(CIS;clinically isolated syndrome)、結膜炎、小児発症精神疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、涙嚢炎、皮膚筋炎、糖尿病性網膜症、真性糖尿病、椎間板ヘルニア、椎間板脱出、薬物によって誘導される免疫溶血性貧血、心内膜炎、子宮内膜炎、眼内炎、上強膜炎、多型性紅斑、重症型多型性紅斑、妊娠性類天疱瘡、ギランバレー症候群(GBS)、枯草熱、ヒューズ症候群、突発性パーキンソン病、突発性間質性肺炎、IgE媒介性アレルギー、免疫溶血性貧血、封入体筋炎、感染性眼性炎症疾患、炎症性脱髄性疾患、炎症性心臓病、炎症性腎臓病、IPF/UIP、虹彩炎、角膜炎、乾性角結膜炎、クスマウル病又はクスマウル・マイヤー病、ランドリー麻痺、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、網状皮斑、黄斑変性、悪性腫瘍、顕微鏡的多発性血管炎、ベフテレフ病、運動神経疾患、粘膜類天疱瘡、多発性臓器不全、重症筋無力症、骨髄異形成症候群、心筋炎、神経根疾患、神経障害、非A非B型肝炎、視神経炎、骨溶解、卵巣癌、少関節性JRA、末梢動脈閉塞疾患(PAOD)、末梢血管疾患(PVD)、末梢動脈疾患(PAD)、静脈炎、結節性多発性動脈炎(又は結節性動脈周囲炎)、多発性軟骨炎、リウマチ性多発性筋痛、白毛症、多関節性JRA、多内分泌欠乏症候群、多発性筋炎、リウマチ性多発性筋痛(PMR)、ポンプ後症候群(post−pump)症候群、原発性パーキンソン病、前立腺及び直腸癌及び造血系の悪性腫瘍(白血病及びリンパ腫)、前立腺炎、純赤血球形成不全、原発性副腎不全、再発性視神経脊髄炎、再狭窄、リウマチ性心疾患、SAPHO(滑膜炎、ざ瘡、膿疱、骨肥大症及び骨炎)、強皮症、続発性アミロイドーシス、ショック肺、強膜炎、坐骨神経痛、続発性副腎不全、シリコーン関連結合組織疾患、スネドン−ウィルキンソン皮膚病、強直性脊椎炎、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、全身性炎症性応答症候群、側頭動脈炎、トキソプラズマ網膜炎、毒性表皮剥離症、横断性脊髄炎、TRAPS(腫瘍壊死因子受容体1型アレルギー性反応)、II型糖尿病、じんましん、通常型間質性肺炎(UIP)、血管炎、春季カタル、ウイルス性網膜炎、フォークト・コヤナギ・ハラダ症候群(VKH症候群)、滲出型黄斑変性及び創傷治癒。
【0317】
本発明の結合タンパク質は、自己免疫疾患、特に、関節リウマチ、脊椎炎、アレルギー、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎などの、炎症を伴う自己免疫疾患を罹患しているヒトを治療するために使用することができる。一実施形態において、本発明の結合タンパク質又はその抗原結合部分は、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病及び乾癬を治療するために使用される。
【0318】
一実施形態において、本発明の組成物及び方法を用いて治療又は診断することができる疾病には、乳癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、口腔咽頭癌、下咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、胆嚢及び胆管癌、小腸癌、尿路癌(腎臓、膀胱及び尿路上皮を含む。)、雌性生殖路(子宮頚部、子宮及び卵巣並びに絨毛癌及び妊娠性絨毛性疾患を含む。)、雄性生殖路(前立腺、精嚢、精巣及び胚細胞腫瘍を含む。)、内分泌腺癌(甲状腺、副腎及び下垂体を含む。)及び皮膚癌並びに血管腫、悪性黒色腫、肉腫(骨及び軟組織から生じる肉腫並びにカポジ肉腫を含む。)、脳、神経、眼の腫瘍及び髄膜(星状膠細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、シュワン細胞腫及び髄膜腫を含む。)、白血病及びリンパ腫(ホジキン及び非ホジキンリンパ腫の両方)などの造血系悪性腫瘍から生じる固形腫瘍などの、原発性及び転移性癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0319】
一実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、単独で又は放射線療法及び/若しくは他の化学療法剤と組み合わせて使用される場合、癌を治療するために、又は本明細書に記載されている腫瘍からの転移の予防において使用される。
【0320】
本発明の抗体又はその抗原結合部分は、DNAアルキル化剤、シスプラチン、カルボプラチン、抗チュブリン剤、パクリタキセル、ドセタキセル、タキソール、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ゲムザール、アンスラサイクリン、アドリアマイシン、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、5−フルオロウラシル(5−FU)、ロイコボリン、イリノテカン、受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、エルロチニブ、ゲフェチニブ)、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、キナーゼ阻害剤及びsiRNAなどの抗新生物剤、放射線療法、化学療法を含む(但し、これらに限定されない。)因子とともに組み合わされ得る。
【0321】
本発明の結合タンパク質は、様々な疾病の治療において有用な1つ又はそれ以上の追加の治療剤とともに投与することも可能である。
【0322】
本発明の結合タンパク質は、このような疾病を治療するために、単独で、又は組み合わせて使用することが可能である。結合タンパク質は、単独で、又は追加の因子、例えば治療剤と組み合わせて使用することが可能であり、前記追加の因子は、その意図される目的に対して、当業者によって選択されることを理解すべきである。例えば、追加の因子は、本発明の抗体によって治療されている疾病又は症状を治療するのに有用であると本分野で認識されている治療剤であり得る。追加の因子は、治療組成物に有益な属性を付与する因子、例えば、組成物の粘性に影響を与える因子とすることもできる。
【0323】
本発明に含まれるべき組み合わせは、それらの意図される目的に対して有用な組み合わせであることをさらに理解すべきである。以下に記されている因子は、例示を目的とするものであって、限定を意図するものではない。本発明の一部である組み合わせは、本発明の抗体及び以下のリストから選択される少なくとも1つの追加の因子であり得る。当該組み合わせにおいて、形成された組成物がその意図される機能を発揮することが可能であれば、組み合わせは、2以上の追加の因子、例えば、2又は3個の追加の因子を含むこともできる。
【0324】
自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療するための組み合わせは、NSAIDとも称される非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンのような薬物が含まれる。)である。他の組み合わせは、プレドニゾロンなどのコルチコステロイドである。ステロイド使用の周知の副作用は、本発明のDVDIgと組み合わせて患者を治療するときに必要とされるステロイド用量を徐々に減らすことによって、低減することが可能であり、又は除去することさえ可能である。本発明の抗体又は抗体部分とともに組み合わせることが可能な関節リウマチに対する治療剤の非限定的な例には、以下のもの:サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);その他のヒトサイトカイン又は成長因子(例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、IL−21、IL−23、インターフェロン、EMAP−II、GM−CSF、FGF及びPDGF)に対する抗体又はこれらのアンタゴニストが含まれる。本発明の結合タンパク質又はその抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、CTLA又はCD154を含むこれらのリガンド(gp39又はCD40L)などの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせることが可能である。
【0325】
治療剤の好ましい組み合わせは、異なる点で、自己免疫及びこれに続く炎症カスケードを干渉し得る。例には、キメラ、ヒト化又はヒトTNF抗体、Adalimumab、(PCT公開WO97/29131)、CA2(Remicade
TM)、CDP571、及び可溶性p55又はp75TNF受容体、これらの誘導体、(p75TNFRIgG(Enbrel
TM)又はp55TNFR1gG(Lenercept)及びTNFα変換酵素(TACE)阻害剤などのようなTNFアンタゴニストが含まれる。同様にIL−1阻害剤(インターロイキン−1変換酵素阻害剤、IL−1RAなど)は、同じ理由のために有効であり得る。他の組み合わせには、インターロイキン11が含まれる。さらに別組み合わせには、IL−12機能と平行して、IL−12機能に依存して、又はIL−12と協調して作用し得る自己免疫応答の中心的プレーヤーが含まれる。特に、IL−18抗体又は可溶性IL−18受容体又はIL−18結合タンパク質などのIL−18アンタゴニストである。IL−12及びIL−18は、重複しているが、異なる機能を有しており、両者に対するアンタゴニストの組み合わせは、最も有効であり得ることが示されている。さらに別の組み合わせは、非枯渇性抗CD4阻害剤である。さらに別の組み合わせには、抗体、可溶性受容体又は拮抗性リガンドを含む、共同刺激経路CD80(B7.1)又はCD86(B7.2)のアンタゴニストが含まれる。
【0326】
本発明の結合タンパク質は、メトトレキサート、6−MP、アザチオプリンスルファサラジン、メサラジン、オルサラジン、クロロキニン/ヒドロキシクロロキン、ペニシラミン、金チオリンゴ酸塩(筋肉内及び経口)、アザチオプリン、コルヒチン(cochicine)、コルチコステロイド(経口、吸入及び局所注射)、β−2アドレナリン作動性受容体アゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテラール)、キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン)、クロモグリカート、ネドクロミル、ケトチフェン、イプラトロピウム及びオキシトロピウム、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノラート・モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えば、イブプロフェン、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作用薬、TNF−α又はIL−1などの炎症促進性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する因子(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38又はMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体及びそれらの誘導体(例えば、可溶性p55又はp75TNF受容体及び誘導体p75TNFRIgG(Enbrel
TM及びp55TNFRIgG(Lenercept))、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R)、炎症抑制性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13及びTGFβ)、セレコキシブ、葉酸、硫酸ヒドロキシクロロキン、ロフェコキシブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ナプロキセン、バルデコキシブ、スルファサラジン、メチルプレドニゾロン、メロキシカム、酢酸メチルプレドニゾロン、金チオリンゴ酸ナトリウム、アスピリン、トリムシノロン・アセトニド、プロポキシフェンナプシラート/apap、フォラート、ナブメトン、ジクロフェナク、ピロキシカム、エトドラク、ジクロフェナクナトリウム、オキサプロジン、塩酸オキシコドン、ヒドロコドン二酒石酸塩/apap、ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール、フェンタニル、アナキンラ、ヒト組み換え、塩酸トラマドール、サルサラート、スリンダク、シアノコバラミン/fa/ピリドキシン、アセトアミノフェン、アレンドロナートナトリウム、プレドニゾロン、硫酸モルヒネ、塩酸リドカイン、インドメタシン、硫酸グルコサミン/コンドロイチン、塩酸アミトリプチリン、スルファジアジン、塩酸オキシコドン/アセトアミノフェン、塩酸オロパタジン、ミソプロストール、ナプロキセンナトリウム、オメプラゾール、シクロホスファミド、リツキシマブ、IL−1TRAP、MRA、CTLA4−IG、IL−18BP、抗IL−18、抗IL15、BIRB−796、SCIO−469、VX−702,AMG−548、VX740、ロフルミラスト、IC−485、CDC−801及びメソプラムなどの因子とも組み合わされ得る。組み合わせには、メトトレキサート又はレフルノミドが含まれ、中度又は重度の関節リウマチの症例では、シクロスポリンが含まれる。
【0327】
関節リウマチを治療するために、結合タンパク質と組み合わせて使用することも可能な非限定的な追加の因子には、以下の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs);サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAIDs);CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化された抗TNFα抗体;Celltech/Bayer);cA2/インフリキシマブ(キメラ抗TNFα抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG/エタネルセプト(75kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;イムネックス;例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照;55kdTNF−IgG(55kDTNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);IDEC−CE9.1/SB210396(抗原刺激された(primatized)非枯渇性抗CD4抗体;IDEC/SmithKline;例えば、Arthritis & Rheumatism(1995) Vol.38,S185を参照;DAB486−IL−2及び/又はDAB389−IL−2(IL−2融合タンパク質;Seragen;例えば、Arthritis & Rheumatism(1993)Vol.36,1223)参照;抗Tac(ヒト化抗IL−2Rα;Protein Design Labs/Roche);IL−4(抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10(SCH52000;組換えIL−10、抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−4;IL−10及び/又はIL−4アゴニスト(例えば、アゴニスト抗体);IL−1RA(IL−1受容体アンタゴニスト;Synergen/Amgen);アナキンラ(Kineret
(R)/Amgen);TNF−bp/s−TNF(可溶性TNF結合タンパク質;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39,No.9(補遺),S284参照;Amer.J.Physiol.−Heart and Circulatory Physiology(1995) Vol.268,pp.37−42);R973401(ホスホジエステラーゼIV型阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282参照;MK−966(COX−2阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S81参照);Iloprost(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S82参照);メトトレキサート;サリドマイド(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39,No.9(補遺),S282参照)及びサリドマイド関連薬(例えば、Celgen);レフノミド(抗炎症性及びサイトカイン阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S131;Inflammation Research(1996)Vol.45,pp.103−107参照);トラネキサム酸(プラスミノーゲン活性化の阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S284参照);T−614(サイトカイン阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282参照);プロスタグランジンE1(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282参照);Tenidap(非ステロイド性抗炎症薬;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S280参照);ナプロキセン(非ステロイド性抗炎症薬;例えば、Neuro Report(1996)Vol.7,pp.1209−1213参照);メロキシカム(非ステロイド性抗炎症薬);イブプロフェン(非ステロイド性抗炎症薬);ピロキシカム(非ステロイド性抗炎症薬);ジクロフェナク(非ステロイド性抗炎症薬);インドメタシン(非ステロイド性抗炎症薬);スルファサラジン(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S281参照);アザチオプリン(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S281参照);ICE阻害剤(酵素インターロイキン1β変換酵素の阻害剤);zap−70及び/又はlck阻害剤(チロシンキナーゼzap−70又はlckの阻害剤);VEGF阻害剤及び/又はVEGF−R阻害剤(血管内皮細胞増殖因子又は血管内皮細胞増殖因子受容体の阻害剤;血管新生の阻害剤);コルチコステロイド抗炎症薬(例えば、SB203580);TNF−コンベルターゼ阻害剤;抗IL−12抗体;抗IL−18抗体;インターロイキン−11(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol.39,No.9(補遺),S296参照);インターロイキン−13(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S308参照);インターロイキン−17阻害剤(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S120参照);金;ペニシラミン;クロロキン;クロラムブシル;ヒドロキシクロロキン;シクロスポリン;シクロホスファミド;全リンパ系照射;抗胸腺細胞グロブリン;抗CD4抗体;CD5トキシン;経口投与されたペプチド及びコラーゲン;ロベンザリト二ナトリウム;サイトカイン制御因子(CRAs)HP228及びHP466(Houghten Pharmaceuticals,Inc.);ICAM−Iアンチセンスホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS2302;Isis Pharmaceuticals,Inc.);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences,Inc.);プレドニゾン;オルゴテイン;グリコサミノグリカンポリサルファート;ミノサイクリン;抗IL2R抗体;マウス及び植物脂質(魚及び植物種子脂肪酸;例えば、DeLuca et al.(1995)Rheum.Dis.Clin.North Am.21:759−777参照);アウラノフィン;フェニルブタゾン;メクロフェナミン酸;フルフェナミン酸;静脈内免疫グロブリン;ジレウトン;アザリビン;ミコフェノール酸(RS−61443);タクロリムス(FK−506);シロリムス(ラパマイシン);アミプリロース(テラフェクチン);クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン);メトトレキサート;bcl−2阻害剤(Bruncko, Milan et al., Journal of Medicinal Chemistry (2007), 50(4), 641−662参照)抗ウイルス剤;及び免疫調節剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0328】
一実施形態において、結合タンパク質又はその抗原結合部分は、関節リウマチの治療用の以下の因子の1つと組み合わせて投与される。KDRの小分子阻害剤、Tie−2の小分子阻害剤;メトトレキサート;プレドニゾン;セレコキシブ;葉酸;硫酸ヒドロキシクロロキン;ロフェコキシブ;エタネルセプト;インフリキシマブ;レフルノミド;ナプロキセン;バルデコキシブ;スルファサラジン;メチルプレドニゾロン;イブプロフェン;メロキシカム;酢酸メチルプレドニゾロン、金チオリンゴ酸ナトリウム;アスピリン;アザチオプリン;トリアムシノロン・アセトニド;プロプキシフェン・ナプシラート/apap;フォラート;ナブメトン;ジクロフェナク;ピロキシカム;エトドラク;ジクロフェナクナトリウム;オキサプロジン、塩酸オキシコドン、重酒石酸ヒドロコドン/apap;ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール;フェンタニル;アナキンラ、ヒト組み換え;塩酸トラマドール;サルサラート;スリンダク;シアノコバラミン/fa/ピリドキシン;アセトアミノェン;アレンドロナートナトリウム;プレドニゾロン;硫酸モルヒネ;塩酸リドカイン;インドメタシン;硫酸グルコサミン/コンドロイチン;シクロスポリン;塩酸アミトリプチリン;スルファジアジン;塩酸オキシコドン/アセトアミノフェン;塩酸オロパタジン;ミソプロストール;ナプロキセンナトリウム;オメプラゾール;ミコフェノラート・モフェチル;シクロホスファミド;リツキシマブ、IL−1TRAP;MRA;CTLA4−IG;IL−18BP;IL−12/23;抗IL−18;抗IL−15;BIRB−796;SCIO−469;VX−702;AMG−548;VX740;ロフルミラスト;IC−485;CDC−801及びメソプラム。
【0329】
本発明の結合タンパク質とともに組み合わせることが可能な炎症性腸疾患に対する治療剤の非限定的な例には、以下のもの:ブデノシド;上皮成長因子;コルチコステロイド;シクロスポリン;スルファサラジン;アミノサリチラート;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼ阻害剤;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;抗酸化剤;トロンボキサン阻害剤;IL−1受容体アンタゴニスト;抗IL−1βモノクローナル抗体;抗IL−6モノクローナル抗体;成長因子;エラスターゼ阻害剤;ピリジニル−イミダゾール化合物;他のヒトサイトカイン又は成長因子(例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGF及びPDGF)に対する抗体又はこれらのアンタゴニストが含まれる。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD90又はこれらのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせることが可能である。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、メトトレキサート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノラート・モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えば、イブプロフェン、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作用薬、TNFα又はIL−1などの炎症促進性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する因子(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38又はMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤、TNFα変換酵素阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体及びそれらの誘導体(例えば、可溶性p55又はp75TNF受容体、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R)及び炎症抑制性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13及びTGFβ)及びbcl−2阻害剤などの因子とも組み合わされ得る。
【0330】
結合タンパク質を組み合わせることが可能な、クローン病に対する治療剤の例には、以下のもの:TNFアンタゴニスト、例えば、抗TNF抗体、Adalimumab(PCT公開97/29131;HUMIRA)、CA2(REMICADE)、CDP571、TNFR−Ig構築物、(p75TNFRIgG(ENBREL)及びp55TNFRIgG(LENERCEPT))阻害剤及びPDE4阻害剤が含まれる。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、コルチコステロイド、例えば、ブデノシド及びデキサメタゾンと組み合わせることが可能である。本発明の結合タンパク質又はその抗原結合部分は、スルファサラジン、5−アミノサリチル酸及びオルサラジンなどの因子と、並びにIL−1などの炎症促進性サイトカインの合成又は作用を妨害する因子(例えば、IL−1β変換酵素阻害剤及びIL−1ra)とも組み合わされ得る。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、T細胞シグナル伝達阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤6−メルカプトプリンとともに使用され得る。本発明の結合タンパク質又はその抗原結合部分は、IL−11と組み合わせることが可能である。本発明の結合タンパク質又はその抗原結合部分は、メサラミン、プレドニゾン、アザチオプリン、メルカプトプリン、インフリキシマブ、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、ジフェノキシラート/硫酸アトロピン、塩酸ロペラミド、メトトレキサート、オメプラゾール、フォラート、シプロフロキサシン/デキストロース−水、重酒石酸ヒドロコドン/apap、テトラサイクリン塩酸塩、フルオシノニド、メトロニダゾール、チメロサール/ホウ酸、コレスチラミン/スクロース、塩酸シプロフロキサシン、硫酸ヒオスチアミン、塩酸メペリジン、塩酸ミダゾラム、塩酸オキシコドン/アセトアミノフェン、塩酸プロメタジン、リン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、セレコキシブ、ポリカルボフィル、ナプシル酸プロポキシフェン、ヒドロコルチゾン、マルチビタミン、バルサラジド二ナトリウム、リン酸コデイン/アセトアミノフェン(apap)、塩酸コレセベラム、シアノコバラミン、葉酸、レボフロキサシン、メチルプレドニゾロン、ナタリズマブ及びインターフェロンγと組み合わせることが可能である。
【0331】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることが可能な、多発性硬化症のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:コルチコステロイド;プレドニゾロン;メチルプレドニゾロン;アザチオプリン;シクロホスファミド;シクロスポリン;メトトレキサート;4−アミノピリジン;チザニジン;インターフェロン−β1a(AVONEX;Biogen);インターフェロン−β1b(BETASERON;Chiron/Berlex);インターフェロンα−n3)(Interferon Sciences/Fujimoto)、インターフェロン−α(Alfa Wassermann/J&J)、インターフェロン−β1A−IF(Serono/Inhale Therapeutics)、PEGインターフェロンα2b(Enzon/Schering−Plough)、コポリマー1(Cop−1;COPAXONE;Teva Pharmaceutical Industries,Inc.);高圧酸素;静脈内免疫グロブリン;クラブリビン;他のヒトサイトカイン又は成長因子(例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−23、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGF及びPDGF)及びそれらの受容体に対する抗体又はこれらのアンタゴニストが含まれる。本発明の結合タンパク質は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90又はこれらのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせることが可能である。本発明の結合タンパク質は、メトトレキサート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノラート・モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えば、イブプロフェン、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作用薬、TNFα又はIL−1などの炎症促進性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する因子(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38又はMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤、TACE阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体及びそれらの誘導体(例えば、可溶性p55又はp75TNF受容体、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R)及び炎症抑制性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−13及びTGFβ)及びbcl−2阻害剤などの因子とも組み合わされ得る。
【0332】
本発明の結合タンパク質を組み合わせることが可能な、多発性硬化症のための治療剤の例には、インターフェロン−β、例えば、IFNβ1a及びIFN1b;コパキソン(copaxone)、コルチコステロイド、カスパーゼ阻害剤、例えばカスパーゼ−1の阻害剤、IL−1阻害剤、TNF阻害剤並びにCD40リガンド及びCD80に対する抗体が含まれる。
【0333】
本発明の結合タンパク質は、アレムツズマブ、ドロナビノール、ユニメド、ダクリズマブ、ミトキサントロン、塩酸キサリプロデン、ファムプリジン、酢酸グラチラマー、ナタリズマブ、シンナビドール、a−イムノカインNNSO3、ABR−215062、AnergiX.MS、ケモカイン受容体アンタゴニスト、BBR−2778、カラグアリン、CPI−1189、LEM(リポソーム封入されたミトキサントロン)、THC.CBD(カンナビノイドアゴニスト)MBP−8298、メソプラム(PDE4阻害剤)、MNA−715、抗IL−6受容体抗体、ニューロバックス、ピルフェニドンアロトラップ1258(RDP−1258)、sTNF−R1、タラムパネル、テリフルノミド、TGF−β2、チプリモチド、VLA−4アンタゴニスト(例えば、TR−14035、VLA4Ultrahaler、Antegran−ELAN/Biogen)、インターフェロンγアンタゴニスト、IL−4アゴニストなどの因子とも組み合わされ得る。
【0334】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることが可能な、狭心症のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:アスピリン、ニトログリセリン、イソソルバイド・モノニトラート、コハク酸メトプロロール、アテノロール、酒石酸メトプロロール、ベシル酸アムロジピン、塩酸ジルチアゼム、二硝酸イソソルビド、重硫酸クロピドグレル、ニフェジピン、アトロバスタチンカルシウム、塩化カリウム、フロセミド、シンバスタチン、塩酸ベラパミル、ジゴキシン、塩酸プロプラノロール、カルベジロール、リシノプリル、スピロノラクトン、ヒドロクロロチアジド、マレイン酸エナラプリル、ナドロール、ラミプリル、エノキサパリンナトリウム、ヘパリンナトリウム、バルサルタン、塩酸ソタロール、フェノフィブラート、エゼチミブ、ブメタニド、ロサルタンカリウム、リシノプリル/ヒドロクロロチアジド、フェロジピン、カプトプリル、フマル酸ビソプロロールが含まれる。
【0335】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることが可能な、強直性脊椎炎のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:イブプロフェン、ジクロフェナク及びミソプロストール、ナプロキセン、メロキシカム、インドメタシン、ジクロフェナク、セレコキシブ、ロフェコキシブ、スルファサラジン、メトトレキサート、アザチオプリン、ミノサイクリン、プレドニゾン、エタネルセプト、インフリキシマブが含まれる。
【0336】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることが可能な、喘息のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:アルブテロール、サルメテロール/フルチカゾン、モンテルカストナトリウム、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド、プレドニゾン、キシナホ酸サルメテロール、塩酸レバルブテロール、硫酸アルブテロール/イプラトロピウム、リン酸プレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン・アセトニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、イプラトロピウムブロミド、アジスロマイシン、酢酸ピルブテロール、プレドニゾロン、テオフィリン無水物、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、クラリスロマイシン、ザフィルルカスト、フマル酸フォルモテロール、インフルエンザウイルスワクチン、メチルプレドニゾロン、アミノキシシリン三水和物、フルニソリド、アレルギー注射、クロモリンナトリウム、塩酸フェキソフェナジン、フルニソリド/メントール、アモキシシリン/クラブラナート、レボフロキサシン、吸入補助装置、グアイフェネシン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、塩酸モキシフロキサシン、ドキシサイクリン水和物(hyclate)、グアイフェネシン/d−メトルファン、p−エフェドリン/cod/クロルフェニル、ガチフロキサシン、塩酸セチリジン、フロ酸モメタゾン、キシナホ酸サルメテロール、ベンゾナタート、セファレキシン、pe/ヒドロコドン/クロルフェニル、塩酸セチリジン/シュードエフェドリン、フェニレフリン/cod/プロメタジン、コデイン/プロメタジン、セフプロジル、デキサメタゾン、グアイフェネシン/シュードエフェドリン、クロルフェニラミン/ヒドロコドン、ネドクロミルナトリウム、硫酸テルブタリン、エピネフリン、メチルプレドニゾロン、硫酸メタプロテレノールが含まれる。
【0337】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることができる、COPDに対する治療剤の非限定的な例には、以下のもの:硫酸アルブテロール/イプラトロピウム、イプラトロピウムブロミド、サルメテロール/フルチカゾン、アルブテロール、キシナホ酸サルメテロール、プロピオン酸フルチカゾン、プレドニゾン、テオフィリン無水物、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、モンテルカストナトリウム、ブデソニド、フマル酸フォルモテロール、トリアムシノロン・アセトニド、レボフロキサシン、グアイフェネシン、アジスロマイシン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、塩酸レバルブテロール、フルニソリド、セフトリアキソンナトリウム、アミノキシシリン三水和物、ガチフロキサシン、ザフィルルカスト、アモキシシリン/クラブラナート、フルニソリド/メントール、クロルフェニラミン/ヒドロコドン、硫酸メタプロテレノール、メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、p−エフェドリン/cod/クロロフェニル、酢酸ピルブテロール、p−エフェドリン/ロラタジン、硫酸テルブタリン、チオトロピウムブロミド、(R,R)−フォルモテロール、TgAAT、シロミラスト、ロフルミラストが含まれる。
【0338】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることができる、HCVに対する治療剤の非限定的な例には、以下のもの:インターフェロン−α−2a、インターフェロン−α−2b、インターフェロン−αcon1、インターフェロン−α−nl、PEG化されたインターフェロン−α−2a、PEG化されたインターフェロン−α−2b、リバビリン、Pegインターフェロンα−2b+リバビリン、ウルソデオキシコール酸、グリシルリジン酸、チマルファシン、マキサミン、VX−497及び以下の標的:HCVポリメラーゼ、HCVプロテアーゼ、HCVヘリカーゼ、HCVIRES(配列内リボソーム進入部位)への介入を通じて、HCVを治療するために使用されるあらゆる化合物が含まれる。
【0339】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることができる、特発性肺繊維症のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:プレドニゾン、アザチオプリン、アルブテロール、コルヒチン、硫酸アルブテロール、ジゴキシン、γインターフェロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、ロラゼパム、フロセミド、リシノプリル、ニトログリセリン、スピロノラクトン、シクロホスファミド、イプラトロピウムブロミド、アクチノマイシンd、アルテプラーゼ、プロピオン酸フルチカゾン、レボフロキサシン、硫酸メタプロテレノール、硫酸モルヒネ、塩酸オキシコドン、塩化カリウム、トリアムシノロン・アセトニド、タクロリムス無水物、カルシウム、インターフェロン−α、メトトレキサート、ミコフェノラート・モフェチル、インターフェロン−γ−1βが含まれる。
【0340】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることができる、心筋梗塞のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:アスピリン、ニトログリセリン、酒石酸メトプロロール、エノキサパリンナトリウム、ヘパリンナトリウム、重硫酸クロピドグレル、カルベジロール、アテノロール、硫酸モルヒネ、コハク酸メトプロロール、ワルファリンナトリウム、リシノプリル、一硝酸イソソルビド、ジゴキシン、フロセミド、シンバスタチン、ラミプリル、テネクテプラーゼ、マレイン酸エナラプリル、トルセミド、レタバーゼ、ロサルタンカリウム、塩酸キナプリル/mag carb、ブメタニド、アルテプラーゼ、エナラプリラート、塩酸アミオダロン、塩酸チロフィバンm−水和物、塩酸ジルチアゼム、カプトプリル、イルベサルタン、バルサルタン、塩酸プロプラノロール、フォシノプリルナトリウム、塩酸リドカイン、エプチフィバチド、セファゾリンナトリウム、硫酸アトロピン、アミノカプロン酸、スピロノラクトン、インターフェロン、塩酸ソタロール、塩化カリウム、ドキュセートナトリウム、塩酸ドブタミン、アルプラゾラム、プラバスタチンナトリウム、アトロバスタチンカルシウム、塩酸ミダゾラム、塩酸メペリジン、二硝酸イソソルビド、エピネフリン、塩酸ドーパミン、ビバリルジン、ロスバスタチン、エゼチミブ/シンバスタチン、アバシミブ、カリポリドが含まれる。
【0341】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることが可能な、乾癬のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:KDRの小分子阻害剤Tie−2の小分子阻害剤、カルシポトリエン、プロピオン酸クロベタゾール、トリアムシノロン・アセトニド、プロピオン酸ハロベタゾール、タザロテン、メトトレキサート、フルオシノニド、増強された(augmented)二プロピオン酸ベタメタゾン、フルオシノロン・アセトニド、アシトレチン、タールシャンプー、吉草酸ベタメタゾン、フロ酸モメタゾン、ケトコナゾール、パラモキシン/フルオシノロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フルランドレノリド、尿素、ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール/皮膚軟化剤(emoll)、プロピオン酸フルチカゾン、アジスロマイシン、ヒドロコルチゾン、保湿処方、葉酸、デソニド、ピメクロリムス、コールタール、二酢酸ジフロラゾン、葉酸エタネルセプト、乳酸、メトキサレン、hc/次没食子酸ビスマス(bismuth subgal)/酸化亜鉛(znox)/resor、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、日焼け止め、ハルシノニド、サリチル酸、アンスラリン、ピバル酸クロコルトロン、石炭抽出物、コールタール/サリチル酸、コールタール/サリチル酸/硫黄、デスオキシメタゾン、ジアゼパム、皮膚軟化剤、フルオシノニド/皮膚軟化剤、鉱物油/ひまし油/na lact、鉱物油/落花生油、石油/ミリスチン酸イソプロピル、ソラーレン、サリチル酸、石鹸/トリブロムサラン、チメロサール/ホウ酸、セレコキシブ、インフリキシマブ、シクロスポリン、アレファセプト、エファリズマブ、タクロリムス、ピメクロリムス、PUVA、UVB、スルファサラジンが含まれる。
【0342】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることができる、乾癬性関節炎のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:メトトレキサート、エタネルセプト、ロフェコキシブ、セレコキシブ、葉酸、スルファサラジン、ナプロキセン、レフルノミド、酢酸メチルプレドニゾロン、インドメタシン、硫酸ヒロドキシクロロキン、プレドニゾン、スリンダク、増強された二プロピオン酸ベタメタゾン、インフリキシマブ、メトトレキサート、フォラート、トリアムシノロン・アセトニド、ジクロフェナク、ジメチルスルホキシド、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、メロキシカム、メチルプレドニゾロン、ナブメトン、トルメチンナトリウム、カルシポトリエン、シクロスポリン、ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール、フルオシノニド、硫酸グルコサミン、金チオリンゴ酸ナトリウム、二酒石酸ヒドロコドン/アセトアミノフェン、イブプロフェン、リセドロン酸ナトリウム、スルファジアジン、チオグアニン、バルデコキシブ、アレファセプト、エファリズマブ及びbcl−2阻害剤が含まれる。
【0343】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることが可能な、再狭窄のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:シロリムス、パクリタキセル、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、アセトアミノフェンが含まれる。
【0344】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることが可能な、坐骨神経痛のための治療剤の非限定的な例には、以下のもの:二酒石酸ヒドロコドン/アセトアミノフェン、ロフェコキシブ、塩酸シクロベンザプリン、メチルプレドニゾロン、ナプロキセン、イブプロフェン、塩酸オキシコドン/アセトアミノフェン、セレコキシブ、バルデコキシブ、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、リン酸コデイン/アセトアミノフェン、塩酸トラマドール/アセトアミノフェン、メタキサロン、メロキシカム、メトカルバモール、塩酸リドカイン、ジクロフェナクナトリウム、ギャバペンチン、デキサメタゾン、カリソプロドール、ケトロラク・トロメタミン、インドメタシン、アセトアミノフェン、ジアゼパム、ナブメトン、塩酸オキシコドン、塩酸チザニジン、ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール、ナプシル酸プロポキシフェン/アセトアミノフェン、asa/oxycod/コキシコドンter、イブプロフェン/重酒石酸ヒドロコドン、塩酸トラマドール、エトドラク、塩酸プロポキシフェン、塩酸アミトリプチリン、カリソプロドール/リン酸コデイン/asa、硫酸モルヒネ、マルチビタミン、ナプロキセンナトリウム、クエン酸オルフェナドリン、テマゼパムが含まれる。
【0345】
本発明の結合タンパク質と組み合わせることが可能な、SLE(狼瘡)のための治療剤の例には、以下のもの:NSAID、例えば、ジクロフェナク、ナプロキセン、イブプロフェン、ピロキシカム、インドメタシン;COX2阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ;抗マラリア剤、例えば、ヒドロキシクロロキン;ステロイド、例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、ブデノシド、デキサメタゾン;細胞毒性剤、例えば、アザチオプリン、シクロホスファミド、ミコフェノラート・モフェチル、メトトレキサート;PDE4の阻害剤又はプリン合成阻害剤、例えば、Cellceptが含まれる。本発明の結合タンパク質は、スルファサラジン、5−アミノサリチル酸、オルサラジン、イムランなどの因子と、並びにIL−1などの炎症促進性サイトカインの合成、産生又は作用を妨害する因子、例えば、IL−1β変換酵素阻害剤及びIL−1raのようなカスパーゼ阻害剤とも組み合わされ得る。本発明の結合タンパク質は、また、T細胞シグナル伝達阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤;又はT細胞活性化分子を標的とする分子、例えば、CTLA−4−IgG又は抗B7抗体ファミリー抗体、抗PD−1ファミリー抗体とともに使用され得る。本発明の結合タンパク質は、IL−11又は抗サイトカイン抗体、例えば、ホノトリズマブ(抗IFNg抗体)、又は抗受容体受容体抗体、例えば、抗IL−6受容体抗体及びB細胞表面分子に対する抗体と組み合わせることが可能である。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、また、LJP394(アベチムス(abetimus))(B細胞を枯渇させ、又は不活化する因子)、例えば、リツキシマブ(抗CD20抗体)、リンホスタット−B(抗BlyS抗体)、TNFアンタゴニスト、例えば、抗TNF抗体、Adalimumab(PCT公開WO97/29131;HUMIRA)、CA2(REMICADE)、CDP571、TNFR−Ig構築物(p75TNFRIgG(ENBREL及びp55TNFRIgG(LENERCEPT))及びbcl−2阻害剤(トランスジェニックマウス中でのbcl−2の過剰発現は、狼瘡様の表現型を引き起こすことが示されているので(Marquina,Regina et al.,Journal of Immunology(2004)、172(11),7177−7185)、阻害は治療効果を有すると予想される。)とともに使用され得る。
【0346】
本発明の医薬組成物は、本発明の結合タンパク質の「治療的有効量」又は「予防的有効量」を含み得る。「治療的有効量」は、必要な投薬量で及び必要な期間にわたって、所望の治療的結果を達成するのに有効な量を表す。結合タンパク質の治療的有効量は、当業者によって決定され得、個体の病状、年齢、性別及び体重並びに結合タンパク質が個体内で所望の応答を惹起する能力などの因子に従って変動し得る。治療的有効量は、治療的に有益な効果が抗体又は抗体部分のあらゆる毒性効果又は有害効果を上回る量でもある。「予防的有効量」は、必要な投薬量で及び必要な期間にわたって、所望の予防的結果を達成するのに有効な量を表す。典型的には、疾病のより初期段階の前に又は疾病のより初期段階において、予防的投薬が対象に使用されるので、予防的有効量は、治療的有効量より少ない。
【0347】
投薬計画は、最適な所望の応答(例えば、治療的応答又は予防的応答)を与えるように調整され得る。例えば、単一のボーラスを投与することができ、複数の分割された用量を経時的に投与することができ、又は治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少若しくは増加させ得る。投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、投薬単位形態で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される投薬単位形態は、治療されるべき哺乳動物対象に対する統一された投薬として適した、物理的に分離された単位を表し、各単位は、必要とされる医薬担体とともに、所望される治療効果を生じるように計算された活性化合物の所定量を含有する。本発明の投薬単位形態に対する規格は、(a)活性化合物の特有の特徴及び達成されるべき具体的な治療効果又は予防効果並びに(b)個体における過敏症の治療用のこのような活性化合物を配合する分野に固有の制約によって規定され、これらに直接依存する。
【0348】
本発明の結合タンパク質の治療的又は予防的有効量に対する典型的な非限定的範囲は、0.1から20mg/kg、例えば1から10mg/kgである。緩和されるべき症状の種類及び重度に応じて、投薬量の値が変化し得ることに注意すべきである。何れかの具体的な患者に対して、個体の要求に従って、組成物の投与を行い又は監督している者の専門的判断に従って、具体的な投薬計画を経時的に調整すべきこと、及び、本明細書に記載されている投薬量の範囲は典型的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載されている組成物の範囲又は実施に限定することを意図したものではないことをさらに理解すべきである。
【0349】
V.診断薬
本明細書中の開示は、診断的用途も提供する。これは、以下でさらに明解にされる。
【0350】
I.アッセイの方法
本開示は、本明細書に記載されている少なくとも1つのDVD−Igを用いて、検査試料中の分析物(又はその断片)の存在、量又は濃度を測定するための方法も提供する。本分野において公知であるあらゆる適切なアッセイを前記方法において使用することができる。例には、サンドイッチイムノアッセイ(放射性同位体検出(ラジオイムノアッセイ(RIA))及び酵素検出(酵素イムノアッセイ(EIA)又は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(例えば、Quantikine ELISAアッセイ、R&DSystems、Minneapolis、MN))を含む、例えば、モノクローナル、ポリクローナル及び/又はDVD−Igサンドイッチイムノアッセイ又はそのあらゆる変形(例えば、モノクローナル/DVD−Ig、DVD−Ig/ポリクローナルなど))、競合阻害イムノアッセイ(例えば、フォワード及びリバース)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA;fluorescence polarization immunoassay)、酵素多重化イムノアッセイ技術(EMIT;enzyme multiplied immunoassay technique)、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET);及び均質な化学発光アッセイなどのイムノアッセイが含まれるが、これらに限定されない。SELDIをベースとするイムノアッセイでは、目的の分析物(又はその断片)を特異的に結合する捕捉試薬が、予め活性化されたタンパク質チップアレイなどの、質量分析プローブの表面に付着される。次いで、分析物(又はその断片)は、バイオチップ上に特異的に捕捉され、捕捉された分析物(又はその断片)は、質量分析によって検出される。あるいは、分析物(又はその断片)は捕捉試薬から溶出され、伝統的なMALDI(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化)によって又はSELDIによって検出することができる。化学発光微粒子イムノアッセイ、特に、ARCHITECT
(R)自動化分析装置(Abbott Laboratories, Abbott Park, IL)を使用するものは、好ましいイムノアッセイの一例である。
【0351】
例えば、本明細書に記載されているDVD−Igが免疫診断試薬として及び/又は分析物イムノアッセイキット中で使用される場合、尿、血液、血清及び血漿並びにその他の体液を収集し、取り扱い、及び加工処理するための本分野で周知の方法が本開示の実施において使用される。検査試料は、抗体、抗原、ハプテン、ホルモン、薬物、酵素、受容体、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチドなど、目的の分析物の他にさらなる部分を含むことができる。例えば、試料は、対象から得られる全血試料であり得る。検査試料(特に、全血)は、例えば、前処理試薬を用いて、本明細書に記載されているイムノアッセイの前に処理されることが必要であり得又は所望され得る。前処理が必要でない場合でさえ(例えば、多くの尿試料)、(例えば、市販のプラットフォーム上での治療計画の一環として)必要に応じて前処理を行うことができる。
【0352】
前処理試薬は、本発明のイムノアッセイ及びキットともに使用するのに適したあらゆる試薬であり得る。前処理は、(a)1つ若しくはそれ以上の溶媒(例えば、メタノール及びエチレングリコール)、及び必要に応じて塩、(b)1つ若しくはそれ以上の溶媒及び塩、及び必要に応じて界面活性剤、(c)界面活性剤又は(d)界面活性剤及び塩を必要に応じて含む。前処理試薬は本分野において公知であり、このような前処理は、例えば、文献に記載されているように(例えば、Yatscoff et al., Abbott TDx Monoclonal Antibody Assay Evaluated for Measuring Cyclosporine in Whole Blood, Clin.Chem.36:1969−1973(1990)及びWallemacq et al., Evaluation of the New AxSYM Cyclosporine Assay:Comparison with TDx Monoclonal Whole Blood and EMIT Cyclosporine Assays, Clin.Chem.45:432−435(1999)を参照)、及び/又は市販されているように、Abbott TDx、AxSYM
(R)及びARCHITECT
(R)分析装置(Abbott Laboratories, Abbott Park, IL)上でのアッセイのために使用される場合のように、使用することができる。さらに、前処理は、Abbottの米国特許第5,135,875号、欧州特許公開第0 471 293号、2006年12月29日に出願された米国仮特許出願第60/878,017号及び米国特許出願公開第2008/0020401号(前処理に関するその教示に関して、参照により、その全体が組み込まれる。)に記載されているように行うことができる。前処理試薬は、不均質剤又は均質剤であり得る。
【0353】
不均質な前処理試薬を用いると、前処理試薬は試料中に存在する分析物結合タンパク質(例えば、分析物又はその断片に結合することができるタンパク質)を沈殿させる。このような前処理工程は、試料に前処理剤を添加することによって形成された混合物の上清を沈殿された分析物結合タンパク質から分離することによって、全ての分析物結合タンパク質を除去することを含む。このようなアッセイでは、結合タンパク質が一切存在しない混合物の上清がアッセイにおいて使用され、抗体捕捉工程へと直接進む。
【0354】
均質な前処理試薬を用いると、このような分離工程は存在しない。検査試料と前処理試薬の完全な混合物を、標識された抗分析物抗体(又は抗原的に反応性のその断片)などの、分析物(又はその断片)に対する標識された特異的結合対と接触させる。このようなアッセイのために使用される前処理試薬は、第一の特異的結合対による捕捉の前又は間の何れかに、前処理された検査試料混合物中に通例希釈される。このような希釈に関わらず、前処理試薬のある量が、捕捉の間に、検査試料混合物中になお存在(又は残存)する。本発明によれば、標識された特異的結合対は、DVD−Ig(又はその断片、変形物又は変形物の断片)であり得る。
【0355】
不均質なフォーマットでは、対象から検査試料を取得した後に、第一の混合物が調製される。混合物は、分析物(又はその断片)と第一の特異的結合対に関して評価されている検査試料を含有し、検査試料中に含有される第一の特異的結合対及び何れかの分析物は第一の特異的結合対−分析物複合体を形成する。好ましくは、第一の特異的結合対は、抗分析物抗体又はその断片である。第一の特異的結合対は、本明細書中に記載されているDVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)であり得る。混合物を形成するために検査試料及び第一の特異的結合対が添加される順番は重要でない。好ましくは、第一の特異的結合対は固相上に固定化される。(第一の特異的結合対及び任意に第二の特異的結合対に対する)イムノアッセイにおいて使用される固相は、磁気粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、フィルム、ろ紙、ディスク及びチップなどの(但し、これらに限定されない。)、本分野において公知のあらゆる固相であり得る。
【0356】
第一の特異的結合対−分析物複合体を含有する混合物が形成された後、本分野において公知の何れかの技術を用いて、全ての結合していない分析物を複合体から除去する。例えば、結合していない分析物は洗浄によって除去することができる。しかしながら、望ましくは、検査試料中に存在する全ての分析物が第一の特異的結合対によって結合されるように、第一の特異的結合対は検査試料中に存在する全ての分析物より過剰に存在する。
【0357】
全ての結合していない分析物が除去された後、第一の特異的結合対−分析物−第二の特異的結合対複合体を形成するために、第二の特異的結合対を混合物に添加する。好ましくは、第二の特異的結合対は、第一の特異的結合対によって結合された分析物上のエピトープとは異なる分析物上のエピトープに結合する抗分析物抗体である。さらに、同じく好ましくは、第二の特異的結合対は、上記されている検出可能な標識で標識され、又は上記されている検出可能な標識を含有する。第二の特異的結合対は、本明細書中に記載されているDVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)であり得る。
【0358】
本分野において公知のあらゆる適切な検出可能な標識を使用することができる。例えば、検出可能な標識は、放射性標識(
3H、
125I、
35S、
14C、
32P及び
33Pなど)、酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリペルオキシダーゼ、グルコース6−リン酸脱水素酵素など)、化学発光標識(アクリジニウムエステル、チオエステル又はスルホンアミド;ルミノール、イソルミノール、フェナントリジニウムエステルなど)、蛍光標識(フルオレセイン(例えば、5−フルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、3’6−カルボキシフルオレセイン、5(6)−カルボキシフルオレセイン、6−ヘキサクロロ−フルオレセイン、6−テトラクロロフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナートなど))、ローダミン、フィコビリタンパク質、R−フィコエリトリン、量子ドット(例えば、硫化亜鉛でキャップされたセレン化カドミウム)、温度測定標識又はイムノ−ポリメラーゼ連鎖反応標識であり得る。標識、標識手法及び標識の検出についての序説は、「Polak and Van Noorden, Introduction to Immunocytochemistry, 2
nd ed., Springer Verlag, N.Y. (1997)」及びMolecular Probes, Inc., Eugene, Oregonによって発行されたハンドブック兼カタログである「Haugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (1996)」に見出される。FPIAでは、蛍光標識を使用することができる(例えば、米国特許第5,593,896号、米国特許第5,573,904号、米国特許第5,496,925号、米国特許第5,359,093号及び米国特許第5,352,803号参照(これらの全体は、参照により、本明細書に組み込まれる。))。均質な又は不均質な化学発光アッセイでは、アクリジニウム化合物を検出可能な標識として使用することができる(例えば、Adamczyk et al., Bioorg.Med.Chem.Lett.16:1324−1328(2006); Adamczyk et al., Bioorg.Med.Chem.Lett.4:2313−2317(2004);Adamczyk et al., Biorg.Med.Chem.Lett.14:3917−3921 (2004);及びAdamczyk et al., Org.Lett.5:3779−3782 (2003)参照)。
【0359】
好ましいアクリジニウム化合物は、アクリジニウム−9−カルボキサミドである。アクリジニウム9−カルボキサミドを調製するための方法は、「Mattingly, J. Biolumin.Chemilumin.6:107−114(1991);Adamczyk et al.,J.Org.Chem.63:5636−5639 (1998);Adamczyk et al., Tetrahedron 55:10899−10914 (1999); Adamczyk et al., Org.Lett.1 :779−781(1999);Adamczyk et al., Bioconjugate Chem.11:714−724(2000);Mattingly et al., In Luminescence Biotechnology:Instruments and Applications; Dyke, K.V.Ed.;CRC Press:Boca Raton, pp.77−105(2002);Adamczyk et al.,Org.Lett.5:3779−3782(2003);及び米国特許第5,468,646号、米国特許第5,543,524号及び米国特許第5,783,699号に記載されている。別の好ましいアクリジニウム化合物は、アクリジニウム−9−カルボキシラートアリールエステルである。アクリジニウム−9−カルボキシラートアリールエステルの例は、10−メチル−9−(フェノキシカルボニル)アクリジニウムフルオロスルホナート(Cayman Chemical, Ann Arbor, MIから入手可能)である。アクリジニウム9−カルボキシラートアリールエステルを調製する方法は、「McCapra et al.,Photochem.Photobiol.4:1111−21(1965);Razavi et al.,Luminescence 15:245−249(2000);Razavi et al.,Luminescence 15:239−244(2000)及び米国特許第5,241,070号(これらの各々は、該当する箇所に関するその教示に関して、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。アクリジニウム9−カルボキシラートアリールエステル及びその使用に関するさらなる詳細は、米国特許公開第2008−0248493号に記載されている。
【0360】
(例えば、上記アクリジニウム又は他の化学発光剤を使用する)化学発光アッセイは、「Adamczyk et al.,Anal.Chim.Acta579(1):61−67(2006)」に記載されている方法に従って実施することができる。あらゆる適切なアッセイフォーマットを使用することが可能であり、マイクロプレート化学発光測定装置(Mithras LB−940,Berthold Technologies U.S.A.,LLC,Oak Ridge,TN)は、少量の複数試料のアッセイを迅速に可能にする。
【0361】
化学発光アッセイのための混合物を形成するために検査試料及び特異的結合対が添加される順番は重要でない。第一の特異的結合対が、アクリジニウム化合物などの化学発光剤で検出可能に標識されていれば、検出可能に標識された第一の特異的結合対−分析物複合体が形成される。あるいは、第二の特異的結合対が使用され、及び第二の特異的結合対がアクリジニウム化合物などの化学発光剤で検出可能に標識されていれば、検出可能に標識された第一の特異的結合対−分析物−第二の特異的結合体の複合体が形成される。標識されているか又は標識されていないかを問わず、全ての結合されていない特異的結合対は、洗浄などの本分野で公知の何れかの技術を用いて混合物から除去することができる。
【0362】
過酸化水素は、混合物中において原位置で生成され得、又は上記アクリジニウム化合物の添加前、添加と同時若しくは添加後に、混合物に提供若しくは供給され得る(例えば、過酸化水素源は、過酸化水素を含有することが知られている1つ若しくはそれ以上の緩衝液又は他の溶液である。)。過酸化水素は、当業者に自明な多数の方法で、原位置にて生成され得る。
【0363】
試料に少なくとも1つの塩基性溶液を同時に又はその後に添加すると、分析物の存在の指標となる検出可能なシグナル(すなわち、化学発光シグナル)が生成される。塩基性溶液は、少なくとも1つの塩基を含有し、10より大きい又は10に等しい、好ましくは、12より大きい又は12に等しいpHを有する。塩基性溶液の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及び炭酸水素カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。試料に添加される塩基性溶液の量は、塩基性溶液の濃度に依存する。使用される塩基性溶液の濃度に基づいて、当業者は、試料に添加される塩基性溶液の量を容易に決定することができる。
【0364】
生成される化学発光シグナルは、当業者に公知の定型的な技術を用いて検出することができる。生成されたシグナルの強度に基づいて、試料中の分析物の量を定量することができる。具体的には、試料中の分析物の量は生成されたシグナルの強度に比例する。存在する分析物の量は、生成された光の量を分析物に対する標準曲線と比較することによって、又は参照標準と比較することによって定量することができる。標準曲線は、質量分析法、重力測定法及び本分野で公知の他の技術によって、分析物の既知濃度の系列希釈又は溶液を用いて作製することができる。上記は、化学発光剤としてアクリジニウム化合物を使用することを強調して記載されているが、当業者は、他の化学発光剤を使用するために、容易にこの記述を改変することができる。
【0365】
一般に、分析物イムノアッセイは、サンドイッチフォーマットなど(但し、これに限定されない。)の本分野で公知のあらゆるフォーマットを用いて実施することができる。具体的には、1つのイムノアッセイフォーマットにおいて、試料中の分析物(ヒト分析物など)又はその断片を分離及び定量するために、少なくとも2つの抗体が使用される。より具体的には、少なくとも2つの抗体は、分析物(又はその断片)上の異なるエピトープに結合して、免疫複合体を形成し、これは、「サンドイッチ」と称される。一般に、イムノアッセイでは、検査試料中の分析物(又はその断片)を捕捉するために、1つ又はそれ以上の抗体を使用することが可能であり(これらの抗体は、しばしば、「捕捉」抗体と称される。)、1つ又はそれ以上の抗体は、サンドイッチに検出可能な(すなわち、定量可能な)標識を結合させるために使用することができる(これらの抗体は、しばしば、「検出抗体」、「連結体」と称される。)。従って、サンドイッチイムノアッセイフォーマットにおいて、本明細書に記載されているDVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)は、捕捉抗体、検出抗体又は両者として使用することができる。例えば、分析物(又はその断片)上の第一のエピトープを結合することができるドメインを有する1つのDVD−Igを捕捉抗体として使用することができ、及び/又は分析物(又はその断片)上の第二のエピトープを結合することができるドメインを有する別のDVD−Igを検出抗体として使用することができる。これに関して、分析物(又はその断片)上の第一のエピトープを結合することができる第一のドメイン及び分析物(又はその断片)上の第二のエピトープを結合することができる第二のドメインを有するDVD−Igは捕捉抗体及び/又は検出抗体として使用することができる。あるいは、2つ又はそれ以上の分析物を検出し、必要に応じて定量するために、第一の分析物(又はその断片)上のエピトープを結合することができる第一のドメイン及び第二の分析物(又はその断片)上のエピトープを結合することができる第二のドメインを有する1つのDVD−Igを捕捉抗体及び/又は検出抗体として使用することができる。単量体形態及び二量体/多量体形態など、ホモ又はヘテロ形態(heteromeric)であり得る2以上の形態で、分析物が試料中に存在し得る場合には、単量体形態上にのみ露出されているエピトープを結合することができるドメインを有する1つのDVD−Ig及び二量体/多量体形態の異なる部分上のエピトープを結合することができるドメインを有する別のDVD−Igを捕捉抗体及び/又は検出抗体として使用することができ、これにより、その分析物の異なる形態の検出及び必要に応じて定量が可能になる。さらに、単一のDVD−Ig内で及び/又はDVD−Ig間で異なる親和性を有するDVD−Igを使用することは、結合力の利点を与え得る。本明細書に記載されているイムノアッセイにおいて、DVD−Igの構造内に1つ又はそれ以上のリンカーを取り込ませることが一般に有用であり得、又は所望され得る。存在する場合、最適には、リンカーは、内側ドメインによるあるエピトープの結合及び外側ドメインによる別のエピトープの結合を可能にするのに十分な長さと構造的柔軟性を有するリンカーとすべきである。この点に関して、DVD−Igが2つの異なる分析物を結合することができ、及び一方の分析物が他方より大きい場合には、望ましくは、より大きな分析物は外側ドメインによって結合される。
【0366】
一般的に言えば、分析物(又はその断片)に関して検査されている試料(例えば、分析物を含有することが疑われている試料)は、少なくとも1つの捕捉抗体及び少なくとも1つの検出抗体(例えば、捕捉及び/又は検出抗体が複数の抗体を含む場合のように、第二の検出抗体又は第三の検出抗体又は連続した次数の抗体でさえあり得る。)と、同時に又は逐次に、任意の順序で接触させることができる。例えば、検査試料は、まず、少なくとも1つの捕捉抗体と接触させ、次いで(逐次に)少なくとも1つの検出抗体と接触させることができる。あるいは、検査試料は、まず、少なくとも1つの検出抗体と接触させ、次いで(逐次に)少なくとも1つの捕捉抗体と接触させることができる。さらに別の方法では、検査試料は、捕捉抗体及び検出抗体と同時に接触させることができる。
【0367】
サンドイッチアッセイフォーマットでは、分析物(又はその断片)を含有すると疑われている試料を、まず、第一の抗体/分析物複合体の形成を可能にする条件下で、少なくとも1つの第一の捕捉抗体と接触させる。2以上の捕捉抗体が使用される場合、2つ又はそれ以上の捕捉抗体を含む第一の捕捉抗体/分析物複合体が形成される。サンドイッチアッセイでは、抗体、すなわち、好ましくは、少なくとも1つの捕捉抗体は、検査試料中に予想される分析物(又はその断片)の最大量のモル濃度過剰量で使用される。例えば、抗体の約5μgから約1mg/mL緩衝液(例えば、微粒子コーティング緩衝液)を使用することができる。
【0368】
1つの抗体のみによる結合が必要とされるので、しばしば、小さな分析物を測定するために使用される競合阻害イムノアッセイは逐次的な古典的フォーマットを含む。逐次的競合阻害イムノアッセイにおいて、目的の分析物に対する捕捉抗体は、マイクロタイタープレートのウェル又はその他の固体支持体上に被覆される。目的の分析物を含有する試料がウェルに添加される場合、目的の分析物は捕捉抗体に結合する。洗浄後、標識された(例えば、ビオチン又は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP))分析物の既知量がウェルに添加される。シグナルを生成するために、酵素標識に対する基質が必要である。HRPに対する適切な基質の例は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)である。洗浄後、標識された分析物によって生成されたシグナルが測定され、シグナルは試料中の分析物の量に反比例する。古典的な競合阻害イムノアッセイでは、目的の分析物に対する抗体が固体支持体(例えば、マイクロタイタープレートのウェル)上に被覆される。しかしながら、逐次的競合阻害イムノアッセイと異なり、試料及び標識された分析物は同時にウェルに添加される。試料中の何れかの分析物が、捕捉抗体への結合に関して、標識された分析物と競合する。洗浄後、標識された分析物によって生成されたシグナルが測定され、シグナルは試料中の分析物の量に反比例する。
【0369】
必要に応じて、少なくとも1つの捕捉抗体(例えば、第一の捕捉抗体)と検査試料を接触させる前に、少なくとも1つの捕捉抗体を固体支持体に結合させることが可能であり、これは検査試料からの第一の抗体/分析物(又はその断片)複合体の分離を容易にする。捕捉抗体が結合される基材は、試料からの捕捉抗体−分析物複合体の分離を容易にするあらゆる適切な固体支持体又は固相であり得る。
【0370】
例には、マイクロタイタープレートなどのプレートのウェル、試験管、多孔性ゲル(例えば、シリカゲル、アガロース、デキストラン又はゼラチン)、ポリマー性フィルム(例えば、ポリアクリルアミド)、ビーズ(例えば、ポリスチレンビーズ又は磁気ビーズ)、フィルター/膜(例えば、ニトロセルロース又はナイロン)の細片、微粒子(例えば、ラテックス粒子、磁気化可能な微粒子(例えば、酸化第二鉄又は酸化クロムコア及びホモ又はヘテロポリマー性コート及び約1から10ミクロンの半径を有する微粒子))が含まれる。基材は、抗原を結合するための適切な表面親和性及び検出抗体による接近を可能にするのに十分な多孔性を有する適切な多孔性材料を含み得る。一般に、微孔性材料が好ましいが、水和された状態のゼラチン性材料を使用することができる。好ましくは、このような多孔性基材は、約0.01から約0.5mm、好ましくは約0.1mmの厚さを有するシートの形態である。孔の大きさは大きく変動し得るが、好ましくは、孔の大きさは、約0.025から約15ミクロン、より好ましくは、約0.15から約15ミクロンである。このような基材の表面は、基材への抗体の共有結合を引き起こす化学的プロセスによって活性化することができる。一般に疎水性の力を通じた吸着による、抗原又は抗体の基材への不可逆的な結合が生じる。あるいは、抗体を基材へ共有的に結合させるために化学的カップリング剤又は他の手段を使用することができる(但し、このような結合は、分析物に結合する抗体の能力を妨害しない。)。あるいは、抗体は、ストレプトアビジン(例えば、DYNAL
(R)Magnetic Beads,Invitrogen, Carlsbad, CA)又はビオチン(例えば、Power−Bind
TM−SA−MPストレプトアビジンによって被覆された微粒子(Seradyn, Indianapolis, IN)を用いて)で予め被覆されている微粒子又は抗種特異的モノクローナル抗体と結合させることができる。必要であれば、抗体上の様々な官能基との反応性を許容するために、基材を誘導体化することができる。このような誘導体化は、ある種のカップリング剤の使用を必要とし、その例には、無水マレイン酸、N−ヒドロキシスクシンイミド及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドが含まれるが、これらに限定されない。所望であれば、それぞれが分析物に対して特異的である1つ又はそれ以上の捕捉試薬(抗体(又はその断片)など)を、(例えば、バイオチップ構成におけるように)異なる物理的な又は割り当て可能な位置において、固相に付着させることができる(例えば、米国特許第6,225,047号、国際特許公開WO99/51773、米国特許第6,329,209号;国際特許公開WO00/56934及び米国特許第5,242,828号を参照)。捕捉試薬が固相支持体としての質量分析プローブに付着されている場合、プローブに結合された分析物の量は、レーザー脱離イオン化質量分析法によって検出することができる。あるいは、1つ又はそれ以上の捕捉試薬で誘導体化されており、それにより、単一の場所に分析物を捕捉する異なるビーズを単一のカラムに充填することができる(抗体によって誘導体化された、ビーズをベースとする技術、例えば、Luminex(Austin,TX)のxMAP技術を参照)。
【0371】
分析物(又はその断片)に関してアッセイされている検査試料を少なくとも1つの捕捉抗体(例えば、第一の捕捉抗体)と接触させた後、第一の抗体(又は複数の抗体)−分析物(又はその断片)複合体の形成を可能にするために、混合物を温置する。温置は、約4.5から約10.0のpHで、約2℃から約45℃の温度で、少なくとも約1分から約18時間、好ましくは約1から約24分間、最も好ましくは約4から約18分間実施され得る。本明細書に記載されているイムノアッセイは、1工程で(検査試料、少なくとも1つの捕捉抗体及び少なくとも1つの検出抗体が、反応容器へ逐次に又は同時に全て添加されることを意味する。)又は2工程、3工程などの2以上の工程で実施することができる。
【0372】
(第一の又は複数の)捕捉抗体/分析物(又はその断片)複合体の形成後、次いで、この複合体を、(第一の又は複数の)捕捉抗体/分析物(又はその断片)/第二の検出抗体複合体の形成を可能にする条件下で少なくとも1つの検出抗体と接触させる。明確にするために、「第二の」抗体(例えば、第二の検出抗体)という見出しが付いているが、実際には、捕捉及び/又は検出のために複数の抗体が使用される場合、少なくとも1つの検出抗体は、イムノアッセイにおいて使用される第二、第三、第四の抗体などであり得る。捕捉抗体/分析物(又はその断片)複合体を2以上の検出抗体と接触させる場合、(第一の又は複数の)捕捉抗体/分析物(又はその断片)/(複数の)検出抗体複合体が形成される。捕捉抗体(例えば、第一の捕捉抗体)と同様に、少なくとも1つの(例えば、第二の及びあらゆる以降の)検出抗体を捕捉抗体/分析物(又はその断片)複合体と接触させる場合、(第一の又は複数の)捕捉抗体/分析物(又はその断片)/(第二の又は複数の)検出抗体複合体の形成のために、上に記載されている条件と同様の条件下での温置の期間が必要とされる。好ましくは、少なくとも1つの検出抗体は検出可能な標識を含有する。検出可能な標識は、(第一の又は複数の)捕捉抗体/分析物(又はその断片)/(第二の又は複数の)検出抗体複合体の形成の前に、同時に又は後に、少なくとも1つの検出抗体(例えば、第二の検出抗体)に結合させることができる。本分野において公知のあらゆる検出可能な標識を使用することができる(Polak and Van Noorden (1997) and Haugland (1996)参考文献を含む、上記考察を参照)。
【0373】
検出可能な標識は、直接又はカップリング剤を通じて抗体に結合させることができる。使用可能なカップリング剤の例は、Sigma−Aldrich,St.Louis,MOから市販されているEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、塩酸塩)である。使用可能な他のカップリング剤が、本分野において公知である。抗体に検出可能な標識を結合させる方法は、本分野において公知である。さらに、CPSP−アクリジニウムエステル(すなわち、9−[N−トシル−N−(3−カルボキシプロピル)]−10−(3−スルホプロピル)アクリジニウムカルボキサミド)又はSPSP−アクリジニウムエステル(すなわち、N10−(3−スルホプロピル)−N−(3−スルホプロピル)−アクリジニウム−9−カルボキサミドなど、検出可能な標識の抗体へのカップリングを容易にする末端基を既に含有する多くの検出可能な標識を購入し、又は合成することができる。
【0374】
(第一の又は複数の)捕捉抗体/分析物/(第二の又は複数の)検出抗体複合体は、標識の定量前に、検査試料の残りから分離することができるが、分離しなければならないわけではない。例えば、少なくとも1つの捕捉抗体(例えば、第一の捕捉抗体)をウェル又はビーズなどの固体支持体に結合させる場合、分離は、固体支持体との接触から(検査試料の)流体を除去することによって達成され得る。あるいは、少なくとも1つの第一の捕捉抗体が固体支持体に結合されている場合には、第一の(複数の)抗体/分析物/第二の(複数の)抗体複合体を形成させるために、少なくとも1つの第一の捕捉抗体を、分析物を含有する試料及び少なくとも1つの第二の検出抗体と同時に接触させた後、固体支持体との接触から流体(検査試料)を除去し得る。少なくとも1つの第一の捕捉抗体が固体支持体に結合されていない場合、標識の量の定量のために、(第一の又は複数の)捕捉抗体/分析物/(第二の又は複数の)検出抗体複合体を検査試料から除去する必要はない。
【0375】
標識された捕捉抗体/分析物/検出抗体複合体(例えば、第一の捕捉抗体/分析物/第二の検出抗体複合体)の形成後、本分野において公知の技術を用いて、複合体中の標識の量を定量する。例えば、酵素標識が使用される場合、標識された複合体は、発色などの定量可能な反応を与える標識に対する基質と反応させる。標識が放射性標識であれば、標識は、シンチレーションカウンターなどの適切な手段を用いて定量される。標識が蛍光標識である場合、1つの色の光(「励起波長」として知られる。)で標識を刺激し、刺激に応答して標識により発せられる別の色(「発光波長」として知られる。)を検出することによって、標識を定量する。標識が化学発光標識である場合、視覚的に又はルミノメータ、X線フィルム、高速写真フィルム、CCDカメラなどを使用することによって発せられた光を検出することによって、標識を定量する。複合体中の標識の量が定量されたら、既知の濃度の分析物又はその断片の系列希釈を用いて作製された標準曲線の使用によるなど、適切な手段によって、検査試料中の分析物又はその断片の濃度を測定する。分析物又はその断片の系列希釈を使用する以外に、標準曲線は、重量分析的に、質量分析によって及び本分野で公知の他の技術によって作製することができる。
【0376】
ARCHITECT
(R)分析装置を使用する化学発光微粒子アッセイでは、連結体希釈液のpHは約6.0+/−0.2とすべきであり、微粒子コーティング緩衝液は概ね室温(すなわち、約17から約27℃)に維持すべきであり、微粒子コーティング緩衝液のpHは約6.5+/−0.2とすべきであり、微粒子希釈液のpHは約7.8+/−0.2とすべきである。固体は、好ましくは約0.2%未満、約0.15%未満、約0.14%未満、約0.13%未満、約0.12%未満又は約0.11%未満など、約0.10%などである。
【0377】
FPIAは、競合的結合イムノアッセイの原理に基づく。蛍光標識された化合物は、線形的に偏光された光によって励起されると、その回転速度に反比例する偏光度を有する蛍光を発する。蛍光的に標識された追跡物質−抗体複合体が線形的に偏光された光によって励起されると、光が吸収される時点と光が発せられる時点の間に、蛍光色素の回転が抑制されるので、発せられた光は高度に偏光された状態を保つ。「遊離の」追跡物質化合物(すなわち、抗体に結合されていない化合物)が線形的に偏光された光によって励起されると、その回転は、競合的結合イムノアッセイにおいて産生された対応する追跡物質−抗体連結体よりずっと速い。特殊な取り扱い及び廃棄を必要とする放射性物質が存在しないので、FPIAはRIAより有利である。さらに、FPIAは、容易に及び迅速に実施することができる均質なアッセイである。
【0378】
上記に照らして、検査試料中の分析物(又はその断片)の存在、量又は濃度を測定する方法が提供される。この方法は、(i)(i’)抗体、分析物に結合することができる抗体の断片、分析物に結合することができる抗体の変形物、分析物に結合することができる抗体の変形物の断片及び分析物に結合することができるDVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)の少なくとも1つ及び(ii’)少なくとも1つの検出可能な標識を使用すること、並びに(ii)検査試料中の分析物(又はその断片)の存在、量又は濃度の直接的な又は間接的な指標としての検出可能な標識によって生成されたシグナルを、対照又は検量物質中の分析物(又はその断片)の存在、量又は濃度の直接的な又は間接的な指標として生成されたシグナルと比較することを含む、アッセイによって、分析物(又はその断片)に関して検査試料をアッセイすることを含む。検量物質は、検量物質の各々が分析物の濃度において他の検量物質と異なる一連の検量物質の一部であってよい。
【0379】
前記方法は、(i)第一の特異的結合対/分析物(又はその断片)複合体を形成するために、抗体、分析物に結合することができる抗体の断片、分析物に結合することができる抗体の変形物、分析物に結合することができる抗体の変形物の断片及び分析物に結合することができるDVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)からなる群から選択される、分析物(又はその断片)に対する少なくとも1つの第一の特異的結合対と検査試料を接触させること、(ii)第一の特異的結合対/分析物(又はその断片)/第二の特異的結合対複合体を形成するために、検出可能に標識された抗分析物抗体、分析物に結合することができる抗分析物抗体の検出可能に標識された断片、分析物に結合することができる抗分析物抗体の検出可能に標識された変形物、分析物に結合することができる抗分析物抗体の変形物の検出可能に標識された断片及び検出可能に標識されたDVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)からなる群から選択される、分析物(又はその断片)に対する少なくとも1つの第二の特異的結合対と第一の特異的結合対/分析物(又はその断片)複合体を接触させること、並びに(iii)(ii)で形成された第一の特異的結合対/分析物(又はその断片)/第二の特異的結合対複合体中の検出可能な標識によって生成されるシグナルを検出又は測定することによって、検査試料中の分析物の存在、量又は濃度を測定することを含み得る。本明細書中に記載されているような、分析物(又はその断片)に対する少なくとも1つの第一の特異的結合対及び/又は分析物(又はその断片)に対する少なくとも1つの第二の特異的結合対がDVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)である方法は、好ましい場合があり得る。
【0380】
あるいは、前記方法は、抗体、分析物に結合することができる抗体の断片、分析物に結合することができる抗体の変形物、分析物に結合することができる抗体の変形物の断片及びDVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)からなる群から選択される、分析物(又はその断片)に対する少なくとも1つの第一の特異的結合対と検査試料を接触させること、並びに、同時に又は逐次に、何れかの順序で、少なくとも1つの第一の特異的結合対への結合に関して分析物(又はその断片)と競合することが可能であり及び検出可能に標識された分析物、第一の特異的結合対に結合することができる分析物の検出可能に標識された断片、第一の特異的結合対に結合することができる分析物の検出可能に標識された変形物及び第一の特異的結合対に結合することができる分析物の変形物の検出可能に標識された断片からなる群から選択される少なくとも1つの第二の特異的結合対と検査試料を接触させることを含み得る。検査試料中に存在する何れかの分析物(又はその断片)及び少なくとも1つの第二の特異的結合対は、互いに競合して、それぞれ、第一の特異的結合対/分析物(又はその断片)複合体及び第一の特異的結合対/第二の特異的結合対複合体を形成する。前記方法は、(ii)で形成された第一の特異的結合対/第二の特異的結合対複合体中の検出可能な標識によって生成されたシグナルを検出又は測定することによって、検査試料中の分析物の存在、量又は濃度を測定することをさらに含み、第一の特異的結合対/第二の特異的結合対/第二の特異的結合対複合体中の検出可能な標識によって生成されるシグナルは、検査試料中の分析物の量又は濃度に反比例する。
【0381】
上記方法は、検査試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を診断し、予測し、又は評価することをさらに含み得る。前記方法が、検査試料が得られた患者の治療的/予防的処置の有効性を評価することをさらに含む場合には、前記方法は、有効性を向上させる必要に応じて、患者の治療的/予防的処置を修正することを場合によってさらに含む。前記方法は、自動化されたシステム又は半自動化されたシステムで使用するために適宜に改変され得る。
【0382】
アッセイ(及びそのためのキット)の方法に関して、市販の抗分析物抗体又は文献に記載されている抗分析物を作製するための方法を使用することが可能であり得る。様々な抗体の商業的な供給物には、Santa Cruz Biotechnology Inc.(Santa Cruz,CA)、Gen Way Biotech, Inc.(San Diego,CA)及びR&D Systems(RDS;Minneapolis,MN)が含まれるが、これらに限定されない。
【0383】
一般に、例えば、疾病又は疾病のリスクを検出するために、分析物又はその断片に関して検査試料をアッセイする際に得られた結果を評価するためのベンチマークとして、所定のレベルを使用することができる。一般に、このような比較を行う際には、分析物の存在、量又は濃度の、疾病、疾患若しくは症状の特定の段階若しくは評価項目との又は特定の臨床的徴候との結び付け又は関連付けができるような適切な条件下で、十分な回数、特定のアッセイを実施することによって、所定のレベルが得られる。典型的には、所定のレベルは、参照対象(又は対象の集団)のアッセイを用いて得られる。測定される分析物には、その断片、その分解産物及び/又はその酵素的切断産物が含まれ得る。
【0384】
特に、疾病の進行及び/又は治療をモニターするために使用される所定のレベルに関して、分析物又はその断片の量又は濃度は、「変化せず」、「好ましい」(又は「好ましく変化した」)又は「好ましくない」(又は「好ましくないように変化した」)であり得る。「上昇した」又は「増加した」は、典型的な若しくは正常なレベル若しくは範囲(例えば、所定のレベル)より高い、又は別の参照レベル若しくは範囲(例えば、より早い又はベースライン試料)より高い検査試料中の量又は濃度を表す。「低下した」又は「減少した」という用語は、典型的な若しくは正常なレベル若しくは範囲(例えば、所定のレベル)より低い、又は別の参照レベル若しくは範囲(例えば、より早い又はベースライン試料)より低い検査試料中の量又は濃度を表す。「変化した」という用語は、典型的な若しくは正常なレベル若しくは範囲(例えば、所定のレベル)に比べて又は別の参照レベル若しくは範囲(例えば、より早い又はベースライン試料)に比べて変化した(増加した又は減少した)試料中の量又は濃度を表す。
【0385】
分析物に対する典型的な又は正常なレベル又は範囲は、標準的な慣行に従って定義される。幾つかの事例における分析物のレベルは極めて低いので、典型的な若しくは正常なレベル若しくは範囲又は参照レベル若しくは範囲と比べて、実験誤差又は試料の変動によって説明できない何らかの正味の変化が存在するときには、いわゆる変化したレベル又は変化が起こったと考えることができる。従って、ある試料中で測定されたレベルは、いわゆる正常な対象から得られた類似の試料中で測定されたレベル又はレベルの範囲と比較される。この文脈において、「正常な対象」は、検出可能な疾病を持たない個体であり、例えば、「正常な」(時に、「対照」と称される。)患者又は集団は、それぞれ、例えば、検出可能な疾病を示さない患者又は集団である。さらに、分析物はヒト集団の大半に高いレベルで一般に見出されないことに鑑みれば、「正常な対象」は、分析物の大幅な検出可能な増加した又は上昇した量又は濃度を持たない個体と考えることができ、「正常な」(時に、「対照」と称される。)患者又は集団は、分析物の大幅な検出可能な増加した又は上昇した量又は濃度を示さない患者又は集団である。「見かけ上正常な対象」は、分析物が未だ評価されていない又は現在評価されている対象である。分析物が通常検出不能である(例えば、正常なレベルがゼロであり、又は正常集団の約25から約75パーセンタイルの範囲内にある)が、検査試料中には検出される場合に、及び正常なレベルより高いレベルで、分析物が検査試料中に存在する場合に、分析物のレベルは「上昇した」と言われる。従って、とりわけ、本開示は、特定の疾病、疾患又は症状を有する又は有するリスクがある対象に対してスクリーニングする方法を提供する。アッセイの方法は、他のマーカーのアッセイなども含み得る。
【0386】
従って、本明細書に記載されている方法は、対象が所定の疾病、疾患若しくは症状を有するかどうか、又はこれらを発症するリスクを有するかどうかを決定するために使用することもできる。具体的には、このような方法は、以下の工程を含み得る。
【0387】
(a)(例えば、本明細書に記載されている方法又は本分野で公知の方法を用いて)分析物(又はその断片)の、対象から得た検査試料中の濃度又は量を測定する工程;及び
(b)工程(a)で測定された分析物(又はその断片)の濃度又は量を所定のレベルと比較し、工程(a)で測定された分析物の濃度又は量が所定のレベルに関して好ましければ、対象は所定の疾病、疾患若しくは症状を有しておらず、又はこれらに対するリスクを有していないと決定される工程。しかしながら、工程(a)において測定された分析物の濃度又は量が所定のレベルに関して好ましくなければ、対象は、所定の疾病、疾患若しくは症状を有しており、又はこれらに対するリスクを有していると決定される。
【0388】
さらに、対象中の疾病の進行をモニターする方法が本明細書中に提供される。最適には、前記方法は、
(a)対象から得られた検査試料中の分析物の濃度又は量を測定する工程;
(b)前記対象から得られたより後の検査試料中の分析物の濃度又は量を測定する工程;及び
(c)工程(b)で測定された分析物の濃度又は量を工程(a)で測定された分析物の濃度又は量と比較し、工程(a)で測定された分析物の濃度又は量と比較したときに、工程(b)で測定された濃度又は量が変化せず又は好ましくなければ、対象中の疾病は継続し、進行し、又は悪化したと決定される工程を含む。比較すると、工程(a)で測定された分析物の濃度又は量と比較したときに、工程(b)で測定された分析物の濃度又は量が好ましければ、対象中の疾病は継続せず、後退し、又は改善したと決定される。
【0389】
必要に応じて、前記方法は、工程(b)で測定された分析物の濃度又は量を、例えば、所定のレベルと比較することをさらに含む。さらに、必要に応じて、比較が工程(b)で測定された分析物の濃度又は量が、例えば、所定のレベルに関して好ましくないように変化した場合、前記方法は、ある期間、1つ又はそれ以上の医薬組成物で対象を治療することを含む。
【0390】
さらに、前記方法は、1つ又はそれ以上の医薬組成物での治療を受けている対象中の治療をモニターするために使用することができる。具体的には、このような方法は、対象が1つ又はそれ以上の医薬組成物を投与される前に、第一の検査試料を対象から得ることを含む。次に、(例えば、本明細書に記載されている方法又は本分野で公知の方法を用いて)、対象から得られた第一の検査試料中の分析物の濃度又は量が測定される。分析物の濃度又は量が測定された後に、分析物の濃度又は量は、次いで、所定のレベルと必要に応じて比較される。第一の検査試料中で測定された分析物の濃度又は量が所定のレベルより低ければ、対象は1つ又はそれ以上の医薬組成物で治療されない。しかしながら、第一の検査試料中で測定された分析物の濃度又は量が所定のレベルより高ければ、対象は、ある期間、1つ又はそれ以上の医薬組成物で治療される。1つ又はそれ以上の医薬組成物で対象が治療される期間は、当業者によって決定され得る(例えば、前記期間は、約7日から約2年間、好ましくは、約14日から約1年であり得る。)。
【0391】
1つ又はそれ以上の医薬組成物での治療の期間中、次いで、第二の及びその後の検査試料が対象から得られる。検査試料の数及び前記検査試料が対象から得られる時は重要ではない。例えば、1つ又はそれ以上の医薬組成物が対象に最初に投与されてから7日後に、第二の検査試料を取得することができ、1つ又はそれ以上の医薬組成物が対象に最初に投与されてから2週後に、第三の検査試料を取得することができ、1つ又はそれ以上の医薬組成物が対象に最初に投与されてから3週後に、第四の検査試料を取得することができ、1つ又はそれ以上の医薬組成物が対象に最初に投与されてから4週後に、第五の検査試料を取得することができる。
【0392】
各第二の又はその後の検査試料が対象から取得された後、(例えば、本明細書に記載されている又は本分野において公知の方法を用いて)、第二の又はその後の検査試料中の分析物の濃度又は量を測定する。次いで、第二の及びその後の各検査試料中において測定された分析物の濃度又は量を、第一の検査試料(例えば、最初に、所定のレベルと任意に比較された検査試料)中で測定された分析物の濃度又は量と比較する。工程(a)で測定された分析物の濃度又は量と比較したときに、工程(c)で測定された分析物の濃度又は量が好ましければ、対象中の疾病は継続せず、後退し、又は改善したと決定され、対象は工程(b)の1つ又は医薬組成物の投与を継続すべきである。しかしながら、工程(a)において測定された分析物の濃度又は量と比較したときに、工程(c)において測定された濃度又は量が変化せず、又は好ましくない場合には、対象中の疾病は継続し、進行し、又は悪化したと決定され、対象は、工程(b)において対象に投与された1つ若しくはそれ以上の医薬組成物のより高い濃度で治療されるべきであり、又は対象は、工程(b)において対象に投与された1つ若しくはそれ以上の医薬組成物とは異なる1つ若しくはそれ以上の医薬組成物で治療されるべきである。具体的には、対象の分析物のレベルを減少又は低下させるために以前に対象が服用した1つ又はそれ以上の医薬組成物とは異なる1つ又はそれ以上の医薬組成物で対象を治療することができる。
【0393】
一般に、反復検査が行われ得るアッセイ(例えば、疾病の進行及び/又は治療に対する応答をモニターする)に関しては、第二の又はそれ以降の検査試料は、第一の検査試料が対象から得られた後の時点のある期間に得られる。具体的には、対象から得られた第二の検査試料は、第一の検査試料が対象から得られた後の分、時間、日、週又は年に取得され得る。例えば、第二の検査試料は、第一の検査試料が対象から得られた約1分、約5分、約10分、約15分、約30分、約45分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約2週、約3週、約4週、約5週、約6週、約7週、約8週、約9週、約10週、約11週、約12週、約13週、約14週、約15週、約16週、約17週、約18週、約19週、約20週、約21週、約22週、約23週、約24週、約25週、約26週、約27週、約28週、約29週、約30週、約31週、約32週、約33週、約34週、約35週、約36週、約37週、約38週、約39週、約40週、約41週、約42週、約43週、約44週、約45週、約46週、約47週、約48週、約49週、約50週、約51週、約52週、約1.5年、約2年、約2.5年、約3.0年、約3.5年、約4.0年、約4.5年、約5.0年、約5.5.年、約6.0年、約6.5年、約7.0年、約7.5年、約8.0年、約8.5年、約9.0年、約9.5年又は約10.0年後の時点で対象から取得され得る。
【0394】
疾病の進行をモニターするために使用される場合、上記アッセイは急性症状に罹患している対象中の疾病の進行をモニターするために使用することができる。急性症状(救急救命症状)としても知られる。)は、急性の命に関わる疾病又は例えば、心血管系若しくは排泄系が関与する他の重大な医学的症状を表す。典型的には、救急救命症状は、病院を基本とする状況(緊急治療室、集中治療室、負傷センター又は他の緊急治療状況など(但し、これらに限定されない。))での急性の医学的介入又は救急隊若しくは他の現場を拠点とする医療職員による管理を必要とする症状を表す。救急救命症状に関しては、反復モニタリングは、より短い時間枠内で、すなわち、分、時間又は日に(例えば、約1分、約5分、約10分、約15分、約30分、約45分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日又は約7日)一般に行われ、同様に、最初のアッセイは、より短い時間枠内で(例えば、疾病又は症状の開始の概ね分、時間又は日に)一般に行われる。
【0395】
アッセイは、慢性又は非急性症状に罹患している対象中の疾病の進行をモニターするために使用することもできる。非救急救命症状又は非急性症状は、急性の、命に関わる疾病又は、例えば、心血管系及び/若しくは排泄系が関与する他の重大な医学的症状以外の症状を表す。典型的には、非急性症状には、より長期の又は慢性の期間の症状が含まれる。非急性症状に関しては、反復モニタリングは、一般に、より長い時間枠で、例えば、時間、日、週、月又は年で(例えば約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約2週、約3週、約4週、約5週、約6週、約7週、約8週、約9週、約10週、約11週、約12週、約13週、約14週、約15週、約16週、約17週、約18週、約19週、約20週、約21週、約22週、約23週、約24週、約25週、約26週、約27週、約28週、約29週、約30週、約31週、約32週、約33週、約34週、約35週、約36週、約37週、約38週、約39週、約40週、約41週、約42週、約43週、約44週、約45週、約46週、約47週、約48週、約49週、約50週、約51週、約52週、約1.5年、約2年、約2.5年、約3.0年、約3.5年、約4.0年、約4.5年、約5.0年、約5.5年、約6.0年、約6.5年、約7.0年、約7.5年、約8.0年、約8.5年、約9.0年、約9.5年又は約10.0年)に行われ、同様に、最初のアッセイは、より長い時間枠内で(例えば、疾病又は症状の開始の概ね分、時間、日、月又は年)一般に行われる。
【0396】
さらに、上記アッセイは、対象から得られた第一の検査試料を用いて実施することが可能であり、第一の検査試料は、尿、血清又は血漿などのある源から得られる。必要に応じて、次いで、上記アッセイは、対象から得られた第二の検査試料を用いて反復することが可能であり、第二の検査試料は別の源から得られる。例えば、第一の検査試料が尿から得られれば、第二の検査試料は血清又は血漿から得ることができる。第一の検査試料及び第二の検査試料を用いるアッセイから得られた結果を比較することができる。比較は、対象中の疾病又は症状の状況を評価するために使用することができる。
【0397】
さらに、本開示は、所定の疾病、疾患若しくは症状に対して素因を有する対象又は所定の疾病、疾患若しくは症状に罹患している対象に治療が有益かどうかを測定する方法にも関する。特に、本開示は、分析物コンパニオン診断法及び製品に関する。従って、本明細書に記載されている「対象中の疾病の治療をモニターする」方法は、さらに、治療に対する候補を選択し又は同定することも最適に包含し得る。
【0398】
従って、特定の実施形態において、本開示は、所定の疾病、疾患若しくは症状を有する対象又は所定の疾病、疾患若しくは症状に対してリスクを有する対象が治療の候補であるかどうかを測定する方法も提供する。一般に、対象は、所定の疾病、疾患若しくは症状のある症候を経験した者又は所定の疾病、疾患若しくは症状を有し若しくは所定の疾病、疾患若しくは症状に対してリスクを有すると実際に診断された者及び/又は本明細書に記載されているように、分析物若しくはその断片の好ましくない濃度若しくは量を示す者である。
【0399】
前記方法は、1つ若しくはそれ以上の医薬組成物で(例えば、特に、分析物を伴う作用機序に関連する医薬で)、免疫抑制療法で若しくは免疫吸収療法によって、対象を治療する前及び後に分析物が評価され、又はこのような治療後に、分析物が評価され、及び分析物の濃度若しくは量が所定のレベルに対して比較される、本明細書に記載されているアッセイを含んでもよい。治療後に観察される分析物の好ましくない濃度又は量は、さらなる治療又は継続した治療を受けることが対象にとって有益でないことを確認するのに対して、治療後に観察される分析物の好ましい濃度又は量は、さらなる治療又は継続した治療を受けることが対象にとって有益であることを確認する。この確認は、臨床試験の管理及び改善された患者の世話の提供を補助する。
【0400】
本明細書中のある実施形態は、本明細書に論述されている所定の疾病、疾患又は症状を評価するために使用された場合に有利であるが、他の疾病、疾患及び症状において分析物を評価するために、アッセイ及びキットを使用できることは言うまでもない。アッセイの方法は、他のマーカーのアッセイなども含み得る。
【0401】
アッセイの方法は、所定の疾病、疾患又は症状を軽減する化合物を同定するために使用することもできる。例えば、分析物を発現する細胞は、候補化合物と接触させることができる。化合物と接触された細胞中の分析物の発現のレベルは、本明細書に記載されているアッセイの方法を用いて、対照細胞中のレベルと比較することができる。
【0402】
II.キット
検査試料中の分析物(又はその断片)の存在、量又は濃度に関して検査試料をアッセイするためのキットも提供される。キットは、分析物(又はその断片)に関して検査試料をアッセイするための少なくとも1つの成分及び分析物(又はその断片)に関して検査試料をアッセイするための指示書を含む。分析物(又はその断片)に関して検査試料をアッセイするための少なくとも1つの成分は、任意に固相上に固定化された抗分析物DVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)を含む組成物を含み得る。
【0403】
キットは、イムノアッセイ(例えば、化学発光微粒子イムノアッセイ)によって、分析物に関して検査試料をアッセイするための少なくとも1つの成分及びイムノアッセイ(例えば、化学発光微粒子イムノアッセイ)によって、分析物に関して検査試料をアッセイするための指示書を含み得る。例えば、キットは、分析物に対する少なくとも1つの特異的結合対(抗分析物、モノクローナル/ポリクローナル抗体(又は分析物に結合することができるその断片、分析物に結合することができるその変形物若しくは分析物に結合することができる変形物の断片)又は抗分析物DVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)など、これらの何れも検出可能に標識することができる。)を含むことができる。これに代えて又はこれに加えて、キットは、抗分析物モノクローナル/ポリクローナル抗体(又は分析物に結合することができるその断片、分析物に結合することができるその変形物若しくは分析物に結合することができる変形物の断片)又は抗分析物DVD−Ig(又はその断片、変形物若しくは変形物の断片)(これらの何れも、固体支持体上に固定化され得る。)への結合に関して、検査試料中の何れかの分析物と競合することができる、検出可能に標識された分析物(又は抗分析物モノクローナル/ポリクローナル抗体若しくは抗分析物DVD−Ig(又はこれらの断片、変形物若しくは変形物の断片)に結合することができるその断片)を含み得る。キットは、検量物質又は対照(例えば、単離された又は精製された分析物)を含み得る。キットは、アッセイを実施するための少なくとも1つの容器(例えば、例えば第一の特異的結合対で既に被覆され得るチューブ、マイクロタイタープレート又は片)及び/又はアッセイ緩衝液若しくは洗浄緩衝液(これらの何れの1つも、濃縮された溶液、検出可能な標識(例えば、酵素標識)に対する基質溶液又は停止溶液として与えることができる。)などの緩衝液を含み得る。好ましくは、キットは、アッセイを実施するために必要である全ての成分、すなわち、試薬、標準物質、緩衝液、希釈剤などを含む。指示書は、紙の形態又はディスク、CD、DVDなどのコンピュータ読み取り可能な形態であり得る。
【0404】
抗分析物抗体又は抗分析物DVD−Igなどのあらゆる抗体若しくは追跡物質は、蛍光色素、放射性部分、酵素、ビオチン/アビジン標識、発色原、化学発光標識などの本明細書に記載されている検出可能な標識を取り込むことができ、又はキットは、検出可能な標識を実施するための試薬を含むことができる。抗体、検量物質及び/又は対照は、別の容器中に与え、又は適切なアッセイフォーマット中に(例えば、マイクロタイタープレート中に)予め分配することができる。
【0405】
必要に応じて、キットは、品質管理成分(例えば、感度パネル、検量物質及び陽性対照)を含む。品質管理試薬の調製は本分野において周知であり、様々な免疫診断製品に対する同封シート上に記載されている。感度パネルの要素は、アッセイ性能特性を確立するために必要に応じて使用され、さらに、イムノアッセイキット試薬の完全性及びアッセイの標準化の有用な指標となる。
【0406】
キットは、診断アッセイを実施し、又は品質管理評価を容易にするために必要とされる他の試薬(緩衝液、塩、酵素、酵素補因子、酵素基質、検出試薬など)も必要に応じて含み得る。検査試料の単離及び/又は処理のための緩衝液及び溶液などの他の成分(例えば、前処理試薬)も、キット中に含めることができる。キットは、1つ又はそれ以上の他の対照をさらに含むことができる。キットの成分の1つ又はそれ以上は凍結乾燥させることが可能であり、この場合には、キットは、凍結乾燥された成分を再構成するのに適した試薬をさらに含むことができる。
【0407】
キットの様々な成分は、必要に応じて、適切な容器(例えば、マイクロタイタープレート)中に任意に提供される。キットは、試料を保持又は保存するための容器(例えば、尿試料用の容器又はカートリッジ)をさらに含むことができる。適切な場合には、キットは、反応容器、混合容器及び試薬又は検査試料の調製を容易にする他の成分も必要に応じて含有し得る。キットは、注射器、ピペット、鉗子、計量スプーンなどの、検査試料の取得を補助するための1つ又はそれ以上の器具も含み得る。
【0408】
検出可能な標識が少なくとも1つのアクリジニウム化合物である場合、キットは、少なくとも1つのアクリジニウム−9−カルボキサミド、少なくとも1つのアクリジニウム−9−カルボキシラートアリールエステル又はこれらのあらゆる組み合わせを含むことができる。検出可能な標識が少なくとも1つのアクリジニウム化合物である場合、キットは、緩衝液、溶液及び/又は少なくとも1つの塩基性溶液などの、過酸化水素源も含むことができる。所望であれば、キットは、磁気粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、フィルム、ろ紙、ディスク又はチップなどの固相を含有し得る。
【0409】
III.キット及び方法の改変
キット(又はその成分)及びアッセイ(本明細書中に記載されているイムノアッセイなど)によって検査試料中の分析物の存在、量又は濃度を測定する方法は、例えば、米国特許第5,089,424号及び米国特許第5,006,309号に記載されているように、並びに例えば、ARCHITECT
(R)としてAbbott Laboratories(Abbott Park,IL)によって市販されているように、様々な自動化及び半自動化された系(固相が微粒子を含む系を含む。)で使用するために改変することができる。
【0410】
自動化されていない系(例えば、ELISA)と比べた自動化又は半自動化された系の差の幾つかには、第一の特異的結合対(例えば、抗分析物モノクローナル/ポリクローナル抗体(又はその断片、その変形物若しくはその変形物の断片)又は抗分析物DVD−Ig(又はその断片、その変形物若しくはその変形物の断片)が付着されており、何れかの方式で、サンドイッチの形成及び分析物の反応性を充填することができる基材並びに捕捉、検出及び/又は任意に行われる何れかの洗浄工程の長さ及びタイミングが含まれる。ELISAなどの自動化されていないフォーマットは、試料及び捕捉試薬との相対的により長い温置時間(例えば、約2時間)を必要とし得るのに対して、自動化された又は半自動化されたフォーマット(例えば、ARCHITECT
(R)、Abbott Laboratories)は、相対的により短い温置時間(例えば、ARCHITECT
(R)に関して、約18分)を有し得る。同様に、ELISAなどの自動化されていないフォーマットは、相対的により長い温置時間(例えば、約2時間)、連結体試薬などの検出抗体を温置し得るのに対して、自動化された又は半自動化されたフォーマット(例えば、ARCHITECT
(R))は、相対的により短い温置時間(例えば、ARCHITECT
(R)に関して、約4分)を有し得る。
【0411】
Abbott Laboratoriesから入手可能な他のプラットフォームには、AxSYM
(R)、IMx
(R)(例えば、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,294,404号参照)、PRISM
(R)、EIA(ビーズ)及びQuantum
TMII並びに他のプラットフォームが含まれるが、これらに限定されない。さらに、アッセイ、キット及びキット成分は、他のフォーマット中で、例えば、電気化学的又は他の携帯式又は治療地点(point−of−care)アッセイ系上で使用することができる。本開示は、例えば、サンドイッチイムノアッセイを実施する市販のAbbott Point of Care(i−STAT
(R)、Abbott Laboratories)電気化学的イムノアッセイ系に対して適用することができる。イムノセンサー並びに使い捨て検査装置におけるその製造及び操作方法は、例えば、米国特許第5,063,081号、米国特許公開第2003/0170881号、米国特許公開第2004/0018577号、米国特許公開第2005/0054078号及び米国特許公開第2006/0160164号(これらは、該当箇所に関するその教示に関して、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0412】
特に、I−STAT
(R)システムに対する分析物アッセイの改変に関しては、以下の構成が好ましい。微小作製されたシリコンチップは、金電流測定作用電流測定電極と銀−塩化銀参照電極の対を用いて製造される。作用電極の1つの上では、固定化された抗分析物モノクローナル/ポリクローナル抗体(又はその断片、その変形物若しくはその変形物の断片)又は抗分析物DVD−Ig(又はその断片、その変形物若しくはその変形物の断片)を有するポリスチレンビーズ(0.2mm直径)が、電極上のパターン化されたポリビニルアルコールのポリマーコーティングへ接着される。このチップは、イムノアッセイに適した流体工学フォーマットを用いて、I−STAT
(R)カートリッジ中に組み立てられる。カートリッジの試料保持チャンバーの壁の一部の上には、抗分析物モノクローナル/ポリクローナル抗体(又は分析物を結合することができる、その断片、その変形物若しくはその変形物の断片)又は抗分析物DVD−Ig(又は分析物を結合することができる、その断片、その変形物若しくはその変形物の断片)などの(これらの何れもが、検出可能に標識され得る。)分析物に対する特異的結合対を含む層が存在する。カートリッジの流体小袋内には、p−アミノフェノールホスファートを含む水性試薬が存在する。
【0413】
動作時に、分析物を含有すると疑われる試料が検査カートリッジの保持チャンバーに添加され、カートリッジはI−STAT
(R)リーダー中に挿入される。分析物に対する特異的結合対を試料中に溶解させた後、カートリッジ内のポンプ要素がチップを含有する導管内に試料を押し出す。ここでは、サンドイッチの形成を促進するように、ポンプ要素が振動する。アッセイの最後から2番目の工程では、チップから試料を洗浄除去し、廃棄チャンバー中に入れるために、流体は小袋から導管の中に押し出される。アッセイの最後の工程では、アルカリホスファターゼ標識は、p−アミノフェノールホスファートと反応してホスファート基を切断し、解離されたp−アミノフェノールを作用電極において電気化学的に酸化させる。測定された電流に基づいて、読み取り装置は、埋め込まれたアルゴリズム及び工場によって測定された検量曲線を用いて、試料中の分析物の量を計算することができる。
【0414】
さらに、本明細書に記載されている方法及びキットがイムノアッセイを実施するための他の試薬及び方法を必ず包含することは言うまでもない。例えば、本分野で公知であり、並びに/又は例えば、洗浄のために、連結体希釈液、微粒子希釈液として、及び/若しくは検量物質希釈液として使用するために容易に調製され若しくは最適化され得る様々な緩衝液が包含される。典型的な連結体希釈液は、ある種のキット(Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)中で使用され並びに2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、塩、タンパク質遮断剤、抗微生物剤及び界面活性剤を含有するARCHITECT
(R)連結体希釈液である。典型的な検量物質希釈液は、MES、他の塩、タンパク質遮断剤及び抗微生物剤を含有する緩衝液を含む、ある種のキット(Abbott Laboratories,Abbott Park,IL)で使用されるARCHITECT
(R)ヒト検量物質希釈液である。さらに、2008年12月31日に出願された米国特許出願第61/142,048号に記載されているように、改善されたシグナル生成は、例えば、シグナル増幅物質としてシグナル抗体に連結された核酸配列を用いて、I−Statカートリッジフォーマットで取得され得る。
【0415】
本明細書に記載されている本発明の方法の他の適切な改変及び適合が明白であり、本発明の範囲又は本明細書に開示されている実施形態から逸脱することなく、適切な均等物を用いてこれらを行い得ることが当業者に自明である。ここに、本発明を詳しく記載してきたが、例示のみを目的とし、本発明を限定することを意図したものではない以下の実施例を参照することによって、本発明がより明確に理解される。
【実施例】
【0416】
(実施例1)
DVD−Igの設計、構築及び分析
(実施例1.1)
親抗体及びDVD−Igを同定及び性質決定するために使用されたアッセイ
別段の記載がなければ、実施例を通じて、親抗体及びDVD−Igを同定及び性質決定するために、以下のアッセイを使用した。
【0417】
(実施例1.1.1)
親抗体及びDVD−Igのそれらの標的抗原に対する結合及び親和性を測定するために使用されたアッセイ
(実施例1.1.1A)
直接結合ELISA
所望の標的抗原を結合する抗体に関してスクリーニングするための酵素結合免疫吸着検定法を以下のように行った。所望の標的抗原(R&D Systems,Minneapolis,MN)又は所望の標的抗原細胞外ドメイン/FC融合タンパク質(R&D Systems,Minneapolis,MN)又はリン酸緩衝化された生理的食塩水(10×PBS、Abbott Bioresearch Center,Media Prep# MPS−073,Worcester,MA)中のモノクローナルマウス抗ポリヒスチジン抗体(R&D Systems # MAB050,Minneapolis,MN)の10μg/mLの100μL/ウェルで、4℃で一晩、High bind ELISAプレート(Corning Costar # 3369,Acton,MA)を被覆した。0.02%Tween20を含有するPBSで、プレートを4回洗浄した。室温で1/2時間、300μL/ウェルのブロッキング溶液(無脂肪ドライミルク粉末、様々な小売業者、PBS中に2%になるように希釈)の添加によってプレートをブロッキングした。ブロッキングの後、0.02%Tween20を含有するPBSで、プレートを4回洗浄した。
【0418】
あるいは、上記モノクローナルマウス抗ポリヒスチジン抗体で被覆されたELISAプレートに、ヒスチジン(His)タグ付加された所望の標的抗原(R&D Systems,Minneapolis,MN)の10μg/mLの100μL/ウェルを添加し、室温で1時間温置した。0.02%Tween20を含有するPBSで、ウェルを4回洗浄した。
【0419】
上述のようにブロッキング溶液中に希釈された抗体又はDVD−Ig調製物100μLを、上述のように調製された、所望の標的抗原プレート又は所望の標的抗原/FC融合プレート又は抗ポリヒスチジン抗体/Hisタグ付加された所望の標的抗原プレートに添加し、室温で1時間温置した。0.02%Tween20を含有するPBSで、ウェルを4回洗浄する。
【0420】
所望の標的抗原プレート又は抗ポリヒスチジン抗体/ヒスチジンタグ付加された所望の標的抗原プレートの各ウェルに、ヤギ抗ヒトIgG−FC特異的HRP連結抗体(Southern Biotech # 2040−05,Birmingham,AL)10ng/mLの100μLを添加した。あるいは、所望の標的抗原/FC融合プレートの各ウェルに、ヤギ抗ヒトIgGκ軽鎖特異的HRP連結抗体(Southern Biotech # 2060−05Birmingham,AL)10ng/mLの100μLを添加し、室温で1時間温置した。0.02%Tween20を含有するPBSで、プレートを4回洗浄した。
【0421】
各ウェルに、強化されたTMB溶液100μL(Neogen Corp.#308177,K Blue,Lexington,KY)を添加し、室温で10分間温置した。1N硫酸50μLの添加によって、反応を停止させた。450nmの波長で、プレートを分光学的に読み取った。
【0422】
表3は、直接結合アッセイにおいて使用された抗原のリストを含む。
【0423】
表4は、直接結合ELISAアッセイにおいて検査された抗体及びDVD−Ig構築物に対するnMでのEC50として表された結合データを含む。
【0424】
直接結合ELISAでは、おそらく、プラスチック表面に被覆されたときに標的抗原上の抗体結合部位が「遮蔽され」又は抗原が「歪んでいる」ために、結合が時折観察されなかった。DVD−Igがその標的を結合することができなかったのも、直接結合ELISAフォーマットによってDVD−Igに対して課された立体的制約によるものであり得る。直接結合ELISAフォーマットにおいて結合しなかった親抗体及びDVD−Igは、FACS、Biacore又はバイオアッセイなどの他のELISAフォーマットにおいて標的抗原に結合した。前に示されているように、DVD−Igの2つの可変ドメイン間のリンカー長を調節することによって、DVD−Igの非結合も回復された。
【0425】
【表3】
【0426】
【表4】
【0427】
全てのDVD−Ig構築物の結合が維持され、親抗体の結合と同等であった。全てのN末端可変ドメインは、DVD−Ig構築物DVD289、DVD291、DVD294及びDVD296のC末端可変ドメインと同様に、親抗体と類似の高い親和性で結合した。
【0428】
(実施例1.1.1.B)
Aβ1−42ELISA
所望の標的抗原を結合する抗体に関してスクリーニングするために、ELISAアッセイを以下のように行った。6℃で一晩、コーティング緩衝液中に希釈されたAβ1−42の1μg/mLの100μL/ウェルで、MaxisorbNUNCImmunoプレートを被覆した。0.02%Tween20を含有するPBSで、プレートを3回洗浄した。ELISA(Roche)のためのブロッキング試薬を水100mL中に溶解することによってブロッキング溶液を調製し、次いで、使用前に、さらに1:10希釈した。室温で2時間、265μL/ウェルのブロッキング溶液の添加によって、プレートをブロッキングした。0.02%Tween20を含有するPBSでのブロッキング後、プレートを3回洗浄した。
【0429】
PBST+0.5%BSA中に、100ng/μLになるように、抗体又はDVD−Igを希釈し、1;3で系列希釈した。抗体又はDVD−Ig調製物100μLをプレートに添加し、室温で2時間温置した。0.02%Tween20を含有するPBSで、ウェルを3回洗浄した。
【0430】
プレートの各ウェルに、1:5000希釈された抗ヒトPODの200μLを添加し、室温で1時間温置した。0.02%Tween20を含有するPBSで、プレートを3回洗浄した。
【0431】
TMB溶液100μLを各ウェルに添加し、10分間温置した。100mM酢酸ナトリウムpH4.9の20mLをTMB溶液200μL(Roche#92817060)及び3%H
2O
229.5μLを混合することによって、TMB溶液を調製した。1N硫酸50μLの添加によって、反応を停止した。450nmの波長で、プレートを分光学的に読み取った。結果が、表5に示されている。
【0432】
【表5】
【0433】
全てのDVD構築物の結合が維持され、親抗体と同等であった。全てのN末端可変ドメインは、親抗体と類似の高い親和性で結合した。
【0434】
(実施例1.1.1.C)
Aβ20−42ELISA
所望の標的抗原を結合する抗体に関してスクリーニングするために、ELISAアッセイを以下のように行った。37℃で1分間、Aβ20−42グロブロマー及びPBSを予め加温した。4℃で一晩、PBS中に希釈されたAβ20−42グロブロマーの2μg/mLの100μL/ウェルで、High bind ELISAプレート(Corning Costar #3369, Acton, MA)を被覆した。100% superblockPBS緩衝液(Thermo Scientific, #37515)の320μL/ウェルで、プレートをブロックし、室温で45分間温置した。0.02%Tween20を含有するPBSでのブロッキング後、プレートを3回洗浄した。
【0435】
PBS中の10%superblock中に、抗体又はDVD−Igを2000ng/mL、1000ng/mL、200ng/mL、40ng/mL、8ng/mL、1.6ng/mL及び0.32ng/mLになるように希釈した。抗体又はDVD−Ig調製物100μLをプレートに3つ組みで添加し、室温で2時間温置した。0.02%Tween20を含有するPBSで、ウェルを5回洗浄した。
【0436】
プレートの各ウェルに、1:40,000希釈されたヤギ抗ヒトHRP連結抗体(Pierce#31412)の100μLを添加し、室温で30分間温置した。0.02%Tween20を含有するPBSで、プレートを5回洗浄した。
【0437】
TMB溶液(Invitrogen−Zymed; #00−2023)100μLを各ウェルに添加し、5分間温置した。2N硫酸100μLの添加によって、反応を停止した。450nmの波長で、プレートを分光学的に読み取った。結果が、表6に示されている。
【0438】
【表6】
【0439】
全てのDVD構築物の結合が維持され、親抗体と同等であった。
【0440】
(実施例1.1.1.D)
捕捉ELISA
抗ヒトFc抗体(PBS中5μg/mL、Jackson Immunoresearch,West Grove,PA)とともに、ELISAプレート(Nunc,MaxiSorp,Rochester,NY)を4℃で一晩温置する。洗浄緩衝液(0.05%Tween20を含有するPBS)中で、プレートを3回洗浄し、ブロッキング緩衝液(1%BSAを含有するPBS)中において、25℃で1時間ブロッキングする。ウェルを3回洗浄し、0.1%BSAを含有するPBS中の各抗体又はDVD−Igの系列希釈をウェルに添加し、25℃で1時間温置する。ウェルを3回洗浄し、ビオチン化された抗原(2nM)をプレートに添加し、25℃で1時間温置する。ウェルを3回洗浄し、ストレプトアビジン−HRP(KPL #474−3000,Gaithersburg,MD)とともに、25℃で1時間温置する。ウェルを3回洗浄し、ウェル当りULTRA−TMBELISA(Pierce,Rockford,IL)の100μLを添加する。呈色後、1NHClを用いて反応を停止させ、450nmでの吸光度を測定する。結果が、表7に示されている。
【0441】
(実施例1.1.1.E)
BIACORE技術を用いた親和性の測定
【0442】
【表7】
【0443】
BIACORE法:
BIACOREアッセイ(Biacore,Inc,Piscataway,NI)は、on速度及びoff速度定数の速度論的測定を用いて、抗体又はDVD−Igの親和性を測定する。標的抗原(例えば、精製された組換え標的抗原)への抗体又はDVD−Igの結合は、25℃で走行HBS−EP(10mMHEPES[pH7.4]、150mMNaCl、3mMEDTA及び0.005%界面活性剤P20)を使用して、Biacore
(R)1000又は3000装置(Biacore
(R)AB,Uppsala,Sweden)を用いる表面プラズモン共鳴を基礎とする測定によって測定される。全ての化学物質は、Biacore
(R)AB(Uppsala,Sweden)又は本文中に記載されている別の入手先から取得する。例えば、製造業者の指示書に従う標準的なアミンカップリングキット及び25μg/mLでの操作を用いて、CM5研究等級バイオセンサーチップを横切って、10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)中に希釈されたヤギ抗マウスIgG、(Fcγ)断片特異的ポリクローナル抗体(Pierce Biotechnology Inc,Rockford,IL)の約5000RUを直接固定化する。バイオセンサー表面上の未反応部分は、エタノールアミンでブロックする。フローセル2及び4中の修飾されたカルボキシメチルデキストラン表面は、反応表面として使用する。フローセル1及び3中のヤギ抗マウスIgGなしの修飾されていないカルボキシメチルデキストランは参照表面として使用する。速度論的分析のために、Biaevaluation4.0.1ソフトウェアを用いて、8つの注射全ての会合及び解離相へ、(グローバルフィット解析を用いて)1:1のLangmuir結合モデルから誘導される速度方程式を同時にフィッティングさせる。ヤギ抗マウスIgG特異的な反応表面を横切る捕捉のために、HEPESによって緩衝化された生理的食塩水中に、精製された抗体又はDVD−Igを希釈する。リガンド(25μg/mL)として捕捉されるべき抗体又はDVD−Igを、5μL/分の流速で反応マトリックス上に注入する。25μL/分の継続的な流速下で、会合及び解離速度定数k
on(M
−1s
−1)及びk
off(s
−1)を測定する。10から200nMの範囲の異なる抗原濃度で速度論的結合測定を行うことによって、速度定数が導かれる。次いで、以下の式:K
D=k
off/k
onによって速度論的速度定数から抗体又はDVD−Igと標的抗原間での反応の平衡解離定数(M)を計算する。結合は、時間の関数として記録され、速度論的速度定数が計算される。このアッセイでは、最大10
6M
−1S
−1の速さのオン速度及び最小10
−6s
−1までの遅さのオフ速度を測定することができる。結果が、表8に示されている。
【0444】
【表8】
【0445】
Biacore技術によって性質決定された全てのDVD−Ig構築物の結合が維持され、親抗体の結合と同等であった。全てのN末端可変ドメインは、親抗体と類似の高い親和性で結合した。
【0446】
(実施例1.1.2)
親抗体及びDVD−Igの機能的活性を測定するために使用されたアッセイ
(実施例1.1.2.A)
サイトカインバイオアッセイ
抗サイトカイン又は抗成長因子配列を含有する抗サイトカイン又は抗成長因子親抗体又はDVD−Igが標的サイトカイン又は成長因子の生物活性を阻害又は中和する能力は、抗体又はDVD−Igの阻害能力を測定することによって分析される。例えば、抗IL−4抗体がIL−4媒介性IgE産生を阻害する能力が使用され得る。例えば、ヒトナイーブB細胞は、それぞれ、Ficoll−paque密度遠心による軟膜、続いて、ヒトsIgDFITC標識されたヤギF(ab)
2抗体に対して特異的なMACSビーズ(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)、続いて、抗FITCMACSビーズを用いる磁気分離によって、末梢血から単離される。3×10
5細胞/mLになるように、磁気的に分別されたナイーブB細胞をXV15中に調整し、37℃、5%CO
2存在下での培養の10日の間に、PBSが充填されたウェルによって取り囲まれたプレートの中心に、6×6アレイで、96ウェルプレートの100μL/ウェル中に播種する。検査されるべき抗体当り、それぞれ非誘導及び誘導対照の3ウェルからなるそれぞれ1つのプレートを調製し、7μg/mLから始まり、29ng/mLの最終濃度まで3倍希釈で行う抗体滴定の5つ組みの反復を、希釈前の4倍濃縮された50μL中に添加する。IgE産生を誘導するために、20ng/mLのrhIL−4+0.5μg/mLの最終濃度の抗CD40モノクローナル抗体(Novartis,Basel,Switzerland)をそれぞれ50μLで、各ウェルに添加し、標準的なサンドイッチELISA法によって、培養期間の終了時にIgE濃度を測定する。
【0447】
(実施例1.1.2.B)
サイトカイン放出アッセイ
親抗体又はDVD−Igがサイトカイン放出を引き起こす能力が分析される。ヘパリン処理されたvacutainer管の中に、静脈穿刺によって、3人の健康なドナーから末梢血を採取する。RPMI−1640培地で全血を1:5希釈し、0.5mL/ウェルで、24ウェルの組織培養プレート中に配置する。抗サイトカイン抗体(例えば、抗IL−4)をRPMI−1640中に希釈し、0.5mL/ウェルでプレート中に配置して、200、100、50、10及び1μg/mLの最終濃度を得た。培養プレート中の全血の最終希釈は、1:10である。サイトカイン放出に対する陽性対照として、2μg/mL及び5μg/mLの最終濃度で、LPS及びPHAを別々のウェルに添加する。陰性対照抗体として、ポリクローナルヒトIgGを使用する。実験は、2つ組みで行う。37℃、5%CO
2でプレートを温置する。24時間後、ウェルの内容物を試験管の中に移し、1200rpmで5分間遠心する。無細胞上清を集め、サイトカインアッセイのために凍結する。プレート上及び管中に残った細胞を溶解溶液0.5mLで溶解し、−20℃に配置し、融解する。(容量を無細胞上清試料と同じレベルにするために)培地0.5mLを添加し、細胞調製物を集め、サイトカインアッセイのために凍結する。ELISAによって、サイトカインレベルに関して(例えば、IL−8、IL−6、IL−1β、IL−1RA又はTNF−αのレベルに関して)無細胞上清及び細胞可溶化液をアッセイする。
【0448】
(実施例1.1.2.C)
サイトカイン交叉反応性研究
目的のサイトカインに対して誘導された抗サイトカイン親抗体又はDVD−Igが他のサイトカインと交叉反応する能力を分析する。Biacoreバイオセンサーマトリックス上に、親抗体又はDVD−Igを固定化する。まず、100mMN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び400mMN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)でマトリックス上のカルボキシル基を活性化することによって、遊離のアミン基を介して、抗ヒトFcmAbをデキストランマトリックスに共有結合させる。酢酸ナトリウムpH4.5中に希釈された25μg/mLの濃度の各抗体又はDVD−Ig調製物の約50μLを、活性化されたバイオセンサーを横切って注入し、タンパク質上の遊離アミンを活性化されたカルボキシル基に直接結合させる。典型的には、5000共鳴単位(RU)を固定化する。未反応のマトリックスEDC−エステルは、1Mエタノールアミンの注入によって不活化させる。標準的なアミンカップリングキットを用いてヒトIgG1/Kを固定化することによって、参照標準として第二のフローセルを調製する。CMバイオセンサーチップを用いて、SPR測定を行う。バイオセンサー表面上の分析すべき全ての抗原を、0.01%P20を含有するHBS−EP走行緩衝液中に希釈する。
【0449】
サイトカイン結合特異性を調べるために、抗サイトカイン親抗体又はDVD−Igが固定化されたバイオセンサー表面を横切って、過剰な目的のサイトカイン(100nM、例えば、可溶性組換えヒト)を注入する(5分の接触時間)。目的のサイトカインの注入前及び直後に、HBS−EP緩衝液のみが各フローセルを通過して流れる。最終的な結合値を表すために、ベースラインとサイトカイン注入完了から約30秒後に対応する点との間のシグナルの正味の差を取る。再度、共鳴単位で応答を測定する。結合現象を観察する場合には、次の試料の注入前に、10mMHClを用いてバイオセンサーマトリックスを再生し、そうでなければ、マトリックス上に走行緩衝液を注入した。あらゆる非特異的結合のバックグラウンドを記録するために、固定化されたマウスIgG1/K参照表面上に、ヒトサイトカイン(例えば、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−22、IL−23、IL−27、TNF−α、TNF−β及びIFN−γ)も同時に注入する。参照及び反応表面を調製することによって、Biacoreは、屈折率の変化及び注入のノイズの大半を除去するために、反応表面のデータから参照表面のデータを自動的に差し引くことができる。従って、抗サイトカイン抗体又はDVD−Ig結合反応に起因する真の結合応答を確かめることができる。
【0450】
目的のサイトカインが、固定された抗サイトカイン抗体を横切って注入されると、著しい結合が観察される。10mMHCl再生は、全ての非共有的に会合されたタンパク質を完全に除去する。センサーグラムの検査は、可溶性サイトカインへの固定された抗サイトカイン抗体又はDVD−Ig結合が強力で、強固であることを示す。目的のサイトカインを用いて予想された結果を確認した後、各抗体又はDVD−Igに対して別々に、残りの組換えヒトサイトカインの群を検査する。各注入サイクルに対して、抗サイトカイン抗体又はDVD−Igによって結合された又は結合されていないサイトカインの量を記録する。各抗体又はDVD−Igの特異性プロファイルを測定するために、3つの独立した実験から得られた結果を使用する。目的のサイトカインに対して予想された結合を有し、他の何れのサイトカインにも結合しない抗体又はDVD−Igを選択する。
【0451】
(実施例1.1.2.D)
組織交叉反応性
組織交叉反応性研究は、32の組織の凍結切片を含む第一の段階、最大38の組織を含む第二の段階及び以下に記載されているように、3人の無関係な成人から得られたさらなる組織を含む第三の段階という3つの段階で行われる。研究は、典型的には、2つの投薬レベルで行われる。
段階1:ヒト組織(剖検又は生検で得られた1人のヒトドナーから得られる32の組織(典型的には、副腎、胃腸管、前立腺、膀胱、心臓、骨格筋、血液細胞、腎臓、皮膚、骨髄、肝臓、脊髄、乳房、肺、脾臓、小脳、リンパ節、精巣、大脳皮質、卵巣、胸腺、大腸、膵臓、甲状腺、内皮、副甲状腺、尿管、眼、下垂体、子宮、ファロピア管及び胎盤))の凍結切片(約5μm)を対物ガラス上に固定し、乾燥させる。アビジン−ビオチン系を用いて、組織切片のペルオキシダーゼ染色を行う。
【0452】
段階2:ヒト組織の38の組織(剖検又は生検で得られた3人の無関係な成人由来の副腎、血液、血管、骨髄、小脳、大脳、頚部、食道、眼、心臓、腎臓、大腸、肝臓、肺、リンパ節、乳房の乳腺、卵巣、卵管、膵臓、副甲状腺、末梢神経、下垂体、胎盤、前立腺、唾液腺、皮膚、小腸、脊髄、脾臓、胃、横紋筋、精巣、胸腺、甲状腺、扁桃腺、尿管、膀胱及び子宮を含む。)の凍結切片(約5μm)を対物ガラス上に固定し、乾燥させる。アビジン−ビオチン系を用いて、組織切片のペルオキシダーゼ染色を行う。
【0453】
段階3:カニクイザル組織の凍結切片(約5μm)(38の組織(剖検又は生検で得られた3人の無関係な成体サル由来の副腎、血液、血管、骨髄、小脳、大脳、頚部、食道、眼、心臓、腎臓、大腸、肝臓、肺、リンパ節、乳房の乳腺、卵巣、卵管、膵臓、副甲状腺、末梢神経、下垂体、胎盤、前立腺、唾液腺、皮膚、小腸、脊髄、脾臓、胃、横紋筋、精巣、胸腺、甲状腺、扁桃腺、尿管、膀胱及び子宮を含む。)を対物ガラス上に固定し、乾燥させる。アビジン−ビオチン系を用いて、組織切片のペルオキシダーゼ染色を行う。アビジン−ビオチン系を用いて、組織切片のペルオキシダーゼ染色を行う。
【0454】
抗体又はDVD−Igを、ビオチン化された二次抗ヒトIgGとともに温置し、免疫複合体を生成させた。抗体又はDVD−Igの2及び10μg/mLの最終濃度の免疫複合体を対物ガラス上の組織切片上に添加し、次いで、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼキットと組織切片を30分間反応させる。その後、組織染色のために、ペルオキシダーゼ反応に対する基質であるDAB(3,3’−ジアミノベンジジン)を4分間適用する。陽性対照組織切片として、抗原−セファロースビーズを使用する。標的抗原及びヒト血清ブロッキング研究は、さらなる対照としての役割を果たす。抗体又はDVD−Igの2及び10μg/mLの最終濃度の免疫複合体を、標的抗原(100μg/mLの最終濃度)又はヒト血清(最終濃度10%)とともに、30分間、予め温置し、次いで、対物ガラス上の組織切片上に添加し、次いで、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼキットと組織切片を30分間反応させる。その後、組織染色のために、ペルオキシダーゼ反応に対する基質であるDAB(3,3’−ジアミノベンジジン)を4分間適用する。
【0455】
何れの特異的染色も、問題となっている標的抗原の既知の発現に基づいて、予想された(例えば、抗原の発現と合致)又は予想されない反応性であると判断される。特異的と判断された全ての染色には、強度と頻度のスコアを付与する。段階2(ヒト組織)及び段階3(カニクイザル組織)の間の組織染色は、類似である又は異なると判断される。
【0456】
(実施例1.1.2.E)
VEGF親抗体及びDVD−Ig構築物によるHUVEC増殖/生存の阻害
アッセイのために播種する前に、正常なヒト臍帯血管内皮細胞又はHUVEC(経代2から6)を、EGM−2SingleQuots(Lonza−Clonetics, Walkersville, MD, #CC−4176)が補充されたEBM−2(Lonza−Clonetics, Walkersville, MD)中に維持する。成長因子の不存在下で0.1%FBSを加えた(100μLの)EMB−2中、コラーゲンが被覆された黒い96ウェルプレート上に、10,000細胞/ウェルで、HUVEC細胞を播種する。翌日、成長因子の不存在下で、培地を0.1%FBSと交換する。翌日、EMB−2の100μL(成長因子又は血清なし)と培地を交換し、VEGF及び抗体/DVD−Igを添加する前に、4時間温置する。(67nM、6.7nM及び0.67nMの最終濃度の)抗VEGFモノクローナル抗体又はDVD−Igを、0.1%BSAを加えたEMB−2中に希釈し、組換えヒトVEGF
165(50ng/mL)とともに、50μL、25℃で1時間、事前温置する。次いで、細胞(50μL)に抗体/DVD−Ig及びVEGF混合物を添加し、加湿された5%CO
2雰囲気中において、72時間、37℃で、プレートを温置した。製造業者の指示書に従って、ATPliteキット(Perkin Elmer, Waltham, MA)を用いてATPレベルを評価することによって、細胞の生存/増殖を間接的に測定する。
【0457】
(実施例1.1.2.F)
IL−1α/βバイオアッセイ及び中和アッセイ
100μLの容量で、1.5から2×10
4細胞/ウェルで、MRC5細胞を播種し、37℃、5%CO
2で一晩温置した。完全なMEM培地中に、抗体の20μg/mL作業原液(4×濃縮された)を調製した。Marsh希釈プレート中の完全なMEM中で、8点の系列希釈を行った(5μg/mLから0.0003μg/mL)。96ウェルのv底(Costar#3894)プレートに、各抗体希釈の65μL/ウェルを4つ組みで添加し、IL−1α若しくはIL−1βの200pg/mL溶液の65μL又はIL−1α及びIL−1βの両方の50pg/mL溶液を含有する混合溶液の65μLも添加した。対照ウェルには、200pg/mLIL−1α若しくはIL−1β又は混合された50pg/mLIL−1α/β(4倍濃縮)+65μLMEM培地を与え、培地対照ウェルには、培地130μLを与えた。1時間の温置後、MRC5細胞に、Ab/Ag混合物100μLを添加した。全てのウェル容積は、200μLに等しかった。次いで、全てのプレート試薬は1×濃縮した。16から20時間の温置後、96ウェルの丸底プレート(Costar#3799)中に、ウェル内容物(150μL)を移し、−20℃の凍結装置中に配置した。ヒトIL−8ELISAキット(R&DSystems,Minneapolis,MN)又はhIL−8化学発光キット(MDS)を使用することによって、hIL−8レベルに関して、上清を検査した。IL−1α、IL−1β又はIL−1α/β単独の対照値に対する%阻害を計算することによって、中和能力を測定した。結果が、表9に示されている。
【0458】
【表9】
【0459】
N末端又はC末端位置の何れかの中にAB032由来のVDを含有する全てのDVD−Igは、MRC5IL−1α/β中和アッセイにおいて中和を示した。
【0460】
(実施例1.1.2.G)
huTNFαの中和
半集密状態の密度まで、L929細胞を増殖させ、0.05%トリプシン(Gibco#25300)を用いて採集した。PBSで細胞を洗浄し、計数し、4μg/mLのアクチノマイシンDを含有するアッセイ培地中に、1E6細胞/mLで、再懸濁した。50μLの容量及び5E4細胞/ウェルで、96ウェルプレート(Costar#3599)中に細胞を播種した。アッセイ培地中に、4倍濃度になるように、DVD−Ig
TM及び対照IgGを希釈し、1:3系列希釈を行った。アッセイ培地中に、400pg/mLになるように、huTNFαを希釈した。1:2の希釈スキームで、抗体試料(200μL)をhuTNFα(200μL)に添加し、室温で0.5時間、温置した。
【0461】
100pg/mLhuTNFα及び25nMから0.00014nMDVD−Ig
TMの最終濃度にするために、100μLで、DVD−Ig
TM/huTNFα溶液を播種された細胞に添加した。37℃、5%CO
2で、20時間、プレートを温置した。生存率を定量するために、ウェルから100μLを取り除き、WST−I試薬(Rochecat#11644807001)10μLを添加した。アッセイ条件下で、プレートを3.5時間温置し、500×gで遠心し、ELISAプレート(Costarcat#3369)に上清75μLを移した。Spectromax190ELISAプレート読取装置上において、OD420から600nmでプレートを読み取った。結果が、表10に示されている。
【0462】
【表10】
【0463】
N末端又はC末端位置の何れかの中にAB017由来のVDを含有する全てのDVD−Igは、TNFα中和アッセイにおいて中和を示した。
【0464】
(実施例1.1.2.H)
IL−6によって誘導されるpSTAT3アッセイ
2mMl−グルタミン、10mMHEPES、100μL/mLペニシリン/ストレプトマイシン、1.5g/L炭酸水素ナトリウム、4.5g/Lグルコース、1mMピルビン酸ナトリウム、10%FBS及び2ng/mLGM−CSFを加えたDMEM中で、TF−1細胞を培養する。10μLの容量で、1.5から2×10
5細胞/ウェルで、TF−1細胞を播種し、アッセイ培地(GM−CSFを除いた完全なDMEM)中で、37℃、5%CO
2で一晩温置する。96
1/2ウェル白色アッセイプレート中に、細胞を播種する。PBS中に、抗体の500μg/mL作業原液(4×濃縮)を調製する。Marsh希釈プレート中のアッセイ培地中に、抗体及びDVD−Igを1:5系列希釈する。細胞を含有する96
1/2ウェル白色アッセイプレートに、各抗体希釈の5μL/ウェルを3つ組みで添加する。氷上で、30分間、細胞及び抗体又はDVD−Igを事前温置する。内毒素を含まないD−PBS(0.1%BSA)中に、10μg/mL原液で、IL−6を調製し、アッセイ培地を用いて100ng/mL(4倍濃縮)の作業原液を調製する。100ng/mLのIL−6の5μL/ウェルを各ウェルに添加する。プレートを37℃で30分間温置する。5×細胞溶解緩衝液5μLを全てのウェルに添加することによって、細胞を溶解し、室温で10分間、プレートを振盪する。−20℃でプレートを凍結し、pSTAT3SureFireAssayを実施した(PerkinElmer)。
【0465】
室温でプレートを融解し、Alpha Screen Acceptor Beedsを含有する反応緩衝液+活性化緩衝液ミックス(反応緩衝液40部、活性化緩衝液10部及びアクセプタービーズ1部)の30μL/ウェルを各ウェルに添加する。光から保護するために、プレートをホイルで密封し、37℃で2時間穏やかに撹拌する。Alpha Screen Donorビーズを含有する希釈緩衝液(12.5μL/ウェル)(ドナービーズ1部に対して希釈緩衝液20部)を各ウェルに添加する。プレートをホイルで密封し、37℃で2時間穏やかに撹拌する。プレートを室温にし、AlphaScreenプレート読取装置上で読み取る。
【0466】
(実施例1.1.2.I)
インビトロでの腫瘍受容体モノクローナル抗体又はDVD−Igの増殖阻害効果
D−PBS−BSA(0.1%BSAを加えたダルベッコのリン酸緩衝化された生理的食塩水)20μL中に希釈された腫瘍受容体モノクローナル抗体又はDVD−Igを、180μL中、0.01μg/mLから100μg/mLの最終濃度のヒト腫瘍細胞に添加する。37℃で、加湿された5%CO
2雰囲気中において、3日間、プレートを温置する。腫瘍増殖阻害の%を測定するために、製造業者の指示書(Promega, Madison, WI)に従って、MTS試薬を用いて、各ウェル中の生きた細胞の数を定量する。抗体処理なしのウェルは0%阻害の対照として使用されるのに対して、細胞なしのウェルは100%阻害を示すと考えられる。
【0467】
(実施例1.1.2.J)
インビトロでの親又はDVD−Ig抗体の殺腫瘍効果
腫瘍細胞上の標的抗原に結合する親抗体又はDVD−Igは、殺腫瘍活性に関して分析され得る。簡潔に述べると、D−PBS−BSA(0.1%BSAを加えたダルベッコのリン酸緩衝化された生理的食塩水)中に親抗体又はDVD−Igを希釈し、200μL中、0.01μg/mLから100μg/mLの最終濃度のヒト腫瘍細胞に添加する。37℃で、加湿された5%CO
2雰囲気中において、3日間、プレートを温置する。腫瘍増殖阻害の%を測定するために、製造業者の指示書(Promega, Madison, WI)に従って、MTS試薬を用いて、各ウェル中の生きた細胞の数を定量する。抗体処理なしのウェルは0%阻害の対照として使用されるのに対して、細胞なしのウェルは100%阻害を示すと考えた。
【0468】
アポトーシスを評価するために、以下のプロトコールによって、カスパーゼ−3の活性化を測定する。室温で振盪しながら、20分間、96ウェルプレート中の抗体処理された細胞を1×溶解緩衝液120μL(1.67mMHepes、pH7.4、7mMKCl、0.83mMMgCl
2、0.11mMEDTA、0.11mMEGTA、0.57%CHAPS、1mMDTT、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル錠;無EDTA;RochePharmaceuticals,Nutley,NJ)中に溶解する。細胞溶解後、カスパーゼ−3反応緩衝液(48mMHepes、pH7.5、252mMショ糖、0.1%CHAPS、4mMDTT及び20μMAc−DEVD−AMC基質;BiomolResearchLabs、Inc.、PlymouthMeeting、PA)80μLを添加し、37℃で2時間、プレートを温置する。以下の設定:励起=360/40、発光=460/40を用いて、1420VICTOR Multilabel Counter(Perkin Elmer Life Sciences, Downers Grove, IL)上でプレートを読み取る。イソタイプ抗体対照処理された細胞と比較した抗体処理細胞からの蛍光単位の増加がアポトーシスの指標である。
【0469】
(実施例1.1.2.K)
親抗体及びDVD−Ig構築物による細胞増殖の阻害
5%ウシ胎児血清が補充されたRPMI培地中、96ウェルの皿に、100μL中、2,000細胞/ウェルでU87−MGヒト神経膠腫瘍細胞を播種し、37℃、5%CO
2で一晩温置する。翌日、抗体又はDVD−Ig(0.013nMから133nMの用量範囲)の系列希釈で細胞を処理し、37℃で、加湿された5%CO
2雰囲気中において、5日間温置する。製造業者の指示書に従って、ATPliteキット(Perkin Elmer, Waltham, MA)を用いてATPレベルを評価することによって、細胞の生存/増殖を間接的に測定する。
【0470】
(実施例1.1.2.L)
VEGF親抗体及びDVD−Ig構築物は、VEGF165のVEGFR1との相互作用を抑制する
組換えVEGFR1細胞外ドメイン−Fc融合タンパク質(5μg/ml, R&D systems, Minneapolis, MN)を含有するPBS100μLとともに、ELISAプレート(Nunc, MaxiSorp, Rochester, NY)を4℃で一晩温置する。洗浄緩衝液(0.05%Tween20を含有するPBS)中で、プレートを3回洗浄し、ブロッキング緩衝液(1%BSAを含有するPBS)中において、25℃で1時間ブロッキングする。0.1%BSAを含有するPBS中の各抗体/DVD−Igの系列希釈物を、25℃で1時間、2nMのビオチン化されたVEGFの50μLとともに温置する。次いで、抗体/DVD−Ig−ビオチン化VEGF混合物(100μL)をVEGFR1−Fc被覆されたウェルに添加し、25℃で10分間温置する。ウェルを3回洗浄し、次いで、ストレプトアビジン−HRP(KPL#474−3000,Gaithersburg,MD)100μLとともに、25℃で1時間温置する。ウェルを3回洗浄し、ウェル当りULTRA−TMBELISA(Pierce, Rockford, IL)の100μLを添加する。呈色後、1NHClを用いて反応を停止させ、450nmでの吸光度を測定する。
【0471】
(実施例1.1.2.M)
インビトロでの親抗体又はDVD−Ig構築物による受容体リン酸化の阻害
無血清培地(DMEM+0.1%BSA)180μL中に、40,000細胞/ウェルで、96ウェルプレート中に、ヒト癌腫細胞を播種し、37℃、5%CO
2で一晩温置する。受容体捕捉抗体(4μg/mLの最終濃度)の100μL/ウェルで、CostarEIAプレート(Lowell,MA)を被覆し、振盪しながら、室温で一晩温置する。翌日、受容体抗体で被覆されたELISAプレートを洗浄し(PBST=PBS、pH7.2から7.4中の0.05%Tween20で3回)、振盪装置上にて、室温で2時間、ブロッキングするために、ブロッキング溶液200μL(PBS、pH7.2から7.4中の1%BSA、0.05%NaN
3)を添加する。ヒト腫瘍細胞を、抗体又はDVD−Ig及びリガンドと同時に温置した。D−PBS−BSA(0.1%BSAを加えたダルベッコのリン酸緩衝化された生理的食塩水)中に希釈されたモノクローナル抗体又はDVD−Igを、0.01μg/mLから100μg/mLの最終濃度のヒト癌腫細胞に添加する。1から100ng/mLの濃度で(200μL)、成長因子を細胞に同時に添加し、37℃で、加湿された5%CO
2雰囲気において、細胞を1時間温置する。冷細胞抽出緩衝液(10mMTris、pH7.4、100mMNaCl、1mMEDTA、1mMEGTA、1mMNaF、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1%Triton X−100、10%グリセロール、0.1%SDS及びプロテアーゼ阻害剤カクテル)120μL/ウェル中に細胞を溶解し、振盪しながら、4℃で20分間温置する。ELISAプレートに、細胞可溶化液(100μL)を添加し、穏やかに振盪しながら、4℃で一晩温置する。翌日、ELISAプレートを洗浄し、pTyr−HRP検出Abの100μL/ウェルを添加し(p−IGF1R ELISAキット、R&D System # DYC1770,Minneapolis,MN)、暗所にて、25℃で2時間、プレートを温置する。製造業者の指示書に従って、リン酸化を測定するために、プレートを呈色させる。
【0472】
(実施例1.1.2.N)
VEGF親抗体及びDVD−Ig構築物によるVEGFR2(KDR)リン酸化の阻害
10%FBSが補充されたDMEM中、96ウェルプレート中に、20,000細胞/ウェル(100μL)で、ヒトVEGFR2(KDR)を発現するNIH3T3細胞を播種する。翌日、DMEMで細胞を2回洗浄し、FBSなしのDMEM中で3時間、血清飢餓状態にする。0.1%BSAを加えたDMEM中に希釈された(67nM、6.7nM及び0.67nMの最終濃度の)抗VEGF親抗体又はDVD−Igを、組換えヒトVEGF
165(50ng/mL)とともに、25℃で1時間、事前温置する。次いで、これらの抗体/DVD−Ig及びVEGF混合物を細胞に添加し、加湿された5%CO
2雰囲気中において、37℃で10分間、プレートを温置する。氷冷されたPBSで、細胞を2回洗浄し、0.1%NP40が補充されたCell Lysis Buffer (Cell Signaling,Boston,MA)の100μL/ウェルの添加によって溶解する。2つ組みの試料をプールし、抗VEGFR2抗体(R&D systems,AF357,Minneapolis,MN)で予め被覆されたELISAプレートのウェルに170μLを添加し、穏やかに振盪しながら、25℃で2時間温置する。洗浄緩衝液(0.05%Tween20を含有するPBS)で、ウェルを5回洗浄し、ビオチン化された抗ホスホチロシン抗体(4G10;Millipore,Billerica,MA)の1:2000希釈50μLとともに、25℃で1時間温置する。0.05%Tween20を含有するPBSで、ウェルを5回洗浄し、次いで、ストレプトアビジン−HRP(KPL #474−3000,Gaithersburg,MD)とともに、25℃で1時間温置する。ストレプトアビジン−HRP(KPL#474−3000、Gaithersburg、MD)で、ウェルを3回洗浄する。0.05%Tween20を含有するPBSで、ウェルを3回洗浄し、ウェル当りULTRA−TMBELISA(Pierce,Rockford,IL)の100μLを添加する。呈色後、1NHClを用いて反応を停止させ、450nmでの吸光度を測定した。
【0473】
(実施例1.1.2.O)
ヒト癌腫皮下脇腹異種移植片の増殖に対するDVD−Igの有効性
99%の生存率、組織培養フラスコ中で85%の集密度になるように、A−431ヒト類上皮癌腫細胞をインビトロで増殖させる。19から25グラムのSCID雌マウス(Charles Rivers Labs,Wilmington,MA)の右の脇腹に、研究0日目に、1×10
6ヒト腫瘍細胞(1:1マトリゲル)を皮下注射する。約200から320mm
3の平均腫瘍容積を有するマウスの群の中に、マウスの大きさを合わせた後、ヒトIgG対照又はDVD−Igの投与(腹腔内、QD、3回/週)の投与を開始した。腫瘍細胞注射から約10日後に開始して、週に2回、腫瘍を測定する。
【0474】
(実施例1.1.2.P)
フローサイトメトリーによって評価された、ヒト腫瘍細胞株の表面へのモノクローナル抗体の結合
目的の細胞表面抗原を過剰発現する安定な細胞株又はヒト腫瘍細胞株を組織培養フラスコから採集し、5%ウシ胎児血清を含有するリン酸緩衝化された生理的食塩水(PBS)(PBS/FBS)中に再懸濁した。染色の前に、PBS/FCS中の5μg/mLのヒトIgG(100μL)とともに、氷上で、ヒト腫瘍細胞を温置した。氷上で30から60分間、PBS/FBS中において、抗体又はDVD−Ig(2μg/mL)とともに、1から5×10
5細胞を温置した。細胞を2回洗浄し、F(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ−フィコエリトリン(PBS中の1:200希釈)100μL(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA,Cat.#109−116−170)を添加した。氷上での30分の温置後、細胞を2回洗浄し、PBS/FBS中に再懸濁した。Becton Dickinson FACSCalibur(Becton Dickinson,San Jose,CA)を用いて、蛍光を測定した。
【0475】
表11は、DVD−Ig構築物に対するFACSデータを示している。幾何平均は、n個の蛍光シグナルの積(a1×a2×a3...an)のn乗根である。対数変換されたデータとともに、幾何平均は、データ分布の重み付けを標準化するために使用される。以下の表は、親抗体及びDVD−Ig構築物のFACS幾何平均を含む。
【0476】
【表11】
【0477】
全てのDVDが、それらの細胞表面標的への結合を示した。DVDのN末端ドメインは、細胞表面上のそれらの標的を親抗体と同等に又はより良好に結合した。結合は、リンカーの長さを調整することによって復活又は改善させ得る。
【0478】
(実施例1.1.2.Q)
フローサイトメトリーによって評価された、ヒト腫瘍細胞株の表面への親受容体抗体及びDVD−Ig構築物の結合
細胞表面受容体又はヒト腫瘍細胞株を過剰発現する安定な細胞株を組織培養フラスコから採集し、1%ウシ胎児血清を含有するダルベッコのリン酸緩衝化された生理的食塩水(DPBS)(DPBS/FCS)中に再懸濁した。氷上で30から60分間、DPBS/FCS中において、抗体又はDVD−Ig(10μg/mL)100μLとともに、1から5×10
5細胞を温置する。細胞を2回洗浄し、ヤギ抗ヒトIgG−フィコエリトリン(DPBS/BSA中で1:50希釈)50μL(Southern Biotech Associates,Birmingham,AL cat#2040−09)を添加する。氷上での30から45分の温置後、細胞を2回洗浄し、DPBS/FCS中の1%ホルムアルデヒド125μL/ウェル中に再懸濁する。Becton DickinsonLSRII(Becton Dickinson,San Jose,CA)を用いて、蛍光を測定した。
【0479】
(実施例1.2)
目的のヒト抗原に対する親モノクローナル抗体の作製
親マウスmAbは、目的のヒト抗原に結合して中和することができ、その変形物は、以下のようにして得られる。
【0480】
(実施例1.2.A)
目的のヒト抗原でのマウスの免疫化
完全フロイントアジュバント又はImmunoeasyアジュバント(Qiagen,Valencia,CA)と混合された組換え精製ヒト抗原(例えば、IGF1,2)20μgを、第1日目に、5匹の6から8週齢のBalb/C、5匹のC57B/6マウス及び5匹のAJマウス中に皮下注射する。24日、38日及び49日目に、不完全フロイントアジュバント又はImmunoeasyアジュバントと混合された組換え精製ヒト抗原変形物20μgを同じマウス中に皮下注射する。84日又は112日又は144日目に、目的の組換え精製ヒト抗原1μgをマウスの静脈内に注射する。
【0481】
(実施例1.2.B)
ハイブリドーマの作製
ハイブリドーマを作製するために、「Kohler,G. and Milstein(1975) Nature,256:495」に記載されている確立された方法に従って、実施例1.2.Aに記載されている免疫化されたマウスから得られた脾細胞を、5:1の比で、SP2/O−Ag−14細胞と融合する。ウェル当り2.5×10
6個の脾細胞の密度で、96ウェルプレート中のアザセリン及びヒポキサンチンを含有する選択培地中に融合産物を播種する。融合から7ないし10日後に、肉眼で観察できるハイブリドーマコロニーが観察される。ハイブリドーマコロニーを含有する各ウェルからの上清を、(実施例1.1.1.Aに記載されているように)目的の抗原に対する抗体の存在に関して、ELISAによって検査する。次いで、抗原特異的活性を示す上清を(実施例1.1.2のアッセイに記載されているように)活性(例えば、実施例1.1.2.Iに記載されているようなバイオアッセイにおいて、目的の抗原を中和する能力)に関して検査する。
【0482】
(実施例1.2.C)
目的のヒト標的抗原に対する親モノクローナル抗体の同定及び性質決定
(実施例1.2.C.1)
親モノクローナル抗体の中和活性の分析
実施例1.2.A及び1.2Bに従って作製された、目的の抗原を結合し、目的抗原の変形物(「抗原変形物」)も結合することができる親抗体の存在に関して、ハイブリドーマ上清をアッセイする。次いで、例えば、実施例1.1.2.Iのサイトカインバイオアッセイにおいて、抗原中和効力に関して、両アッセイにおいて陽性の抗体を有する上清を検査する。バイオアッセイにおいて1000pM未満のIC
50値、一実施形態では、100pM未満のIC
50値を有する抗体を産生するハイブリドーマを増やし、限界希釈によってクローニングした。10%の低IgGウシ胎児血清を含有する培地(Hyclone#SH30151,Logan,UT)中に、ハイブリドーマ細胞を増殖させる。平均して、(クローン集団に由来する)各ハイブリドーマ上清250mLを採集し、「Harlow,E. and Lane,D. 1988 “Antibodies:A Laboratory Manual”」に記載されているように、濃縮し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。例えば、実施例1.1.2.Iに記載されているようなサイトカインバイオアッセイを用いて、精製されたmAbがその標的抗原の活性を阻害する能力を測定する。
【0483】
(実施例1.2.C.2)
目的のカニクイザル標的抗原に対する親モノクローナル抗体交叉反応性の分析
本明細書に記載されている選択されたmAbが目的のカニクイザル抗原を認識するかどうかを測定するために、組換えカニクイザル標的抗原を用いて、本明細書に記載されているように(実施例1.1.1.G)、BIACORE分析を行う。さらに、目的の組換えカニクイザル抗原に対するmAbの中和能力は、サイトカインバイオアッセイにおいても測定され得る(実施例1.1.2.I)。良好なカニクイザル交叉反応性(一実施形態において、ヒト抗原に対する反応性の5倍以内)を有するmAbを、さらなる性質決定のために選択する。
【0484】
(実施例1.2.D)
各マウス抗ヒトモノクローナル抗体に対する可変領域のアミノ酸配列の測定
cDNAの単離、組換え抗ヒトマウスmAbの発現及び性質決定は、以下のように行われる。各アミノ酸配列の決定のために、約1×10
6個のハイブリドーマ細胞を遠心によって単離し、製造業者の指示書に従って、Trizol(Gibco BRL/Invitrogen,Carlsbad,CA.)を用いて全RNAを単離するために処理した。製造業者の指示書に従って、Superscript First−Strand Synthesis System(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて、全RNAを第一鎖DNAの合成に供する。ポリ(A)+RNAを選択するための第一鎖合成を開始するために、オリゴ(dT)を使用する。次いで、マウス免疫グロブリン可変領域の増幅のために設計されたプライマーを用いるPCRによって、第一鎖cDNA産物を増幅する(Ig−Primer Sets,Novagen,Madison,WI)。アガロースゲル上でPCR産物を分離し、切り出し、精製し、次いで、pCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)中に、TOPOCloningキットを用いてサブクローニングし、化学的に形質転換受容能力を有するTOP10イー・コリ(E.coli)(Invitrogen,Carlsbad,CA)中に形質転換する。挿入物を含有するクローンを同定するために、形質転換体に対してコロニーPCRを行う。QIAprep Miniprepキット(Qiagen,Valencia,CA)を用いて、挿入物を含有するクローンからプラスミドDNAを単離する。M13フォワード及びM13リバースプライマー(Fermentas Life Sciences,Hanover MD)を用いて、可変重鎖又は可変軽鎖DNA配列を決定するために、両鎖に対して、プラスミド中の挿入物を配列決定する。mAbの可変重鎖及び可変軽鎖配列を同定する。一実施形態において、次工程の開発(ヒト化)のための、リードmAbの群に関する選択基準には、以下のものが含まれる。
【0485】
・抗体は、CH2中の標準的なN結合型グリコシル化部位(NXS)を除き、N結合型グリコシル化部位を一切含有しない
・抗体は、全ての抗体中の通常のシステインの他に、余分のシステインを一切含まない
・抗体配列はVH及びVLに対して最も近いヒト生殖系列配列と並置され、あらゆる異常なアミノ酸は、他の天然のヒト抗体中での発生に関してチェックされるべきである
・抗体の活性に影響を及ぼさなければ、N末端のグルタミン(Q)はグルタミン酸(E)に変化させる。これは、Qの環状化による不均一性を低減する
・効率的なシグナル配列の切断を質量分析法によって確認する。これは、COS細胞又は293細胞材料を用いて行うことができる
・活性の喪失をもたらし得るAsnの脱アミド化のリスクに関して、タンパク質配列がチェックされる
・抗体は、凝集の低いレベルを有する
・抗体は、(研究相では)>5から10mg/mLの溶解度を有する;>25mg/mL
・抗体は、動的光散乱(DLS)によって、正常なサイズ(5から6nm)を有する
・抗体は、低い電荷不均一性を有する
・抗体は、サイトカインの放出を欠如する(実施例1.1.2.B参照)
・抗体は、目的とするサイトカインに対して特異性を有する(実施例1.1.2.C参照)
・抗体は、予想外の組織交叉反応性を欠如する(実施例1.1.2.D参照)
・抗体は、ヒトとカニクイザル組織交叉反応性の間で類似性を有する(実施例1.1.2.D参照)
【0486】
(実施例1.2.2)
組換えヒト化親抗体
(実施例1.2.2.1)
組換えキメラ抗ヒト親抗体の構築及び発現
細菌中での相同的組換えによって、2つのヒンジ領域アミノ酸変異を含有するヒトIgG1定常領域をコードするcDNA断片によって、マウス抗ヒト親mAbの重鎖定常領域をコードするDNAを置き換える。これらの変異は、234位のロイシンからアラニンへの変化(EU付番)及び235位のロイシンからアラニンへの変化である(Lund et al.,1991,J.Immunol.,147:2657)。これらの抗体のそれぞれの軽鎖定常領域は、ヒトκ定常領域によって置き換えられる。pBOS発現プラスミド中に連結されたキメラ重鎖及び軽鎖cDNAの同時形質移入によって、完全長キメラ抗体をCOS細胞中で一過性に発現させる(Mizushima and Nagata,Nucleic Acids Research 1990,Vol18,pg5322)。プロテインAセファロースクロマトグラフィーによって、組換えキメラ抗体を含有する細胞上清を精製し、酸緩衝液の添加によって、結合された抗体を溶出する。抗体を中性にし、PBS中に透析する。
【0487】
キメラmAbをコードする重鎖cDNAを、そのキメラ軽鎖cDNAとともに(何れも、pBOSベクター中に連結されている。)COS細胞中へ同時形質移入する。プロテインAセファロースクロマトグラフィーによって、組換えキメラ抗体を含有する細胞上清を精製し、酸緩衝液の添加によって、結合された抗体を溶出する。抗体を中性にし、PBS中に透析する。
【0488】
次いで、結合する能力に関して(Biacoreによる)及び機能的活性(例えば、実施例1.1.1.G及び1.1.2.B中に記載されているように、IgEのサイトカイン誘導性産生を阻害すること)に関して、精製されたキメラ抗ヒト親mAbを検査する。親ハイブリドーマmAbの活性を維持するキメラmAbを、将来の開発のために選択する。
【0489】
(実施例1.2.2.2)
ヒト化抗ヒト親抗体の構築及び発現
(実施例1.2.2.2.A)
ヒト抗体フレームワークの選択
VectorNTIソフトウェアを用いて(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/retrieveig.html.で、NCBI Ig Blastウェブサイトから得られた)、44のヒト免疫グロブリン生殖系列可変重鎖又は46の生殖系列可変軽鎖配列に対して、それぞれのマウス可変重鎖及び可変軽鎖遺伝子配列を別々に並置する。
【0490】
ヒト化は、アミノ酸配列の相同性、CDRクラスター分析、発現されたヒト抗体間での使用頻度及びヒト抗体の結晶構造に関して利用可能な情報に基づく。抗体結合、VH−VL対合及びその他の要因に対して起こり得る効果を考慮に入れて、少数の例外を有しつつ、マウスとヒトのフレームワーク残基が異なる場所で、マウス残基をヒト残基へ変異させる。マウス抗体可変領域の実際のアミノ酸配列に対する相同性の高い程度(すなわち、配列類似性)を有するヒト生殖系列抗体配列又はその亜群の解析に基づいて、さらなるヒト化戦略を設計する。
【0491】
抗体の結合部位であるCDRの構造にとって不可欠であると予想されるマウス抗体配列に特有の残基を同定するために、相同性モデリングを使用する。相同性モデリングは、タンパク質に対して、近似的な三次元座標を作製するコンピュータ的方法である。最初の座標の源及びそのさらなる精緻化のための指針は、三次元座標が公知であり及びその配列が第一のタンパク質の配列と関連する第二のタンパク質(参照タンパク質)である。参照タンパク質と座標が所望されるタンパク質(標的タンパク質)との間の対応を作製するために、2つのタンパク質の配列間での関連性が使用される。参照及び標的タンパク質の一次配列を、参照タンパク質から標的タンパク質へ直接転移された2つのタンパク質の同一部分の座標と並置する。既に転移されたモデル座標との一貫性を確保するために精緻化された包括的構造テンプレート及びエネルギーから、(例えば、残基の変異、挿入又は欠失から得られる)2つのタンパク質の合致しない部分に対する座標を構築する。このコンピュータによるタンパク質構造は、さらに精緻化され、又はモデル化研究で直接使用され得る。モデル構造の品質は、参照及び標的タンパク質が関連しているという主張の正確さ、並びに配列の並置が構築される精度によって決定される。
【0492】
マウスmAbに関しては、適切な参照構造を同定するために、BLAST検索と視覚的検査の組み合わせが使用される。参照及び標的アミノ酸配列間での25%の配列同一性は、相同性モデル化作業を試みるのに必要な最低条件と考えられる。配列の並置は手動で構築され、モデル座標はプログラムJackalを用いて作製される(Petrey,D.et al.(2003)Proteins53(補遺6):430−435参照)。
【0493】
選択された抗体のマウス及びヒトフレームワーク領域の一次配列は、著しい同一性を共有する。異なる残基の位置は、マウス抗体の観察された結合力を保持するために、ヒト化された配列中にマウス残基を含めるための候補である。ヒト及びマウス配列の間で異なるフレームワーク残基のリストは、手作業で構築される。表12は、この研究のために選択されたフレームワーク配列を示している。
【0494】
【表12】
【0495】
あるフレームワーク残基が抗体の結合特性に影響を及ぼす確率は、CDR残基へのその近接性に依存する。従って、モデル構造を使用する場合、マウスとヒト配列間で異なる残基は、CDR中の何れかの原子からのそれらの距離に従って順位付けされる。何れかのCDR原子の4.5オングストローム以内に存在する残基は最も重要であると同定され、ヒト化抗体中にマウス残基を保持する(すなわち、逆変異)ための候補とすることが推奨される。
【0496】
コンピュータによって構築されたヒト化抗体は、オリゴヌクレオチドを用いて構築される。それぞれの可変領域cDNAに対して、それぞれ60から80個のヌクレオチドのうち6個のヌクレオチドが、各オリゴヌクレオチドの5’及び/又は3’末端の20ヌクレオチドだけ互いに重複するように設計される。徐冷反応では、6つのオリゴヌクレオチド全てを合わせ、沸騰させ、dNTPの存在下で、徐冷する。重複するオリゴヌクレオチド間の約40塩基対の間隙を埋めるために、DNAポリメラーゼI、巨大(Klenow)断片(New England Biolabs #M0210,Beverley,MA.)を添加する。修飾されたpBOSベクター中の多重クローニング部位に対して相補的な突出配列を含有する2つの最も外側のプライマーを用いて、可変領域遺伝子全体を増幅するために、PCRを実施する(Mizushima,S.and Nagata,S.(1990)Nucleic Acids Res.18:17)。各cDNA集合物から得られたPCR産物をアガロースゲル上で分離し、予想された可変領域cDNAサイズに対応するバンドを切り出し、精製する。細菌中での相同的組換えによって、2つのヒンジ領域アミノ酸変異を含有するヒトIgG1定常領域をコードするcDNA断片上に、可変重領域をインフレームに挿入する。これらの変異は、234位のロイシンからアラニンへの変化(EU付番)及び235位のロイシンからアラニンへの変化である(Lund et al.(1991)J.Immunol.147:2657)。可変軽鎖領域は、相同的組換えによって、ヒトκ定常領域とインフレームに挿入する。細菌のコロニーを単離し、プラスミドDNAを抽出する。cDNA挿入物の全体を配列決定する。完全長のヒト化抗ヒト抗体を一過性に作製するために、各抗体に対応する正しいヒト化重鎖及び軽鎖をCOS細胞中に同時形質移入する。プロテインAセファロースクロマトグラフィーによって、組換えキメラ抗体を含有する細胞上清を精製し、酸緩衝液の添加によって、結合された抗体を溶出する。抗体を中性にし、PBS中に透析する。
【0497】
(実施例1.2.2.3)
ヒト化抗体の性質決定
例えば、実施例1.1.2.Aに記載されているサイトカインバイオアッセイを用いて、精製されたヒト化抗体が機能的活性を阻害する能力を測定する。実施例1.1.1.Bに記載されている表面プラズモン共鳴(Biacore
(R))測定を用いて、組換えヒト抗原へのヒト化抗体の結合親和性を測定する。バイオアッセイから得られたIC
50値及びヒト化抗体の親和性に順位を付ける。親ハイブリドーマmAbの活性を完全に維持するヒト化mAbを、将来の開発のための候補として選択する。最も好ましい上位2から3個のヒト化mAbをさらに性質決定する。
【0498】
(実施例1.2.2.3.A)
ヒト化抗体の薬物動態的分析
Sprague−Dawleyラット及びカニクイザルにおいて、薬物動態的研究を実施する。雄及び雌のラット及びカニクイザルに、4mg/kgのmAbの単回用量を静脈内又は皮下に投薬し、抗原捕捉ELISAを用いて試料を分析し、ノンコンパートメント分析によって、薬物動態的パラメータを測定する。要約すれば、ヤギ抗ビオチン抗体(5mg/mL、4℃、一晩)でELISAプレートを被覆し、Superblock(Pierce)でブロッキングし、室温で2時間、10%SuperblockTTBS中の50ng/mLのビオチン化されたヒト抗原とともに温置する。血清試料を系列希釈し(TTBS中の0.5%血清、10%Superblock)、室温で30分間、プレート上で温置する。HRP標識されたヤギ抗ヒト抗体を用いて検出を行い、4パラメータロジスティックフィッティングを使用する標準曲線の助けを得て濃度を測定する。薬物動態的パラメータに対する値は、WinNonlinソフトウェア(Pharsight Corporation,Mountain View,CA)を使用するノンコンパートメントモデルによって測定する。優れた薬物動態的特性(T
1/2は、8から13日又はこれより良好、低い排除速度及び優れた生物学的利用性50から100%を有する。)を有するヒト化mAbを選択する。
【0499】
(実施例1.2.2.3.B)
ヒト化モノクローナル抗体の物理化学的及びインビトロ安定性分析
サイズ排除クロマトグラフィー
2.5mg/mLになるように、抗体を水で希釈し、TSKゲルG3000SWXLカラム(Tosoh Bioscience, cat# k5539−05k)を使用するShimadzuHPLCシステム上で20mLを分析する。0.3mL/分の流速で、211mM硫酸ナトリウム、92mMリン酸ナトリウム、pH7.0で、試料をカラムから溶出する。HPLCシステムの作動条件は、以下のとおりである。
移動相:211mMNa
2SO
4、92mMNa
2HPO
4*7H
2O、pH7.0
勾配:等濃度
流速:0.3mL/分
検出波長:280nm
自動試料採取装置冷却温度:4℃
カラムオーブン温度:室温
実行時間:50分
【0500】
表13は、上記プロトコールによって測定された%単量体(予想分子量の非凝集タンパク質)として表された親抗体及びDVD−Ig構築物の純度データを含む。
【0501】
【表13】
【0502】
DVD−Igは、多くのDVD−Igが90%を超える単量体を示す優れたSEC特性を示した。このDVD−Igの特性は、親抗体に対して観察されたものと似ている。
【0503】
SDS−PAGE
還元及び非還元条件下の両方で、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって抗体を分析する。アダリムマブロットAFP04Cを対照として使用する。還元条件に関しては、100mMDTTを加えた2×trisグリシンSDS−PAGE試料緩衝液(Invitrogen, cat# LC2676, lot# 1323208)と試料を1:1で混合し、60℃で30分間加熱する。非還元条件に関しては、試料を試料緩衝液と1:1で混合し、100℃で5分間加熱する。還元された試料(10mg/レーン)は12%プレキャストtris−グリシンゲル(Invitrogen, cat# EC6005box, lot# 6111021)上に搭載し、還元されていない試料(10mg/レーン)は、8%から16%のprecasttris−グリシンゲル(Invitrogen,cat# EC6045box,lot# 6111021)上に搭載する。分子量マーカーとして、BluePlus2(Invitrogen, cat#LC5925,lot#1351542)を使用する。XCellSureLockミニセルゲルボックス(Invitrogen, cat# EI0001)中でゲルを走行させ、試料をゲル中に積み重ねるために、まず75の電圧を印加した後、色素の先頭がゲルの底に到達するまで、125の定常電圧を印加することによってタンパク質を分離する。使用する走行緩衝液は、10×trisグリシンSDS緩衝液(ABC,MPS−79−080106)から調製される1×trisグリシンSDS緩衝液である。コロイド状青色染色(Invitrogen cat#46−7015,46−7016)を用いて、ゲルを一晩染色し、バックグラウンドが透明になるまで、Milli−Q水で脱色させる。次いで、EpsonExpressionスキャナー(モデル1680、S/NDASX003641)を用いて、染色されたゲルをスキャンした。
【0504】
沈降速度分析
3つの標準的な2セクターカーボンエポンセンターピースのそれぞれの試料チャンバー中に抗体を搭載する。これらのセンターピースは1.2cmの光路長を有しており、サファイアウィンドウを用いて作製されている。参照緩衝液のためにPBSを使用し、各チャンバーは140μLを含有した。BeckmanProteomeLabXL−I分析用超遠心装置(シリアル番号PL106C01)中の4つ穴(AN−60Ti)ローターを用いて、全ての試料を同時に調べる。
【0505】
走行条件はプログラムされ、遠心の管理は、ProteomeLab(v5.6)を用いて行われる。試料及びローターは、分析の前に1時間、熱的に平衡化させる(20.0±0.1℃)。3000rpmで適切な細胞の搭載の確認を行い、各細胞に対して単一の走査を記録する。沈降速度条件は、以下のとおりである。
試料セル容積:420mL
参照セル容積:420mL
温度:20℃
ローター速度:35,000rpm
時間:8:00時間
UV波長:280nm
放射状(radial)ステップのサイズ:0.003cm
データ収集:シグナル平均化なしに、ステップ毎に1つのデータポイント
走査の総数:100
【0506】
完全な状態の抗体のLC−MS分子量測定
LC−MSによって、完全な状態の抗体の分子量を分析する。約1mg/mLになるように、水で各抗体を希釈する。脱塩し、APIQstarpulsari質量分析装置(Applied Biosystems)中に、試料5mgを導入するために、タンパク質マイクロトラップ(Michrom Bioresources,Inc,cat#004/25109/03)を備えた1100HPLC(Agilent)システムを使用する。試料を溶出するために、短い勾配を使用する。50mL/分の流速で、移動相A(HPLC水中、0.08%FA、0.02%TFA)及び移動相B(アセトニトリル中、0.08%FA及び0.02%TFA)を用いて勾配を実行する。質量分析装置は、2000から3500質量対電荷比の走査範囲で、4.5kVのスプレー電圧で操作する。
【0507】
抗体軽鎖及び重鎖のLC−MS分子量測定
抗体軽鎖(LC)、重鎖(HC)及び脱グリコシル化されたHCの分子量測定は、LC−MSによって分析する。1mg/mLになるように、水で抗体を希釈し、37℃で30分間、10mMDTTの最終濃度で、試料をLC及びHCに還元する。抗体を脱グリコシル化するために、100mLの総容量で、PGNアーゼF2mL、10%N−オクチルグルコシド5mLとともに、37℃で一晩、抗体100mgを温置する。脱グリコシル化後、10mMDTTの最終濃度を用いて、37℃で30分間、試料を還元する。脱塩し、APIQstarpulsari質量分析装置(Applied Biosystems)中に、試料(5mg)を導入するために、C4カラム(Vydac,cat#214TP5115,S/N060206537204069)を備えたAgilent1100HPLCシステムを使用する。試料を溶出するために、短い勾配を使用する。50mL/分の流速で、移動相A(HPLC水中、0.08%FA、0.02%TFA)及び移動相B(アセトニトリル中、0.08%FA及び0.02%TFA)を用いて勾配を実行する。質量分析装置は、800から3500質量対電荷比の走査範囲で、4.5kVのスプレー電圧で操作する。
【0508】
ペプチドマッピング
75mM炭酸水素アンモニウム中の6M塩酸グアニジンの最終濃度を用いて、室温で15分間、抗体を変性させる。変性された試料を、37℃で60分間、10mMDTTの最終濃度で還元した後、暗所にて、37℃で30分間、50mMヨード酢酸(IAA)でアルキル化する。アルキル化に続いて、4℃で、10mM炭酸水素アンモニウムの4リットルに対して、試料を一晩透析する。10mM炭酸水素アンモニウム、pH7.8によって、透析された試料を1mg/mLになるように希釈し、37℃で4時間、1:20(w/w)のトリプシン/Lys−C:抗体比で、トリプシン(Promega,cat#V5111)又はLys−C(Roche,cat#11 047 825 001)を用いて、抗体100mgを消化する。1NHClの1mLで、消化物を反応停止させる。質量分析検出を用いたペプチドマッピングのために、Agilent1100HPLCシステムを有するC18カラム(Vydac,cat#218TP51,S/N NE9606 10.3.5)上での逆相高性能液体クロマトグラフィー(RPHPLC)によって、消化物40mLを分離する。50mL/分の流速で、移動相A(HPLC等級の水中の0.02%TFA及び0.08%FA)及び移動相B(アセトニトリル中の0.02%TFA及び0.08%FA)を使用する勾配を用いて、ペプチドの分離を行う。4.5kVのスプレー電圧での陽性モード及び800から2500質量対電荷比のスキャン範囲で、APIQSTAR Pulsari質量分析装置を操作する。
【0509】
ジスルフィド結合マッピング
抗体を変性させるために、抗体100mLを100mM炭酸水素アンモニウム中の8M塩酸グアニジン300mLと混合する。pHが7と8の間にあることを確かめるために、pHをチェックし、6M塩酸グアニジンの最終濃度で、室温で15分間、試料を変性させる。変性された試料の一部(100mL)を、Milli−Q水で600mLに希釈して、1Mの最終塩酸グアニジン濃度を得る。37℃で約16時間、1:50のトリプシン又は1:50のLys−C:抗体(w/w)比(4.4mg酵素:220mg試料)のトリプシン(Promega,cat#V5111,lot#22265901)又はLys−C(Roche,cat#11047825001,lot#12808000)の何れかで、試料(220mg)を消化する。試料に、トリプシン又はLys−Cをさらに5mg添加し、37℃でさらに2時間、消化を進行させる。各試料にTFA1mLを添加することによって、消化を停止させる。AgilentHPLCシステム上のC18カラム(Vydac,cat#218TP51 S/N NE020630−4−1A)を用いるRPHPLCによって、消化された試料を分離する。50mL/分の流速で、移動相A(HPLC等級の水中の0.02%TFA及び0.08%FA)及び移動相B(アセトニトリル中の0.02%TFA及び0.08%FA)を使用するペプチドマッピングに対して使用したのと同じ勾配を用いて、分離を行う。HPLC操作条件は、ペプチドマッピングに対して使用したものと同じである。4.5kVのスプレー電圧での陽性モード及び800から2500質量対電荷比のスキャン範囲で、APIQSTAR Pulsari質量分析装置を操作する。ペプチドの観察された分子量を、ジスルフィド結合によって結合されたトリプシン又はLys−Cペプチドの予想される分子量とマッチさせることによって、ジスルフィド結合を割り振る。
【0510】
遊離のスルフヒドリルの決定
抗体中の遊離のシステインを定量するために使用した方法は、Ellman試薬、5,5c−ビチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)の、スルフヒドリル基(SH)との反応(この反応は、特徴的な発色性産物である5−チオ−(2−ニトロ安息香酸)(TNB)を生成する。)を基礎とする。反応は、式:
DTNB+RSH
(R)RS−TNB+TNB−+H
+で図示される。
【0511】
TNB−の吸光度は、Cary50分光光度計を用いて、412nmで測定される。遊離のSH標準として、2メルカプトエタノール(b−ME)の希釈物を用いて、吸光度曲線をプロットし、タンパク質中の遊離のスルフヒドリル基の濃度を試料の412nmの吸光度から求める。
【0512】
0.142mMの最終濃度まで、HPLC等級の水で14.2Mb−MEを系列希釈することによって、b−ME標準原液を調製する。次いで、各濃度に対する3つ組みの標準を調製する。amicon ultra 10,000MWCO遠心フィルター(Millipore,cat# UFC801096,lot# L3KN5251)を用いて、抗体を10mg/mLまで濃縮し、アダリムマブに対して使用される製剤緩衝液(5.57mM一塩基性リン酸ナトリウム、8.69mM二塩基性リン酸ナトリウム、106.69mMNaCl、1.07mMクエン酸ナトリウム、6.45mMクエン酸、66.68mMマニトール、pH5.2、0.1%(w/w)Tween)に緩衝液を交換する。室温で20分間、振盪装置上で試料を混合する。次いで、100mMTris緩衝液、pH8.1の180mLを各試料及び標準に添加した後、10mMリン酸緩衝液pH8.1中の2mMDTNBの300mLを添加する。完全な混合後、Cary50分光光度計上で、412nmでの吸収に関して、試料及び標準を測定する。遊離のSHの量とb−ME標準のOD
412nmをプロットすることによって標準曲線を得る。ブランクを差し引いた後のこの曲線に基づいて、試料の遊離SH含量を計算する。
【0513】
弱陽イオン交換クロマトグラフィー
10mMリン酸ナトリウム、pH6.0を用いて、抗体を1mg/mLまで希釈する。WCX−10 ProPac分析用カラム(Dionex,cat#054993,S/N02722)を備えたShimadzuHPLCシステムを用いて、電荷の不均一性を分析する。80%の移動相A(10mMリン酸ナトリウム、pH6.0)及び20%の移動相B(10mMリン酸ナトリウム、500mMNaCl、pH6.0)中のカラムに試料を搭載し、1.0mL/分の流速で溶出する。
【0514】
オリゴ糖の特性決定
抗体のPNGアーゼF処理後に放出されるオリゴ糖を、2−アミノベンズアミド(2−AB)標識試薬を用いて誘導化する。順相高性能液体クロマトグラフィー(NPHPLC)によって、蛍光標識されたオリゴ糖を分離し、既知標準と比較した保持時間に基づいて、オリゴ糖の異なる形態を性質決定する。
【0515】
重鎖のFc部分からN結合型オリゴ糖を切断するために、まず、PNGアーゼFを用いて抗体を消化する。PNGアーゼF2mL及び10%N−オクチルグルコシド3mLとともに、抗体(200mg)を500mLのEppendorf管に入れる。最終容量を60mLにするために、リン酸緩衝化された生理的食塩水を添加する。700RPMに設定されたEppendorf温熱ミキサー中にて、試料を37℃で一晩温置する。対照として、アダリムマブロットAFP04CもPNGアーゼFで消化する。
【0516】
PNGアーゼF処理の後、タンパク質を沈殿させるために、750RPMに設定されたEppendorf温熱ミキサー中にて、95℃で5分間、試料を温置し、次いで、沈殿したタンパク質を回転して沈降させるために、10,000RPMで2分間、Eppendorf遠心管に試料を入れる。オリゴ糖を含有する上清を500mLのEppenndorf管に移し、65℃で、speed−vac中で乾燥させる。
【0517】
Prozymeから購入した2AB標識キット(cat#GKK−404,lot#132026)を用いて、オリゴ糖を2ABで標識する。標識試薬は、製造業者の指示書に従って調製する。酢酸(150mL、キットに付属)をDMSOバイアル(キットに付属)に添加し、ピペット操作で溶液を数回上下させることによって混合する。(使用直前に)酢酸/DMSO混合物(100mL)を2−AB色素のバイアルに移し、色素が完全に溶解するまで混合する。次いで、還元剤のバイアル(キットに付属)に色素溶液を添加し、よく混合する(標識試薬)。各乾燥されたオリゴ糖試料のバイアルに、標識試薬(5mL)を添加し、完全に混合する。反応の2時間、65℃及び700から800RPMに設定されたEppendorf温熱ミキサー中に、反応バイアルを入れる。
【0518】
標識反応後、ProzymeのGlycoClean S Cartridges(cat#GKI−4726)を用いて、過剰な蛍光色素を除去する。試料を添加する前に、milli−Q水1mLでカートリッジを洗浄した後、30%酢酸溶液1mLの5isheで洗浄する。試料を添加する直前に、アセトニトリル(Burdick and Jackson,cat#AH015−4)1mLをカートリッジに添加する。
【0519】
アセトニトリルの全てがカートリッジを通過した後、洗浄直後のディスクの中心に試料を点状に配置し、ディスク上に10分間吸着させる。アセトニトリル1mL、続いて、96%アセトニトリル1mLの5つのisheで、ディスクを洗浄する。1.5mLのEppendorf管上にカートリッジを配置し、milliQ水の3回ishe(各ish400mL)を用いて、2−AB標識されたオリゴ糖を溶出する。
【0520】
Shimadzu HPLCシステムに接続されたGlycosepNHPLC(cat# GKI−4728)カラムを用いて、オリゴ糖を分離する。ShimadzuHPLCシステムは、システム制御装置、脱気装置、2つのポンプ、試料冷却装置が付いた自動試料採取装置及び蛍光検出装置からなった。
【0521】
高温での安定性
抗体の緩衝液は、5.57mM一塩基性リン酸ナトリウム、8.69mM二塩基性リン酸ナトリウム、106.69mMNaCl、1.07mMクエン酸ナトリウム、6.45mMクエン酸、66.68mMマニトール、0.1%(w/v)Tween、pH5.2;又は10mMヒスチジン、10mMメチオニン、4%マニトール、pH5.9の何れかであり、Amicon超遠心フィルターを使用する。適切な緩衝液を用いて、抗体の最終濃度を2mg/mLに調整する。次いで、抗体溶液をフィルター滅菌し、0.25mLの分取試料を無菌条件下で調製する。1、2又は3週間、分取試料を−80℃、5℃、25℃又は40℃に放置する。温置期間の終了時に、サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS−PAGEによって試料を分析する。
【0522】
還元条件及び非還元条件下の両方でのSDS−PAGEによって、安定性試料を分析する。使用した操作は、本明細書に記載されているものと同じである。コロイト状青色染色(Invitrogen cat#46−7015,46−7016)を用いて、ゲルを一晩染色し、バックグラウンドが透明になるまで、Milli−Q水で脱色させる。次いで、EpsonExpressionスキャナー(モデル1680、S/NDASX003641)を用いて、染色されたゲルをスキャンした。より高い感度を得るために、銀染色キット(Owl Scientific)を用いて、同じゲルを銀染色し、製造業者によって与えられた推奨操作を使用する。
【0523】
(実施例1.2.2.3.C)
ヒト癌腫異種移植片の増殖に対するヒト化モノクローナル抗体単独又は化学療法との組み合わせの有効性
99%の生存率、組織培養フラスコ中で85%の集密度になるように、ヒト癌細胞をインビトロで増殖させる。19から25グラムの雌又は雄のSCIDマウス(Charles Rivers Labs)に耳標を付け、毛を剃った。次いで、研究の0日目に、2×10
6個のヒト腫瘍細胞0.2mL(1:1マトリゲル)をマウスの右脇腹に皮下接種する。約150から200mm
3の平均腫瘍容積を有するマウスの別々のカゴの中に、マウスの大きさを合わせた後に、ビヒクル(PBS)、ヒト化抗体及び/又は化学療法の投与(腹腔内、Q3D/週)を開始する。接種から約10日後に開始して、週に2回、測径器の対によって腫瘍を測定し、式V=L×W
2/2(V:容積、mm
3;L:長さ、mM;W:幅、mm)に従って腫瘍容積を計算する。mAbのみで、又は化学療法と組み合わせて処理された動物中には、ビヒクルのみ又はイソタイプ対照mAbを与えた動物中の腫瘍と比べて、腫瘍容積の低下が見られる。
【0524】
(実施例1.2.2.3.D)
FACSを基礎とする再誘導された細胞傷害(rCTL)アッセイ
予め凍結させた単離された末梢血単核細胞(PBMC)から、負の選択濃縮カラム(R&D Systems,Minneapolis,MN; Cat.#HTCC−525)によってヒトCD3+T細胞を単離した。フラスコ(vent cap,Corning,Acton,MA)中でT細胞を4日間刺激し、D−PBS(Invitrogen,Carlsbad,CA)中の、10μg/mL抗CD3(OKT−3,eBioscience,Inc.,San Diego,CA)及び2μg/mL抗CD28(CD28.2,eBioscience,Inc.,San Diego,CA)で被覆し、L−グルタミン、55mMβ−ME、ペニシリン/ストレプトマイシン、10%FBSを加えた完全RPMI1640培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)中の30U/mLIL−2(Roche)中で培養する。次いで、アッセイを使用する前に、30U/mLのIL−2中で、T細胞を一晩休息させた。製造業者の指示書に従って、DoHH2又はRaji標的細胞をPKH26(Sigma−Aldrich,St. Louis,MO)で標識した。rCTLアッセイを通じて、L−グルタミン及び10%FBS(Hyclone,Logan,UT)を含有するRPMI1640培地(フェノールなし、Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用した。(Dreier et al.(2002) Int J Cancer 100:690を参照)。
【0525】
10:1のE:T比を与えるために、それぞれ、96ウェルプレート(Costar #3799,Acton,MA)中の10
5及び10
4細胞/ウェルの最終細胞濃度で、エフェクターT細胞(E)及び標的(T)を播種した。濃度依存的滴定曲線を得るために、DVD−Ig分子を希釈した。一晩の温置後、細胞を沈降させ、D−PBS中に0.1%BSA(Invitrogen,Carlsbad,CA)、0.1%アジ化ナトリウム及び0.5μg/mLヨウ化プロピジウム(BD)を含有するFACS緩衝液中に再懸濁する前に、D−PBSを用いて1回洗浄する。FACSCantoII装置(Becton Dickinson,San Jose,CA)にFACSデータを収集し、Flowjo(Treestar)中で解析した。パーセント特異的溶解を測定するために、パーセント総標的(対照、無処置)によって除した、DVD−Ig処理された試料中の生きた標的のパーセントを計算した。Prism(Graphpad)で、IC
50を計算した。
【0526】
再誘導された毒性に関して、CD3/CD20DVD−Igを検査し、IC50=325pMで、インビトロでの腫瘍の死滅を示した。このCD3/CD20DVD−Igの配列は、米国特許出願20070071675号に開示された。
【0527】
(実施例1.4)
DVD−Igの作製
本明細書に記載されているように選択された2つの親モノクローナル抗体(一方はヒト抗原Aに対し、他方はヒト抗原Bに対する。)を用いて、2つの抗原を結合することができるDVD−Ig分子を構築する。
【0528】
(実施例1.4.1)
2つのリンカー長を有するDVD−Igの作製
ADCC/CDCエフェクター機能を除去するために、234及び235に変異を有するμ1Fcを含有する定常領域を使用する。4つの異なる抗A/BDVD−Ig構築物(2つは短いリンカーを有し、2つは長いリンカーを有する(それぞれ、2つの異なるドメイン方向性:V
A−V
B−C及びV
B−V
A−C)。)を作製する(表14参照)。ヒトC1/Ck又はCH1ドメインのN末端配列に由来するリンカー配列は、以下のとおりである。
【0529】
DVDAB構築物の場合:
軽鎖(抗Aがλを有する場合):短いリンカー:QPKAAP(配列番号15);長いリンカー:QPKAAPSVTLFPP(配列番号16)
軽鎖(抗Aがκを有する場合):短いリンカー:TVAAP(配列番号13);長いリンカー:TVAAPSVFIFPP(配列番号14)
重鎖(γ1):短いリンカー:ASTKGP(配列番号21);長いリンカー;ASTKGPSVFPLAP(配列番号22)
DVDBA構築物の場合:
軽鎖(抗Bがλを有する場合):短いリンカー:QPKAAP(配列番号15);長いリンカー:QPKAAPSVTLFPP(配列番号16)
軽鎖(抗Bがκを有する場合):短いリンカー:TVAAP(配列番号13);長いリンカー:TVAAPSVFIFPP(配列番号14)
重鎖(γ1):短いリンカー:ASTKGP(配列番号21);長いリンカー;ASTKGPSVFPLAP(配列番号22)
pBOS発現ベクター中に、重鎖及び軽鎖構築物をサブクローニングし、COS細胞中で発現させた後、プロテインAクロマトグラフィーによって精製する。精製された物質をSDS−PAGE及びSEC分析に供する。
【0530】
表14は、各抗A/BDVD−Igタンパク質を発現させるために使用された重鎖及び軽鎖構築物を記載する。
【0531】
【表14】
【0532】
(実施例1.4.2)
DVDABSL及びDVDABLLに対するDNA構築物の分子クローニング
重鎖構築物DVDABHC−LL及びDVDABHC−SLを作製するために、A抗体のVHドメインは特異的なプライマー(3’プライマーは、それぞれ、SL/LL構築物に対する短い/長いライナー配列を含有する。)を用いて、PCR増幅されるのに対して、B抗体のVHドメインは、特異的なプライマー(5’プライマーは、それぞれ、SL/LL構築物に対する短い/長いライナー配列を含有する。)を用いて増幅される。両PCR反応は、標準的なPCR技術と操作に従って行われる。2つのPCR生成物をゲル精製し、その後の重複PCR反応のための重複テンプレートとして一緒に使用する。標準的な相同的組換えアプローチを使用することによって、SrfI及びSalIによって二重消化されたpBOS−hCγl,z、非a哺乳動物発現ベクター(Abbott)の中に重複するPCR産物をサブクローニングする。
【0533】
軽鎖構築物DVDABLC−LL及びDVDABLC−SLを作製するために、A抗体のVLドメインは特異的なプライマー(3’プライマーは、それぞれ、SL/LL構築物に対する短い/長いライナー配列を含有する。)を用いて、PCR増幅されるのに対して、B抗体のVLドメインは、特異的なプライマー(5’プライマーは、それぞれ、SL/LL構築物に対する短い/長いライナー配列を含有する。)を用いて増幅される。両PCR反応は、標準的なPCR技術と操作に従って行われる。2つのPCR生成物をゲル精製し、標準的なPCR条件を使用するその後の重複PCR反応のための重複テンプレートとして一緒に使用する。標準的な相同的組換えアプローチを使用することによって、SrfI及びNotIによって二重消化されたpBOS−hCk哺乳動物発現ベクター(Abbott)の中に重複するPCR産物をサブクローニングする。以下に記載されているDVDBASL及びDVDBALLを作製するために、類似のアプローチが使用される。
【0534】
(実施例1.4.3)
DVDABSL及びDVDBALLに対するDNA構築物の分子クローニング
重鎖構築物DVDBAHC−LL及びDVDBAHC−SLを作製するために、抗体BのVHドメインは特異的なプライマー(3’プライマーは、それぞれ、SL/LL構築物に対する短い/長いライナー配列を含有する。)を用いて、PCR増幅されるのに対して、抗体AのVHドメインは、特異的なプライマー(5’プライマーは、それぞれ、SL/LL構築物に対する短い/長いライナー配列を含有する。)を用いて増幅される。両PCR反応は、標準的なPCR技術と操作に従って行われる。2つのPCR生成物をゲル精製し、標準的なPCR条件を使用するその後の重複PCR反応のための重複テンプレートとして一緒に使用する。標準的な相同的組換えアプローチを使用することによって、SrfI及びSalIによって二重消化されたpBOS−hCγl,z、非a哺乳動物発現ベクター(Abbott)の中に重複するPCR産物をサブクローニングする。
【0535】
軽鎖構築物DVDBALC−LL及びDVDBALC−SLを作製するために、抗体BのVLドメインは特異的なプライマー(3’プライマーは、それぞれ、SL/LL構築物に対する短い/長いライナー配列を含有する。)を用いて、PCR増幅されるのに対して、抗体AのVLドメインは、特異的なプライマー(5’プライマーは、それぞれ、SL/LL構築物に対する短い/長いライナー配列を含有する。)を用いて増幅される。両PCR反応は、標準的なPCR技術と操作に従って行われる。2つのPCR生成物をゲル精製し、標準的なPCR条件を使用するその後の重複PCR反応のための重複テンプレートとして一緒に使用する。標準的な相同的組換えアプローチを使用することによって、SrfI及びNotIによって二重消化されたpBOS−hCk哺乳動物発現ベクター(Abbott)の中に重複するPCR産物をサブクローニングする。
【0536】
(実施例1.4.4)
さらなるDVD−Igの構築及び発現
(実施例1.4.4.1)
DVD−Igベクター構築物の調製
DVD−Igの中に取り込ませるために、特異的な抗原又はそのエピトープを認識する特異的抗体に対する親抗体アミノ酸配列は、上記ハイブリドーマの調製によって取得することが可能であり、又は公知の抗体タンパク質又は核酸を配列決定することによって取得することが可能である。さらに、文献から公知の配列を得ることができる。標準的なDNA合成又は増幅技術を使用し、所望の抗体断片を発現ベクター中に集合させ、標準的な組換えDNA技術を使用して、細胞内で発現させるための核酸を合成するために、前記配列を使用することができる。
【0537】
例えば、アミノ酸配列から核酸のコドンを決定し、Blue Heron Biotechnology,Inc.(www.blueheronbio.com)Bothell,WA USAによって、オリゴヌクレオチドDNAを合成した。300から2,000塩基対の二本鎖DNA断片中にオリゴヌクレオチドを集合させ、プラスミドベクター中にクローニングし、配列を確認した。完全な遺伝子を得るために、酵素的方法を用いて、クローニングされた断片を集合させ、発現ベクター中にサブクローニングした。(7,306,914;7,297,541;7,279,159;7,150,969;20080115243;20080102475;20080081379;20080075690;20080063780;20080050506;20080038777;20080022422;20070289033;20070287170;20070254338;20070243194;20070225227;20070207171;20070150976;20070135620;20070128190;20070104722;20070092484;20070037196;20070028321;20060172404;20060162026;20060153791;20030215458;20030157643参照)。
【0538】
親抗体及びDVD−Igのクローニングのために、pHybEベクター(米国特許出願第61/021,282号)の群を使用した。野生型定常領域を有する抗体及びDVD重鎖をクローニングするために、pJP183;pHybE−hCg1、z、非−aV2に由来するV1を使用した。κ定常領域を有する抗体及びDVD軽鎖をクローニングするために、pJP191;pHybE−hCkV2に由来するV2を使用した。λ定常領域を有する抗体及びDVD軽鎖をクローニングするために、pJP192;pHybE−hC1V2に由来するV3を使用した。λ−κハイブリッドVドメインを有するDVD軽鎖をクローニングするために、λシグナルペプチド及びκ定常領域を用いて構築されたV4を使用した。κ−λハイブリッドVドメインを有するDVD軽鎖をクローニングするために、κシグナルペプチド及びλ定常領域を用いて構築されたV5を使用した。(234,235AA)変異体定常領域を有する抗体及びDVD重鎖をクローニングするために、pJP183;pHybE−hCg1、z、非−aV2に由来するV7を使用した。
【0539】
表15を参照すると、親抗体並びにDVD−IgVH及びVL鎖のクローニングにおいて、多数のベクターが使用された。
【0540】
【表15】
【0541】
(実施例1.4.4.2)
293細胞中での形質移入及び発現
DVD−Igタンパク質を作製するために、DVD−Igベクター構築物を293細胞中に形質移入する。使用した293一過性形質移入操作は、「Durocher et al.(2002) Nucleic Acids Res.30(2):E9」及び「Pham et al.(2005) Biotech.Bioengineering 90(3):332−44」に公表されている方法の改変である。形質移入において使用された試薬は、以下のものを含んだ。
【0542】
・130rpm、37℃及び5%CO
2に設定された、加湿された温置装置中の使い捨てエーレンマイヤーフラスコ中で培養されたHEK293−6E細胞(EBNA1を安定に発現するヒト胎児腎臓細胞株;National Research Council Canadaから入手)
・培地:FreeStyle 293 Expression Medium(Invitrogen12338−018)+25μg/mLGeneticin(G418)(Invitrogen 10131−027)及び0.1%PluronicF−68(Invitrogen 24040−032)
・形質移入培地:FreeStyle 293 Expression Medium+10mMHEPES (Invitrogen 15630−080)
・ポリエチレンイミン(PEI)原液:直鎖25kDaPEI(Polysciences)を用いて調製され、−15℃未満で保存された1mg/mLの無菌原溶液、pH7.0。
・Tryptone Feed Medium:FreeStyle 293 Expression Medium中のTryptone N1(Organotechnie,19554)の5%w/v無菌原液。
【0543】
形質移入のための細胞調製:形質移入の約2から4時間前に、遠心によってHEK293−6E細胞を採集し、約100万の生きた細胞/mLの細胞密度で培地中に再懸濁する。各形質移入に対して、細胞懸濁物40mLを使い捨ての250mLエーレンマイヤーフラスコ中に移し、2から4時間温置する。
【0544】
形質移入:形質移入培地及びPEI原液を室温(RT)まで予め加温する。各形質移入のために、プラスミドDNA25μg及びポリエチレンイミン(PEI)50μgを、形質移入培地5mL中に合わせ、DNA:PEI複合体を形成させるために、室温で15から20分間温置する。BR3−Ig形質移入のために、形質移入当りBR3−Igプラスミド25μgを使用する。予め調製された40mLの培養物に、それぞれのDNA:PEI複合体混合物5mLを添加し、130rpm、37℃及び5%CO
2に設定された、加湿された温置装置に戻す。20から28時間後に、各形質移入にTryptone Feed Medium5mLを添加し、培養を6日間継続する。
【0545】
表16は、293細胞中での、mg/Lとして表された親抗体又はDVD−Ig構築物に対する収率データを含む。
【0546】
【表16】
【0547】
全てのDVDは、293細胞中で良好に発現された。DVDは、プロテインAカラム上で容易に精製することができる。多くの事例で、293細胞の上清から、5mg/L超の精製されたDVD−Igを容易に得ることができた。
【0548】
(実施例1.4.5)
A/BDVD−Igの性質決定及びリード選択
タンパク質A及びタンパク質Bの両方に対して、抗A/BDVD−Igの結合親和性をBiacore上で分析する。Biacore上での多重結合研究によって、DVD−Igの四価特性を調べる。一方、本明細書に記載されているように、それぞれ、バイオアッセイによって、タンパク質A及びタンパク質Bに対するDVD−Igの中和能を評価する。各mAbに対して本明細書に記載されているように、詳しい物理化学的及び生物分析的(ラットPK)性質決定のために、元の親mAbの親和性及び効力を最もよく保持するDVD−Ig分子を選択する。多数の分析に基づいて、最終リードDVD−IgはCHO安定細胞株の開発に進み、カニクイザルでの安定性、薬物動態及び有効性研究並びに前製剤活性において、CHO由来の物質を使用する。
【0549】
(実施例2)
二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD−Ig)の作製及び性質決定
DVD−Ig可変重及びDVD−Ig可変軽鎖配列をコードするポリヌクレオチド断片を合成し、実施例1.4.4.1に従って、pHybC−D2ベクター中に断片をクローニングすることによって、既知のアミノ酸配列を有する親抗体を用いて二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD−Ig)を作製した。実施例1.4.4.2に記載されているように、DVD−Ig構築物を293細胞中にクローニングし、発現させた。標準的な方法に従って、DVD−Igタンパク質を精製した。表記されているように、実施例1.1.1及び1.1.2に記載されている方法に従って、機能的な特徴を決定した。本発明のDVD−Igに対するDVD−IgVH及びVL鎖が、以下に記載されている。
【0550】
(実施例2.1)
Aβ(配列1)及びAβ(配列3)DVD−Igの作製
【0551】
【表17】
【0552】
(実施例2.2)
TNF及びAβ(配列2)DVD−Igの作製
【0553】
【表18】
【0554】
(実施例2.3)
IL−1β及びAβ(配列2)DVD−Igの作製
【0555】
【表19】
【0556】
(実施例2.4)
Aβ(配列1)及びAβ(配列2)DVD−Igの作製
【0557】
【表20】
【0558】
(実施例2.5)
IGF1,2及びAβ(配列2)DVD−Igの作製
【0559】
【表21】
【0560】
(実施例2.6)
Aβ(配列2)及びIL−18DVD−Igの作製
【0561】
【表22】
【0562】
(実施例2.7)
IL−6及びAβ(配列2)DVD−Igの作製
【0563】
【表23】
【0564】
(実施例2.8)
TNF及びAβ(配列3)DVD−Igの作製
【0565】
【表24】
【0566】
(実施例2.9)
IL−1β及びAβ(配列3)DVD−Igの作製
【0567】
【表25】
【0568】
(実施例2.10)
Aβ(配列1)及びAβ(配列3)DVD−Igの作製
【0569】
【表26】
【0570】
(実施例2.11)
IGF1,2及びAβ(配列3)DVD−Igの作製
【0571】
【表27】
【0572】
(実施例2.12)
Aβ(配列3)及びIL−18DVD−Igの作製
【0573】
【表28】
【0574】
(実施例2.13)
IL−6及びAβ(配列3)DVD−Igの作製
【0575】
【表29】
【0576】
(実施例2.14)
TNF及びAβ(配列1)DVD−Igの作製
【0577】
【表30】
【0578】
(実施例2.15)
IL−1β及びAβ(配列1)DVD−Igの作製
【0579】
【表31】
【0580】
(実施例2.16)
IGF1,2及びAβ(配列1)DVD−Igの作製
【0581】
【表32】
【0582】
(実施例2.17)
Aβ(配列1)及びIL−18DVD−Igの作製
【0583】
【表33】
【0584】
(実施例2.18)
IL−6及びAβ(配列1)DVD−Igの作製
【0585】
【表34】
【0586】
(実施例2.19)
Aβ(配列1)及びRAGEDVD−Igの作製
【0587】
【表35】
【0588】
(実施例2.20)
NGF及びIL−18DVD−Igの作製
【0589】
【表36】
【0590】
(実施例2.21)
NGF及びIL−1βDVD−Igの作製
【0591】
【表37】
【0592】
(実施例2.22)
NGF及びIL−6DVD−Igの作製
【0593】
【表38】
【0594】
(実施例2.23)
TNF及びEGFR(配列2)DVD−Igの作製
【0595】
【表39】
【0596】
(実施例2.24)
TNF及びRAGEDVD−Igの作製
【0597】
【表40】
【0598】
(実施例2.25)
CD−20及びEGFR(配列1)DVD−Igの作製
【0599】
【表41】
【0600】
(実施例2.26)
CD−20及びEGFR(配列2)DVD−Igの作製
【0601】
【表42】
【0602】
(実施例2.27)
RGMA及びTNFDVD−Igの作製
【0603】
【表43】
【0604】
(実施例2.28)
親抗体及びDVD−Ig配列をクローニングするために使用されたクローニングベクター配列
【0605】
【表44】
【0606】
本発明は、分子生物学及び薬物送達の分野において周知の技術全体を、参照により組み込む。これらの技術には、以下の刊行物に記載されている技術が含まれるが、これらに限定されない。
【0607】
Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology.John Wiley &Sons,NY(1993);
Ausubel,F.M.et al.eds.,Short Protocols In Molecular Biology(4th Ed.1999) John Wiley & Sons,NY.(ISBN 0−471−32938−X).
Controlled Drug Bioavailability.Drug Product Design and Performance.Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);
Giege,R.and Ducruix,A.Barrett,Crystallization of Nucleic Acids and Proteins,a Practical Approach,2nd ea.,pp.20 1−16,Oxford University Press,New York,New York,(1999);
Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,vol.2,pp.115−138(1984);
Hammerling,et al.,in: Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981;
Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);
Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)and(1991);
Kabat,E.A.,et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242;
Kontermann and Dubel eds.,Antibody Engineering(2001)Springer−Verlag.New York.790 pp.(ISBN 3−540−41354−5).
Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);
Lu and Weiner eds.,Cloning and Expression Vectors for Gene Function Analysis(2001) BioTechniques Press.Westborough,MA.298 pp.(ISBN 1−881299−21−X).
Medical Applications of Controlled Release.Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);
Old,R.W.& S.B.Primrose,Principles of Gene Manipulation: An Introduction To Genetic Engineering(3d Ed.1985) Blackwell Scientific Publications,Boston.Studies in Microbiology;V.2:409 pp.(ISBN 0−632−01318−4).
Sambrook,J.et al.eds.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d Ed.1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.Vols.1−3.(ISBN 0−87969−309−6).
Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems.J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978
Winnacker,E.L.From Genes To Clones:Introduction To Gene Technology(1987) VCH Publishers,NY(translated by Horst Ibelgaufts).634 pp.(ISBN 0−89573−614−4)
【0608】
参照による組み込み
本願を通じて引用され得る全ての引用された参考文献(文献、特許、特許出願及びウェブサイトを含む。)の内容の全体は、本明細書中にこれらの参考文献が引用されるように、参照により、本明細書に明示的に組み込まれる。本発明の実施は、別段の記載がなければ、本分野において周知である免疫学、分子生物学及び細胞生物学の慣用技術を使用する。
【0609】
均等物
本発明は、その精神又は不可欠な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具現化され得る。従って、前記実施形態は、本明細書に記載されている本発明の限定ではなく、あらゆる点で例示的なものと考えなければならない。従って、本発明の範囲は、前記記載ではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、従って、特許請求の範囲の意義及び均等の範囲に属する全ての変化は本発明に包含されるものとする。