特許第5723868号(P5723868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723868
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】分析装置および試薬容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   G01N35/10 C
【請求項の数】7
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2012-501743(P2012-501743)
(86)(22)【出願日】2011年2月15日
(86)【国際出願番号】JP2011053102
(87)【国際公開番号】WO2011105247
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-214572(P2010-214572)
(32)【優先日】2010年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-145879(P2010-145879)
(32)【優先日】2010年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-41330(P2010-41330)
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝明
(72)【発明者】
【氏名】濱田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】喜多川 信宏
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 西独国特許出願公開第03042333(DE,A)
【文献】 特開昭63−029255(JP,A)
【文献】 特開平03−176664(JP,A)
【文献】 特開2004−163319(JP,A)
【文献】 特開2003−075458(JP,A)
【文献】 特開2002−055110(JP,A)
【文献】 特開2008−275585(JP,A)
【文献】 特開平08−105900(JP,A)
【文献】 特開2007−147627(JP,A)
【文献】 特開平01−098970(JP,A)
【文献】 特開平04−036658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引管進入可能な吸引管進入部を先端近傍に有し、先端側に配置された第1収容部と、前記第1収容部に後続する前記第1収容部よりも幅広の第2収容部とを含む試薬容器を、装置の側面から装置の内部に向かって挿入することで試薬容器をセットする粒子分析用の分析装置であって、
吸引管進入部側から挿入された前記試薬容器を保持する試薬容器保持部と、
前記試薬容器保持部に保持された前記試薬容器の吸引管進入部に上方から進入して前記試薬容器内の試薬を吸引するための前記吸引管と、を備え、
前記試薬容器保持部は、吸引管進入部側から挿入された前記試薬容器の前記試薬容器保持部への挿入を案内する案内部材を含み、
前記案内部材は、前記試薬容器の挿入方向先端側に配置され、前記試薬容器の先端の挿入時に前記第1収容部の側面を案内する第1案内部と、前記第1案内部よりも前記挿入方向後側に配置され、前記第1案内部よりも広い幅を有し、前記第2収容部の側面を案内する第2案内部を有する、分析装置。
【請求項2】
前記試薬容器は染色液を収容する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記試薬容器保持部を複数備え、前記試薬容器保持部とにそれぞれ対応する前記吸引管を備える、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記分析装置は、フローサイトメーターである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記分析装置は、血球計数装置あるいは尿中有形成分分析装置である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記吸引管前記吸引管進入部と当接した状態で、前記吸引管進入部を塞ぐ蓋部を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記案内部材は、少なくとも前記試薬容器の高さと略同じ高さ寸法を有し、前記試薬容器の下端から上端までをそれぞれガイド可能に構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬容器から試薬を吸引して検体を分析する分析装置および分析装置に用いる試薬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液、尿などの検体を分析する分析装置として、例えば、生化学分析装置、血球計数装置、及び尿中有形成分分析装置などの分析装置が知られている。
【0003】
生化学分析装置は検体の分析に用いる試薬の種類が非常に多い。この場合に、試薬の設置場所が試薬の種類ごとに決まっていると、ユーザがいちいち試薬の種類と設置場所との対応を確認してから設置することが必要となるため、試薬の設置作業が煩雑である。
【0004】
そのため、例えば特許文献1に記載の生化学分析装置のように、ユーザが試薬庫の空いている位置に任意に試薬をセットすることが出来る生化学分析装置がある。上記特許文献1に記載の生化学分析装置は、試薬庫を回転させて、ユーザが任意の位置にセットした所定の種類の試薬容器を吸引管が試薬を分注可能な分注位置に配置することで吸引管が所定の種類の試薬容器から試薬を分注することが可能なように構成されている。
【0005】
一方、血球計数装置や尿中有形成分分析装置といった粒子分析装置では、生化学分析装置ほど測定項目数が多くなく、使用する試薬の種類も少ない。また、試薬として、特定の種類の粒子(細胞)を特異的に染色するための染色液が用いられるが、このような染色液が複数種類ある場合、共通の吸引管を用いて分注を行なうとキャリーオーバーを生じるおそれがある。そのため、試薬の種類に応じて試薬容器の設置場所が予め決められており、各々の試薬容器が分析装置の所定の箇所と流体的に接続するように構成される。このような分析装置において使用される試薬を収容する試薬容器としては、例えば特許文献2に記載のように扁平な袋状の試薬容器がある。このような試薬容器は、例えば可撓性のチューブによって分析装置の所定の箇所と流体的に接続されて用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−321283号公報
【特許文献2】国際公開第2009/104598号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ユーザが、上記特許文献2に記載のような試薬容器を分析装置にセットしようとすると、袋状の試薬容器の蓋をはずし、分析装置に接続されたチューブを、試薬容器の内部へ挿入することが必要となり、煩雑な手作業を伴うものであった。
【0008】
そこで、この発明の1つの目的は、試薬容器の設置作業を簡素化することが可能な粒子分析用の分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明のの局面における分析装置は、吸引管進入可能な吸引管進入部を先端近傍に有し、先端側に配置された第1収容部と、第1収容部に後続する第1収容部よりも幅広の第2収容部とを含む試薬容器を、装置の側面から装置の内部に向かって挿入することで試薬容器をセットする粒子分析用の分析装置であって、吸引管進入部側から挿入された試薬容器を保持する試薬容器保持部と、試薬容器保持部に保持された試薬容器の吸引管進入部に上方から進入して試薬容器内の試薬を吸引するための吸引管と、を備え、試薬容器保持部は、吸引管進入部側から挿入された試薬容器の試薬容器保持部への挿入を案内する案内部材を含み、案内部材は、試薬容器の挿入方向先端側に配置され、試薬容器の先端の挿入時に第1収容部の側面を案内する第1案内部と、第1案内部よりも挿入方向後側に配置され、第1案内部よりも広い幅を有し、第2収容部の側面を案内する第2案内部を有する。
【0010】
この発明のの局面による分析装置では、上記のように、先端近傍の吸引管進入部側から挿入された試薬容器を保持する試薬容器保持部と、試薬容器保持部に保持された試薬容器の吸引管進入部に上方から進入する吸引管とを設けるとともに、試薬容器保持部に、吸引管進入部側から挿入された試薬容器の試薬容器保持部への挿入を案内する案内部材を設けることによって、使用者は、試薬容器を把持して先端近傍の吸引管進入部側から試薬容器保持部に挿入するだけで、試薬容器をセットすることができるので、試薬容器の設置作業を簡素化することができる。また、吸引管の試薬容器への進入および試薬容器からの退避を吸引管進入部が挿入された試薬容器保持部の奥側で行うことができるので、使用者が試薬容器をセットする際、使用者の指が吸引管に触れてしまうことを回避することができる。
【0011】
上記の局面による分析装置において、好ましくは、試薬容器は染色液を収容する。このように構成すれば、吸引管には染色液が付着する場合も考えられるので、染色液を収容した試薬容器をセットする際、使用者の指が吸引管に触れてしまうことを回避することができるとともに、吸引管に付着した染色液が使用者の指に付着することも防止することができる。
【0012】
上記の局面による分析装置において、好ましくは、試薬容器保持部を複数備え、試薬容器保持部ごとにそれぞれ対応する吸引管を備える。このように構成すれば、1本の吸引管が多数の試薬容器から試薬を吸引するような構成と比較して、各吸引管が各試薬容器にそれぞれ対応しているので試薬のキャリーオーバーを防止することができる。また、試薬が染色液である場合には、洗浄しても吸引管の汚れが落ちにくいため、特に好ましい。
【0013】
上記の局面による分析装置において、好ましくは、分析装置は、フローサイトメーターである。このように構成すれば、フローサイトメトリー法による粒子分析に用いる試薬を収容した試薬容器の設置作業を簡素化することが可能である。また、試薬容器をセットするときに、使用者の指が吸引管に触れてしまうことを回避することができる。
【0014】
上記の局面による分析装置において、好ましくは、分析装置は、血球計数装置あるいは尿中有形成分分析装置である。このように構成すれば、試薬容器の設置作業を簡素化することが可能である。また、試薬容器をセットするときに、使用者の指が吸引管に触れてしまうことを回避することが可能な血球計数装置あるいは尿中有形成分分析装置を得ることができる。
【0015】
上記の局面による分析装置において、好ましくは、吸引管が吸引管進入部と当接した状態で、吸引管進入部を塞ぐ蓋部を備える。このように構成すれば、吸引管を試薬容器内部に進入させるだけで蓋部により吸引管進入部が塞がれるため、試薬容器の設置作業を簡素化しながら、簡単な構成で試薬の乾燥や異物の混入を防ぐことができる。
【0016】
上記の局面による分析装置において、好ましくは、案内部材は、少なくとも試薬容器の高さと略同じ高さ寸法を有し、試薬容器の下端から上端までをそれぞれガイド可能に構成されている。このように構成すれば、案内部材が広い範囲で試薬容器をガイドするので、使用者が試薬容器の吸引管進入部側から試薬容器保持部に挿入する際に、より容易かつ確実に、試薬容器をセットすることができる。また、試薬容器の下端から上端までを案内部材がガイドするので、試薬容器の上端から下端までにわたって使用者の指が試薬容器保持部の奥側に入り込むのを回避することができ、その結果、使用者の指が吸引管に触れてしまうことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の第1実施形態による第1測定ユニットおよび第2測定ユニットを備えた血液分析システムを示した斜視図である。
図2図1に示した第1実施形態による第1測定ユニットおよび第2測定ユニットを備えた血液分析システムの構成を示した模式図である。
図3図2に示した第1実施形態による第2測定ユニットの構成を示した模式図である。
図4図2に示した第1実施形態による第2測定ユニットの試薬容器ホルダを示した斜視図である。
図5図4に示した試薬容器ホルダを示した正面図である。
図6図4に示した試薬容器ホルダの試薬容器保持部を説明するための模式図である。
図7図6に示した試薬容器保持部に試薬容器が載置された状態を示した模式図である。
図8図6に示した試薬容器保持部に試薬容器が載置された状態を示した模式図である。
図9図4に示した試薬容器ホルダの内部構成を模式的に示した縦断面図である。
図10図9に示した試薬容器ホルダの縦断面図において試薬容器のセット状態を説明するための図である。
図11図10に示した試薬容器ホルダの縦断面図においてカバーを下降させた状態を説明するための図である。
図12】本発明の第1実施形態による大型の試薬容器を示した斜視図である。
図13】本発明の第1実施形態による大型の試薬容器を示した上面図である。
図14】本発明の第1実施形態による大型の試薬容器を示した縦断面図である。
図15】本発明の第1実施形態による小型の試薬容器を示した斜視図である。
図16】本発明の第1実施形態による小型の試薬容器を示した上面図である。
図17】本発明の第1実施形態による小型の試薬容器を示した縦断面図である。
図18】本発明の第1実施形態による小型の試薬容器における図17の400−400線に沿った断面図である。
図19】本発明の第2実施形態による第2測定ユニットの試薬容器ホルダのカバーが開放された状態を模式的に示した縦断面図である。
図20】本発明の第2実施形態による第2測定ユニットの試薬容器ホルダのカバーが閉鎖された状態を模式的に示した縦断面図である。
図21】本発明の第2実施形態による第2測定ユニットの試薬容器ホルダのピアサ昇降機構を示した側面図である。
図22図21のピアサ昇降機構を上方から見た平面図である。
図23図19の断面図において試薬容器ホルダの支持部がセット位置に配置された状態を説明するための図である。
図24図19の断面図において試薬容器ホルダのカバーの開閉動作を説明するための図である。
図25図19の断面図において試薬容器ホルダのピアサが下降位置に配置された状態を説明するための図である。
図26】本発明の第3実施形態による第2測定ユニットの試薬容器ホルダの試薬容器保持部を説明するための斜視図である。
図27図26に示した試薬容器ホルダの大型の試薬容器用の試薬容器保持部を示した模式図である。
図28図26に示した試薬容器ホルダの小型の試薬容器用の試薬容器保持部を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0058】
(第1実施形態)
まず、図1図18を参照して、本発明の第1実施形態による血液分析システム1の全体構成について説明する。なお、第1実施形態では、分析装置の一例である血液分析システム(血球計数装置)の測定ユニットに本発明を適用した場合について説明する。そして、本発明の試薬容器の一例として、測定ユニットに用いられる試薬容器に本発明を適用した場合について説明する。
【0059】
第1実施形態による血液分析システム1は、図1に示すように、矢印X2方向側に配置された第1測定ユニット3および矢印X1方向側に配置された第2測定ユニット2の2つの測定ユニットと、第1測定ユニット3および第2測定ユニット2の前面側(矢印Y1方向側)に配置された検体搬送装置(サンプラ)4と、第1測定ユニット3、第2測定ユニット2および検体搬送装置4に電気的に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)からなる制御装置5とを備えている。また、血液分析システム1は、制御装置5によりホストコンピュータ6(図2参照)に接続されている。
【0060】
また、図1および図2に示すように、第1測定ユニット3および第2測定ユニット2は、実質的に同種類の測定ユニットであり、互いに隣接して配置されている。具体的には、第1実施形態では、第2測定ユニット2は、第1測定ユニット3と同じ測定原理を使用して、同一の測定項目について検体を測定する。さらに、第2測定ユニット2は、第1測定ユニット3が分析しない測定項目についても測定する。また、図2に示すように、第2測定ユニット2および第1測定ユニット3は、それぞれ、検体である血液をサンプル容器(試験管)100から吸引する検体吸引部21および31と、検体吸引部21および31により吸引した血液から検出用試料を調製する試料調製部22および32と、試料調製部22および32により調製された検出用試料から血液の血球を検出する検出部23および33とを含んでいる。
【0061】
また、第2測定ユニット2および第1測定ユニット3は、図2に示すように、それぞれ、検体吸引部21および31や試料調製部22および32などを内部に収容するユニットカバー24および34と、サンプル容器100をユニットカバー24および34の内部に取り込み、検体吸引部21および31による吸引位置600および700までサンプル容器100を搬送するサンプル容器搬送部25および35と、吸引位置600および700でサンプル容器100を固定保持する固定保持部26および36とをさらに含んでいる。なお、上記のように第1測定ユニット3および第2測定ユニット2は、実質的に同種類の測定ユニットであるので、以下では第2測定ユニット2について説明し、第1測定ユニット3についてはその説明を省略する。
【0062】
検体吸引部21は、図3に示すように、内部を試薬が通過する吸引管であるピアサ21aおよび定量部21bを含んでいる。ピアサ21aは、先端がサンプル容器100の後述する密閉蓋100aを貫通(穿刺)可能なように形成されている。また、ピアサ21aは、図示しないピアサ駆動部により鉛直方向(Z方向)に移動されるとともに、後述する反応チャンバ22aまで移動可能に構成されている。定量部21bはシリンジポンプなどからなり、ピアサ21aを介して、サンプル容器100から所定量の検体を吸引するとともに、吐出する機能を有する。これにより、サンプル容器100から検体測定に必要な所定量の検体が吸引され、吸引された検体が反応チャンバ22aに供給されるように構成されている。
【0063】
図2に示すように、検出部23は、RBC検出(赤血球の検出)およびPLT検出(血小板の検出)をシースフローDC検出法により行うとともに、HGB検出(血液中の血色素の検出)をSLS−ヘモグロビン法により行う測定部(図示せず)を含んでいる。また、検出部23は、図3に示すように、WBC検出(白血球の検出)を半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により行うFCM測定部23aを含んでいる。また、検出部23で得られた検出結果は、検体の測定データ(測定結果)として、制御装置5に送信される。
【0064】
図3に示すように、第2測定ユニット2の試料調製部22は、反応チャンバ22aと、反応チャンバ22aに接続された試薬供給部22bとを含んでいる。反応チャンバ22aは、検体吸引部21により吸引された検体(血液)と、試薬供給部22bから供給される試薬とを混合および反応させるように構成されている。反応チャンバ22aは、測定種別に応じて複数設けられている。各反応チャンバ22aには測定項目に応じた複数種類の試薬(染色液など)が供給され、検体と試薬との混合および反応過程を経て各種測定項目に応じた検査用試料が調製される。そして、調製された検査用試料は、FCM測定部23aへと供給されるように構成されている。
【0065】
第1実施形態では、試薬供給部22bは、ユニットカバー24の内部に設けられ、所定量の試薬を収容した複数の試薬容器200(図7参照)または300(図8参照)を保持する。試薬供給部22bは、試薬容器200(または300)内の試薬を吸引するピアサ64を有する試薬容器ホルダ60と、シリンジポンプおよびダイアフラムポンプなどからなる定量部22cと、吸引された試薬を定量部22cおよび反応チャンバ22aに移送する際の流路の開閉を行う電磁バルブ22dおよび22eとを含んでいる。また、試薬供給部22bは、試薬容器ホルダ60に保持された試薬容器200(または300)の他、測定ユニットの外部に配置された大容量試薬容器110から試薬(溶血剤など)を移送するための定量部22fと電磁バルブ22gおよび22hとを含んでいる。なお、試薬容器200および300については、後に詳細に説明する。
【0066】
図1に示すように、ユニットカバー24の前面側には、開閉可能な前面カバー24aが設けられている。試薬容器ホルダ60は、第2測定ユニット2の前面上部に配置されており、前面カバー24aを開放することにより、外部に露出する。これにより、使用者は、試薬容器200および300を容易に交換することができる。なお、第1測定ユニット3のユニットカバー34の前面側にも、開閉可能な前面カバー34aが設けられている。同様に、試薬容器ホルダ60は、第1測定ユニット3の前面上部に配置されており、前面カバー34aを開放することにより、外部に露出する。
【0067】
図4および図5に示すように、試薬容器ホルダ60は、5つのホルダ部60a、60b、60c、60dおよび60eを含み、合計5つ(5種類)の試薬容器200(または300)を保持するように構成されている。試薬容器ホルダ60に保持される試薬容器200(または300)は、FCM測定部23aにより複数の測定項目を測定するための、それぞれ異なる種類の試薬(染色液)を収容している。試薬容器の色は黒である。試薬容器は、試薬の種類に応じて大型(約100mL)の試薬容器200(図12参照)と、小型(約20mL)の試薬容器300(図15参照)とが用いられるが、各ホルダ部60a〜60eは試薬容器200または300のいずれでも保持可能なように構成されている。したがって、5つのホルダ部60a〜60eはそれぞれ同様の構成を有し、たとえば3つのホルダ部60a〜60cには大型の試薬容器200がセットされるとともに、2つのホルダ部60dおよび60eには小型の試薬容器300(図4および図5では図示せず)がセットされる。ホルダ部60a〜60eは、それぞれ、シャーシ61と、試薬容器保持部62と、試薬容器保持部62を開閉するためのカバー63と、上述したピアサ64と、ピアサ昇降機構65とを含んでいる。
【0068】
試薬容器保持部62は、シャーシ61の下部(図5参照)に設けられている。試薬容器保持部62は、図6に示すように、高さがH(図5参照)であり、幅W11を有する第1受入部621と、第1受入部621と連続し、第1受入部621から所定角度θ2で拡がる中間受入部622と、中間受入部622と連続する第2受入部623とを含んでいる。第1受入部621は、図7および図8に示すように、試薬容器200(300)の後述する第1収容部210(310)を受け入れ可能であるとともに、使用者の指の進入を禁止する幅(幅W11)を有する。なお、指とは、平均的な太さを有する成人の指を意味し、第1実施形態において、幅W11は10mmである。また、第2受入部623は、幅W11よりも大きい幅W12を有する。図7および図8に示すように、第1受入部621は試薬容器保持部62の最も奥側(矢印Y2方向側)に配置されている。試薬容器200(300)は、第1収容部210(310)の後述する進入部212(312)側から試薬容器保持部62の奥側に向かって挿入される。したがって、試薬容器保持部62は、試薬容器200(300)の進入部212(312)が最も奥側(矢印Y2方向側)になるように挿入された状態で、試薬容器200(300)を保持するように構成されている。
【0069】
また、図6図8に示すように、試薬容器保持部62は、試薬容器200(300)の第1収容部210(310)の両側面214(314)をガイドして第1受入部621に案内する一対の案内部材627を含んでいる。案内部材627は、第1受入部621に試薬容器200(300)の第1収容部210(310)を案内する第1案内部627aと、中間受入部622に対応する中間案内部627bと、第2受入部623に試薬容器200(300)の後述する第2収容部220(320)を案内する第2案内部627cとを有する。なお、案内部材627は、シャーシ61の一部(両内側面)によって形成されている。上記の第1受入部621、中間受入部622および第2受入部623は、それぞれ対応する一対の第1案内部627aの間の空間、一対の中間案内部627bの間の空間および一対の第2案内部627cの間の空間により形成されている。したがって、第1受入部621の幅W11は一対の第1案内部627aの間の幅と等しく、第2受入部623の幅W12は一対の第2案内部627cの間の幅と等しい。
【0070】
一対の案内部材627は、試薬容器200(300)の第1収容部210(310)の両側面214(314)の高さH1(図14および図17参照)と略等しい高さH(図5参照)を有し、試薬容器200(300)の第1収容部210(310)の両側面214(314)の下端から上端までにわたってそれぞれガイド可能に構成されている。さらに、一対の案内部材627は、第1収容部210(310)の外形形状を反映した形状を有し、試薬容器200(300)の第1収容部210(310)の両側面214(314)全体をガイド可能なように構成されている。また、中間案内部627bと第2案内部627cとは、大型の試薬容器200の外形形状を反映した形状を有し、第2収容部220の先端側(第1収容部210側)半分の両側面をガイド可能なように構成されている。この大型の試薬容器200の第2収容部220は、第1収容部210の幅W21より大きな幅W22を有し、第1案内部627aは、第2収容部220の幅W22より小さい幅W11で設けられている。
【0071】
また、図9に示すように、試薬容器保持部62は、試薬容器200(300)を支持する支持部624と、支持部624を回動可能に支持する回動機構625とを含んでいる。支持部624は、試薬容器200(300)の前面(第1収容部210(310)の先端面、図7および図8参照)と当接する前側部624aと、試薬容器200(300)の下面と当接する下側部624bとを一体的に有する板状部材である。すなわち、支持部624は、試薬容器200(300)の形状と対応する形状を有するように形成されている。回動機構625は、シャーシ61の内側面に設けられた環状の軸受625aに、支持部624に設けられた突起部624cが挿入されることにより、突起部624c(軸受625a)の位置を回動中心として、支持部624を回動させることが可能なように構成されている。
【0072】
なお、シャーシ61の内部には、支持部624の前側部624aと当接することによって、回動する支持部624を係止する係止部626が設けられている。係止部626には磁石が設けられており、支持部624の前側部624aと当接した状態で係止部626が前側部624a(支持部624)を保持するように構成されている。これにより、支持部624は、下側部624bが水平(試薬容器200(300)の下面が水平)となる載置位置P1(図9参照)と、前側部624aが垂直となるセット位置Q1(図10参照)とに移動するように構成されている。図10に示すように、このセット位置Q1に配置された状態で、試薬容器200(300)の後述する進入部212(312)(図7および図8参照)が、水平となる(ピアサ64に対して直交する)ように構成されている。
【0073】
カバー63は、図9に示すように、ホルダ部60a〜60e(シャーシ61)の各々から手前側(矢印Y1方向側)に突出するように配置され、ピアサ昇降機構65に取り付けられている。このピアサ昇降機構65により、カバー63は、試薬容器保持部62を開放する上昇位置P2(図10参照)と、試薬容器保持部62を覆う(閉鎖する)下降位置Q2(図11参照)とに移動可能に構成されている。したがって、カバー63は、上昇位置P2において試薬容器200(300)の出し入れを許容するとともに、下降位置Q2において試薬容器200(300)の出し入れを禁止するように構成されている。
【0074】
また、図5に示すように、カバー63の所定位置には、開口からなる窓部631が設けられている。図11に示すように、カバー63が試薬容器保持部62を覆う(閉鎖する)下降位置Q2に位置した状態で、使用者がこの窓部631を介して、試薬容器200(300)に貼付されたラベル250(350、図15参照)を視認することが可能なように構成されている。ラベル250(350)の窓部631を介して視認可能な位置には、試薬容器200(300)の種類(試薬の種類)を識別する標識が印刷されている。また、カバー63には、試薬容器保持部62にセットされる試薬容器200(300)の種類(試薬の種類)を識別する標識が印刷されたラベル632が貼付される。すなわち、5つのホルダ部60a〜60eには、それぞれ定められた種類の試薬を収容する試薬容器200(300)がセットされるので、これに対応して、各ホルダ部60a〜60eのカバー63には、セットされるべき試薬の種類を識別するラベル632が貼付される。これにより、試薬容器保持部62に試薬容器200(300)をセットした状態(カバー63を下降位置Q2に降ろした状態)で、カバー63に付されたラベル632と、窓部631を介して視認されるラベル250(350)とから、正しい試薬が各ホルダ部60a〜60eにセットされているかを確認することが可能なように構成されている。
【0075】
図6および図10に示すように、ピアサ64は、試薬容器保持部62の第1受入部621の最奥部(矢印Y2方向側)の上方位置に配置され、ピアサ64を保持するピアサ昇降機構65により鉛直方向(Z方向)に移動されるように構成されている。これにより、ピアサ64は、試薬容器保持部62の奥側に挿入された試薬容器200(300)の進入部212(312)を介して第1収容部210(310)に進入し、試薬容器200(300)内部の試薬を吸引可能に構成されている。また、ピアサ64は、先端が試薬容器200(300)の進入部212(312)に形成された開口部212a(312a)(図7および図8参照)を封止するためのシール材213(313)を貫通(穿刺)可能なように形成されている。また、図3に示すように、ピアサ64の上端は、定量部22cおよび反応チャンバ22aに至る流路(図9〜11では図示を省略)と接続されている。
【0076】
図10および図11に示すように、ピアサ昇降機構65は、ピアサ64とカバー63とを保持するように構成されている。また、ピアサ昇降機構65は、シャーシ61に設けられた溝部611および612に鉛直方向(Z方向)移動可能に係合している。これにより、ピアサ昇降機構65は、カバー63の開閉(昇降移動)に連動してピアサ64を鉛直方向(Z方向)に一体的に移動させるように構成されている。そして、図10に示すように、カバー63が上昇位置P2に配置された状態では、ピアサ64は試薬容器保持部62の上方(試薬容器200(300)および第1受入部621の外部)の上昇位置P3に配置される。また、図11に示すように、カバー63が下降位置Q2に配置された状態では、ピアサ64は試薬容器200(300)の進入部212(312)直下の内底部に近接する下降位置Q3に配置されるように構成されている。
【0077】
図3に示すように、定量部22cは、ピアサ64を試薬容器200(300)内部で下降位置Q3に配置した状態(図11参照)で、電磁バルブ22dを開放するとともに電磁バルブ22eを閉鎖することによって、ピアサ64を介して試薬容器200(300)内の所定量の試薬を定量部22c内部に吸引することが可能なように構成されている。これにより、検査用試料の調製に必要な所定量の試薬が定量される。また、定量部22cは、電磁バルブ22dを閉鎖するとともに電磁バルブ22eを開放することによって、反応チャンバ22aに定量部22c内部で定量した試薬を移送することが可能なように構成されている。
【0078】
なお、外部に配置された大容量試薬容器110と接続された定量部22f、電磁バルブ22gおよび22hも同様であり、これら各部の動作が制御されることによって、反応チャンバ22a内に各種試薬が移送されるように構成されている。また、第2測定ユニット2内部には、測定済み(調製済み)の試料を廃棄するための廃液チャンバ27が設けられており、電磁バルブ27aの開閉によって、測定済み(調製済み)試料の廃棄が行われるように構成されている。
【0079】
図2に示すように、サンプル容器搬送部25は、鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に直線移動可能に構成されている。サンプル容器搬送部25は、サンプル容器100を把持することが可能なハンド部25aと、サンプル容器100を矢印Y1およびY2方向に水平移動させるサンプル容器移送部25bと、バーコード読取部25cとを有している。
【0080】
ハンド部25aは、検体搬送装置4が搬送するラック101の搬送路の上方に配置されている。また、ハンド部25aは、検体搬送装置4により所定の取込位置43bにサンプル容器100が搬送されると、下方(矢印Z2方向)に移動した後、ラック101に収容されたサンプル容器100を把持するように構成されている。
【0081】
また、ハンド部25aは、把持するサンプル容器100内の血液を攪拌することが可能である。また、ハンド部25aは、攪拌終了後、サンプル容器移送部25bにより検体セット位置610に移動された検体セット部25dに、サンプル容器100をセットするように構成されている。なお、図2に示すように、平面的に見て、第2取込位置43bと検体セット位置610とは、重なるように配置されている。
【0082】
サンプル容器移送部25bは、図1および図2に示すように、検体セット部25dを有し、検体セット部25dを測定処理の動作に応じた所定の位置に移動させることが可能である。具体的には、サンプル容器移送部25bは、検体セット部25dを、図2に示す吸引位置600と、検体セット位置610とに配置させることが可能である。また、サンプル容器移送部25bは、図1に示すように、緊急検体の測定を行う場合や、検体搬送装置4を使用しない場合に使用者が手動でサンプル容器100をセットするように、ユニットカバー24の外部の所定位置まで移動することが可能なように構成されている。
【0083】
バーコード読取部25cは、各サンプル容器100に貼付されたバーコード(図示せず)を読み取るように構成されている。また、各サンプル容器100のバーコード(図示せず)は、各検体に固有に付されたものであり、各検体の分析結果の管理などに使用される。
【0084】
固定保持部26は、吸引位置600に移送されたサンプル容器100を固定保持するように構成されている。具体的には、固定保持部26は、図2に示すように、一対のチャック部26aを有し、一対のチャック部26aが互いに近接移動してサンプル容器100を挟持するように構成されている。
【0085】
次に、第1実施形態による第2測定ユニット2および第1測定ユニット3に用いられ、試薬容器ホルダ60にセットされる試薬容器200および300について詳細に説明する。
【0086】
第1実施形態では、図12および図15に示すように、大型(容量約100mL)の試薬容器200と、小型(容量約20mL)の試薬容器300とが、収容される試薬の種類に対応して用いられるように構成されている。試薬容器200および300は、それぞれ、上部にピアサ64が進入可能な進入部212(312)が設けられた第1収容部210(310)と、第1収容部210(310)に連続する第2収容部220(320)とを一体的に含んでいる。第1収容部210(310)は、図7および図8に示すように、試薬容器200(300)が試薬容器保持部62にセットされた状態で第1受入部621の内部に配置されるように構成されている。第2収容部220(320)は、図7および図8に示すように、試薬容器200(300)が試薬容器保持部62にセットされた状態で第1受入部621の外部に配置されるように構成されている。また、図14および図17に示すように、それぞれの第1収容部210(310)内部には、第1試薬収容空間211(311)が設けられ、それぞれの第2収容部220(320)内部には、第1試薬収容空間211(311)に連続する第2試薬収容空間221(321)が設けられている。
【0087】
第1収容部210(310)は、長さL11を有する部分であり、これらの形状は、試薬容器200および300で略共通する。試薬容器200および300は、第1収容部210および310の形状が略共通するため、同一形状を有するホルダ部60a〜60eの試薬容器保持部62(第1受入部621)に対してそれぞれセット可能となっている。
【0088】
具体的には、図7および図8に示すように、それぞれの第1収容部210(310)は、第1受入部621の幅W11よりも僅かに小さい一定の幅W21を有する。また、第1収容部210(310)には、それぞれ、前側(試薬容器保持部62に第1収容部210(310)が挿入される方向、図7および図8の矢印Y2方向)の端部に進入部212(312)が設けられている。したがって、試薬容器200(300)は、第1収容部210(310)の進入部212(312)側から試薬容器保持部62の奥側に向かって挿入されるように構成されている。この進入部212(312)は、図14および図17に示すように、外部上面200b(300b)から上方に突出するように設けられている。突出した進入部212(312)には、図12および図15に示すように、第1収容部210(310)内部に連通する開口部212a(312a)が形成されている。また、進入部212(312)には、アルミ箔などからなるシール材213(313)が開口部212a(312a)を塞ぐように設けられ、試薬容器200(300)が封止されるように構成されている。また、進入部212(312)の外径は第1収容部210(310)の幅W21と等しく、進入部212(312)は、第1収容部210(310)の前側表面から連続的に(面一で)突出するように形成されている。
【0089】
また、図14および図17に示すように、試薬容器200(300)は、それぞれ内部底面200a(300a)が外部上面200b(300b)と非平行であり、かつ、内部底面200a(300a)と外部上面200b(300b)との距離が、進入部212(312)に近づくにつれて大きくなるように構成されている。第1実施形態では、内部底面200a(300a)が外部上面200b(300b)に対して角度θ1(約10度)傾いた傾斜面となるように構成されている。なお、試薬容器200(300)の進入部212(312)の直下の底面部には外部上面200b(300b)と略平行な底部200c(300c)が存在し、傾斜面200d(300d)は底部200c(300c)の端部から開始している。これにより、試薬容器200(300)は、図10に示すセット位置Q1にセットされた状態で、進入部212(312)が最も上方に位置するとともに、進入部212(312)の直下の底部200c(300c)が最も下方に位置するように構成されている。
【0090】
また、試薬容器200(300)の外部上面200b(300b)には、それぞれ、上方(外部上面200b(300b)に対して垂直方向)に突出する突出部230(330)が設けられている。突出部230(330)は、それぞれ、試薬容器200(300)の長手方向に延びる長さL1の板状形状を有するとともに、進入部212(312)と略等しい突出量(突出高さ)となるように形成されている。突出部230(330)は、それぞれの第2収容部220(320)の後側(図7および図8の矢印Y1方向側)端部近傍の位置に設けられ、使用者による試薬容器200(300)のセット作業または取り外し作業を容易に行うことが可能なように、取手部としての機能を有する。
【0091】
一方、第2収容部220(320)の形状は、試薬容器200と試薬容器300とで異なる。
【0092】
図13に示すように、大型の試薬容器200の第2収容部220は、第1収容部210に連続し、第1収容部210から離れるにつれて幅が大きくなる第1部222と、幅W21よりも大きい一定の幅W22を有する第2部223とを一体的に含んでいる。したがって、図14に示すように、試薬容器200において、第2収容部220内部の第2試薬収容空間221は、第1部222と第2部223との両方にわたって連続して設けられた試薬収容空間である。
【0093】
図13に示すように、第1部222は、第1収容部210の幅を角度θ2(約60度)で拡げるようにして第2部223と連続しており、第1収容部210と第2部223とを接続している。また、第2部223が幅W21よりも大きい幅W22を有することにより、第2試薬収容空間221の容量を約100mL分確保することが可能なように構成されている。
【0094】
なお、図6および図7に示すように、試薬容器保持部62の中間受入部622と、中間受入部622と連続し幅W12を有する第2受入部623とは、それぞれ、この第1部222および幅W22を有する第2部223に対応する形状を有する。
【0095】
図16に示すように、小型の試薬容器300の第2収容部320は、一定で、かつ、第1収容部310の幅W21と同一の幅W21を有する。つまり、小型の試薬容器300では、第1収容部310および第2収容部320が連続して直線状に延びるように形成されている。なお、この第2収容部320の長さL22は、大型の試薬容器200の第2収容部220の長さL21よりも小さい。小型の試薬容器300は、大型の試薬容器200の第2収容部220よりも小さい幅W21および長さL22を有する第2収容部320を含むことにより、全体で約20mLの試薬容量を有するように構成されている。
【0096】
なお、上述のように、第1収容部310の長さL11は、第1受入部621にセットされるために、試薬容器200および300で共通となっている。したがって、図8に示すように、第1収容部310および第2収容部320が同一の幅W21で連続する小型の試薬容器300については、この第1受入部621に収容される領域が第1収容部310であり、第1受入部621外に配置される領域が第2収容部320である。
【0097】
また、小型の試薬容器300は、大型の試薬容器200と異なり、外部底面の傾斜面300dに、試薬容器300の長手方向に沿って直線状に延びる凹部340が設けられている。この凹部340によって、傾斜面300dを水平面上に設置した場合に、凹部340の外周部分が水平面と接する接点となるため、小さい幅W21を有する試薬容器300でも安定して直立させることが可能である。
【0098】
また、図12および図15に示すように、各試薬容器200(300)には、それぞれ、収容する試薬の名称、試薬のロット番号、使用期限および識別用バーコードなどが印刷されたラベル250(350)が貼付されている。このラベル250(350)は、各試薬容器200(300)の後側表面と、少なくとも一方の横側面とにわたって貼付される。またラベル250(350)の一部(各試薬容器200(300)の後側表面に相当する部分)または全部には、収容する試薬の種類を示す色彩が付され、ラベル250(350)に表示された色によって試薬の種類を識別することが可能なように構成されている。このラベル250(350)と、試薬容器ホルダ60のカバー63に貼付されるラベル632(図5参照)とのそれぞれの色が一致するか否かによって、試薬容器200(300)が正しいホルダ部60a〜60eにセットされたか否かを確認することが可能である。
【0099】
また、図1および図2に示すように、検体搬送装置4は、分析が行われる前の検体を収容するサンプル容器100が収容された複数のラック101を保持することが可能な分析前ラック保持部41と、分析が行われた後の検体を収容するサンプル容器100が収容された複数のラック101を保持することが可能な分析後ラック保持部42と、ラック101を矢印X1およびX2方向に水平に直線移動するラック搬送部43と、バーコード読取部44と、サンプル容器100の有無を検知する有無検知センサ45と、分析後ラック保持部42内にラック101を移動するラック送出部46とを含んでいる。
【0100】
分析前ラック保持部41は、ラック送込部411を有し、ラック送込部411が矢印Y2方向に移動することによって、分析前ラック保持部41に保持されたラック101を1つずつラック搬送部43上に押し出すように構成されている。
【0101】
ラック搬送部43は、図2に示すように、ラック101を搬送することにより、ラックに保持された所定のサンプル容器100を、第1測定ユニット3が検体を取り込む取込位置43a、および、第2測定ユニット2が検体を取り込む取込位置43bに配置するように構成されている。また、ラック搬送部43は、有無検知センサ45がサンプル容器100の有無を確認する検体有無検知位置43cと、バーコード読取部44がサンプル容器100のバーコード(図示せず)(図4参照)を読み取る読取位置43dとにサンプル容器100を搬送可能に構成されている。
【0102】
ラック送出部46は、ラック搬送部43を挟んで分析後ラック保持部42に対向するように配置されており、矢印Y1方向に水平に移動するように構成されている。また、ラック送出部46は、矢印Y1方向に水平移動することによって、ラック搬送部43の分析後ラック保持部42とラック送出部46とに挟まれた位置に配置されたラック101を分析後ラック保持部42側に押し出すように構成されている。
【0103】
制御装置5は、図1および図2に示すように、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部51(図2参照)と、表示部52と、入力デバイス53とから主として構成されている。また、表示部52は、第1測定ユニット3および第2測定ユニット2から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果などを表示するために設けられている。
【0104】
また、制御部51は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェースおよび通信インタフェースなどを備え、アプリケーションプログラムをCPUが実行することにより、コンピュータが制御装置5として機能する。これにより、制御部51によって、第1測定ユニット3、第2測定ユニット2および検体搬送装置4の各部の動作が制御されるように構成されている。また、制御部51のハードディスクには、測定結果データベースもインストールされている。
【0105】
制御部51は、第1測定ユニット3および第2測定ユニット2から送信された測定結果を用いて分析対象の成分を解析するとともに、分析結果(赤血球数、血小板数、ヘモグロビン量、白血球数など)を取得するように構成されている。
【0106】
次に、図7図9図11および図14を参照して、第1実施形態による第1測定ユニット3および第2測定ユニット2の試薬容器ホルダ60(ホルダ部60a)への試薬容器200のセット動作について説明する。なお、セット動作は試薬容器200および300で同様であるので、試薬容器200のセット動作のみについて説明し、試薬容器300のセット動作については省略する。同様に、ここではホルダ部60aへの試薬容器200のセット動作についてのみ説明し、他のホルダ部60b〜60eへのセット動作については省略する。
【0107】
まず、使用者は、前面カバー24a(図1参照)を開放し、カバー63を上昇位置P2(図9参照)に配置して、試薬容器保持部62を開放する。そして、使用者は、ホルダ部60aの支持部624を、下側部624bが水平となる載置位置P1(図9参照)に配置する。なお、ピアサ64は、カバー63が上昇位置P2に配置されるのに伴い、試薬容器保持部62の外部(上方)の上昇位置P3に配置される。
【0108】
次に、使用者は、試薬容器200を支持部624に載置する。試薬容器200の傾斜部(傾斜面200dの部分)が水平となるように下側部624b上に載置される。このとき、進入部212(開口部212a)が試薬容器200のうちで最も上方(矢印Z1方向)の位置(図9参照)に配置される。
【0109】
そして、図9に示すように、使用者は、第1収容部210の前側(矢印Y2方向側)表面が支持部624の前側部624aと当接するまで第1収容部210を第1受入部621に進入させる。この際、第1収容部210の形状を反映する一対の第1案内部627aに沿って第1収容部210の両側面214全体がガイドされながら、第1収容部210が第1受入部621に挿入される。また、第2収容部220が第2案内部627cによってガイドされる。このため、試薬容器200の挿入時に試薬容器200(第1収容部210および第2収容部220の各側面)と案内部材627(第1案内部627aおよび第2案内部627c)との間から試薬容器保持部62の奥側に使用者の指が進入するのが阻まれる。これにより、試薬容器保持部62の外部(上方)の上昇位置P3に配置されたピアサ64に使用者の指が触れてしまうことが防止される。
【0110】
次に、使用者は、支持部624の下側部624bを上方に押上げ、前側部624aが係止部626と当接するまで支持部624を回動させる。図10に示すように、前側部624aが係止部626と当接すると、係止部626の磁石によって、前側部624aが垂直となるセット位置Q1に支持部624が保持される。このとき、図7および図10に示すように、試薬容器保持部62内の試薬容器200は、進入部212(開口部212a)および外部上面200bが水平となる状態で保持される。
【0111】
その後、図11に示すように、使用者は、ホルダ部60aのカバー63を上昇位置P2から下降位置Q2に移動(下降)させる。これに伴いピアサ64も下降するため、ピアサ64は、試薬容器200の開口部212a(進入部212)を封止するシール材213を貫通するとともに開口部212a(進入部212)を介して試薬容器200内部に進入する。使用者によりカバー63が下降位置Q2に配置されると、ピアサ64が試薬容器200内の底部200c(図14参照)近傍の下降位置Q3に配置される。これにより、ピアサ64を介して試薬容器200内の試薬を吸引することが可能となる。
【0112】
また、この状態で、使用者はカバー63の窓部631から試薬容器200のラベル250を視認することが可能となるため、使用者は、カバー63に貼付されるラベル632と試薬容器200のラベル250とから、正しい試薬容器200がセットされているか否かを確認することが可能となる。
【0113】
以上により、試薬容器ホルダ60(ホルダ部60a)への試薬容器200のセット動作が終了する。
【0114】
次に、図2および図3を参照して、第1実施形態による血液分析システム1の測定処理動作を説明する。なお、第1測定ユニット3および第2測定ユニット2では、それぞれ同様に分析対象の成分が測定されるので、以下では第2測定ユニット2により分析対象の成分を測定する場合について説明し、第1測定ユニット3による測定処理動作の説明は省略する。この、第2測定ユニット2の測定処理動作制御は、制御装置5により行われる。
【0115】
まず、図3に示すように、吸引位置600(図2参照)まで搬送されたサンプル容器100から、検体吸引部21により検体の吸引が行われるとともに、試料調製部22の反応チャンバ22aに定量された検体がそれぞれ供給される。そして、試料調製部22により、吸引した検体から検出用試料が調製される。具体的には、定量部22cおよび電磁バルブ22d(22e)の動作によって、試薬容器ホルダ60にセットされた5つ(5種類)の試薬容器200(または300)に収容された試薬が、測定項目に応じた所定の反応チャンバ22aにそれぞれ供給される。さらに定量部22fおよび電磁バルブ22g(22h)の動作によって、外部の大容量試薬容器110に収容された試薬(溶血剤など)が、所定の反応チャンバ22aに供給される。そして、反応チャンバ22a内で検体と試薬とが混合され、反応過程を経ることによって、検出用試料が調製される。
【0116】
次に、検出用試料から分析対象の成分が検出部23により検出される。上記の5つ(5種類)の試薬容器200(または300)に収容された試薬を用いて調製された検出用試料は、FCM測定部23aに供給され、フローサイトメトリー法による各種測定項目の測定が行われる。測定終了後、反応チャンバ22a内の測定済みの検出用試料は、電磁バルブ27aを介して廃液チャンバ27に廃棄される。そして、測定データが、第2測定ユニット2から制御装置5に送信される。その後、第2測定ユニット2から送信される測定結果に基づいて、制御部51により分析対象の成分が解析される。これにより、検体の分析が完了され、動作が終了される。
【0117】
第1実施形態では、上記のように、先端近傍の進入部212(312)側から挿入された試薬容器200(300)を保持する試薬容器保持部62と、試薬容器保持部62に保持された試薬容器200(300)の進入部212(312)に上方から進入するピアサ64とを設けるとともに、試薬容器保持部62に、進入部212(312)側から挿入された試薬容器200(300)の試薬容器保持部62への挿入を案内する案内部材627を設けることによって、試薬容器保持部62の奥側に挿入された進入部212(312)を介してピアサ64を試薬容器200(300)内部に進入させることができる。このため、使用者は、試薬容器200(300)を把持して先端近傍の進入部212(312)側から試薬容器保持部62に挿入するだけで、試薬容器200(300)をセットすることができる。これにより、試薬容器200(300)の設置作業を簡素化することができる。また、ピアサ64の試薬容器200(300)への進入および試薬容器200(300)からの退避を進入部212(312)が挿入された試薬容器保持部62の奥側で行うことができるので、試薬容器200(300)をセットするときに、使用者の指がピアサ64に触れてしまうことを回避することができる。また、試薬容器200(300)が案内部材627に沿って試薬容器保持部62へガイドされるので、試薬容器200(300)をセットするときに使用者の指が試薬容器200(300)と案内部材627との間から試薬容器保持部62の奥側に入り込むのを回避することができる。これにより、使用者の指がピアサ64に触れてしまうことをより確実に回避することができる。
【0118】
また、第1実施形態では、上記のように、案内部材627は、少なくとも第1収容部210(310)の両側面214(314)の高さH1と略同じ高さ寸法Hを有し、第1収容部210(310)の両側面214(314)の下端から上端までをそれぞれガイド可能に構成されている。このように構成すれば、第1収容部210(310)の両側面214(314)の下端から上端までを案内部材627がガイドするので、第1収容部210(310)の両側面214(314)の上端から下端までにわたって使用者の指が試薬容器保持部62の奥側に入り込むのを回避することができる。これにより、使用者の指がピアサ64に触れてしまうことをより確実に回避することができる。
【0119】
また、第1実施形態では、上記のように、案内部材627(第1案内部627a)は、試薬容器200(300)の少なくとも第1収容部210(310)の形状を反映した形状を有し、第1収容部210(310)の両側面214(314)の全体をガイド可能に構成されている。このように構成すれば、第1収容部210(310)の形状を反映した形状を有する案内部材627(第1案内部627a)に沿って第1収容部210(310)の両側面214(314)の全体がガイドされるので、試薬容器200(300)をセットするときに第1収容部210(310)の両側面214(314)の各々と案内部材627との間から使用者の指が試薬容器保持部62の奥側に入り込むのを確実に防止することができる。
【0120】
また、第1実施形態では、上記のように、案内部材627は、第1収容部210(310)の両側面214(314)をガイドして第1収容部210(310)を第1受入部621に案内する第1案内部627aと、第2収容部220を第2受入部623に案内する第2案内部627cとを含む。このように構成すれば、試薬容器200および300の第1収容部210および310と試薬容器200の第2収容部220とが、それぞれ案内部材627の第1案内部627aと第2案内部627cとに沿ってガイドされるので、案内部材627の第1案内部627aだけでなく第2案内部627cによっても、使用者の指が試薬容器保持部62の奥側に入り込むのを回避することができる。
【0121】
また、第1実施形態では、上記のように、第2収容部220は、第1収容部210の幅W21より大きな幅W22を有し、第1案内部627aは、第2収容部220の幅W22より小さい幅W11で設けられる。このように構成すれば、試薬容器保持部62の奥側に挿入される第1収容部210および第1収容部210をガイドする第1案内部627aが、共に試薬容器200の第2収容部220よりも小さい幅となるため、使用者の指が試薬容器保持部62の奥側に入り込み難くなる。これにより、試薬容器200をセットするときに、使用者の指がピアサ64に触れてしまうことをさらに確実に回避することができる。
【0122】
また、第1実施形態では、上記のように、第2収容部220は、第1収容部210の幅W21より大きな幅W22を有し、第1案内部627aは、第2収容部220の幅W22より小さい幅W11で設けられる。このように構成すれば、第1案内部627aが、使用者の指が試薬容器保持部62の奥側に入り込み難くなる幅となっていても、試薬容器に収容できる試薬の容量を大きくすることができる。
【0123】
また、第1実施形態では、上記のように、第1受入部621は、使用者の指の進入を禁止する幅W11を有する。このように構成すれば、ピアサ64が進入する第1収容部210(310)を受け入れる第1受入部621への使用者の指の進入が禁止されるので、試薬容器200(300)をセットするときに、使用者の指がピアサ64に触れてしまうことを確実に回避することができる。
【0124】
また、第1実施形態では、上記のように、試薬容器保持部62は、試薬容器200(300)を支持する支持部624と、試薬容器200(300)を支持部624に載置する載置位置P1およびピアサ64が進入可能な位置に支持部上の試薬容器200(300)を配置するセット位置Q1に支持部624を移動させる回動機構625とを含む。このように構成すれば、使用者は、支持部624が載置位置P1にある状態で試薬容器200(300)を設置すれば、回動機構625により支持部624をセット位置Q1に移動させるだけで試薬容器200(300)を試薬容器保持部62にセットすることができるので、容易に、試薬容器保持部62に試薬容器200(300)をセットすることができるとともに、使用者が試薬容器保持部62の奥側に指(手)を進入させる必要がなくなる。
【0125】
また、第1実施形態では、上記のように、ピアサ昇降機構65は、カバー63の開閉に連動してピアサ64を移動させるように構成され、カバー63が試薬容器保持部62を開放する上昇位置P2に配置されたとき、ピアサ64が第1受入部621の外部(上方)に退避するように構成されている。このように構成すれば、試薬容器200(300)のセットのためにカバー63を上昇位置P2に移動したときにピアサ64が第1収容部210(310)外に退避するので、試薬容器200(300)の設置作業を簡素化することができる。また、試薬容器200(300)をセットするときに、使用者の指がピアサ64に触れてしまうことをより確実に回避することができる。
【0126】
また、第1実施形態では、上記のように、カバー63は、ピアサ昇降機構65によるピアサ64の移動に連動して、試薬容器保持部62を開放および閉鎖するように構成されている。このように構成すれば、ピアサ昇降機構65によるピアサ64の移動を、試薬容器保持部62自体を開放および閉鎖するカバー63に連動させることができる。これにより、試薬容器200(300)のセットのためにカバー63を開放したときにはピアサ64が試薬容器200(300)外に退避するので、使用者の指がピアサ64に触れてしまうことをより確実に回避することができる。
【0127】
また、第1実施形態では、上記のように、試薬容器200(300)の進入部212(312)は、第1測定ユニット3(第2測定ユニット2)に挿入される方向における先端近傍に、第1測定ユニット3(第2測定ユニット2)のピアサ64が上方から進入可能なように設けられている。これにより、第1測定ユニット3(第2測定ユニット2)の奥側に挿入された進入部212(312)を介して第1測定ユニット3(第2測定ユニット2)のピアサ64を上方から試薬容器200(300)の内部に進入させることができる。このため、使用者は、試薬容器200(300)を把持して先端の進入部212(312)側から第1測定ユニット3(第2測定ユニット2)内部に挿入するだけで試薬容器200(300)をセットすることができるので、試薬容器200(300)の設置作業を簡素化することができる。また、ピアサ64の試薬容器200(300)への進入および試薬容器200(300)からの退避を第1測定ユニット3(第2測定ユニット2)内の挿入方向の奥側で行うことができるので、試薬容器200(300)をセットするときに、使用者の指がピアサ64に触れてしまうことを回避することができる。
【0128】
また、第1実施形態では、上記のように、試薬容器200(300)の内部底面200a(300a)が、外部上面200b(300b)と非平行となるように形成されるとともに、内部底面200a(300a)と外部上面200b(300b)との距離が、進入部212(312)に近づくにつれて大きくなるように構成されている。このように構成すれば、外部上面200b(300b)が水平になるようにセット位置Q1に試薬容器200(300)をセットすると、進入部212(312)直下の内部底面200a(300a)の位置が試薬容器200(300)内において最も低くなる。これにより、ピアサ64で吸引できずに試薬容器200(300)内に残ってしまう試薬の量を減らすことができる。
【0129】
また、第1実施形態では、上記のように、試薬容器200(300)の進入部212(312)が、試薬容器保持部62に第1収容部210(310)が挿入される方向(図7および図8の矢印Y2方向))における、第1収容部210(310)の端部に設けられている。このように構成すれば、試薬容器200(300)を試薬容器保持部62にセットした場合に進入部212(312)が第1受入部621の奥に配置されるので、進入部212(312)の位置に対応してピアサ64も第1受入部621の奥に配置することができる。これにより、使用者の指がピアサ64に触れてしまうことをより確実に回避することができる。
【0130】
また、第1実施形態では、上記のように、試薬容器200の第2収容部220が、第1収容部210に連続して第1収容部210から離れるにつれて幅が大きくなる第1部222と、第1部222に連続し、一定の幅W22を有する第2部223とから構成されている。このように構成すれば、進入部212側の内部底面200a(底部200c)の位置が試薬容器200内において低くなるように試薬容器200をセット位置Q1に配置した場合に、第2部223側に収容された試薬が第1部222を介して進入部212側に集められるので、試薬容器200内の試薬が第2収容部220側で残留することがない。
【0131】
また、第1実施形態では、上記のように、カバー63の開閉に連動してピアサ64を移動させるようにピアサ昇降機構65が構成されている。そして、カバー63が試薬容器保持部62を開放する上昇位置P2に移動したときに試薬容器保持部62からの試薬容器200(300)の出し入れが許容され、カバー63が試薬容器保持部62を閉鎖する下降位置Q2に移動したときに試薬容器保持部62からの試薬容器200(300)の出し入れが禁止される。このように構成すれば、使用者は、カバー63を上昇位置P2に移動させるだけで、ピアサ64を試薬容器200(300)外に退避させるとともに試薬容器保持部62から試薬容器200(300)を出し入れ可能な状態にすることができる。また、試薬容器200(300)を試薬容器保持部62に設置した後、使用者は、カバー63を下降位置Q2に移動させるだけで、試薬容器保持部62からの試薬容器200(300)の出し入れを禁止するとともにピアサ64を試薬容器200(300)内へ進入させることができる。この結果、使用者は、カバー63の上昇位置P2への移動と、試薬容器200(300)の設置と、カバー63の下降位置Q2への移動との作業を行うだけで、試薬容器200(300)内から試薬を吸引可能とすることができる。これにより、装置構成を複雑化することなく試薬容器200(300)の設置作業を簡素化することができる。
【0132】
また、第1実施形態では、試薬容器200(または300)に染色液が収容されており、ピアサ64に染色液が付着している場合も考えられる。そのため、上記第1実施形態のようにピアサ64に指が触れないように構成することで、染色液が使用者の指に付着することを防止することができる。
【0133】
また、第1実施形態では、試薬容器ホルダ60は、5つのホルダ部60a、60b、60c、60dおよび60eを含み、合計5つ(5種類)の試薬容器200(または300)を保持するように構成されている。これにより、1本の吸引管が多数の試薬容器から試薬を吸引するような構成と比較すると、各ピアサ64が各試薬容器200(300)に対応しているので試薬のキャリーオーバーを防止することができる。これは試薬が染色液である場合、洗浄してもピアサ64の汚れが落ちにくいため、特に好ましい。
【0134】
また、第1実施形態では、試薬容器200(300)の色は黒である。これにより、試薬容器200(300)内の試薬が外部からの光により劣化することを防ぐことができる。これは試薬が染色液である場合、光による劣化が起こりやすいため、特に好ましい。
【0135】
(第2実施形態)
次に、図1図6および図19図25を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、ピアサ昇降機構65をカバー63の開閉と連動させるとともに、支持部624を手動で移動させるように構成された上記第1実施形態とは異なり、ピアサ昇降機構850および回動機構825の両方をカバー830の開閉と連動させるように構成されている。なお、試薬容器ホルダ800以外の構成は上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、第2実施形態では、試薬容器ホルダ800に試薬容器200をセットする例について説明し、試薬容器300をセットする場合についての説明を省略する。
【0136】
図19に示すように、第2実施形態では、試薬容器ホルダ800のホルダ部800a〜800eは、それぞれ、シャーシ810と、試薬容器保持部820と、試薬容器保持部820を開閉するためのカバー830と、ピアサ840と、ピアサ昇降機構850とを主として含んでいる。
【0137】
試薬容器保持部820は、図6に示す第1受入部621と、中間受入部622と、第2受入部623とを含んでいる。これらの第1受入部621、中間受入部622および第2受入部623の構造は上記第1実施形態と同様であるので、上記第1実施形態と同一の符号を用いるとともに説明を省略する。同じく、試薬容器保持部820は、試薬容器200(300)の第1収容部210(310)の両側面214(314)をガイドして第1受入部621に案内する一対の案内部材627を含んでいる。一対の案内部材627は、第1受入部621に試薬容器200(300)の第1収容部210(310)を案内する第1案内部627aと、中間受入部622に対応する中間案内部627bと、第2受入部623に試薬容器200(300)の第2収容部220(320)を案内する第2案内部627cとをそれぞれ有する。この案内部材627(第1案内部627a、中間案内部627bおよび第2案内部627c)の構造は上記第1実施形態と同様であるので、上記第1実施形態と同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0138】
また、図19に示すように、試薬容器保持部820は、試薬容器200を支持する支持部821と、支持部821を回動可能に支持する回動機構825とを含んでいる。第2実施形態では、支持部821は、試薬容器200の前面と当接する前側部822と、試薬容器200の下面と当接する下側部823と、当接部824と、後側部823aとを一体的に有する板状部材からなる。支持部821の前側部822と下側部823とは、試薬容器200の形状と対応する形状を有するように形成されている。また、後側部823aは、下側部823の後端で板状部材(支持部821)が上方に折り曲げられた部分である。この後側部823aにより、支持部821(下側部823)上の一定位置に試薬容器200を設置することが容易となる。
【0139】
支持部821の当接部824は、前側部822の上端から延びるように設けられた部位であり、2箇所の屈折部824aおよび824bで折り曲げられている。当接部824は、後述するローラ856と当接して、支持部821の載置位置P11からセット位置Q11(図20参照)への移動を制限または許容する機能を有する。また、当接部824は、屈折部824aにおいて角度θ3で折れ曲がるとともに、屈折部824bにおいて角度θ3よりも大きい角度θ4で折れ曲がるように形成されている。なお、当接部824の屈折部824aと屈折部824bとの間の部分、および、屈折部824bよりも先端側(矢印Y2方向側)の部分は、直線状(平面状)に形成されている。
【0140】
回動機構825は、シャーシ810の内側面に設けられた環状の軸受826に、支持部821に設けられた突起部821aが挿入されることにより、突起部821a(軸受826)の位置を回動中心として、支持部821を回動させることが可能なように構成されている。また、第2実施形態では、回動機構825は、支持部821をセット位置Q11へ移動するように付勢するバネ部材827を有している。バネ部材827は、圧縮コイルバネからなり、下端がシャーシ810の下部に設けられたバネ設置部811上に固定されるとともに、上端が支持部821の下側部823の下面と当接するように設けられている。バネ部材827は、支持部821が載置位置P11に配置された状態で圧縮された状態となるように設けられている。このバネ部材827の反発力(付勢力)によって下側部823が押し上げられることにより、支持部821がセット位置Q11へ移動(回動)するように付勢されている。
【0141】
ここで、図19に示すように、第2実施形態は、回動機構825による支持部821の移動が、カバー830の開閉(上昇位置P12と下降位置Q12(図20参照)との移動)と連動して行われるように構成されている。すなわち、カバー830が開放されている場合(上昇位置P12に位置する場合)には、当接部824とピアサ昇降機構850のローラ856とが当接して当接部824の移動が制限されることによって、回動機構825による支持部821のセット位置Q11への移動が制限される。一方、図20に示すように、カバー830が閉鎖されている場合(下降位置Q12に位置する場合)には、当接部824とローラ856との当接が解除されることにより、支持部821のセット位置Q11への移動が許容される。
【0142】
なお、シャーシ810の内部には、支持部821の前側部822と当接することによって、回動する支持部821を係止する係止部812が設けられている。したがって、支持部821のセット位置Q11への移動が許容された状態(カバー830が下降位置Q12に位置する場合)では、バネ部材827の付勢力によって前側部822が係止部812に押しつけられるようにして、支持部821がセット位置Q11に保持される。このため、図23に示すように、カバー830が上昇位置P12から下降する場合、カバー830が下降位置Q12に到達するよりも前に、ピアサ昇降機構850のローラ856が屈折部824aを通過した時点で支持部821がセット位置Q11に配置される。そして、支持部821がセット位置Q11に配置された時点で、ピアサ840が支持部821にセットされた試薬容器200の進入部212の直前(近傍)の位置に配置される。
【0143】
カバー830は、図19に示すように、ピアサ昇降機構850に取り付けられるとともに、このピアサ昇降機構850により、試薬容器保持部820を開放する上昇位置P12と、試薬容器保持部820を覆う(閉鎖する)下降位置Q12(図20参照)とに移動可能に構成されている。カバー830は、上昇位置P12において試薬容器200(300)の出し入れを許容するとともに、下降位置Q12において試薬容器200(300)の出し入れを禁止するように構成されている。また、図20に示すように、カバー830は、カバー830が下降位置Q12に位置した状態で、使用者が窓部831を介して、試薬容器200に貼付されたラベル250を視認することが可能なように構成されている。また、カバー830には、試薬容器保持部820にセットされる試薬容器200の種類(試薬の種類)を識別する標識が印刷されたラベル832が貼付されている。
【0144】
また、第2実施形態では、カバー830の前面側(矢印Y1方向側)には、カバー把持部833が前方(矢印Y1方向)に突出するように設けられている。これにより、使用者がカバー把持部833を把持してカバー830の開閉(上昇位置P12または下降位置Q12への移動)を行うことが可能となる。
【0145】
図6および図19に示すように、ピアサ840は、試薬容器保持部820の第1受入部621の最奥部(矢印Y2方向側)の上方位置に配置され、ピアサ昇降機構850により鉛直方向(Z方向)に移動されるように構成されている。これにより、ピアサ840は、試薬容器保持部820の奥側に挿入された試薬容器200(300)の進入部212(312)を介して第1収容部210(310)に進入し、試薬容器200(300)内部の試薬を吸引可能に構成されている。第2実施形態では、ピアサ840は、筒状のピアサ保持部841の軸中心(図22参照)に固定された状態で保持されている。
【0146】
ピアサ保持部841は、円柱状の軸部842と、軸部842の下端において外径を広げるように形成されたフランジ部843とを一体的に含んでいる。ピアサ保持部841は、ピアサ840が進入部212(開口部212a)を介して試薬容器200内に進入する際に、試薬容器200の進入部212とピアサ保持部841(フランジ部843)の下面843aとが当接することによって、ピアサ840の試薬容器200内への進入を停止させるように構成されている。これにより、ピアサ840が下降位置Q13に配置される。このとき、試薬容器200の進入部212とピアサ保持部841(フランジ部843)の下面843aとが当接することによって、開口部212aに蓋がされる。
【0147】
また、図21および図22に示すように、ピアサ保持部841は、ピアサ昇降機構850の取付部851から上方(矢印Z1方向)に突出する軸部842の上端部が止め具844(図22参照)によって係止されることにより、取付部851に吊り下がるように取り付けられている。これにより、ピアサ保持部841は、ピアサ昇降機構850の取付部851に対して、ピアサ840が試薬容器200から退避する上方向(Z1方向)に相対的に移動可能に構成されている。
【0148】
また、ピアサ保持部841の軸部842の外周には、圧縮コイルバネからなるバネ部材845が設けられている。バネ部材845は、下端がフランジ部843の上面と当接し、上端がピアサ昇降機構850の取付部851の下面と当接するように設けられている。このため、バネ部材845は、ピアサ昇降機構850の取付部851に対して、ピアサ840が試薬容器200に進入する下方向(Z2方向)にピアサ保持部841を付勢するように構成されている。なお、図19に示すように、バネ部材845は、非圧縮状態においてバネ長L3を有する。
【0149】
図21および図22に示すように、ピアサ昇降機構850は、カバー830を保持するとともに、取付部851に取り付けられたピアサ保持部841を介してピアサ840を保持するように構成されている。また、図19に示すように、ピアサ昇降機構850は、V字状の溝(図22参照)を有する3つのガイドローラ852、853および854を含む。ガイドローラ852および853は、シャーシ810の手前側(矢印Y1方向側)のガイド部813に上下方向移動可能に係合している。また、ガイドローラ854は、シャーシ810の奥側(矢印Y2方向側)のガイド部814に上下方向移動可能に係合している。これにより、ピアサ昇降機構850は、カバー830の開閉(昇降)に連動してピアサ840を鉛直方向(Z方向)に一体的に移動させるように構成されている。
【0150】
ここで、ガイドローラ854は、板バネ855を介してピアサ昇降機構850に取り付けられており、板バネ855により前方側(矢印Y1方向側)に付勢された状態でガイド部814と係合している。また、ガイド部814の下部には、第1傾斜部814aおよび第2傾斜部814bを有する凸状部が形成されている。板バネ855を介して前方側(矢印Y1方向側)に付勢されたガイドローラ854は、下降時には第1傾斜部814aを乗り越えるように移動する。このため、使用者がカバー830を閉める場合、使用者は第1傾斜部814aを乗り越える際に抵抗を感じて下降位置Q12までカバー830を押し下げたことを確実に認識することが可能である。一方、カバー830を上昇させるためにはガイドローラ854が第2傾斜部814bを乗り越える必要があるため、第2傾斜部814bは、カバー830が下降位置Q12に配置された場合に、カバー830(ピアサ昇降機構850)の位置を下降位置Q12に固定する機能を有する。
【0151】
なお、図25に示すように、カバー830が下降位置Q12に到達する前に、試薬容器200の進入部212とピアサ保持部841のフランジ部843の下面843aとが当接し、ピアサ840が下降位置Q13に配置される。したがって、ピアサ840が下降位置Q13に配置されてからカバー830が下降位置Q12(図20参照)に到達するまでの間は、カバー830(ピアサ昇降機構850)の下降に伴って取付部851が下降することにより、ピアサ保持部841のバネ部材845を圧縮させるように動作する。このため、カバー830が下降位置Q12に配置された状態でピアサ保持部841のバネ部材845がバネ長L4に圧縮される。これにより、バネ部材845が取付部851を介してピアサ昇降機構850のガイドローラ854を第2傾斜部814bに押しつけるとともに、バネ部材845がフランジ部843を介してピアサ保持部841を試薬容器200に押しつけるように構成されている。このように構成することによって、製造誤差などに起因してカバー830の下降位置Q12(第2傾斜部814bの位置)が僅かに上方または下方にずれたとしても、ピアサ保持部841のバネ部材845の反発力によってピアサ保持部841と試薬容器200とを確実に当接させ、試薬容器200に対するピアサ840の位置がホルダ部(800a〜800e)毎にばらつくのを防止することができる。
【0152】
また、第2実施形態では、ピアサ昇降機構850の奥側(矢印Y2方向側)の下部には、ピアサ昇降機構850(カバー830)と一体的に上下移動するローラ856が設けられている。図19に示すように、カバー830が上昇位置P12に位置する場合には、ローラ856が支持部821の当接部824と当接する。これにより、ローラ856は、バネ部材827によりセット位置Q11に移動するように付勢された当接部824(支持部821)の移動を制限するように構成されている。また、図20に示すように、ローラ856は、カバー830が下降位置Q12に位置する場合には、支持部821がセット位置Q11へ移動するのを許容するように構成されている。これにより、第2実施形態は、ピアサ昇降機構850によるピアサ840の移動と回動機構825(バネ部材827)による支持部821の移動との両方が、カバー830の開閉(昇降)に連動して並行して行われるように構成されている。
【0153】
また、ピアサ昇降機構850の奥側(矢印Y2方向側)の上部には、検出片857が設けられている。この検出片857は、図20に示すように、シャーシ810に設けられた光学式のセンサ(フォトインタラプタ)815を遮光して、カバー830が下降位置Q12(ピアサ840が下降位置Q13)に配置されたことを検出するように構成されている。また、取付部851の上方には、ピアサ840が開口部を貫通するように設けられたピアサ規制部858が配置されている。ピアサ規制部858は、取付部851周りにピアサ840(ピアサ保持部841)が回動するように動くのを規制する機能を有する。なお、図22は、ピアサ規制部858を一点鎖線で図示している。
【0154】
また、シャーシ810の外部の第1受入部621近傍の位置には、近距離無線通信を行うためのRFID(Radio Frequency Identification)アンテナ部816(一点鎖線参照)が設けられている。第2実施形態では、試薬容器200の第1収容部210の外側面にRFIDタグ860が貼付される。このRFIDタグ860には、たとえば試薬容器200に収容される試薬の種類、ロット番号および使用期限などの試薬情報が記録される。そして、支持部821に試薬容器200がセットされると、試薬容器200のRFIDタグ860とRFIDアンテナ部816(一点鎖線参照)とが近距離無線通信を行うことにより、試薬情報が読み出されるように構成されている。読み出された試薬情報は制御装置5(図1参照)により取得され、誤った試薬(試薬容器200)が設置された場合などには、エラーメッセージが表示部52(図1参照)に表示される。
【0155】
次に、図1図6および図19図25を参照して、第2実施形態による第1測定ユニット3および第2測定ユニット2(図1参照)の試薬容器ホルダ800(ホルダ部800a)への試薬容器200のセット動作について説明する。なお、セット動作は試薬容器200および300で同様であるので、試薬容器200のセット動作のみについて説明し、試薬容器300のセット動作については省略する。同様に、ここではホルダ部800aへの試薬容器200のセット動作についてのみ説明し、他のホルダ部800b〜800eへのセット動作については説明を省略する。
【0156】
まず、使用者は、前面カバー24a(図1参照)を開放し、カバー把持部833を把持してカバー830を上昇位置P12(図19参照)に移動させる(カバー830を開放する)。この際、図23に示すように、カバー830の上方への移動に伴ってピアサ昇降機構850のピアサ840とローラ856とが上方へ移動し、ローラ856が屈折部824aで当接部824と当接する。このとき、ピアサ840は試薬容器200の外部(上方)に退避する。ここで、当接部824を有する支持部821は、バネ部材827によって付勢されているので、ローラ856が当接部824を矢印Y1方向側に押しのけるようにして上昇する。これにより、カバー830の上昇に連動して、ピアサ840が上昇位置P13に向けて上昇すると同時に、並行して支持部821が矢印Y1方向側に回動されて載置位置P11への移動を開始する。
【0157】
カバー830の上昇を継続すると、図24に示すように、ローラ856が屈折部824bで当接部824と当接する。屈折部824bの角度θ4は、屈折部824aの角度θ3よりも大きいため、この屈折部824b以降、カバー830(ローラ856)の上昇に伴う支持部821の移動量(回動角度)が増大するとともに、カバー830(ローラ856)を上昇させるために必要な押し上げ力が増大する。このように屈折部824aおよび824bを2箇所に設け、屈折部824a(角度θ3)では屈折部824b(角度θ4)よりも角度を小さくすることによって、使用者がカバー830を押し上げる際に必要な押し上げ力(すなわち、使用者が受ける抵抗)の急激な増大を抑制することが可能である。そして、屈折部824b(角度θ4)で角度を大きくすることによって、支持部821の移動量(回動角度)を増大させて支持部821をセット位置Q11と載置位置P11とに移動(回動)させるために必要なカバー830(ローラ856)全体の移動量が増大するのを抑制することができるので、試薬容器ホルダ800が大型化するのを抑制することが可能である。
【0158】
屈折部824bを過ぎて上昇を継続すると、図19に示すように、カバー830が上昇位置P12に配置されて試薬容器保持部820が開放されるとともに、ピアサ840が上昇位置P13に配置される。また、ピアサ昇降機構850のローラ856が当接部824の先端部と当接することによって、バネ部材827による支持部821の矢印Y2方向側への回動が制限され、支持部821が載置位置P11に保持される。
【0159】
次に、使用者は、試薬容器200を支持部821に載置する(新しい試薬容器200に交換する)。このとき、試薬容器200に貼付されたRFIDタグ860に記録された試薬情報がシャーシ810の外部に設置されたRFIDアンテナ部816(一点鎖線参照)を介して制御装置5(図1参照)に読み込まれる。誤った試薬(試薬容器200)が設置された場合には、表示部52(図1参照)にエラーメッセージが表示され、誤った試薬であることが使用者に通知される。
【0160】
なお、第1受入部621および案内部材627(図6参照)の形状は上記第1実施形態と同様であるので、第2実施形態においても、第1収容部210の形状を反映する一対の第1案内部627aに沿って第1収容部210の両側面214全体がガイドされることにより、試薬容器200の挿入時に試薬容器200(第1収容部210および第2収容部220の各側面)と案内部材627(第1案内部627aおよび第2案内部627c)との間から試薬容器保持部62の奥側に使用者の指が進入するのが阻まれる。これにより、ピアサ840に使用者の指が触れてしまうことが防止される。
【0161】
次に、図19に示すように、使用者は、カバー把持部833を把持してカバー830を上昇位置P12から下降位置Q12(図20参照)に移動(下降)させる(カバー830を閉じる)。これに伴いピアサ昇降機構850のピアサ840とローラ856とが下降する。支持部821はバネ部材827によって矢印Y2方向側に付勢されているため、ローラ856と当接部824とが当接した状態のまま、ローラ856の下降に伴って支持部821が徐々に矢印Y2方向側に回動する。そして、図23に示すように、ローラ856が屈折部824aまで下降すると、支持部821の前側部822が係止部812と当接する。これにより、支持部821がセット位置Q11に配置されるとともに、支持部821の回動が係止部812によって停止される。このとき、ピアサ840が試薬容器200の進入部212(開口部212a)上方で、かつ進入部212(開口部212a)近傍の位置(進入部212(開口部212a)の直前の位置)に配置されている。支持部821がセット位置Q11に配置されると、前側部822が係止部812と当接して係止されるので、ローラ856が屈折部824aを過ぎた後は、ピアサ840のみがカバー830の下降に伴って移動する。
【0162】
使用者がカバー830を継続して下降させると、ピアサ840は、試薬容器200の進入部212(開口部212a)を封止するシール材213を貫通するとともに進入部212(開口部212a)を介して試薬容器200内部に進入する。また、カバー830が下降位置Q12に到達する間に、ピアサ昇降機構850のガイドローラ854が第1傾斜部814aを乗り越える。使用者は、ガイドローラ854が第1傾斜部814aを乗り越える際に抵抗を感じてカバー830を所定位置まで押し下げたことを確実に認識することができる。
【0163】
なお、図25に示すように、ガイドローラ854が第1傾斜部814aと第2傾斜部814bとの間に位置する状態で、ピアサ保持部841の下面と、試薬容器200の進入部212の上端面とが当接して、ピアサ840の下降が停止する。したがって、この時点でピアサ840は下降位置Q13に配置される。ピアサ840が下降位置Q13に配置された後は、カバー830(ピアサ昇降機構850)がさらに下降すると、ピアサ保持部841は、ピアサ昇降機構850に対して相対的に上方(ピアサ840が退避する方向)に移動する。すなわち、ピアサ保持部841は、カバー830(ピアサ昇降機構850)の下降に対して取付部851から上方に突出するようにしてその位置を保持する。したがって、ピアサ840が下降位置Q13に配置された後は、支持部821およびピアサ840は停止したままカバー830(ピアサ昇降機構850)のみが下降する。
【0164】
ガイドローラ854が第2傾斜部814bを通過すると、ピアサ昇降機構850(取付部851)の下降に伴って、ピアサ保持部841のバネ部材845が圧縮される。このバネ部材845の反発力によってピアサ昇降機構850に対し上方(矢印Z1方向)に付勢力が働くことにより、ガイドローラ854が第2傾斜部814bと噛み合う位置で停止する。これにより、図20に示すように、バネ部材845がバネ長L4まで圧縮された状態で、カバー830が下降位置Q12に保持される。また、このとき、ピアサ昇降機構850の検出片857がセンサ815を遮光して、カバー830が閉じられたこと(下降位置Q12に配置されたこと)が検出される。この検出結果に基づいて、ピアサ840を介して試薬容器200内の試薬を吸引することが可能となる。
【0165】
なお、この状態で、使用者はカバー830の窓部831から試薬容器200のラベル250を視認することが可能となるため、使用者は、カバー830に貼付されるラベル832と試薬容器200のラベル250とから、正しい試薬容器200がセットされているか否か、試薬の交換時にどのラベル250が添付された試薬(試薬容器200)を用意すればよいかを確認することが可能となる。
【0166】
以上により、試薬容器ホルダ800(ホルダ部800a)への試薬容器200のセット動作が終了する。
【0167】
第2実施形態では、上記のように、回動機構825は、カバー830を上昇位置P12に移動させたときには支持部821が載置位置P11に位置し、カバー830を下降位置Q12に移動させたときには支持部821がセット位置Q11に位置するよう、カバー830の移動に連動して支持部821を移動させるように構成される。このように構成することによって、カバー830の移動と支持部821の移動とが連動しているので、使用者は、試薬容器200を支持部821に設置した後、カバー830を下降位置Q12に移動させるだけでピアサ840が進入可能なセット位置Q11に試薬容器200を配置することができる。これにより、装置構成を複雑化することなく試薬容器200の設置または取り出しを簡便に行うことができる。また、ピアサ840が進入可能なセット位置Q11に試薬容器200を配置するために使用者が試薬容器200に触れる必要がないので、使用者の指がピアサ840に触れてしまうことをより確実に回避することができる。
【0168】
また、第2実施形態では、上記のように、支持部821がセット位置Q11に移動するよう付勢するバネ部材827を設けることによって、支持部821を載置位置P11からセット位置Q11に容易に移動させることができる。
【0169】
また、第2実施形態では、上記のように、当接部824とローラ856とを設けることによって、誤って支持部821が移動されるのを防止することができるので、使用者の指がピアサ840に触れてしまうことをより確実に回避することができる。
【0170】
また、第2実施形態では、上記のように、カバー830の開閉に連動して移動するローラ856と、支持部821の移動に連動して移動する当接部824とが設けられ、ローラ856と当接部824とが当接して当接部824の移動が制限および許容されることにより、載置位置P11からセット位置Q11への支持部821の移動が制限および許容される。これにより、ローラ856と当接部824とを用いて、容易に、支持部821の載置位置P11からセット位置Q11への移動の制限および許容をカバー830の開閉に連動させることができる。
【0171】
また、第2実施形態では、上記のように、カバー830の前面側(矢印Y1方向側)にカバー把持部833を設けることによって、使用者はカバー830の前面側に配置されたカバー把持部833を持ってカバー830の移動を行うことができる。これにより、使用者の指がピアサ840に触れてしまうことをより確実に回避することができるとともに、カバー830の移動を容易に行うことができる。
【0172】
また、第2実施形態では、上記のように、ピアサ昇降機構850が、カバー830の移動(開閉)に連動してピアサ840を移動させるように構成されるとともに、ピアサ昇降機構850によるピアサ840の移動と回動機構825による支持部821の移動との両方が、カバー830の移動(開閉)に連動して並行して行われる。このように構成すれば、使用者は、カバー830を上昇位置P12に移動して支持部821に試薬容器200を設置した後、カバー830を閉めるだけで載置位置P11からセット位置Q11への支持部821の移動と、試薬容器200内へのピアサ840の進入(ピアサ840の上昇位置P13から下降位置Q13への移動)とを行うことができる。ここで、たとえばカバー830の移動に連動して支持部821を移動させた後にピアサ840を移動させる場合には、カバー830の上昇位置P12から下降位置Q12までの移動距離を大きくする必要があるので、装置が大型化してしまう。これに対して、ピアサ840の移動と支持部821の移動との両方がカバー830の移動(開閉)に連動して並行して行われるように構成することによって、カバー830の上昇位置P12から下降位置Q12までの移動距離を小さくすることができるので、装置が大型化するのを抑制することができる。
【0173】
また、第2実施形態では、上記のように、ピアサ保持部841は、ピアサ840が進入部212を介して試薬容器200内に進入する際に、試薬容器200の進入部212と当接することによってピアサ840の試薬容器200内への進入を停止させるように構成される。さらにピアサ保持部841は、試薬容器200の進入部212と当接した後は、ピアサ昇降機構850の試薬容器200側への移動に伴って、ピアサ昇降機構850(取付部851)に対してピアサ840を試薬容器200外に退避させる上方向(矢印Z1方向)に相対的に移動可能に構成される。このように構成すれば、ピアサ保持部841が試薬容器200の進入部212の上端面と当接した後、さらにピアサ840を進入させる方向(矢印Z2方向)にピアサ昇降機構850を移動させた場合にも、ピアサ保持部841が試薬容器200の進入部212の上端面と当接した状態のままピアサ保持部841がピアサ昇降機構850に対して相対的に移動する。そのため、ピアサ840が試薬容器200内部にさらに進入するのを防止することができる。これにより、ピアサ昇降機構850の位置決めを行うためにセンサなどを別途設けることなく、ピアサ840の先端を常に試薬容器200内の一定の位置に配置することができる。
【0174】
また、第2実施形態では、上記のように、ピアサ昇降機構850(取付部851)に対してピアサ840を試薬容器200内に進入させる下方向(矢印Z2方向)にピアサ保持部841を付勢するバネ部材845が設けられている。このように構成すれば、バネ部材845は、ピアサ840を進入させる下方向(矢印Z2方向)にピアサ保持部841を付勢する。このため、ピアサ保持部841が試薬容器200の進入部212の上端面と当接した後、ピアサ840が進入する方向(矢印Z2方向)にピアサ昇降機構850が移動する場合にも、バネ部材845の付勢力によってピアサ保持部841と進入部212の上端面との当接状態を維持することができる。これにより、バネ部材845によってピアサ840の先端を試薬容器200内の一定の位置に確実に保持することができる。
【0175】
また、第2実施形態では、上記のように、カバー830が、試薬容器200の取出しを許容する上昇位置P12で試薬容器保持部820を開放し、試薬容器保持部820からの試薬容器200の取出しを防止する下降位置Q12で試薬容器保持部820を閉鎖するように構成されている。このように構成すれば、ピアサ昇降機構850によるピアサ840の移動を、試薬容器保持部820を開放および閉鎖するカバー830に連動させることができる。これにより、試薬容器200のセットのためにカバー830を開放したときにはピアサ840が試薬容器200外に退避させて試薬をセット(または交換)可能とし、試薬容器200のセット後には、カバー830を閉鎖するだけでピアサ840を試薬容器200内へ進入させることができる。この結果、使用者は、カバー830を開いて試薬容器200を設置した後、カバー830を閉じるだけで、試薬容器200内から試薬を吸引可能とすることができるので、試薬容器200の設置作業を簡素化することができる。
【0176】
また、第2実施形態では、上記のように、試薬容器200の進入部212とピアサ保持部841(フランジ部843)の下面843aとが当接することによって、開口部212aに蓋がされる。これにより、一度試薬容器200がセットされると、次の試薬交換までピアサ840が下降した状態で試薬容器200がセットされたままであるような分析装置において、簡単な構成で試薬の乾燥や異物の混入を防ぐことができる。
【0177】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0178】
(第3実施形態)
次に、図17図19および図26図28を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、大型の試薬容器200および小型の試薬容器300が共通の試薬容器保持部62(820)により保持されるように構成された上記第1および第2実施形態とは異なり、大型の試薬容器200と小型の試薬容器300とにそれぞれ専用の試薬容器保持部920と930とが設けられている。なお、試薬容器保持部920および930以外の構成については、上記第1実施形態の構成または上記第2実施形態の構成のいずれの構成を採用しても良いので、説明を省略する。
【0179】
図26に示すように、第3実施形態では、試薬容器ホルダ900は、大型の試薬容器200専用の試薬容器保持部920が設けられた2つのホルダ部900aおよび900bと、小型の試薬容器300専用の試薬容器保持部930が設けられた3つのホルダ部900c、900dおよび900eとを含んでいる。
【0180】
図26および図27に示すように、大型の試薬容器200専用の試薬容器保持部920は、上記第1および第2実施形態の試薬容器保持部62(820)と同様に、高さがHであり、幅W11を有する第1受入部621と、中間受入部622と、第2受入部623とを含んでいる。同様に、試薬容器保持部920は、試薬容器200の第1収容部210の両側面214をガイドして第1受入部621に案内する一対の案内部材627を含んでいる。案内部材627は、第1案内部627aと、中間案内部627bと、第2案内部627cとを有する。一対の案内部材627(第1受入部621、中間受入部622および第2受入部623)は、それぞれ試薬容器200の外形形状を反映した形状を有し、試薬容器200の第1収容部210の両側面214全体と、第2収容部220の先端側(矢印Y2方向)半分の両側面とをガイド可能なように構成されている。
【0181】
また、図27に示すように、試薬容器保持部920は、試薬容器200を支持する支持部921と、支持部921を回動可能に支持する回動機構922とを含んでいる。支持部921は、試薬容器200の前面(第1収容部210の先端面)と当接する前側部921aと、試薬容器200の下面と当接する下側部921bと、下側部921bから手前側(第2収容部220の後端側、矢印Y1方向)に延びる延長部921cと、延長部921cの端部に設けられた後端部921dとを一体的に有する板状部材である。なお、支持部921には、上記第2実施形態の支持部821(図19参照)のように当接部を設け、当接部とローラとが当接して支持部921の移動が制限または許容されるように構成してもよい。
【0182】
図26に示すように、下側部921bから延びる延長部921cは、支持部921の幅方向の一方側(矢印X1方向側)に偏った位置に形成され、矢印Y1方向に直線状に延びるように形成されている。そして、後端部921dは、延長部921cの先端(矢印Y1方向側の端部)で板状部材(支持部921)が上方に折り曲げられた部分である。図27に示すように、延長部921cのY方向の長さは、試薬容器200の長手方向の長さに対応しており、試薬容器200を支持部921にセットする際に後端部921dが試薬容器200の位置決め部として機能するように構成されている。これにより、使用者が支持部921(下側部921b)上の一定位置に試薬容器200を設置することが容易となる。なお、試薬容器200の設置時に使用者が試薬容器200の後端部(第2収容部220)を上下方向に挟むように把持した場合に、延長部921cが支持部921の一方側(矢印X1方向側)に偏って配置されているため、延長部921cおよび後端部921dが試薬容器200の設置の邪魔になることがない。
【0183】
また、試薬容器保持部920のその他の構成は上記第1実施形態の試薬容器保持部62または第2実施形態の試薬容器保持部820と同様であるので、説明を省略する。
【0184】
図26および図28に示すように、小型の試薬容器300専用の試薬容器保持部930は、高さがHであり、幅W11を有する第1受入部931を含んでいる。第1受入部931は、試薬容器300の第1収容部310を受け入れ可能であるとともに、使用者の指の進入を禁止する幅(幅W11、たとえば、10mm)を有する。第1受入部931は、試薬容器保持部930の最も奥側(矢印Y2方向側)に配置され、試薬容器300は、第1収容部310の進入部312側から試薬容器保持部930の奥側に向かって挿入される。したがって、試薬容器保持部930は、試薬容器300の進入部312が最も奥側になるように挿入された状態で、試薬容器300を保持するように構成されている。
【0185】
また、試薬容器保持部930は、試薬容器300の第1収容部310の両側面314をガイドして第1受入部931に案内する一対の案内部材932を含んでいる。一対の案内部材932は、それぞれ第1受入部931に試薬容器300の第1収容部310を案内する第1案内部932aを有する。なお、一対の案内部材932は、試薬容器保持部930が設けられたホルダ部900c(900dおよび900e)のシャーシ901の一部(両内側面)によって形成され、上記の第1受入部931は、一対の第1案内部932aの間の空間により形成されている。また、案内部材932(シャーシ901)の手前側(矢印Y1方向側)端部には、試薬容器保持部930の幅方向(X方向)の外側に広がる屈曲部901aが形成されている。
【0186】
図26および図28に示すように、一対の案内部材932は、それぞれ、試薬容器300の第1収容部310の両側面314の高さH1(図17参照)と略等しい高さHを有し、試薬容器300の第1収容部310の両側面314の下端から上端までにわたってガイド可能に構成されている。さらに、一対の案内部材932は、それぞれ第1収容部310の外形形状を反映した平坦形状を有し、試薬容器300の第1収容部310の両側面314全体をガイド可能なように構成されている。したがって、第1受入部931の幅W11は第1案内部932aの間の幅と等しい。
【0187】
また、図28に示すように、試薬容器保持部930は、試薬容器300を支持する支持部933と、支持部933を回動可能に支持する回動機構934とを含んでいる。支持部933は、試薬容器300の前面(第1収容部310の先端面)と当接する前側部933aと、試薬容器300の下面と当接する下側部933bと、下側部933bの手前側(第2収容部320の後端側、矢印Y1方向)の端部に設けられた後端部933cおよび下側部933bの手前側端部の両側部に設けられた一対の直立部933dとを一体的に有する板状部材である。なお、支持部933には、上記第2実施形態の支持部821(図19参照)のように当接部を設け、当接部とローラとが当接して支持部933の移動が制限または許容されるように構成してもよい。
【0188】
図26に示すように、後端部933cは、下側部933bの先端(矢印Y1方向側の端部)で板状部材(支持部933)が上方に折り曲げられた部分である。下側部933bのY方向の長さは、試薬容器300の長手方向の長さに対応しており、試薬容器300を支持部933にセットする際に後端部933cが試薬容器300の位置決め部として機能するように構成されている。これにより、使用者が支持部933(下側部933b)上の一定位置に試薬容器300を設置することが容易となる。
【0189】
一対の直立部933dは、下側部933bの手前側端部の両側部で板状部材(支持部933)が上方に折り曲げられた部分である。図28に示すように、一対の直立部933dの間の間隔は、一対の案内部材932(第1案内部932a)の間の間隔(第1受入部931の幅W11)と略等しく、一対の直立部933dは、試薬容器300の第2収容部320の後端部の両側面を支持することが可能なように構成されている。すなわち、小型の試薬容器300は、第2収容部320の幅W21が試薬容器200の第2収容部220の幅W22と比較して小さいため、大型の試薬容器200よりも横方向(X方向)の安定性に欠ける。このため、試薬容器300の第1収容部310の両側面314を一対の案内部材932(第1案内部932a)で支持し、試薬容器300の第2収容部320側を一対の直立部933dで支持することにより、試薬容器保持部930内で試薬容器300を安定して保持することが可能である。
【0190】
なお、図26に示すように、試薬容器保持部930には案内部材932(シャーシ901)の手前側(矢印Y1方向側)端部に外側に広がる屈曲部901aが形成されているため、隣接する試薬容器保持部920同士が近接する幅広の試薬容器保持部920とは異なり、隣接する試薬容器保持部930(試薬容器300)との間隔(X方向の間隔)が大きい。このため、試薬容器300の設置時には使用者が試薬容器300の後端部(第2収容部320)を左右方向に挟むように把持して設置すれば、後端部933cおよび直立部933dが試薬容器300の設置の邪魔になることがない。
【0191】
第3実施形態では、上記のように、大型の試薬容器200専用の試薬容器保持部920と小型の試薬容器300専用の試薬容器保持部930とが設けられ、試薬容器保持部920と試薬容器保持部930とが、それぞれ試薬容器200と試薬容器300との形状を反映した形状を有する。これにより、形状の異なる試薬容器200および試薬容器300の設置の容易化を図るとともに、試薬容器200および試薬容器300を、それぞれ試薬容器保持部920および930に安定して保持することが可能である。
【0192】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0193】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、分析装置の一例として、第1測定ユニットおよび第2測定ユニットの2つの測定ユニットを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。測定ユニットは、1つまたは3つ以上でもよい。
【0194】
また、上記第1〜第3実施形態では、2つの測定ユニットと、検体搬送装置と、制御装置とを備えた血液分析システムを示したが、本発明はこれに限られない。上記のような分析システムを構成することなく、測定ユニット単体に本発明を適用してもよい。
【0195】
また、上記第1〜第3実施形態では、試薬容器ホルダに5つの試薬容器保持部を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。試薬容器保持部は、1〜4つ設けられていてもよいし、6つ以上設けられていてもよい。試薬容器保持部は、分析装置が使用する試薬の種類などに応じた数だけ設ければよい。
【0196】
また、上記第1実施形態では、ピアサ昇降機構65を、ピアサ64とカバー63とを連動して移動(昇降)させるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。ピアサ昇降機構は、カバーと連動させることなく、ピアサを試薬容器の内部および外部に移動させるだけでもよい。
【0197】
また、上記第2実施形態では、ピアサ昇降機構850によるピアサ840の移動(昇降)と、回動機構825による支持部821の移動との両方を、カバー830の開閉(昇降)と連動させるように構成した構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、ピアサ840の移動(昇降)と支持部821の移動とのどちらか一つがカバー830の開閉(昇降)と連動させるように構成されてもよい。たとえば、本発明は、回動機構(支持部移動機構)による支持部の移動とカバーの開閉とを連動させ、ピアサ昇降機構によるピアサの移動はカバーの開閉とは連動させないように構成されてもよい。この際、カバーが閉められた状態(支持部がセット位置に配置された状態)でのみ、ピアサ昇降機構によるピアサの移動が可能となってもよい。
【0198】
また、上記第1および第2実施形態では、各ホルダ部60a(800a)〜60e(800e)に、試薬容器保持部62(820)を開閉するためのカバー63(830)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試薬容器保持部を完全に閉鎖する(覆う)ことなく、試薬容器保持部を開放する取出し位置と、試薬容器保持部を部分的に覆って試薬容器の出し入れを禁止する取出し防止位置とに移動する取出し防止部材を設けてもよい。したがって、取出し防止部材としては、たとえば、試薬容器保持部を部分的に覆うことが可能な柵状部材や柱状部材などでもよく、試薬容器保持部を覆うことなく試薬容器と係合して試薬容器の出し入れを許容または禁止する係合部材などでもよい。また、1つのカバーで、複数の試薬容器保持部をまとめて開閉するように構成してもよい。
【0199】
また、上記第1〜第3実施形態では、試薬容器保持部62(820、920および930)に一対の案内部材を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、案内部材を一対設けることなく、試薬容器の第1収容部の両側面を案内する単一の案内部材を設けてもよい。また、案内部材を、3つ以上の部材により構成してもよい。
【0200】
また、上記第1〜第3実施形態では、試薬容器保持部の案内部材をシャーシの一部(両内側面)によって形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、案内部材をシャーシとは別部材で設けてもよい。
【0201】
また、上記第1実施形態では、試薬容器200(300)を、それぞれ内部底面200a(300a)が外部上面200b(300b)と非平行となるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試薬容器の内部底面と外部上面とを平行となるように構成してもよい。また、試薬容器200(300)の外部底面に傾斜面200d(300d)を設けなくともよい。すなわち、試薬容器の外部底面と外部上面とを平行となるように形成して、かつ、試薬容器の内部底面は試薬容器の外部上面と非平行となるように(内面だけが傾斜するように)形成してもよい。
【0202】
また、上記第1実施形態では、試薬容器200の第2収容部220を、第1収容部210から離れるにつれて幅が大きくなる第1部222と、一定の幅W22を有する第2部223とから構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2収容部を第1部のみにより構成して、第1収容部から離れるにつれて後端部まで連続して幅が大きくなるように構成してもよい。
【0203】
また、上記第1実施形態では、約100mLの容量を有する大型の試薬容器200と、約20mLの容量を有する小型の試薬容器300との2種類の試薬容器を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試薬容器は1種類だけでもよいし、3種類以上としてもよい。また、試薬容器の容量も、100mLおよび20mLに限られず、使用される試薬の量や頻度などに応じた容量としてよい。
【0204】
また、上記第2実施形態では、当接部824を屈折部824aおよび屈折部824bの2箇所で折り曲げられるように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、当接部が滑らかな曲線形状であってもよい。また、当接部に屈折部を1箇所または3箇所以上設けてもよい。
【0205】
また、上記第2実施形態では、当接部824を支持部821の前側部822の上端から延びるように一体的に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、当接部が支持部(前側部)とは別体で設けられてもよい。この場合、本発明は、当接部が支持部とは別体で設けられた場合にも、当接部が支持部と連動して移動するように構成されればよい。
【0206】
また、上記第2実施形態では、当接部824とローラ856とが、カバー830の開閉に連動して、支持部821が載置位置P11からセット位置Q11へ移動することを制限および許容するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、当接部およびローラ以外の制限部が設けられてもよい。
【0207】
また、上記第2実施形態では、圧縮コイルバネからなるバネ部材827が設けられ、支持部821がセット位置Q11に移動するように付勢された例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ねじりコイルバネ(トーションバネ)や板バネなどが設けられ、これにより支持部821がセット位置Q11に移動するよう付勢されててもよい。
【0208】
また、上記第2実施形態では、ピアサ840が試薬容器200に進入する下方向(Z2方向)にピアサ保持部841を付勢するバネ部材845が設けられた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、バネ部材845が設けられなくともよい。
【0209】
また、上記第2実施形態では、ピアサ840を保持するピアサ保持部841が設けられた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ピアサ保持部841が設けられることなく、ピアサ昇降機構850の取付部851にピアサ840が直接固定されてもよい。
【0210】
また、上記第1〜第3実施形態では、使用者の指が進入しにくい幅である幅W11の幅として10mmとした例を示したが、本発明はこれに限られない。幅W11の幅は5mm〜20mm程度であればよく、8mm〜18mmが好ましい。
【0211】
また、上記第1〜第3実施形態では、試薬容器保持部に第1収容部の両側面をガイドする案内部材を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、案内部材を設けなくともよい。また、案内部材が第1収容部の一方側面のみをガイドするように構成してもよいし、案内部材が試薬容器の第1収容部以外の部分をガイドするように構成してもよい。
【0212】
また、上記第1〜第3実施形態では、案内部材627(932)が少なくとも試薬容器200(300)の第1収容部210(310)の形状を反映した形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、案内部材が試薬容器の第1収容部の形状を反映しなくてもよい。したがって、案内部材が第1収容部の両側面全体を案内することなく、第1収容部の両側面の一部のみを案内するように構成してもよい。
【0213】
また、上記第1〜第3実施形態では、案内部材627(932)が試薬容器200(300)の第1収容部210(310)の高さH1と略等しい高さHで設けられた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、案内部材が試薬容器の第1収容部の高さとは異なる高さ寸法で設けられてもよい。したがって、案内部材が第1収容部の両側面の上端から下端にわたって案内することなく、たとえば第1収容部の両側面の中央部(高さ方向の中央部)のみを案内するように構成してもよい。
【0214】
また、上記第1〜第3実施形態では、フローサイトメトリー法を行う血球計数装置に本発明を適用したが、本発明はこれに限られない。本発明では、フローサイトメトリー法を行う尿中有形成分分析装置であってもよい。これらフローサイトメトリー法を行う分析装置においては、赤血球などの細胞を染色する染色液を用いて粒子を分類計数する。
【0215】
また、上記第1〜第3実施形態では、試薬容器の色は黒であるとしたが、本発明ではこれに限られない。本発明では、試薬容器内への外部からの光の進入が防げればよい。例えば、試薬容器の色は茶色でもよい。また、試薬容器内への外部からの光の進入を防ぐために、試薬容器が光を通さない素材により表面加工されていてもよい。
図1
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