(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された光源を用いて果菜類を栽培しても、早期に収穫することができないという問題がある。
【0006】
本発明の一実施形態は、早期に収穫することが可能な果菜類の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)発芽した果菜類に赤色光を照射する手順と、発芽した果菜類に青色光を照射する手順を
、交互に連続して、別個独立に行うことにより花芽を分化させる工程と、該花芽が分化した果菜類に、蛍光灯を用いて光を照射する工程を有
し、前記発芽した果菜類に赤色光を照射する手順及び前記発芽した果菜類に青色光を照射する手順を、それぞれ1回当たり3〜48時間の範囲内で行うことを特徴とする果菜類の栽培方法。
(2)発芽した果菜類に赤色光を照射する手順と、発芽した果菜類に青色光を照射する手順を
、交互に連続して、別個独立に行うことにより花芽を分化させる工程と、該花芽が分化した果菜類に、赤色光と青色光を同時に照射する工程を有
し、前記発芽した果菜類に赤色光を照射する手順及び前記発芽した果菜類に青色光を照射する手順を、それぞれ1回当たり3〜48時間の範囲内で行うことを特徴とする果菜類の栽培方法。
(3)発芽した果菜類に赤色光を照射する手順と、発芽した果菜類に青色光を照射する手順を
、交互に連続して、別個独立に行うことにより花芽を分化させる工程と、該花芽が分化した果菜類に、太陽光を照射する工程を有
し、前記発芽した果菜類に赤色光を照射する手順及び前記発芽した果菜類に青色光を照射する手順を、それぞれ1回当たり3〜48時間の範囲内で行うことを特徴とする果菜類の栽培方法。
(4)ビニールハウス内で、前記花芽が分化した果菜類に、太陽光を照射することを特徴とする(3)に記載の果菜類の栽培方法。
(5)前記花芽が分化した果菜類に、蛍光灯を用いて光を照射する工程をさらに有することを特徴とする(3)又は(4)に記載の果菜類の栽培方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、早期に収穫することが可能な果菜類の栽培方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
果菜類の栽培方法は、発芽した果菜類に赤色光を照射する手順と、発芽した果菜類に青色光を照射する手順を別個独立に行うことにより花芽を分化させる工程と、花芽が分化した果菜類に、蛍光灯を用いて光を照射する工程を有する。
【0012】
果菜類とは、野菜の中で果実又は種実を食用にする植物を意味する。
【0013】
果菜類としては、例えば、トマト、メロン、キュウリ、イチゴ、カボチャ、スイカ、ナス、ピーマン、オクラ、サヤインゲン、ソラマメ、エンドウ、エダマメ、トウモロコシ等が挙げられる。
【0014】
果菜類は、1作の栽培日数が長いため、植物工場では、果菜類の生長を促進することが求められている。果菜類は、収穫までに栄養成長相(例えば、葉の増加)と、生殖成長相(例えば、花芽分化、開花、果実の生育)の2つの成長相を経なければならず、レタス等の葉菜類に比べて、成長過程が複雑であるため、1作の栽培日数が長くなる。
【0015】
執行法は、発芽した後、花芽が分化するまでの果菜類の生長を促進する効果が高く、花芽が分化した後の果菜類の生長を促進する効果は低下する。このため、果菜類の栽培において、発芽した後、花芽が分化するまでは、執行法により生長を促進し、花芽が分化した後は、蛍光灯を用いて光を照射して生長を促進することにより、花芽が分化する前後の果菜類を効率的に生長させることができる。
【0016】
なお、執行法とは、発芽した植物に赤色光を照射する手順(以下、赤色光照射手順ともいう)と、発芽した植物に青色光を照射する手順(以下、青色光照射手順ともいう)を別個独立に行う植物の栽培方法であり、植物の生長を促進することができる。
【0017】
ここで、別個独立とは、赤色光照射手順と青色光照射手順が別々に存することを意味する。
【0018】
また、赤色光照射手順と青色光照射手順は、発芽した後、花芽が分化するまでに、それぞれ一回以上行えばよい。
【0019】
ここで、赤色光照射手順と青色光照射手順を別個独立に行う期間は、発芽した後、花芽が分化するまでの期間を含み、花芽が分化した後の期間も一部含んでいてもよい。
【0020】
赤色光照射手順と青色光照射手順を別個独立に行う期間は、花芽が分化する前後の果菜類を効率的に生長させることが可能であれば、任意に設定することができ、時間(h)を時間長の単位とするものであってよく、日(day)を時間長の単位とするものであってよく、分(min)を時間長の単位とするものであってよいが、3〜48時間であることが好ましい。
【0021】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、赤色光照射手順と青色光照射手順を別個独立に行う方法は、1Hz以上の周波数で赤色光と青色光を点滅照射する方法を含まない。
【0022】
赤色光照射手順と青色光照射手順は、交互に行ってもよく、両手順の間に、発芽した植物に赤色光及び青色光を同時に照射する手順、又は、発芽した植物に光を照射しない手順を挟んで行ってもよい。
【0023】
赤色光は、波長が600〜730nmの光を意味し、中心波長が645〜680nmであることが好ましい。
【0024】
青色光は、波長が400〜515nmの光を意味し、中心波長が450nmであることが好ましい。
【0025】
赤色光は、645〜680nmを中心波長として、所定の波長域を有していてよい。
【0026】
青色光は、450nmを中心波長として所定の波長域を有していてよい。
【0027】
波長域は、通常、±30nmであり、±20nmであることが好ましく、±10nmであることがさらに好ましい。
【0028】
赤色光及び青色光の光合成光量子束密度(Photosynthetic Photon Flux Density:PPFD)は、それぞれ、通常、1〜1000μmolm
−2s
−1であり、10〜500μmolm
−2s
−1であることが好ましく、50〜250μmolm
−2s
−1であることがさらに好ましい。
【0029】
赤色光及び青色光の光源としては、従来公知の光源を用いることができるが、波長の選択が容易で、有効波長域の光エネルギーの占める割合が大きい光を放射することから、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等の光半導体素子を用いることが好ましい。LEDとして、エレクトロルミネッセンス(EL)を用いる場合、ELは、有機ELであってもよいし、無機ELであってもよい。
【0030】
赤色光照射手順において、発芽した果菜類に照射する照射光は、赤色光を含んでいればよく、照射光に対する赤色光の光合成光量子束密度比(赤色光の発光強度比)が60%以上であれば、青色光等の赤色光以外の光をさらに含んでいてもよいが、赤色光の発光強度比が100%であることが好ましい。赤色光照射手順における赤色光の発光強度比が60%未満であると、花芽が分化するまでの果菜類の生長を促進する効果が低下する。
【0031】
このとき、赤色光照射手順における照射光に対する青色光の光合成光量子束密度比(青色光の発光強度比)は、通常、30%以下であり、20%以下であることが好ましく、0%であることがさらに好ましい。赤色光照射手順における青色光の発光強度比が30%を超えると、花芽が分化するまでの果菜類の生長を促進する効果が低下することがある。
【0032】
赤色光照射手順における照射光としては、例えば、赤色光、波長が720〜780nmの遠赤色光及び青色光の発光強度比が、それぞれ60%、20%及び20%である光を用いることができる。
【0033】
同様に、青色光照射手順において、発芽した果菜類に照射する照射光は、青色光を含んでいればよく、照射光に対する青色光の光合成光量子束密度比(青色光の発光強度比)が60%以上であれば、赤色光等の青色光以外の光をさらに含んでいてもよいが、青色光の発光強度比が100%であることが好ましい。青色光照射手順における青色光の発光強度比が60%未満であると、花芽が分化するまでの果菜類の生長を促進する効果が低下する。
【0034】
このとき、青色光照射手順における照射光に対する赤色光の光合成光量子束密度比(赤色光の発光強度比)は、通常、30%以下であり、20%以下であることが好ましく、0%であることがさらに好ましい。青色光照射手順における赤色光の発光強度比が30%を超えると、花芽が分化するまでの果菜類の生長を促進する効果が低下することがある。
【0035】
青色光照射手順における照射光としては、例えば、青色光、波長が720〜780nmの遠赤色光及び赤色光の発光強度比が、それぞれ60%、20%及び20%である光を用いることができる。
【0036】
花芽が分化した果菜類に、蛍光灯を用いて光を照射するが、これは、執行法による成長を促進する効果よりも、蛍光灯を用いて光を照射することによる生長を促進する効果が高くなるためである。
【0037】
なお、花芽が分化した果菜類に、蛍光灯を用いて光を照射する代わりに、赤色光と青色光を同時に照射してもよい。さらに、波長が515〜580nmの緑色光及び波長が720〜780nmの遠赤色光を加えることにより、蛍光灯を用いて光を照射する場合と同様に、花芽が分化する前後の果菜類を効率的に生長させることができる。
【0038】
このとき、赤色光の発光強度比は、通常、30〜80%であり、40〜60%であることが好ましく、50%であることがさらに好ましい。赤色光の発光強度比が30%未満である場合又は80%を超える場合は、花芽が分化した果菜類の生長を促進する効果が低下することがある。
【0039】
また、青色光の発光強度比は、通常、10〜60%であり、20〜50%であることが好ましく、30%であることがさらに好ましい。青色光の発光強度比が10%未満である場合又は60%を超える場合は、花芽が分化した果菜類の生長を促進する効果が低下することがある。
【0040】
照射光としては、例えば、赤色光、青色光、緑色光及び遠赤色光及びの発光強度比が、それぞれ50%、30%、10%及び10%である光を用いることができる。
【0041】
また、花芽が分化した果菜類に、蛍光灯を用いて光を照射する代わりに、太陽光を照射してもよい。これにより、蛍光灯を用いて光を照射する場合と同様に、花芽が分化する前後の果菜類を効率的に生長させることができる。蛍光灯を用いて光を照射すると、完全密閉型クリーンルーム内で果菜類を栽培することができる。このため、害虫の侵入等を抑制することができ、無農薬で栽培することができる。一方、エネルギー効率の点からは、太陽光を照射することが好ましい。このとき、太陽光を導入することが可能な密閉されたビニールハウス内で、花芽が分化した果菜類に、太陽光を照射することが好ましい。また、太陽光を照射することができない夜間は、花芽が分化した果菜類に、蛍光灯を用いて光を照射することが好ましい。
【0042】
また、花芽が分化した果菜類に、蛍光灯を用いて光を照射する代わりに、赤色光及び青色光を含む多色のLED光源を用いて光を照射してもよい。
【0043】
多色のLED光源としては、例えば、多種類のLEDを同時に点灯させて、波長が660nmの赤色光、波長が450nmの青色光、波長が525nmの緑色光、波長が730nmの遠赤色光、波長が410nmの紫色光等の光を照射することが可能な光源を用いることができる。
【0044】
また、花芽が分化した果菜類に、蛍光灯を用いて光を照射する代わりに、LEDと蛍光体を組み合わせた多色の光源を用いて光を照射してもよい。
【0045】
図1に、執行法に用いるランプの一例を示す。
【0046】
ランプ1には、赤色光の発光素子2及び青色光の発光素子3を線状又は面状に配置されている光照射部11が設けられており、電極41〜42又は43〜44への通電により、赤色光又は青色光を照射することができる。
【0047】
赤色光の発光素子2と青色光との発光素子3の個数比は、2:1〜5:1の範囲内であることが好ましい。これは、青色光の発光強度よりも赤色光の発光強度を高めた方が果菜類の成長速度は高まる傾向があるためである。
【0048】
図2に、赤色光の発光素子2(□)と青色光の発光素子3(■)の配置を示す。なお、
図2は、赤色光の発光素子2と青色光の発光素子3の個数比を2:1とした例である。
【0049】
ランプ1には、赤色光又は青色光の発光強度を独立に調整することが可能なランプコントローラを設けることが好ましい。これにより、ランプ1から照射される青色光と赤色光の発光強度比を、より植物の育成に適したものとすることができる。例えば、
図2において、赤色光の発光素子2と青色光の発光素子3の発光強度が同じ場合は、ランプ1の赤色光と青色光との発光強度比が2:1となる。ここで、ランプコントローラを用いて、青色光の発光素子3の発光強度を1/2とすれば、ランプ1の赤色光と青色光との発光強度比が4:1となる。
【0050】
ランプ1を用いると、執行法により、発芽した後、花芽が分化するまでの果菜類の生長を促進することができる。
【実施例】
【0051】
生育状態の観察対象として、果菜類としての、アラビドプシス(品種:コロンビア)の種子6粒を、育成ピートバンに等間隔に播種し、蛍光灯を用いて光を照射し(12時間日長)、発芽させた。このとき、播種してから発芽するまでに3日間を要した。
【0052】
発芽したアラビドプシスを、光源の異なる各々の人工気象器内に置き、49日間生育させた。このとき、人工気象器の環境は、光源以外は、全て同一とし、気温を25〜27℃、湿度を50%RHとした。
【0053】
(試験例1)
光源としては、中心波長が660nmの赤色LEDのHRP−350F(昭和電工製)、中心波長が450nmの青色LEDのGM2LR450G(昭和電工製)を1つの発光源に実装したランプを用いて、発芽したアラビドプシスを執行法により49日間生育させた。なお、ランプ内の赤色LEDの実装数を320個とし、青色LEDの実装数を160個とした。また、赤色LEDの光合成光量子束密度を200μmolm
−2s
−1とし、青色LEDの光合成光量子束密度を100μmolm
−2s
−1とした。さらに、赤色光照射手順と青色光照射手順を、各手順12時間で交互に連続して行った。
【0054】
(試験例2)
光源として、蛍光灯を用いて、光を連続して照射した以外は、試験例1と同様にして、発芽したアラビドプシスを生育させた。なお、蛍光灯の光合成光量子束密度を150μmolm
−2s
−1とした。
【0055】
(試験例3)
赤色光と青色光を同時に照射する手順と光を照射しない手順を、各手順12時間で交互に連続して行った以外は、試験例1と同様にして、発芽したアラビドプシスを生育させた。
【0056】
試験例1〜3のアラビドプシスの主花茎の長さ、さやの数、本葉の数、花芽が分化するまでの日数を調べた。
【0057】
表1に、主花茎の長さ、さやの数、本葉の数、花芽が分化するまでの日数の結果を示す。
【0058】
【表1】
表1から、執行法によりアラビドプシスの花芽分化が促進され、主花茎の長さ、さやの数が著しく増加する一方、本葉の数が低下することがわかる。
【0059】
(実施例1)
花芽が分化した後(30日後)に、執行法を停止し、光源として、蛍光灯を用いて、花芽が分化したアラビドプシスに光を10日間照射した以外は、試験例1と同様にして、アラビドプシスを栽培した。なお、蛍光灯の光合成光量子束密度を150μmolm
−2s
−1とした。
【0060】
(実施例2)
花芽が分化した後(30日後)に、執行法を停止し、花芽が分化したアラビドプシスをビニールハウス内に移し、10日間栽培した以外は、試験例1と同様にして、アラビドプシスを栽培した。このとき、日中は、花芽が分化したアラビドプシスに太陽光を照射し、日没後(午後7時から翌朝5時まで)は、蛍光灯を用いて、花芽が分化したアラビドプシスに光を照射した。なお、蛍光灯の光合成光量子束密度を150μmolm
−2s
−1とした。
【0061】
(実施例3)
花芽が分化した後(30日後)に、執行法を停止し、花芽が分化したアラビドプシスに赤色光と青色光を同時に10日間照射した以外は、試験例1と同様にして、アラビドプシスを栽培した。なお、花芽が分化した後(30日後)に、赤色LED及び青色LEDの光合成光量子束密度を、それぞれ75μmolm
−2s
−1とした。
【0062】
(比較例1)
栽培日数を40日間に変更した以外は、試験例2と同様にして、アラビドプシスを栽培した。
【0063】
(比較例2)
栽培日数を40日間に変更した以外は、試験例3と同様にして、アラビドプシスを栽培した。
【0064】
実施例1〜3、比較例1、2のアラビドプシスの地上部新鮮重を求めた。
【0065】
表2に、実施例1〜3、比較例1、2のアラビドプシスの地上部新鮮重の結果を示す。
【0066】
【表2】
表2から、実施例1〜3のアラビドプシスは、花芽が分化する前後に効率的に生長させることができ、早期に収穫できることがわかる。