特許第5723909号(P5723909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723909
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】両面プリンタ装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/36 20060101AFI20150507BHJP
   B41J 3/60 20060101ALI20150507BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20150507BHJP
   B41J 3/54 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   B41J2/36 C
   B41J3/60
   B41J2/01
   B41J3/54
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-42827(P2013-42827)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-168922(P2014-168922A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2013年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 洋之
【審査官】 名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−212687(JP,A)
【文献】 特開平6−316074(JP,A)
【文献】 特開2004−276264(JP,A)
【文献】 特開平9−123431(JP,A)
【文献】 特開2002−036528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/36
B41J 2/01−2/21
B41J 3/60
B41J 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された用紙の第1の面に対して印字を行なうインクジェット機構を用いた第1の印字部と、
第1の印字部の用紙搬送方向下流側に設けられ、前記用紙の第1の面の裏面側である第2の面に対して印字を行なうサーマル印字機構を用いた第2の印字部と、
前記第1の面のドット数を計測する印字ドット計測部の計測値によって、前記第2の印字部が前記用紙に対して熱量を加える際のサーマル印字機構の駆動条件を変更する熱量変更部と、
を有した両面プリンタ装置。
【請求項2】
前記熱量変更部は、前記第2の印字部におけるサーマル印字機構への通電時間を変える請求項1に記載の両面プリンタ装置。
【請求項3】
前記熱量変更部は、前記第1の面のドット数が所定の閾値以上である場合の前記サーマル印字機構への通電時間を、前記第1の面のドット数が所定の閾値未満である場合の前記サーマル印字機構への通電時間よりも増加させる請求項1に記載の両面プリンタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、用紙に印字をおこない発行する両面プリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レシート等の発行装置として用いられるプリンタ装置では、ロール状に巻回された用紙から引き出された長尺状の用紙に所定事項を印刷した後、所定長の長さの紙片に切断して排出を行っている。
【0003】
これらプリンタ装置は、用紙の使用量の削減を目的として、印字の表面と裏面の両方に印字を行う両面プリンタがあり、用紙の一方の面への印字機構としてインクジェット印字機構を用い、他方の面への印字機構としてサーマル印字機構を用いるプリンタが知られている。
【0004】
インクジェット印字機構は、用紙に液体であるインクを噴射し用紙に印字を行う。この為、用紙はインクを噴射されることで吸水する。この吸水量は印字の種類によって異なる。例えば写真を印字した場合と文字を印字した場合とでは用紙へのインクの噴射量が異なり、このインクの噴射量が多いほど用紙の吸水量は多くなる。
【0005】
サーマル印字機構は、インクジェット印字機構の用紙搬送方向下流側に設けられている為、インクジェット印字機構による印字の吸水量の影響を受ける事となり、インクジェット印字機構による印字種の影響で裏面のサーマル印字品質が低下する、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−251595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、印刷媒体の一方の面に行うインクジェットによる印字の影響を、他方の面に行うサーマルヘッドによる印字に及ぼさない両面プリンタ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、ロール状に巻回された用紙の第1の面に対して印字を行なうインクジェット機構を用いた第1の印字部と、第1の印字部の用紙搬送方向下流側に設けられ、用紙の第1の面の裏面側である第2の面に対して印字を行なうサーマル印字機構を用いた第2の印字部と、第1の印字部による印字の違いによって、第2の印字部が用紙に対して熱量を加える際のサーマル印字機構の駆動条件を変更する熱量変更部を両面プリンタ装置に設けた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る両面プリンタ装置の要部構成図。
図2】本実施形態に係る両面プリンタ装置の制御回路構成を説明するブロック図。
図3】本実施形態に係る両面プリンタ装置の熱量変更部のデータテーブル。
図4】本実施形態に係る両面プリンタ装置の印字の流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本実施形態に係る両面プリンタ装置を、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は第1の実施形態に係る両面プリンタ装置の要部を示す構成図である。なお、このプリンタでは、図の右側から左側に向けて用紙2が搬送されるので、以下の説明においては、図中右側を上流側、左側を下流側とする。
【0012】
また、切断後の用紙の先頭位置合わせ等により用紙は印字の際の搬送方向と逆に搬送される場合があるが、本実施形態における上流下流とは用紙に対して印字を行なう際の用紙の搬送方向で上流下流を定義する。
【0013】
図中符号2は巻軸3に巻回されたロール状の用紙であり、巻軸3はプリンタ1に回転自在に支持されている。また用紙2は第1の印字面4と、第1の印字面4と反対の面である第2の印字面5を有しており、第2の印字面5のみに加熱をすると発色する感熱層を有している。
【0014】
用紙2の下流側にはアイドラローラ6が回転自在に支持されている。アイドラローラ6の下流には、図示しないモータによって回転可能とされた第1プラテンローラ7と、この第1プラテンローラ7に対して用紙搬送路9を挟んでインクジェットヘッド8が対向配置されている。これら第1プラテンローラ7、インクジェットヘッド8にて第1印字部10を構成しており、第1印字部10において第1の印字面4に印字をおこなう。
【0015】
第1印字部10の下流には、図示しないモータによって回転可能とされた第2プラテンローラ11と、この第2プラテンローラ11に対して用紙搬送路9を挟んでサーマル印字ヘッド12が対向配置されている。これら第2プラテンローラ11、サーマル印字ヘッド12にて第2印字部13を構成しており、第2印字部13において第2の印字面5に印字をおこなう。
【0016】
第2印字部13の下流にはカッタ14が配置されている。カッタ14は、何れも図示しない固定刃と可動刃とを有しており、カッタ14に設けられている図示しないスリットに挿入されてきた用紙2を固定刃に向け可動刃を図示しないカッタモータの駆動によりスライド移動させることで切断する。
【0017】
ここでカッタ14は固定刃に向け可動刃がスライド移動するいわゆるスライド式カッタで説明したがこれに限定されるものではなく、固定刃に対し可動刃が回転することで用紙を切断するいわゆるロータリー式カッタであってもよい。
【0018】
カッタ14の下流には、図示しないモータによって回転可能とされたフィードローラ15と、このフィードローラ15に対して用紙搬送路9を挟んでアイドラローラ16が対向配置されている。またプリンタ1はフィードローラ15の下流側に用紙排出口17を有しており、印字が終了しカッタ14にて切断された用紙2は用紙排出口17よりプリンタ1の外部に排出される。
【0019】
またプリンタ1には表示部18が設けられており、プリンタ1のエラー状況を含めた各種状態を表示する。
【0020】
図2に、本実施形態に係る両面プリンタ装置の制御回路構成を説明するブロック図を示す。この制御部50は、用紙搬送、印字、用紙切断、用紙排出およびプリンタの状況表示の各制御をおこなう。
【0021】
制御部50は、ホストコンピュータ71との連係および各種の制御の実行をおこなう、例えば、マイクロコンピュータで構成されており、MPU51、ROM53およびRAM54を有している。
【0022】
またこのMPU51は、時間設定および時間制御をおこなう手段としてタイマ52を備えている。
【0023】
MPU51で実行する制御プログラムや制御または演算途上のデータ等を格納する主記憶手段としてROM53およびRAM54が設置されている。
【0024】
ROM53は制御プログラムやテーブル等を持つ読出し専用メモリであり、RAM54は演算途上のデータ等を格納する随時書込みメモリである。
【0025】
またROM53には、後述するデータテーブル80が保管されている。
【0026】
またRAM54には、ホストコンピュータ71からの印字データを、第1の印字面4に印字するデータと、第2の印字面5に印字するデータとを分けてそれぞれ保管する第1印字面データ保管部81と第2印字面データ保管部82とが設けられている。
【0027】
また、制御部50には、ホストコンピュータ71からの各種の入力データの取込みや、ホストコンピュータ51への制御部50の制御出力の取出しをおこなう入出力ユニット(I/O)55が設けられている。このI/O55は、MPU51、ROM53およびRAM54とをバスを通じて接続されている。
【0028】
また、I/O55には制御出力を取り出すための手段として、第1、第2、第3、第4および第5のドライバ56、57、58、59、60が接続されている。
【0029】
第1のドライバ56は第1印字部10へ必要な駆動出力を供給する。第2のドライバ57は第2印字部13へ必要な駆動出力を供給する。第3のドライバ58はカッタ14への駆動出力を供給する。第4のドライバ59はフィードローラ15への駆動出力を供給する。第5のドライバ60は表示部18に各種表示を行わせる表示駆動出力を供給する。
【0030】
第1プラテンローラ7は、MPU51の印字指令手段としての制御出力に基づき、図示しないモータにより印字動作と同期して回転駆動される。インクジェットヘッド8は、ホストコンピュータ71からの印字データに基づいてMPU51にて作成され第1印字面データ保管部81に保管されている第1の印字面印字用データに基づいて、用紙2の第1の印字面4に印字をおこなう。
【0031】
第2プラテンローラ11は、MPU51の印字指令手段としての制御出力の基づき、図示しないモータにより印字動作と同期して回転駆動される。サーマル印字ヘッド12は、ホストコンピュータ71からの印字データに基づいてMPU51にて作成され第2印字面データ保管部82に保管されている第2の印字面印字用データに基づいて、用紙2の第2の印字面5に印字をおこなう。
【0032】
またROM53には、図3に一例として示す、熱量変更部としてのデータテーブル80が保管されている。
【0033】
用紙に対し、インクジェットヘッド8による印字のドットが多いほど、用紙の吸水量は多くなるため、インクジェットヘッド8に対して用紙搬送方向下流側に設けられインクジェットヘッド8での印字の後に印字をおこなうサーマル印字ヘッド12での印字品質に影響が出る。より詳しく述べると、用紙の水分に熱を奪われてしまうため、サーマル印字ヘッド12による同じ通電時間でも、用紙の吸水量が多いほどサーマル感熱層部分の発色は少なくなる。
【0034】
しかしながら、吸水に影響を及ぼす印字ドット数を予め計測し、それに合わせて通電時間を長くすれば、サーマル印字ヘッド12による発熱が多くなるため、水分に奪われて少なくなる発色分を相殺しての印字が可能となる。
【0035】
以下に、プリンタ1の動作を、図4を用いて説明する。制御部50はROM53に記憶されているプログラムに従って用紙搬送ならびに印字動作をおこなう。
【0036】
ユーザは、まず、用紙2を引き出し、アイドラローラ6を経由後、その先端をインクジェットヘッド8と第1プラテンローラ7との間に位置するようにセットする。
【0037】
この状態で図2で示したホストコンピュータ71からの印字データを受信すると(S1)、制御部50はまずROM53に保管されている図示しないプログラムにて、ホストコンピュータ71からの印字データを第1印字面データと第2印字面データに分け(S2)、RAM54に設けてある第1印字面データ保管部81と第2印字面データ保管部82にそれぞれ保管する。またROM53には図示しない印字ドット計測部が設けられており、第1印字面データを解析し、第1の印字面4にて何ドットのインクの噴射が行われるかを計測する(S3)。
【0038】
なおROM53には、予め、第1印字部10の影響を受けない場合において、サーマル印字ヘッド12をどの程度の通電時間で駆動させればどの程度用紙2の第2の印字面5に設けられた感熱層が発色するかのデータから、基本通電時間を設定してある。通電時間の変更がなければ、サーマル印字ヘッド12はこの基本通電時間で駆動されてそれに伴って用紙の感熱層が発色する。
【0039】
次に制御部50は、ROM53に記憶されているプログラムにて、既に計算されている第1の印字面4にて何ドットのインクの噴射が行なわれるかの計算値を用い、第2の印字面5への印字を行なう際のサーマル印字ヘッド12の通電時間をどの様に変更するかをROM53内に設けてある熱量変更部にて決定する。
【0040】
まず初めに第1印字面全体のドットの数がAドット未満であるかを判断する(S4)。Aドット未満でない場合(S4のN)は、次に第1印字面全体のドットの数がAドット以上Bドット未満であるかを判断する(S5)。Aドット以上Bドット未満でない(S5のN)場合、第2の印字面5への印字を行なう際のサーマル印字ヘッド12の通電時間を今後全て基本通電時間の1.2倍にする指示がなされる。
【0041】
第1印字面全体のドットの数がAドット以上Bドット未満である(S5のY)場合、第2の印字面5への印字を行なう際のサーマル印字ヘッド12の通電時間を今後全て基本通電時間の1.1倍にする指示がなされる。
【0042】
第1印字面全体のドットの数がAドット未満である(S4のY)場合、第2の印字面5への印字を行なう際のサーマル印字ヘッド12の基本通電時間の変更指示はない。
【0043】
その後、制御部50のMPU51は、第1印字面データ保管部81に保管してある第1の印字面印字用データを第1印字部10に送り、第1プラテンローラ7を回転させ、インクジェットヘッド8との協働により第1の印字面4に印字を行う(S8)。
【0044】
その後、用紙2の第2の印字面5に第2印字部13にて印字が可能な位置に用紙2が到達したことを図示しない用紙センサが検知した時点で、制御部50のMPU51は第2印字面データ保管部82に保管してある第2の印字面印字用データを第2印字部13に送り、サーマル印字ヘッド12にて印字を行なう(S9)が、その際のサーマル印字ヘッド12の通電時間は前述の様に第1の印字面4のドット数によって変更する。
【0045】
第1印字部10による第1の印字面4への印字、第2印字部13による第2の印字面5への印字が完了すると、カッタ14は用紙2を切断し、その後フィードローラ15とアイドラローラ16の協働にて下流方向に搬送し用紙排出口17よりプリンタ1の外部に印字が完了した用紙2を排出する。
【0046】
その後、フィードローラ15、第2プラテンローラ11および第1プラテンローラ7を、印字時の回転方向と逆の回転方向に回転させ、次の印字開始位置まで用紙2を搬送させその後搬送を停止しホストコンピュータ71からの次の印字データの受信を待つ事となる。
【0047】
以上説明した様に、本実施形態では、第1の印字部による印字の違いによって第2の印字部からの用紙へ加える熱量を変更する事で、第1の印字部による印字の影響を受けなくする。なお印字の違いとは、実施形態で説明した単位面積でのインクの噴射量の違い、写真画像の出力と写真画像以外の出力の違い等である。
【0048】
なお、本実施形態において、基本通電時間を印字のドット数によって1.1倍や1.2倍としたが、これは一例であり、例えばサーマル印字ヘッドの各種特性、使用される用紙の種類、性質等からこの倍率をもっと大きくしたり小さくしても良い。
【0049】
また、本実施形態は、第1の印字面全体でのドット数を計算し通電時間を変更したが、これに限る必要はなく、例えばもっと狭い領域でのドット数での判断等でも何ら問題ない。また本実施形態ではドット数の範囲を3種類に分けて説明したが、3種類に限る必要はなく、2種類若しくは4種類以上であって何ら問題ない。
【0050】
また、本実施形態では第1の印字面のドット数を印字前に都度計測してサーマル印字ヘッド12の通電時間を変更したが、これに限る必要はない。例えば、第1の印字面に関しては写真画像を印刷する事が決定しており、この印刷物のドット数が予め把握できている場合は、基本通電時間に対してどの程度変えれば良いかを図示しない設定部にてオペレータが設定する事で、印字前に印字面のドット数を都度計測しなくても対応が可能となる。
【0051】
また通電時間の変更をおこなうのではなく、同時に発熱させる抵抗体の数を変更させることで加える熱量の変更をおこなってもよい。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更をおこなうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1:プリンタ
2:用紙
4:第1の印字面
5:第2の印字面
8:インクジェットヘッド
12:サーマル印字ヘッド
14:カッタ
80:データテーブル
図1
図2
図3
図4