特許第5723918号(P5723918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723918
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/04 20060101AFI20150507BHJP
   F04D 27/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   F24H3/04 305K
   F04D27/00 101N
【請求項の数】37
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-89752(P2013-89752)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-217638(P2013-217638A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2013年6月4日
(31)【優先権主張番号】1206019.0
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508032310
【氏名又は名称】ダイソン テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】レオ ユェン キー
(72)【発明者】
【氏名】リー ジュン ホン
(72)【発明者】
【氏名】タン イン ファン
(72)【発明者】
【氏名】アジンヤナ アイ マデ アルタ ヨーガ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ディヴィッド ウォレス
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−036897(JP,A)
【文献】 特開平06−086898(JP,A)
【文献】 特開2002−270336(JP,A)
【文献】 特開平04−325199(JP,A)
【文献】 実開平04−023959(JP,U)
【文献】 実開平05−073462(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/04
F04D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入口と、
少なくとも1つの空気出口と、
インペラ及び該インペラを回転させて前記空気入口を通して空気を引き込むためのモータと、
ユーザがユーザ選択可能値域から前記モータの回転速度を選択することを可能にするためのユーザインタフェースと、
少なくとも1つの正の温度係数(PTC)加熱要素を含む少なくとも1つの加熱器アセンブリと、
前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさを検出する電流検出手段と、
前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の特性に応じて、前記ユーザにより選択される前記回転速度とは独立して前記モータの該回転速度を制御するための制御手段と、を含み、
前記制御手段は、装置の第1の作動期間中に前記モータの前記回転速度を制御するための第1の作動モードと、装置の該第1の作動期間に続く第2の作動期間中に該モータの回転速度を制御するための第2の作動モードとを有し、前記第1の作動モードの終了時に前記モータの前記回転速度を前記ユーザ選択値に設定するとともに、前記第1の作動期間中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて前記モータの前記回転速度を制御するように構成される、
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリの起動時に前記第1の作動モードを開始するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の作動期間中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて、前記モータの前記回転速度を、該モータの該回転速度に関する非ユーザ選択可能値域のうちの1つに設定するように構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の作動期間中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて、前記モータの前記回転速度を、該モータの該回転速度に関する前記非ユーザ選択可能値域のうちの別の1つにその後に上昇させるように構成されることを特徴とする請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の作動期間中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが設定値を超える場合に、前記モータの前記回転速度を、該モータの該回転速度に関する前記非ユーザ選択可能値域内の最大値に維持するように構成されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記大きさの変化率に応じて、前記第1の作動モードから前記第2の作動モードに切り換えるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記大きさの変化率が設定値よりも小さい時に、前記第1の作動モードから前記第2の作動モードに切り換えるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記大きさに応じて、前記第1の作動モードから前記第2の作動モードに切り換えるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記大きさが電流上限値よりも大きい時に、前記第1の作動モードから前記第2の作動モードに切り換えるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記第2の作動モードの開始時に、前記モータの前記回転速度を前記ユーザ選択値に変更するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第2の作動期間中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて、前記モータの前記回転速度を前記ユーザ選択値から変化させるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第2の作動期間中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが電流上限値よりも大きい場合に、前記モータの前記回転速度を前記ユーザ選択値からより低い回転速度へ低下させるように構成されることを特徴とする請求項11に記載の加熱装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記モータの前記回転速度の低下に続いて、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが電流下限値よりも小さい場合に、該モータの該回転速度を前記ユーザ選択値に向けてその後に上昇させるように構成されることを特徴とする請求項12に記載の加熱装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記第2の作動期間中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが電流上限値よりも大きくかつ前記モータの前記回転速度が前記ユーザ選択可能値域内で最小値であるその両方の場合に、該少なくとも1つの加熱器アセンブリ及び該モータの両方の作動を終了するように構成されることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の加熱装置。
【請求項15】
装置へ供給される電圧の大きさを検出するための電圧検出手段を含み、
前記制御手段は、装置へ供給される前記電圧の前記検出された大きさが電圧下限値よりも小さくかつ前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが設定値よりも小さい場合に、前記第2の作動モードから第3の作動モードに切り換えるように構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記第3の作動モードにおいて、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて、前記モータの前記回転速度を、該モータの該回転速度に関する非ユーザ選択可能値域のうちの1つに設定するように構成されることを特徴とする請求項15に記載の加熱装置。
【請求項17】
前記制御手段は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが前記電流下限値を超えて上昇する場合に、前記第3の作動モードから前記第1の作動モードに切り換えるように構成されることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の加熱装置。
【請求項18】
前記モータの前記回転速度に関するユーザ選択可能値の数が、少なくとも5であることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項19】
前記モータの前記回転速度に関するユーザ選択可能値の数が、少なくとも8であることを特徴とする請求項18に記載の加熱装置。
【請求項20】
ファンヒーターの形態にあることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項21】
空気入口と、少なくとも1つの空気出口と、インペラと、該インペラを回転させて該空気入口を通して空気を引き込むためのモータと、ユーザがユーザ選択可能値域から該モータの回転速度を選択することを可能にするためのユーザインタフェースと、少なくとも1つの正の温度係数(PTC)加熱要素を含む少なくとも1つの加熱器アセンブリとを含む加熱装置を制御する方法であって、
少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさを検出する段階と、
前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の特性に応じて、モータの回転速度をユーザにより選択される回転速度とは独立して制御する段階と、を含み、
前記モータの前記回転速度は、前記装置の第1の作動期間中に第1の作動モードに従って、かつ該第1の作動期間に続く該装置の第2の作動期間中に第2の作動モードに従って制御され、該モータの該回転速度は、該第1の作動モードの終了時に前記ユーザ選択値に設定され、
前記第1の作動期間中に、前記モータの前記回転速度は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて設定されることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記第1の作動モードは、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリの起動時に開始されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の作動期間中に、前記モータの前記回転速度は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて、該モータの該回転速度に関する非ユーザ選択可能値域のうちの1つに設定されることを特徴とする請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の作動期間中に、前記モータの前記回転速度は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて、該モータの該回転速度に関する前記非ユーザ選択可能値域のうちの別の1つまでその後に上昇されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の作動期間中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが設定値を超える場合に、前記モータの前記回転速度は、該モータの該回転速度に関する前記非ユーザ選択可能値域内で最大値に保持されることを特徴とする請求項23又は請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の作動モードは、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記大きさの変化率に応じて終了されることを特徴とする請求項21から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の作動モードは、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記大きさの変化率が設定値よりも小さい時に終了されることを特徴とする請求項21から請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の作動モードは、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記大きさに応じて終了されることを特徴とする請求項21から請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の作動モードは、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記大きさが電流上限値よりも大きい時に終了されることを特徴とする請求項21から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の作動期間の開始時に、前記モータの前記回転速度は、前記ユーザ選択値に設定されることを特徴とする請求項21から請求項29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の作動期間中に、前記モータの前記回転速度は、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて前記ユーザ選択値から変更されることを特徴とする請求項21から請求項30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の作動期間中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが電流上限値よりも大きい場合に、前記モータの前記回転速度は、前記ユーザ選択値からより低い回転速度へ低減されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記モータの前記回転速度の低下に続いて、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが電流下限値よりも小さい場合に、該モータの該回転速度は、前記ユーザ選択値に向けてその後に上昇されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の作動期間中に、該少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが前記電流上限値よりも大きくかつ該モータの前記回転速度が前記ユーザ選択可能値域内で最小値であるその両方の場合に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリ及び前記モータの両方の作動が終了されることを特徴とする請求項32又は請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記モータの前記回転速度は、前記装置へ供給される電圧の大きさが電圧下限値よりも小さくかつ前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが設定値よりも小さい場合に、第3の作動モードに従って制御されることを特徴とする請求項21から請求項34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記第3の作動モードに従う前記モータの制御中に、前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさに応じて、該モータの前記回転速度は、該モータの該回転速度に関する非ユーザ選択可能値域のうちの1つに設定されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される前記電流の前記検出された大きさが前記電流下限値を超えて上昇する場合に、前記第3の作動モードは終了され、前記第1の作動モードは再び開始されることを特徴とする請求項35又は請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に関する。好ましい実施形態において、本発明は、部屋、オフィス、又は他の家庭環境において暖かい空気の流れを生成するファンヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の家庭用ファンは、典型的には、軸線の周りで回転するように装着された1組のブレード又はベーンと、ブレードの組を回転させて空気流を発生する作動装置とを含む。空気流の移動及び循環は、「風冷」又は微風を作り出し、結果として、ユーザは、熱が対流及び蒸発により消散するので冷却効果を体験する。
【0003】
そのようなファンは、様々な大きさ及び形状で利用可能である。例えば、天井ファンは、少なくとも直径1mにすることができ、通常、天井から吊り下げ方式で装着され、空気の下降流を提供して部屋を冷却する。他方、デスクファンは、多くの場合、直径約30cmで、通常、自立形及び携帯式である。床置タワーファンは、一般的に、高さ約1mで、かつ空気流を発生させる1つ又はそれよりも多くの組の回転ブレードを収容する細長い垂直に延びるケーシングを含む。首振り機構を使用して、空気流が部屋の広い領域にわたって掃引するようにタワーファンからの出口を回転させることができる。
【0004】
ファンヒーターは、一般的に、回転ブレードの背後又はその前のいずれかに配置されたいくつかの加熱要素を含み、回転ブレードにより発生される空気流をユーザが加熱することを可能にしている。一般的に、加熱要素は、熱放射コイル又はフィンの形態とされる。通常、可変サーモスタット、又はいくつかの所定の出力電力設定値が設けられ、ユーザがファンヒーターから放出される空気流の温度を制御することを可能にしている。
【0005】
このタイプの構成の欠点は、ファンヒーターの回転ブレードによって生成された空気流が、一般的に均一でないことである。これは、ファンヒーターのブレード面にわたるか又は外側に向いた面にわたる変動による。これらの変動の程度は、製品毎に異なり、また個々のファンヒーター毎に異なる可能性がある。これらの変動は、一連の空気のパルスとして感じられ、ユーザに対して不快である可能性がある乱流又は「不規則な」空気流の発生をもたらす。空気流の乱流から生じる更に別の欠点は、ファンヒーターの加熱効果が距離と共に急速に減少する可能性があることである。
【0006】
家庭環境では、空間上の制約により、電気器具は、できるだけ小型かつコンパクトであるのが望ましい。電気器具の部品が外向きに突出すること、又はユーザがブレードのようないずれかの可動部品に触れることができるのは望ましくない。ファンヒーターは、ブレード及び熱放射コイルをケージ又は開口付きケーシングに収容する傾向があり、収容により可動ブレード又は高熱放射コイルのいずれかとの接触によるユーザ損傷を防止するが、そのような封入部品は清掃が困難になる可能性がある。その結果、ファンヒーターの使用と使用の間にかなりの量のほこり又は他の廃棄物がケーシング内及び熱放射コイル上に堆積する可能性がある。コイルの外面の温度は、熱放射コイルが作動する時に、特に、コイルからの電力出力が比較的高い時に、700℃を超える値まで急速に上昇する可能性がある。その結果、ファンヒーターの使用と使用の間にコイルに積もったほこりの一部が燃焼する可能性があり、燃焼は、ある期間にわたってファンヒーターから不快な臭を放出する。
【0007】
WO 2012/017219は、ファンヒーターから空気を放出するケージ入りのブレードを使用しないファンヒーターを説明している。代わりに、ファンヒーターは、主空気流を基部内へ引き込むモータ作動インペラを収容する基部と、基部に連結されかつ主空気流がそこを通ってファンから放出される環状の口部を含む環状のノズルとを含む。ノズルは、ファンアセンブリの局所環境にある空気が、口部から放出される主空気流によりそこを通って引き込まれる中央の開口部を形成し、主空気流を増幅して空気の流れを生成する。空気の流れをファンヒーターから放出するブレード付きファンを使用することなく、比較的均一な空気の流れが発生可能であり、部屋内へ又はユーザへ向けて案内可能である。ノズル内に複数の加熱器が配置されて、主空気流をそれが口部から放出される前に加熱する。加熱器をノズルに収容することにより、ユーザは、加熱器の熱い外面から遮断される。
【0008】
各加熱器は、正の温度係数(PTC)セラミック材料から形成された加熱器要素の列を含む。加熱要素の列は、2つの熱放射構成要素の間に挟まれ、それらの各々は、フレーム内に配置された熱放射フィンのアレイを含む。フィンは、高い熱伝導率を有するアルミニウム又は他の材料から形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 2012/017219
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、空気入口、少なくとも1つの空気出口、インペラ、インペラを回転させて空気入口を通して空気を引き込むモータ、ユーザがユーザ選択可能値域からモータの回転速度を選択することを可能にするユーザインタフェース、少なくとも1つの正の温度係数(PTC)加熱要素を含む少なくとも1つの加熱器アセンブリ、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさを検出する電流検出手段、及びモータの回転速度をユーザにより選択される回転速度とは独立して少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の特性に応じて制御する制御手段を含む加熱装置を提供する。
【0011】
本発明者は、PTC加熱要素を含む加熱器アセンブリにより引き出される電力が、加熱器アセンブリを通る空気流の流量、従って、空気流を生成するインペラを回転させるモータの回転速度に応じて変化することに注目した。本発明は、加熱装置の1つ又はそれよりも多くの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさをモニタし又はそうでなければそれを検出することにより、かついずれのモータ速度又はユーザにより選択される空気流量設定値とも独立して検出された電流の大きさの特性に応じてモータの回転速度を制御することにより、加熱装置の電力消費の制御を提供する。これは、加熱装置の電力消費が制御されて、それが設定された電力定格範囲にあることを可能にする。
【0012】
少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の特性は、電流の大きさ、検出された大きさと所定値の間の差、及び電流の検出された大きさの変化率のうちの1つとすることができる。
【0013】
ユーザインタフェースは、モータの回転速度に関して、従って、少なくとも1つの空気出口から放出される空気の流量に関して予め規定されたいくつかの異なる設定値の1つをユーザが選択することを可能にする。加熱装置は、好ましくは、モータの回転速度に関する少なくとも5つの異なるユーザが選択可能な値、より好ましくは少なくとも8つの異なるユーザ選択可能値を含む。好ましい例では、ユーザインタフェースは10個の異なる速度設定値を有し、ユーザは、ユーザインタフェースを使用して、設定値「1」から設定値「10」のうちから選択する。モータは、好ましくは、DCモータの形態とされ、ユーザにより選択することができる回転速度の数を最大にする。ユーザインタフェースは、1つ又はそれよりも多くのボタン又はダイヤル、又はタッチセンサ式スクリーンを含むことができ、ユーザが望ましい速度設定値を選択することを可能にする。代替的に又は追加的に、ユーザインタフェースは、ユーザの選択速度設定値を表す信号を送る遠隔制御器を含むことができる。設定値1は、モータの回転速度の比較的低い値、例えば、4,000rpmから5,000rpmの範囲に対応することができるが、設定値10は、モータの回転速度の比較的高い値、例えば、6,000rpmから7,000rpmの範囲に対応することができる。従って、ユーザは、ユーザインタフェースを使用してモータの回転速度を間接的に設定することができ、ユーザは、モータの実際の回転速度には決して気付かず、より高い定格設定値を選択すれば装置から放出される流量が増加することが分るのみである。
【0014】
電流検出手段は、加熱器制御回路によって提供することができ、それは、好ましくは、プリント回路基板アセンブリの形態とされ、かつ供給電流感知回路を含む。加熱器制御回路はまた、少なくとも1つのPTC加熱要素を制御するトライアック回路、及び加熱装置に引き込まれる空気流の温度を検出するサーミスタを含む。
【0015】
制御手段は、好ましくは、個別のプリント回路基板アセンブリの形態とされた主制御回路によって提供することができる。主制御回路は、好ましくは、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサユニット、主電源のような電源から電力を受け取る電力供給ユニット、及び好ましくはブラシレスDCモータドライバであるモータを作動するモータドライバを含む。主制御回路は、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさを表す電流感知回路から信号を受け取り、それらの信号に従ってモータの回転速度を制御するように構成される。ユーザインタフェースは、好ましくは、同様に個別のプリント回路基板アセンブリの形態とされたユーザ選択速度設定値を表す信号を主制御回路へ信号を送るユーザインタフェース制御回路を含む。ユーザインタフェース制御回路はまた、ユーザにより選択された望ましい温度設定値を表す信号を主制御回路へ伝える。
【0016】
制御手段は、好ましくは、制御手段の第1の作動モード中にモータの回転速度ωをユーザ選択速度ωsとは独立して調整するように構成される。制御手段は、好ましくは、この第1の作動モードを少なくとも1つの加熱アセンブリの起動時に開始するように構成される。制御手段は、好ましくは、第1の作動モード中の終了時に、モータの回転速度をユーザにより選択された速度設定値に従って設定するように構成される。
【0017】
制御手段は、好ましくは、第1の作動期間中に、モータの回転速度を少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさに応じて制御するように構成される。少なくとも1つの加熱器アセンブリが作動された場合、この電流は、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される突入電流である。
【0018】
制御手段は、好ましくは、第1の作動期間中にモータの回転速度を少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさに応じてモータの回転速度に関する非ユーザ選択可能値域のうちの1つに設定するように構成される。この非ユーザ選択可能領域は、モータの回転速度に関するユーザ選択可能値域と重複してもしなくても良いが、好ましくは、ユーザにより選択することができるよりも低いモータの回転速度に関する値である。換言すれば、ユーザにより選択可能な回転速度ωsは、ω1からω2までの範囲、ここでω1<ω2であるのに対して、非ユーザ選択可能値域は、ω3からω4までの範囲、ここでω3<ω1及びω4<ω2である。1つの例では、ユーザにより選択可能な回転速度ωsは、4,800rpmから6,750rpmの範囲であるが、モータの回転速度の非ユーザ選択可能領域は、1,000rpmから4,800rpmの範囲である。別の例では、ユーザにより選択可能な回転速度ωsは、4,000rpmから6,000rpmの範囲であるが、モータの回転速度の非ユーザ選択可能領域は、1,000rpmから4,000rpmの範囲である。この領域は、供給電圧の大きさに応じて選択することができる。
【0019】
上述のように、第1の作動期間中に、モータの回転速度は、検出された突入電流に応じて設定される。制御手段は、検出電流が上昇する時に突入電流、好ましくは、モータの回転速度ωを非ユーザ選択可能値域から選択されたより高い値へ上昇させるように構成される。制御手段は、第1の作動期間中に少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさIが、制御手段のこの第1の作動モードに関して設定された上限値Imax1よりも大きい時に、モータの回転速度をモータの回転速度に関する非ユーザ選択可能値域内で最大値ω4に維持するように構成される。Imax1の値は、好ましくは、供給電圧に従って設定され、好ましくは、供給電圧に応じて5Aから8Aの範囲の値に設定することができる。
【0020】
制御手段は、好ましくは、第1の作動期間の終わりに、モータの回転速度がユーザ選択値に設定された場合に開始される第2の作動モードに切り換わるように構成される。制御手段は、好ましくは、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の変化率、及び少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさのうちの1つに応じて、第1の作動モードから第2の作動モードに切り換えるように構成される。
【0021】
制御手段は、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の変化率dI/dtが設定値よりも小さい場合、第1の作動モードから第2の作動モードに切り換えるように構成される。第1の作動モード中に、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさは、好ましくは、所定の間隔、例えば、0.5秒毎に検出され、連続的な電流検出と検出の間の少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさの変化が測定される。電流の大きさの変化が、連続的な所定数の測定にわたって設定値を下回れば、制御手段は、好ましくは、第1の作動モードから第2の作動モードに切り換わるように構成される。この設定値の大きさは、間隔に対して0.1Aから0.25Aの範囲とすることができ、連続的な測定の回数は10から25の範囲とすることができる。設定値の大きさ及び連続的な測定の回数は、供給電圧に応じて選択することができる。例えば、供給電圧が200Vよりも低い場合、制御手段は、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさの変化率が、0.5秒の間隔で行われる20回の連続的な測定にわたって0.2Aよりも大きくない場合、第1の作動モードから第2の作動モードへ切り換わるように構成することができる。別の例として、供給電圧が200Vより高い場合、制御手段は、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさの変化率が、0.5秒の間隔で行われる14回の連続的な測定にわたって、0.15Aよりも大きくない場合、第1の作動モードから第2の作動モードへ切り換わるように構成することができる。
【0022】
少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさの現在の変化率に関係なく、制御手段は、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさが電流上限値Imax2よりも大きく、Imax2>Imax1である場合、第1の作動モードから第2の作動モードに切り換えるように構成される。Imax2の値も、好ましくは供給電圧に応じて設定され、好ましくは、供給電圧に応じて8.9Aから13.1Aの範囲の値に設定される。
【0023】
制御手段は、好ましくは、第2の作動モード中に、モータの回転速度を少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさに応じて、好ましくは、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさに応じて、モータの回転速度をユーザ選択値から離れるように変更することによって調整するように構成される。少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさが電流上限値Imax2を超える場合、制御手段は、好ましくは、モータの回転速度をユーザ選択値からより低い回転速度へ低下させるように構成される。
【0024】
例えば、モータが、ユーザにより選択された6,150rpmに対応することができる速度設定値7に対応する速度で回転している場合、制御手段は、好ましくは、モータの回転速度をその速度からより低い速度、例えば、6,000rpmへ低下させるように構成される。モータの回転速度の低下は、好ましくは、現在のユーザ選択回転速度と第2に低いユーザ選択可能回転速度の値との間の差よりも小さい。上記例において、ユーザにより選択可能な速度設定値6に対応する回転速度は、5,925rpmである。少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさが、電流上限値よりも小さいように低下していない場合には、制御手段は、好ましくは、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさが低下して電流上限値よりも小さくなるまでモータの回転速度を継続して徐々に低下させる。制御手段によるモータの回転速度の低下量は、好ましくは、モータの各ユーザ選択可能回転速度に対して異なる。例えば、モータの回転速度の低下は、好ましくは、ユーザ選択回転速度が比較的高い場合には、比較的大きく、好ましくは、ユーザ選択回転速度が比較的低い場合には比較的小さい。
【0025】
少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさが電流上限値よりも大きく、かつユーザ選択可能値域内であり、モータの回転速度が最大値にあり、又はそれに達している場合、制御手段は、好ましくは、少なくとも1つの加熱器アセンブリ及びモータの両方の作動を停止するように構成することができる。ユーザインタフェースは、制御手段により作動することができ、エラーメッセージを表示し又はそうでなければユーザに装置がその状態にあることを示す。
【0026】
第2の作動期間中にモータの回転速度が低下した場合には、制御手段は、好ましくは、加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさが電流下限値Imin2へ低下し、Imin2<Imax2である場合に、モータの回転速度を上昇させてユーザ選択回転速度へ向けて戻すように構成される。Imin2の値も、好ましくは、供給電圧に応じて設定され、好ましくは、供給電圧に応じて8.5Aから12.7Aの範囲内で設定される。制御手段は、好ましくは、モータの回転速度を元のユーザ選択回転速度に向けて戻す場合には、モータの回転速度の先の徐々の低下を反対にするように構成される。
【0027】
装置は、好ましくは、供給電圧の大きさを検出する電圧検出手段を含み、制御手段は、装置へ供給される電圧の検出された大きさが電圧下限値よりも小さく、かつ少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさが設定値よりも小さい時に、第2の作動モードから第3の作動モードに切り換えるように構成される。この設定値は、好ましくは、第1の作動モード中にモニタされる設定値と同じである。
【0028】
制御手段は、好ましくは、第3の作動モード中に、モータの回転速度を少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさに応じてモータの回転速度に関する非ユーザ選択可能値域のうちの1つに設定するように構成される。この値域は、好ましくは、第1の作動モード中に制御手段がそこからモータの回転速度を設定する値域と同じである。少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさが上昇して設定値を超える時に、制御手段は、好ましくは、第3の作動モードから元の第1の作動モードに切り換えるように構成される。
【0029】
加熱装置は、好ましくは、携帯式ファンヒーターの形態とされるが、加熱装置は、固定式加熱装置、自動車加熱装置、又は空調システムの少なくとも一部を形成することができる。
【0030】
少なくとも1つの空気出口は、好ましくは、複数の空気出口を含むことができ、少なくとも1つの加熱器アセンブリは、好ましくは、各々が空気入口からそれぞれの空気出口へ通る空気を加熱する少なくとも1つの正の温度係数(PCT)加熱材料を含む複数の加熱器アセンブリを含むことができる。空気出口は、空気出口から放出される空気により空気がそこを通って引き込まれるボアの両側に配置することができる。
【0031】
第2の態様において、本発明は、空気入口、少なくとも1つの空気出口、インペラ、インペラを回転させて空気入口を通して空気を引き込むモータ、ユーザがユーザ選択可能値域からモータの回転速度を選択することを可能にするユーザインタフェース、及び少なくとも1つの正の温度係数(PTC)加熱要素を含む少なくとも1つの加熱器アセンブリを含む加熱装置を制御する方法を提供し、本方法は、少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさを検出する検出段階と、モータの回転速度をユーザにより選択される回転速度とは独立して少なくとも1つの加熱器アセンブリにより引き出される電流の特性に応じて制御する制御段階とを含む。
【0032】
本発明の第1の態様に関連して説明した上記特徴は、本発明の第2の態様にも同様に適用され、その反対も成り立つ。
【0033】
ここで、本発明の実施形態を添付の図面を参照して単に一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】加熱装置の上方から見た正面斜視図である。
図2】加熱装置の正面図である。
図3図2の線B−Bに沿った断面図である。
図4】加熱装置のノズルの分解組立図である。
図5】ノズルの加熱器シャーシの正面斜視図である。
図6】ノズルの内側ケーシング部分に連結された加熱器シャーシの下方から見た正面斜視図である。
図7図6に示す領域Xの拡大図である。
図8図1に示す領域Yの拡大図である。
図9図2の線A−Aに沿った断面図である。
図10図9に示す領域Zの拡大図である。
図11図9の線C−Cに沿ったノズルの断面図である。
図12】加熱装置の制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1及び2は、加熱装置10の外観図である。加熱装置10は、携帯式ファンヒーターの形態とされる。加熱装置10は、主空気流がそこを通って加熱装置10に入る空気入口14を含む本体12と、本体12上に装着された環状のケーシングの形態とされたノズル16とを含み、ノズルは、加熱装置10から主空気流を放出するための少なくとも1つの空気出口18を含む。
【0036】
本体12は、実質的に円筒形の下側本体部分22上に装着された実質的に円筒形の主本体部分20を含む。主本体部分20及び下側本体部分22は、好ましくは、実質的に同じ外径を有し、上側本体部分20の外面が下側本体部分22の外面と実質的に同一平面にある。この実施形態において、本体12は、高さが100mmから300mmの範囲で、直径が100mmから200mmの範囲である。
【0037】
主本体部分20は、主空気流がそこを通って加熱装置10に入る空気入口14を含む。この実施形態において、空気入口14は、主本体部分20に形成された開口のアレイを含む。代わりに、空気入口14は、主本体部分20に形成された窓内に装着された1つ又はそれよりも多くのグリル又はメッシュを含むことができる。主本体部分20は、その上端で開放され(図示のように)、主空気流が本体12から排出される空気出口23を提供する。
【0038】
主本体部分20は、下側本体部分22に対して傾くことができ、主空気流が加熱装置10から放出される方向を調節する。例えば、下側本体部分22の上面及び主本体部分20の下面には、主本体部分20の下側本体部分22からの持ち上げを防止しながら主本体部分20の下側本体部分22に対する移動を許す相互接続構造を含むことができる。例えば、下側本体部分22及び主本体部分20は、相互接続されたL字形部材を含むことができる。
【0039】
下側本体部分22は、加熱装置10のユーザインタフェースを含む。図12も参照すると、ユーザインタフェースは、ユーザが加熱装置10の様々な機能を制御することを可能にする複数のユーザ作動可能ボタン24、26、28、30と、ボタン間に配置されてユーザに例えば加熱装置10の温度設定値を視覚的に表示するディスプレイ32と、ボタン24、26、28、30及びディスプレイ32に接続したユーザインタフェース制御回路33とを含む。下側本体部分22はまた、遠隔制御器35(図12に概略的に示す)からの信号がそこを通って加熱装置10に入る窓34を含む。下側本体部分22は、加熱装置10がその上に配置された面と係合する基部36上に装着される。基部36は、好ましくは、200から300mmの範囲の直径を有する任意的な基部プレート38を含む。
【0040】
ノズル16は、環状形状を有し、中心軸Xの周りに延びて開口部40を形成する。加熱装置10から主空気流を放出するための空気出口18は、ノズル16の後方に向けて配置され、主空気流を開口部40を通してノズル16の前方に向けるように構成される。この例では、ノズル16は、その高さがその幅よりも大きな細長い開口部40を形成し、空気出口18は、開口部40の対向する細長い側上に配置される。この例では、開口部40の最大高さは300mmから400mmの範囲であるのに対して、開口部40の最大幅は100mmから200mmの範囲にある。
【0041】
ノズル16の内側の環状周囲は、空気出口18に隣接して配置されかつその上に空気出口18の少なくとも一部が配置されて加熱装置10から放出された空気を向けるコアンダ面42と、コアンダ面42の下流に配置されたディフューザ面44と、ディフューザ面44の下流に配置された案内面46とを含む。ディフューザ面44は、開口部38の中心軸Xから離れる時にテーパが付くように配置される。ディフューザ面44と開口部40の中心軸Xとの間で規定される角度は、5°から25°の範囲にあり、この例では約7°である。案内面46は、好ましくは、開口部38の中心軸Xに対して実質的に平行に配置され、口部40から放出される空気流に対して実質的に平坦かつ実質的に滑らかな面を提供する。視覚的にアピールするテーパ面48は、案内面46の下流に配置され、開口部40の中心軸Xに対して実質的に垂直に横たわる先端面50で終端する。テーパ面48と開口部40の中心軸Xとの間で規定される角度は、好ましくは、約45°である。
【0042】
図3は、本体12を通る断面図である。下側本体部分22は、ユーザインタフェース制御回路33に接続され全体が符号52で示される主制御回路を収容する。主制御回路52は、マイクロプロセッサ53を含み、これは、図12に概念的に示され、この例では、Renezasの8bitR8C/2Lマイクロコントローラである。ユーザインタフェース制御回路33は、遠隔制御器35から信号を受け取るセンサ54を含む。センサ54は、窓34の背後に配置される。ユーザインタフェース制御回路33は、ボタン24、26、28、30及び遠隔制御器35の作動に応答して、適切な信号を主制御回路52へ伝達して加熱装置10の様々な作動を制御するように構成される。ディスプレイ32は、下側本体部分22内に配置され、下側本体部分22の一部を照らすように構成される。下側本体部分22は、好ましくは、ディスプレイ32をユーザが見ることを可能にするように、透光性のプラスチック材料から形成される。
【0043】
下側本体部分22はまた、基部36に対して下側本体部分22を首振りさせる全体が符号56で示された機構を収容する。主制御回路52は、首振り機構を作動する首振りモータ制御回路57を含む。首振り機構56の作動は、遠隔制御器35からの適切な制御信号の受信又はボタン30の作動を受け取ると、主制御回路52により制御される。基部36に対する下側本体部分22の各首振り周期の範囲は、好ましくは、60°から120°であり、この実施形態では約80°である。この実施形態において、首振り機構56は、1分間当たり約3から5回の首振り周期を行うように構成される。電力を加熱装置10へ供給するための電源ケーブル58は、基部36に形成された開口を貫通して延びる。ケーブル58は、プラグ60に接続される。主制御回路52は、ケーブル58へ接続した電力供給ユニット61、及び供給電圧の大きさを検出する供給電圧感知回路62を含む。
【0044】
主本体部分20は、主空気流を空気入口14を通して本体12内へ引き込むインペラ64を収容する。好ましくは、インペラ64は、混成インペラの形態とされる。インペラ64は、モータ68から外向きに延びる回転軸66に連結される。この実施形態では、モータ68はDCブラシレスモータであり、その速度は、ユーザによるボタン26の操作及び/又は遠隔制御器35から受け取った信号に応答して、主制御回路52のDCモータ作動部69で可変である。
【0045】
ユーザインタフェースは、モータ68の回転速度に関して予め規定されたいくつかの異なる設定値の1つをユーザが選択することを可能にする。この例では、ユーザインタフェースは10個の異なる速度設定値を有し、ユーザは、遠隔制御器35又は本体12のボタン26を使用して設定値「1」から「10」を選択することができる。速度設定値がユーザにより変更されると、選択された速度設定値の数は、ディスプレイ32に表示することができる。ユーザにより選択可能な各速度設定値は、ユーザが選択可能なモータ68の回転速度に関する値域のぞれぞれの1つに対応する。ユーザ選択可能値域は、設定値「1」と一致する比較的低いモータ68のユーザ選択可能回転速度ω1から設定値「10」と一致する比較的高いモータ68のユーザ選択可能回転速度ω2まで上昇する。各速度設定値と一致するモータ68のユーザ選択回転速度ωsの大きさは、加熱装置10が接続される供給電圧に応じて変えることができる。供給電圧100Vに対して、ω1=4,000rpmかつω2=6,000rpmであり、一方、供給電圧120V、230V又は240Vに対して、ω1=4,800rpmかつω2=6,750rpmである。
【0046】
モータ68は、下側部分72に連結された上側部分70を含むモータバケットに収容される。モータバケットの上側部分70は、螺旋ブレードを有する静止ディスクの形態とされたディフューザ74を含む。モータバケットは、ほぼ載頭円錐形状のインペラハウジング76内に配置され、かつこの上に装着される。インペラハウジング76は、次に、基部12の主本体部分20内に配置されかつこれに連結された複数の角度的に離間した支持体77、この例では3つの支持体上に装着される。インペラ64及びインペラハウジング76は、インペラ64がインペラハウジング76の内面に近接するが、これに接触しないような形状を有する。実質的に環状の入口部材78は、インペラハウジング76の底部に連結され、主空気流をインペラハウジング76に案内する。
【0047】
可撓性の密封部材80が、インペラハウジング76上に装着される。可撓性密封部材は、空気がインペラハウジングの外面の周囲を流れて入口部材78内へ入るのを防止する。密封部材80は、好ましくはゴムで形成された環状のリップシールを含むことが好ましい。密封部材80は、電気ケーブル82をモータ68に案内するグロメットの形態とされた案内部分を更に含む。電気ケーブル82は、本体12の主本体部分20及び下側本体部分22に、並びにインペラハウジング76及びモータバケットに形成された開口を通って主制御回路52からモータ68に延びる。
【0048】
好ましくは、本体12は、本体12から放出されるノイズを低減する消音発泡体を含む。この実施形態において、本体12の主本体部分20は、空気入口14の下方に配置された第1の環状発泡部材84と、モータバケット内に配置された第2の環状発泡部材86とを含む。
【0049】
ここで図4から図11を参照して、ノズル16がより詳細に説明される。最初に図4を参照すると、ノズル16は、環状の内側ケーシング部分90に連結されかつその周りに延びる環状の外側ケーシング部分88を含む。これらの部分の各々は、複数の連結構成要素から形成することができるが、この実施形態において、ケーシング部分88、90の各々は、それぞれの単一の成形構成要素から形成される。内側ケーシング部分90は、ノズル16の中心開口部40を形成し、コアンダ面42、ディフューザ面44、案内面46、及びテーパ面48を形成する形状を有する外面92を有する。
【0050】
外側ケーシング部分88及び内側ケーシング部分90は、一緒に、ノズル16の環状の内部通路を形成する。図9及び図11に示すように、内部通路は、開口部40の周りに延びるので、開口部40のそれぞれの細長い側面に各々隣接する比較的直線の部分94a、94bと、直線部分94a、94bの上端を結合する上側湾曲部分94cと、直線部分94a、94bの下端を結合する下側湾曲部分94dとを含む。内部通路は、外側ケーシング部分88の内面96及び内側ケーシング部分90の内面98により境界付けられる。
【0051】
図1から図3にも示すように、外側ケーシング部分88は、基部12の主本体部分20の開放上端へかつこの上に連結された基部100を含む。外側ケーシング部分88の基部100は、基部12の空気出口23から主空気流がそこを通って内部通路の下側湾曲部分94dに入る空気入口102を含む。下側湾曲部分94d内で、主空気流は、2つの空気ストリームに分かれ、各々が内部通路の直線部分94a、94bのそれぞれの1つに流入する。
【0052】
ノズル16はまた、1対の加熱器アセンブリ104を含む。各加熱器アセンブリ104は、並んで配置された一列の加熱器要素106を含む。加熱器要素106は、好ましくは、正温度係数(PTC)セラミック材料から形成される。加熱器要素の列は、2つの熱放射構成要素108の間に挟まれ、その各々は、フレーム112内に配置された熱放射フィン110のアレイを含む。熱放射構成要素108は、好ましくは、高い熱伝導率(約200から400W/mK)を有するアルミニウム又は他の材料から形成され、シリコーン接着剤のビードを使用して又は留め機構により加熱器要素106の列に取り付けることができる。加熱器要素106の側面は、好ましくは、金属フィルムで少なくとも部分的に覆われ、加熱器要素106と熱放射構成要素108の間に電気接点を設けている。このフィルムは、スクリーン印刷又はスパッタアルミニウムから形成することができる。図3及び4に戻ると、加熱器アセンブリ104の両端に配置される電気端子114、116は、それぞれの熱放射構成要素108に各々接続される。各端子114は、電力を加熱器アセンブリ104へ供給するルームの上側部分118に接続されるが、各端子116は、ルームの下側部分120に接続される。ルームは、次に、基部12の主本体部分20に配置された加熱器制御回路122にワイヤ124により接続される。加熱器制御回路122は、主制御回路52から加熱器制御回路122へ供給される制御信号により制御される。
【0053】
図12は、制御回路33、52、122、ボタン24、26、28、30、及び遠隔制御器35を含む加熱装置10の制御システムを概略的に示している。制御回路33、52、122のうちの2つ又はそれよりも多くは、組み合わせることができ、単一の制御回路を形成する。加熱器制御回路122は、加熱器アセンブリ104の加熱器要素106を制御する2つのトライアック回路125を含む。加熱装置10に入る主空気流の温度を表示するサーミスタ126は、加熱器制御回路122に接続される。図3に示すように、サーミスタ126は、空気入口14のすぐ背後に配置することができる。加熱器制御回路122は、更に、加熱器アセンブリ104の加熱器要素106により引き出される電流の大きさを検出する供給電流感知回路77を含む。
【0054】
ユーザは、ユーザインタフェースのボタン28又は遠隔制御器35の対応するボタンの押圧により、望ましい室温又は温度設定値を設定することができる。ユーザインタフェース制御回路33は、ボタン28、又は遠隔制御器35の対応するボタンの操作に応答して、ディスプレイ32に表示される温度を変更するように構成される。この例では、ディスプレイ32は、ユーザにより選択された望ましい室温に対応することができる温度設定値を表示するように構成される。代わりに、ディスプレイ32は、ユーザにより選択されたいくつかの異なる設定値の1つを表示するように構成することができる。
【0055】
主制御回路52は、ユーザインタフェース制御回路33、首振り機構56、モータ68、及び加熱器制御回路122に制御信号を供給し、一方、加熱器制御回路122は、加熱器アセンブリ104に制御信号を供給する。加熱器制御回路122はまた、サーミスタ126により検出された温度を示す信号を主制御回路52へ供給する。加熱器アセンブリ104は、一般的な制御信号により同時に制御することができ、又はそれらは、それぞれの制御回路により制御することができる。
【0056】
加熱器アセンブリ104は、内部通路のそれぞれの直線部分94a、94b内にシャーシ128により各々保持される。シャーシ128は、図5により詳細に示されている。シャーシ128は、ほぼ環状の構造を有する。シャーシ128は、加熱器アセンブリ104がそこに挿入される1対の加熱器ハウジング130を含む。各加熱器ハウジング130は、外壁132及び内壁134を含む。内壁134は、加熱器ハウジング130の上端及び下端138、140で外壁132に連結され、加熱器ハウジング130はその前端及び後端が開放している。従って、壁132、134は、加熱器ハウジング130内に配置された加熱器アセンブリ104を通過する第1の空気流チャンネル136を形成する。
【0057】
加熱器ハウジング130は、シャーシ128の上側及び下側湾曲部分142、144により互いに連結される。各湾曲部分142、144はまた、内向きに湾曲したほぼU字形断面を有する。シャーシ128の湾曲部分142、144は、加熱器ハウジング130の内壁134に連結され、好ましくは、これと一体である。加熱器ハウジング130の内壁134は、前端146及び後端148を有する。図6から図9も参照すると、各内壁134の後端148も、隣接する外壁132から離れるように内向きに湾曲し、内壁134の後端148は、シャーシ128の湾曲部分142、144と実質的に連続している。
【0058】
ノズル16の組み立て中に、シャーシ128は、内側ケーシング部分90の後端の上に押し込まれ、シャーシ128の湾曲部分142、144及び加熱器ハウジング130の内壁134の後端148は、内側ケーシング部分90の後端150に包み込まれている。内側ケーシング部分90の内面98は、加熱器ハウジング130の内壁134と係合して内壁134を内側ケーシング部分90の内面98から離間させる第1の組の隆起スペーサ152を含む。内壁134の後端148はまた、内側ケーシング部分90の外面92と係合して外面92から内側ケーシング部分90の内壁134の後端を離間させる第2の組のスペーサ154を含む。
【0059】
従って、シャーシ128の加熱器ハウジング130の内壁134と内側ケーシング部分90とは、2つの第2の空気流チャンネル156を形成する。第2の流れチャンネル156の各々は、内側ケーシング部分90の内面98に沿って、かつ内側ケーシング部分90の後端150の周囲に延びる。各第2の流れチャンネル156は、加熱器ハウジング130の内壁134により、それぞれの第1の流れチャンネル136から分離される。各第2の流れチャンネル156は、内側ケーシング部分90の外面92と内壁134の後端148の間に配置された空気出口158で終端する。従って、各空気出口158は、組み立てられたノズル16の開口部40のそれぞれの側に配置されて垂直に延びるスロットの形態とされる。各空気出口158は、好ましくは、0.5から5mmの範囲の幅を有し、この例では、空気出口158の幅は約1mmである。
【0060】
シャーシ128は、内側ケーシング部分90の内面98に連結される。図5から図7を参照すると、加熱器ハウジング130の内壁134の各々は1対の開口160を含み、各開口160は、内壁134の上端及び下端のそれぞれの1つに又はこれに向けて配置される。シャーシ128が内側ケーシング部分90の後端の上に押し込まれると、加熱器ハウジング130の内壁134は、内側ケーシング部分90の内面98上に装着され、好ましくはこれと一体でその後開口160を通って突出する弾性キャッチ162の上を滑る。次に、内側ケーシング部分90に対するシャーシ128の位置は調節可能であり、内壁134がキャッチ162により把持される。内側ケーシング部分90の内面98上に装着され、好ましくは同じくこれと一体の停止部材164も、内側ケーシング部分90上にシャーシ128を保持するように機能することができる。
【0061】
シャーシ128が内側ケーシング部分90に連結された状態で、加熱器アセンブリ104は、シャーシ128の加熱器ハウジング130及び加熱器アセンブリ104に連結されたルーム内に挿入される。勿論、加熱器アセンブリ104は、内側ケーシング部分90へのシャーシ128の連結前に、シャーシ128の加熱器ハウジング130に挿入することができる。図9に示すように、ノズル16の内側ケーシング部分90は、次に、ノズル16の外側ケーシング部分88に挿入され、外側ケーシング部分88の前端166が、内側ケーシング部分90の前方に配置されたスロット168に入る。外側及び内側ケーシング部分88、90は、スロット168に注入された接着剤を使用して互いに連結することができる。
【0062】
外側ケーシング部分88は、該外側ケーシング部分88の内面96の一部が、シャーシ128の加熱器ハウジング130の外壁132の周囲に延びて、実質的にこれと平行な形状とされる。加熱器ハウジング130の外壁132は、前端170及び後端172と、外壁132の外面上に配置されて外壁132の端部170、172間を延びる1組のリブ174とを有する。リブ174は、外側ケーシング部分88の内面96と係合し、外壁132を外側ケーシング部分88の内面96から離間させるように構成される。従って、シャーシ128の加熱器ハウジング130の外壁132及び外側ケーシング部分88は、2つの第3の空気流チャンネル176を形成する。第3の流れチャンネル176の各々は、外側ケーシング部分88の内面96に隣接して配置され、かつこれに沿って延びる。各第3の流れチャンネル176は、加熱器ハウジング130の外壁132により、それぞれの第1の流れチャンネル136から分離される。各第3の流れチャンネル176は、加熱器ハウジング130の外壁132の後端172と外側ケーシング部分88との間で、内部通路内に配置された空気出口178で終端する。各空気出口178も、ノズル16の内部通路内に配置されて垂直に延びるスロットの形態であり、好ましくは、5mmから5mmの範囲の幅を有する。この例では、空気出口178の幅は、約1mmである。
【0063】
外側ケーシング部分88は、加熱器ハウジング130の内壁134の後端148の一部の周囲で内向きに湾曲する形状を有する。内壁134の後端148は、内壁134に対して第2の組のスペーサ154とは反対側に配置された第3の組のスペーサ182を備え、これらは、外側ケーシング部分88の内面96と係合して、内壁134の後端を外側ケーシング部分88の内面96から離間させるように配置される。従って、外側ケーシング部分88及び内壁134の後端148は、更に別の2つの空気出口184を形成する。各空気出口184は、空気出口158のそれぞれの1つに隣接して配置され、各空気出口158は、それぞれの空気出口184と内側ケーシング部分90の外面92の間に配置される。空気出口158と同様に、各空気出口184は、組み立てられたノズル16の開口部40のそれぞれの側に配置され、垂直に延びるスロットの形態とされる。空気出口184は、好ましくは、空気出口158と同じ長さを有する。各空気出口184は、0.5mmから5mmの範囲の幅を有し、この例では、空気出口184の幅は、約2mmから3mmである。従って、加熱装置10から主空気流を放出する空気出口18は、2つの空気出口158及び2つの空気出口184を含む。
【0064】
図3及び4に戻ると、ノズル16は、好ましくは、2つの湾曲した密封部材186、188を含み、その各々は、外側ケーシング部分88と内側ケーシング部分90の間にシールを形成し、ノズル16の内部通路の湾曲部分94c、94dから実質的に空気の漏れがないようにしている。各密封部材186、188は、内部通路の湾曲部分94c、94d内に配置された2つのフランジ190、192間に挟まれている。フランジ190は、内側ケーシング部分90上に装着され、好ましくはこれと一体であるのに対して、フランジ192は、外側ケーシング部分88上に装着され、好ましくはこれと一体である。ノズル16は、空気流が内部通路の上側湾曲部分94cから漏れるのを防止する代わりに、空気流がこの湾曲部分94cに入るのを防止するように構成することができる。例えば、内部通路の直線部分94a、94bの上端は、組み立て中に内側及び外側ケーシング部分88、90間に挿入されるシャーシ128により又は挿入部分によって遮断することができる。
【0065】
加熱装置10を作動させるために、ユーザは、ユーザインタフェースのボタン24を押圧するか又は遠隔制御器35の対応するボタンを押圧して、ユーザインタフェース回路33のセンサが受け取った信号を送り出す。ユーザインタフェース回路33は、この作用を主制御回路52へ伝える。主制御回路52は、ユーザがユーザインタフェースを使用して設定し、ユーザインタフェース制御回路33から提供される温度Tsをサーミスタ126により検出され加熱器制御回路122によって提供される加熱装置10内の又はこれを通過する空気の温度Taと比較する。Ta<Tsの場合、主制御回路52は、加熱器制御回路122に指示して加熱器アセンブリ04を作動する。
【0066】
主制御回路52は、モータ68を作動してインペラ64を回転させ、入口14を通して空気流を引き込む。加熱器アセンブリ104が作動された場合、ユーザが選択した速度設定値と一致するモータ68の回転速度に対応するユーザ選択速度ωsでは、主制御回路52は、モータ68を直ちに回転させない。代わりに、主制御回路52は、加熱器アセンブリ104が作動された時に開始し、ユーザ選択速度ωsに設定されたモータ68の回転速度により終了する第1の作動モードに従って最初に制御される。
【0067】
第1の作動期間の開始時に、主制御回路52は、加熱器アセンブリ104により引き出される電流Iの検出された大きさに応じてモータ68の回転速度を制御し、電流は、供給電流検出回路127により検出され、加熱器制御回路122により主制御回路52へ伝えられる。この電流は、加熱器アセンブリ104の作動中に加熱器アセンブリ104により引き出される突入電流である。引き出される電流の検出された大きさに応じて、主制御回路52は、モータ68の回転速度をモータ68に関する非ユーザ選択可能値域のうちの1つに設定する。この非ユーザ選択可能な範囲は、望ましい速度設定値に従って選択されるモータ68に関するユーザ選択可能な値域とは異なる。換言すれば、ユーザ選択可能回転速度ωsはω1からω2までの範囲、ここでω1<ω2であるのに対して、非ユーザ選択可能値域はω3からω4までの範囲、ここでω3<ω4、ω3<ω1、及びω4<ω2である。この例では、ω3=1,000rpmであるが、ω4は供給電圧に応じて選択され、例えば、供給電圧100Vに対してω4=4,000rpmであり、供給電圧120V、230V、又は240Vに対してω4=4,800rpmである。上述のように、第1の作動期間の開始時に主制御回路52で設定する回転速度の大きさは、加熱器アセンブリ104により引き出される突入電流の大きさに依存する。突入電流が比較的低い場合、主制御回路は、モータ68の回転速度を非ユーザ選択可能値域と比べて比較的低い値に設定するが、突入電流が比較的高い場合、主制御回路は、モータ68の回転速度を非ユーザ選択可能値域と比べて比較的高い値に設定する。検出された突入電流が設定値Imax1よりも大きい場合、主制御回路52は、モータ68の回転速度を非ユーザ選択可能値域内で最高の回転速度ω3に設定する。ここでも、Imax1の値は、供給電圧に従って設定され、この例では、供給電圧240Vに対してImax1=5.4Aであり、一方、供給電圧100Vに対してImax1=7.5A、供給電圧120Vに対してImax1=7.8A、かつ供給電圧230Vに対してImax1=5.5Aである。
【0068】
回転するインペラ64により加熱装置10内に引き込まれる主空気流は、インペラハウジング76及び主本体部分20の開放した上端を連続的に通り、ノズル16の内部通路の下側湾曲部分94dに入る。主空気流は、ノズル16の内部通路の下側湾曲部分94d内で2つの空気ストリームに分けられ、それらは、ノズル16の開口部40の周囲を反対方向に通過する。空気ストリームの一方は、開口部40の一方の側部に配置された内部通路の直線部分94aに入るのに対して、他方の空気ストリームは、開口部40の他方の側部に配置された内部通路の直線部分94bに入る。空気ストリームは、直線部分94a、94bを通過する時に、ノズル16の空気出口18に向けて約90°向きを変える。空気ストリームを直線部分94a、94bの長さに沿って均等に空気出口18に向けるために、ノズル16は、直線部分94a、94b内に配置され、固定の複数の案内ベーンを含むことができ、その各々は、空気ストリームの一部を空気出口18に向ける。案内ベーンは、好ましくは、内側ケーシング部分90の内面98と一体である。案内ベーンは、好ましくは、湾曲しており、空気流が空気出口18に向けられる時に空気流に速度の大きな損失がないようになっている。案内ベーンは、各直線部分94a、94bの内部で、好ましくは、実質的に垂直に整列し、かつ均等に離間して案内ベーン間に複数の通路を形成し、空気は、この通路を通して空気出口18へ比較的均等に向けられる。
【0069】
空気ストリームが空気出口18に向けて流れる時に、主空気流の第1の部分は、シャーシ128の壁132、134間に配置された第1の空気流チャンネル136に入る。内部通路内で主空気流を2つの空気ストリームに分けるおかげで、各第1の空気流チャンネル136は、それぞれの空気ストリームの第1の部分を受け入れると考えることができる。主空気流の各第1の部分は、それぞれの加熱アセンブリ104を通過する。作動された加熱アセンブリにより発生する熱は、対流により主空気流の第1の部分へ伝達され、主空気流の第1の部分の温度を上昇させる。
【0070】
主空気流の第2の部分は、加熱器ハウジング130の内壁134の前端146により第1の空気流チャンネル136から離れるようにそらされ、主空気流のこの第2の部分は、内側ケーシング部分90と加熱器ハウジング130の内壁の間に配置された第2の空気流チャンネル156に入る。ここでも、内部通路内で主空気流を2つの空気ストリームに分けることにより、各第2の空気流チャンネル156は、それぞれの空気ストリームの第2の部分を受け入れると考えることができる。主空気流の各第2の部分は、内側ケーシング部分90の内面92に沿って通過し、それによって比較的熱い空気流と内側ケーシング部分90の間の熱障壁として作用する。第2の空気流チャンネル156は、内側ケーシング部分90の後壁150の周囲に延びるように構成され、こうして空気流の第2の部分の流れ方向を反対にし、空気流が、空気出口158を通って加熱装置10の前方に及び開口部40を通して放出される。空気出口158は、主空気流の第2の部分をノズル16の内側ケーシング部分90の外面92の上に向けるように構成される。
【0071】
主空気流の第3の部分も、第1の空気流チャンネル136から離れるようにそらされる。主空気流のこの第3の部分は、加熱器ハウジング130の外壁132の前端170の近くを流れ、該主空気流の第3の部分は、外側ケーシング部分88と加熱器ハウジング130の外壁132の間に配置された第3の空気流チャンネル176に入る。ここでも、各第3の空気流チャンネル176は、主空気流を内部通路内で2つの空気ストリームに分けることにより、それぞれの空気ストリームの第3の部分を受け入れると考えることができる。主空気流の各第3の部分は、外側ケーシング部分88の内面96に沿って通過し、それによって比較的熱い主空気流と外側ケーシング部分88の間の熱障壁として作用する。第3の空気流チャンネル176は、主空気流の第3の部分を内部通路内に配置された空気出口178に運ぶように構成される。主空気流の第3の部分は、空気出口178から放出されると、主空気流の第1の部分と合流する。主空気流のこれらの合流部分は、外側ケーシング部分88の内面96と加熱器ハウジングの内壁134の間の空気出口184まで運ばれるので、主空気流のこれらの部分の流れ方向も、内部通路内で反対になる。空気出口184は、主空気流の比較的熱い合流した第1及び第3の部分を空気出口158から放出される主空気流の比較的冷たい第2の部分の上に向けるように構成され、第2の部分は、内側ケーシング部分90の外面92と空気出口184から放出される比較的高温の空気の間の熱障壁として作用する。その結果、ノズル16の内面及び外面の大部分は、加熱装置10から放出された比較的熱い空気から遮蔽される。これは、加熱装置10の使用中に、ノズル16の外面を70℃よりも低い温度に維持することを可能にする。
【0072】
空気出口18から放出された主空気流は、ノズル16のコアンダ面42の上を通過し、外部環境から、特に、空気出口18の周囲の領域から及びノズルの後方の周囲からの空気の取り込みによって2次空気流を発生させる。この2次空気流は、ノズル16の開口部40を通過し、ここで2次空気流は主空気流と結合し、空気出口18から放出された主空気流よりも温度は低いが外部環境から取り込んだ空気よりも温度が高い加熱装置10から前方に放出される空気流全体を生成する。その結果、暖かい空気の流れが加熱装置10から放出される。
【0073】
主制御回路52は、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の検出された大きさをモニタし続ける。加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさは、0.5秒間隔でモニタされる。空気が、加熱器アセンブリ104の加熱要素106の上を流れる時に、加熱器アセンブリ104により引き出される電流は、突入電流から上昇する傾向がある。突入電流の検出された大きさがImax1よりも低い場合、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の検出された大きさがImax1に向けて上昇する時に、主制御回路52は、モータ68の回転速度をω4に向けて、すなわち、依然としてモータ68の回転速度に関する非ユーザ選択可能値域で上昇させる。主制御回路52のこの第1の作動モード中に、ユーザが選択したいずれの速度設定値も主制御回路52により格納されるが、それに対して作用はされていない。
【0074】
第1の作動期間中に、主制御回路は、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の大きさ、及び加熱器アセンブリ104により引き出される電流の大きさの変化率の両方をモニタする。主制御回路52のこの第1の作動モード、従って、第1の作動期間は、2つの条件の1つが満たされた時に終了する。
【0075】
第1の条件は、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の大きさの変化率が低下して設定値Aよりも小さくなることである。上述のように、加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさは、0.5秒毎に検出される。主制御回路は、加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさの変化を引き出された電流の連続的な検出と検出の間に測定する。換言すれば、主制御回路52は、第1及び第2の引き出された電流検出と検出の間に加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさの変化、第2及び第3の引き出された電流検出と検出の間に加熱器アセンブリにより引き出される電流の大きさの変化、以下同様を検出する。加熱器アセンブリ104により引き出される電流の大きさの変化が、連続的な測定の所定回数に関する設定値を下回れば、第1の条件は満たされる。設定値の大きさ及び連続的な測定の回数は、供給電圧に応じて選択される。例えば、供給電圧が100V又は120Vである場合、設定値は0.2Aであり、連続的な測定の所定回数は20であるが、供給電圧が230V又は240Vである場合、設定値は0.15Aであり、連続的な測定の所定回数は14である。
【0076】
第2の条件は、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の大きさが、加熱装置の定格電流である電流上限値Imax2よりも大きく、かつImax2>Imax1であることである。Imax2の値も、供給電圧に応じて設定される。例えば、供給電圧240Vに対してImax2は8.9Aに、供給電圧100Vに対してImax2は12.6Aに、供給電圧120Vに対してImax2は13.1Aに、供給電圧230Vに対してImax2は9.1Aに設定される。
【0077】
第1の条件及び第2の条件のいずれかが満たされると、第1の作動期間は終了し、主制御回路52は、モータ68の回転速度をユーザが選択した値に設定する。主制御回路52は、第2の作動モードに切り換え、そこでは、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の大きさは継続してモニタされる。この第2の作動期間中に、連続的な電流検出間の持続時間は、第1の作動期間での連続的な電流検出間の持続時間よりも長く、第1の作動期間中の0.5秒に対して、好ましくは、10秒に設定される。
【0078】
第2の作動期間中に、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の大きさが上昇して電流上限値Imax2よりも大きくなった場合、主制御回路52は、モータの回転速度をユーザ選択値から低下させ、加熱器アセンブリ104を通る空気の流量を低下させ、潜在的に加熱装置10により引き出される電力を低下させる。モータの速度の低下は、現在のユーザ選択値と第2に低いユーザ選択可能値域との間の差よりも小さい。例えば、この例では回転速度6,150rpmに対応するユーザが選択した速度設定値「7」に対応する速度でモータが回転している時に、主制御回路52は、モータ68の回転速度を150rpmだけ下げて6,000rpmとするように構成される。これは、速度設定値6(5,529rpm)に対応する回転速度よりも高い。検出電流が電流上限値Imax2よりも小さくなるように低下しない場合には、主制御回路52は、モータ68の回転速度を更に150rpmだけ低下させる。モータの回転速度のこの低下は、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の検出された大きさが電流上限値max2より低くなるまで継続される。
【0079】
両方の条件が満たされ、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の大きさが電流上限値よりも大きく、しかもモータ68の回転速度が、ユーザ選択可能な値域内、上記例では4,800rpmを超える値内で最小値ω1である場合、主制御回路52は、加熱器アセンブリ104及びモータ68の両方の作動を終了し、ユーザインタフェース制御回路33へ指令を発して、ディスプレイ32上にエラーメッセージを表示する。
【0080】
他方、モータ68の回転速度のそのような低下に追随して、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の大きさが減少して電流下限値Imin2よりも小さく、Imin2<Imax2である場合、主制御回路52は、モータの回転速度を元のユーザ選択値に向けて上昇させて加熱器アセンブリ104を通る空気流量を上昇させ、それによって加熱装置10により引き出される電力を潜在的に上昇させる。上述のモータ68の回転速度の徐々に起こる低下は、反対になる。上記例では、ユーザが設定値7を選択し、モータ68の回転速度が既に5,700rpmまで低下していれば、主制御回路52は、最初に、モータ68の回転速度を5,850rpmまで上昇させる。加熱器アセンブリ104により引き出される電流の検出された大きさが電流下限値Imin2よりも小さいままの場合、主制御回路52は、その後、モータ68の回転速度を更に150rpmだけ上昇させる。加熱器アセンブリ104により引き出される電流の検出された大きさが電流下限値Imin2よりも小さいままであるという条件の下で、この徐々に起こるモータ68の回転速度の上昇は、モータ68の回転速度がユーザ選択値に戻るまで続く。Imin2の値も、供給電圧に従って選択される。例えば、Imin2は、供給電圧240Vに対して8.5Aに、供給電圧100Vに対して12.2Aに、供給電圧120Vに対して12.7Aに、供給電圧230Vに対して8.7に設定される。
【0081】
上述のように、主制御回路52は、加熱装置10への供給電圧の大きさを検出する供給電圧感知回路62を含む。供給電圧の大きさが電圧下限値よりも小さく、しかも加熱器アセンブリにより引き出される電流の検出された大きさが第1の作動モード中にモニタされる設定値よりも小さい場合、主制御回路52は、第2の作動モードを終了し、第3の作動モードに入る。ここでも、電圧下限値は、供給電圧に応じて設定され、供給電圧220V又は240Vに対して180Vに、又は供給電圧100V又は120Vに対して90Vに設定される。この第3のモードでは、主制御回路52は、加熱器アセンブリ104により引き出される電流の検出された大きさに応じて、モータの回転速度をモータ68の回転速度に関する非ユーザ選択可能値域のうちの1つに設定するように構成される。アセンブリ104により引き出される電流の検出された大きさが上昇して元の設定値を超える場合、主制御回路52は、切り換わりその第1の作動モードに戻る。
【0082】
外界空気の温度が上昇する時に、入口14を通じて加熱装置10内へ引き込まれる主空気流の温度Taも上昇する。この主空気流を表す信号は、サーミスタ126から加熱器制御回路122へ出力される。TaがTsを1℃超えると、加熱器制御回路122は、加熱器アセンブリ104を停止させ、主制御回路52は、モータ68の回転速度を1,000rpmに低下させる。主空気流の温度が低下してTsを約1℃下回ると、加熱器制御回路122は、加熱器アセンブリ104を再作動し、主制御回路52は、第1の作動モードを再開させる。これは、加熱装置10が配置された室内又は他の環境での温度を比較的一定に維持することを可能にすることができる。
【符号の説明】
【0083】
10 加熱装置
12 本体
14 空気入口
16 ノズル
18 空気出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12