(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723932
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ボイラ内足場の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04G 3/30 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
E04G3/30 301L
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-156577(P2013-156577)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25327(P2015-25327A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2013年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】金子 有吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 健志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 勇作
【審査官】
南澤 弘明
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−127548(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラのボイラ本体内にボイラ内足場を構築する、ボイラ内足場の構築方法であり、前記ボイラ本体の下部に構築されたボイラホッパ上に下部作業床を構築し、次いで、前記下部作業床上に吊り下げ式昇降足場を構築し、次いで、前記ボイラ本体の上部側壁の開口から前記ボイラ本体内に垂下したストランドに前記吊り下げ式昇降足場を固定し、かくして、前記ストランドを前記ボイラ本体外に設置したジャッキ本体により間欠的に引き上げあるいは引き下げて、前記吊り下げ式昇降足場を間欠的に昇降可能とする、ボイラ内足場の構築方法において、
前記吊り下げ式昇降足場を前記ジャッキ本体により前記ボイラ本体の水管ノーズ部の直下まで吊り上げ、次いで、前記下部作業床と前記吊り下げ式昇降足場との間に下部足場を構築し、前記下部足場の構築と同時に、前記吊り下げ式昇降足場上に上部足場を構築することを特徴とする、ボイラ内足場の構築方法。
【請求項2】
前記下部足場と前記上部足場の少なくとも一方は、ラック付きマストと、前記ラックに噛み合うピニオンと、前記ピニオンを回転させる駆動手段とからなる昇降装置により構築することを特徴とする、請求項1に記載の、ボイラ内足場の構築方法。
【請求項3】
前記下部足場の構築終了後、前記下部足場と前記吊り下げ式昇降足場とを連結することを特徴とする、請求項1または2に記載の、ボイラ内足場の構築方法。
【請求項4】
前記ストランドの巻取装置を設けたことを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の、ボイラ内足場の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボイラ内足場の構築方法、特に、ボイラの保守点検等のためにボイラ本体内に構築するボイラ内足場の工期を短縮することができる、ボイラ内足場の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電所に設置されている大型ボイラの炉壁やバーナー火格子等の保守点検等は、ボイラ本体内に足場を構築することにより行われている。
【0003】
このボイラ内足場の構築法の一例が、特許文献1に開示されている。以下、このボイラ内足場の構築法を従来足場構築法1といい、図面を参照しながら説明する。
【0004】
図13は、従来足場構築法1によりボイラ本体内に構築されたボイラ内足場を示す概略斜視図、
図14(A)から(H)は、従来足場構築法1を示す工程図であり、(A)は、最上段の足場を構築した図、(B)は、最上段の足場の支柱とジャッキ本体の昇降部材とを連結した図、(C)は、ジャッキ本体の昇降部材を上昇させて最上段の足場を上昇させた図、(D)は、最上段の足場の支柱に別の支柱を連結し、最上段の足場より一段下の足場を構築した図、(E)は、最上段の足場の支柱とジャッキ本体の昇降部材との連結を解除した図、(F)は、ジャッキ本体の昇降部材を基の位置に下降させ、最上段の足場の支柱と連結した図、(G)は、ジャッキ本体の昇降部材を上昇させて、最上段の足場と一段下の足場とを上昇させた図、(H)は、一段下の足場の支柱にさらに別の支柱を連結した図である。なお、
図14は、
図13のX部の拡大図である。
【0005】
図13において、21は、ボイラ内足場であり、ボイラ本体22の底部のボイラホッパ23内に構築された下部作業床24上に、ボイラ本体22の高さ方向に沿って間隔をあけて上下多段に設置されている。各足場21には、手摺25が取り付けられ、上下段の足場21間は、支柱26により連結されていると共に、階段27により作業員が上下段の足場21間を自由に行き来できるようになっている。
【0006】
従来足場構築法1によりボイラ内足場21を構築するには、先ず、
図14(A)に示すように、ボイラホッパ23内に構築された下部作業床24に最上段の足場21aを支柱26aと共に構築する。作業床24には、昇降部材29を備えたジャッキ本体28が支柱26a毎に設置され、全てのジャッキ本体28の昇降部材29は、同時に昇降するようになっている。
【0007】
次いで、同図(B)に示すように、最上段の足場21aの支柱26aと昇降部材29とを連結部材30により連結する。次いで、同図(C)に示すように、昇降部材29を上昇させて最上段の足場21aを支柱26aと共に上昇させる。次いで、同図(D)に示すように、上昇させた最上段の足場21aの支柱26aに別の支柱26bを連結し、最上段の足場21aの下方部に別の足場21bを構築する。次いで、同図(E)に示すように、最上段の足場21aの支柱26aと昇降部材29との連結を解除する。次いで、同図(F)に示すように、昇降部材29を元の位置に下降させた後、最上段の足場21aの支柱26aと昇降部材29とを連結部材30により連結する。次いで、同図(G)に示すように、昇降部材29を再度、上昇させて、足場21aと足場21bとを支柱26a、26bと共に上昇させる。次いで、同図(H)に示すように、足場21bの支柱26bにさらに別の支柱26cを連結し、足場21bの下方部にさらに別の足場21cを構築する。
【0008】
以下、上記工程を繰り返し行うことによって、ボイラ本体22内に、ボイラ内足場21を上下多段に構築することができる。
【0009】
上述の従来足場構築法1によれば、ボイラ内足場を確実に構築することはできるが、足場21を上下多段に設置する必要があるので、ボイラ内足場の構築に長い工期を要するという問題があった。
【0010】
ボイラ内足場の工期を短縮する目的で、ボイラ内足場をボイラ本体内にジャッキ装置により昇降可能に吊り下げる足場構築法がある(特許文献2参照)。ジャッキ装置は、上端部がボイラ本体の頂部のボイラ鉄骨に固定され、ボイラ本体内に垂下されるストランドと、ストランドに沿って足場を間欠的に昇降させるジャッキ本体とからなっている。以下、この足場構築法を従来足場構築法2という。
【0011】
従来足場構築法2によれば、足場を上下多段に設置する必要がないので、ボイラ内足場の工期を短縮することはできるが、ボイラの構造によっては、ストランドをボイラ本体の頂部から吊り下げられない場合がある。例えば、ボイラ本体内の上部にボイラ水管が張り出して配されている場合である(
図1参照)。
【0012】
また、
図15に示すように、ボイラ本体22内の上部には、水管ノーズ部31がボイラ本体22内に突出して形成されている場合がある。水管ノーズ部31が形成されていると、上述した従来足場構築法1では、水管ノーズ部31の直下までしか足場21を構築することができない。
【0013】
そこで、水管ノーズ部31より上方部のボイラ本体22内に設置されている過熱器32等の保守点検用足場は、
図15に示すように、例えば、従来足場構築法1により下部作業床24上に下部足場33を、水管ノーズ部31の直下まで構築した後、下部足場33上に中間作業床34を構築し、そして、中間作業床34上に上部足場35を構築することにより行っていた。
【0014】
しかしながら、この方法では、下部作業床24を構築した後、中間作業床34を構築してからでないと上部足場35を構築することができないので、ボイラ内足場の工期に長期間を要していた。
【0015】
そこで、この問題を解決すべくなされた、ボイラ内足場の別の構築法の一例が、特許文献3に開示されている。以下、このボイラ内足場の構築法を従来足場構築法3といい、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図16は、従来足場構築法3により上部足場が構築されたボイラ本体を示す概略断面図である。
【0017】
図16において、36は、水平梁である。水平梁36は、ボイラ本体22の外側で構築され、ボイラ本体22の側壁に形成された開口22aからボイラ本体22内に張り出し可能に構成されている。水平梁36上に上部足場35が構築される。
【0018】
従来足場構築法3により上部足場35を構築するには、水平梁36をボイラ本体22の外側で構築し、次いで、水平梁36をボイラ本体22の側壁に形成された開口22aからボイラ本体22内に張り出し、そして、水平梁36上に上部足場35を構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特公昭63−122863号公報
【特許文献2】特開2012−52305号公報
【特許文献3】特開2011−80668号公報
【特許文献4】特許第2828430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従来足場構築法3によれば、上部足場35の構築作業が中間作業床34より下のレベルの足場を構築しなくても行えるので、上部足場35の工期を短縮することができるが、炉内足場全体の工期については、以下のような問題があった。
【0021】
従来足場構築法3により、水平梁36上に上部足場35を構築している間は、工具や構築部材等が落下する危険性があるので、上部足場35の構築が他の作業と独立して行えるとはいっても、実際は、上部足場35を構築している間は、下部足場33の構築や下部足場33によるボイラの保守点検作業は行えない。
【0022】
中間作業床34を従来足場構築法3のように、水平梁36をボイラ本体22内に水平に張り出し、その上に足場板を設置することも提案されているが、この場合も同様に、中間作業床34の構築中は、中間作業床34より下方の作業は行えないので、ボイラ内足場全体の工期短縮にはならない。また、中間作業床34あるいは水平梁36の構築作業は、下方に何もない梁の上での高所作業となるので、下部作業床24のような全面床上で組み立てる場合に比べて作業効率が大きく低下し、しかも、組み立てに日数を要する。さらに、水平梁36の張り出し用の開口22aおよび水平梁36の張り出し装置をボイラの耐圧部やその近傍の炉壁に複数、設ける必要があるので、特に、既設ボイラの場合には、設備の改造に時間と手間がかかる。
【0023】
従って、この発明の目的は、ボイラの構造上、ストランドをボイラ本体の頂部からボイラ本体内に垂下できない場合であっても、ボイラ本体の側壁に形成した開口からストランドをボイラ本体内に垂下させることによって、吊り下げ式昇降足場をボイラ本体内に確実に構築することができる。ボイラ内足場の構築方法を提供することにある。
【0024】
また、この発明の他の目的は、水管ノーズ部が形成されているボイラにおいて、水管ノーズ部より下方の下部足場と、水管ノーズ部の直下より上方の上部足場との同時構築を容易かつ安全に行うことができるようにすることによって、ボイラ内足場全体としての工期を短縮することができる、ボイラ内足場の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0026】
請求項1に記載の発明は、ボイラのボイラ本体内にボイラ内足場を構築する、ボイラ内足場の構築方法
であり、前記ボイラ本体の下部に構築されたボイラホッパ上に下部作業床を構築し、次いで、前記下部作業床上に吊り下げ式昇降足場を構築し、次いで、前記ボイラ本体の上部側壁の開口から前記ボイラ本体内に垂下したストランドに前記吊り下げ式昇降足場を固定し、かくして、前記ストランドを前記ボイラ本体外に設置したジャッキ本体により間欠的に引き上げあるいは引き下げて、前記吊り下げ式昇降足場を間欠的に昇降可能とする、
ボイラ内足場の構築方法において、前記吊り下げ式昇降足場を前記ジャッキ本体により前記ボイラ本体の水管ノーズ部の直下まで吊り上げ、次いで、前記下部作業床と前記吊り下げ式昇降足場との間に下部足場を構築し、前記下部足場の構築と同時に、前記吊り下げ式昇降足場上に上部足場を構築することに特徴を有するものである。
【0027】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記下部足場と前記上部足場の少なくとも一方は、ラック付きマストと、前記ラックに噛み合うピニオンと、前記ピニオンを回転させる駆動手段とからなる昇降装置により構築することに特徴を有するものである。
【0028】
請求項3に記載の発明は、請求項
1または2に記載の発明において、
前記下部足場の構築終了後、前記下部足場と前記吊り下げ式昇降足場とを連結することに特徴を有するものである。
【0029】
請求項4に記載の発明は、請求項
1から3の何れか1つに記載の発明において、
前記ストランドの巻取装置を設けたことに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、吊り下げ式昇降足場を吊り下げるストランドを、ボイラ本体の側壁に形成された開口からボイラ本体内に垂下することによって、ボイラの構造上、ストランドをボイラ本体の頂部から吊り下げられない場合であっても、吊り下げ式昇降足場をボイラ本体内に確実に構築することができるので、ボイラ内足場の工期を短縮することができる。
【0032】
また、この発明によれば、下部作業床上に吊り下げ式昇降足場を構築し、吊り下げ式昇降足場を水管ノーズ部の直下まで上昇させ、この後、下部作業床上に下部足場を構築すると同時に、吊り下げ式昇降足場上に上部足場を構築することによって、ボイラ内足場を安全に構築することができ、しかも、工期を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】この発明によりボイラ本体内に構築された吊り下げ式昇降足場を示す断面図である。
【
図5】この発明によりボイラ本体内に構築された下部足場および上部足場を示す断面図である。
【
図6】ボイラホッパ内に構築された下部作業床を示す断面図である。
【
図7】ボイラ本体に設置したジャッキ本体とストランドを示す断面図である。
【
図8】ストランドに固定した吊り下げ式昇降足場を示す断面図である。
【
図9】ジャッキ本体により水管ノーズ部の直下まで上昇させた吊り下げ式昇降足場を示す断面図である。
【
図10】下部作業床上に構築中の下部足場と、吊り下げ式昇降足場上に構築中の上部足場とを示す断面図である。
【
図13】従来足場構築法1によりボイラ本体内に構築されたボイラ内足場を示す概略斜視図である。
【
図14(A)】従来足場構築法1を示す工程図のうち、最上段の足場を構築した図である。
【
図14(B)】従来足場構築法1を示す工程図のうち、最上段の足場の支柱とジャッキ本体の昇降部材とを連結した図である。
【
図14(C)】従来足場構築法1を示す工程図のうち、ジャッキ本体の昇降部材を上昇させて最上段の足場を上昇させた図である。
【
図14(D)】従来足場構築法1を示す工程図のうち、最上段の足場の支柱に別の支柱を連結し、最上段の足場より一段下の足場を構築した図である。
【
図14(E)】従来足場構築法1を示す工程図のうち、最上段の足場の支柱とジャッキ本体の昇降部材との連結を解除した図である。
【
図14(F)】従来足場構築法1を示す工程図のうち、ジャッキ本体の昇降部材を基の位置に下降させ、最上段の足場の支柱と連結した図である。
【
図14(G)】従来足場構築法1を示す工程図のうち、ジャッキ本体の昇降部材を上昇させて、最上段の足場と一段下の足場とを上昇させた図である。
【
図14(H)】従来足場構築法1を示す工程図のうち、一段下の足場の支柱にさらに別の支柱を連結した図である。
【
図15】水管ノーズ部が形成されたボイラ本体を示す断面図である。
【
図16】従来足場構築法3により上部足場が構築されたボイラ本体を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の、ボイラ内足場の構築方法の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1は、この発明によりボイラ本体内に構築された、ボイラ内足場としての吊り下げ式昇降足場を示す断面図、
図2は、
図1のA−A線断面図、
図3は、
図1のB部拡大図、
図4は、ジャッキ本体を示す拡大図である。
【0036】
図1から
図4において、1は、ボイラ本体、2は、ボイラ本体1内に、後述するジャッキ装置により昇降可能に設置された、ボイラ内足場としての吊り下げ式昇降足場、3は、吊り下げ式昇降足場2を昇降させるジャッキ装置、4は、ボイラ本体1内の上部に張り出して配されたボイラ水管である。
【0037】
ジャッキ装置3は、ボイラ本体1の上部側壁に形成された開口5の外側に設置されたジャッキ本体6(
図4参照)と、ジャッキ本体6により間欠的に引き上げあるいは引き下げられるストランド7とからなっている。ストランド7は、若干内側に傾斜したジャッキ本体6から開口5部分に設けられた複数個のガイドローラ8によりほぼ垂直にガイドされて、ジャッキ本体6内に垂下され、下端が吊り下げ式昇降足場2に固定されている。
【0038】
なお、ストランド7は、ボイラ本体1外に設置された巻取装置(図示せず)により巻き取り、あるいは、巻き戻されるので、ジャッキ装置3の設置スペースが限られていてもストランド7の巻き取り、あるいは、巻き戻しは容易に行える。
【0039】
このように、ストランド7をボイラ本体1の開口5からガイドローラ8を介してジャッキ本体6内に垂下させることによって、例えば、ボイラ本体1内の上部にボイラ水管4が張り出して配され、これにより、ストランド7をボイラ本体1の頂部から吊り下げられない場合であっても、ストランド7により吊り下げ式昇降足場2を確実に吊り下げることができる。
【0040】
ジャッキ装置3としては、例えば、特許文献4に開示されたセンターホール式ジャッキ装置を使用する。このジャッキ装置の概略は、以下の通りである。
【0041】
重量物を吊り下げたストランドの把持と開放が可能な一対のグリップを有し、一方のグリップによりストランドを把持した後、一方のグリップをジャッキにより引き上げて重量物をジャッキの1ストローク分、吊り上げる。次いで、他方のグリップによりストランドを把持した後、一方のグリップの把持を開放する。そして、他方のグリップをジャッキにより引き上げて重量物をジャッキの1ストローク分、吊り上げる。この操作を繰り返し行って重量物を間欠的に吊り上げる。重量物を吊り下ろす場合は、この逆の操作を行う。
【0042】
この発明により、ボイラ内足場としての吊り下げ式昇降足場2を構築するには、先ず、ボイラ本体1の下部に構築されたボイラホッパ9上に下部作業床10を構築する(
図6参照)。
【0043】
次いで、下部作業床10上に吊り下げ式昇降足場2を構築する(
図8参照)。
【0044】
次いで、ボイラ本体1の上部側壁の開口5の外側にジャッキ本体6を設置し、ジャッキ本体6を通してボイラ本体1内に垂下したストランド7に吊り下げ式昇降足場2を固定する。
【0045】
かくして、ストランド7をジャッキ本体6により間欠的に引き上げあるいは引き下げて、吊り下げ式昇降足場2を間欠的に昇降可能とする。
【0046】
このように、ストランド7をボイラ本体1の開口5からガイドローラ8を介してジャッキ本体6内に垂下させることによって、例えば、ボイラ本体1内の上部にボイラ水管4が張り出して配され、これにより、ストランド7をボイラ本体1の頂部から吊り下げられない場合であっても、吊り下げ式昇降足場2を確実に構築することができる。
【0047】
なお、大型ボイラには、防爆用の強固なバックステイがあるので、このバックステイにジャッキ本体6を設置すれば、容易に反力を受けることができる。
【0048】
次に、水管ノーズ部が形成されているボイラにおいて、水管ノーズ部より下方の下部足場と、水管ノーズ部の直下より上方の上部足場との同時構築を容易かつ安全に行うことができるようにすることによって、ボイラ内足場の工期を短縮することができる、ボイラ内足場の構築方法を、
図5から
図12を参照しながら説明する。
【0049】
図5から
図12において、11は、ボイラ本体1の上部に、ボイラ本体1の内側に突出して形成された水管ノーズ部、12は、下部作業床10上に構築された下部足場、13は、吊り下げ式昇降足場2上に構築した上部足場である。
【0050】
下部足場12は、下部足場本体14と昇降手段15とから構成されている。昇降手段15は、下部作業床10上に設置した複数本のラック(図示せず)付きマスト16と、前記ラックに噛み合うピニオン(図示せず)と、前記ピニオンを回転させる駆動手段17(
図11参照)とから構成されている。下部足場本体14は、駆動手段17により前記ピニオンを回転させることによって、マスト16に沿って昇降する。
【0051】
次に、この発明による、ボイラ内足場としての下部足場と上部足場の同時構築方法について説明する。
【0052】
先ず、
図6に示すように、ボイラホッパ9の上部に下部作業床10を構築する。
【0053】
次いで、
図7に示すように、ジャッキ装置3を設置した後、
図8に示すように、下部作業床10上に吊り下げ式昇降足場2を構築する。すなわち、ボイラ本体1の開口5の外側にジャッキ本体6を設置し、ストランド7をジャッキ本体6に挿通する。なお、ジャッキ装置3と吊り下げ式昇降足場2の構築順序は、逆あるいは同時でも良い。
【0054】
次いで、
図9に示すように、ジャッキ本体6によりストランド7を引き上げて、吊り下げ式昇降足場2を水管ノーズ部11の直下まで吊り上げる。
【0055】
次いで、
図10に示すように、下部作業床10上にラック付きマスト16を設置し、マスト16に駆動手段を17と共に下部足場本体14を取り付けて下部足場12を組み立てる。そして、マスト16を順次、継ぎ足して行きながら下部足場本体14を上昇させて行く。この操作を繰り返し行って、下部足場12を吊り下げ式昇降足場2と下部作業床10との間のボイラ本体1内に構築する(
図5参照)。
【0056】
そして、下部足場12の構築と同時に、吊り下げ式昇降足場2上に上部足場13を構築する。上部足場13としては、
図12に示すように、単管を組み立てて構築する単管足場であっても良いし、上述した下部足場12と同様な足場であっても良い。
【0057】
なお、吊り下げ式昇降足場2と下部足場12の構築終了後、吊り下げ式昇降足場2と下部足場12のマスト16とを連結すれば(
図5参照)、これらの剛性が飛躍的に向上するので、安全性と耐震性が向上する。さらに、互いの作業床の強度を補完することができるので、その分、部材の最小化を図ることができる。
【0058】
上述したように、この発明によれば、吊り下げ式昇降足場2を吊り下げるストランド7を、ボイラ本体1の側壁に形成された開口5からボイラ本1体内に垂下することによって、ボイラの構造上、ストランド7をボイラ本体1の頂部から吊り下げられない場合であっても、吊り下げ式昇降足場2をボイラ本体1内に確実に構築することができるので、ボイラ内足場の工期を短縮することができる。
【0059】
また、この発明によれば、下部作業床10上に吊り下げ式昇降足場2を構築し、吊り下げ式昇降足場2を水管ノーズ部11の直下まで吊り上げ、この後、下部作業床10上に下部足場12を構築すると同時に、吊り下げ式昇降足場2上に上部足場13を構築することによって、ボイラ内足場を安全に構築することができ、しかも、工期を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:ボイラ本体
2:吊り下げ式昇降足場
3:ジャッキ装置
4:ボイラ水管
5:開口
6:ジャッキ本体
7:ストランド
8:ガイドローラ
9:ボイラホッパ
10:下部作業床
11:水管ノーズ部
12:下部足場
13:上部足場
14:下部足場本体
15:昇降手段
16:マスト
17:駆動手段
21:ボイラ内足場
22:ボイラ本体
23:ボイラホッパ
24:下部作業床
25:手摺
26:支柱
27:階段
28:ジャッキ本体
29:昇降部材
30:連結部材
31:水管ノーズ部
32:過熱器
33:下部足場
34:中間作業床
35:上部足場
36:水平梁