特許第5723945号(P5723945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5723945疑似テレセントリック結像レンズの歪調整
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723945
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】疑似テレセントリック結像レンズの歪調整
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20150507BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20150507BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01L21/30 515D
   G03F7/20 521
   G02B13/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-197058(P2013-197058)
(22)【出願日】2013年9月24日
(62)【分割の表示】特願2009-509612(P2009-509612)の分割
【原出願日】2007年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-30044(P2014-30044A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2013年10月24日
(31)【優先権主張番号】60/746,566
(32)【優先日】2006年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ イー ウェッブ
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−321459(JP,A)
【文献】 特開2004−172316(JP,A)
【文献】 国際公開第99/036949(WO,A1)
【文献】 特開2004−022708(JP,A)
【文献】 特開2002−015987(JP,A)
【文献】 特開平06−349703(JP,A)
【文献】 特開平03−088317(JP,A)
【文献】 特開2002−244034(JP,A)
【文献】 特開2005−189850(JP,A)
【文献】 特開平10−048517(JP,A)
【文献】 特開平09−283434(JP,A)
【文献】 特開平11−224853(JP,A)
【文献】 特開平09−082599(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/069055(WO,A2)
【文献】 特開平07−084357(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/023935(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G02B 13/00
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学結像システムにおいて、
疑似テレセントリックレンズシステムであって、物平面から発する主光線が近軸光線及び、前記物平面から発せられたときに前記結像システムの光軸に対して実質的に平行に進む主光線で前記近軸光線を除くものであり、かつ、前記物平面から発せられたときには前記近軸光線からの与えられた径方向距離に配されている参照光線を含み、前記参照光線及び前記近軸光線が、前記物平面から発せられたときには前記結像システムの光軸に実質的に平行に進み、前記物平面から発する前記主光線が、前記物平面から発せられたときの状態において、前記疑似テレセントリックレンズシステムの前記光軸に対する傾きが変化する他の主光線も含み、前記他の主光線は、前記近軸光線と前記参照光線の内の前記物平面上での距離が近い方の光線からの前記他の主光線の径方向距離が大きくなるほど前記光軸に対する傾きが大きくなる主中間光線を含み、像平面において真テレセントリックである疑似テレセントリックレンズシステム
前記光軸に沿って前記疑似テレセントリックレンズシステムに対して前記結像システムによって結像させようとしている物体を相対的に平行移動させて、そうしなければ前記疑似テレセントリックレンズシステムの像平面に現れる、歪を、該像平面での倍率を大きく変化させることなく補償するためのステージ、及び
前記疑似テレセントリックレンズシステムの前記物平面を照光する疑似テレセントリック照光システムであって、前記疑似テレセントリックレンズシステムの前記物平面から発する前記近軸光線、前記参照光線、および前記主中間光線に整合された、像平面に近づく主光線を有する疑似テレセントリック照光システムを備えることを特徴とする結像システム。
【請求項2】
前記疑似テレセントリック照光システムが、照光器及び、前記照光器を前記疑似テレセントリックレンズシステムに結合するリレーレンズを備え、前記リレーレンズが前記疑似テレセントリックレンズシステムの前記物平面から発する前記主光線に整合するために疑似テレセントリックであることを特徴とする請求項1に記載の結像システム。
【請求項3】
前記疑似テレセントリックレンズシステムは物空間において疑似テレセントリック、かつ像空間において真テレセントリックであり、前記照光器は像空間において真テレセントリックであり、前記リレーレンズは、前記照光器の真テレセントリック像空間に整合する真テレセントリック物空間、および前記疑似テレセントリックレンズシステムの疑似テレセントリック物空間に整合する疑似テレセントリック像空間を持つものであり、前記疑似テレセントリックレンズシステムにおける像空間を真テレセントリックに維持したまま前記ステージによる前記平行移動を行うことができるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の結像システム。
【請求項4】
前記結像システムは、前記照光器の像平面における主光線パターンを、前記疑似テレセントリックレンズシステムの入射ひとみの一部分のみが満たされるように、前記疑似テレセントリックレンズシステムの物平面における非線形の主光線パターンに整合させることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の結像システム。
【請求項5】
前記参照光線が視野限界光線であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の結像システム。
【請求項6】
前記主中間光線が実質的に軸対称であることを特徴とする請求項に記載の結像システム。
【請求項7】
前記光軸に沿う一方向への前記物体の移動が前記疑似テレセントリックレンズシステムの前記像平面における正のラジアル歪に寄与し、前記光軸に沿う逆方向への前記物体の移動が前記疑似テレセントリックレンズシステムの前記像平面における負のラジアル歪に寄与することを特徴とする請求項1から6いずれか1項に記載の結像システム。
【請求項8】
前記ステージが複数のステージの第1のステージであり、前記複数のステージの第2のステージが前記像平面における前記物体の倍率を変えるために前記光軸に沿って前記疑似テレセントリックレンズシステムの1つのレンズコンポーネントを平行移動させ、前記結像システムが前記倍率変化にともなう歪を補償するために前記第1のステージの移動と前記第2のステージの移動を関連付けるプロセッサをさらに備えることを特徴とする請求項1からいずれか1項に記載の結像システム。
【請求項9】
疑似テレセントリックレンズシステムにおけるラジアル歪に影響を与える方法において、
テレセントリック物空間への非線形修正を有するとともに真テレセントリック像空間を有する疑似テレセントリックレンズシステムを通して光を導く工程であって、前記非線形修正が、近軸光線及び、前記物平面から発せられたときに前記結像システムの光軸に対して実質的に平行に進む主光線で前記近軸光線を除くものであり、かつ、物平面から発せられたときには前記近軸光線からの与えられた径方向距離に配されている参照光線を含む、前記物平面から発する主光線によって定められ、前記参照光線及び前記近軸光線が、前記物平面から発せられたときには前記結像システムの光軸に実質的に平行に進むように、かつ、前記物平面から発する前記主光線が、前記物平面から発せられたときの状態において、前記疑似テレセントリックレンズシステムの前記光軸に対する傾きが変化する他の主光線も含み、前記他の主光線は、前記近軸光線と前記参照光線の内の前記物平面上での距離が近い方の光線からの前記他の主光線の径方向距離が大きくなるほど前記光軸に対する傾きが大きくなる主中間光線を含むように定められる前記非線形修正を有する前記疑似テレセントリックレンズシステムを通して光を導く工程
前記疑似テレセントリックレンズシステムの像平面における倍率を有意に変えることなく前記像平面におけるラジアル歪を増減させるために、前記非線形修正物空間にわたって結像させようとする物体を軸方向に相対的に平行移動させる工程、及び
前記疑似テレセントリックレンズシステムの前記テレセントリック物空間への前記非線形修正に整合するテレセントリック像空間への非線形修正を有する疑似テレセントリック照光器で前記疑似テレセントリックレンズシステムの前記物平面を照光する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記像平面における前記倍率を変えるために前記疑似テレセントリックレンズシステムのビーム偏光レンズコンポーネントを軸方向に相対的に平行移動させる工程をさらに含み、前記物体の前記軸方向平行移動の少なくとも一部が前記ビーム偏光レンズコンポーネントの前記軸方向平行移動にともなうラジアル歪を補償することを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用により像歪の変動を受ける疑似テレセントリックレンズに向けられ、特に、使用中のそのような変動を補償するためのそのようなレンズの歪調節機能に向けられる。
【背景技術】
【0002】
温度及び圧力のような環境要因は、また使用中のコンポーネント温度上昇のようなその他の要因も、レンズ内の光学コンポーネントの屈折率または間隔に影響を及ぼすことができ、これらの変化の結果、倍率及び像歪の変化が生じ得る。そのような動的変化は、二重テレセントリックレンズを含む、多くのタイプのレンズに見られる。
【0003】
倍率調節は投影レンズのいくつかの光学素子を軸方向に平行移動させることで行われている。しかし、そのような倍率調節には像歪を含むその他の光学収差がともない得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、テレセントリックレンズの使用にともなうラジアル歪の問題を解決する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ラジアル歪の問題を解決する手段には2つの主要部分がある。第1に、テレセントリック像空間が非線形態様で意図的に変更され、この変更は、例えば、入射ひとみにおいて球面収差として現れ得る。第2に、結像物体がその物平面とともに、レンズのラジアル歪を調節するために、変更されたテレセントリック物空間にわたって相対的に軸方向に平行移動される。調節は、環境の影響またはレンズの動作にともなうその他の要因によって生じる歪誤差を補正するために動的に行うことができる。そのような歪調節は倍率調節と対にして、いずれをも動的に管理することもできる。
【0006】
真テレセントリック物空間においては、物平面から発する主光線の全てが光軸に平行に進む。調節の目的のために本発明で利用される変更されたテレセントリック空間の一例において、主光線は、主近軸光線及び視野限界光線は光軸に平行に進むが、主中間光線は主近軸光線及び視野限界光線の両者からの径方向距離にともなう増大傾向を有する量だけ光軸に対する角度が変わるパターンにしたがうことが好ましい。主中間光線は光軸に向けて僅かに傾けられることが好ましい。
【0007】
修正されたレンズはテレセントリック性から若干外れるが、像平面において有意な歪が現れることはない。さらに、レンズは像平面において一様にテレセントリックのままであることが好ましい。テレセントリック性は良好な結像のための要件ではないが、テレセントリック性は、一般に作動距離の変化にともなう望ましくない倍率の変化を小さくする目的のための、追加の設計拘束条件を課す。テレセントリック物空間への変更は、物平面の与えられた位置において有意なラジアル歪が像平面において現れることのないように、レンズ設計に組み込まれる。しかし、像平面が光軸に沿っていずれかの方向へ軸方向にシフトされる(すなわち作動距離が変えられる)と、像に正または負のラジアル歪が導入され得る。レンズ設計は作動距離の変化が倍率を有意には変えないように十分にテレセントリックなままであるが、作動距離の変化がラジアル歪は生じさせるように十分に理想テレセントリック性からレンズ設計が外れることが好ましい。修正されたテレセントリック物空間にかけて結像物体を軸方向に平行移動させることによって行うことができるラジアル歪調節は、温度または圧力の測定された変化にともなう自動補正を行うために、前もって決定してルックアップテーブルに載せておくことができる。
【0008】
倍率調節は、レンズのビーム偏向光学コンポーネントの内の1つを軸方向に平行移動させることで行うことができる。選ばれたビーム偏向光学コンポーネントはその軸方向平行移動が他の(すなわちラジアル歪または倍率以外の)歪に与える効果が最も小さいコンポーネントであることが好ましい。良い候補は、テレセントリック像空間またはテレセントリック物空間に隣接する、レンズの最初及び最後の光学コンポーネントである。倍率の変化に加えて、ラジアル歪もそのような平行移動によって生じ得る。しかし、倍率補正を独立させるために、選ばれたレンズコンポーネントに加えて物平面を定める結像物体を移動させることができる。例えば、ラジアル歪と無関係に倍率を補正するため、結像物体を、物平面に最も近い、選ばれたレンズコンポーネントともに軸方向に平行移動させることができる。物体と選ばれたレンズコンポーネントをともに平行移動させることで、ラジアル歪と倍率の複合変化も得ることができる。
【0009】
結像物体及び選択されたレンズコンポーネントの平行移動は像平面の位置にも影響を与え得る。像平面をその初期位置に復帰させるため、全レンズを結像物体とともに平行移動させることができる。あるいは、像平面の変更された位置を受け入れるため、像がその上に形成される受像器(図示せず)を同様に平行移動させることができる。
【0010】
特に投影レンズシステムの形態における、本発明の結像及び調節がもち得る能力をさらに十分に利用するため、本発明に対して想定される疑似テレセントリック投影レンズに照光器が整合されることが好ましい。例えば、照光器から放射される(例えば照光器の像平面における)主光線パターンを、投影レンズの入射ひとみが設計にしたがって少なくともある程度満たされるように、投影レンズの物平面における非線形主光線パターンに整合させることができる。これにより、物点がそれを介して像平面上に投影される光パターンを視野全体にわたって整合させることが可能になる。それぞれの点にともなう光エネルギーの重心が主光線に揃えられ、像平面において光軸に平行に方向が定められることが好ましい。照光器は投影レンズに直接に、あるいは整合主光線照光パターンを透過させるかまたはその形成に関与することができる、リレーレンズを介して、結合させることができる。例えば、リレーレンズは、従来の照光器からのテレセントリック出力を投影レンズの主光線パターンへの整合に必要な疑似テレセントリック入力に変換することによって、所望の照光パターンの形成に関与できるであろう。
【0011】
本発明にしたがって構成される光学結像システムの一例に、物平面から発する主光線が近軸光線及び近軸光線から与えられた径方向距離におかれた参照光線を含む、疑似テレセントリックレンズがある。参照光線及び近軸光線はいずれもそのレンズの光軸に平行に進み、他の主光線は、実質的に、近軸光線と参照光線の内の近い方の光線からの他の主光線の径方向距離の関数として結像システムの光軸に対する傾きが変化する。ステージが結像システムで結像しようとしている物体をレンズに対して光軸に沿って相対的に平行移動させて、そうしなければレンズの像平面に現れる、歪を補償する。
【0012】
主参照光線は主視野限界光線を含むことが好ましい。さらに、主光線はレンズの入射ひとみ内に球面収差が現れるように配されることが好ましい。主近軸光線と主視野限界光線の間の他の主光線は、光軸に対する傾きが様々な主中間光線を含むことが好ましい。例えば、主中間光線は、実質的に軸対称で伝搬方向において光軸に向けて様々に傾けられることが好ましい。主中間光線は光軸に対して少なくとも1°傾けられた中間光線を含むことが好ましい。
【0013】
光軸に沿う物体の一方向への移動はレンズの像平面における正のラジアル歪に寄与し、光軸に沿う物体の逆方向への移動はレンズの像平面における負のラジアル歪に寄与する。しかし、光軸に沿う物体の逆方向への移動は像平面における最小倍率及び非直交収差効果を生じさせることが好ましい。
【0014】
レンズの環境条件を監視するために環境モニタを用いることができ、環境モニタから情報を受け取り、環境条件の変化にともなって予想される歪を補償するに必要なステージ平行移動量を決定するように、プロセッサを構成することができる。
【0015】
レンズの動作状態を監視するためにレンズモニタを用いることができ、レンズの変化にともなって予想されるラジアル歪を補償するに必要なステージ平行移動量を決定するように、レンズから情報を受け取るプロセッサを構成することができる。レンズの変化にはレンズの1つないしさらに多くのコンポーネント内の温度または温度分布を含めることができる。レンズの変化にはレンズの1つないしさらに多くのコンポーネントの寸法または形状の変化も含めることができる。レンズモニタは物体の変化を検出するために用いることができる。像平面に現れる歪を予想する手段として物体の赤外線像を形成するために、例えば、赤外線撮像デバイスを用いることができる。赤外線撮像デバイスは物平面に照光パターンをリレーするリレーシステムに結合させることができる。結合により、赤外線雑像デバイスによる物体の像の取得が可能になる。
【0016】
基準とされるステージは複数のステージの第1のステージとすることができ、複数のステージの第2のステージは像平面における物体の倍率を変えるために光軸に沿ってレンズの1つのレンズコンポーネントを平行移動させるために用いることができる。プロセッサは、倍率の変化にともなう歪を補償するために、第1のステージの移動と第2のステージの移動を関連付ける。第2のステージによって平行移動されるレンズコンポーネントは光学能を有し、物平面に隣接して配置されることが好ましい。あるいは、第2のステージによって平行移動されるレンズコンポーネントは像平面に隣接して配置することができる。受像部に対して結像物体とともにレンズを平行移動させて受像部の表面上にレンズの像平面を適切に位置決めするために、第3のステージを配置することができる。
【0017】
照光システムは疑似テレセントリックレンズの物平面における非線形主光線パターンに実質的に整合する主光線を有する照光パターンを出力するように構成されることが好ましい。照光システムは照光器及び疑似テレセントリックレンズに照光器を光結合させるためのリレーレンズを備えることができる。リレーレンズは所望の照光パターンを照光器から疑似テレセントリックレンズに送ることができるか、または所望の照光パターンの形成に関与することができる。例えば、リレーレンズは通常のテレセントリック物空間とともに、ただし疑似テレセントリックレンズの非線形テレセントリック物空間に整合する非線形テレセントリック像空間をともなって、配することができる。リレーレンズは疑似テレセントリックレンズの物平面上に、クロッピングマスクのような、視野絞りの像をリレーするためにも用いることができる。
【0018】
本発明にしたがう疑似テレセントリックレンズにおけるラジアル歪に影響を与える方法は非線形修正を有する疑似テレセントリックレンズを介してテレセントリック物空間に光を導く工程を含む。物平面は、像空間において倍率を有意に変えることなくテレセントリックレンズの像平面におけるラジアル歪を増減させるために、非線形修正物空間にかけて軸方向に平行移動される。
【0019】
本方法は、疑似テレセントリックレンズのビーム偏向レンズコンポーネントを軸方向に平行移動させることによって像平面における倍率に影響を与えるために、用いることもできる。物平面の軸方向平行移動の少なくとも一部がビーム偏光レンズコンポーネントの軸方向平行移動にともなうラジアル歪を補償する。このビーム偏光レンズコンポーネントは物平面と像平面の一方に最も近い疑似テレセントリックレンズの複数のビーム偏光レンズコンポーネントの中におかれることが好ましい。例えば、ビーム偏光レンズコンポーネントは物平面の最も近くにおくことができる。疑似テレセントリックレンズは物平面とともに、像平面の所望の外部位置を維持するために、軸方向に平行移動させることができる。疑似テレセントリックレンズの像平面におけるラジアル歪誤差を生じさせる状態を監視し、物平面の相対軸方向平行移動を行うことによって応答することができる。
【0020】
さらに、疑似テレセントリックレンズの物平面は、疑似テレセントリックレンズのテレセントリック物空間への非線形修正に整合するテレセントリック像空間への非線形修正を有する疑似テレセントリック照光器によって照光されることが好ましい。これにより、不完全コヒーレント照光の条件下であっても、疑似テレセントリックレンズの物点が疑似テレセントリックレンズの像平面上にそれを通して投影される光エネルギーの重心が、疑似テレセントリックレンズの像平面における所期のテレセントリック主光線に対応することが保証される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1において、投影システム10は、(a)照光器(図示せず)から光を受け取り、クロッピングブレード22によって境界が定められたほぼ一様な光平面を物平面にあるレチクル16(すなわち結像物体)にリレーするリレーレンズ12、及び(b)像平面18上に拡大された寸法でレチクル16の像を投影する疑似二重テレセントリック対物レンズ14を備える。リレーレンズ12内のリレー絞り24は対物レンズ14内の、対物レンズ14の入射ひとみと見なすこともできる、対物レンズ14内の対物絞り26に共役に配される。
【0022】
像平面18上への投影の対象とされるパターンを有するレチクル16は対物レンズ14の視野より大きな寸法につくることができ、クロッピングブレード22が特定の投影の対象にされないレチクル16の領域をマスクする。クロッピングブレード22の像はレチクル16にリレーされ、よってブレードは対物レンズの被写界深度内にとどまる。あるいは、クロッピングブレード22はレチクル16の直近におくことができるであろう。しかし、レチクル16の保護に必要なオフセット及びクロッピングブレード厚のようなその他の問題が被写界深度のぶれを生じさせ得る。物平面、すなわちレチクル16において、対物レンズの開口数が大きくなるほど、問題は一層重大になる。したがって、レチクル16の近くにクロッピングブレード22を取り付ける代りに、リレーレンズ12がクロッピングブレード22の像をレチクル16上に直接にリレーする。これは熱源をレチクル16から離し、より厚いクロッピングブレード22の使用を可能にする。
【0023】
対物レンズ14は疑似二重テレセントリックである。すなわち、像平面18の直近では真テレセントリックであるが、レチクルにおける物平面の直近では疑似テレセントリックでしかない。図2の部分拡大図で一層よく分かるように、レチクル16を通過する主近軸光線32及び主視野限界光線34はいずれも投影システム10の光軸30に平行に進む。しかし、主中間光線36は同じ実質的にテレセントリックな物体空間38内で、ほぼ1.25°(0.22ラジアン)までの角度をなすように、光軸30に向かって若干傾く。主中間光線36の光軸30に向かう傾きの変化は、主中間光線36の傾き変化が主近軸光線32または主視野限界光線34の近い方の光線からの径方向距離にしたがって大きくなる、図3のグラフに示されているような、二次またはその他の偶数次の関数にしたがってモデル化されることが好ましい。このテレセントリック変化は対物レンズ14の入射ひとみ26における球面収差として現れる。
【0024】
レチクル16は、図5に双方向矢印40で示されるように、光軸30に沿って限定された距離範囲内でレチクル16を平行移動させるための、可調ステージまたはボイスコイル(図示せず)のようなその他の平行移動機構に取り付けられることが好ましい。与えられた設計位置においては、図5Bのグラフに示されるように像平面18においてラジアル歪は全く見られない。しかし、テレセントリック物空間38にわたる、光軸30に沿ういずれかの方向へのレチクル16の平行移動は投影システム10の歪を変える効果を有する。リレーレンズ12の方向へのレチクル16の平行移動は図5Aのグラフに示されるように正のラジアル歪を生じさせる効果を有し、対物レンズ14に向かう逆方向へのレチクル16の平行移動は図5Cのグラフに示されるように負のラジアル歪を生じさせる効果を有する。条件の変化に応じて歪を調節するためにコントローラ(図示せず)をレチクルマウントに接続することができる。例えば、歪自体を監視して、測定される歪を小さくするための補正を行うか、あるいは、温度のような、関係する条件を測定して、条件変化の歪への予測可能な効果に基づいて補正を行うことができる。
【0025】
物平面における同じテレセントリック変化はさらに、歪みと同様に、環境の影響またはその他の条件変化によって変わり得る、倍率調節を支援するために利用することができる。倍率補正は、図6に示されるように、対物レンズ14の初光学素子(すなわち、「初ガラス」)42の平行移動によって生じるいかなる望ましくないラジアル歪も解消するため、双方向矢印40で示されるような光軸30に沿う初光学素子4の平行移動を(図5に示されるような)レチクル16の平行移動に合せて行うことができる。与えられた設計位置においては、図6Bのグラフに示されるように、像平面18において所望の大きさの倍率が見られる。リレーレンズ12の方向への初光学素子42の平行移動は図6Aのグラフに示されるように正の倍率を生じさせる効果を有する。対物レンズ14に向かう逆方向への初光学素子42の平行移動は図6Cのグラフに示されるように負の倍率を生じさせる効果を有する。
【0026】
初光学素子42はステージまたは、圧電変換器(図示せず)のような、その他の平行移動機構に取り付けることができる。あるいは、レチクル16及び初光学素子42のいずれをも平行移動させるために1つのステージを配することができ、レチクル16及び初光学素子42の一方または他方を別途に平行移動させるために別のステージを配することができるであろう。像平面18に生じる倍率誤差の大きさまたは倍率誤差に予測可能な態様で関係付けられるその他の条件を監視してレチクル16及び初光学素子42の位置を適宜に調節するために、同じかまたは異なるコントローラ(図示せず)を用いることができる。レチクル16及び初光学素子42の平行移動は像平面18の位置を軸方向に変位させる効果も有し得る。これは、対物レンズ14をレチクル16とともに上昇/下降させるためのリフトを有する別のステージ上で対物レンズ14全体を平行移動させることによって補正することができる。
【0027】
あるいは、所望の倍率補正を行うため、対物レンズ14の1つないしさらに多くのビーム偏向光学コンポーネント、特にテレセントリック像空間またはテレセントリック物空間の近傍のビーム偏向光学コンポーネントを平行移動させることができる。選ばれた光学コンポーネントの移動によるラジアル歪または倍率以外の歪の導入効果は最小であることが好ましい。すなわち、選ばれたコンポーネントは、その軸方向位置に関して、非直交誤差のようなその他の誤差の導入を免れることが好ましい。いかなる望ましくないラジアル歪もレチクル/物平面の移動によって補正することができる。像平面18の位置に関する効果は最小に抑えながら、倍率に同様の変化をおこさせるために、例えば、像平面18に最も近い投影レンズ14の終光学素子(すなわち、「終ガラス」)46を光軸30に沿って平行移動させることができる。
【0028】
設計を作動距離の変化にともなう他の歪み対して鋭敏にするために、別の主光線パターンを用いることができる。例えば、主視野中位光線も光軸に平行に向け、その他の光線の傾きを、全てが光軸に平行に進む、近軸光線、視野中位光線及び視野限界光線の内の最も近い光線からの径方向距離の関数として、変えることにより、五次歪感度を生じさせることができる。しかし、歪感度を倍率変化から弁別するために、別の光線パターンでは少なくとも近軸光線及び視野限界光線が光軸に平行に維持されることが好ましい。
【0029】
テレセントリック物空間38は様々な非線形主光線パターンで構成することができるが、対物レンズ14は像空間において真テレセントリックのままであることが好ましい。良好な配置及び低テレセントリック性誤差がともに像平面18において明らかであり、主光線は光軸に平行なままである。
【0030】
下表1及び2に例示的なリレーレンズ12及び整合された対物レンズ14についての設計仕様を挙げる。設計は疑似テレセントリックであり、コマ収差のような奇数次収差を低減し、設計に多くの別の素子が入ることを制限するように、アパーチャ絞りの両側で実質的に素子の形状及び材料のバランスがとられている。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【0031】
表を説明すると、正の半径は曲率中心が右にあることを示し、負の半径は曲率中心が左にあることを示す。寸法は全てmm単位で与えられ、厚さは次の面までの軸方向距離である。像直径は、光線追跡値ではなく、近軸値である。レンズの基準動作波長は、363.5nmから368.5nmのスペクトル領域にわたり、366.0nmである。
【0032】
主光線の所望の配向パターンを指定することにより、米国カリフォルニア州パサデナ(Pasadena)のOptical Research AssociatesによるCode5のような、通常のレンズ設計ソフトウエアを用いてテレセントリック性からの所望の乖離を有する同様の設計を達成することができる。ソフトウエアは、所望の主光線配向パターンに適合し、同時に像平面に歪がほとんどまたは全くない設計を達成する。この目的に用いることができるその他のレンズ設計ソフトウエアには、米国アリゾナ州タクソン(Tucson)のFocus SoftwareによるZMAX光学設計コード及び米国マサチューセッツ州リトルトン(Littleton)のLambda Research CorporationによるOSLO光学設計ソフトウエアがある。しかし、設計は像平面の正確な配置に対して一層鋭敏である。この鋭敏性は制御された大きさのラジアル歪を生じさせるために利用される。
【0033】
図7は、上述した投影システム10と同様の投影システム52を組み込んでいる、「ステッパー」とも称される、可搬型フォトリソグラフィ結像システム50を示す。フレーム56に支持された対物レンズ54が,レチクル58の像をパネル60上に投影する。照射光が高圧水銀アークランプのような光源62によって与えられる。照光器64は、光の一様分布を生成する光トンネルを有する。リレーレンズ66がクロッピングマスク68を介して照光器64から光を受け取って、照光器64からの一様光の境界を定めるクロッピングマスク68の像をレチクル58上に送る。
【0034】
パネル60の全体に一度に結像させることはできないから、パネル60の所望の作業領域を総体的に照光するための位置範囲にわたってパネル60を平行移動させるためのXY軸平行移動ステージ70をフレーム56がベース72上に支持する。投影システム52は、投影システム52の光軸80に沿うパネル60からの投影システム52の像距離を調節するためのZ軸平行移動ステージ78上に支持される。レチクル58は投影システム内でXYZ平行移動ステージ82上に支持される。XYZ平行移動ステージ82のXY成分は、投影システム52の視野より大きくすることもできる、レチクル58の様々な領域を照光するために与えられる。レチクル58上の所望のパターンがパネル60上に結像され得るように、コントローラ84がレチクル58の平行移動をパネル60の平行移動に関係付ける。XYZ平行移動ステージ82のZ成分が、ラジアル歪調節を行うために、レチクル58からの対物レンズ54の作動距離を調節する。別のZ平行移動ステージ86が、倍率調節のために、光軸80に沿って対物レンズ54の光学コンポーネント88を平行移動させる。光学コンポーネント88はレチクル58に最も近いビーム偏向光学コンポーネントであることが好ましい。
【0035】
赤外線カメラ90がレチクル58の温度プロファイルを監視するためにリレーレンズ66に光結合される。別のセンサ92が投影システム52の環境内の雰囲気温度及び圧力のような雰囲気条件を監視する。レチクル58の温度プロファイルに関する情報は、また投影システム環境の雰囲気温度及び圧力に関する情報も、コントローラ84に届き、コントローラ84によって、そのような情報は経験データに基づいて投影システム52の光学性能に関係付けられて、像歪を打ち消すための対物レンズ54の作動距離または倍率調節のための光学コンポーネント88の軸方向位置の一方または両方に調節が行われる。
【0036】
投影システム52は、レチクル58近傍のテレセントリック物空間に非線形変更を行うことによって、また対物レンズ54とレチクル58の間の作動距離を変えるためにXYZ平行移動ステージを制御することによって、ラジアル歪調節を与えるように構成される。倍率調節は光軸80に沿って光学コンポーネント88を平行移動させるZ平行移動ステージ86によって与えられる。ラジアル歪または倍率誤差を生じさせる条件が、センサ90及び92によるように、監視され、像歪補償及び倍率調節を行うために投影システム52の応答に関する経験的知識が用いられる。投影システム52の、より良く、より一貫した性能を保証するために動的調節を維持することができる。
【0037】
リレーレンズ66とともに照光器64が、対物レンズ54の入射ひとみが対物レンズ設計に対して最適に満たされるように、リレーレンズ66の像平面における主光線が対物レンズ54の像平面の主光線と実質的に揃えられた疑似テレセントリック形態で照光パターンをレチクル58に送る。レチクル58における照光パターンの所望の光線構成は、照光器64の像平面に形成することができて、対物レンズ54の物平面においてリレーレンズ66によって再現することができる。あるいは、照光器64の像平面(すなわちリレーレンズ66の物平面)における照光パターンをリレーレンズ66が対物レンズ54の物平面(すなわちリレーレンズ66の像平面)における所望の光線構成に変換することができる。例えば、リレーレンズ66は、照光器64の真テレセントリック像空間に整合する真テレセントリック物空間及び対物レンズ54の疑似テレセントリック物空間に整合する疑似テレセントリック像空間をもつ疑似二重テレセントリックに構成することができる。このようにすれば、テレセントリック出力をもつ従来の照光器64を用いることができる。
【0038】
リレーレンズ66の像平面における主光線の、対物レンズ54の物平面における主光線との整合構成によって、対物レンズ54の像平面における、光エネルギーの重心とも称される、照光中心が対物レンズ54の像平面における対物レンズのテレセントリック主光線と揃えられたままであることが保証される。この整合により、対物レンズ54の像平面において照光の所期のテレセントリック性を維持しながら、様々な形態の不完全コヒーレント照光を用いることができる。
【0039】
本発明の様々な能力を実装するための特定の実施形態に関して説明したが、当業者であれば、本発明の全体的教示内でなされ得る改変の範囲を理解するであろう。例えば、本発明の目的のために用いられる疑似テレセントリックレンズは増倍または拡大のために構成することができ、そのようなレンズの光通過方向は反転させることができる。物平面、像平面または光学コンポーネントは直接に平行移動させることができ、あるいはこれらのいずれか1つに対して残りのレンズ構造を平行移動させることができる。歪または倍率を補正する目的のため、光学システムに影響を与えることが知られている他の条件を監視することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】物平面におかれた被照光レチクルが像平面上に投影されるリレーレンズ及び対物レンズを有する二重テレセントリック投影システムの側面図である
図2】レチクル近傍の投影システムの部分拡大図である
図3】レチクルを通過する主光線の傾きにおける角度変化(ラジアン)を物体視野の中心からの変位(mm)の関数として示すグラフである
図4】テレセントリック物空間における例示的な近軸光線、中間光線及び視野限界光線を示す
図5-1】図5はレチクルに対する軸方向調節能力を示すテレセントリック物空間の部分拡大図である
図5-2】図5A、5Bおよび5Cは、レチクルに対するラジアル歪調節能力にともなう規格化径方向視野位置の関数としての像平面における歪(μm)をグラフで示す
図6-1】図6は対物レンズの第1光学コンポーネントに対する軸方向調節能力を示すテレセントリック物空間の部分拡大図である
図6-2】図6A、6Bおよび6Cは、第1光学コンポーネントに対する倍率調節能力にともなう規格化径方向視野位置の関数としての像平面における歪(μm)をグラフで示す
図7】本発明にしたがう投影システムを組み込んでいる可搬型フォトリソグラフィ結像システムを示す
【符号の説明】
【0041】
10,52 投影システム
12,66 リレーレンズ
14,54 対物レンズ
16,58 レチクル
18 像平面
22 クロッピングブレード
24 リレー絞り
26 対物絞り
30,80 光軸
50 フォトリソグラフ結像システム
54 投影レンズ
62 光源
64 照光器
68 クロッピングマスク
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7