(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723965
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】凍結乾燥速溶多相剤形の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20060101AFI20150507BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20150507BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20150507BHJP
A61K 9/64 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K47/36
A61K9/19
A61K9/64
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-500148(P2013-500148)
(86)(22)【出願日】2011年3月15日
(65)【公表番号】特表2013-522308(P2013-522308A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011028483
(87)【国際公開番号】WO2011115969
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年3月13日
(31)【優先権主張番号】12/724,601
(32)【優先日】2010年3月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501477831
【氏名又は名称】アール.ピー. シェーラー テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ティアン
【審査官】
杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第01373287(FR,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01980245(EP,A1)
【文献】
特開2001−278779(JP,A)
【文献】
特表平09−511256(JP,A)
【文献】
特表2003−529535(JP,A)
【文献】
特開平03−086837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/10
A61K 9/19
A61K 9/64
A61K 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に活性な成分を送達するための多相速溶剤形を製造する方法であって、下記のステップ:
(a)非ゲル化マトリックス形成剤を含む製剤を、予め形成された型に投入するステップと、
(b)ゲル化マトリックス形成剤を含む製剤を、予め形成された型に投入するステップと、
(c)ステップ(a)及び(b)で投入された製剤をフリーズドライさせて、多相速溶剤形を形成するステップと
をこの順で含む方法。
【請求項2】
ステップ(a)の製剤が非ゲル化マトリックス形成剤、マンニトール及び水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非ゲル化マトリックス形成剤が、非ゲル化ゼラチン、化工デンプン及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの非ゲル化ゼラチンがプルランである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非ゲル化マトリックス形成剤が、ステップ(a)の製剤の重量に対して1%〜20%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
マンニトールが、ステップ(a)の製剤の重量に対して0%〜10%の範囲の量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
水が、ステップ(a)の製剤の重量に対して50%〜98%の範囲の量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)が、2℃〜20℃の範囲の温度で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)の製剤が、ゲル化マトリックス形成剤、マンニトール及び水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ゲル化マトリックス形成剤が、ゲル化ゼラチン、25℃の体積粘度に対する5℃の体積粘度の比が少なくとも5であるゲル化ポリマー、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ゲル化マトリックス形成剤が、ステップ(b)の製剤の重量に対して0.2%〜15%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
マンニトールが、ステップ(b)の製剤の重量に対して1%〜10%の範囲の量で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
水が、ステップ(b)の製剤の重量に対して50%〜98%の範囲の量で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b)が、15℃〜30℃の範囲の温度で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)が、ステップ(a)及び(b)で投入された製剤を、予め形成された型内で凍結するサブステップ(c1)と、ステップ(a)及び(b)で投入された製剤をフリーズドライさせるサブステップ(c2)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)に先立って、ステップ(a)を少なくとも1回は繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(c)に先立って、ステップ(b)を少なくとも1回は繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)に先立って、ステップ(b)を少なくとも1回は繰り返すステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法に従って作製される多相速溶剤形。
【請求項20】
(a)少なくとも1つのゲル化マトリックス層と、
(b)少なくとも1つの非ゲル化マトリックス層と
を含む、薬学的に活性な成分を送達するための、請求項1に記載の方法に従って作製された多相凍結乾燥速溶剤形。
【請求項21】
ゲル化マトリックス層と非ゲル化マトリックス層の重量比が1:1である、請求項20に記載の多相凍結乾燥速溶剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マトリックス形成剤を含有する製剤を順次投入して多相錠を生成することによる、薬学的に活性な成分を送達するための、凍結乾燥させた速溶剤形(FDDF)の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、商業的に実行可能な多相剤形を生産するための、少なくとも1つは非ゲル化マトリックス形成剤を含有する製剤であり、他は、ゲル化マトリックス形成剤を含有する製剤である、マトリックス形成剤を有する少なくとも2つの製剤を活用する凍結乾燥FDDFの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
経口摂取用の剤形は、その多くが公知であり、医療分野では容易に使用できる。中でも、最も一般的なものは錠剤である。医薬用錠剤の主な限界として、飲み込みにくさからくる患者の服薬コンプライアンスの低さ、及び錠剤の非効果的溶解性による活性物質の生物学的利用能の欠如が挙げられる。
【0003】
速溶剤形(FDDF)は、使用が簡便であり、患者の服薬コンプライアンス問題の解決に使用されることが多い。FDDFには多くの剤形があり、例えば、大量のウィッキング(wicking)剤/崩壊剤を含む「軟質の」圧縮錠剤、大量の発泡剤を含む錠剤、及び凍結乾燥させた錠剤などがある。通常、凍結乾燥させた速溶剤形は、口腔内に活性成分を放出するように設計され、速溶性のゼラチンベースのマトリックスを使用して製剤化される。これらの剤形は周知で、広範な医薬を送達するのに使用できる。ほとんどの速溶剤形が、ゼラチン及びマンニトールを担体又はマトリックス形成剤として利用している(Seagar, H.、「Drug-Delivery Products and Zydis Fast Dissolving Dosage Form」、J. Pharm. harmaco、第50巻、375〜382頁(1998))。典型的に、ゼラチンは剤形に充分な強度を与えるのに使用され、包装から取り出す間の破損を防ぐが、いったん口中に収まると、ゼラチンによって剤形が急速に溶解する。加工中、投入した溶液/懸濁液は、気体媒質中を通過させて凍結させるのが好ましい。これは、溶液/懸濁液を急速に固定化することに役立ち、製造効率を向上させる。
【0004】
凍結乾燥剤形は、製剤中の、通常はゼラチンである構造形成剤の量と種類を操作することによって変えることができる。しかし、このような操作は、粘度、許容投入温度、投入中の微生物増殖に対する感受性、及び単位崩壊時間の微妙な平衡を崩しやすいということが分かっている。これらは、すべて、商業的に実行可能なFDDFを得るのに不可欠である。
【0005】
Zydis(登録商標)剤形などのフリーズドライ法によって製造されるFDDFは、多くの場合、好ましい。それらは、崩壊時間が速い(つまり、緩く圧縮された錠剤の1分とは対照的に、5秒未満)、口中感が滑らか(つまり、圧縮された錠剤中の高ウィッキング剤にまつわるザラザラ感がない)、胃前吸収を改善(これにより、特定薬剤の副作用が減じられる)、及び保管手段の増加など、明確な利点を持っている。
【0006】
加水分解される哺乳類ゼラチンは、冷却するとすぐにゲル化するため、FDDFにおける最適なマトリックス形成剤であることが多い。しかし、加工中に生物学的、物理的、及び化学的安定性を維持するためには、低い投入温度が望ましいなど、生物学的製品又は他の製品の製造にゲル化マトリックス形成剤を使用するには問題がある。このような特性を持つ製品に関しては、国際公開第00/61117号及び国際公開第00/50013号で開示されているような、冷却時にはゲル化しにくい、非ゲル化魚ゼラチン及びプルマンなどのマトリックス形成剤が選択される。しかし、非ゲル化マトリックス形成剤の使用に関する問題は、他にもある。これらの非ゲル化剤を含有する製剤は、典型的に脆弱で、凍結中に気体冷却媒体を通過するとき、表面に変形を引き起こす。このような表面変形は、ひび割れ、凝塊物、又は小塊として現れ、患者のコンプライアンスに影響することもある。したがって、ゲル化、及び非ゲル化マトリックス形成剤の両方の利点を併用する方法を発明する必要性がある。
【0007】
現在、FDDFで併用医薬製品を製造する必要性もある。近年では、併用医薬製品は、複数の疾患状態、又は同一疾患を少ない副作用で治療するために、ますます一般化してきた。最近発売された併用製品には、Eli Lillyの双極性うつ病用Symbyax(登録商標)、Novartisの高血圧症用Lotrel(登録商標)、Pfizerの心血管疾患用Caduet(登録商標)などがある。しかし、FDDFのような併用製品を効果的に製造するのは困難である理由の一部は、水溶液/懸濁液を調製し、予め形成されたブリスター中に投入した後に、フリーズドライしなければならない、FDDFの典型的製造ステップにあった。この水溶液/懸濁液は、投入処理の間中、化学的及び形態学的に安定でなければならないが、このことが、併用製品の開発に対して問題となることがある。したがって、剤形に使用される特定の活性成分の固有の不適合性を制御して効果的に解消する、凍結乾燥FDDFを製造する必要性がある。
【0008】
さらに、凍結乾燥FDDFを製剤する間は、活性成分と賦形剤間の、及び複数の賦形剤間の不適合性を制御して効果的に解消するFDDFが望ましい。例えば、好ましい香味料、甘味料、着色料、及び緩衝液系が、活性溶液との間で不適合であり得る。賦形剤に関しては、クエン酸と重炭酸ナトリウムから成る発泡性の対は、水生集合形溶液/懸濁液として製剤することはできないが、強化された薬物吸収を有するFDDF系の製剤には好ましいことがある。
【0009】
同様に、また、複数の特定な活性医薬成分と放出制御皮膜とを組み合わせる又は組み合わせない、FDDFの必要性もある。特に、1つのFDDFの中で、即時放出及び持続放出という、異なった放出プロフィールの併用も望ましい。
【0010】
米国特許第5,039,540号は、薬剤、栄養剤、ビタミン剤、生物活性化合物、食材成分、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される活性物質を、運搬して投与するための充分な硬さを有する担体物質の製造方法を教示している。この発明は、製剤工程で使用される有機溶媒中に混和しない、薬学的に活性な物質がほとんど無いので、用途が限られている。活性物質が有機溶媒中で僅かでも加溶性であるなら、活性物質は、脱水過程で抽出されるであろうし、それによって、最終製剤の薬剤均一性は損なわれる。さらに、この参照は、開示された発明には、凍結乾燥方法との類似点がほとんどないことを、特に示している。
【0011】
国際公開第2004/066924号は、少なくとも2層を備える医薬剤形を開示している。1つの明瞭な層には、プロトンポンプ阻害剤が存在し、第2の明瞭な層には、アルミニウム、マグネシウム、又はカルシウム制酸塩が存在する。剤形は、咀嚼可能又は即崩壊性のものとすることができる。口腔内で崩壊し得る、凍結乾燥FDDFの製造方法に関する記述はない。さらに、異なる溶液/懸濁液の順次投入によるFDDFの製造についての開示もない。
【0012】
国際公開第2006/063189号は、少なくとも1つのゴム層及び少なくとも1つの速溶錠剤層を含有する、多層薬剤送達系を開示している。錠剤層は治療有効量の薬剤を含有するが、咀嚼時の破壊の影響を受けやすく、それにより薬剤の放出が起こる。複数の順次投入される層を組み入れるFDDFの記述はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第00/61117号
【特許文献2】国際公開第00/50013号
【特許文献3】米国特許第5,039,540号
【特許文献4】国際公開第2004/066924号
【特許文献5】国際公開第2006/063189号
【特許文献6】米国特許第6,709,669号
【特許文献7】英国特許第1548022号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Seagar, H.、「Drug-Delivery Products and Zydis Fast Dissolving Dosage Form」、J. Pharm. Pharmaco、第50巻、375〜382頁(1998)
【非特許文献2】James Swarbrickによる「Gels and Jellies」、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、第3巻、1875頁(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示は、少なくとも2つの製剤の組み合わせを使用し、一方はゲル化マトリックス形成剤を含有し、他方は非ゲル化マトリックス形成剤を含有する。それらは、層を成すように順次投入されて、FDDFの使用を最適化し、新規な、従来は不適合だった可能性のある薬剤にまで、さらにはより効果的な包装にまで拡大する。これは、現況技術からの著しい進歩である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の一実施形態は、薬学的に活性な成分を送達するための多相速溶剤形を製造する方法であって、下記の連続ステップ:(a)非ゲル化マトリックス形成剤を含む製剤を、予め形成された型に投入するステップと、(b)ゲル化マトリックス形成剤を含む製剤を、予め形成された型に投入するステップと、(c)ステップ(a)及び(b)で投入された製剤をフリーズドライして、多相速溶剤形を形成するステップとを含む方法に関する。
【0017】
本開示のある実施形態では、各製剤は、また、マンニトール及び水も含有することができる。ある実施形態では、非ゲル化マトリックス形成剤は、ステップ(a)の製剤の重量に対して、約1%〜約20%の範囲の量で存在し、マンニトールは、ステップ(a)の製剤の重量に対して、約0%〜約10%の範囲の量で存在し、且つ/又は水が、ステップ(a)の製剤の重量に対して、約50%〜約98%の範囲の量で存在する。ある実施形態では、ゲル化マトリックス形成剤が、ステップ(b)の製剤の重量に対して、約0.2%〜約15%の範囲の量で存在し、マンニトールが、ステップ(b)の製剤の重量に対して、約1%〜約10%の範囲の量で存在し、且つ/又は水が、ステップ(b)の製剤の重量に対して、約50%〜約98%の範囲の量で存在する。
【0018】
本開示のある実施形態では、ステップ(a)が、約1℃〜約30℃の範囲の温度で実行され、且つ/又はステップ(b)が、約15℃〜約30℃の範囲の温度で実行される。
【0019】
本開示の方法は、ステップ(c)に先立ち、ステップ(a)及びステップ(b)の製剤を凍結し、ステップ(a)及び(b)の一方又は両方を少なくとも1回は繰り返すなどの、任意選択のいくつかのサブステップ及びステップを包含する。
【0020】
本開示は、また、本発明に従って作製される多相速溶剤形にも関する。
【0021】
本開示は、また、(a)少なくとも1つのゲル化マトリックス層と、(b)少なくとも1つの非ゲル化マトリックス層とを含む、薬学的に活性な成分を送達するための多相凍結乾燥速溶剤形にも関する。ある好ましい実施形態では、ゲル化マトリックス層と非ゲル化マトリックス層の重量比は約1:5〜約5:1である。
【0022】
本開示は、当技術分野における前述した問題の解決、すなわち、首尾よく効率的に製造され、且つ、その多相型によって、同一の剤形内で送達される、従来は不適合の賦形剤及び/又は活性成分の併用、並びに異なる放出プロフィールを有する製剤の併用を包含する併用製品の製造を可能にするFDDFの開発を試みる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の実施形態は、薬学的に活性な成分を送達するための多相速溶剤形を製造する方法であって、連続ステップ:(a)非ゲル化マトリックス形成剤を含む製剤を、予め形成された型に投入するステップと、(b)ゲル化マトリックス形成剤を、予め形成された型に投入するステップと、(c)ステップ(a)及び(b)で投入された製剤をフリーズドライして、多相速溶剤形を形成するステップとを含む方法に関する。換言すれば、フリーズドライする前に、2つ以上の集合形製剤が用意されて、順次投入される。「順次投入される」又は「投入を順次行う」を本開示で使用する場合、少なくとも1つのマトリックス形成剤を含むある製剤を投入し、続いて、少なくとも1つのマトリックス形成剤を含む別の製剤を投入して、その結果、2つの製剤が同時に投入されることがなく、且つ、温度が違うなど、異なる条件下で投入し得る、投入プロセスを意味する。
【0024】
本方法の第1のステップでは、非ゲル化マトリックス形成剤を含む製剤が予め形成された型に投入される。本開示で使用する場合、「非ゲル化マトリックス形成剤」は、25℃の粘度に対する5℃の粘度の比が4以下のポリマーを意味する。粘度は、同心円筒又は他の構成を使用する、Haake(商標)粘度計又は従来型の粘度計で求められる。ポリマーが、ゲル化あるいは非ゲル化マトリックス形成剤であるかは、化学的性質だけでなく、濃度や製剤成分に依存する。実際、分子修飾(例えば、加水分解による解重合、又は側鎖の基の誘導体形成)、濃度、及び、ゲル化を誘発する他の分子(カラゲナンのカリウムイオン、アルギン酸のカルシウムイオン)の不在に依存して、ほとんど全てのゲル化ポリマーは、非ゲル化ポリマーに変換され、その場合、ゲル化は起こらず、ポリマーは製剤の増粘剤として機能する。
【0025】
本開示で使用する場合、「投入される」は、所定の一定量の溶液又は懸濁液の堆積を意味する。「予め形成された型」は、水溶液又は懸濁液を堆積させることができ、その中で順次フリーズドライさせる、任意の適切な容器又は区画を意味する。本開示のある好ましい実施形態では、予め形成された型は、1つ又は複数のブリスターポケットを有するブリスターパックである。ステップ(a)の製剤は、さらなる加工、すなわちフリーズドライの際に、本発明の多相速溶剤形の第1の相を形成する。
【0026】
任意の従来の非ゲル化マトリックス形成剤を本発明の目的のために使用することができる。適切な非ゲル化マトリックス形成剤には、限定はしないが、非ゲル化ゼラチン、化工デンプン、プルラン、非ゲル化魚ゼラチン、マルトデキストリン、低分子デキストラン、デンプンエーテル、低から中分子セルロースガム、及びこれらの組み合わせが含まれる。ステップ(a)の製剤中に存在する非ゲル化マトリックス形成剤の量は、ステップ(a)の製剤の重量に対して、好ましくは約1%〜約20%、より好ましくは約2%〜約15%、最も好ましくは約4%〜約10%の範囲内である。
【0027】
ステップ(a)の製剤は、典型的に、溶液又は懸濁液の形態である。したがって、溶媒も製剤中に存在する。製剤の最終組成、すなわち、存在すべき薬学的に活性な成分、賦形剤などを知れば、当業者は適切な溶媒を容易に選択することができる。好ましい溶媒には、エタノール、イソプロパノール、他の低級アルカノール及び水が含まれ、水がより好ましい。ステップ(a)の製剤中に存在する溶媒、好ましくは水の量は、ステップ(a)の製剤の重量に対して、好ましくは約50%〜約98%、より好ましくは約65%〜約98%、最も好ましくは約75%〜約95%の範囲内である。
【0028】
ステップ(a)の製剤は、追加の薬学的に許容できる薬剤及び賦形剤をさらに含有することができる。薬学的に許容できる追加の薬剤及び賦形剤には、限定はしないが、マンニトール、ブドウ糖、及び乳糖などの砂糖、塩化ナトリウム、及びケイ酸アルミニウムなどの無機塩、哺乳類由来のゼラチン、魚ゼラチン、化工デンプン、保存剤、酸化防止剤、界面活性剤、粘度増加剤、着色剤、香味剤、pH調節剤、甘味剤、味隠ぺい剤、並びにこれらの組み合わせが含まれる。適切な着色剤には、赤、黒及び黄色の酸化鉄、及びFD & CブルーNo. 2及びFD & CレッドNo. 40などのFD & C染料、並びにこれらの組み合わせが含まれる。適切な香味剤には、ミント、ラズベリー、カンゾウ、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、サクランボ及びブドウ香味、並びにこれらの組み合わせが含まれる。適切なpH調節剤には、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸、マイレン酸、及び水酸化ナトリウム、並びにこれらの組み合わせが含まれる。適切な甘味剤には、アスパラターム、アセスルフェイムK、及びタウマチン、並びにこれらの組み合わせが含まれる。適切な味隠ぺい剤には、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物、吸着物又はマイクロカプセル化活性物、及びこれらの組み合わせが含まれる。当業者は、必要に応じて、様々なこれらの追加の賦形剤の適切な量を容易に決定することができる。マンニトールは、一般に当業者には公知の、C
6H
8(OH)
6の化学式を有する有機化合物であり、薬学的に許容できる追加の薬剤として好ましい。存在する場合、薬学的に許容できる追加の薬剤は、マンニトールが好ましく、ステップ(a)の製剤中に、ステップ(a)の製剤の重量に対して、好ましくは約0%〜約10%、より好ましくは約2%〜約8%、最も好ましくは約3%〜約6%の範囲内の量で存在する。
【0029】
ステップ(a)の製剤は、薬学的に活性な成分をさらに含有することができる。本開示で使用する場合、「薬学的に活性な成分」とは、疾患の診断、治癒、緩和、治療、又は予防に使用され得る医薬品を意味する。任意の薬学的に活性な成分を本発明の目的のために使用することができる。当然、当業者は、ある薬学的に活性な成分が、例えば、ステップ(b)のゲル化マトリックス形成剤の製剤と共に使用するよりも、ステップ(a)の非ゲル化マトリックス形成剤の製剤と共に使用する方が適切であることを容易に理解するであろう。適切な薬学的に活性な成分には、限定はしないが、鎮痛剤及び抗炎症剤、制酸剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗菌剤、抗凝固剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、止瀉剤、抗てんかん剤、抗真菌剤、抗痛風剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、抗片頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗腫瘍剤及び免疫抑制剤、抗原虫剤、抗リウマチ剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、鎮静剤、催眠剤及び神経弛緩剤、ベータ遮断剤、心筋変力作用剤、コルチステロイド剤、鎮咳剤、細胞障害剤、うっ血除去剤、利尿剤、酵素、抗パーキンソン病剤、胃腸薬、ヒスタミン受容体拮抗剤、脂質調整剤、局所麻酔剤、神経筋接合部作用剤、硝酸塩及び抗狭心症剤、栄養剤、オピオイド系鎮痛剤、経口ワクチン、タンパク質、ペプチド及び組換え薬剤、性ホルモン及び避妊薬、殺精子剤、及び興奮剤、並びにこれらの組み合わせが含まれる。これらの活性成分の具体例は、参照により本明細書に援用する米国特許第6,709,669号に列挙されている。存在する場合、薬学的に活性な成分は、ステップ(a)の製剤中に、臨床試験によって立証されるような、必要とされる生理的効果を示すのに必要な量で存在する。当業者は、本開示に従って作製される多相剤形に含ませる、活性成分の適切な量を容易に決めることができる。
【0030】
ステップ(a)の製剤は、任意の常法によって作製することができる。最も典型的に、非ゲル化マトリックス剤、溶媒及び任意選択の成分を、好ましくは約40℃〜約80℃の任意の温度で、互いに混合して溶液を形成する。溶液は、次に、好ましくは約1℃〜約30℃、より好ましくは約2℃〜約20℃、最も好ましくは約5℃〜約15℃の亜周囲温度まで冷却され、この時点で、活性成分を添加することができる。
【0031】
同様に、ステップ(a)の投入も任意の公知の方法又は装置で実施することができる。投入は、好ましくは約2℃〜約20℃、より好ましくは約5℃〜約15℃の亜周囲温度で実行される。
【0032】
好ましい実施形態では、ステップ(a)の製剤は、非ゲル化マトリックス形成剤、マンニトール及び水を含み、一部の実施形態では、薬学的に許容できる賦形剤をさらに含む。好ましくは、この製剤は、約1%〜約20%の非ゲル化マトリックス形成剤、約0%〜約10%のマンニトール、約50%〜約98%の水、及び約0%〜約50%の賦形剤を含み、より好ましくは、約2%〜約15%の非ゲル化マトリックス形成剤、約2%〜約8%のマンニトール、約65%〜約98%の水、約0%〜約20%の賦形剤を含み、最も好ましくは、約4%〜約10%の非ゲル化マトリックス形成剤、約3%〜約6%のマンニトール、約75%〜約95%の水、及び約0%〜約10%の賦形剤を含む。
【0033】
本開示のある実施形態によれば、ステップ(a)は、ステップ(b)に先立って、1回又は複数回繰り返される。このようにして、本発明の多相速溶剤形の追加の層が形成される。ステップ(a)を使用して形成される層の数には制限はないが、ステップ(b)は、1回又は複数回のステップ(a)の後に実行される必要があり、その結果、最終層は、ゲル化マトリックス形成剤を含有する。
【0034】
本方法の第2のステップでは、ゲル化マトリックス形成剤を含む製剤は、予め形成された型に投入される。本開示で使用する場合、「ゲル化マトリックス形成剤」とは、ポリマー製剤であり、25℃の体積粘度に対する5℃の体積粘度の比が少なくとも5であり、より好ましくは7.5以上である。ゲル化ポリマーは、網状構造を下支えする架橋を形成し得るポリマーである。James Swarbrickによる「Gels and Jellies」、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、第3巻、1875頁(2007)に広く説明されている。ステップ(b)がステップ(a)の後で実行されるため、ゲル化マトリックス形成剤を含有する製剤は、非ゲル化マトリックス形成剤を含有する製剤の最上部に堆積又は投入される。ステップ(b)の製剤は、次工程、すなわちフリーズドライの際に、本発明の多相速溶剤形の別の層を形成する。
【0035】
任意の従来のゲル化マトリックス形成剤を本開示の目的のために使用することができる。適切なゲル化マトリックス形成剤には、限定はしないが、ゲル化ゼラチン、カラゲナンゴム、ヒアルロン酸、ペクチン、デンプン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、寒天、ゲランガム、グアルガム、トラガカントゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボマー、ホロキサマ、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、アルギン酸、及びポリ(グリコール酸)並びにこれらの組み合わせが含まれる。ステップ(a)の製剤中に存在するゲル化マトリックス形成剤の量は、ステップ(b)の製剤の重量に対して、好ましくは約0.2%〜約15%、より好ましくは約0.5%〜約10%、最も好ましくは約1%〜約4%である。
【0036】
ステップ(b)の製剤は、典型的に、溶液又は懸濁液の形態である。したがって、溶媒も製剤中に存在する。製剤の最終組成、すなわち、存在すべき薬学的に活性な成分、賦形剤などを知れば、当業者が適切な溶媒を容易に選択することができる。好ましい溶媒には、エタノール、イソプロパノール、及び水が含まれ、水がより好ましい。ステップ(b)の製剤中に存在する溶媒の量は、ステップ(b)の製剤の重量に対して、好ましくは約50%〜約98%、より好ましくは約65%〜約98%、最も好ましくは約75%〜約95%である。
【0037】
ステップ(b)の製剤は、上記で定義した、追加の薬学的に許容される薬剤又は賦形剤をさらに含有することができる。存在する場合、追加の薬学的に許容される薬剤、好ましくはマンニトールが、ステップ(b)の製剤の重量に対して、好ましくは約1%〜約10%、より好ましくは約2%〜約8%、最も好ましくは約3%〜約6%の量で、ステップ(b)の製剤中に存在する。
【0038】
ステップ(b)の製剤は、上記で定義した、薬学的に活性な成分をさらに含有することができる。存在する場合、薬学的に活性な成分は、ステップ(b)の製剤中に、臨床試験によって立証されるような、必要とされる生理的効果を示すのに必要な量で存在する。当業者は、本開示に従って作製される多相剤形に含ませる、活性成分の適切な量を容易に決めることができる。
【0039】
ステップ(b)の製剤は、任意の常法によって作製することができる。最も典型的に、ゲル化マトリックス形成剤、溶媒、及び任意選択の成分を、好ましくは約40℃〜約80℃の任意の温度で互いに混合して溶液を形成する。溶液は、次に、好ましくは約15℃〜約30℃、より好ましくは約20℃〜約30℃の周囲温度まで冷却され、この時点で、活性成分を添加することができる。
【0040】
同様に、ステップ(b)の投入も、公知の方法又は装置で達成することができる。投入は、製剤が調製後に冷却された温度と同一の温度、つまり、約20℃〜30℃で実行されるのが好ましい。
【0041】
好ましい実施形態では、ステップ(b)の製剤は、ゲル化ゼラチン、マンニトール及び水を含み、一部の実施形態では、薬学的に許容される追加の賦形剤をさらに含む。より好ましくは、この製剤は、約0.2%〜15%のゲル化ゼラチン、約1%〜10%のマンニトール、約50%〜約98%の水、及び約0%〜50%の賦形剤を含み、さらに好ましくは、約0.5%〜約10%のゲル化ゼラチン、約2%〜約8%のマンニトール、約65%〜約98%の水、約0%〜約20%の賦形剤を含み、最も好ましくは、約1%〜約4%のゲル化ゼラチン、約3%〜約6%のマンニトール、約75%〜約95%の水、及び約0%〜約10%の賦形剤を含む。
【0042】
本発明のある実施形態によれば、ステップ(b)は、ステップ(c)に先立って、1回又は複数回繰り返される。このようにして、本発明の多相速溶剤形の追加の層が形成される。ステップ(b)は、ステップ(a)を同様に繰り返すか否かに関係なく、1回又は複数回繰り返すことができる。ステップ(a)を同様に繰り返すことなく、ステップ(b)を4回を超えて繰り返さないことが好ましい。
【0043】
本発明の第3のステップでは、ステップ(a)及び(b)で投入された製剤は、フリーズドライされて多相速溶剤形を形成する。好ましい実施形態では、ステップ(c)は、ステップ(a)及び(b)で投入された製剤を凍結するサブステップ(c1)と、次に、ステップ(a)及び(b)で投入された製剤をフリーズドライさせて本発明の多相速溶剤形を形成するサブステップ(c2)とをさらに含む。一般に、予め形成された型内に投入された製剤は、例えば、液体窒素のトンネルを、好ましくは約1〜約10分間通過させるなど、当技術分野で公知の任意の手段によって凍結される。当業者は、トンネル内を通過させる速さについて、容易に理解するはずである。予め形成された型内に投入された製剤は、次に真空でフリーズドライされる。
【0044】
本開示の第2の実施形態は、本開示の第1の実施形態の方法に従って作製される多相速溶剤形に関する。さらに、本開示の第3の実施形態は、(a)少なくとも1つのゲル化マトリックス層と、(b)少なくとも1つの非ゲル化マトリックス層とを含む、薬学的に活性な成分を送達するための多相凍結乾燥速溶剤形に関する。
【0045】
本開示で使用する場合、「非ゲル化マトリックス層」という用語は、非ゲル化マトリックス形成剤と、任意選択で、溶媒、薬学的に活性な成分、賦形剤、及び/又は他のマトリックス形成剤とを含む、予め形成された型内に形成される層を意味し、この層は、本開示の第1の実施形態に関連して上述したように、予め形成された型内に順次投入され、凍結され、フリーズドライされていることが好ましい。好ましい実施形態では、非ゲル化マトリックス層は、非ゲル化マトリックス形成剤、マンニトール及び水を含む製剤で構成される。
【0046】
同様に、本開示で使用する場合、「ゲル化マトリックス層」という用語は、ゲル化マトリックス形成剤と、任意選択で、溶媒、薬学的に活性な成分、賦形剤、及び/又は追加の薬学的に許容される作用物質とを含む、予め形成された型内に形成される層を意味し、この層は、本開示の第1の実施形態に関連して上述したように、予め形成された型内に順次投入され、凍結され、フリーズドライされていることが好ましい。好ましい実施形態では、ゲル化マトリックス層は、ゲル化ゼラチン、マンニトール及び水を含む製剤で構成される。
【0047】
本開示の第1の実施形態に対して、薬学的に活性な成分、ゲル化マトリックス剤、非ゲル化マトリックス形成剤、予め形成された型、追加の薬学的に許容される作用物質、賦形剤、成分などの同定に関して上述した詳細は、本開示の第2及び第3の実施形態に対しても同一である。
【0048】
本開示の第2及び第3の実施形態の多相凍結乾燥速溶剤形において、ゲル化マトリックス層と非ゲル化マトリックス層の重量比は、約1:5〜約5:1の範囲が好ましく、約1:4〜約4:1の範囲がより好ましく、約1:2〜約2:1の範囲が最も好ましい。
【0049】
本発明の剤形は、速溶剤形であり、その結果、崩壊時間がより速いという明確な利点を有している。投薬の経路としては、経口、経膣及び経鼻があり得るが、経口が好ましい。口腔内に置かれて唾液に接触すると、剤形は、約1〜約60秒以内で、好ましくは約1〜約30秒以内で、より好ましくは約1〜約10秒以内で、最も好ましくは約5秒未満で崩壊することができる。本発明の剤形は、英国特許第1548022号に記載された剤形、換言すれば、活性成分及び溶媒中の担体溶液を含む組成物から溶媒を昇華させて固体状態にすることによって得られた、活性成分と、活性成分に対して不活性な水溶性又は水分散性担体との網目構造を含む固体速溶剤形と類似している。しかし、この‘022特許は、多相型の製剤に関して手引きも示唆もしていない。
【0050】
実際、本発明の多相剤形は、少なくとも2つの別個の層で構成されるため、優れた送達系である。したがって、2つの不適合な活性成分又は賦形剤を使用することが可能である。なぜなら、一方をある層に置き、他方を別の層に置いてもよいからである。さらに、マトリックス形成剤としてのゲル化ゼラチンの使用を活かす、すなわち、製造された錠剤の表面の変形を最少にすることが可能であり、非ゲル化マトリックス形成剤の使用を活かす、すなわち、生物製剤の場合に効果を発揮させることも可能である。換言すれば、凍結乾燥製剤中のゲル化及び非ゲル化マトリックス形成剤のいずれの利点も活かすことが可能である。
【0051】
(実施例)
本発明は、特定の薬物のいずれにも限定されるものではなく、FDDFに製剤化された場合のある薬物の問題を解決するものである。以下の実施例は、本発明の実践を好ましい実施形態の一部によって例示するものである。特許請求の範囲内の他の実施形態は、当業者には明らかであろう。
【0052】
(実施例1)
2つの製剤がマトリックス形成剤を含有することを除いて、Seagar, H.、「Drug-Delivery Products and Zydis Fast Dissolving Dosage Form」、J. Pharm. Pharmaco、第50巻、375〜382頁(1998)に記載されている当技術分野で公知の種類の凍結乾燥FDDFを調製した。以下のTable 1 (表1)に示す組成を有する、製剤1a(非ゲル化)及び製剤1b(ゲル化)を調製した。まず、製剤1aは、化工デンプン、マンニトール及び水を組み合わせ、混合物を15分間75℃まで加熱することによって調製した。続いて、溶液を冷却水浴槽中で5℃まで冷却し、5℃で保持したまま、投入1回当たり150mgで分配する半自動Hamilton投入ポンプを使用して、製剤1aを400個のブリスターポケットに投入した。製剤1bは、ゼラチン、マンニトール及び水を組み合わせ、混合物を60℃で15分間加熱することによって調製した。続いて溶液を、例えば20℃〜25℃の周囲温度まで冷却水浴槽中で冷却し、周囲温度で保持したまま、それを400個のブリスターポケット内の製剤1aを覆う層を成すように投入し、このようにして、2層を形成した。投入した製剤は、次に、前もって-80℃に設定した、液体窒素凍結トンネルを3.25分間通過させることによって、直ちに凍結させた。凍結させた単体は、棚温度0℃、チャンバー圧0.5mbarのUsiforid SMH90フリーズドライヤー内で6時間フリーズドライさせた。フリーズドライさせた錠剤を目視で検査したが、目立った欠陥は認められなかった。錠剤は、37℃の精製水中に置くと、修正USP崩壊法(modified USP disintegration method)で測定して、2秒以内で即座に崩壊した。
【0053】
(比較例1)
温度を5℃に設定して、製剤1aをブリスターポケットに300mg投入し、実施例1と同一条件下で加工する、すなわち凍結し、フリーズドライした。フリーズドライさせた錠剤は、実施例1と同じ方法で検査した。75%の錠剤で著しい表面凝塊物(>2mm)が認められた。
【0054】
(実施例2)
多相凍結乾燥FDDFは、以下のTable 1 (表1)で示す組成を有する、製剤2a(非ゲル化)及び製剤2b(ゲル化)を使用して調製した。総量150mgの製剤2aを、化工デンプン、マンニトール及び水を組み合わせ、混合物を15分間60℃まで加熱することによって調製した。続いて溶液を冷却水浴槽中で5℃まで冷却し、5℃で保持したまま、投入1回当たり150mgで分配する半自動Hamilton投入ポンプを使用して、製剤2aを400個のブリスターポケットに投入した。製剤2bは、ゼラチン、マンニトール及び水を組み合わせ、混合物を15分間60℃まで加熱することによって調製した。続いて溶液を、例えば20℃〜30℃の周囲温度まで冷却水浴槽中で冷却し、周囲温度で保持したまま、それを400個のブリスターポケット内の製剤2aを覆う層を成すように投入し、このようにして、2層を形成した。ブリスターポケットは、続いて実施例1と同じ方法で処理した。
【0055】
フリーズドライさせた錠剤の表面欠陥を検査した。調製したFDDFには、目立った欠陥は認められなかった。FDDFの崩壊時間は、修正USP崩壊法で測定して、2秒未満であった。
【0056】
他の多相凍結乾燥FDDFは、総量150mgの製剤2aで調製した。製剤2aは、調製した後に、冷却水浴槽中で5℃まで冷却し、5℃で保持したまま、400個のブリスターポケットに投入した。製剤2c(以下の表参照)は、ゼラチン、マンニトール及び水を組み合わせ、この混合物を60℃まで15分間加熱した。続いて、溶液は、例えば20℃〜30℃の周囲温度まで、冷却水浴槽中で冷却し、周囲温度で保持したまま、製剤2aを覆う層を成すように投入した。ブリスターポケットは、続いて、実施例1と同様の方法で処理した。
【0057】
フリーズドライさせた錠剤の表面欠陥を検査した。調製したFDDFには、目立った欠陥は認められなかった。FDDFの崩壊時間は、修正USP崩壊法で測定して、2秒未満であった。
【0058】
(比較例2)
多相凍結乾燥FDDFは、総量150mgの製剤2a(非ゲル化)で調製した。製剤2aは、380個のブリスターポケットに5℃で投入した。続いて、製剤2cと同じ方法で調製した総量150mgの製剤2d(非ゲル化)を、周囲温度で、製剤2aを覆う層を成すように投入した。製剤2a及び2dの組成は、以下のTable 1 (表1)で示される。凍結乾燥させた錠剤を検査したが、5%の錠剤で表面凝塊物が認められた。フリーズドライさせた錠剤の崩壊時間は、修正USP崩壊法で測定して、1秒未満であった。
【0059】
(実施例3)
本発明の多相凍結乾燥FDDFの産業上の利用可能性について試験した。製剤3a及び3bの組成は、以下のTable 1 (表1)で示される。錠剤は総量50kgの製剤3aを使用して調製した。製剤3aは、ゼラチン、マンニトール及び水を組み合わせ、60リットルBecomix(商標)ミキサーを使用して、混合物を60℃まで60分間加熱した。続いて、溶液は、10℃まで冷却水浴槽中で冷却し、10℃で保持したまま、製剤3aを33,600個のブリスターポケットに投入した。この直後に、総量50kgの製剤3bを、周囲温度で、製剤3aを覆うように投入した。製剤3bは、23℃の周囲温度まで冷却する以外は、製剤3aと同じ方法で調製した。続いて、ブリスターポケットを、実施例1と同様の方法で処理した。フリーズドライさせた錠剤の表面欠陥を検査した。単体の上面のひび割れ、凝塊物、及び突き出た凍上などのいかなる欠陥も、99.98%の錠剤で認められなかった。
【0061】
したがって、凍結乾燥FDDFの製造にとって、非ゲル化マトリックス形成剤を含む製剤及びゲル化マトリックス形成剤を含む製剤の順次投入には数多くの利点がある。得られる多相凍結乾燥FDDFは、従来技術では知られておらず示唆もされていないその剤形の特定の使用を可能にする。
【0062】
本明細書に開示の好ましい実施形態の数多くの変更形態、修正形態及び変形形態は当業者にとって明らかであり、それらはすべて、特許請求される本発明の範囲の趣旨と範囲の内にあることが認識され、企図されるものである。例えば、具体的な実施形態を詳細に説明しているが、当業者は、前述の実施形態及び変形形態を修正して、様々な種類の代用、追加又は代替の材料を組み込むことができることを理解するであろう。したがって、本明細書に本発明のほんの僅かな変形形態しか記載してなくとも、そのような追加の修正形態及び変形形態並びにその均等物の実行は、添付の特許請求の範囲に定義される、本発明の趣旨と範囲の内にあると解すべきである。本明細書に引用する特許出願、特許及び他の刊行物のすべては、参照によってその全体をここに援用する。