特許第5723969号(P5723969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイエスピー・インヴェストメンツ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許5723969-放射線量測定方法 図000043
  • 特許5723969-放射線量測定方法 図000044
  • 特許5723969-放射線量測定方法 図000045
  • 特許5723969-放射線量測定方法 図000046
  • 特許5723969-放射線量測定方法 図000047
  • 特許5723969-放射線量測定方法 図000048
  • 特許5723969-放射線量測定方法 図000049
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723969
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】放射線量測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/04 20060101AFI20150507BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   G01T1/04
   G01T7/00 C
【請求項の数】18
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-503765(P2013-503765)
(86)(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公表番号】特表2013-524238(P2013-524238A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011029363
(87)【国際公開番号】WO2011126725
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2012年11月30日
(31)【優先権主張番号】61/322,632
(32)【優先日】2010年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511239100
【氏名又は名称】アイエスピー・インヴェストメンツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・マイク
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エフ・ルイス
(72)【発明者】
【氏名】シアン・ユ
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/108937(WO,A1)
【文献】 特開2001−004749(JP,A)
【文献】 特開2007−003463(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/077097(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/02
G01T 1/04
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板と該基板の上に配置された放射線感受性物質の層とを備えた放射線量測定方法較正フィルムを提供するステップであって、該放射線感受性物質が放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を備える、ステップと、
(b)前記放射線量測定方法較正フィルムの複数の離散領域を既知の線量の放射線に曝すステップと、
(c)被曝した前記放射線量測定方法較正フィルムを、複数のカラー応答チャネルにおいて走査して、複数の成分カラーチャネルにおける応答を有するデジタル画像(I)を生成するステップと、
(d)前記デジタル画像(I)を測定して、各成分カラーチャネルにおける被曝領域のスキャナ応答値を求めるステップであって、前記スキャナ応答値が、光学スキャナによって決められるフィルム上の箇所において透過又は反射される光強度の測定値である、ステップと、
(e)各成分カラーチャネルにおける前記スキャナ応答値対対応する線量値をプロットして、前記スキャナ応答値の関数として線量値を表す関数にデータをフィッティングすることによって、各成分カラーチャネルに対する線量測定方法フィルム較正曲線を求めるステップと、
(f)基板と該基板の上に配置された放射線感受性物質の層とを備えた放射線量測定方法測定フィルムを提供して、前記放射線量測定方法測定フィルムを複数のカラー応答チャネルにおいて走査して、複数の成分カラーチャネルにおける応答を有するデジタル画像(I)を生成するステップであって、該放射線感受性物質が放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を備え、前記測定フィルムが、放射線量パターンに曝された複数の領域で構成されている、ステップと、
(g)前記線量測定方法フィルム較正曲線を適用して、前記測定フィルムのデジタル画像を備えた各位置及び各成分カラーチャネルにおける応答を、複数の較正曲線を用いて、前記成分カラーチャネルにおける放射線量値の間の差が最小化されるように、放射線量に依存する複数の線量依存値を有する線量依存部分と、放射線量に依存しない複数の線量無依存値を有する線量無依存部分とに分割するステップと、
(h)前記線量依存値及び前記線量無依存値を用いて、前記放射線量測定方法測定フィルムの線量マップ及び厚さマップを生成するステップと、
(i)前記線量依存値及び前記線量無依存値を用いて、前記放射線量測定方法測定フィルムの線量マップに含まれる信号ノイズのマップを生成するステップと、
(j)前記放射線量測定方法測定フィルムの線量マップから前記信号ノイズを除去するための補正関数を求めるステップと、
(k)前記補正関数を適用して、前記放射線感受性物質の層の厚さの変動を考慮した補正線量マップを提供するステップとを備えた放射線量測定方法。
【請求項2】
デジタル画像がRGBデジタル画像である、請求項1に記載の放射線量測定方法。
【請求項3】
前記補正関数が参照チャネルに基づいた均一性補正を含み、前記参照チャネルが、マーカー染料が最大応答を提供するカラーチャネルである、請求項2に記載の放射線量測定方法。
【請求項4】
前記補正関数が三重チャネル補正を備え、前記三重チャネル補正が、三つのカラーチャネルの応答を用いて、放射線感受性成分の厚さの差に対する放射線感受性フィルムの応答を補正する補正方法である、請求項1に記載の放射線量測定方法。
【請求項5】
前記較正曲線が、可逆フィッティング関数を用いて生成される、請求項1に記載の放射線量測定方法。
【請求項6】
前記放射線不浸透性物質が染料を備える、請求項1に記載の放射線量測定方法。
【請求項7】
前記染料がタルトラジン染料を備える、請求項6に記載の放射線量測定方法。
【請求項8】
前記放射線感受性活性成分が、
A‐(CH‐C=C‐C=C‐(CH‐B
の構造を有する実質的に結晶性の画像受容ポリアセチレン化合物を備え、
m及びnが独立的に6から14の間の整数であり、A及びBが互いに独立して、メチル、カルボニル、ヒドロキシ、アミド、低アルキル置換アミド、最大10個の炭素原子を有する脂肪又は芳香カルボキシレートエステル基、一価又は二価のカルボキシレート金属塩基、ハロ、カルバミル、低アルキル置換カルバミル又はトシル、20から60個の炭素原子及び共役構造を有するこれらポリアセチレンのトリイン又はテトライン生成物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の放射線量測定方法。
【請求項9】
前記放射線感受性活性成分が、ペンタコサジイン酸、又は、ペンタコサジイン酸の塩を備える、請求項1に記載の放射線量測定方法。
【請求項10】
複数の既知の放射線量レベルが、3から25個の異なる線量レベルを備える、請求項1に記載の放射線量測定方法。
【請求項11】
既知の放射線量レベルが、1cGyから100000Gyの間の範囲内である、請求項1に記載の放射線量測定方法。
【請求項12】
(a)複数の離散領域において複数の異なる放射線量に曝された放射線量測定方法較正フィルムを走査して、デジタル画像(I)を生成するステップと、
(b)所定の線量の放射線に曝された放射線量測定方法測定フィルムを走査して、デジタル画像(I)を生成するステップと、
(c)前記放射線量測定方法較正フィルム及び前記放射線量測定方法測定フィルムの各々が、基板と、前記基板上に配置された放射線感受性物質の層とを備え、前記放射線感受性物質が、放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を備え、
(d)前記放射線感受性活性成分の被曝が、線量に依存する応答値を提供する着色化合物を生じさせ、前記放射線不浸透性物質が、線量に実質的に依存しない応答値を提供し、
(e)前記デジタル画像を調整して、線量に依存しない応答値に基づいて画像中に存在する変動を考慮して、補正画像を提供するステップとを備えた放射線量測定方法。
【請求項13】
吸収線量と応答値との間の関係性に基づいた較正関数を適用することによって、前記補正画像を線量を表す画像に変換するステップを更に備えた請求項12に記載の放射線量測定方法。
【請求項14】
前記デジタル画像がRGBデジタル画像である、請求項12に記載の放射線量測定方法。
【請求項15】
前記放射線感受性活性成分が、
A‐(CH‐C=C‐C=C‐(CH‐B
の構造を有する実質的に結晶性の画像受容ポリアセチレン化合物を備え、
m及びnが独立的に6から14の間の整数であり、A及びBが互いに独立して、メチル、カルボニル、ヒドロキシ、アミド、低アルキル置換アミド、最大10個の炭素原子を有する脂肪又は芳香カルボキシレートエステル基、一価又は二価のカルボキシレート金属塩基、ハロ、カルバミル、低アルキル置換カルバミル又はトシル、20から60個の炭素原子及び共役構造を有するこれらポリアセチレンのトリイン又はテトライン生成物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項12に記載の放射線量測定方法。
【請求項16】
前記放射線感受性活性成分が、ペンタコサジイン酸、又はペンタコサジイン酸の塩を備える、請求項15に記載の放射線量測定方法。
【請求項17】
前記放射線不浸透性物質が染料である、請求項12に記載の放射線量測定方法。
【請求項18】
前記染料が、タルトラジン、エオシン、キノリンイエロー、メタニルイエロー、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項17に記載の放射線量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、放射線量測定方法及びその方法を実行するための関連デバイスに関する。特に、本発明は、放射線量測定方法フィルム内の放射線感受性物質の量の変動を補償するこのような方法及び関連デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線放出源が用いられている施設、例えば癌患者が放射線治療を受ける病院や、血液製剤が照射される血液バンクでは、放射線放出源によって伝えられる放射線量を定量的に求めるのに、多様な方法を用いる。実践されている方法は、熱ルミネッセンス線量計(TLD,thermoluminescent dosimeter)、電離型放射線検出器、写真フィルム、及び、ラジオクロミック物質の使用を含む。TLDは、複雑で時間のかかる読み出しプロセスを要するので、不便である。電離型放射線検出器は、扱い難くて、複雑な設定を要する。写真フィルムは、読み出しの前に時間のかかる化学的処理手順を要する。ラジオクロミック物質は、露光後処理を要せず、高空間分解能で放射線量を測定することができるので、好ましいが、線量の計算が複雑なステップシーケンスを要して、誤差が生じ易いので、現状では不便である。
【0003】
特許文献1には、例えば、患者が放射線治療中に受ける放射線のレベルを求める際に用いるための放射線量計が記載されていて、その放射線量計は、放射線感受性物質の層が設けられた基板を備える。放射線感受性物質は、放射線被曝の程度に従って系統的に変化する光学密度を有する。線量計は、カード又はフレキシブル基板の形状を取り得て、患者又は他の照射対象の上に配置可能であり、また、反射又は透過密度計を含む線量リーダー内に配置可能であり、又はその中のスロットを介してスライド可能である。
【0004】
放射線量計の放射線感受性物質は、ポリマーマトリクス中に分散させた微結晶ペンタコサジイン酸(PCDA,pentacosadiynoic acid)から成り得る。モノマーPCDA結晶、PCDAの金属塩等の関連化合物を電離放射線に曝すと、徐々に重合が生じるが、重合の程度は、放射線量と共に増大する。重合の量(つまり、放射線量)を、曝された線量計のスペクトル吸収又は光学密度のいずれかを測定することによって、求めることができる。しかしながら、これらのパラメータは、測定時のデバイスの温度、PCDA分散体の厚さ、ポリマーマトリクスの含水量によっても変化することが知られている。線量測定の最大精度は、温度、厚さ、水分の影響を考慮しなければならない。
【0005】
放射線量測定方法フィルムは、一点における放射線被曝を測定する手段を提供するが、その主な利用方法は、放射線被曝の二次元マップ(つまり、二次元アレイ中の多数の点における放射線被曝)を得ることである。一般的なユーザーは、75dpiの空間分解能で一つ又は複数のカラーチャネルにおいて8インチ×10インチのサイズのフィルムを測定し得て、450000点の放射線量のマップを生成する。勿論、他の分解能を用いて、放射線被曝マップを生成するこができる。
【0006】
実際には、多数の点における放射線感受性フィルムの測定には、問題がある。問題は、測定を行う手段の利用性及びコストである。一次吸収ピークにおけるフィルム(例えば、PCDAや、PCDAのリチウム塩(LiPCDA))の活性成分の吸光度及び所定の波長における他の成分の測定は、走査型分光光度計の使用を要する。このような設備は、簡単には利用できず、また、コストが高い。更に、測定が必要とされる特定の波長における光源の低強度に起因して、動作速度が遅い。
【0007】
この問題の考えられる解決策は、フィルム又はドキュメントスキャナを用いて、フィルムの測定点を収集することである。このような手段の利点は、こうしたスキャナは普及していて、比較的低コストであり(大抵1000ドル未満)、高空間分解能で走査して(最大2400dpi)、動作が高速であり(30秒未満で75dpiの分解能で8インチ×10インチを走査)、色を測定するように構成されている。
【0008】
フィルムスキャナは、分光光度計とは異なり、特定の波長における吸光度を測定するのではなくて、波長帯にわたって測定を行う。特定のモデルのスキャナが動作する波長帯は、光源のスペクトル出力、光路中の光学フィルタのスペクトル吸光度、及び検出器のスペクトル応答を含む複数の要因の組み合わせによって定められる。カラー測定用に構成されたスキャナは典型的に、可視スペクトルの赤、緑、及び青の部分を定める三つの波長帯にわたって積分された吸光度を評価する。カラー帯内の全信号に対する各波長における吸光度の寄与は、波長毎に異なる。各波長の重みは、ユーザー定義ではなく、光源のスペクトル出力、光路中の光学フィルタのスペクトル吸光度、及び検出器のスペクトル応答という上記要因に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5637876号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0129759号明細書
【特許文献3】米国特許第5420000号明細書
【特許文献4】米国特許第4970137号明細書
【特許文献5】米国特許第4734355号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
放射線量測定方法及びその方法を実行するための関連デバイスが開示される。特に、放射線量測定フィルム中の放射線感受性物質の量の変動を補償する方法及び関連装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
放射線感受性物質に比例して放射線不浸透性物質を含む放射線量測定方法フィルムが開示され、その放射線不浸透性物質によって、放射線量測定方法フィルム中の放射線感受性物質の量の変動が補償され得る。
【0012】
利用可能なポリアセチレン放射線感受性成分は、被曝すると着色ポリマーを生じさせる。このようにして生じたポリマーは、市販の安価なフィルムスキャナが動作する三つ全ての可視スペクトル帯において吸収性を示し、吸収度は、少なくとも一つのカラー帯において比較的高く、少なくとも一つのカラー帯において比較的低い。少なくとも一つのカラー測定帯において実質的に吸光度を有さない放射線不浸透性物質を実際に選択することが可能であり、厚さの補正は、受信信号が放射線不浸透性物質、並びに、活性成分の被曝による着色成分の寄与を有するという事実を考慮しなければならない。
【0013】
一側面によると、放射線量測定方法は、
(a)基板と、基板の上に配置された放射線感受性物質(その放射線感受性物質は放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を備える)の層とを備えた放射線量測定方法較正フィルムを提供するステップと、
(b)放射線量測定方法較正フィルムの離散領域を既知の線量の放射線に曝すステップと、
(c)複数のカラー応答チャネルにおいて被曝した放射線量測定方法較正フィルムを走査して、複数の成分カラーチャネルにおける応答を有するデジタル画像Iを生成するステップと、
(d)デジタル画像Iを測定して、各成分カラーチャネルにおいて被曝領域のスキャナ応答値を求めるステップと、
(e)各成分カラーチャネルにおけるスキャナ応答値対対応する線量値をプロットして、スキャナ応答値の関数として線量値を表す数学関数にデータをフィッティングすることによって、各成分カラーチャネルに対する線量測定方法フィルム較正曲線を求めるステップと、
(f)基板と、基板の上に配置された放射線感受性物質(その放射線感受性物質は放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を備える)の層とを備えた放射線量測定方法測定フィルムを提供して、複数のカラー応答チャネルにおいて放射線量測定方法測定フィルムを走査して(その測定フィルムは、放射線量パターンに曝された複数の領域で構成されている)、複数の成分カラーチャネルにおける応答を有するデジタル画像Iを生成するステップと、
(g)線量測定方法フィルム較正曲線を適用して、測定フィルムのデジタル画像を備えた各位置及び各成分カラーチャネルにおける応答を、複数の較正曲線を用いて、成分カラーチャネルにおける放射線量値の間の差が最小化されるように、放射線量に依存した複数の線量依存値を有する線量依存部分と、線量に依存しない複数の線量非依存値を有する線量非依存部分とに分割するステップと、
(h)線量依存値及び線量非依存値を用いて、放射線量測定方法測定フィルムの線量マップ及び相対的厚さマップを生成するステップと、
(i)線量依存値及び線量非依存値を用いて、放射線量測定方法測定フィルムの線量マップに含まれた信号ノイズのマップを生成するステップと、
(j)放射線量測定方法測定フィルムの線量マップから信号ノイズを除去するために補正関数を求めるステップと、
(k)補正関数を適用して、放射線感受性物質の層の厚さの変動を考慮した補正線量マップを提供するステップと、
(l)基板と、基板の上に配置された放射線感受物質(その放射線感受物質は放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を備える)の層とを備えた放射線量測定方法測定フィルムを提供するステップと、
(m)複数のカラー応答チャネルにおいて放射線量測定方法測定フィルム(その測定フィルムは、放射線量パターンに曝された複数の領域で構成されている)を走査して、複数の成分カラーチャネルにおける応答を有するデジタル画像Iを生成するステップと、
(n)測定フィルムのデジタル画像を有する各位置及び各成分カラーチャネルにおける応答を、複数の較正曲線を用いて、成分カラーチャネルにおける放射線量値の間の差が最小化されるように、放射線量に依存する複数の線量依存値を有する線量依存部分と、放射線量に依存しない複数の線量無依存値を有する線量非依存部分とに分割するステップと、
(o)線量依存値及び線量無依存値を用いて、放射線量測定方法測定フィルムの線量マップ及び相対的厚さマップを生成するステップと、
(p)線量依存値及び線量無依存値を用いて、放射線量測定方法測定フィルムの線量マップに含まれる信号ノイズのマップを生成するステップと、
(q)放射線量測定方法測定フィルムの線量マップから信号ノイズを除去するために補正関数を求めるステップと、
(r)補正関数を適用して、放射線感受性物質の層の厚さの変動を考慮した補正線量マップを提供するステップとを備える。
【0014】
特定の実施形態によると、放射線量測定方法フィルムは、基板と、基板の上に配置された放射線感受性物質の層とを備え、その放射線感受性物質は放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を備える。
【0015】
他の側面によると、放射線量測定方法は、
(a)或る線量の放射線に曝された放射線量測定方法測定フィルムを走査してデジタル画像Iを生成するステップであって、その放射線量測定方法測定フィルムが、基板と、基板の上に配置された放射線感受性物質の層とを含み、放射線感受性物質の層が、放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を含み、放射線感受性活性成分の被曝が、スキャナの少なくとも一つの成分チャネルに依存した吸光度を示す着色化合物を生じさせて、放射線不浸透性物質が、スキャナの少なくとも一つの成分チャネルにおける線量に実質的に依存しない吸光度を示す、ステップと、
(b)放射線感受性物質層の厚さの変動を考慮することによって、デジタル画像を調整して、補正画像を生成するステップとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の特定の実施形態に従って使用されるコンピュータシステム及びスキャナを示す図である。
図2】放射線被曝後のフィルムの画像と、赤色チャネルにおける応答から計算された線量マップである。
図3】厚さを補正せずに計算された曝露領域の線量プロファイルを示すグラフである。
図4】厚さ異常性を補正した赤色チャネルから計算された応答プロファイルを示すグラフである。
図5】三重チャネル補正方法を用いた測定画像の線量非依存部分と線量依存部分を示す。
図6】三重チャネル補正方法を用いて導出された線量非依存画像部分にわたるプロファイルである。
図7】三重チャネル方法を用いた補正前後の線量プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一側面によると、放射線感受性物質の厚さの変動を考慮した方法で線量応答の決定を促進する放射線量測定方法が説明される。特定の実施形態によると、線量応答は、少なくとも二つの成分チャネルを用いて、特にフラットベッドカラースキャナの二つのカラーチャネルを用いて、計算され得る。そして、本方法は、測定された応答を二つの部分に分けることができて、一方が線量依存部分であり、他方が線量非依存部分である。線量非依存部分は、放射線感受性層の厚さに比例した値を有する。この部分を用いて、放射線感受性活性成分から導出された線量応答を補正して、活性成分の厚さの差によって生じる変動を考慮することができる。
【0018】
“画像”との用語は、本願において、走査されたサンプルに対応するデジタルデータのことを称する。デジタルデータは、スキャナから直接得られた生の値であるか、又は生の値に基づいた計算値(光学密度や吸光度の値等)であり得る。
【0019】
“放射線不浸透性物質(radiation−impervious material)”との用語は、放射線感受性層の厚さの測定基準を提供する放射線感受性層中の物質のことを称する。特定の側面によると、この物質は、放射線感受性活性成分がピーク吸光度を示すカラーチャネルとは異なるカラーチャネルにおいてピーク吸光度を示すマーカー染料であり得る。典型的な場合、放射線感受性層は、バインダー物質のマトリクス内に含有された放射線感受性成分及び放射線不浸透性物質で構成される。また、放射線感受性層は、防腐剤、酸化防止剤、保湿剤等の他の添加物を含み得る。放射線不浸透性物質又はマーカー染料は典型的に、放射線感受性物質のバインダーマトリクス内に溶解可能又は分散可能である。必須ではないが、マーカー染料の物質と、放射線感受性成分以外の放射線感受性層の他の成分は、被曝に対して顕著な応答を示さないものであり得て、つまり、物質のスペクトル応答は、50Gy以下、場合によっては100000Gy以下の放射線量に曝されても、吸光度の顕著な変化を示さないものであり得る。特定の実施形態によると、物質は、略0.001重量%から略10重量%、特に略0.01重量%から略1重量%、特定の場合には略0.1重量%から略0.5重量%の間の量で放射線感受性物質中に存在し得る。他の側面によると、放射線不浸透性物質は、放射線感受性層の一部であり得て、場合によっては、放射線感受性活性物質若しくはバインダー物質の成分であり得て、又は、放射線感受性層中の何らかの添加物であり得る。この側面によると、成分の吸光度信号は、染料に依存しない。放射線不浸透性物質は、少なくとも一つの成分チャネルにおいて略0.2から2.0の間、特に略0.5から1.0の間の吸光度を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0020】
マーカー染料は、放射線感受性層の厚さに比例した吸光度信号を提供することができる放射線不浸透性物質として使用可能である。マーカー染料の有用な例として、タルトラジン、エオシン、キノリンイエロー、メタニルイエローが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の側面によると、マーカー染料は、可視スペクトルの青色部分においてピーク吸光度を示し、可視スペクトルの赤色部分においてはほとんど又は全く吸光度を示さない。従って、これらの線量は典型的に黄色である。タルトラジン染料が特に有用である。
【0021】
放射線感受性物質層は、二種以上の放射線不浸透性物質又はマーカー染料を含み得て、放射線感受性層の厚さの変動を決めるのに用いることができる。放射線不浸透性物質又はマーカー染料は、信号が線量に依存しない限りにおいて、複数のカラーチャネルにおいて信号を生じさせ得る。
【0022】
少なくとも一つのカラー又は成分チャネルにおいて、吸光度の少なくとも一部は、放射線感受性活性成分に起因するものであり、その活性成分に起因する吸光度の一部は、放射線量に比例する。
【0023】
本発明の一側面によると、放射線量測定方法が開示される。本方法は、複数のカラー応答チャネルにおいて放射線量測定方法測定フィルムを走査することを含み、その測定フィルムは、放射線量パターンに曝されると、複数の成分カラーチャネルにおける応答を備えたデジタル画像Iを生成する。放射線量測定方法測定フィルムは、基板と、基板上に配置された放射線感受性物質の層とを備え、その放射線感受性物質は、放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を備える。測定フィルムのデジタル画像を備えた各箇所及び各成分カラーチャネルにおける応答は、複数の較正曲線を用いて、放射線量に依存した複数の線量依存値を有する線量依存部分と、放射線量に依存しない複数の線量非依存値を有する線量非依存部分とに分割されて、成分カラーチャネルにおける複数の放射線量値の間の差が最小化されるようにする。線量依存値及び線量非依存値は、放射線量測定方法測定フィルムの線量マップ及び相対的厚さマップを生成するのに用いられる。また、線量依存値及び線量非依存値は、放射線量測定方法測定フィルムの線量マップに含まれる信号ノイズのマップを生成するのにも用いられる。放射線量測定方法測定フィルムの線量マップから信号ノイズを除去するために補正関数を展開して、その補正関数を線量マップに適用して、放射線感受性物質の層の厚さの変動を考慮した補正線量マップを提供する。
【0024】
特定の実施形態によると、放射線量測定フィルムは、基板と、基板上に配置された放射線感受性物質の層とを備え、その放射線感受性物質は、放射線感受性活性成分及び放射線不浸透性物質を備える。
【0025】
他の側面によると、或る線量の放射線に曝された放射線量測定方法測定フィルムを走査してデジタル画像Iを生成することを含む放射線量測定方法が開示される。放射線感受性活性成分の被曝が、スキャナの少なくとも一つの成分チャネルにおける線量に依存した吸光度を示す着色化合物を生じさせる一方、放射線不浸透性物質は、スキャナの少なくとも一つの成分チャネルにおける線量に依存しない吸光度を示す。デジタル画像は、放射線感受性層の厚さの変動を考慮した補正画像を生成するように調整される。
【0026】
本発明の他の側面によると、放射線量測定方法フィルムの応答を測定するための方法が提供され、これは、カラー応答に対する線量に関する較正曲線を求めるのに含まれるステップも含む。一実施形態では、本方法は、複数の応答チャネルにおいて一つ又は複数の放射線量測定方法較正フィルム(較正フィルムは、既知の放射線量レベルに対応する多数の画像領域を含む)を走査して、複数の応答チャネルにおける応答を有するデジタル画像Iを発生させることと、デジタル画像を測定して、各応答チャネルにおける応答値を得ることと、各応答チャネルにおける応答値に対する複数の較正曲線を線量の関数として求めることとを含む。
【0027】
“ラジオクロミックフィルム”との用語は、本願において一般的に、電離放射線に曝された際に色を変化させて可視画像を生成するが、可視光や他の形態の非電離放射線に対する被曝からは顕著な変化を受けないフィルムのことを称する。
【0028】
“電離放射線”との用語は、本願において一般的に、原子に電子を失わせて帯電又は電離させるのに十分高いエネルギーレベルを有する放射線のことを称する。電離放射線は、アルファ粒子やベータ粒子のように高エネルギー粒子状であるか、又はガンマ線やX線のように電磁波状であり得る。高エネルギー粒子及び電磁波は、放射性原子(崩壊性であるか、又は加速電子を金属ターゲットに当てることによって生成可能である)の核から放出される。
【0029】
“スキャナ”との用語は、本願において一般的に、多次元フィルムを光学的に走査して、アレイの複数箇所におけるフィルムの透過率及び反射率に関する多次元画像を出力するのに使用可能なデバイスのことを称する。
【0030】
“フラットベッドスキャナ”との用語は、二次元平面内においてフィルムを走査するためのスキャナのことを称するのに用いられる。
【0031】
“CCDスキャナ”との用語は、センサデバイスが電荷結合素子のアレイであるスキャナのことを称するのに用いられる。
【0032】
“RGBスキャナ”及び“RGBカラースキャナ”との用語は、本願において一般的に、可視カラースペクトルの赤色部分、緑色部分及び青色部分を備えたカラーチャネルにおける応答値で構成された画像を生成するスキャナのことを称する。
【0033】
“カラーチャネル”との用語は、本願において一般的に、光学カラースキャナの複数の出力応答帯の一つのことを称するのに用いられる。
【0034】
“成分カラーチャネル”との用語は、本願において一般的に、複数のカラーチャネルで構成された画像内の複数のカラーチャネルの一つのことを称するのに用いられる。
【0035】
“応答値”及び“スキャナ応答値”との用語は、本願において一般的に、光学スキャナによって決められるようなフィルム上の箇所において透過又は反射される光強度の測定値のことを称する。
【0036】
“画素値”との用語は、本願において一般的に、デジタル画像内の個々の画素に対する応答値のことを称する。
【0037】
“マーカー染料”との用語は、本願において一般的に、電離放射線による被曝に不浸透性である(放射線を通さない)着色物質のことを称し、その着色物質は、放射線感受性フィルムの活性層内に含有されて、活性層の厚さに比例した少なくとも一つのカラーチャネルの参照応答値を提供する。
【0038】
“参照チャネル”との用語は、本願において、マーカー染料が最大応答を提供するカラーチャネルのことを称する。
【0039】
“三重チャネル補正”との用語は、本願において、三つのカラーチャネルの応答を用いて、放射線感受性成分の厚さの差に対する放射線感受性フィルムの応答を補正する補正方法のことを称する。
【0040】
本発明は、放射線量測定方法フィルム内の放射線感受性物質の厚さの変動を補償するための装置10及び方法を有する。装置10の例が図1に示されている。本発明は、本願において、フラットベッドスキャナ14と共に使用可能であるものとして説明されるが、後述のように、本発明を、他の多様な光学スキャナ装置のいずれかと共に用いることもできる。
【0041】
本方法を実行する装置又はコンピュータシステム10は、フラットベッドスキャナ14を備え得る(図1を参照)。装置10は、モニタ16、プリンタ18、処理ユニット20、キーボード22、及びマウス24を更に含み得る。装置10には、装置10がモニタ16上に走査された放射線量測定方法フィルムの画像を表示できるようにする画像処理ソフトウェア(図示せず)が備わり得る。また、コンピュータシステム10は、放射線量測定方法フィルムの画像をプリンタ18で印刷し得る。また、画像処理ソフトウェアは、画像からのデータを分析及び操作するための多様な方法を提供し得る。
【0042】
また、スキャナの較正は、バックグラウンド補正、つまり、画素コラム(走査方向)毎の較正も含み得る。典型的なフラットベッドスキャナによると、CCD検出器は、各カラー応答チャネルに対する光検出器の線形アレイを含む。検出器の線形アレイは、走査方向に垂直である。アレイ内の各素子は、走査に平行な領域内の応答を一掃して測定する。特定の実施形態によると、較正プロセスは、CCDアレイ内の各検出素子に対して較正された線量応答を提供する。
【0043】
本発明の一側面によると、本方法10は一般的に以下のステップを備える。第一ステップでは、放射線量測定方法フィルムを、フラットベッドスキャナ14の走査ベッドの上に配置する。フラットベッドスキャナ14を作動させて、放射線量測定方法フィルムを走査して、放射線量測定方法フィルムを表すデジタル画像データ信号を生成する。そして、画像データ信号を、コンピュータシステム10の処理ユニット20に転送して、走査された放射線量測定方法フィルムの画像を、モニタ16に表示し得て、又は、画像補正データを提供するように操作し得る。
【0044】
本発明の特定の側面の一つの顕著な利点は、ユーザーが放射線量測定方法フィルムを走査するだけでいいので使い易いという点である。実際、本発明は、市販のフラットベッドスキャナ及びコンピュータで使用可能である。
【0045】
本発明の一実施形態に係る装置10及び方法、並びにその顕著な特徴及び利点のいくつかについて概説してきたが、以下、装置10及び関連方法について詳述する。しかしながら、説明を始める前に、装置10及び方法が本願においてフラットベッドスキャナ14と共に使用され得るものとして示され説明されているが他の多様な光学スキャナ装置と共に使用することもできる点に留意されたい。例えば、装置10又は方法を、デジタルカメラや他の画像キャプチャデバイスと共に用いることができる。従って、本発明は、本願に示され説明されているフラットベッドスキャナ14と共に使用されると限定されるものではない。
【0046】
上記の点を念頭において、本発明の一実施形態に係る装置10及び方法は本願において、市販されていて当該分野において周知のタイプのフラットベッドスキャナ14と共に使用可能なものとして示され説明される。しかしながら、フラットベッドスキャナ14は当該分野において周知であり、本発明の教示を知った後においては当業者によって簡単に提供可能なものであるので、フラットベッドスキャナ14の多様な部品については、本願において詳述しない。
【0047】
図1に示されるように、フラットベッドスキャナ14は、コンピュータシステム又は装置10に接続され得て、そのコンピュータシステム又は装置は、モニタ16、プリンタ18、処理ユニット20、キーボード22、及びマウス24を含む。コンピュータシステム10には、そのコンピュータシステム10が走査されたフィルムの画像を適切なディスプレイデバイス16(CRTやLCDディスプレイ等)に表示できるようにする画像処理ソフトウェア(図示せず)が備わり得る。また、コンピュータシステム10は、走査されたフィルムの画像(図示せず)をプリンタ18で印刷し得る。
【0048】
装置10は、プロセッサ又は中央処理ユニット(CPU,central processing unit)20と、入力デバイス(例えば、スキャナ14、キーボード22、マウス24)と、出力デバイス(例えば、モニタ16、プリンタ18)を備え得る。装置10は、ストレージデバイスを更に含み得て、そこにはオペレーティングシステム、ファイル、アプリケーション、データベース、及び画像データ処理システムが記憶されている。オペレーティングシステムは、一旦インストールされると、コンピュータシステム10の多様なタスク、ジョブ、データ及びデバイスを管理し得る。装置10は、オペレーティングシステムがその機能を実行する際にアクセスし得るメモリを更に含み得る。ストレージデバイス又はメモリ等のコンピュータ可読ストレージデバイス内に含まれているのは、本方法の多様なステップ(ステップについては上記で概説し下記で詳述する)の一つ又は複数を実行するためのコンピュータ可読プログラムコードであり得る。CPU20は、ネットワーク(例えば、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、イントラネット、又はインターネット)上で、サーバ又はサーバプールにリンクされ得る。
【0049】
本発明の教示を知った後においては当業者に自明であるように、CPU20は多様で適切なプロセッサのいずれかを備え得ることは理解されたい。例えば、CPU20は、プロセッサ、ラップトップ又はデスクトップ型パーソナルコンピュータ(PC,personal computer)全体、又は本発明での使用のため専用に製造されたASIC(application specific integrated circuit)を備え得る。同様に、ストレージデバイス及びメモリは適切なコンピュータ可読ストレージデバイスであり得て、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)、VRAM(video memory)、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスケット、CD(compact disc)、DVD、フラッシュドライブ、メモリカード、磁気テープ、これらの組み合わせ等が挙げられる。更に、CPU20及びメモリは、別々のユニットである必要はなく、組み合わせられ得るが、代わりに、CPU20及び54を、別々に収容して、リモートネットワーク又は他の適切な接続上で互いにリンクさせ得る。また、あらゆる数のCPU20(つまり、一つ又は複数)、あらゆる数のストレージデバイス(つまり、一つ又は複数)、及びあらゆる数のメモリ(つまり、一つ又は複数)が、インターネット、イントラネット、LAN、WAN等を介して接続又はリンクされて存在し得る。このような場合、コンピュータ可読プログラムコードのストレージは、多様なストレージデバイス及びメモリに対して分布して、及び/又は、多様なCPU20によって部分的に実行され得る。更に、あらゆる数の適切な周辺機器(例えば、スキャナ14、モニタ16、プリンタ18、キーボード22、マウス24等)が、直接、間接(例えばネットワーク上)にCPU20に接続され得る。CPU20は、適切な接続(例えば、モデム、T‐1、DSL(digital subscriber line)、赤外線等)を用いて、ネットワークにリンクされ得る。
【0050】
装置10のストレージデバイス内には、フラットベッドスキャナ14と共に動作する画像データ処理システムが存在し得る。画像データ処理システムは、本方法の多様なステップの一つ又は複数を実行し得る。特に、画像データ処理システムは、フラットベッドスキャナ14によって生成された生のカラー画像データ信号(図示せず)を処理して、走査された対象の画像を表示するか、又は更に処理し得る。
【0051】
本願で示され説明される実施形態では、画像データ処理機能は、コンピュータシステム10のプロセッサ20内で生じる。例えば、多様な画像データ処理機能を実行するコンピュータプログラマブルコード(例えば画像データ処理ソフトウェア)が、提供され得る。プログラムコードは、コンピュータ可読ストレージデバイス(ストレージデバイスやメモリ等)内に含まれ得て、プロセッサ20上で動作し得る。代わりに、画像データ処理システムが、フラットベッドスキャナ14の筐体内に構築されるか、又はその中に存在し得る。言い換えると、フラットベッドスキャナ14が、画像データ処理システムを含み得て、走査デバイスによって生成された生のカラー画像データ信号の処理がフラットベッドスキャナ14内で生じる。代替実施形態では、特別に設計された(例えば“有線”)デバイスが提供され得て、スキャナ14及び装置10と共に動作する。その特別設計デバイスが、カラー画像データ信号を処理し得る。更に他の代替実施形態では、画像データ処理機能が、フラッシュベッドスキャナ14と、コンピュータシステム10のCPU20との間で分割されて、各々が処理機能の一部を行う。いずれにしろ、画像データ処理システムに対する適切な構成は、当業者が特定の応用に対する要求を考慮して、本発明の教示を知った後においては、簡単に達成され得る。
【0052】
画像データ処理システムは、当該分野において周知の多様な画像データ処理システムのいずれかを備え得る。従って、本発明は、特定のタイプの画像データ処理システムに限定されるものではない。更に、画像データ処理システムは当該分野において周知であり、画像データ処理システム自体の詳細は本発明を理解するために必要ではないので、本発明の好ましい一実施形態において用いられる特定の画像データ処理システムについては、本願で更に詳述することはしない。
【0053】
使用される画像データ処理システムのタイプに関わらず、画像データ処理システムのなんらかの部分がフラットベッドスキャナ14の筐体内に構築されるか又は存在している場合、画像データ処理システムに一つ又は複数の通信ポート(図示せず)を提供して、データをCPU20に転送又は“ダウンロード”できるようにすることが一般的には望ましい。多様な周知の通信ポート及びフォーマットのいずれかが利用可能であるが、好ましい一実施形態では、画像データ処理システムには、USB(universal serial bus)ポート(図示せず)及び/又は赤外線(IR,infra red)シリアルポート(図示せず)が設けられ得る。USBポート及び/又はIRシリアルポートは、スキャナの筐体の便利な箇所に配置され得る。
【0054】
上記で概説したように、本願で開示される多様なステップは、示される特定の順序で実行される必要はない。言い換えると、本願で説明される構成は、単に例示的なものであって、本発明の教示を限定するものではない。
【0055】
第一ステップでは、放射線量測定方法フィルムを、フラットベッドスキャナ14の走査ベッドの上に配置する。勿論、フラットベッドスキャナ14の代わりに、デジタルカメラや、他の携帯型光学スキャナデバイスも使用可能である。
【0056】
放射線量測定方法フィルム(又はその一部)及び走査ベッドを互いに隣接して配置させた後、フラットベッドスキャナ14を作動させて、放射線量測定方法フィルムを走査して、複数の成分チャネルにおける複数の応答を有するデジタル画像(典型的には、走査されたフィルムを表すカラーデジタル画像データ信号)を生成する。そして、カラー画像データ信号は、コンピュータシステム10に転送され得て、走査された対象の画像が、モニタ16に表示され得るか、又は、後述のように、データが更に処理され得る。
【0057】
当業者には、多様な方法を用いて、放射線量測定方法フィルムの領域を多様な線量レベルに自動的に曝すことができることが十分に認識されているものである。例えば、マルチリーフコリメータ、二次コリメータ、放射線減衰物質の固定ブロックを、単独で又は組み合わせて用いて、電離放射線への被曝中に複数の領域を異なって遮蔽することができる。放射線検出媒体の異なって遮蔽された部分によって、ビーム強度や個々の被曝継続期間等の電離放射線の特性を変更せずに、線量レベルを変動させることができる。本発明の他の側面によると、線量レベルの変動を、電離放射線の特性を変更することによって、被曝線量が適用される比率を変化させることによって、若しくは、被曝時間を変化させることによって、又は上記手段の組み合わせによって、得ることができる。
【0058】
個々の放射線量レベルは、放射線源、被曝時間、被曝率、放射線源と放射線検出媒体との間の距離等の多数の因子に依存する。本発明に係る放射線量測定フィルムの較正は典型的に、フィルムの使用中に想定される放射線量レベルの範囲をカバーする放射線量レベルに放射線検出媒体を曝すことを含む。例えば、典型的な放射線量レベルは、略1cGyから略100000Gyの範囲、特に略1cGyから略10000cGyの範囲、特に略1cGyから略200cGyの範囲、本発明の特定の側面によると略1cGyから略100cGyの範囲内であり得る。
【0059】
本発明の一実施形態は、放射線量測定フィルムがInternational Specialty Products製のGAFCHROMIC(登録商標)ラジオクロミックフィルム等のラジオクロミックフィルムのようなものである放射線量測定方法を提供する。本発明用に修正可能なラジオクロミック組成物の具体的な例として、本願にその全体が組み込まれる特許文献2(Lewis等、2003年7月10日発行)に開示されているものが挙げられるが、これに限定される訳ではない。
【0060】
本発明は、特定のタイプの放射線感受性物質に限定されるものではないが、以下の説明は、GAFCHROMIC(登録商標)ラジオクロミックフィルムのおいて用いられているのと同様の特に有用なタイプの物質の使用に基づいた本発明の実施形態に関する。GAFCHROMIC(登録商標)ラジオクロミックフィルムは、自己現像性であり、一般的なルームライトには顕著に感受性ではなく、所望のサイズに切断して使用可能である。電離放射線への被曝は、ラジオクロミックフィルムに急激な色の変化を生じさせて、典型的には暗くなる。暗くなる程度は、被曝に比例して、密度計やスキャナを用いて定量的に測定され得る。
【0061】
GAFCHROMIC(登録商標)フィルム媒体の活性成分は微粒子の放射線感受性モノマーであり、ポリマーマトリクス中に分散していて、ポリエステルフィルムベース上にコーティングされている。活性モノマー成分が電離放射線に曝されると、重合反応が開始して、染料ポリマーの生成が生じる。ポリマー自体が染料であるので、被曝はフィルム内の着色を生じさせる。特定の実施形態に係る活性成分は、ジアセチレンとして知られている分子クラスに属する長鎖脂肪酸を有する。多くのジアセチレン族は、分子間秩序(例えば、結晶状態やミセル状態)が存在する場合のみ、特徴的に放射線感受性である。適切なアセチレン化合物は、
A‐(CH‐C=C‐C=C‐(CH‐B
構造を有し、ここで、n及びmは両方とも略0から20の間の整数であり、特に略6から14の間の整数であり、A及びBは独立的に、メチル基、カルボキシル基、又は金属カルボキシレート基である。放射線に曝されると、活性ジアセチレンは、固体状態重合反応を経て、ポリジアセチレンと称される染料ポリマーを生成する。ポリジアセチレンの色及びスペクトル吸光度は、特定の分子構造に対して特有であるが、好ましくは、色の変化が放射線感受性フィルム上においてはっきりと目に見える。色の変化は、シアン、紫、又はマゼンタであることが多い。
【0062】
このようなポリアセチレンの具体的な例として、ペンタコサ‐10,12‐ジイン酸、13,15‐オクタコサジイン、ドコサ‐10,12‐ジイン‐1,22‐ジオイック酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。勿論、ペンタコサ‐10,12‐ジイン酸は、電子放射線照射に対して異様に高い感度を提供するので、特に有用である。しかしながら、共役構造を有する他の一般的な結晶カラー現像ポリアセチレンの分散体を、単独で、又は好ましいジインと混合して、本発明の画像受容層として使用することができる。このような化合物は、上記構造のジインを含み、A及び/又はB部分は、低アルキル又はカルボキシルに加えて、ヒドロキシ、アミド、低アルキル置換アミド、最大10個の炭素原子を有する脂肪又は芳香カルボキシレートエステル基、一価又は二価のカルボキシレート金属塩基、ハロ、カルバミル、低アルキル置換カルバミル又はトシル、また、略20から60個の炭素原子及び共役構造を有する上記ポリアセチレンの対応するトリイン、テトライン生成物でもあり得る。こうした化合物の例として、10,12‐ドコサジインジオール、9,11‐エイコサジイン酸のジトルエン‐p‐スルホネート、10,12‐ドコサジインジオニック酸のモノエチルエステル、10,12‐ペンタコサジイン酸のリチウム、ナトリウム又はカリウム塩、ヘンエイコサ‐10,12‐ジイン酸の亜鉛塩、エイコサ‐5,7‐ジイン酸のマグネシウム塩、10,12‐ドコサジイン塩化物、10,12‐ペンタコサジイン(m‐トリル‐ウレタン)、10,12‐ペンタコサジイン{[(ブトキシ‐カルボニル)‐メチル]ウレタン}、N‐(ジメチル)‐10,12‐ペンタコサジインアミド、N,N’‐ビス(1‐メチルベンジ‐1)10,12‐ペンタコサジインジアミド等が挙げられる。また、本発明に従って使用されるジアセチレンは一般的に、以下の化学式
R‐C=C‐C=C‐R’
を有し得て、例えば、R及びR’は共に、
CH‐‐O‐‐CON‐‐H‐‐(CHCH
である。このようなジアセチレンは、熱アニーリング又は高エネルギー放射線照射のいずれかで、固体状態に重合する。適切な化合物は、本願に参照として組み込まれる特許文献3、特許文献4、特許文献5に開示されている。好ましくは、ポリアセチレン化合物は、少なくとも二つの共役アセチレン結合を有し、略10から60個の炭素原子を含む。
【0063】
入射低エネルギー光子放射を選択的に吸収する適切な化合物は、周期表のI族の金属ハロゲン化物及びそれらの組み合わせである。特に有用なのは、I族の金属塩化物、臭化物、ヨウ化物である。後述のように、これらの化合物を、入射低エネルギー放射を選択的に吸収するのに有効な量で加え得て、一般的には、コーティングの分散体に略0.1重量%から50.0重量%の量、特に略2.5重量%から20重量%の量で加え得る。
【0064】
本発明の一部側面によると、このようなハロゲン化物は、セシウム及びルビジウムハロゲン化物、特に、セシウム塩化物、セシウム臭化物、セシウムヨウ化物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0065】
他の適切な化合物は、原子数が55以上の元素の酸化物を含む。特に、サイズが実質的に1マイクロメートル以下の微粒子状のビスマス酸化物が特に有用である。
【0066】
また、追加の化合物を加えることもできて、その化合物は、金属イオンキレート剤又は封鎖剤であり得る。キレート剤を、ジアセチレン化合物の重量に基づいて、略0.01重量%から10.0重量%、特に略0.1重量%から2重量%の量で加えることができる。典型的なキレート剤として、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、次リン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、N,N,N’,N’‐エチレンジアミン四(メチレンホスホン酸)のナトリウム塩、1‐ヒドロキシエタン‐1,1‐ジホスホン酸のナトリウム塩、これらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
また、ラジオクロミック組成物に、不透明剤(乳白剤)を加え得る。一般的にこのような物質は、水に溶けない金属化合物であり、その金属化合物は、18以上の原子数を有する。適切な化合物の例として、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、カルボン酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩が挙げられる。また、酸化防止剤を組成物に加えることができて、ジアセチレン成分の重量に対して通常略0.01重量%から5重量%、特に略0.1重量%から1重量%の量で加えることができる。適切な酸化防止剤として、没食子酸プロピル、Tenox(登録商標)6(Tenox(登録商標)はEastman Chemical社の登録商標)、Tenox(登録商標)2、Tenox(登録商標)7、Tenox(登録商標)20、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、アルカリ金属硫化物及び亜硫酸塩、3‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチル‐フェニル硫化物、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、tert‐ブチルヒドロキノン、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン塩酸塩が挙げられる。
【0068】
また、アセチレン成分を二つの基板の間に挟み込むことができて、それらの基板の一方又は両方が、UV及び/又は可視波長領域の光をフィルタリング又は吸収する性能を有し得る。基板の少なくとも一方は、可視スペクトルの少なくとも一部において透明であることが望ましい。
【0069】
基板として特に有用なのは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース等の薄くてフレキシブルなフィルムである。
【0070】
本願において有用なラジオクロミックフィルムを調製するための特定の方法によると、ポリアセチレン化合物を、非溶媒液体中に分散させて、熟成させて、その放射線感受性を最大にし得る。また、この分散体は、溶解させたポリマーバインダーをも含み得る。バインダーの例として、ゼラチン、寒天、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、マレイン酸若しくはアクリル酸残基又はこれらの塩を含むポリマー及びコポリマーが挙げられる、そして、液体分散体を、フィルム(例えば、ポリエステル等のフィルム)の表面上に適用して、そのコーティングを乾燥させる。特に、通常の結晶性又は分子秩序性のポリアセチレン化合物を、ポリアセチレン化合物、非溶媒液体、及びその下に溶解したポリマーバインダーの総重量に基づいて、略2から50重量%の濃度で、非溶媒液体中に分散させる。そして、分散体を、(a)組成物を略0℃から略12℃の温度で略1日間から30日間の期間にわたって保存すること、(b)分散体を略−78℃から略−1℃の間の温度で略1時間から略75時間の期間にわたって冷凍すること、(c)分散体を略40℃から略100℃の間の温度で略10分間から略24時間の間の期間にわたって加熱すること、又は(d)上記方法の組み合わせによって、熟成し得る。この熟成段階は、基板上の分散体を乾燥させる前に終了するものである。
【0071】
本開示によると、放射線感受性層の厚さの変動を検出するために用いることのできる線量非依存応答を提供する物質又は物質の組み合わせが放射線感受性層内に存在する。特定の実施形態によると、マーカー染料等の物質が、基板上のコーティングの前に分散体に加えられる。マーカー染料を分散体と混合し得て、放射線感受性ポリアセチレン化合物と均一になるようにする。
【0072】
本発明の一側面によると、分散体の熟成の後に、200keV未満の入射低エネルギー光子放射の吸収を選択的に増大させる元素成分を有する化合物を、乾燥した組成物を曝した際に入射低エネルギー光子放射を吸収するのに有効な量で、分散体と混合させる。有用となり得る元素成分としては、塩素、臭素、ヨウ素、カリウム、ルビジウム、セシウム、バリウム、タングステン、鉛、ビスマスが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0073】
こうして混合された組成物を、基板又は支持層上の層として適用する。基板又は支持体の例として、ポリマー、金属、ガラス、シリコン、ヒ化ガリウムが挙げられるが、これらに限られるものではない。本発明の特定の実施形態によると、基板又は支持層は、低エネルギーX線に対して透過性のポリマーフィルムであり得る。そして、こうしてコーティングされた基板を、略環境温度から最大略100℃の間であるが、基板の歪み温度以下であって、且つ、コーティング成分の分解温度又はその中のポリアセチレン化合物の融点以下の温度で乾燥させる。乾燥工程は一般的に、略20秒間から略10時間の期間にわたって行われ、典型的には、15℃から60℃で略1分間から略5時間の期間にわたって行われる。
【0074】
こうして形成されたフィルムは、放射線感受性であり、照射されると、重合プロセスがポリアセチレン化合物内で開始して、コーティングの色が直ちに変化する。色は、放射線被曝に比例して暗くなる。暗くなる程度は、密度計、分光光度計、フィルムスキャナ等の多数の機器で測定され得る。一般的に、このような測定を行う場合、透明フィルムサンプルの色の変化は、サンプルを透過した光の割合を測定することによって、評価される。同様に、不透明フィルムベース上にコーティングされたフィルムは、サンプルから反射された光の割合を測定することによって、適切に試験される。
【0075】
フィルムが放射線被曝に比例して暗くなるので、その暗さを測定して、その測定結果を、本願で説明されるように決定される較正に基づいて放射線被曝の量を決定するための手段として用いることができる。従って、フィルムを、放射線場を測定してマッピングするための放射線量計として用いることができる。
【0076】
放射線は、あらゆるタイプの電離放射線であり得る。好ましくは、電離放射線は、アルファ粒子、ベータ粒子、X線、ガンマ線、短波長UV、中性子、荷電粒子放射線の形状を取る。これらの粒子又は光線は、放射性原子を崩壊させることによって、又は金属ターゲットに衝突する若しくは一定量のガス中に放電を生じさせる加速電子若しくは他の荷電粒子によって、形成され得る。本発明の一実施形態では、放射線は、イリジウム、好ましくはイリジウム192によって生成されたガンマ放射線である。本発明の他の実施形態によると、放射線はX線放射線である。X線は、電子が金属ターゲットの原子及び核と衝突すると生成される。
【0077】
本発明の特定の側面について、線量を測定する際に放射線感受性層の厚さの変動を考慮するために用いることができるアルゴリズムの以下の非限定的な例を参照して、更に詳述する。これら例は、本発明に従って使用可能な多様なアルゴリズムを説明するものではあるが、走査された画像の同等の調節及び修正を提供するものとして当業者に認識されているような他のアルゴリズムも利用可能である。
【0078】
参照チャネルに基づいた均一性補正
1. 画素値モデル
各画素インデックス(i,j)に対するカラーチャネル信号X=R,G,Bは、活性層の厚さの無次元基準τに反比例して
X(D)=1−[1−X(D)]τ (1)
となり、ここで、Dは、吸収された線量を表し、Xは、活性層の感度を表す単に線量に比例する関数である。関数X(D)の[0,1]の範囲の値を、フィルム又は画像スキャナを用いて測定する。モデル方程式(1)は、極限の場合
【数1】
つまり、フィルムが厚さゼロに対して完全に透明である場合を満たす。
同じ線量照射の領域(フラットフィールド)を有するとして、画素領域に対してチャネルXを平均化すると、
【数2】
となり、関数Xを以下のように表すことができる。
【数3】
式(1)とあわせると、各カラーチャネル値に対する任意の画素位置において
【数4】
となる。比
【数5】
は、活性層の相対的厚さであり、τに対して用いられるスケーリングに依存しない。較正プロセスによって、既知の線量照射における
【数6】
を測定して(同じ照射の平均化された測定)、活性層の厚さが一定であるという仮定の下においてのみ
【数7】
によって、特定の画素における線量を計算するのに用いることができるパラメータ化較正関数を相関させることができる。
逆画素値の比は、相対的な層の厚さに比例する。
【数8】
任意の画素位置において吸収された線量Dは、一対のカラーチャネル値に対してこの式を解くことで計算可能である。
【数9】
が得られて、相対的厚さ
【数10】
を参照する第二チャネルXrefを用いると、上記式は以下のようになる。
【数11】
この式は、線量Dに対して非線形である。
1) 活性層の厚さに変動が無いと(つまり、
【数12】
)、再び式(6)が得られる。
2) 参照チャネルの線量依存性が弱いと(つまり、
【数13】
)、非線形の式(9)を
【数14】
と単純化することができて、線量Dの明示的計算が可能になる。
3) 式(6)を用いて、
【数15】
によって線量を見積もることができて、式(9)を以下の線量の明示的な式(12)に単純化する。
【数16】
4) 特定の画素位置において式(9)を解くことは、関数Φの根を見つけることと等価であり、
【数17】
である。式(6)を用いて、線量Dの初期値Dを得ることができる。
2. 光学密度モデル
光学密度を、
=−log(X) (14)
として定義する。各画素インデックス(i,j)に対するカラーチャネル信号X=R,G,Bは、活性層の厚さの或る無次元基準τに反比例して
【数18】
となり、ここで、Dは、吸収された線量を表し、
【数19】
は、活性層の感度を記述する単に線量に比例する関数である。関数値d(D)は、フィルム又は画像スキャナを用いて式(14)で測定される。モデルの式(1)は極限の場合
【数20】
(つまり、フィルムが厚さゼロに対して完全に透明である場合)と、
【数21】
(つまり、フィルムが無限の厚さに対して完全に不透明である場合)とを満たす。
同じ線量照射の領域を有するとして(フラットフィールド)、画素領域に対してチャネルXを平均化すると、
【数22】
となり、ここで、
【数23】
は、平均化されたフィルムの厚さを表し、
【数24】
である。式(8)と同様に、
【数25】
が満たされることがわかる。
(a)参照チャネル補正
相対的厚さ
【数26】
を参照する第二チャネルXrefを用いると、
【数27】
となり、式(9)と同様に、
【数28】
となる。
1. 活性層の厚さの変動が無いとすると(つまり、
【数29】
)、式(22)から
【数30】
が得られるが、これは、式(6)の密度等価物である。
2. 定義
【数31】
は、
【数32】
として、密度値dを平均化する。この関数に対しては、対称性の関係
【数33】
が満たされる。線量に対する初期見積りとして
【数34】
を用いることができて(第二部は式(25)を用いる)、式(22)が
【数35】
となる。
3. 特定の画素位置において式(22)を解くことは、関数
【数36】
の根を見つけることと等価であり、
【数37】
である。式(23)を用いて、線量Dの初期値Dを得ることができる。
(b) 三重チャネル補正
式(15)及び(18)は、全てのXに対して
【数38】
を生じさせる。三つのカラーチャネル(波長)X、X及びXを用いると、各Xにして式(20)から線量値Dが得られる。一般的に、これらの線量値は、重なったノイズと、カラーチャネルの較正関数の近似特性とに起因して、互いに異なる。
この線量のオフセットを、相対的厚さ
【数39】
に関して最少化することができて、つまり、関数θ
【数40】
の最小値を
【数41】
の根を見つけることによって、求める。
【0079】
本発明の特定の側面を、以下の非限定的な例を参照してより詳述する。
【0080】
[例1]
コーティング組成物を、以下の成分を混合することによって調製した。
ポリビニルアルコール(水中で25%) 45重量部
ペンタコサジイン酸のリチウム塩(水中で18%) 50重量部
水 1.915重量部
界面活性剤 10G(水中で10%) 0.958重量部
【0081】
この組成物を透明ポリエステル基板上にコーティングした。流体を、スロットダイ塗布器によって基板上で計測して、0.005インチの公称の湿った状態での厚さのコーティングを形成した。湿ったコーティングを強制温風ドライヤにかけて、略28マイクロメートルの厚さの乾燥したコーティングを得た。このコーティングはほぼ無色であった。
【0082】
[例2]
コーティング組成物を以下の成分を混合することによって調製した。
ポリビニルアルコール(水中で25%) 45重量部
ペンタコサジイン酸のリチウム塩(水中で18%) 50重量部
タルトラジン(水中で15%) 1.915重量部
界面活性剤 10G(水中で10%) 0.958重量部
【0083】
この組成物を透明ポリエステル基板上にコーティングした。流体を、スロットダイ塗布器によって基板上で計測して、0.005インチの公称の湿った状態での厚さのコーティングを形成した。湿ったコーティングを強制温風ドライヤにかけて、略28マイクロメートルの厚さの乾燥したコーティングを得た。このコーティングは黄色であった。
【0084】
[例3]
例1の一枚のコーティングを分光光度計内に配置して、吸収スペクトルを350nmから800nmの間の波長において記録した。スペクトル中に吸収ピークはなかった。吸光度値は、800nmにおける略0.04の値から350nmにおける略0.18の値へとほぼ線形に変化した。
【0085】
[例4]
例2の一枚のコーティングを分光光度計内に配置して、吸収スペクトルを350nmから800nmの間の波長において記録した。スペクトルは、略420nmの波長において2.0に達するピーク吸光度値を示した。吸光度は、510nm以上の波長において略0.12の値に落ち込んだ。略420nmにおいてピークを有する吸収帯は、コーティング中のタルトラジンの存在によるものである。
【0086】
略510nmから800nmの間の波長において、例2のコーティングのスペクトル吸光度は、例1のコーティングのスペクトル吸光度とほとんど区別できない。
【0087】
これらの観測によって、タルトラジン染料が、略500nm以下のスペクトルの青色部分において強力なスペクトル吸光度を生じさせるが、600nm以上のスペクトルの赤色部分において本質的に吸光度を有さないことが明らかとなった。
【0088】
[例5]
例1の一枚のコーティングを、略2Gyの吸収線量でX線放射に曝した。照射後において、サンプルは青色であった。被曝フィルムを分光光度計内に配置して、吸収スペクトルを、350mから800nmの間の波長において記録した。強い吸光度ピークが635nmの波長に存在し、弱い吸光度ピークが585nmの波長に存在した。弱い吸光度ピークの低波長側に二つの肩部が存在し、350nmまで伸びる顕著な尾部が存在した。
【0089】
これらの観測によって、フィルム中の放射線感受性成分が、>600nmのスペクトルの赤色部分において最も強い応答を生じさせて、500〜600nmのスペクトルの緑色部分においてはあまり強く応答しないことが明らかになった。また、観測によって、放射線感受性成分は、<500nmのスペクトルの青色部分において最も弱い応答を生じさせることが明らかになった。
【0090】
[例6]
例2の一枚のコーティングを、略2Gyの吸収線量でX線放射に曝した。照射後において、サンプルは緑色であった。被曝フィルムを分光光度計内に配置して、吸収スペクトルを、350nmから800nmの間の波長において記録した。強い吸光度ピークが635nmの波長において存在し、弱い吸光度ピークが585nmの波長に存在した。弱い吸光度ピークの低波長側において一つの肩部が存在し、略420nmに強い吸光度ピークが存在した。
【0091】
この例のサンプルのスペクトルを、例5のサンプルと比較すると、強いピーク及び弱いピークにおける全吸光度が、二つのサンプルにおいて事実上同じであると観測された。これによって、タルトラジン染料が、>600nmのスペクトルの赤色部分において活性成分の吸光度に対してあまり影響しないことが明らかになった。
【0092】
この例のサンプルのスペクトルを、<500nmの波長において例4のサンプルのスペクトルと比較すると、被曝サンプルの吸光度値が、被曝していないサンプルよりも略5%〜10%大きいと観測された。これによって、スペクトルの青色部分におけるフィルムの応答が、主にタルトラジン染料に起因するものであるが、活性成分の被曝に起因した吸光度に対する0顕著な成分が存在していることが明らかになった。
【0093】
全体として、これらの観測によって、スペクトルの青色部分における応答は、フィルム中の活性成分の被曝に依存するが、スペクトルの赤色部分における応答は、タルトラジン染料に依存しないことが明らかになった。
【0094】
[例7]
コーティング組成物を、以下の成分を混合することによって調製した。
ポリビニルアルコール(水中で25%) 57重量部
水 38重量部
タルトラジン(水中で15%) 1.915重量部
界面活性剤 10G(水中で10%) 0.958重量部
【0095】
この組成物を透明ポリエステル基板上にコーティングした。流体を、スロットダイ塗布器によって基板上で計測して、0.005インチの公称の湿った状態での厚さのコーティングを形成した。湿ったコーティングを強制温風ドライヤにかけて、略19マイクロメートルの厚さの乾燥したコーティングを得た。このコーティングは黄色であった。
【0096】
一枚のコーティングを分光光度計内に配置して、吸収スペクトルを、350nmから800nmの間の波長において記録した。スペクトルは、略420nmの波長において2.0に達するピーク吸光度値を示した。
【0097】
サンプルを、略50Gyの吸収線量でX線放射に曝した。放射線照射に起因した色の変化は観測されなかった。被曝フィルムを分光光度計内に配置して、吸収スペクトルを、350nmから800nmの間の波長において記録した。吸収スペクトルは被曝前後において同一であった。これによって、タルトラジン染料は、最大50Gyの吸収線量において放射線被曝の影響に対して不浸透性(impervious)であることが明らかになった。
【0098】
[例8]
8インチ×10インチの大きさの例2のコーティングされたフィルムを、透明性アダプタが取り付けられたEpson 10000XLフィルムスキャナ上に配置した。略2インチ×2インチのサイズで透明黄色及び透明青色のフィルタ物質で構成された二つの対照フィルムを、スキャナのベッドに取り付けた。これらの位置は、8インチ×10インチのフィルムから離れている。この大きい方のフィルムは、元々の位置から0.5mm以内において着脱可能であるように、スキャナ上に配置された。
【0099】
スキャナを、コンピュータに接続して、Epson Scanソフトウェアインターフェースによって制御した。このソフトウェアアプリケーションにおいて、色補正の全てのオプションを切った。これによって、なんらかの種類の画像補正アルゴリズムを適用せずに、スキャナからの生の応答値を獲得することが可能になる。
【0100】
RGB画像を、8インチ×10インチのフィルム及び対照フィルムから、50dpiの空間分解能で収集した。このRGB画像を、赤色成分、緑色成分、及び青色成分の部分に分割した。青色成分画像をコンピュータモニタ上に表示した。画像は均一な暗さのものではないと観測された。これは、サンプルフィルム上のコーティング厚さが均一ではないことを示している。
【0101】
フィルムを、ライトテーブル上に置いて、目視で検査した。これによって、フィルムの黄色が完全に均一ではなく、平均よりも僅かに大きい光学密度を有する領域と、平均よりも僅かに小さい光学密度を有する他の領域が存在することが明らかになった。注意深い比較によって、フィルム上で目視で観測可能な明度及び暗度のパターンが、コンピュータモニタ上に表示された青色成分画像のパターンに対応していることが明らかになった。
【0102】
[例9]
例8の8インチ×10インチのフィルムを、リニア加速器によって生成された6MVのX線放射の均一場に曝した。吸収線量は略2Gyであった。被曝後に、フィルムは緑色になった。ライトテーブル上での被曝フィルムの注意深い観測によって、フィルムの見た目が完全には均一でないことが示された。一部領域は、平均よりも僅かに大きい光学密度を有し、一部領域は、平均よりも僅かに小さい光学密度を有していた。注意深い比較によって、被曝フィルム上で目視で観測可能な明度及び暗度のパターンが、コンピュータモニタ上に表示された例8の青色成分画像のパターンに対応していることが明らかになった。
【0103】
被曝フィルムを、例8で説明した元々の配置で、Epson 10000XLスキャナに戻した。二つの対照フィルムがスキャナ上に存在したままであり、動かされていなかった。RGB画像を、被曝8インチ×10インチのフィルム及び対照フィルムから、50dpiの空間分解能で収集した。画像を、赤色成分、緑色成分、及び青色成分の部分に分割した。
【0104】
[例10]
例8及び例9の被曝した及び被曝していないフィルムの画像を、MIRA AP6画像分析ソフトウェアを用いて測定した。このソフトウェアの特徴の一つは、RGB画像の赤色成分、緑色成分、及び青色成分の部分又はチャネル内において、ユーザー定義の対象領域内におけるスキャナ応答値の測定を可能にする点である。
【0105】
このようにして、被曝していない8インチ×10インチのフィルム(例8)の青色チャネル画像を測定した。対象領域はフィルム上に中心のある略7.5インチ×9.5インチのものであった。平均応答値MU,Bを測定した。そして、値MU,Bに対して、元々の青色チャネル画像における全ての画素値を正規化することによって、補正画像ICU,Bを生成した。この工程は、MIRA AP6ソフトウェアの画像計算機能を用いて、MU,Bで各画素のスキャナ応答値を割ることによって行われた。補正画像は、8インチ×10インチのフィルムにおける厚さの差についての情報を含んでいる。フィルムが完全に均一であれば、画像内の全ての画素は、1の値を有するが、僅かな厚さの差の存在は、その位置におけるコーティングが平均よりも僅かに厚いか薄いかに応じて、値を、1よりも僅かに大きい、又は1よりも僅かに小さいものにする。
【0106】
例9の被曝した8インチ×10インチのフィルムの赤色チャネル成分画像を検査した。MIRA AP6ソフトウェアを用いて、選択された対象領域内のスキャナ応答値のプロファイルを表示した。プロファイルを、モニタ上に表示から不均一性が明らかである画像領域にわたって得た。このプロファイルから、スキャナ応答値が、最大で、少なくとも±3%で変化していることが見て取れた。勿論、完全に均一なフィルムにおいては、応答値は全て厳密に1.000である。従って、スキャナ自体内部のノイズ源によって生じる画素値測定の誤差が存在している。こうしたノイズの寄与は略0.25%〜0.5%と比較的小さいが、ノイズの複合のため、ノイズの低減が推奨される。CCDアレイの検出器素子からの顕著な信号ノイズが存在するが、フィルムの厚さの差は、低空間周波数において、例えば0.3サイクル/mm以下である。しかしながら、走査は一般的に少なくとも0.3mmの分解能で行われるので、スキャナノイズの周波数は、3サイクル/mmよりも大きくなる。スキャナノイズ及びフィルム厚さの変動が顕著に異なる周波数領域に存在するので、スキャナノイズの影響を、相対的厚さマップから効果的にフィルタリングすることができる。
【0107】
そして、被曝フィルムの赤色チャネル画像に補正を適用した。MIRA AP6ソフトウェアの画像計算機能を用いて、被曝フィルムの赤色チャネル画像を、補正画像ICU,Bで割った。このようにして、被曝フィルムの赤色チャネル画像における各画素の応答値を、補正画像における対応画素の値で割った。補正画像の応答値は、厚さに差に応じて変化するので、画像除算工程は、被曝フィルムの赤色チャネル画像を平坦化して、応答値が厚さに依存しない画像を生成する。
【0108】
MIRA AP6ソフトウェアを用いて、平坦化された赤色チャネル画像の選択された対象領域内のスキャナ応答値のプロファイルを表示した。プロファイルを、平坦化された画像の領域にわたって得て、平坦化前の画像の同じ領域にわたるプロファイルと比較した。スキャナ応答値は、平坦化前に最大で少なくとも±3%で変化したが、平坦化後の値は、±1%以下で変化することが観測された。これは、フィルム内の染料の含有が、厚さの差に対して放射線感受性フィルムの応答を補正する手段を提供することができることを実証している。
【0109】
[例11‐信号参照チャネルの応答を用いた補正]
例10において利点が実証されているものの、被曝前後において各フィルムを走査して、位置が完全に一致するようにフィルムをスキャナ上に正確に配置することはユーザーにとって非常に不便である。また、MIRA AP6ソフトウェア及び他の市販の画像分析ソフトウェアを用いて、上記例で説明した多様な計算工程を行うことも不便である。更に、市販のソフトウェアでは、マーカー染料を含有するフィルムのRGBカラー画像が、放射線感受性成分の厚さの変動によって生じる応答の差に対して補正可能であるように、これらの画像の測定及び分析をすることができない。以下の説明は、フィルムが放射線量測定方法用に使用される際に用いることができる手順を定義する。この手順では、特別なコンピュータソフトウェア(FilmQA Pro)を用いて、RGBカラー画像を測定及び分析して、“参照チャネルに基づいた均一性補正”との題で上述した計算工程を行う。提供される工程は本発明の中核を成す。説明される方法の特有の利点は、各フィルムが一度しか走査されない点である。この特定の例は、マーカー染料からの信号が最大であるカラーチャネルにおいて測定される応答値に基づいた補正方法を用いる。この例のマーカー染料はタルトラジン(青色カラーチャネルにおいて最大の応答を有する黄色の染料)である。この例の放射線感受性成分は、ペンタコサ‐10,12‐ジイン酸のリチウム塩である。被曝後に、ペンタコサ‐10,12‐ジイン酸のリチウム塩は、赤色カラーチャネルにおいて最大の応答を有する青色に着色されたポリマーを形成する。
【0110】
放射線量測定用のフィルム線量測定方法のプロセスにおいて、較正フィルムを用いることは一般的である。これは、一枚又は複数のフィルムであり、一組の較正された放射線量がそれに対して既に照射されている。この単一のフィルム又は一組のフィルムのことを、較正フィルムと称する。フィルム線量測定方法のプロセスにおいては、放射線場内の二次元平面に対して伝えられる放射線量を求めるために、一枚又は複数のフィルムを放射線場に曝すことも一般的である。この単一のフィルム又は一組のフィルムのことを、測定フィルムと称する。
【0111】
補正を適用して、測定フィルムの厚さの差を補償するプロセスを以下説明する。
【0112】
この例では、測定フィルムMは、例9で説明した8インチ×10インチのフィルムであった。較正フィルムCは、測定フィルムと同じロットナンバーのフィルムであって、その複数の画定された領域が、既知の線量の放射線を既に受けている。両方のフィルムを、透明性アダプタが備えられたEpson 10000XLフィルムスキャナ上で、75dpiのRGBトランスミッションモードで走査した。FilmQA Proソフトウェアを用いて、較正フィルムを走査することによって得られたRGB画像の被曝領域内の赤色チャネル及び青色チャネルにおけるスキャナ応答値を測定した。FilmQA Proソフトウェアを用いて、較正フィルムから測定された赤色及び青色の応答値・対・線量をプロットすることによって、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルに対する較正曲線を提供した。較正曲線の値の間の関係性を、有理線形フィッティング関数を用いることによって、数学的に記述した。フィッティング関数は、他の変数の関数として一つの変数を記述する。可逆フィッティング関数を用いることが有用である。何故ならば、関数中の定数を単純な算術演算を用いて再構成して、変数Aを変数Bの関数として表すこと、又はその逆ができるからである。可逆関数の他の例は、指数線形関数又は逆数線形関数である。また、多項式関数を用いて、線量に対する応答に関する校正曲線を生成することもできるが、可逆ではないので、あまり望ましくない。
【0113】
測定フィルムのRGB画像を、FilmQA Proソフトウェアに対する入力として提供した。そして、そのソフトウェアを用いて、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルに対する較正関数を適用して、測定画像を、スキャナ値空間から線量値空間に変換した。測定フィルムの画像が、図2の30に示されていて、赤色カラーチャネルから導出された線量マップ画像が31に示されている。線量マップを横切る水平方向における赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルから計算された線量プロファイルが、図3の40、41にそれぞれ示されている。これは、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルの両方における線量プロファイルが実質的に不均一であることを示している。この不均一性は、青色チャネルにおいてより大きく表れる。何故ならば、このカラーチャネルにおける応答は、厚さに強く依存するが、放射線量に弱く依存して、赤色カラーチャネルに対してこの逆が当てはまるからである。40に示される例は、計算された線量プロファイルにおける最大略10cGyの線量の逸脱を示し、厚さ異常性に対する補正無しで計算された線量マップを表している。
【0114】
また、FilmQA Proソフトウェアを用いて、線量応答を、線量依存部分と線量非依存部分との二つの部分に分割した。この特定の例では、測定チャネル(この例では、赤色カラーチャネル)と参照チャネル(この例では、青色チャネル)との二つのチャネルからの線量応答を用いて、計算を行った。線量非依存部分は、フィルムの放射線感受性成分における厚さの差を示す。そして、FilmQA Proソフトウェアを、画像の線量非依存部分に適用して、厚さの差に対する測定フィルムの線量応答を調整して、測定フィルムから、補正された二次元線量画像(又は線量マップ)を計算した。赤色カラーチャネルにおける応答から計算されて且つ厚さ異常性の補正された線量マップを横切る線量プロファイルが、図4の50に示されている。図4の50に示されるプロファイルを、図3の40に示されるプロファイルと比較することによって、活性層中の放射線感受性成分の厚さ異常性の影響に対する補正が、被曝領域にわたる線量の変動をほぼ除去していることが見て取れる。
【0115】
[例12]
例11において利点が実証されているものの、上記フィルムにおける放射線感受性成分の被曝は、赤色カラーチャネルにおける変化に加えて、緑色カラーチャネルの応答において顕著な変化をもたらすことが分かっている。測定フィルムの線量を計算する際に、この応答を、赤色カラーチャネル及び青色カラーチャネルにおける応答に加えて利用することが有利である。この追加データを利用することは、スキャナ内のCCDアレイの素子の応答におけるランダムな揺らぎに起因した線量画像中のノイズを低減する作用を有し得る。以下の説明は、フィルムが放射線量測定方法において用いられる際に用いることができる手順の一例を与える。この手順では、特別なコンピュータソフトウェア(FilmQA Pro)を用いて、RGBカラー画像を測定及び分析して、“三重チャネル補正”との題で上述した計算工程を行う。提供される工程は、本発明の特定の側面の中核を成す。説明される方法の特有の利点は、各フィルムが一度しか走査されない点である。この特定の例は、マーカー染料からの信号が最大であるカラーチャネルを含むRGBスキャナの三つ全てのカラーチャネルにおいて測定される応答値に基づいた補正方法を用いる。この例のマーカー染料はタルトラジン(青色カラーチャネルに最大の応答を有する黄色の染料)である。この例の放射線感受性成分は、ペンタコサ‐10,12‐ジイン酸のリチウム塩である。被曝後において、ペンタコサ‐10,12‐ジイン酸のリチウム塩は、赤色カラーチャネルにおいて最大の応答を有し、緑色カラーチャネルにおいてより小さな応答を有する青色に着色されたポリマーを形成する。
【0116】
放射線量測定用のフィルム線量測定方法のプロセスでは、較正フィルムを用いることが一般的である。これは、一枚又は複数のフィルムであり、それに対して、一組の較正放射線量が既に照射されている。この単一のフィルム又は一組のフィルムのことを、較正フィルムと称する。フィルム線量測定方法のプロセスでは、放射線場内の二次元平面にわたって伝えられる放射線線量を求める目的で、一枚のフィルム又は複数のフィルムを放射線場に曝すことも一般的である。この一枚のフィルム又は複数のフィルムのことを、測定フィルムと称する。
【0117】
以下、測定フィルムの厚さの差を補償する補正を適用するためのプロセスを説明する。
【0118】
この例において、測定フィルムMは、例9で説明した8インチ×10インチのフィルムであった。較正フィルムCは、測定フィルムと同じロットナンバーのフィルムであって、その複数の画定された領域が既知の線量の放射線を既に受けていた。両方のフィルムを、透明性アダプタが備わったEpson 10000XLフィルムスキャナ上で75dpiのRGBトランスミッションモードで走査された。FilmQA Proソフトウェアを用いて、較正フィルムを走査することによって得られたRGB画像の被曝領域内の赤色、緑色、及び青色チャネルのスキャナ応答値を測定した。FilmQA Proソフトウェアを用いて、較正フィルムから測定された赤色、緑色、及び青色応答値・対・放射線量をプロットした。これによって、三つ全てのカラーチャネルに対する校正曲線が与えられた。各較正曲線における値の間の関係性を、有理線形フィッティング関数を用いて数学的に記述した。フィッティング関数は、一つの変数を他の変数の関数として記述する。可逆フィッティング関数を用いることが有利である。何故ならば、関数中の定数を、単純な算術演算を用いて催行して、関数Aを関数Bの関数として表すこと及びその逆を行うことができるからである。可逆関数の他の例は、指数線形関数又は逆数線形関数である。多項式関数を用いて、線量に対する応答に関する較正曲線を静止することもできるが、可逆ではないのであまり好ましくない。
【0119】
測定フィルムのRGB画像を、FilmQA Proソフトウェアに対する入力として提供した。そして、このソフトウェアを用いて、赤色、緑色、及び青色カラーチャネルに対して較正関数を適用して、測定画像をスキャナ値空間から線量値空間に変換した。この工程の一部として、ソフトウェアは、線量応答を、線量依存部分と線量非依存部分とを表す二つの部分に分割する。線量非依存部分及び線量依存部分を表す画像が、図5の62、61にそれぞれ示されている。線量計算が行われる測定フィルムの画像が、60に示されている。画像の線量非依存部分に対するプロファイルが図6の70に示されている。プロファイルにおける変動は、フィルムの活性層中の活性成分の厚さの差を表す。FilmQA Proソフトウェアを、画像の線量非依存部分に適用して、厚さの差に対する測定フィルムの線量応答を調整する。このようして計算された線量依存画像は、活性層中の放射線感受性成分の厚さ異常性の影響を排除するように補正された測定フィルムの二次元線量画像(又は線量マップ)である。図7の80で示されるのは、厚さ異常性を補正するためのこの三重チャネル方法を用いて計算された測定フィルムの被曝領域にわたる赤色、緑色、及び青色カラーチャネルに対する線量プロファイルである。これら三つのチャネルに対する線量値はほぼ分離できない点に留意されたい。何故ならば、ソフトウェアは、カラーチャネル間の線量の差を最少化するような解を計算するからである。図7の80に示される線量プロファイルを図3の40及び41に示される線量プロファイルと比較すると、三重チャネル補正によって提供される線量プロファイルは実質的に均一であり、活性成分の厚さの差の影響が事実上排除されていることがわかる。
【0120】
コンピュータ可読プログラムコードが、当該分野において既知の又は将来開発されるであろう広範な適切なコンピュータ可読プログラミング言語のいずれを用いて従来通りプログラム可能であることは理解されたい。また、コンピュータ可読プログラムコードが、一つ又は複数の機能、ルーチン、サブ機能、サブルーチンを含み得て、単一のソフトウェアパッケージにおいて組み合わせる必要がない点も理解されたい。
【0121】
本願で説明される革新的なコンセプトは多様な方法で実現可能であると想定され、添付の特許請求の範囲は、従来技術によって限定される場合を除いた本発明の代替実施形態を含むものと解釈される。
【符号の説明】
【0122】
10 装置
14 フラットベッドスキャナ
16 モニタ
18 プリンタ
20 処理ユニット
22 キーボード
24 マウス
図1
図3
図4
図6
図7
図2
図5