【実施例】
【0042】
以下、本発明を、実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0043】
実施例1
1−1:fadE遺伝子の欠失(WE3110の作製)
大腸菌W3110(ATTC 39936)で配列番号1及び2のプライマーを利用したワンステップ不活化(one step inactivation)方法(Warner et al., PNAS, 6, 97(12): 6640-6645, 2000)を利用して、fadE(アシルコエンザイムAデヒドロゲナーゼ)遺伝子を欠失させて、抗生剤耐性を取り除いた。
[配列番号1] WfadE k/o F:
5'−atgatgattttgagtattctcgctacggttgtcctgctcggcgcgttgttgtgtaggctggagctgcttc−3’]
[配列番号2] WfadE k/o R:
5’−actgggcataagccgagaactccagcccgccgtactcttttttgatgatccatatgaatatcctccttag−3’
【0044】
1−2:fadR遺伝子の欠失(WER3110の作製)
前記1−1で作製された大腸菌WE3110において、配列番号3及び4のプライマーを利用したワンステップ不活化方法(Warner et al., PNAS, 6, 97(12): 6640-6645, 2000)を利用して、fadR(DNA結合トランスクリプショナル・デュアル・レギュレーター)遺伝子を欠失させて、抗生剤耐性を取り除いた。
[配列番号3] WfadR k/o F:
5'−atggtcattaaggcgcaaagcccggcgggtttcgcggaagagtacattatgtgtaggctggagctgcttc−3'
[配列番号4] WfadR k/o R:
5'−ccggattggcgaaatagtgacgaccaatacgcgtatacagccctttcatcCATATGAATATCCTCCTTAG−3'
【0045】
1−3:fadDのネイティブなプロモーターをtacプロモーターで置換(WERPD3110の作製)
前記1−2で作製された大腸菌WER3110において、fadD遺伝子の発現を強化するために強力なプロモーターであるtacプロモーターに置換えた。
これのために、配列番号5及び6のプライマーを利用して、前記遺伝子除去と同様の方法で、ネイティブなプロモーターをtacプロモーターに置換えた。
[配列番号5] WfadDpch F:
5'−gtataatcccggccccgcgagagtacaaacagttgtaactgaataattgcCGCGTCATACACATACGATT−3'
[配列番号6] WfadDpch R:
5'−ttgatctccgtcggaacgtccgcgggataacggttaagccaaaccttcttCATGGTCTGTTTCCTGTGTG−3'
【0046】
1−4:fadLのネイティブなプロモーターにあるアテニュエーター配列のtacプロモーターに置換(WERPDL3110の作製)
1−3で作製された大腸菌WERPD3110において、fadD promoter上に位置する転写調節機序に関与するアテニュエーター配列を強力なプロモーターであるtacプロモーターに置換えた。
アテニュエーター配列の置換のために、配列番号7及び8のプライマーを利用して、前記遺伝子除去と同様の方法で、アテニュエーターを含むネイティブなプロモーターをtacプロモーターに置換えた。
[配列番号7] WfadLpch F:
5'−gaaagtgctgctccagttgttaattctgcaaaatcggataagtgaccgaaCGCGTCATACACATACGATT−3'
[配列番号8] WfadDLpch R:
5'−actgcgactgcgagagcagactttgtaaacagggttttctggctcatgacCATGGTCTGTTTCCTGTGTG−3'
【0047】
1−5:ackA遺伝子の欠失(WERAPDL3110の作製)
前記1−4で作製された大腸菌WE3110において、配列番号9及び10のプライマーを利用したワンステップ不活化方法(Warner et al., PNAS, 6, 97(12): 6640-6645, 2000)を利用して、ackA(アセテートキナーゼA:acetate kinase A)遺伝子を欠失させて、抗生剤耐性を取り除いた。
[配列番号9] WackA k/o F:
5'−atgtcgagtaagttagtactggttctgaactgcggtagttcttcactgaaTAGGTGACACTATAGAACGCG−3'
[配列番号10] WackA k/o R:
5'−tgccgtgcgcgccgtaacgacggatgccgtgctctttgtacaggttgtaaTAGTGGATCTGATGGGTACC
【0048】
1−6:fabHDGオペロンのネイティブなプロモーターをtrcプロモーターに置換(WERAPDLB3110の作製)
前記1−5で作製された大腸菌WERAPLD3110において、fabHDGオペロンからなる遺伝子の発現を強化するために強力なプロモーターであるtrcプロモーターに置換えた。
このために、配列番号11及び12のプライマーを利用して、前記遺伝子除去と同様の方法で、ネイティブなプロモーターをtrcプロモーターに置換えた。
[配列番号11] WfabHDGpch F:
5'−gtggtggctactgttattaaagcgttggctacaaaagagcctgacgaggcCGCGTCATACACATACGATT−3'
[配列番号12] WfabHDGpch R:
5'−gtccgcacttgttcgggcagatagctgccagtaccaataatcttcgtataCATGGTCTGTTTCCTGTGTG−3’
【0049】
1−7:fabAオペロンのネイティブなプロモーターをtrcプロモーターに置換(WERAPDLBA3110の作製)
前記1−6で作製された大腸菌WERAPLDB3110において、fabAオペロンからなる遺伝子の発現を強化するために強力なプロモーターであるtrcプロモーターに置換えた。
このために、配列番号13及び14のプライマーを利用して、前記遺伝子除去と同様の方法で、ネイティブなプロモーターをtrcプロモーターに置換えた。
[配列番号13] WfabApch F:
5'−accgttttccatggccattacgttggctgaactggtttattccgaactgaCGCGTCATACACATACGATT−3'
[配列番号14] WfabApch R:
5'−gcgaccagaggcaagaaggtcttcttttgtataggattcgcgtttatctacCATGGTCTGTTTCCTGTGTG−3'
【0050】
実施例2
2−1:pTrc99a_luxCベクターの作製
クロストリジウムクルイベリ(Clostridium kluy
veri)菌株(DSMZ,no.552,German
y)の染色体DNAを鋳型として、配列番号15と16のプライマーでPCRを行って、脂肪酸アシルコエンザイムAリダクターゼをコードするluxC遺伝子切片を作製した。
[配列番号15] cklluxC F:
5'−TATAGGTACCATGATAGATTGTTATTCATTGGATG−3'
[配列番号16] cklluxC R:
5'−TATTGGATCCTTAAATATTTAGACTACACCACGTT−3'
次に、前記製造されたluxC切片をtrcプロモーターの強い遺伝子発現を進行するpTrc99aプラスミド(PhamaciA−biotech,Uppsala,Sweden)に制限酵素(KpnI及びBamHI)を処理した後、T4 DNAライゲーズを処理して、制限酵素で切断されたluxC切片及びpTrc99aプラスミドを接合させることによって、複製率が高い(high copy number)組み換えプラスミドであるpTrc99a_luxCを作製した。
【0051】
2−2:pTrc99a_luxC_tac_tesAベクターの作製
野生型E.coli(大腸菌W3110)菌株の染色体DNAを鋳型として、配列番号17と18のプライマーでPCRを行って、アシルコエンザイムAチオエステラーゼをコードするtesA遺伝子切片を作製した。
[配列番号17] tesA F:
5'−TATAGAATTCATGATGAACTTCAACAATGT−3'
[配列番号18] tesA R:
5'−TATTGAGCTCTTATGAGTCATGATTTACTA−3'
次に、前記製造されたtesA切片をtrcプロモーターの強い遺伝子発現を進行するpTrc99aプラスミド(PhamaciA−biotech,Uppsala,Sweden)に制限酵素(EcoRI及びSacI)を処理した後、T4 DNAライゲーズを処理して、制限酵素で切断されたtesA切片及びpTrc99a_luxCプラスミドを接合させることによって、複製率が高い(high copy number)組み換えプラスミドであるpTrc99a_luxC_tac_tesAを作製した。
【0052】
2−3:pTac15k_atoDAE_tac_CER1ベクターの作製
pKK223−3(PharmaciA−biotech.,Uppsala,Sweden)のtrcプロモーターとtrascription terminator部分をpACYC177(NEB,Beverly,MA,USA)に挿入して、pTac15Kを作製した。pTac15Kは、構成的(constitutive)発現のための発現ベクターであり、
図5の切断地図に示された構成を持っている。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana col.)染色体のDNAを鋳型として、配列番号19と配列番号20のプライマーを用いてPCR反応を行った。これから確保されたCER1切片を前記pTac15k(p15A origin, low copies, KmR; KAISTMBEL stock, tac promoter, 4.0-kb, lap stock)(Zhi-Gang Qian et al., Biotechnology and Bioengineering, 104: 651-654, 2009 and Hiszczyn' ska-Sawickaand Kur, 1997)プラスミドに制限酵素(SacI及びkpnI)を処理した後、T4 DNAライゲーズを処理して、制限酵素で切断されたCER1切片及びpTac15kプラスミドを接合させることによって、pTac15k_CER1を作製した。
次に、
大腸菌染色体のDNAを鋳型として、配列番号21と配列番号22のプライマーを用いてPCR反応を行った。これから確保されたfatB切片をpTac15k_CER1プラスミドに制限酵素(XbaIとSphI)を処理した後、T4 DNAライゲーズを処理して、制限酵素で切断されたatoDAE切片及びpTac15k_CER1プラスミドを接合させることによって、pTac15k_atoDAE_tac_CER1を作製した。これに用いられたプライマー対の塩基配列は下記のとおりである。
[配列番号19]CER1F:5'−TATAGAGCTCATGGCCACAAAACCAGGAGTCCTCACC−3'
[配列番号20]CER1R:5'−TATTGGTACCTTAATGATGTGGAAGGAGGAGAGGC−3'
[配列番号21]atoDAEF:5'−GCCATCTAGAATGAAAACAAAATTGATGAC−3'
[配列番号22]atoDAER:5'−TATTGCATGCTCAGAACAGCGTTAAACCAA−3'
【0053】
実施例3:変異微生物のアルカン生成能の測定
実施例2−2及び2−3で作製されたpTrc99a_luxC_tac_tesA及びpTac15k_atoDAE_tac_CER1プラスミドを実施例1−7でアルカン生成に適するように作製したWERAPDLBA3110に導入して、変異微生物を製造し、大腸菌W3110(ATTC 39936)を対照群菌株として用いた。アルカン生成能を有する変異微生物をアンピシリン(ampicillin)及びカナマイシン(kanamycin)が各々50μg/mL及び30μg/mL添加されたLB平板培地で選別した。前記形質転化菌株を10mL LB培地に接種して、37℃で12時間前培養を行った。その後、滅菌後80℃以上で取り出した100mL LBを含有した250mLフラスコにグルコース(5g/L)を添加して、前記前培養額1mLを接種して、31℃で10時間培養した。その後、蒸溜水1リットル当り20gグルコース、13.5g KH
2PO
4、4.0g (NH
4)
2HPO
4、1.7g citric acid、1.4g MgSO
4・7H
2O、3g酵母エクストラクト、10mL微量金属溶液(蒸溜水1リットル当り10g FeSO
4・7H
2O、1.35g CaCl
2、2.25g ZnSO
4・7H
2O、0.5g MnSO
4・4H
2O、1g CuSO
4・5H
2O、0.106g (NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O、0.23g Na
2B
4O
7・10H
2O、35% HCl 10mL含有)の成分で構成された培地2.0リットルを含有した5.0リットル醗酵機(LiFlus GX,Biotron Inc.,Korea)を121℃で15分間滅菌した後、室温まで降温した。1mMのIPTGを用いて導入あるいはエンジニアリング(engineering)した遺伝子の発現を誘導し、培養液のpHは、50%(v/v)NH
4OHの自動供給によって6.8に維持した。
【0054】
前記培地中のグルコースをグルコース分析器(STAT,Yellow Springs Instrument,Yellow Springs,Ohio,USA)で測定して、グルコースが全部消耗した時細胞を回収して蒸溜水で一回洗浄した後、100℃の乾燥器で24時間乾燥した。その後、乾燥された菌株にクロロホルム(chloroform)2mLを添加し、3%(v/v)H
2SO
4を含むメタノール1mLを添加した後、この混合物を100℃で12時間反応させた。反応終了後、混合物を常温まで冷やして、混合物に蒸溜水1mLを添加して5分間激しく混ぜて、有機溶媒(chloroform)層と水(水溶液)層を分離させて、10,000rpmで10分間遠心分離して、有機溶媒層だけ採取して、ガスクロマトグラフィー(gas chromatography)分析を行うことによって、生成されたアルカン
及び脂肪酸を測定した。
【0055】
その結果、表1に示された通り、野生型大腸菌W3110では、アルカンが生成されなかったが、本発明に係る変異微生物では、ペンタデカン及びヘプタデカンが、各々25mg/L及び40mg/L、及びガソリン範囲のアルカンのオクタン、ノナン及びノネンが、各々0.11564g/L、0.475g/L及び0.12276g/Lが生産された。
【0056】
この結果から、本発明に係る変異微生物がガソリン範囲のアルカンを成功的に生成することが確認された。
【表1】