特許第5724048号(P5724048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5724048データ通信装置、プログラム及び衛星通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5724048
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】データ通信装置、プログラム及び衛星通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20150507BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20150507BHJP
【FI】
   H04W72/04 110
   H04W84/06
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-504657(P2015-504657)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(86)【国際出願番号】JP2014003779
【審査請求日】2015年1月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンクモバイル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515019401
【氏名又は名称】タイコム パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮川 潤一
(72)【発明者】
【氏名】島崎 良仁
(72)【発明者】
【氏名】田近 明彦
(72)【発明者】
【氏名】イサラ アマタヤクル
(72)【発明者】
【氏名】サコン キティヴァットキャラポン
【審査官】 石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−318968(JP,A)
【文献】 特開平8−140147(JP,A)
【文献】 特表2002−503068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星を介して通信するデータ通信装置であって、
前記衛星を介する音声通信に対して、前記衛星を介して行われている現在の音声通信に必要な帯域より、予め定められた帯域以上大きい帯域を予め割り当てる割当制御部
を備え
前記割当制御部は、前記現在の音声通信に必要な帯域が減少した場合に、前記減少した後の前記現在の音声通信に必要な帯域より、前記衛星を介する音声通信に対して前記予め定められた帯域以上大きい帯域が割り当てられた状態になるよう、前記衛星を介する音声通信に対して割り当てている帯域を減少させる
データ通信装置。
【請求項2】
衛星を介して通信するデータ通信装置であって、
前記衛星を介する音声通信に対して、前記衛星を介して行われている現在の音声通信に必要な帯域より、予め定められた帯域以上大きい帯域を予め割り当てる割当制御部
を備え、
前記割当制御部は、前記現在の音声通信に必要な帯域が大きいほど、前記衛星を介する音声通信に対して前記予め割り当てている帯域と、前記現在の音声通信に必要な帯域との差を大きくする
データ通信装置。
【請求項3】
衛星を介して通信するデータ通信装置であって、
前記衛星を介する音声通信に対して、前記衛星を介して行われている現在の音声通信に必要な帯域より、予め定められた帯域以上大きい帯域を予め割り当てる割当制御部
を備え、
前記割当制御部は、前記現在の音声通信に必要な帯域に対する、前記衛星を介する音声通信に対して前記予め割り当てている帯域の比率が、予め定められた閾値を超えるよう、前記衛星を介する音声通信に対して前記予め割り当てる帯域を調整する
データ通信装置。
【請求項4】
前記予め定められた帯域は、前記衛星を介する1回線の音声通信に必要な帯域である
請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ通信装置。
【請求項5】
前記割当制御部は、前記衛星を介する音声通信に対して、上り方向及び下り方向の双方について前記予め定められた帯域以上大きい帯域を予め割り当てる
請求項1から4のいずれか一項に記載のデータ通信装置。
【請求項6】
前記割当制御部は、前記衛星を介する音声通信に対して帯域を割り当てていない状態で、前記衛星を介して送信するパケットから音声通信用のパケットを検出した場合に、前記衛星を介する音声通信に対して、2回線の音声通信に必要な帯域以上の帯域を割り当てる
請求項1からのいずれか一項に記載のデータ通信装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1からのいずれか一項に記載のデータ通信装置として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載のデータ通信装置と、
前記衛星と
を備える衛星通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ通信装置、プログラム及び衛星通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
仮設通話網を構成する複数の可搬型の無線LANアクセスポイントの一つをSIPサーバとし、SIPサーバを衛星携帯電話に接続し、仮設通話網を衛星携帯電話による衛星通信経由で他の公衆回線網に接続する携帯電話網システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2008−263282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
衛星通信を介する音声通信に対して帯域を動的に割り当てる場合、新たに生じた音声通信が、既存の音声通信の通信品質に悪影響を与える場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、衛星を介して通信するデータ通信装置であって、衛星を介する音声通信に対して、衛星を介して行われている現在の音声通信に必要な帯域より、予め定められた帯域以上大きい帯域を予め割り当てる割当制御部を備える。
【0005】
予め定められた帯域は、衛星を介する1回線の音声通信に必要な帯域であってよい。
【0006】
割当制御部は、衛星を介する音声通信に対して、上り方向及び下り方向の双方について予め定められた帯域以上大きい帯域を予め割り当ててよい。
【0007】
割当制御部は、現在の音声通信に必要な帯域が減少した場合に、減少した後の現在の音声通信に必要な帯域より、衛星を介する音声通信に対して予め定められた帯域以上大きい帯域が割り当てられた状態になるよう、衛星を介する音声通信に対して割り当てている帯域を減少させてよい。
【0008】
割当制御部は、現在の音声通信に必要な帯域が大きいほど、衛星を介する音声通信に対して予め割り当てている帯域と、現在の音声通信に必要な帯域との差を大きくしてよい。
【0009】
割当制御部は、現在の音声通信に必要な帯域に対する、衛星を介する音声通信に対して予め割り当てている帯域の比率が、予め定められた閾値を超えるよう、衛星を介する音声通信に対して予め割り当てる帯域を調整してよい。
【0010】
割当制御部は、衛星を介する音声通信に対して帯域を割り当てていない状態で、衛星を介して送信するパケットから音声通信用のパケットを検出した場合に、衛星を介する音声通信に対して、2回線の音声通信に必要な帯域以上の帯域を割り当ててよい。
【0011】
本発明の第2の態様においては、プログラムは、コンピュータを、上記データ通信装置として機能させる。
【0012】
本発明の第3の態様においては、衛星通信システムは、上記データ通信装置と、上記衛星とを備える。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態における通信システム2を概略的に示す。
図2】モデム100の機能ブロック構成の一例を模式的に示す。
図3】音声通信に対して動的に割り当てられる帯域の時間変化の一例を模式的に示す。
図4】データ通信に対して動的に割り当てられる帯域の時間変化の一例を模式的に示す。
図5】割当制御部140が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、一実施形態における通信システム2を概略的に示す。通信システム2は、衛星通信システム4、地上通信システム7及び地上通信システム8を備える。衛星通信システム4は、地上通信システム7及び地上通信システム8を、通信衛星50を介して、地上通信システム6に接続する。
【0017】
地上通信システム7及び地上通信システム8は、例えば、離島や山間部等、人口非密集地等における通信システムである。地上通信システム6は、例えば1基地局あたりの収容人数が、地上通信システム7及び地上通信システム8における1基地局あたりの収容人数より多い。地上通信システム6、地上通信システム7及び地上通信システム8は、衛星通信システム4を介して、相互に通信する。
【0018】
衛星通信システム4は、衛星通信装置10と、IF変換装置20と、衛星通信装置11と、IF変換装置21と、通信衛星50と、衛星通信装置12と、IF変換装置22とを備える。衛星通信装置10は、モデム100と、アンテナ190とを有する。衛星通信装置11は、モデム101と、アンテナ191とを有する。
【0019】
地上通信システム6は、基地局32と、基地局制御装置60、移動通信交換局62、公衆電話交換回線網66及びユーザ端末42を備える。地上通信システム7は、基地局30と、ユーザ端末40と、ユーザ端末43とを備える。地上通信システム8は、基地局31と、ユーザ端末41とを備える。
【0020】
ユーザ端末40、ユーザ端末41、ユーザ端末42及びユーザ端末43は、音声通信機能を有する。また、ユーザ端末40、ユーザ端末41、ユーザ端末42及びユーザ端末43は、データ通信機能を有する。ユーザ端末40、ユーザ端末41、ユーザ端末42及びユーザ端末43は、例えば、スマートフォン等の携帯電話機である。
【0021】
衛星通信システム4において、基地局30及び基地局31は、それぞれ人口非密集地等に設けられる。基地局30は、ユーザ端末40、ユーザ端末43からのトラフィックを受け取って、IF変換装置20にトラフィックを出力する。ユーザ端末40及びユーザ端末43からのトラフィックには、音声通信のトラフィック及びデータ通信のトラフィック等が含まれる。
【0022】
IF変換装置20は、基地局30と衛星通信装置10との間に設けられる。具体的には、IF変換装置20は、基地局30と、モデム100との間に設けられる。IF変換装置20は、基地局30から受け取ったトラフィックをIPパケット等のパケットに変換して、モデム100に出力する。また、IF変換装置20は、モデム100から出力されたパケットを、基地局30向けのトラフィックに変換して、基地局30に出力する。基地局30は、トラフィックに応じてユーザ端末40及びユーザ端末43と通信する。
【0023】
モデム100は、通信衛星50を介して通信するデータ通信装置の一例である。モデム100は、IF変換装置20からのパケットの信号を変調して、得られた変調信号をアンテナ190に出力する。アンテナ190は、モデム100から出力された変調信号を電波として出力する。アンテナ192から出力された電波は、通信衛星50を介してアンテナ192によって受信される。また、アンテナ190は、通信衛星50から受信した電波に基づいて受信信号を生成して、モデム100に出力する。モデム100は、アンテナ190から出力された受信信号を復調して、得られたパケットをIF変換装置20に出力する。
【0024】
通信衛星50は、アンテナ190とアンテナ192との間で電波を中継する。アンテナ192は、通信衛星50から受信した電波に基づいて受信信号を生成して、モデム102に出力する。モデム102は、アンテナ190から出力された受信信号を復調して、得られたパケットをIF変換装置22に出力する。また、モデム100は、IF変換装置22から取得したパケットの信号を変調して、得られた変調信号をアンテナ192に出力する。アンテナ192は、モデム102から出力された変調信号を電波として出力する。アンテナ192から出力された電波は、通信衛星50を介してアンテナ190によって受信される。
【0025】
IF変換装置22は、基地局制御装置60と衛星通信装置12との間に設けられる。具体的には、IF変換装置22は、基地局制御装置60と、モデム102との間に設けられる。IF変換装置22は、モデム102から出力されたパケットを、基地局制御装置60向けのトラフィックに変換して、基地局制御装置60に出力する。また、IF変換装置22は、基地局制御装置60から受け取ったトラフィックをIPパケット等のパケットに変換して、モデム102に出力する。
【0026】
基地局制御装置60は、基地局32と接続される。また、基地局制御装置60は、移動通信交換局62と接続とされる。基地局制御装置60は、IF変換装置22から取得したトラフィックを、トラフィックの宛先に応じて、基地局32又は移動通信交換局62に出力する。例えば、基地局制御装置60は、トラフィックの宛先がユーザ端末42である場合、ユーザ端末42が無線接続される基地局32へそのトラフィックを送る。
【0027】
また、基地局制御装置60は、基地局32からユーザ端末42に関するトラフィックを受け、トラフィックの対象となる通信交換局へそのトラフィックを中継する。例えば、基地局制御装置60は、ユーザ端末40宛のトラフィックを、IF変換装置22に出力する。また、基地局制御装置60は、公衆電話交換回線網66に接続されている端末宛のトラフィックを、公衆電話交換回線網66の交換局である移動通信交換局62に出力する。なお、ユーザ端末42からのトラフィックには、音声通信のトラフィック及びデータ通信のトラフィック等が含まれる。
【0028】
なお、地上通信システム8は、地上通信システム7と同様の構成を有する。具体的には、基地局31は、基地局30と同様の機能を有する。また、ユーザ端末41は、ユーザ端末40及びユーザ端末43と同様の機能を有する。また、衛星通信システム4において、IF変換装置21は、IF変換装置20と同様の機能を有する。また、衛星通信装置11は、衛星通信装置10と同様の機能及び構成を有する。具体的には、モデム101は、モデム100と同様の機能及び構成を有する。また、アンテナ191は、アンテナ190と同様の機能及び構成を有する。そのため、地上通信システム8、IF変換装置21及び衛星通信装置11の各部の動作については、説明を省略する。本実施形態の説明では主として、モデム100の機能を取り上げて説明する。
【0029】
衛星通信システム4において、モデム100は、制御側の地球局である衛星通信装置12に、帯域の割り当てを要求する。この場合、モデム100は、IF変換装置20から取得した単位時間あたりに送信するべきパケット量に基づき、衛星通信装置12に動的に帯域の割り当てを要求する。これにより、例えば、地上通信システム7と地上通信システム8との間で、通信衛星50を介する衛星通信の帯域を共有することができる。そのため、衛星通信の帯域の利用効率を高めることができる。
【0030】
ここで、モデム100は、データ通信に対して、IF変換装置20から出力される現在の単位時間あたりのパケット量に略合致した幅の帯域を要求する。一方、モデム100は、音声通信に対しては、既に行われている通話に対して確保されるべき帯域より、1通話数に対応する帯域分、帯域を余分に要求する。これにより、例えば、ユーザ端末40を用いて通話中に、ユーザ端末41から新たな呼が発生した場合、新たな呼に対して帯域が実際に割り当てられる前に、既に割り当てを受けていた余分の帯域を使って、新たな呼に関する音声通信のパケットを送信できる。そのため、ユーザ端末40を用いた既存の通話の音声品質が、新たに発生した呼によって低下することを抑制できる。なお、説明を簡潔にすることを目的として、モデム100が帯域の割り当てを要求することを、単に「帯域を割り当てる」等と呼ぶ場合がある。
【0031】
図2は、モデム100の機能ブロック構成の一例を模式的に示す。モデム100は、検出部120、割当制御部140及び送受信部180を有する。
【0032】
送受信部180は、通信衛星50を介して伝送される信号を生成する。具体的には、送受信部180は、通信衛星50を通じて送信される送信信号を生成する。また、送受信部180は、IF変換装置20を介して送信される送信信号を生成する。
【0033】
具体的には、送受信部180は、音声通信用のパケットやデータ通信用のパケット等、通信衛星50を介して送信されるパケットを、IF変換装置20から受信する。送受信部180は、IF変換装置20から取得したパケットの信号に変調処理、増幅処理等を施して、アンテナ190に出力する。アンテナ190は、送受信部180から出力された信号を送信する。また、送受信部180は、アンテナ190から取得した信号に復調処理等を施すことによって得られたパケットを、IF変換装置20に送信する。
【0034】
検出部120は、通信衛星50を介して送信するパケットから音声通信用のパケットを検出する。例えば、検出部120は、伝送されるパケットを解析することによって、伝送されるパケットが音声通信のパケットであることを検出する。検出部120は、送信されるパケットの内容に基づき、音声通信の発生を検出する。また、検出部120は、予め定められた時間内に送信されている音声通信のパケット量に基づき、現在行われている音声通信に必要なデータ量を検出する。
【0035】
なお、検出部120は、通信衛星50へ送信されるパケット内の予め定められたフィールドに、音声通信用のパケットであることを示す値が格納されている場合に、送信されるパケットが音声通信用のパケットであると判断する。一例として、パケット内の予め定められたフィールドとして、IPパケットにおけるIPヘッダ内のToSフィールドを適用できる。
【0036】
割当制御部140は、通信衛星50を介する通信に対して、モデム100に割り当てられる帯域を制御する。具体的には、割当制御部140は、通信衛星50を介する音声通信に対して、通信衛星50を介して行われている現在の音声通信に必要な帯域より、予め定められた帯域以上大きい帯域を予め割り当てる。割当制御部140は、通信衛星50を介する音声通信に対して、上り方向及び下り方向の双方について、予め定められた帯域以上大きい帯域を予め割り当てる。
【0037】
ここで、予め定められた帯域は、通信衛星50を介する1回線の音声通信に必要な帯域であってよい。一例として、音声通信に対して1回線あたりNbpsの帯域を占有的に設定する場合、割当制御部140は、現在音声通信が生じている回線数をMとすると、(M+1)×Nbpsの帯域を、音声通信に対して割り当てる。
【0038】
なお、通信衛星50を介する音声通信が生じていない状態で、通信衛星50を介する音声通信が生じた場合、割当制御部140は、通信衛星50を介する音声通信に対して、2回線の音声通信に必要な帯域以上の帯域を割り当てる。具体的には、割当制御部140は、通信衛星50を介する音声通信に対して帯域を割り当てていない状態で、通信衛星50を介して送信するパケットから音声通信用のパケットを検出した場合に、通信衛星50を介する音声通信に対して、2回線の音声通信に必要な帯域以上の帯域を割り当てる。上述したように、音声通信用のパケットは、検出部120によって検出される。
【0039】
また、割当制御部140は、現在の音声通信に必要な帯域が大きいほど、通信衛星50を介する音声通信に対して予め割り当てている帯域と、現在の音声通信に必要な帯域との差を大きくしてよい。また、割当制御部140は、現在の音声通信に必要な帯域に対する、通信衛星50を介する音声通信に対して予め割り当てている帯域の比率が、予め定められた閾値を超えるよう、通信衛星50を介する音声通信に対して予め割り当てる帯域を調整してよい。
【0040】
なお、割当制御部140は、現在の音声通信に必要な帯域が減少した場合に、減少した後の現在の音声通信に必要な帯域より、通信衛星50を介する音声通信に対して予め定められた帯域以上大きい帯域が割り当てられた状態になるよう、通信衛星50を介する音声通信に対して割り当てている帯域を減少させる。このように、割当制御部140は、予め余分に確保するべき予め定められた帯域を除いて、不要な帯域を開放する。
【0041】
図3は、音声通信に対してモデム100に動的に割り当てられる帯域の時間変化の一例を模式的に示す。図3には、通信衛星50を介する音声通信の発生数300、モデム100に割り当てられた帯域310、及び、1回線あたりの帯域320のそれぞれの時間発展が示されている。
【0042】
時刻t1においては、音声通信に対して帯域は割り当てられていない。ここで、音声通信に対して帯域は割り当てられていない状態で、1回線分の音声通信が発生したことを検出部120が検出すると(時刻t2)、割当制御部140は、2回線分の音声通信に必要な帯域を割り当てる。音声通信に対して1回線あたり64kbpsの帯域を占有的に設定する場合、割当制御部140は、1回線分の音声通信の発生に応じて、128kbpsの帯域を、音声通信に対して割り当てる。割り当てた128kbpsの帯域のうち64kbps分の帯域は、時刻t2で検出された現在の音声通信のデータの伝送に使用される。残りの64kbps分の帯域は、時刻t2で検出された現在の音声通信のデータの伝送には使用されない。この残りの64kbpsの帯域は、音声通信が将来更に発生した場合に使用できるよう、音声通信に対して予め余分に割り当てた帯域である。
【0043】
続いて、時刻t3において、追加で1回線分の音声通信が発生したことを検出部120が検出すると、割当制御部140は、1回線分の音声通信に必要な帯域を、音声通信に対して追加で割り当てる。これにより、音声通信に対して192kbpsの帯域が割り当てられる。時刻t3で検出された追加の音声通信は、時刻t2の後に予め余分に割り当てていた64kbpsの帯域を使用して、伝送され得る。したがって、割り当てた192kbpsの帯域のうち128kbpsの帯域は、時刻t2で検出された既存の現在の音声通信、及び、時刻t3で検出された追加の音声通信のデータの伝送に使用される。そして、残りの64kbps分の帯域は、既存の現在の音声通信、及び、追加の音声通信のデータの伝送には使用されない。この残りの64kbps分の帯域は、音声通信が将来更に発生した場合に使用できるよう、音声通信に対して予め余分に割り当てた帯域である。
【0044】
なお、帯域の割り当てには時間を要するので、図示されるように、現在の音声通信1回線あたりの帯域は、128kbpsから64kbpsに一時的に低下する。しかし、現在の音声通信1回線あたりの帯域は、音声通信1回線あたりに設定されるべき64kbpsを下回らない。そのため、既存の音声通信の通話品質は、追加で生じた音声通信によって低下しない。また、追加で生じた音声通信に対しては、速やかな発呼を提供できる。
【0045】
同様に、時刻t4及びt5のそれぞれにおいて、追加で1回線分の音声通信が発生したことを検出部120が検出する毎に、割当制御部140は、1回線分の音声通信に必要な帯域を、音声通信に対して追加で割り当てる。これにより、時刻t5の帯域割り当てによって、4回線分の音声通信に対して320kbpsの帯域が割り当てられた状態になる。
【0046】
時刻t6において、更に追加で1回線分の音声通信が発生したことを検出部120が検出すると、割当制御部140は、割当制御部140は、2回線分の音声通信に必要な帯域を、音声通信に対して追加で割り当てる。これにより、現在の音声通信に必要な帯域に対する、音声通信に余分に割り当てている帯域の比率を、予め定められた率(例えば、20%の余裕率)より高い状態に維持することができる。
【0047】
具体的には、時刻t2、t3、t4及びt5においては、現在の音声通信に対して1回線分多い帯域を余分に割り当てておくことで、20%を上回る余裕率が得られる。そのため、割当制御部140は、上述したように現在の音声通信に対して1回線分多い帯域を余分に割り当てる。これに対し、時刻t6においては、5回線分の音声通信に対して20%を上回る余裕率が得られるようにするためには、音声通信2回線分の帯域が少なくとも必要である。したがって、上述したように、割当制御部140は、20%の余裕率を得ることができる最小の帯域である2回線分の帯域を、音声通信に対して追加で割り当てる。
【0048】
続いて、時刻t7において、1回線分の音声通信が終了したことを検出部120が検出すると、割当制御部140は、2回線分の音声通信に必要な帯域を、音声通信に対して割り当てている帯域から開放させる。これにより、20%の余裕率を得ることができる最小の帯域に維持する。同様に、時刻t8、t9、t10、t11、t12等において、追加で1回線分の音声通信が発生又は終了したことを検出部120が検出する毎に、音声通信に対して割り当てている帯域を増減させる。割当制御部140は、現在の音声通信に対して予め定められた余裕率が得られるように、音声通信に対して割り当てている帯域を増減させる。
【0049】
なお、検出部120は、単位時間あたりに送信される音声通信用のパケットの量が予め定められた量以上増加した場合に、追加で音声通信が発生したことを検出する。また、検出部120は、単位時間あたりに送信される音声通信用のパケットの量が予め定められた量以上減少した場合に、音声通信が終了したことを検出する。
【0050】
図4は、データ通信に対してモデム100に動的に割り当てられる帯域の時間変化の一例を模式的に示す。図4には、通信衛星50を介するデータ通信に必要な帯域400、及び、モデム100に割り当てられた帯域410のそれぞれの時間発展が示されている。
【0051】
割当制御部140は、データ通信に対しては、現在発生しているデータ通信に必要な帯域を割り当てる。割当制御部140は、上述したように音声通信に対して帯域を余分に割り当る制御を行うが、データ通信に対しては、余分な帯域を割り当てる制御は行わない。したがって、割当制御部140は、データ通信に対しては、現在のデータ通信に必要な帯域に略合致する帯域を動的に割り当てる。割当制御部140が帯域割り当てを要求してから実際にモデム100に帯域が割り当てられるまでに遅延が生じるが、データ通信で伝送されるデータそのものに対する品質は、遅延によって実質的に低下しない。
【0052】
このように、モデム100は、音声通信に対する帯域割り当てとは異なり、データ通信に対しては、いわゆるオンデマンドの帯域割り当てを行う。なお、検出部120は、通信衛星50へ送信されるパケットのヘッダ内の予め定められたフィールドに、音声通信用のパケットであることを示す値が格納されていない場合に、送信されるパケットがデータ通信用のパケットであると判断する。割当制御部140は、データ通信用のパケットであると判断されたパケットの単位時間あたりの数から、データ通信に必要な帯域を算出する。
【0053】
図5は、割当制御部140が実行する処理を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、モデム100の電源がオン状態になった場合に開始される。
【0054】
ステップS502において、割当制御部140は、通信衛星50に向けて送信されるパケットに、音声通信のパケットが存在しているか否かを判断する。例えば、割当制御部140は、予め定められた時間内に、音声通信のパケットが検出部120によって検出されたか否かを判断する。
【0055】
ステップS502の判断において、音声通信のパケットが存在していないと判断した場合、割当制御部140は、パケットの送信量に合わせた帯域割り当てを行う(ステップS504)。具体的には、割当制御部140は、単位時間あたりに送信される非音声通信用のパケットの量に相当する帯域を割り当てる。ステップS504の処理が終了すると、ステップS502に処理を移行する。
【0056】
ステップS502の判断において、音声通信のパケットが存在していると判断した場合、割当制御部140は、音声通信用のパケットの送信量より多い帯域を割り当てる制御を行い、更に音声通信用のパケットをデータ通信用のパケットの上位のキューにセットする(ステップS512〜ステップS524)。
【0057】
帯域を割り当てる制御について具体的に説明すると、ステップS512において、割当制御部140は、音声通信用のパケットの余裕率が20%以下になったか否かを判断する。ステップS512に判断において音声通信用のパケットの余裕率が20%以下になったと判断した場合、余裕率が20%を超えるのに必要な最小の帯域を、音声通信に対して追加で割り当てて(ステップS514)、ステップS502に処理を移行する。
【0058】
ステップS512の判断において音声通信用のパケットの余裕率が20%以下でないと判断した場合、割当制御部140は、ステップS522において、音声通信に対して割り当てている帯域を1回線分以上減らしても、余裕率が20%を超えるか否かを判断する。ステップS522の判断において、帯域を1回線分以上減らしても余裕率が20%を超えると判断した場合、割当制御部140は、余裕率が20%を超える状態を維持できる最大の回線数分の帯域を、音声通信に対して割り当てている帯域から解放させ(ステップS524)、ステップS502に処理を移行する。ステップS522の判断において、帯域を1回線分減らすと余裕率が20%以下になると判断した場合、ステップS502に処理を移行する。
【0059】
以上に説明したように、通信システム5によれば、通信衛星50を介する通信に対して帯域を動的に割り当てることで、地上通信システム7、地上通信システム8の間で帯域を共有できる。ここで、モデム100によれば、帯域を動的に割り当てる場合に、音声通信に対しては余分の帯域を予め優先的に確保するので、既に開始されている音声通信の通信品質が、新たに発生した音声通信によって低下することを抑制できる。このように、通信システム5によれば、音声通信及びデータ通信等の通信の種類に応じて、帯域を予め優先的に確保したり、帯域をオンデマンドで確保したりする。そのため、音声通信等のように、パケットの遅延、遅延揺らぎ、順序逆転、紛失の可能性が高い通信に対しては、帯域を事前に割り当てることができ、通信品質を保つことができる上に適切なキューのセットも行うことができる。係る制御は、衛星通信等のように、帯域に制限がある通信回線上の通信に適用できる。
【0060】
なお、以上の説明では主として、音声通信に対して、1回線につき64kbps等の予め定められた帯域が設定される場合を取り上げた。しかし、1回線あたりに設定する帯域は、64kbps等の特定の値に限定されない。また、1回線あたりに設定する帯域は、基地局30、基地局31毎に異なる値を適用してよい。
【0061】
また、以上の説明では主として、音声通信に対して予め確保する帯域の余裕率として、20%等の予め定められた比率が用いる場合を取り上げた。しかし、余裕率は、20%等の特定の比率に限定されない。また、余裕率は、現在の音声通信に必要な帯域に応じて異ならせてよい。例えば、現在発生している音声通信の回線数に応じて、余裕率を異ならせてよい。また、余裕率は、基地局30、基地局31毎に異なる比率を適用してよい。また、割当制御部140は、音声通信に対して予め確保する余分の帯域や余裕率等を、過去における音声通信の発生履歴に基づいて決定してよい。割当制御部140は、過去の各時間帯における音声通信の発生履歴に基づいて、音声通信に対して予め確保する余分の帯域や余裕率等を、時間帯毎に決定してよい。また、割当制御部140は、過去の各季節における音声通信の発生履歴に基づいて、音声通信に対して予め確保する余分の帯域や余裕率等を、季節毎に決定してよい。
【0062】
また、以上の説明では主として、音声通信の発生を検出部120が検出する場合を取り上げた。しかし、基地局30が、音声通信が新たに発生した場合に、音声通信が新たに発生したことを、モデム100に通知してよい。モデム100において、基地局30から音声通信が新たに発生したことが基地局30から通知された場合、割当制御部140は、検出部120が音声通信の発生を検出した場合と同様の制御により、音声通信に対して余分な帯域を確保してよい。また、基地局30が、モデム100において余分の帯域が確保されるように、音声通信のパケットの送信をモデム100に要求してよい。
【0063】
また、モデム100は、音声通信に対して帯域を更に割り当てることができない場合には、更なる帯域割り当てができない旨を基地局30に通知してよい。基地局30は、更なる帯域割り当てができない旨がモデム100から通知された場合に、新たな音声通信を制限してよい。例えば、基地局30は、新たな呼を制限してよい。
【0064】
なお、音声通信としては、基地局30において音声トラフィックをIPパケット化した音声通信、3G回線上や他の通信回線上で実現されるVoIP、Long Term Evolution(LTE)上で音声通信を実現するVoice over LTE等を適用できる。
【0065】
また、ユーザ端末40、ユーザ端末41、ユーザ端末42及びユーザ端末43は、いわゆるスマートフォン等の携帯電話の他、タブレット端末等の携帯情報端末であってよい。また、ユーザ端末として、いわゆる固定電話や、通話機能を有するコンピュータ等、通話機能を有する様々な電子機器を適用できる。
【0066】
なお、モデム100の各部は、ハードウエアにより実現されてもよく、ソフトウエアにより実現されてもよい。また、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより実現されてもよい。また、プログラムが実行されることにより、コンピュータが、モデム100として機能してもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体又はネットワークに接続された記憶装置から、モデム100の少なくとも一部を構成するコンピュータにインストールされてよい。
【0067】
コンピュータにインストールされ、コンピュータを本実施形態に係るモデム100として機能させるプログラムは、MPU等に働きかけて、コンピュータを、モデム100の各部としてそれぞれ機能させる。これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータに読込まれることにより、ソフトウエアとモデム100のハードウエア資源とが協働した具体的手段として機能する。コンピュータは、MPU、ROM、RAM、EEPROM(登録商標)等の各種メモリ、通信バス及びインタフェースを有し、予めファームウェアとしてROMに格納された処理プログラムをMPUが読み出して順次実行することで、モデム100として機能してよい。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0069】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0070】
2 通信システム、4 衛星通信システム、6、7、8 地上通信システム
10、11、12 衛星通信装置、20、21、22 IF変換装置、30、31、32 基地局、40、41、42、43 ユーザ端末、50 通信衛星
60 基地局制御装置、62 移動通信交換局
66 公衆電話交換回線網
100、101、102 モデム
120 検出部
140 割当制御部
180 送受信部、190、191、192 アンテナ
【要約】
衛星通信を介する音声通信に対して帯域を動的に割り当てる場合、新たに生じた音声通信が、既存の音声通信の通信品質に悪影響を与える場合がある。衛星を介して通信するデータ通信装置であって、衛星を介する音声通信に対して、衛星を介して行われている現在の音声通信に必要な帯域より、予め定められた帯域以上大きい帯域を予め割り当てる割当制御部を備える。プログラムは、コンピュータを、上記データ通信装置として機能させる。衛星通信システムは、上記データ通信装置と、上記衛星とを備える。
図1
図2
図3
図4
図5