(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
銅めっき浴が、更に、スルホアルキルスルホン酸またはその塩、ビススルホ有機化合物およびジチオカルバミン酸誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上を含有し、かつ該成分の濃度が0.1〜200mg/Lである請求項6〜8のいずれかに記載の銅めっき浴。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末機器、パソコン、ビデオ、ゲーム機等の電子機器の回路実装法として、ビルドアップ工法に代表される基板積層工法が盛んに適用されるようになっている。このビルドアップ工法では、積層板にスルーホールやビアホールが設けられており、この微小孔内に析出させた金属によって、各回路層間の接続が行われることにより回路の多層化が可能となる。この微小孔のうち、ブラインドビアホール内への金属の析出は、コンフォーマルビアホールめっきやビアフィリングめっきによって行われている。
【0003】
ところが、ビアホールの内側壁面および底面に金属皮膜を形成させるビアホールめっきでは、穴の上にさらに導体層を積み上げることは難しく、また、回路層間を接続するにあたって、十分な通電を保障するためには金属皮膜の析出エリアを増大させる必要があった。
一方、ビアホール内に金属を充填するビアフィリングを用いると、穴が完全に埋まり、しかもフィリングを行なった後のビアホール部分表面が平坦であれば穴の上にまたビアホールを形成できるのでダウンサイジングには非常に有利である。そのため、絶縁体(絶縁層)の平坦化には限界があるコンフォーマルビアホールめっきに代わるものとして、層間の接続穴(ホール)を埋める、いわゆるビアフィリングめっきが多用されるようになってきた。
【0004】
これまでこのようなビアフィリングの技術としては、アミン類とグリシジルエーテルの反応縮合物および/または該縮合物の4級アンモニウム誘導体を含有することを特徴とする銅めっき浴が知られている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この技術はビア径が大きく(10μm以上)、かつビアのアスペクト比(ビア深さ/ビア直径)が比較的小さい(1以下)のブラインドビアホールであれば問題なくフィリングできるが、近年の微細化要求に伴うビア径の狭小なブラインドビアホール、スルーホール、シリコン貫通電極に代表される3次元実装用の高アスペクトビアではボイドレスフィリングの達成は困難であった。また、LSI用途の銅めっきでは、従来のものでも比較的大径(100nmφ以上)であればアスペクト比4−5程度までフィリングできるが、近年の更なる小径なブラインドビアホールでは良好なフィリングは困難であった。
【0006】
また、プリント回路基板に銅を析出させる方法としてイミダゾール等から選ばれる化合物と、エーテル結合を含むポリエポキシド化合物との反応物であって、特定の多分散度を有する反応物をレベリング剤として銅めっき浴に添加することが知られている(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、この技術では上記反応物が重合させて得られるため、分子量分布を制御しなければならず、理想の多分散度を有するレベリング剤を安定して製造するには、非常に労力が必要であった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の新規化合物は、3つ以上のグリシジルエーテル基を有する化合物と、複素環化合物を、グリシジルエーテル基のエポキシ基と反応させることにより得られる第3級アミン化合物(以下、「本発明3級化合物」という)である。
【0023】
上記本発明3級化合物の原料となる3つ以上のグリシジルエーテル基を有する化合物は、特に限定されないが、例えば、以下の一般式(I)で表される化合物(以下、単に「化合物(I)という」)が挙げられる。
【化3】
(ただし、R
1は水素原子、ホルミル基またはC
4〜C
8とO
2〜O
4で構成されるカルボニル基を含んでいてもよい1または2個のグリシジルエーテル基、好ましくは水素原子またはグリシジルエーテル基であり、R
2は水素原子、メチル基またはエチル基、好ましくは水素原子またはエチル基であり、R
3は水素原子、ホルミル基またはC
4〜C
8とO
2〜O
4で構成されるカルボニル基を含んでいてもよい1または2個のグリシジルエーテル基、好ましくは水素原子またはグリシジルエーテル基であり、nは1〜4の整数である)
【0024】
上記化合物(I)の具体例としては以下のものが挙げられる。なお、これらの化合物(I)は、いずれも市販品として購入することができる他、当業者であればケミカルアブストラクト(vol.73, 57454n,(1970))に準じて、3つ以上のグリシジルエーテル基を有する化合物に対応するポリオールとエピクロロヒドリンとを反応させることによっても得ることができる。
【0026】
また、本発明3級化合物のもう一方の原料である複素環化合物は、特に限定されないが、例えば、一般式(II)で表されるものが挙げられる。
【化4】
(ただし、R
4はC
2〜C
8で表される不飽和結合を有していてもよく、窒素原子、酸素原子または硫黄原子で置換されていてもよい、5員環、6員環または5員環および6員環を形成する炭化水素、好ましくはC
4〜C
5の炭化水素である)
【0027】
上記一般式(II)で表される複素環化合物の好ましいものとしては、ピラゾール、ベンズイミダゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン等が挙げられる。なお、これら複素環化合物はメチル基、エチル基等のアルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の水酸基、ホルミル基、カルボキシル基等のカルボニル基等の置換基を有していてもよい。
【0028】
上記複素環化合物を、3つ以上のグリシジルエーテル基を有する化合物のグリシジルエーテル基のエポキシ基と反応させて本発明3級化合物を得るには、室温以下、例えば、−78〜25℃の冷却条件で反応を行うことが重要である。具体的には、3つ以上のグリシジルエーテル基を有する化合物に、複素環化合物を添加する時に0〜10℃に冷却し、添加終了後、未反応のエポキシ基が残らないように室温まで昇温する条件が挙げられる。なお、この反応条件はグリシジルエーテル自体が重合する条件ではない。
【0029】
このようにして得られる本発明3級化合物は、特に限定されないが、例えば、以下の一般式(III)で表される第3級アミン化合物が挙げられる。
【化5】
(ただし、R
1は水素原子、ホルミル基またはC
4〜C
8とO
2〜O
4で構成されるカルボニル基を含んでいてもよい1または2個のグリシジルエーテル基、好ましくは水素原子またはグリシジルエーテル基であり、R
2は水素原子、メチル基またはエチル基、好ましくは水素原子またはエチル基であり、R
3は水素原子、ホルミル基またはC
4〜C
8とO
2〜O
4で構成されるカルボニル基を含んでいてもよい1または2個のグリシジルエーテル基、好ましくは水素原子またはグリシジルエーテル基であり、R
4はC
2〜C
8で表される不飽和結合を有していてもよく、窒素原子、酸素原子または硫黄原子で置換されていてもよい5員環、6員環または5員環および6員環を形成する炭化水素、好ましくはC
4〜C
5の炭化水素であり、nは1〜4の整数である)
【0030】
このような本発明3級化合物は、例えば、赤外分光法(IR)の測定により同定することができ、具体的には、本発明3級化合物のIRスペクトルに水酸基由来の3400cm
‐1付近のピークおよび第3級アミン化合物由来の1300cm
‐1付近のピークを確認することにより同定できる。なお、以下に本発明者らが実際に得た本発明3級化合物に属する化合物の構造式とIRスペクトル測定により得られたピーク位置を示す。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【0031】
上記した本発明3級化合物は、第4級化して第4級アンモニウム化合物(以下、「本発明4級化合物」という)とすることができる。本発明3級化合物の第4級化は、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニルまたはハロゲン化アリール、ジアルキル硫酸等の4級化試薬と、本発明3級化合物を反応させることにより得ることができる。この第4級化の反応は、還流条件下または冷却条件下で行うことが好ましく、具体的には、ハロゲン化物との反応は非プロトン性溶媒であるアセトンまたはアセトニトリルなどを反応溶媒として還流する条件が挙げられ、また、ジアルキル硫酸との反応はアセトンまたはアセトニトリルまたは水を反応溶媒として0〜10℃に冷却して反応させる条件が挙げられる。
【0032】
このようにして得られる本発明4級化合物は、特に限定されないが、例えば、一般式(IV)で表される第4級アンモニウム化合物(以下、単に「化合物(IV)」という)が挙げられる。
【化16】
(ただし、R
1は水素原子、ホルミル基またはC
4〜C
8とO
2〜O
4で構成されるカルボニル基を含んでいてもよい1または2個のグリシジルエーテル基、好ましくは水素原子またはグリシジルエーテル基であり、R
2は水素原子、メチル基またはエチル基、好ましくは水素原子またはエチル基であり、R
3は水素原子、ホルミル基またはC
4〜C
8とO
2〜O
4で構成されるカルボニル基を含んでいてもよい1または2個のグリシジルエーテル基、好ましくは水素原子またはグリシジルエーテル基であり、R
4はC
2〜C
8で表される不飽和結合を有していてもよく、窒素原子、酸素原子または硫黄原子で置換されていてもよい5員環、6員環または5員環および6員環を形成する炭化水素、好ましくはC
4〜C
5の炭化水素であり、R
5はC
1〜C
7で表される不飽和結合を有していてもよい炭化水素、好ましくはC
1〜C
3の炭化水素であり、Xはハロゲン原子またはC
1〜C
7で表されるモノアルキル硫酸であり、好ましくは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子またはC
1〜C
3で表されるモノアルキル硫酸であり、nは1〜4の整数である)
【0033】
なお、上記化合物(IV)の対アニオン(X
−)は、上記に限定されるものではなく、例えば、上記対アニオンから誘導される水酸化物イオン等でもよい。これら対アニオンから誘導される水酸化物イオン等は、常法に従い、アニオン交換樹脂等により化合物(IV)を処理することにより得られる。
【0034】
このような本発明4級化合物は、例えば、赤外分光法(IR)の測定により同定することができ、具体的には、第3級アミン化合物由来の1300cm
‐1付近のピークの消失および第4級アンモニウム化合物由来の1700cm
‐1付近のピークを確認することにより同定できる。なお、以下に本発明者らが実際に得た本発明4級化合物に属する化合物の構造式とIRスペクトル測定により得られたピーク位置を示す。
【0035】
【化17】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【0036】
上記した本発明3級化合物および本発明4級化合物は、例えば、これらの化合物から選ばれる1種または2種以上を使用して種々の用途に利用することができるが、例えば、銅めっき浴用添加剤に利用することができる。この場合、銅めっき浴におけるこれら化合物の濃度は、0.1〜1000mg/L、好ましくは1〜800mg/Lである。
【0037】
この銅めっき浴用添加剤を添加する銅めっき浴は特に制限されないが、例えば、銅イオンおよび有機酸または無機酸を含有するもの等が挙げられる。
【0038】
この銅めっき浴に含有することが可能な銅イオン源としては、通常の銅めっき浴に用いられる銅化合物であれば特に制限はなく利用することができる。その具体例としては、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、炭酸銅、ピロリン酸銅や、メタンスルホン酸銅、プロパンスルホン酸銅等のアルカンスルホン酸銅、イセチオン酸銅、プロパノールスルホン酸銅等のアルカノールスルホン酸銅、酢酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅などの有機酸銅およびその塩などが挙げられる。これらの銅化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
また、銅めっき浴における銅イオンの濃度は、銅めっき浴の組成において10〜80g/L、好ましくは35〜75g/Lである。
【0040】
一方、銅めっき浴に含有することが可能な有機酸または無機酸は、銅を溶解しうるものであれば特に制約なく使用しうるが、その好ましい具体例としては、硫酸、メタンスルホン酸、プロパンスルホン酸等のアルカンスルホン酸類、イセチオン酸、プロパノールスルホン酸等のアルカノールスルホン酸類、クエン酸、酒石酸、ギ酸などの有機酸類などが挙げられる。これらの有機酸または無機酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、銅めっき浴は、酸性としておくことが好ましい。この有機酸または無機酸の濃度は、銅めっき浴の組成において、5〜200g/L、好ましくは10〜100g/Lである。
【0041】
なお、この銅めっき浴は、金属銅をその基本組成とするものであるが、例えば、Ge、Fe、In、Mn、Mo、Ni、Co、Pb、Pd、Pt、Re、S、Ti、W、Cd、Cr、Zn、Sn、Ag、As、Au、Bi、Rh、Ru、Ir等の金属を含有していてもよい。
【0042】
また、この銅めっき浴には必要に応じて、通常の酸性銅めっき浴と同様に塩素、ヨウ素、臭素などのハロゲンイオンを添加してもよい。この場合のハロゲンイオンの濃度は、銅めっき浴の組成において、0.01〜150mg/L、好ましくは10〜100mg/Lである。
【0043】
更に、上記銅めっき浴には、スルホアルキルスルホン酸またはその塩、ビススルホ有機化合物およびジチオカルバミン酸誘導体の1種または2種以上を含有させることができる。これらは、一般にキャリアー成分あるいはブライトナーとも呼ばれる添加成分であり、その具体例としては次の(1)〜(3)のものが挙げられる。
(1)次式(a)で表されるスルホアルキルスルホン酸およびその塩
【化35】
(ただし、L
1はC
1〜C
18の飽和あるいは不飽和のアルキレン基を示し、M
1は水素あるいはアルカリ金属を示す)
(2)次式(b)で表されるビススルホ有機化合物
【化36】
(ただし、X
1およびY
1は硫酸塩残基またはりん酸塩残基を示し、L
2およびL
3はC
1〜C
18の飽和あるいは不飽和のアルキレン基を示す)
(3)次式(c)で表されるジチオカルバミン酸誘導体
【化37】
(ただし、R
6およびR
7はいずれも水素原子またはC
1〜C
3の低級アルキル基、L
4はC
3〜C
6のアルキレン基を示し、X
2は硫酸塩残基またはリン酸塩残基を示す)
【0044】
上記成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、その濃度は、銅めっき浴の組成において0.1〜200mg/L、好ましくは0.3〜20mg/Lである。
【0045】
また、銅めっき浴には、上記の成分以外に、一般的に銅めっきで用いられるポリエーテル類、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プルロニック型界面活性剤、テトロニック型界面活性剤、ポリエチレングリコール・グリセリルエーテル、ポリエチレングリコール・ジアルキルエーテルなどのいわゆるポリマー類や表面張力低減を目的とする湿潤剤類、レベラーと呼ばれるポリアルキレンイミン、アルキルイミダゾリン化合物、オーラミンおよびその誘導体、フタロシアニン化合物、ヤーヌスグリンなどの有機染料などを含有させることができる。
【0046】
上記のような銅めっき浴は、常法を用いて調製すればよく、その詳細は、各成分の組成や配合量等を考慮して適宜決定すればよい。
【0047】
次に、以上説明した本発明の銅めっき浴を用いた銅めっき方法について説明する。
【0048】
本発明の銅めっき方法の対象となる基板としては、特に限定されないが、例えば、樹脂製等の基板に金属等の導電層を形成し、パターニングしたものや、表面に微細な回路パターンが設けられた、シリコンウエハ等の半導体基板、プリント基板等の電子回路用基板等が挙げられる。
【0049】
これらの基板には、ブラインドビアホール、微細配線用のトレンチ(溝)、基板を貫通するスルーホール等が混在していても良い。
【0050】
これらの基板の具体的な例としては、ICベアチップが直接実装されるパッケージ基板などのプリント基板や、LSIなどが直接実装されるシリコンウェハ、更には半導体チップそのものの製造を目的としたシリコンウェハ基板等を挙げることができる。
【0051】
本発明の銅めっき方法を行うには、必要によりバリア層の形成等の前処理を行った後、基板に対して給電層となる金属シード層を形成する等の導電化処理を行う。この導電化処理は、通常の導電化処理方法により行うことができ、例えば無電解めっきによる金属(カーボンを含む)被覆処理、カーボンやパラジウム等によるいわゆるダイレクトめっき処理工法、スパッタリング、蒸着または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)等により行うことができる。
【0052】
導電化処理された基板は、次いで、銅めっき浴で銅めっきする。本発明の銅めっき浴で銅めっきする条件は、特に限定されず、通常の硫酸銅めっきの条件に従えばよい。すなわち、液温20〜30℃程度、陰極電流密度0.05〜3A/dm
2程度でめっきを行えばよい。また、めっき時間はめっきの目的にあわせて適宜設定すればよい。更に、このめっきの際にはエアレーション、ポンプ循環、パドル撹拌等による液攪拌を行うことが好ましい。
【0053】
以上説明した銅めっき方法は、上記基板にあるブラインドビアホール、スルーホール、トレンチ、シリコン貫通電極等を、表層めっき厚(ブラインドビアホール、スルーホール、トレンチ、シリコン貫通電極と同時にめっきされる、それらのない基板部分のめっきの厚さ)が薄い状態で埋めることができる。
【0054】
具体的には、パターニングされ、直径50μm、深さ30μmのブラインドビアホールを有する基板に銅めっきをしてビアホールを完全に埋めるためには、1.5A/dm
2の陰極電流密度で30分程度めっきすればよい。このときの表層めっき厚は10μm程度となる。
【0055】
また、半導体製造を目的として、直径0.1〜0.5μm、深さ0.2〜1μmのビアホールやトレンチを有するシリコンウエハなどの基板に銅めっきをしてビアホールやトレンチを完全に埋めるためには、2A/dm
2程度の陰極電流密度で150秒程度めっきすればよい。この時の表層めっき厚は1μm程度となる。
【0056】
更に、3次元実装を目的として、直径10μm、深さ20μmのシリコン貫通電極へのフィリングめっきの場合は、2A/dm
2の陰極電流密度で10分程度めっきすればよい。このときの表層めっき厚は5μm程度となる。また、直径20μm、深さ100μmのシリコン貫通電極へのフィリングめっきの場合は、0.2A/dm
2の陰極電流密度で60分程度めっきすればよい。このときの表層めっき厚は3μm程度となる。
【0057】
以上説明した本発明のめっき方法は、特に限定されず、種々のめっきプロセスあるいは装置において実施可能である。
【実施例】
【0058】
以下、製造例、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0059】
実 施 例 1
第3級アミン化合物(IIIa)の合成:
温度計、攪拌機、滴下ロートを備えた反応容器に、グリセリントリグリシジルエーテル(エポキシ当量143g/e.q.)20gを入れ、純水100mLを加えて溶解させた後、0℃に冷却して、ピロリジン10.2gを反応温度が30℃以内になるようにゆっくり加えた。その後、室温まで昇温し、2時間反応させ、NMRにより、エポキシド由来のシグナル(2.54、2.71、3.08ppm)の消失を確認した。次に、減圧濃縮して反応溶媒および過剰のピロリジンを除去し、第3級アミン化合物を29.9g得た。
【0060】
得られた第3級アミン化合物の官能基をIR測定により確認したところ、3400、2910、1450、1310、1290、1110cm
‐1にピークが認められ、それらのピークの中に水酸基由来のピーク(3400cm
‐1)と第3級アミン化合物由来のピーク(1310、1290cm
‐1)を確認することができた。
【0061】
以上の結果より、第3級アミン化合物(IIIa)が得られたことがわかった。
【0062】
実 施 例 2
第4級アンモニウム化合物(IVa)の合成:
温度計、攪拌機、滴下ロート、ジムロート冷却器を備えた反応容器に、上記実施例1で得られた第3級アミン化合物(IIIa)29.9gを入れ、アセトニトリル100mLを加えて完全に溶解した後、ヨウ化メチル17.4mLを加え、12時間加熱還流して反応させた。次に、減圧濃縮して反応溶媒および過剰のヨウ化メチルを除去し、第4級アンモニウム化合物を得た。
【0063】
得られた第4級化合物の官能基をIR測定により確認したところ、第3級アミン化合物由来のピーク(1310、1290cm
‐1)の消失および第4級アンモニウム化合物由来のピーク(1680cm
‐1)を新たに確認することができた。
【0064】
以上の結果より、第4級アンモニウム化合物(IVa)が得られたことがわかった。
【0065】
実 施 例 3
第3級アミン化合物(IIIj)の合成:
実施例1に従い、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル(エポキシ当量170g/e.q.)20gとピペリジン10.4gを反応させ、NMRにより、エポキシド由来のシグナル(2.54、2.71、3.08ppm)の消失を確認し、第3級アミン化合物を30.0g得た。
【0066】
得られた第3級化合物の官能基をIR測定により確認したところ、3410、2920、1440、1320、1270、1100cm
‐1にピークが認められ、それらのピークの中に水酸基由来のピーク(3410cm
‐1)と第3級アミン化合物由来のピーク(1320、1270cm
‐1)を確認することができた。
【0067】
以上の結果より、第3級アミン化合物(IIIj)が得られたことがわかった。
【0068】
実 施 例 4
第4級アンモニウム化合物(IVt)の合成:
実施例2に従い、上記実施例3で得られた第3級アミン化合物(IIIj)30.0gと塩化アリル19.2mLを反応させ、第4級アンモニウム化合物を39.0g得た。
【0069】
得られた第4級アンモニウム化合物の官能基をIR測定により確認したところ、第3級アミン化合物由来のピーク(1320、1270cm
‐1)の消失および第4級アンモニウム化合物由来のピーク(1640cm
‐1)とアリル基由来のピーク(1040、950cm
‐1)を新たに確認することができた。
【0070】
以上の結果より第4級アンモニウム化合物(IVt)が得られたことがわかった。
【0071】
実 施 例 5
樹脂基板への銅めっき:
無電解銅めっきにてシード層形成した、直径70μm、深さ40μmのブラインドビアホール(アスペクト比0.57)を有するエポキシ樹脂基板に、実施例1で合成した第3級アミン化合物(IIIa)を添加した以下の組成の銅めっき浴を用い、以下の条件で電気銅めっきを施した。
【0072】
(銅めっき浴組成)
硫酸銅5水和物:230g/L
硫酸(98%):50g/L
塩素:40mg/L
第3級アミン化合物(IIIa):100mg/L
SPS(*):1mg/L
*ビス3−(スルホプロピル)ジスルフィド
(電気銅めっき条件)
めっき温度:25℃
陰極電流密度:2A/dm
2
めっき時間:35分
撹拌:エア撹拌
【0073】
実 施 例 6
樹脂基板への銅めっき:
無電解銅めっきにてシード層形成した、直径70μm、深さ40μmのブラインドビアホール(アスペクト比0.57)を有するエポキシ樹脂基板に、実施例2で合成した第4級アンモニウム化合物(IVa)を添加した以下の組成の銅めっき浴を用い、以下の条件で電気銅めっきを施した。
【0074】
(銅めっき浴組成)
硫酸銅5水和物:230g/L
硫酸(98%):50g/L
塩素:40mg/L
第4級アンモニウム化合物(IVa):100mg/L
SPS(*):1mg/L
*ビス3−(スルホプロピル)ジスルフィド
(電気銅めっき条件)
めっき温度:25℃
陰極電流密度:2A/dm
2
めっき時間:25分または35分
撹拌:エア撹拌
【0075】
比 較 例 1
樹脂基板への銅めっき(1):
銅めっき浴に添加された第3級アミン化合物(IIIa)100mg/LをヤーヌスグリンB 4mg/LおよびPEG4000 100mg/Lにする以外は実施例5と同様にして樹脂基板に電気銅めっきを施した。
【0076】
比 較 例 2
樹脂基板への銅めっき(2):
銅めっき浴に添加された第3級アミン化合物(IIIa)100mg/Lを以下の式で示されるポリエチレングリコール(9重合物)とジメチルアミンおよび塩化アリルからなる第4級アンモニウム化合物100mg/Lにする以外は実施例5と同様にして樹脂基板に電気銅めっきを施した。
【化38】
【0077】
試 験 例 1
銅めっきの評価:
実施例5において電気銅めっきを施した樹脂基板の断面写真を
図1(めっき時間35分)に、実施例6において電気銅めっきを施した樹脂基板の断面写真を
図2(Aはめっき時間35分、Bは25分)示した。また、比較例1、2において電気銅めっきを施した樹脂基板の断面写真を
図3(Cは比較例1、Dは比較例2、めっき時間は共に35分)に示した。実施例5および実施例6は、比較例1、2に比べ、良好なフィリング性能を発揮した。特に
図2のBから、実施例6ではめっき時間が25分で完全にビア充填されており、表層めっき厚が9.1μmと非常に薄いめっき厚でのフィリングが可能であることがわかった。これにより本発明がファインパターン回路への適用が可能であることが示された。
【0078】
実 施 例 7
シリコンウエハ基板への銅めっき:
真空スパッタでCuのシード層形成した、直径20μm、深さ110μmのブラインドビアホール(アスペクト比5.5)を有するシリコンウエハ基板に、実施例3で合成した第3級アミン化合物(IIIj)を添加した以下の組成の銅めっき浴を用い、以下の条件で電気銅めっきを施した。
【0079】
(銅めっき浴組成)
硫酸銅5水和物:250g/L
硫酸(98%):30g/L
塩素:40mg/L
第3級アミン化合物(IIIj):10mg/L
SPS(*):1mg/L
*ビス3−(スルホプロピル)ジスルフィド
(電気銅めっき条件)
めっき温度:25℃
陰極電流密度:0.4A/dm
2
めっき時間:80分
撹拌:スキージ撹拌
【0080】
電気銅めっきを施したシリコンウエハ基板の断面写真を
図4に示した。この図より本発明はシリコンウエハ基板でも良好なフィリング性能を発揮することが示された。
【0081】
このように従来のビアフィリング用のめっき浴ではアスペクト比が1以上ではボトムアップでのフィリングが困難で、ビアホール内にボイドを生じていたが、本発明ではアスペクト比が2より大きいビアホールでも全くボイドを生ずることなくめっき充填が可能であった。