(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧搾ローラとの間でメッシュベルト上の濾滓を圧搾する回転ローラは、外周部を吸水性部材により構成してなり、前記回転ローラに所定の圧力で当接する前記回転ローラの絞り用ローラを設けてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置。
ベルト駆動部の運転を制御する制御部を備え、前記制御部は、メッシュベルトを所定時間走行させた後に一時停止し、間欠的に走行させる間欠走行手段を備えてなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置。
ベルト駆動部の運転を制御する制御部を備えるとともに、供給部には該供給部よりメッシュベルト上に供給される脱墨排液の量を検出する排液量検出手段を備え、制御部は前記排液量検出手段により検出された脱墨排液量に基づいてメッシュベルトの走行速度を変更する走行速度制御手段とを備えてなることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置。
メッシュベルトにより脱墨排液が濾過されることにより生じた濾液を貯留する濾液タンクを設けてなり、該濾液タンク内には磁性体が配備されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置。
古紙パルプ液を脱墨することにより古紙パルプ液から脱墨排液を分離する脱墨処理装置と、脱墨処理装置により分離された脱墨排液を処理する請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置とを備えた脱墨システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示されるスクリーン装置では、スクリーンの回転に多大なエネルギーを必要とするとともに、かなりの振動及び騒音が発生する。一方、脱墨排液からパルプ繊維を分離する他の方法としてフィルター等を用いてパルプ繊維を濾別することも考えられるが、パルプ繊維によるフィルターの目詰まりを生じやすく、排液処理に長時間を要する。
【0006】
本発明は上記した課題を解決するものであり、少ないエネルギーにより運転可能であり、振動及び騒音の発生がほとんどなく、短時間で効率のよい脱墨排液の処理方法及びかかる方法を実施可能な脱墨排液の処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の脱墨排液処理装置は、古紙パルプ液を脱墨することにより古紙パルプ液から分離された脱墨排液を処理するための脱墨排液処理装置であって、複数の回転ローラに掛け渡された無端状のメッシュベルトと、メッシュベルトを走行させるベルト駆動部と、メッシュベルト上に脱墨排液を供給する脱墨排液供給部と、複数の回転ローラのうち少なくとも1個の回転ローラに対向配置され、該回転ローラとの間でメッシュベルトを挟持し、脱墨排液がメッシュベルトにより濾過され、メッシュベルト上に残存している濾滓を圧搾する少なくとも1個の圧搾ローラとを備え
、濾滓を搬送するメッシュベルトの上面に接触し、メッシュベルト上の濾滓を所定量ずつ掻き寄せるための掻き寄せ羽根を備えた濾滓掻寄部が設けられてなる。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の脱墨排液処理装置において、
掻き寄せ羽根の先端が可撓性を有する。
【0009】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項
1または請求項2に記載の脱墨排液処理装置において、濾滓掻寄部は、回転軸と、該回転軸の外周面に突設された掻き寄せ羽根と、回転軸を回転駆動する掻寄駆動部とを備えてなるものである。
【0010】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置において、圧搾ローラとの間でメッシュベルト上の濾滓を圧搾する回転ローラは、外周部を吸水性部材により構成してなり、前記回転ローラに所定の圧力で当接する前記回転ローラの絞り用ローラを設けてなるものである。
【0011】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置において、濾滓を搬送するメッシュベルトの上面又は上方には、該メッシュベルトの少なくとも一方の幅縁部に沿って延在するガイドが設けられ、前記ガイドは、メッシュベルトの走行方向下流側端部の方が上流側端部よりもメッシュベルトの幅方向中央に近い位置となるよう平面視において傾斜配置されているものである。
【0012】
更に、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置において、ベルト駆動部の運転を制御する制御部を備え、前記制御部は、メッシュベルトを所定時間走行させた後に一時停止し、間欠的に走行させる間欠走行手段を備えてなるものである。
【0013】
更に、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置において、ベルト駆動部の運転を制御する制御部を備えるとともに、供給部には該供給部よりメッシュベルト上に供給される脱墨排液の量を検出する排液量検出手段を備え、制御部は前記排液量検出手段により検出された脱墨排液量に基づいてメッシュベルトの走行速度を変更する走行速度制御手段とを備えてなるものである。
【0014】
更に、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置において、メッシュベルトの下方には、メッシュベルトにより脱墨排液が濾過されることにより生じた濾液を貯留する濾液タンクを設けてなり、該濾液タンク内には磁性体が配備されているものである。
【0015】
更に、請求項9に記載の発明は、古紙パルプ液を脱墨することにより古紙パルプ液から脱墨排液を分離する脱墨処理装置と、脱墨処理装置により分離された脱墨排液を処理する請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置とを備えた脱墨システムに関するものである。
【0016】
更に、請求項10に記載の発明は、古紙パルプ液から分離された脱墨排液を処理するための脱墨排液処理方法であって、ベルト駆動部の駆動により回転駆動する無端状のメッシュベルト上に脱墨排液供給部から脱墨排液を供給して脱墨排液を濾過することによって固液分離し、メッシュベルト上に残存する濾滓を該メッシュベルトの内方に設置された少なくとも1個の回転ローラとこの回転ローラに対向配置された圧搾ローラとの間で圧搾する
とともに、濾滓を搬送するメッシュベルトの上面に接触する掻き寄せ羽根が、メッシュベルト上の濾滓を所定量ずつ掻き寄せる脱墨排液の処理方法に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の脱墨排液処理装置は、複数の回転ローラに掛け渡された無端状のメッシュベルトと、メッシュベルトを走行させるベルト駆動部と、メッシュベルト上に脱墨排液を供給する脱墨排液供給部と、複数の回転ローラのうち少なくとも1個の回転ローラに対向配置され、該回転ローラとの間でメッシュベルトを挟持し、脱墨排液がメッシュベルトにより濾過され、メッシュベルト上に残存している濾滓を圧搾する少なくとも1個の圧搾ローラとを備え
、濾滓を搬送するメッシュベルトの上面に接触し、メッシュベルト上の濾滓を所定量ずつ掻き寄せるための掻き寄せ羽根を備えた濾滓掻寄部が設けられてなるので、脱墨排液を脱墨排液供給部よりメッシュベルト上に供給し、ベルト駆動部の駆動によりメッシュベルトを走行させつつ濾過し、メッシュベルト上に残存する濾滓を圧搾ローラと回転ローラとの間で挟持し、圧搾する。これにより、大掛かりな設備を不要とし、少ないエネルギーにより運転できる。また、振動及び騒音の発生がほとんどなく、短時間で効率のよい処理が可能となる。
また、掻き寄せ羽根によって濾滓をメッシュベルト上の所定箇所に掻き寄せ、網目の目詰まりを解消し、網目の目詰まりにより低下した濾過効率を回復することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によれば、
掻き寄せ羽根の先端が可撓性を有する場合は、メッシュベルトに接触する際掻き寄せ羽根の先端部が容易に撓み、メッシュベルトを傷めることなく効率よく濾滓を掻き寄せることができる。
【0019】
そして、請求項3に記載の発明によれば、濾滓掻寄部は、回転軸と、該回転軸の外周面に突設された掻き寄せ羽根と、回転軸を回転駆動する掻寄駆動部とを備えてなるので、掻寄駆動部を駆動して回転軸を回転し、掻き寄せ羽根がメッシュベルトの上面に接触し、メッシュベルト上の濾滓を掻き寄せるので、少ない動力で非常に効率よく濾滓を掻き寄せることができ、メッシュベルトによる濾過効率を容易に回復することが可能である。
【0020】
更に、請求項4に記載の発明によれば、圧搾ローラとの間でメッシュベルト上の濾滓を圧搾する回転ローラは、外周部を吸水性部材により構成してなり、この回転ローラに所定の圧力で当接する回転ローラの絞り用ローラを設けたので、濾滓に未だ含まれている液体成分を回転ローラの吸水性部材により吸水し、この吸水性部材に吸水された液体を絞りローラで絞ることができ、圧搾ローラ及び回転ローラによる圧搾の効率をより向上させることができる。
【0021】
更に、請求項5に記載の発明によれば、濾滓を搬送するメッシュベルトの上面又は上方には、該メッシュベルトの少なくとも一方の幅縁部に沿って延在するガイドが設けられ、前記ガイドは、メッシュベルトの走行方向下流側端部の方が上流側端部よりもメッシュベルトの幅方向中央に近い位置となるよう平面視において傾斜配置されているので、メッシュベルト上の濾滓を、メッシュベルトの走行に従って幅方向中央部に誘導し案内することができる。これによって濾滓をメッシュベルトの幅方向中央部に集め、濾滓の厚みを圧搾ローラ59による圧搾に適する所定の厚さとすることができる。
【0022】
更に、請求項6に記載の発明によれば、ベルト駆動部の運転を制御する制御部を備え、前記制御部は、メッシュベルトを所定時間走行させた後に一時停止し、間欠的に走行させる間欠走行手段を備えてなるので、脱墨排液供給部からの脱墨排液の供給時、メッシュベルトを一時停止して脱墨排液を脱墨排液供給部の出口近傍に滞留させ、濾過により得られる濾滓の厚さを、所定量以上とすることができるので、圧搾ローラによる圧搾を確実に行うことが可能となる。
【0023】
更に、請求項7に記載の発明によれば、ベルト駆動部の運転を制御する制御部を備えるとともに、供給部には該供給部よりメッシュベルト上に供給される脱墨排液の量を検出する排液量検出手段を備え、制御部は前記排液量検出手段により検出された脱墨排液量に基づいてメッシュベルトの走行速度を変更する走行速度制御手段とを備えてなるので、脱墨排液供給部から供給される脱墨排液の量が増減する場合であっても、メッシュベルト57上に残存する濾滓の量を略一定量とすることができ、最適な濾過条件で脱墨排液を濾過することができる。
【0024】
更に、請求項8に記載の発明によれば、メッシュベルトにより脱墨排液が濾過されることにより生じた濾液を貯留する濾液タンクを設けてなり、該濾液タンク内には磁性体が配備されているので、濾液中に含まれる磁性インクや磁性トナー等を吸着して回収することができ、簡単な構造により、濾液タンクから外部に排出する排液に重金属を含ませないようにすることができる。
【0025】
更に、請求項9に記載の脱墨システムによれば、古紙パルプ液を脱墨することにより古紙パルプ液から脱墨排液を分離する脱墨処理装置と、脱墨処理装置により分離された脱墨排液を処理する請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の脱墨排液処理装置52とを備えたので、パルプ繊維を脱墨処理装置により脱墨処理して脱墨パルプを得ることができるとともに、脱墨処理により生じた脱墨排液を脱墨廃液処理装置により処理可能である。よって、古紙を原料に再生紙を製造する際に、脱墨を行って白色度の高い再生紙を製造するための原料を製造可能であるとともに、脱墨処理の結果生じる排液の処理をも行うことができ、非常に効率がよい。
【0026】
更に、請求項10に記載の脱墨排液の処理方法によれば、古紙パルプ液から分離された脱墨排液を処理するための脱墨排液処理方法であって、ベルト駆動部の駆動により回転駆動する無端状のメッシュベルト上に脱墨排液供給部から脱墨排液を供給して脱墨排液を濾過することによって固液分離し、メッシュベルト上に残存する濾滓を該メッシュベルトの内方に設置された少なくとも1個の回転ローラとこの回転ローラに対向配置された圧搾ローラとの間で圧搾濾滓する
とともに、搬送するメッシュベルトの上面に接触する掻き寄せ羽根が、メッシュベルト上の濾滓を所定量ずつ掻き寄せるので、脱墨排液に含まれるパルプ繊維を容易に濾別することができ、濾過により生じた古紙パルプからなる濾滓を圧搾することができ、廃棄処理が容易となる。
また、掻き寄せ羽根によって網目の目詰まりを解消し、濾過効率を回復することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明にかかる古紙再生処理装置再生処理装置の構成概略図である。
図1において、古紙再生処理装置100は、古紙パルプ液製造部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4を一体的に備えるものである。
【0029】
古紙パルプ液製造部1は、古紙6を離解して古紙パルプ液を製造するものであり、脱墨パルプ部2は、古紙パルプ液製造部1において製造された古紙パルプ液を脱墨するものであり、抄紙部3は、脱墨パルプ部2において得られた脱墨パルプを抄紙し、抄紙により得られた湿紙の脱水及び乾燥を行うものであり、仕上げ部4は、抄紙部3において湿紙の乾燥を行ったものを裁断等することにより仕上げを行って再生紙7を得るものである。
【0030】
(古紙パルプ液製造部)
図2は、古紙パルプ液製造部1の内部構造を示す概略図である。古紙パルプ液製造部1は、古紙6を投入する古紙投入部11が設けられ、また、パルパー18を設けてなる。該パルパー18は古紙6や古紙6の裁断紙片(図示省略)を水及び離解促進剤の液体中においてパルプ繊維つまり古紙パルプにまで離解させるものである。
【0031】
ここで、古紙パルプ液とは、パルパー18において古紙6や古紙の裁断紙片を離解することにより得られた古紙パルプ、水等を含む液体のことであり、古紙パルプ液製造部1のパルパー18に貯留する古紙パルプ液には、離解途中の古紙、離解により水中に取り出されたインク成分やトナー成分等の印刷成分や離解促進剤が溶解され又は混合されている。
【0032】
パルパー18には、古紙6等が投入される攪拌槽181と、攪拌槽181に給水するための給水部182と、離解促進剤供給部183とを設けている。離解促進剤供給部183から供給される古紙6の離解を促進する離解促進剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を用いることができ、更に、スルファミン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硫酸アルミニウムなどの酸類、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤、界面活性剤、漂白剤、PH安定剤、キレート剤、分散剤などを補助的に用いることもできる。
【0033】
攪拌槽181の底部には、古紙6等を給水部182から給水された水とともに攪拌し離解するための攪拌羽根184が設けられ、前記攪拌羽根184を回転駆動するモータ等の駆動手段188を有している。また、得られた古紙パルプ液を取り出すための古紙パルプ液取出部187を設けている。
【0034】
(脱墨パルプ部)
図1に示すように、 脱墨パルプ部2は、脱墨前希釈部21及び脱墨システム部22を備え、
脱墨システム部22は脱墨システムにより構成され、該脱墨システム部22は脱墨処理装置51及び脱墨排液処理装置52とを備えてなる。各部の間には配管、ポンプ等からなる移送部(図示省略)を設けている。
【0035】
脱墨前希釈部21は、パルパー18から送られた古紙パルプ液を脱墨に適した繊維濃度、ここでは0.1重量%〜5.0重量%程度、より好ましくは0.3重量%〜2.0重量%程度にまで希釈するものであり、希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤等を投入する希釈液供給部(図示省略)を備えている。
【0036】
繊維濃度が0.1重量%〜5.0重量%であることにより、後の脱墨システム部22においてインク成分やトナー成分等の印刷成分と脱墨剤とを効率よく接触させ印刷成分等を容易に除去することができる。
【0037】
脱墨システム部22は、脱墨処理装置51と、脱墨排液処理装置52とを備えてなる。
図3に脱墨システム部22の脱墨処理装置51の斜視図を、
図4(a)に前記脱墨処理装置51の平面図を、同図(b)に
図4(a)のA−A線矢視断面図を示す。脱墨処理装置51は、古紙パルプ液に溶解又は混合されてなるインク成分、トナー成分等の印刷成分を分離、除去して脱墨パルプを製造するためのものであり、古紙パルプ液流通槽221、ブレード222及び受泡槽223を備えている。
【0038】
古紙パルプ液流通槽221は、脱墨前希釈部21で希釈液の供給により所定濃度に調整されたインク成分、トナー成分等の印刷成分を含有する古紙パルプ液を流通させるものである。古紙パルプ液流通槽221内は、複数の仕切壁224により複数の脱墨室225に区画されており、
図4(a)の平面図において示すように、仕切り壁224の左方または右方が交互に開口することで全ての脱墨室225は連通している。各脱墨室225の底部には、古紙パルプ液流通槽221内を流通する古紙パルプ液中に、微細な気泡を供給するための気泡供給部226を設けている。
【0039】
また、古紙パルプ液流通槽221内のうち、古紙パルプ液の流速が低下し該古紙パルプ液が淀みやすい所定位置に淀んだ古紙パルプ液を攪拌し下流側へと流動させるための攪拌翼(図示省略)を配置している。攪拌翼としては種々のものがあるが、例えば複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造の攪拌翼等が挙げられる。更に、古紙パルプ液を古紙パルプ液流通槽221内に流入させる流入部229aと、脱墨処理後生じた脱墨パルプを含有する古紙パルプ液(脱墨パルプ液)を古紙パルプ液流通槽221外に流出させる流出部229bとを設けている。
【0040】
また、各脱墨室225内の古紙パルプ液の温度の検出を行う温度センサ227と、ヒータ228とを仕切壁224の表裏面にそれぞれ設けているが、古紙パルプ液の温度管理を行わない場合には、温度センサ227及びヒータ228を設けない構成としても構わない。
【0041】
ブレード222は、古紙パルプ液流通槽221の上部を浮遊する気泡を、古紙パルプ液流通槽221の周壁を溢流させ受泡槽223側へ掃き出すためのものであり、古紙パルプ液流通槽221の上方に設けられ、モータ222aの駆動によりガイドレール222bに案内されつつ往復移動するよう構成されている。
【0042】
図4(a)に示すように、受泡槽223は、古紙パルプ液流通槽221の外周を取り囲むよう平面視ロ字状に設けられ、脱墨の際古紙パルプ液流通槽221内で生じ、ブレード222により掃き出された気泡を受け止め、一旦貯留するようになっている。
図3,4(b)に示すように、受泡槽223には、受泡槽223の内壁面に付着した気泡を洗い流すための水等の消泡液を噴出する消泡液噴出部223aを設けている。消泡液噴出部223aは、受泡槽223の内壁面の上段部及び中段部に全周に亘って複数配備されている。
【0043】
更に、受泡槽223は、貯留している気泡に温風又は熱風を吹き付けて気泡の水分を吹き飛ばすことで気泡を消滅させる風供給部(図示省略)等を備えており、受泡槽223の底部に該受泡槽223内に溜まった脱墨排液を取出し、後述する脱墨排液処理装置52へと流出させる流出部75を有している。
【0044】
脱墨処理装置51の下方には、受泡槽223に集められた脱墨排液を処理するための脱墨排液処理装置52が設けられている。受泡槽223に集められた液には、消泡液噴出部223aより噴射された消泡液、気泡の消滅により生じたインク成分、トナー成分等の印刷成分を含有する液、及び泡とともに古紙パルプ液流通槽221より溢流した微細な古紙パルプ等を含有する液体である。
【0045】
図5は脱墨排液処理装置52の斜視図、
図6は前記脱墨排液処理装置の制御部のブロック図、
図7は前記脱墨排液処理装置52の平面図、
図8は
図7のB−B線矢視断面図、
図9は脱墨排液処理装置52の濾滓掻寄部61の拡大側面図である。脱墨排液処理装置52は、複数の回転ローラ55に掛け渡された無端状のメッシュベルト57と、少なくとも1個の回転ローラ55を駆動するベルト駆動部(
図5,7,8において図示省略)とを備えており、メッシュベルト57の上方には脱墨排液を供給する脱墨排液供給部56と、複数の回転ローラのうち少なくとも1個の回転ローラに対向配置された圧搾ローラ59とを備えている。
【0046】
メッシュベルト57の網目の粗さは、脱墨排液に含有される古紙パルプを略濾別可能な粗さ、即ち 10メッシュ〜50メッシュが好ましく、20メッシュ〜30メッシュがより好ましい。10メッシュより網目が細かいことで濾別されずに網目を通過してしまう古紙パルプの量を低減可能であり、50メッシュより網目が粗いことで古紙パルプ等による網目の目詰まりが生じにくくなり濾過効率を向上させることができる。
【0047】
図8においては、上側のメッシュベルト57が側面視略水平に配設されてなる例を示したが、これに限定されず、やや傾斜して配設してもよい。傾斜配置する場合、走行方向下流側の方が上流側よりもやや高くなるよう配置することが好ましい。これにより、脱墨排液が古紙パルプをほとんど含まないために低粘度である場合であっても、メッシュベルト57に供給した脱墨排液が下流側へと勢いよく流出してしまうといったことがなく、脱墨排液をメッシュベルト57上に必要な時間滞留させ、濾過することができる。
【0048】
脱墨排液供給部56は、上部の開口が受泡槽223の流出部75に接続され、受泡槽223内の脱墨排液をメッシュベルト57上に供給可能に構成され、また、メッシュベルト57上に供給される脱墨排液の量を検出するプロペラ等の排液量検出手段91を備えている。
【0049】
圧搾ローラ59は、対向する回転ローラ55aとの間でメッシュベルト57を挟持し、脱墨排液がメッシュベルト57により濾過され、メッシュベルト57上に残存している濾滓を圧搾するよう構成される。圧搾ローラ59の外周面はメッシュベルトの表面に比較して凹凸の少ない平滑状に形成され、これによりメッシュベルト57上の濾滓の圧搾に伴って濾滓がメッシュベルト57から圧搾ローラ59へと転写するようになっている。
【0050】
そして、圧搾ローラ59には、該圧搾ローラ59に転接する転写ローラ58が設けられ、圧搾ローラ59に転写した濾滓を更に転写するようになっている。圧搾ローラ59の近傍位置には該圧搾ローラ59の外周面に摺接し、圧搾ローラ59に転写した濾滓を剥離し転写ローラ58へと送るためのスクレーパー60が設けられ、更に転写ローラ58の近傍位置には該転写ローラ58の外周面に摺接し、圧搾ローラ59から転写ローラ58に転写した濾滓を転写ローラ58から剥離するためのスクレーパー76が設けられている。
【0051】
圧搾ローラ59の対向位置に配置され、圧搾ローラとの間でメッシュベルト57上の濾滓を圧搾する回転ローラ55aは、外周部をスポンジ、フェルト、不織布等の吸水性部材96により形成しており、更に、この回転ローラ55には、該回転ローラ55に所定の圧力で転接し、回転ローラ55の吸水性部材96に吸水された水を絞るための絞り用ローラ78を設けてなる。
【0052】
図7に示すように、メッシュベルト57の上面又は上方には、該メッシュベルト57の左右幅縁部に沿って延在する一対のガイド66が設けられ、前記ガイド66は、メッシュベルト57の走行方向下流側端部の方が上流側端部よりもメッシュベルトの幅方向中央に近い位置となるよう平面視において傾斜配置されている。これにより、一対のガイド66間の距離W,wがメッシュベルト57の走行方向上流側の距離Wよりも下流側の距離wの方が幅狭となっている。
【0053】
上側のメッシュベルト57の上方であって、脱墨排液供給部56よりメッシュベルト57の走行方向の下流側位置には、メッシュベルト57の上面に接触してメッシュベルト57上の濾滓を所定量ずつ掻き寄せるための濾滓掻寄部61が設けられている。
図9に濾滓掻寄部61及びその周辺の断面図を示す。同図及び
図5,6に示すように、濾滓掻寄部61は、回転軸64と、該回転軸64の外周面に突設された4枚の掻き寄せ羽根62と、回転軸64を回転駆動する掻寄駆動部63とを備えてなる。
【0054】
掻き寄せ羽根62の先端部分はPET,PP,PE等の合成樹脂またはアルミ、ステンレス等の金属薄板といった可撓性又は弾性を有する素材により形成される。そして、掻き寄せ羽根62は略矩形薄板状に形成され、回転軸64より放射状に突設され、回転軸64の回転に伴ってメッシュベルト57の上面に所定の回転速度及び接触圧力で接触するようになっている。
【0055】
掻寄駆動部63は、メッシュベルト57を走行させるため回転ローラ55を回転駆動するベルト駆動部により兼ねて構成することとしてもよく、ベルト駆動部とは別にモータ等を設置する別駆動としてもよい。掻き寄せ羽根62は、メッシュベルト57の走行速度とは異なる速度でメッシュベルト57に接触するよう制御することが好ましい。
【0056】
また、メッシュベルト57の内方には、上側のメッシュベルト57の下面に摺接し、脱墨排液を水切りするための複数のブレード77を並設してなり、また、ブレード77の間には濾滓掻寄部61の掻寄駆動部63の駆動により回転し、メッシュベルト57下面に接触することで脱墨排液を水切りする回転ブラシ79を設けてなる。
【0057】
更に、メッシュベルト57の内方には、脱墨排液が上側のメッシュベルト57により濾過されることで生じた濾液を受け止め、下方に設けた濾液タンク71へと誘導する誘導受皿70を設けてなる。誘導受皿70は、上側のメッシュベルト57の走行方向上流側及び下流側にそれぞれ設けられた一対の第1受皿67と、第1受皿67の間の下方に設けられた第2受皿68とを備えてなる。一対の第1受皿67は、双方が近接し対向する上側のメッシュベルト57の走行方向略中央部側が若干低くなるよう各々傾斜配置され、この第1受皿67が低くなった箇所から流下する濾液を第2受皿68が受け止めるようになっている。
【0058】
第1受皿67は平面視矩形状に形成され、メッシュベルト57の左右両幅縁部に沿って側壁が設けられている。また、第2受皿68は側面視V字状に形成され、長手方向両端部に第2受皿68内の濾液を濾液タンク71へ流下させるための開口部68aが形成されている。
【0059】
誘導受皿70は更に、第3受皿69を備えており、第3受皿69はメッシュベルト57の外方の下方位置に設けられ、往路軌道のメッシュベルト57から流下した濾液を濾液タンク71へと誘導するよう傾斜配置されている。
【0060】
メッシュベルト57の下方には、メッシュベルト57に濾過され、誘導受皿70により誘導された濾液を収容する濾液タンク71と、スクレーパー76によって転写ローラ58より剥離された濾滓を収容する上部開口を有する濾滓収容箱72とを設けている。濾液タンク71の底面には薄板状の磁性体73が配備されており、また、濾液タンク71内に貯留する濾液を外部へ排出する排出部97が設けられている。また、濾液タンク71の側壁の上部位置に濾液の水位を検知する水位センサ74が設けられている。
【0061】
また、
図6に示すように、脱墨排液処理装置52は、ベルト駆動部98の運転を制御する制御部95を備え、前記制御部95は、メッシュベルト57の走行を一時停止し、間欠的に走行させる間欠走行手段92と、排液量検出手段91により検出された脱墨排液量に基づいてメッシュベルト57の走行速度を変更する走行速度制御手段93と、メッシュベルト57の走行速度と、メッシュベルト57上面に接触する掻き寄せ羽根62の先端部の速度との間に速度差を設けるようベルト駆動部98及び掻寄駆動部63を制御する速度差制御手段94とを備えてなる。
【0062】
(抄紙部)
図10は、抄紙部3の概略斜視図である。抄紙部3は、脱墨パルプ部2による脱墨の終了した脱墨パルプ液を抄紙し、脱水し、乾燥するものであり、ヘッドボックス31、ワイヤー部32、脱水部33、ドライヤー部34からなる。
【0063】
ヘッドボックス31は、上部が開口しており、下部に古紙パルプ液の供給口31aが形成されている。脱墨パルプ液の供給口31aの幅方向両端部には、脱墨パルプ液を抄紙する抄紙ワイヤー323の両幅縁部に沿って所定長さを有するガイド部材31bが片持ち支持されている。ガイド部材31bは、ヘッドボックス31から抄紙ワイヤー323上に供給された古紙パルプ液が抄紙ワイヤー323の側縁から外方に流れ落ちるのを防止するとともに、湿紙64の抄紙幅を所定長さとなるよう設定し、維持するようになっている。
【0064】
ワイヤー部32は、複数の回転ローラ321に掛け渡され、無端軌道を形成する抄紙ワイヤー323が設けられ、周回する抄紙ワイヤー323の内方には、抄紙ワイヤー323の網目から流下する水を受ける受水部325を設けている。受水部325は白水タンク(図示省略)に接続され、該白水タンクは配管及びポンプによりパルパー18及び脱墨前希釈部21等に接続されることで、白水タンク内の白水を循環利用可能に構成されている。
【0065】
脱水部33は、複数の回転ローラ331の間にそれぞれ掛け渡したフェルトからなる無端状の吸水ベルト332a,332bを上下一対有し、上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとが一部当接している。この上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとが一部当接した部分において、双方の吸水ベルト332a,332bを挟圧して脱水する一対の脱水ローラ334を複数備えている。
【0066】
ドライヤー部34は、フード(図示省略)内に複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343を配置し、この複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343の間に掛け渡した搬送ベルト342を上下一対備えている。搬送ベルト342の材質は特に限定されず、例えば、布、耐熱樹脂または金属等とし、上下の搬送ベルト342は一部が当接した状態で走行し、上下の搬送ベルト342の当接箇所に複数の乾燥ローラ343が配置されている。乾燥ローラ343は、内部にヒータ345を備えるとともに、外周面に搬送ベルト342を巻回しており、また、乾燥ローラ343の表面の温度を測定する温度センサ(図示省略)を有している。
【0067】
(仕上げ部)
図10に示すように、仕上げ部4は、仕上げ前の再生紙65の平坦度を上げるための複数のプレスローラ411を備えたカレンダー部41と、仕上げ前の再生紙65を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えたカット部(図示省略)とを有している。
【0068】
(第1の実施形態の作用)
本実施形態にかかる古紙再生処理装置100の作用につき以下に説明する。
まず、
図2に示すように、事前に重量を計測しておいた所定量の古紙6を、古紙投入部11より投入するとともに、投入された古紙6の重量に応じた割合の水及び離解促進剤を、給水部182、離解促進剤供給部183よりそれぞれ攪拌槽181に供給する。
【0069】
そして、駆動手段188を作動して攪拌羽根184を回転し、攪拌槽181内で古紙投入部11より投入された古紙6を水及び離解促進剤とともに攪拌して古紙パルプ液を製造する。製造された古紙パルプ液を古紙パルプ液取出部187より取り出し、
図1に示すように、脱墨パルプ部2へ送る。
【0070】
脱墨パルプ部2では、まず、古紙パルプ液を脱墨前希釈部21において脱墨に適した繊維濃度になるよう希釈液供給部から希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤を投入して古紙パルプ液の希釈を行う。次に、所定の繊維濃度に調整された古紙パルプ液を脱墨システム部22に送る。
【0071】
脱墨システム部22では、
図3,4に示す脱墨処理装置51の古紙パルプ液流通槽221に流入部229aから流入した古紙パルプ液を、仕切壁224の左方または右方の開口から隣接する脱墨室225へ順次流通させる。各脱墨室225では脱墨剤の存在下、古紙パルプ液中に気泡供給部226から微細な気泡を吹き込み、脱墨剤の存在によって、消失することなく多量に発生した気泡の表面にトナー粒子等の疎水性の異物を付着させて各脱墨室225の上部に浮上させる。また、必要により攪拌翼を作動し、古紙パルプ流通槽221内の古紙パルプ液の円滑な流通を促すようにする。
【0072】
親水性の繊維は、水とともに脱墨室225を順次流通していく。このようにして古紙パルプ液からインク成分やトナー成分の印刷成分等を除去する脱墨を行う。その際、必要により温度センサ227で古紙パルプ液の温度の検出を行い、ヒータ228で古紙パルプ液を所定温度に維持するよう加熱する温度制御を行ってもよいが、この脱墨処理装置51での温度管理は必ずしも行わなくてもよい。
【0073】
脱墨処理装置51に古紙パルプ液を導入した後、所定時間経過し、脱墨処理が進行して各脱墨室225の上部に気泡が浮遊した際に、モータ222aを駆動し、ガイドレール222bに案内させつつブレード222を
図4(a)において上下方向に往復移動し、古紙パルプ液流通槽221の上部に浮遊する気泡を受泡槽223に掃き出す。受泡槽223に掃き出された気泡を、消泡液噴出部223aから噴出した消泡液によって洗い流し、受泡槽223内の下部に溜める。
【0074】
この受泡槽223に溜まった液体は、脱墨により生じた脱墨排液であり、水、消泡液噴出部223aから噴射された消泡液、脱墨剤、インク成分やトナー成分等の印刷成分、古紙パルプ製造部1の離解促進剤供給部183より供給された離解促進剤等を含むとともに、古紙パルプ液流通槽221から一部が溢流した古紙パルプを含有する液体である。脱墨排液に含まれる古紙パルプの量は、原料として用いた古紙6の重量から得られた再生紙7の重量及び仕上げ部4において裁断され除去された紙片の重量を引くことにより算出すると、古紙パルプ全体の10〜30%程度となっている。
【0075】
この脱墨排液を、受泡槽223から流出部75を介して脱墨排液処理装置52の脱墨排液供給部56へと送り、続いてベルト駆動部の駆動により走行するメッシュベルト57上に供給し、メッシュベルト57の網目によって濾過する。
【0076】
圧搾ローラ59との間でメッシュベルト57上の濾滓を圧搾する回転ローラ55aは、外周部を吸水性部材96により構成してなり、この回転ローラ55aに所定の圧力で当接する絞り用ローラ78を設けたので、濾滓に未だ含まれている液体成分を回転ローラ55aの吸水性部材96により吸水し、この吸水性部材96に吸水された液体を絞りローラ78で絞ることができ、圧搾ローラ59及び回転ローラ55aによる圧搾の効果をより向上させることができる。
【0077】
その際、メッシュベルト57の走行に伴って、複数のブレード77がメッシュベルト57の下面に摺接するとともに回転ブラシ79がメッシュベルト57の下方より網目に入り込んでメッシュベルト57上の脱墨排液の液体成分を下方へ誘導するので、濾過効率をより向上させることが可能である。
【0078】
また、ガイド66が、脱墨排液のメッシュベルト57側方からの流下を防止する。そして、ガイド66は、メッシュベルト57の走行方向下流側端部の方が上流側端部よりもメッシュベルトの幅方向中央に近い位置となるよう平面視において傾斜配置されていることで、メッシュベルト57の走行に従ってメッシュベルト57上の濾滓を幅方向中央部に誘導し案内することができる。これによって濾滓をメッシュベルト57の幅方向中央部に集め、濾滓の厚さを所定の厚さ以上とすることで、圧搾ローラ59による圧搾を十分に行うことができるようにする。
【0079】
濾過によって分離されメッシュベルト57上に残存する濾滓は、脱墨排液に含まれる古紙パルプや該古紙パルプに付着し、又は古紙パルプに染み込んだ印刷成分等であり、この濾滓はメッシュベルト57の目詰まりを起こさせ易い状態にある。そこで、
図9に示すように、濾滓掻寄部61によってこの濾滓99をメッシュベルト57上の濾過により分離された位置より上流側又は下流側といった所定箇所に掻き寄せ、網目の目詰まりを解消し、低下した濾過効率を回復することができる。
【0080】
より詳しくは、掻寄駆動部63を駆動して回転軸64を回転し、掻き寄せ羽根62がメッシュベルト57の上面に接触し、メッシュベルト57上の濾滓を掻き寄せる。掻き寄席羽根62の先端部分がPET,PP,PE等の可撓性を有する合成樹脂により形成されている場合には、メッシュベルト57に接触する際掻き寄せ羽根62の先端部が容易に撓み、メッシュベルト57を傷めることなく効率よく濾滓を掻き寄せることができる。
【0081】
速度差制御手段94は、メッシュベルト57の走行速度と掻き寄せ羽根62の先端部の速度との間に速度差を設けるようベルト駆動部98及び掻寄駆動部63を制御し、この速度差により、メッシュベルト57上の濾滓を、メッシュベルト57の走行方向上流側、又は下流側に掻き寄せ、塊状とすることができる。このように塊状とすることで、圧搾ローラ59により濾滓を十分圧搾することができる。
【0082】
特に、メッシュベルト57と掻き寄せ羽根62の先端部との間の速度差が、メッシュベルト57の走行速度よりも、メッシュベルト57上面に接触する掻き寄せ羽根62の先端部の速度の方が速くなるよう制御する場合には、メッシュベルト57の網目に詰まった古紙パルプ等の濾滓をメッシュベルト57の下流側へと素早く掻き寄せることができ、更に掻き寄せ羽根62が繰り返しメッシュベルト57の上面に接触するよう速度差を制御すれば、効率よく目詰まりをより解消することが可能である。
【0083】
例えば、回転軸64の軸心から掻き寄せ羽根62の先端部までの長さ、即ち濾滓掻寄部61の回転半径が5cmである場合に、メッシュベルト57の走行速度を2.5mm/秒程度の非常に低速とし、回転軸64の回転速度を0.75rps程度としたとすると、掻き寄せ羽根62の先端部の速度は約23.6mm/秒となり、非常に大きな速度差を生じることとなる。そしてこの場合、回転軸64は1秒間に4分の3だけ回転するので、メッシュベルト57の上面に3枚の掻き寄せ羽根62が順次接触し、メッシュベルト57上の濾滓を上流側へと繰り返し掻き寄せ、塊状とすることができる。
【0084】
また、間欠走行手段92は、メッシュベルト57を所定時間走行させた後に一時停止するという間欠的な走行をさせるようベルト駆動部98を制御する。即ち、例えばメッシュベルト57を20秒間走行させた後、1分間停止する動作を繰り返すことなどとする。これにより、メッシュベルト57の走行時の速度及び脱墨排液の供給量にもよるが、脱墨排液供給部56から供給される脱墨排液を脱墨排液供給部56の出口近傍に滞留させ、濾過により得られる濾滓の厚さを、圧搾ローラ59による圧搾を確実に行うことができる所定量以上とすることができる。
【0085】
この間欠走行手段92による間欠走行を行う際、上記した濾滓掻寄部61による濾滓の掻き寄せを同時に行うようにすることで、メッシュベルト57が停止した場合にも網目が目詰まりすることなく効率よく脱墨排液の濾過を行うことができる。そして、回転ブラシ79が回転することでメッシュベルト57が停止している際にもメッシュベルト57の下面に回転ブラシ79が接触して、網目に入り込み脱墨排液の液体成分を下方へ誘導することができる。
【0086】
そして、走行速度制御手段93は、排液量検出手段91により検出された脱墨排液量に基づいてメッシュベルト57の走行速度を変更する。即ち、脱墨排液供給部56よりメッシュベルト57上に供給される脱墨排液の量について、通常供給される所定量を予め定めておき、この所定量の供給時におけるメッシュベルト57の走行速度を所定速度に決定しておく。そして、排液量検出手段91により検出される脱墨排液の供給量が、この所定量より多い場合には、メッシュベルト57の走行速度を予め決定した所定速度より速くなるよう制御し、逆に所定量より少ない場合には、メッシュベルト57の走行速度を所定速度より遅くなるよう制御する。
【0087】
これにより、脱墨排液供給部56から供給される脱墨排液の量が増減する場合であっても、メッシュベルト57上に残存する濾滓の量を略一定量とすることができ、最適な濾過条件で脱墨排液を濾過することができる。よって、脱墨排液供給部56からの脱墨排液の供給量がメッシュベルト57の濾過可能な量を超えて過剰に供給されたために、脱墨排液中に含まれる古紙パルプがガイド66を乗り越えてメッシュベルト57の側方より誘導受皿70や濾液タンク71へと流下し、濾液タンクの下流側にある配管やバルブ等を詰まらせるといったことがない。
【0088】
また、逆に脱墨排液供給部56からの脱墨排液の供給量が余りに少ないために濾滓が非常に薄くなり、圧搾ローラ59で十分圧搾することができず、圧搾ローラ59への転写が不完全となり、この結果メッシュベルト57に濾滓が付着したまま周回を繰り返したり、濾滓がメッシュベルト57の網目の中に入り込み、除去が困難となるといったことも生じない。
【0089】
制御部95の3つの制御即ち、速度差制御手段94、間欠走行手段92及び走行速度制御手段93については、いずれかのみを単独で行ってもよく、2つ以上の制御を組み合わせて用いてもよい。組み合わせた制御を行うことで、相乗効果によって更に効率よく、濾過を行い、生じた濾滓を圧搾ローラ59によって圧搾することができる。
【0090】
そして、濾過により分離され生じた濾滓を上側のメッシュベルト57の下流側端部において圧搾ローラ59及び回転ローラ55aによって挟持し、圧搾する。濾滓を圧搾ローラ59及び回転ローラ55aにより圧搾することで、メッシュベルト57上面から圧搾ローラ59へと転写し、その後該濾滓を圧搾ローラ59に巻き付かせて回転させた後スクレーパー60により剥離する。続いて濾滓を転写ローラ58に転写し、該転写ローラ58に巻き付かせ回転させ、下流側のスクレーパー76によって転写ローラ58より剥離する。剥離した濾滓は濾滓収容箱72へと落下し収容される。
【0091】
一方、脱墨排液をメッシュベルト57により濾過し、生じた濾液は、第1受皿67に至り、第1受皿67の傾斜に沿ってメッシュベルト57の搬送方向中央部へと誘導させ、第2受皿68へと流下し、第2受皿68の長手方向両縁部に達した後、開口部68aより濾液タンク71へ流下する。
【0092】
濾液タンク71内には磁性体73が配備されているので、濾液中に含まれる磁性インクや磁性トナー等を吸着して回収することができ、濾液タンク71から流出部97を介して外部に排出する排液に重金属を含ませないようにすることができる。
【0093】
濾液タンク71では水位センサ74により該濾液タンク71内に収容する濾液の量が上部位置に達したことを検知し、制御部95はこの水位センサ74の検知に応じて、濾液タンク71内の排液を流出部97から古紙再生処理装置100の外部へ排出する。
【0094】
一方、脱墨処理装置51において、古紙パルプ液を古紙パルプ液流通槽221内の全ての脱墨室225に流通させ、古紙パルプ液を脱墨して脱墨パルプを得て、得られた脱墨パルプを含む脱墨パルプ液を流出部229bから流出させ、抄紙部3へ送る。
【0095】
抄紙部3では、ヘッドボックス31から走行する抄紙ワイヤー323上に、脱墨後の脱墨パルプを含む脱墨パルプ液をガイド部材31bに案内させつつ均一に供給し、水切りして水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙64を形成する。抄紙ワイヤー323の下方に流下した水は受水部325に受水され、該受水部325から白水タンクに送られる。
【0096】
抄紙ワイヤー323上の湿紙64が往路軌道の終端部に至ると、脱水部33の上側の吸水ベルト332aに転移される。その後下側の吸水ベルト332bとの間に挟まれ、湿紙64に含まれる水分を吸水ベルト332a,332b側に吸収させることで脱水し、更に、脱水ローラ334a,334bで挟圧して脱水する。
【0097】
脱水部33で脱水された湿紙64は、ドライヤー部34に送られ、走行する上下一対の搬送ベルト342の間に挟持される。そして、ヒータ345により加熱され所定温度に維持された複数の乾燥ローラ343に湿紙64を搬送ベルト342を介して当接させつつ搬送することで湿紙64の乾燥を行い仕上げ前の再生紙65を得る。
【0098】
ドライヤー部34を出た仕上げ前の再生紙65はカレンダー部41に送られ、複数のプレスローラ411の間に通される。これにより、仕上げ前の再生紙65の平坦度を向上させ、更に、カット部で所定のシートサイズに裁断して再生紙7が完成する。
【0099】
カット部において裁断された結果不要となった仕上げ前の再生紙65の破材は、
図1に示すように古紙パルプ液製造部1に戻され、再度原料として利用される。
【0100】
以上より、本実施形態1にかかる脱墨排液処理装置52は、複数の回転ローラ55に掛け渡された無端状のメッシュベルト57と、メッシュベルト57を走行させるベルト駆動部と、メッシュベルト上に脱墨排液を供給する脱墨排液供給部56と、複数の回転ローラ55のうち少なくとも1個の回転ローラ55に対向配置され、該回転ローラ55との間でメッシュベルト57を挟持し、脱墨排液がメッシュベルトにより濾過され、メッシュベルト上に残存している濾滓を圧搾する少なくとも1個の圧搾ローラ59とを備えているので、古紙パルプ液を脱墨することにより古紙パルプ液から分離された脱墨排液を、脱墨排液供給部56よりメッシュベルト57上に供給し、ベルト駆動部の駆動によりメッシュベルト57を走行させつつ濾過し、メッシュベルト57上に残存する濾滓を圧搾ローラ59と回転ローラ55との間で挟持し、圧搾する。これにより、脱墨排液に含まれる古紙パルプ等の固形分を水等の液体から容易に濾別し、圧搾することができる。よって、脱墨排液を廃棄する際に古紙パルプ等が配管に詰まるといった不具合を防止することができ、大掛かりな設備を不要とし、少ないエネルギーにより運転できる。更に、振動及び騒音の発生がほとんどなく、短時間で効率のよい処理が可能である。
【0101】
また、本実施形態1にかかる脱墨システム(脱墨システム部22)は、古紙パルプ液を脱墨することにより古紙パルプ液から脱墨排液を分離する脱墨処理装置51と、脱墨処理装置により分離された脱墨排液を処理する脱墨排液処理装置52とを備えたので、古紙パルプを脱墨排液処理装置52により脱墨処理して脱墨パルプを得ることができるとともに、脱墨処理により生じた脱墨排液を脱墨廃液処理装置により処理可能である。よって、古紙を原料に再生紙を製造する際、より白色度の高い再生紙を製造する原料を製造可能であるとともに、脱墨処理の結果生じる排液から古紙パルプを分離除去し、脱墨処理を行ったために生じる古紙パルプのよる配管のつまりといった不具合を防止することができる。
【0102】
(第2の実施形態)
本発明にかかる脱墨排液処理装置について第2の実施形態を以下に示す。
図11は、第2の実施形態としての脱墨排液処理装置52Aの要部を示す構成概略図である。上記第2の実施形態では、周回するメッシュベルトを上下二段設け、第1のメッシュベルト57aの濾液を誘導配管70aにより、第2の脱墨排液供給部56bに送り、第2のメッシュベルト57b上に供給することで、濾液を2回に亘って濾過可能な構成としている。
【0103】
上流側の第1のメッシュベルト57aの網目の大きさより、下流側の第2のメッシュベルト57bの網目の大きさを小さくすることによって、より微細な古紙パルプ等の固形分を濾別することができる。更に、本第2の実施形態にかかる周回するメッシュベルト57a,57bによる濾過を増設し、3回以上とすることで、更により微細な固形分を分離可能である。
【0104】
尚、上記各実施形態で
は、濾滓掻寄部61の構成を回転軸64と、該回転軸64の外周面に突設された掻き寄せ羽根62と、回転軸64を回転駆動する掻寄駆動部63とを備えたものとしたが、これに限定されず、例えば、メッシュベルトの幅方向に往復動可能に構成され、上側のメッシュベルトの走行方向に沿って配設された板状の掻き寄せ羽根(図示省略)等としてもよい。この場合、掻き寄せ羽根をメッシュベルトの幅方向に往復動させることによって、走行するメッシュベルト上の濾滓をメッシュベルトの幅方向端部となる左右両側に掻き寄せることができる。
【0105】
また、掻き寄せ羽根62を4枚としたが、1〜3枚であってもよく、5枚以上であってもよい。圧搾ローラ59との間でメッシュベルト57上の濾滓を圧搾する回転ローラ55aは、外周部を吸水性部材96により構成したが、吸水性部材を設けない構成としてもよく、また、一対のガイド66を設け、該ガイド66を平面視において傾斜配置する構成をしたが、ガイドを設けない、又は1個のみ設けることとしてもよく、ガイドをメッシュベルトの幅縁部に平行に延在する構成としてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では濾液タンク71を設け、一旦該濾液タンク71内に濾液を貯留する構成としたが、濾液タンク71を設けることなく、濾過の後、濾液を直ちに外部へ排出するよう配管に接続する構成としてもよい。