(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724084
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ペダル装置
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20150507BHJP
G10D 13/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
G10H1/32 A
G10D13/00 511G
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-53367(P2011-53367)
(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2012-189816(P2012-189816A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2013年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130329
【氏名又は名称】株式会社コルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100105810
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 世紀
(72)【発明者】
【氏名】萬亀山 修
【審査官】
千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−250550(JP,A)
【文献】
特開2009−258644(JP,A)
【文献】
米国特許第04744279(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00−7/12
G10C 1/00−9/00
G10D 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、この底板に対して回動可能に装着され、足を載せて踏み込む操作を行うためのペダル板と、前記底板と前記ペダル板との間に介装する弾性体と、前記ペダル板の踏み込む操作に応じて、前記底板の表面の上方空間において、重り部材を持ち上げる機構と、を備え、
前記機構は、
側面形状が全体的に、くの字状に形成されたアームの一端側が重り部材に固定されると共に、前記アームの他端側が前記ペダル板の下面に設けたアームガイドの長孔に嵌っており、前記アーム全体が前記底板の表面に設けたアームを押さえ付けるアーム押さえ部材を支点として回動するように構成されたことを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のペダル装置において、
前記底板の後部上面を覆うカバーを設け、このカバーの頂部下面に前記重り部材の上方への移動を規制するクッション部材を設けたことを特徴とするペダル装置。
【請求項3】
請求項1および2の内のいずれか一項に記載のペダル装置において、
前記ペダル板の前方下面には突起部が設けられており、
前記ペダル板が踏み込まれると、前記突起部が前記底板に設けた圧電素子を押圧するように構成されたことを特徴とするペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足での踏み付け操作を行ってドラム演奏等を行うためのペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
床に置いたバスドラムのドラムヘッド面を打撃するペダルとしてバスドラム用ペダルがある。このバスドラム用ペダルは片足でペダルを踏みつけて操作を行うものである。そして、このペダルの踏み付け操作を行うと、例えばアームに接続されたビータ(打撃部材)がペダル装置の前方へと飛び出て、ドラムヘッド面を打撃するものである。そして、ハイハット用のペダルおよびバスドラム用のペダルがあるドラムシステムにおいては、夫々のペダルに片足を載せて演奏していた。そこで、右側のサイドプレートの上にバスドラム用ペダル、左側のサイドプレートの上にハイハット用ペダルを載せ、プレートビータがこれらのペダルのフットプレート前端部にくるように構成して、片足で演奏することを可能にし、それにより、もう片方の足が自由に動かせるようにしたドラム用フットペダルが提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−6397号公報(第1−2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のペダル装置は、ペダル装置自体の簡素化を図ったものではない。したがって、極力部品点数を低減した可搬性の良いペダル装置の開発が望まれていた。しかしながら、可搬性の良さのみを追求すると、ペダルの踏み込みによってビータが装置前方に飛び出す感覚を得ることができず、演奏者に違和感を与えてしまうといった問題があった。
【0005】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたもので、可搬性を向上させながらも、従来のペダル装置の踏み込み感覚を得ることを可能とするペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、底板(1)と、この底板(1)に対して回動可能に装着され、足を載せて踏み込む操作を行うためのペダル板(2)と、前記底板(1)と前記ペダル板(2)との間に介装する弾性体(9)と、前記ペダル板(2)の踏み込む操作に応じて、前記前記底板(1)の表面の上方空間において重り部材(8)を持ち上げる機構(6、7、11)とを備えたことを特徴とするようにした。
【0007】
この発明によれば、底板(1)に対して、足を載せて踏み込む操作を行うためのペダル板(2)を回動可能に装着する。そして、底板(1)とペダル板(2)との間に弾性体(9)を介装し、更に、ペダル板(2)の踏み込む操作に応じて、底板(1)の表面の上方空間において、重り部材(8)を持ち上げる機構が重り部材(8)を持ち上げる。したがって、ペダル装置の構成部品が少なくて済み、可搬性を向上させながらも、重り部材(8)を持ち上げる機構によって、従来のペダル装置の踏み込み感覚を得ることが可能となる。
【0008】
より具体的には、上記ペダル装置において、前記底板(1)の後部上面を覆うカバー(4)を設け、このカバー(4)の頂部下面に前記重り部材(8)の上方への移動を規制するクッション部材(5)を設けた構成とする。また、上記の重り部材(8)を持ち上げる機構は、例えば、側面形状が全体的に「く」の字状に形成されたアーム(7)の一端側が重り部材(8)に固定されると共に、前記アーム(7)の他端側が前記ペダル板の下面に設けたアームガイド(6)の長孔に嵌っており、前記アーム(7)全体が前記底板(1)の表面に設けたアームを押さえ付けるアーム押さえ部材(11)を支点として回動するように構成すれば、簡素な構成で当該機構を実現できる。そして、前記ペダル板(2)の前方下面には突起部(15)が設けられており、前記ペダル板(2)が踏み込まれると、前記突起部(15)が前記底板(1)に設けた圧電素子(16)を押圧するように構成すれば、ペダル板(2)の踏み込み量に応じた電圧出力が行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可搬性を向上させながらも、従来のペダル装置の踏み込み感覚を得ることを可能とするペダル装置を実現できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ペダル装置を斜め前方側から見た外観を示す外観図である。
【
図3】ペダル装置を斜め後方側から見た外観を示す外観図である。
【
図4】第2の実施形態のペダル装置110の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1はペダル装置100の側面図、
図2はペダル装置100を斜め前方側から見た外観を示す外観図、
図3はペダル装置を斜め後方側から見た外観を示す外観図である。なお、
図1において、圧電素子16に電気的に接続されて延びる電気線は図示していない。この不図示の電気線は、例えば、圧電素子16からの電圧信号をアナログデジタル変換するA/D変換器に接続されており、このアナログデジタル変換された信号に対して所定の信号処理を行う信号処理部と、この信号処理部に接続されたデジタルアナログ変換するD/A変換器と、このデジタルアナログ変換された信号を放音するスピーカとが回路系に設けられている。なお、
図2はカバー4の一部を切り欠いて、また、
図3はペダル板2の一部を切り欠いて、ペダル装置100の構造を理解容易としている。
【0014】
(構造)
平面形状が長方形状の厚肉の底板1の前端部の上面には蝶番3の一方の部材が装着されると共に、この蝶番3の他方の部材はペダル板2の前端部の下面に装着される。かくして、底板1に対してペダル板2が回動可能な構造になっている。また、底板1の上面の中央よりも前側(
図1の左側)には基台18が装着されていて、この基台18にはその上面に弾力性を有するクッション部材17が載置固定されている。更に、このクッション部材17の上面には圧電素子16が固着されている。この圧電素子16を押し付けるための突起部15がペダル板2の下面に形成されている。
【0015】
また、底板1の上面の略中央部には、外観視、円柱状のバネ用台座10が固定されていて、このバネ用台座10には、その径が鉛直方向下側に行くに従って大きくなるコイルバネ9の下端側が嵌っている。なお、コイルバネ9の上端側の先端部はペダル板2の下面側に固定されている。
【0016】
また、底板1の上面の中央よりも後側(
図1の右側)には、側面視「く」の字形状のアーム7の屈曲部分が、底板1の幅方向に設けた1対のアーム押さえ部材11(
図2では一個のみ図示)によって、回動可能に固定されている。そして、
図2に示すように、アーム7の後部の底板1の幅方向に延びる部分には、重り部材8が設けられている。
【0017】
また、底板1の後部はカバー4で覆われている。このカバー4は頂部が底板1に平行な平面部となっていて、その平面部から底板1の幅方向および底板1の後端方向へと傾斜しながら延びて、全体的に底板1の後部を覆っている。また、カバー4の頂部の平面部の裏側には、弾力性を有するクッション部材5が設けられている。このクッション部材5は、ペダル板2の踏み込みに応じて、重り部材8が持ち上がった時(
図1の符号A参照)に、これを上方で規制するためのものである。
【0018】
ペダル板2は、全体的に外観視、厚肉の平板状となっていてその上面の面積は底板1の上面の面積よりも小さくなっている。ペダル板2の幅方向端部にはその端を折り曲げた折り曲げ部20が形成されている。なお、
図1において符号20は、奥側の折り曲げ部20を示しており、手前側の折り曲げ部20を不図示として構造の理解の容易化を図っている。
【0019】
ペダル板2の前方の下面には、その幅方向中央部に突起部15が形成されていて、この突起部15は、ペダル板2が下方に踏み込まれることに応じて、圧電素子16を押し込んで押圧する。かくして、ペダル板2の踏み込み量に応じて押圧力が大きくなるので、圧電素子16からはより大きな電圧信号が出力される。また、ペダル板2の長手方向の略中央部には、長孔が形成されたアームガイド6が幅方向に対向して1対設けられていて、この長孔にはアーム7の前部が幅方向に貫通していてこの長孔に沿ってアーム7の前部がスライド可能になっている。かくして、演奏者のペダル板2の踏み込み操作に応じて、重り部材8が、底板1の表面の上方の空間内で持ち上げられる。より具体的には、重り部材8の持ち上げは、底板1の略中央部から端部までの表面の上方空間内において行われる。なお、アームガイド6は、ペダル板2の長手方向略中央部で且つ幅方向の中央部であって、ペダル板2の下面に1個設けた構成とすることもできる。
【0020】
(動作)
演奏者がペダル板2の踏み込みを行っていくと、突起部15が圧電素子16に当接し、次いで、突起部15が圧電素子15を押圧していくので、ペダル板2の踏み込み量に応じた電圧信号が圧電素子15から得られることになる。ここで、演奏者がペダル板2の踏み込みを行っていくと、このコイルバネ9が圧縮されていくので、このコイルバネ9の復元力が働い
ていくことになる。したがって、演奏者がペダル板2の踏み込みを止めると、ペダル板2は通常位置に容易に戻ることになる。
【0021】
そして、演奏者がペダル板2の踏み込みを行っていくと、アーム押さえ部材11を支点として、アーム7が全体的に反時計方向に回転するので、重り部材8が
図1の符号Aで示す方向(反時計方向)に持ち上げる。最終的には重り部材8はクッション部材5に当接し、クッション部材5を若干圧縮しながら、その持ち上げ動作は停止されることになる。かくして、この重り部材8の持ち上がりが、従来のペダル装置におけるビータのドラムヘッドへの打撃の感覚を演奏者に与える。
【0022】
以上説明してきた実施形態では、底板1に対して、足を載せて踏み込む操作を行うためのペダル板2を回動可能に装着し、底板1とペダル板2との間に弾性体としてのコイルバネ9を介装する。そして、ペダル板2の踏み込む操作に応じて、底板1の表面の上方空間において、重り部材8が持ち上げられる。したがって、ペダル装置100の構成部品が少なくて済み、可搬性を向上させながらも、重り部材8の持ち上げ動作によって、従来のペダル装置の踏み込み感覚を得ることが可能となる。
【0023】
(他の実施形態)
(構成)
次に、
図4を参照して他の実施形態のペダル装置110について説明する。
図4はペダル装置110の側面図である。なお、ペダル装置100と同じ部品には同じ符号を付している。このペダル装置110はより構造を簡素にして可搬性の向上を図っている。
【0024】
平面形状が長方形状の厚肉の底板1の前端部の上面には蝶番3の一方の部材が装着されると共に、この蝶番3の他方の部材はペダル板2の前端部の下面に装着される。かくして、底板1に対してペダル板2が回動可能な構造になっている。また、底板1の上面の中央よりも前側(
図1の左側)には基台18が装着されていて、この基台18にはその上面に弾力性を有するクッション部材17が載置固定されている。更に、このクッション部材17の上面には圧電素子16が固着されている。この圧電素子16を押し付けるための突起部15がペダル板2の下面に形成されている。
【0025】
また、底板1の上面の略中央部よりも後方(
図4の右側)には、外観視、円柱状のバネ用台座10が固定されていて、このバネ用台座10には、その径が鉛直方向下側に行くに従って大きくなるコイルバネ9(第1の弾性体)の下端側が嵌っている。なお、コイルバネ9の上端側の先端部はペダル板2の下面側に固定されている。
【0026】
また、底板1の上面の略中央部のコイルバネ9よりも前方の位置には、その径が鉛直方向下側に行くに従って大きくなる外観視が円錐状の弾力性を有するウレタンスプリング30(第2の弾性体)の下面が接着固定されており、また、このウレタンスプリング30の上部は平面となっている。なお、ペダル板2の踏み込みを全く行わない状態では、ウレタンスプリング30の上面の平面部は、ペダル板2の下面に当接しない構成となっている。なお、このウレタンスプリング30の全体形状は必ずしも円錐状でなくても良く、例えば四角錐状のものや直方体状のもの等他の形状のものでも良い。
【0027】
(動作)
演奏者がペダル板2の踏み込みを行っていくと、突起部15が圧電素子16に当接し次いで突起部15が圧電素子15を押圧していくので、ペダル板2の踏み込み量に応じた電圧信号が圧電素子15から得られることになる。ここで、演奏者がペダル板2の踏み込みを行っていくと、このコイルバネ9が圧縮されていくので、このコイルバネ9の復元力が働いていく。したがって、演奏者がペダル板2の踏み込みを止めると、ペダル板2は通常位置に容易に戻ることになる。
【0028】
そして、演奏者がペダル板2の踏み込みを行っていくと、コイルバネ9の復元力だけではなく、ペダル板2の下面がウレタンスプリング30の上面の平面部に当接するあたりから、このウレタンスプリング30の復元力をも感じることになる。コイルバネ9の復元力に加えて、このウレタンスプリング30の復元力が働き始まることが、従来のペダル装置におけるビータのドラムヘッドへの打撃の感覚を演奏者に与えることになる。
【0029】
したがって、この実施の形態のペダル装置110においても、部品点数を極力低減し可搬性を向上させながらも、従来のペダル装置の踏み込み感覚を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明してきたように、本発明のペダル装置は、音楽分野、特に電子ドラム等に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 底板
2 ペダル板
3 蝶番
4 カバー
5 クッション部材
6 アームガイド
7 アーム
8 重り部材
9 コイルバネ
10 バネ用台座
15 突起部
16 圧電素子
17 クッション部材
18 基台
20 折り曲げ部
30 ウレタンスプリング
100 ペダル装置
110 ペダル装置