(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724095
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】スプリングプローブ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20150507BHJP
G01R 31/26 20140101ALI20150507BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R31/26 J
H01L21/66 B
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2010-256565(P2010-256565)
(22)【出願日】2010年11月17日
(65)【公開番号】特開2012-107970(P2012-107970A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】513079225
【氏名又は名称】有限会社シーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】515059038
【氏名又は名称】有限会社飯島精機
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100084629
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 正博
(72)【発明者】
【氏名】大田 幸雄
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05667410(US,A)
【文献】
特開2006−266869(JP,A)
【文献】
特表2010−532908(JP,A)
【文献】
特開2005−129428(JP,A)
【文献】
特開2008−275488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 31/26
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブ成形部(21)と、上記スリーブ成形部(21)から折曲境界部(11)を介して延出したスプリング(4)と、このスプリング(4)の先端部分を拡張してなる端子成形部(31)とがそれぞれ同一平面上に形成され、各成形部(21)(31)がそれぞれ曲げ加工されることで、筒状スリーブ(2)と、この筒状スリーブ(2)の一端部に設けられる被検査体接触用の端子(3)と、上記筒状スリーブ(2)に内装されて上記端子(3)を付勢するスプリング(4)とが一体に成形されるスプリングプローブであって、上記スプリング(4)は、上記折曲境界部(11)から上記端子成形部(31)に向かって断続的に設けられる連結部(41・・)と、上記連結部(41・・)の互いに対向する端部同士を連結するようにして設けられる略U字状の弾性部(42)とを備え、上記折曲境界部(11)から上記端子成形部(31)にかけて、上記連結部(41)と上記弾性部(42)とが交互に連続しており、上記連結部(41)は、上記弾性部(42)の収縮方向に対する長さ(L1)が、上記弾性部(42)の収縮幅(L2)以上とされ、上記弾性部(42)は巻回された状態で、上記筒状スリーブ(2)に内装されているスプリングプローブ。
【請求項2】
スリーブ成形部(21)と、上記スリーブ成形部(21)から折曲境界部(11)を介して延出したスプリング(4)と、このスプリング(4)の先端部分を拡張してなる端子成形部(31)とがそれぞれ同一平面上に形成され、各成形部(21)(31)がそれぞれ曲げ加工されることで、筒状スリーブ(2)と、この筒状スリーブ(2)の一端部に設けられる被検査体接触用の端子(3)と、上記筒状スリーブ(2)に内装されて上記端子(3)を付勢するスプリング(4)とが一体に成形されるスプリングプローブであって、上記スプリング(4)は、上記折曲境界部(11)から上記端子成形部(31)に向かって断続的に設けられる連結部(41・・)と、上記連結部(41・・)の互いに対向する端部同士を連結するようにして設けられる略U字状の弾性部(42)とを備え、上記折曲境界部(11)から上記端子成形部(31)にかけて、上記連結部(41)と上記弾性部(42)とが交互に連続しており、上記弾性部(42)は上記連結部(41)に向かって螺旋状に巻回された状態で、上記筒状スリーブ(2)に内装されているスプリングプローブ。
【請求項3】
上記螺旋状とされた弾性部(42・・)の軸心同士が略一致するように、上記連結部(
41)の同一面側に位置された状態で、上記筒状スリーブ(2)に内装されている請求項2記載のスプリングプローブ。
【請求項4】
上記弾性部(42)は、一端部が、隣接する連結部(41)(41)の互いに対向する端部にそれぞれ連結されるとともに、互いに略平行して設けられる一対の延設部(42a)(42a)と、一対の延設部(42a)(42a)の他端部同士を連結する湾曲部(42b)とを備え、上記延設部(42a)は、上記連結部(41)に略直交して設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載のスプリングプローブ。
【請求項5】
上記弾性部(42)は、上記連結部(41)からの突出長さ(L3)が、上記筒状スリーブ(2)の径(R)より大とされている請求項1乃至4のいずれかに記載のスプリングプローブ。
【請求項6】
上記弾性部(42)は、上記連結部(41・・)の軸心に対して、一方の弾性部(42)が一方側に位置され、一方の弾性部(42)に隣接する他方の弾性部(42)が他方側に位置されるように互い違いに設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載のスプリングプローブ。
【請求項7】
上記スリーブ成形部(21)の上記折曲境界部(11)側の端部から上記端子成形部(31)に向かって上部接触部(23)が延設されている請求項1乃至6のいずれかに記載のスプリングプローブ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかのスプリングプローブの製造方法であって、導電性を有する基板(10)に打ち抜き加工を施して、スリーブ成形部(21)と、上記スリーブ成形部(21)から折曲境界部(11)を介して延出したスプリング(4)と、このスプリング(4)の先端部分を拡張してなる端子成形部(31)とをそれぞれ同一平面上に形成する第1工程と、上記端子成形部(31)に曲げ加工を施して、上記端子(3)を成形する第2工程と、上記スプリング(4)の弾性部(42)を巻回する第3工程と、上記折曲境界部(11)を折り曲げて、上記スリーブ成形部(21)と上記スプリング(4)とを重ね合わせる第4工程と、上記スリーブ成形部(21)に曲げ加工を施して、上記端子(3)の根元部及び上記スプリング(4)を包み込むように上記筒状スリーブ(2)を成形する第5工程とを含むことを特徴とするスプリングプローブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体部品やプリント配線基板等の電気的特性を検査する際に用いられるスプリングプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ICやLSI等の半導体部品は、ウエハ上に形成された段階、パッケージ化された段階等の各製造段階において電気的特性が検査されて、良品、不良品の選別が成されている。このような電気的特性を検査する検査装置としては、プローブカードを備えたテスタ、ICソケットが一般的に知られている。
【0003】
プローブカードやICソケットには、導電性を有する複数のコンタクトプローブが設けられており、それらコンタクトプローブを半導体部品の電極と検査用回路の電極との間に介在させて、これら電極間を通電状態とすることで、半導体部品の電気的特性を調査するようになっている。
【0004】
この種のコンタクトプローブとしては、例えば、
図7に示すようなスプリングプローブが知られている。スプリングプローブは、筒状スリーブ50と、この筒状スリーブ50の一端部に出没自在に取り付けられた端子51と、端子51を突出方向に付勢するコイル状スプリング52とを備えている。そして、端子51を、半導体部品の電極に接触させるとともに、筒状スリーブ50の他端部を、検査用回路の電極に接続して、端子51をスプリング52の付勢によって半導体部品の電極に安定的に押し付けることで、電極間の通電状態を良好に維持するようになっている。
【0005】
しかしながら、
図7に示す従来のスプリングプローブは、筒状スリーブ50、端子51、スプリング52といった各構成部品が別体で製造され、これら各構成部品を手作業で組み立てることで製造されていることから、製造効率が悪く、製造コストが高いといった不具合があった。
【0006】
また、従来のスプリングプローブは、それぞれ別体の各構成部品が互いに接触し合って導通経路を構成しているが、これら接触部分において電気抵抗が大きくなって、プローブ全体としての電気的特性が不安定になり易く、検査精度に悪影響を及ぼすといった不具合もあった。
【0007】
そこで、上記不具合を解決するものとして、導電性の基板からスリーブ成形部と、端子成形部と、スプリング成形部とを一体的に打ち抜き、それぞれ曲げ加工を施すことによって、筒状スリーブと、端子と、スプリングとを一体成形するスプリングプローブが開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2010−532908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に開示されているスプリングプローブは、
図8(a)に示すように波状帯板とされたスプリング成形部60の各頂点61・・を、
図8(b)に示すように、板厚方向に向かって奥側、手前側と交互に捻ることでコイル状に成形しているため、頂点での塑性変形が激しく、特に頂点61において亀裂や破断等が生じる虞があり、耐久性に問題があった。
【0010】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、スプリングの耐久性の向上を図ったスプリングプローブ及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のスプリングプローブは、スリーブ成形部21と、上記スリーブ成形部21から折曲境界部11を介して延出したスプリング4と、このスプリング4の先端部分を拡張してなる端子成形部31とがそれぞれ同一平面上に形成され、各成形部21、31がそれぞれ曲げ加工されることで、筒状スリーブ2と、この筒状スリーブ2の一端部に設けられる被検査体接触用の端子3と、上記筒状スリーブ2に内装されて上記端子3を付勢するスプリング4とが一体に成形されるスプリングプローブであって、上記スプリング4は、
上記折曲境界部11から上記端子成形部31に向かって断続的に設けられる連結部41・・と、上記連結部41・・の互いに対向する端部同士を連結するようにして設けられる略U字状の弾性部42とを備え、
上記折曲境界部11から上記端子成形部31にかけて、上記連結部41と上記弾性部42とが交互に連続しており、上記連結部41は、上記弾性部42の収縮方向に対する長さL1が、上記弾性部42の収縮幅L2
以上とされ、上記弾性部42は巻回された状態で、上記筒状スリーブ2に内装されていることを特徴としている。
【0012】
または、スリーブ成形部21と、上記スリーブ成形部21から折曲境界部11を介して延出したスプリング4と、このスプリング4の先端部分を拡張してなる端子成形部31とがそれぞれ同一平面上に形成され、各成形部21、31がそれぞれ曲げ加工されることで、筒状スリーブ2と、この筒状スリーブ2の一端部に設けられる被検査体接触用の端子3と、上記筒状スリーブ2に内装されて上記端子3を付勢するスプリング4とが一体に成形されるスプリングプローブであって、上記スプリング4は、上記折曲境界部11から上記端子成形部31に向かって断続的に設けられる連結部41・・と、上記連結部41・・の互いに対向する端部同士を連結するようにして設けられる略U字状の弾性部42とを備え、上記折曲境界部11から上記端子成形部31にかけて、上記連結部41と上記弾性部42とが交互に連続しており、上記弾性部42は上記連結部41に向かって螺旋状に巻回された状態で、上記筒状スリーブ2に内装されていることを特徴としている。また、上記螺旋状とされた弾性部42・・の軸心同士が略一致するように、上記連結部41の同一面側に位置された状態で、上記筒状スリーブ2に内装されている。
【0014】
さらにまた、上記弾性部42は、一端部が、隣接する連結部41、41の互いに対向する端部にそれぞれ連結されるとともに、互いに略平行して設けられる一対の延設部42a、42aと、一対の延設部42a、42aの他端部同士を連結する湾曲部42bとを備え、上記延設部42aは、上記連結部41に略直交して設けられている。
【0015】
また、上記弾性部42は、上記連結部41からの突出長さL3が、上記筒状スリーブ2の径Rより大とされている。
【0017】
さらにまた、上記弾性部42は、上記連結部41・・の軸心に対して、一方の弾性部42が一方側に位置され、一方の弾性部42に隣接する他方の弾性部42が他方側に位置されるように互い違いに設けられている。
【0018】
また、上記スリーブ成形部21の上記折曲境界部11側の端部から上記端子成形部31に向かって上部接触部23が延設されている。
【0019】
また、本発明のスプリングプローブの製造方法は、導電性を有する基板10に打ち抜き加工を施して、スリーブ成形部21と、上記スリーブ成形部21から折曲境界部11を介して延出したスプリング4と、このスプリング4の先端部分を拡張してなる端子成形部31とをそれぞれ同一平面上に形成する第1工程と、上記端子成形部31に曲げ加工を施して、上記端子3を成形する第2工程と、上記スプリング4の弾性部42を巻回する第3工程と、上記折曲境界部11を折り曲げて、上記スリーブ成形部21と上記スプリング4とを重ね合わせる第4工程と、上記スリーブ成形部21に曲げ加工を施して、上記端子3の根元部及び上記スプリング4を包み込むように上記筒状スリーブ2を成形する第5工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
この発明のスプリングプローブによれば、スプリングの弾性部を巻回している、すなわち、弾性部の全長に亘って小さな塑性変形を均等に生じさせているだけであるため、捻り等の塑性変形の激しい箇所がなく、亀裂や破断等の少ない耐久性に優れたものとなり、これによって製品寿命を延ばすことができる。
【0021】
また、弾性部を巻回して筒状スリーブに内装する構成としているため、弾性部の長さを、筒状スリーブの径より長くすることも可能である。そして、弾性部の長さを長くすれば、スプリング収縮時の弾性部の変形を小さく抑えることができるため、収縮によるダメージを抑えることができ、製品寿命を延ばすことができる。
【0022】
さらに、折曲境界部から端子成形部に向かって断続的に設けられる連結部を複数備え、これら連結部の互いに対向する端部同士を連結するようにして弾性部を設ける、すなわち、隣接する弾性部間に連結部が介設されているため、スプリング収縮時において、隣接する弾性部同士が干渉し難くなり、スプリングをスムーズに収縮させることができる。
【0023】
特に、連結部の長さを、弾性部の伸縮方向に対して、弾性部の収縮幅以上とすることで、隣接する弾性部同士が干渉しなくなるため、スプリングをさらにスムーズに収縮させることができる。また、弾性部間の間隔を十分に取ることで、打ち抜き加工時の誤差や曲げ加工時の誤差等、加工時の誤差が生じても、弾性部同士の干渉を防ぐことができるため、加工精度に劣る廉価な機器が使用可能であるとともに、不良品数も減少させることができ、低コスト化を図ることができる。また、加工精度の高い機器を用いれば、より小型のスプリングプローブを歩止まり良く製造することができる。
【0024】
また、一対の延設部を互いに平行に、且つ連結部に略直交して設けることでも、隣接する弾性部同士の干渉を抑えることができる。
【0025】
さらに、弾性部を螺旋状に巻回し、螺旋状とされた弾性部の軸心同士が略一致するように、連結部の同一面側に位置させることで、径の小さな筒状スリーブにも無理なくスプリングを内装することができる。
【0026】
また、弾性部を互い違いに設けることで、端子を均等に付勢することが可能となり、検査精度の向上を図ることができる。
【0027】
また、基板に打ち抜き加工や曲げ加工等を施して、各構成部品を一体成形したスプリングプローブを製造しているので、従来のような手作業による各構成部品の組立作業を不要として、製造効率を高めて、製造コストの低減を図ることができる。さらに、各構成部品が一体に繋がって導通経路を形成することになるため、電気抵抗を小さく抑えて、電気的特性を安定させることができ、これによって検査精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係るスプリングプローブを示す正面図である。
【
図2】各工程を順次実行したときの基板の状態を示す図である。
【
図3】各工程を順次実行したときの基板の状態を示す図である。
【
図4】第1工程によって成形された各部を示す図である。
【
図5】スプリングを示す図であって、(a)は第3工程以前のスプリングを示す拡大図、(b)は第3工程における弾性部の巻回状態を示すA−A断面図である。
【
図6】スプリングプローブの斜視図であって、(a)は第3工程以前のスプリングプローブを示す要所拡大図、(b)は第3工程後のスプリングプローブを示す要所拡大図である。
【
図7】従来のスプリングプローブを示す正面図である。
【
図8】従来のスプリングプローブのスプリングを示す斜視図であって、(a)は曲げ加工前のスプリングを示す要所拡大図、(b)は曲げ加工後のスプリングを示す要所拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明のスプリングプローブについて図に基づいて詳細に説明する。この発明の実施形態に係るスプリングプローブ1は、
図1に示すように、筒状スリーブ2と、この筒状スリーブ2の一端部に出没自在に設けられた被検査体接触用の端子3と、筒状スリーブ2に内装されて、端子3を突出方向に付勢するスプリング4とを一体成形してなる。
【0030】
このスプリングプローブ1は、例えばプローブガードを備えたテスタ、ICソケット等の検査装置に装着されて、その端子3を、半導体部品等の被検査体の電極に接触させるとともに、筒状スリーブ2の他端部(後述する上部接触部23)を、検査用回路の電極に接続して、端子3をスプリング4の付勢によって半導体部品の電極に安定的に押し付けることで、電極間の通電状態を良好に維持するようになっている。なお、スプリングプローブ1は、その全長が例えば1〜50mm、筒状スリーブの直径が例えば0.2〜5mmといった極小サイズとされている。
【0031】
以下、このスプリングプローブ1の製造方法について説明する。この製造方法においては、順送型による自動組立方式を採用しており、例えばベリリウム銅製又はベリリウムニッケル製の高硬度で導電性に優れた薄肉帯状の基板10を、その長手方向に搬送しながら、基板10に対して各工程を順次実行することで、大量のスプリングプローブ1・・を連続して製造可能となっている。
【0032】
図2及び
図3は、各工程を順次実施した時の基板10の状態を示している。なお、
図2及び
図3において、ハッチ部(色付き部)は、打ち抜かれた部分である。まず、第1工程において、基板10に打ち抜き加工を施して、略長方形状のスリーブ成形部21と、このスリーブ成形部21の短手方向の一端部中央から折曲境界部11を介して延出したスプリング4と、スプリング4の先端部分を拡張してなる端子成形部31とをそれぞれ同一平面上に形成する。なお、基板10のスプリング4や各成形部21、31以外の部分と、スプリング4や各成形部21、31とは、端子成形部31の先端部から延出された接続部12と、スリーブ成形部21の短手方向の他端部から延出された接続部13とによって接続された状態とされる。また、これら接続部12、13で安定性を保てないような場合は、別途接続部を増やしても良い。
【0033】
このとき、具体的には、スリーブ成形部21を構成する部位として、
図4に示すように、略長方形状の基部22と、この基部22の短手方向の一端部から折曲境界部11の両側に位置するように、且つ端子成形部31に向かって延出した一対の上部接触部23、23と、基部22の短手方向の他端部側を押圧してなる一対の端子接触用突起24、24及び一対のストローク調整用突起25、25とが形成される。
【0034】
また、端子成形部31は、
図4に示すように、略長方形状に形成されるとともに、スプリング4とは反対側の端部(先端部)から接触片32、32が延出される。また、スリーブ成形部21に形成されたストローク調整用突起25、25に対応する箇所に凹溝33、33が形成される。具体的に、凹溝33は、スプリング4の収縮方向と平行するように設けられ、その長さは、スプリング収縮長さと略同長、又はそれより短く形成される。
【0035】
また、スプリング4の構成部位として、折曲境界部11から端子成形部31に向かって断続的に設けられる複数の連結部41・・と、これら連結部41・・の互いに対向する端部同士を連結する略U字状の弾性部42・・とが形成される。また、この弾性部42は、
図5(a)に示すように、一端部が、互いに対向する連結部41、41の端部にそれぞれ連結されるとともに、互いに略平行して設けられる一対の延設部42a、42aと、この一対の延設部42a、42aの他端部同士を連結する湾曲部42bとから構成され、延設部42aは、連結部41に略直交して設けられる。また、弾性部42・・は、連結部41・・の軸心に対して、一方の弾性部42が一方側に位置され、一方の弾性部42に隣接する他方の弾性部42が他方側に位置されるように互い違いに設けられている。
【0036】
すなわち、スプリング4は、折曲境界部11から延設された連結部41の上端部に、一方側の弾性部(左側弾性部)42の下方側の延設部42aの端部(弾性部の開口側端部の下方側)が連結され、この左側弾性部42の上方側の延設部42aの端部(弾性部の開口側端部の上方側)に、別の連結部41の下端部が連結され、この連結部41の上端側に他方側の弾性部(右側弾性部)42の下方側の延設部42aの端部が連結され、この右側弾性部42の上方側の延設部42aの端部に、さらに別の連結部41が連結され、この連結部41に別の左側弾性部42の下方側の延設部42aの端部が連結された形態、すなわち、連結部41と弾性部42とが交互に連続形成された形態とされており、この形態を折曲境界部11から端子成形部31にかけて繰り返し連続することでスプリング4が構成されている。
【0037】
また、連結部41の長さL1は、スプリング4の収縮方向に対して、延設部42a、42a間の間隔L2以上、すなわち、ひとつの弾性部42の収縮幅以上とされる。また、湾曲部42b、42b間の幅W1は、スリーブ成形部の幅W2より大とされる。また、弾性部42の連結部41からの突出長さL3は、筒状スリーブ2の径Rよりも大とされる。
【0038】
続いて、第2工程において、端子成形部31に曲げ加工を施して、端子成形部31を筒状に丸めることで端子3を成形する。なお、この際、凹溝33、33は端子3の外周側に位置することとなる。
【0039】
続いて、第3工程において、スプリング4の弾性部42・・に曲げ加工を施す。具体的には、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、弾性部42の先端部(湾曲部42b)が中心に位置するようにして、湾曲部42から連結部41に向かって螺旋状に巻回する。また、この際、互い違いに延出された弾性部42・・が同一面側(例えば表面側)に位置するように、また、螺旋状の弾性部42・・の軸心同士が略一致するように、さらに、螺旋状の弾性部42の軸心と連結部41の軸心とが略平行となるようにして、弾性部42の根元部分まで曲げ加工を行う。
【0040】
続いて、第4工程において、基板10と端子3の先端部とを接続している接続部12を切断し、スリーブ成形部31とスプリング4との間の折曲境界部11を折り曲げて、スプリング4の中心軸をスリーブ成型部21の長手方向の中心線に沿わせるようにしてスリーブ成形部21とスプリング4とを重ね合わせる。
【0041】
続いて、第5工程において、スリーブ成形部21に曲げ加工を施して、スリーブ成形部21を筒状に丸めることで、端子3のそれぞれの根元部及びスプリング4を包み込むように筒状スリーブ2を成形する。
【0042】
そして、第6工程において、焼入れ及び焼き戻しを行って、スプリング4を含めた製品全体に硬さと粘り強さを与えた後、端子3をスプリング4の付勢力に抗して筒状スリーブ2に押し込み、筒状スリーブ2の内周面側に位置されたストローク調整用突起25、25を端子3の凹溝33、33に嵌合させる。なお、この際、筒状スリーブ2の内周面側に位置する端子接触用突起24、24は、端子3の外周面に当接状態とされる。最後に、基板10と筒状スリーブ2とを接続する接続部13を切断して、製品すなわち
図1に示すスプリングプローブ1を切り離す。以上の各工程を、搬送される基板10に対して順次実行することで、各構成部品2、3、4が一体成形されたスプリングプローブ1が連続的に製造される。
【0043】
このように、基板10の打ち抜き加工や曲げ加工等を施して、各構成部品2、3、4を一体成形したスプリングプローブ1を製造しているので、従来のような手作業による各構成部品2、3、4の組立作業を不要として、製造効率を高めて、製造コストの低減を図ることができる。しかも、各構成部品2、3、4が一体に繋がって導通経路を構成することになるから、電気抵抗を小さく抑えて、電気的特性を安定させることができ、これによって検査精度の向上を図ることができる。
【0044】
また、スプリング4の弾性部42を巻回している、すなわち、弾性部42の全長に亘って小さな塑性変形を均等に生じさせているだけであるため、捻り等の塑性変形の激しい箇所がなく、亀裂や破断等の少ない耐久性に優れたものとなり、これによって製品寿命を延ばすことができる。
【0045】
さらに、弾性部42の長さL3を、筒状スリーブ2の径Rより長くしているため、弾性部42の収縮幅L2に対して突出長さL3を大きくすることができ、スプリング収縮時の弾性部42の変形(湾曲部42bの変形角)を小さく抑えることができ、収縮時のダメージを抑えることができ、製品寿命を延ばすことができる。また、弾性部を螺旋状に巻回し、螺旋状とされた弾性部の軸心同士が略一致するように、連結部の同一面側に位置させているため、弾性部42の長さを長くしながらも、径の小さな筒状スリーブにも無理なくスプリングを内装することができる。
【0046】
さらにまた、隣接する弾性部42、42間に連結部41を介設するとともに、連結部41の長さL1を、弾性部42の伸縮方向に対して、弾性部42の収縮幅(延設部42a、42a間の間隔L2)以上としているため、スプリング収縮時において、隣接する弾性部42、42同士が干渉しなくなり、スプリング4をスムーズに収縮させることができる。また、弾性部42、42間の間隔を十分に取ることで、打ち抜き加工時の誤差や曲げ加工時の誤差等、加工時の誤差が生じても、弾性部42、42同士の干渉を防ぐことができるため、加工精度に劣る廉価な機器が使用可能であるとともに、不良品数も減少させることができ、低コスト化を図ることができる。また、加工精度の高い機器を用いれば、より小型のスプリングプローブを歩止まり良く製造することができる。
【0047】
また、弾性部42を互い違いに設けているため、端子3を均等に付勢することが可能となり、検査精度の向上を図ることができる。
【0048】
以上にこの発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施例においては、複数の弾性部42・・が設けられていたが1個でも良い。また、湾曲部42b、42b間の幅W1が、スリーブ成形部21の幅W2より小とされていても良い
。また、弾性部42・・を互い違いとなるように設けず、同一方向に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0049】
1・・スプリングプローブ、2・・筒状スリーブ、3・・端子、4・・スプリング、10・・基板、11・・折曲境界部、21・・スリーブ成形部、23・・上部接触部、31・・端子成形部、41・・連結部、42・・弾性部、42a・・延設部、42b・・湾曲部、L1・・連結部の弾性部の収縮方向における長さ、L2・・弾性部の収縮幅、L3・・弾性部の連結部からの突出長さ、R・・筒状スリーブ径