(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した焼き嵌めによりフレキシブルロッドとドライブシャフトやロータ等の軸体(被接続軸)とを接合した場合は、メンテナンスなどのために両者を分離させる際に接合部分(連結構造部)を加熱せねばならず、相当の手間や専用の設備などを必要とするという問題がある。
【0006】
また、上述した焼き嵌めによる連結方法の他、一方の軸にセレーションを用いて接着により連結する方法、端部がテーパー状に形成された軸を他方に設けた軸孔に挿入するすることによる連結方法等により連結構造部を形成する方策も考えられる。しかしながら、前者の方法では接着強度の信頼性が乏しいという問題がある。また、後者の方法では、軸端部を一定の品質でテーパー形状とすることが難しいことに加え、テーパー締結部のフレッティング摩耗を抑制することが困難であるという問題がある。
【0007】
また、上述した特許文献2に開示されている構造においては、フランジ付ヘッド部分を複数のボルトにより周方向の複数箇所で固定することになるが、各ボルトの締結トルクの調整を誤ると、締結力が偏った状態(いわゆる片締め状態)になってしまうことがある。また、各ボルトの締結トルクを略均一化するためには、熟練を要する。従って、特許文献2に係る構造を採用した場合には、各ボルトの締結トルクの調整に手間を要し、容易にフレキシブルロッドを着脱することができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明者らは、
図8に示すようにフレキシブルロッド200の端部にネジ202を形成すると共に、ロータ204の端部に前述したネジ202と螺合可能なネジ穴206を形成し、両者を螺合により連結させる構成について検討した。その結果、
図8(a)に示すようにネジ穴206の底部に到達するまでフレキシブルロッド200のネジ202を螺合させた場合は、フレキシブルロッド200の先端部208近傍においてネジが効くため、ネジ202の先端近傍以外の雄ネジ谷部の大部分が運転負荷、具体的にはモーメント、軸方向の力、あるいはトルクに対する応力集中部となり、クラックが発生することが判明した。また、
図8(b)に示すようにネジ穴206の底部とフレキシブルロッド200の先端部208との間に隙間が形成されるように螺合させた場合は、ネジ穴206の開口部分近傍、及びネジ202の雄ネジ谷部においてフレキシブルロッド200に応力が集中し、クラックが発生することが判明した。さらに、
図8(a)及び
図8(b)に示すような螺合による連結形態を採用した場合、一軸偏心ねじポンプを作動させると、ネジ穴206とフレキシブルロッド200との間に形成された隙間に流動物が侵入し、腐食等の原因となる可能性があることが判明した。
【0009】
上述した知見に基づき、本発明は、フレキシブルロッドとロータとをがたつきが生じないように容易に連結可能であると共に、フレッティング摩耗、応力集中に伴う軸の破損、及び流動物の侵入による腐食等の問題を防止可能な一軸偏心ねじポンプの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の一軸偏心ねじポンプは、回転動力を発生させることが可能な駆動機と、前記駆動機から入力された回転動力を伝達するための動力伝達機構部と、雄ねじ型の軸体によって構成されたロータと、前記ロータを挿通可能であり、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを備えている。また、前記動力伝達機構部は、前記駆動機において発生した回転動力により回転する駆動側軸体、及び前記ロータを構成し前記駆動側軸体と非同心の受動側軸体を接続し、可撓性を有するフレキシブルロッドを備えており、前記ロータを、前記ステータの内側において自転しつつ、前記ステータの内周面に沿うように公転するように偏心回転させることが可能なものである。本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、前記駆動側軸体及び/又は受動側軸体を被接続軸とし、前記被接続軸に対して前記フレキシブルロッドを接続することにより形成された連結構造部が、前記フレキシブルロッドの一端あるいは両端に形成されている。また、前記フレキシブルロッド及び前記被接続軸のうちの一方を軸A、他方を軸Bとした場合に、前記軸A
が、前記軸Bの端面に面接触する接触面と、前記接触面よりも先端側に設けられたネジ軸部と、前記接触面と前記ネジ軸部との間に設けられた非ネジ軸部とを有し、前記軸Bの先端部に前記ネジ軸部を挿入可能であり前記ネジ軸部と螺合可能なネジ溝が内周面に形成された軸挿入穴が形成されており、前記連結構造部において、前記軸Aに設けられた前記ネジ軸部が前記軸Bに設けられた前記軸挿入穴に挿入され、前記ネジ軸部が前記ネジ溝と螺合され、前記軸A
の前記接触面と前記軸B
の端面とが面接触
すると共に、前記軸Aの先端部と前記軸Bに設けられた前記軸挿入穴の底部との間に隙間が形成され、前記非ネジ軸部が前記軸挿入穴内に挿入された状態で前記軸A及び前記軸Bが連結されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、ネジ軸部とネジ溝とが螺合し、さらにフレキシブルロッドと被接続軸(駆動側軸体及び/又は受動側軸体)とが面接触している。これにより、連結構造部においてフレキシブルロッドと被接続軸とが、シンプルな構造でありながら、がたつきが生じないように強固に連結されている。また、連結構造部においてフレキシブルロッドと被接続軸とが面接触した状態で連結されるため、偏心回転に伴って繰り返し作用する曲げモーメントを、ネジの引っ張り力により生じる弾性効果を利用して面接触部分において受け止めることが可能である。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、偏心回転に伴って作用するモーメントの影響を受けても、連結構造部における連結力の低下が生じない。さらに、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、被接続軸及びフレキシブルロッド(軸A,B)のフレッティング摩耗、及び応力集中に伴う破損が生じない。
【0012】
また、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、連結構造部においてフレキシブルロッド及び被接続軸が面接触しており、ネジ軸部及びネジ溝を介して流動物が侵入することを確実に防止できる。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、流動物の侵入に伴う被接続軸及びフレキシブルロッド(軸A,B)の腐食等の問題が発生しない。
【0013】
本発明の一軸偏心ねじポンプにおいて、連結構造部は、ネジ軸部及びネジ溝を螺合させ、フレキシブルロッドと被接続軸とを面接触させたものであり、上述した焼き嵌め等によって形成した構造に比べ、同等のシンプルさをもちながら、着脱性、量産性に優れるだけでなく、その他の従来構造に比べると極めてシンプルな構造であり、組み立て及び分解を容易に実施することが可能な構造である。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプによれば、製作コスト、及びメンテナンスの手間等を最小限に抑制することが可能である。
【0014】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の一軸偏心ねじポンプは、回転動力を発生させることが可能な駆動機と、前記駆動機から入力された回転動力を伝達するための動力伝達機構部と、前記動力伝達機構部を介して伝達された回転動力により駆動されて偏心回転する雄ねじ型の軸体によって構成されたロータと、前記ロータを挿通可能であり、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを備えており、前記動力伝達機構部には、前記駆動機において発生した回転動力により回転する駆動側軸体と、前記ロータを構成する受動側軸体との間を接続し、可撓性を有するフレキシブルロッドが設けられており、前記駆動側軸体及び/又は受動側軸体を被接続軸とし、前記被接続軸に対して前記フレキシブルロッドを接続することにより形成された連結構造部が、前記フレキシブルロッドの一端あるいは両端に形成されている。本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、前記フレキシブルロッド及び前記被接続軸のうちの一方を軸A、他方を軸Bとした場合に、前記軸A
が、径方向外側に突出したフランジ部と、前記フランジ部よりも軸Aの先端側に設けられたネジ軸部と
、前記フランジ部と前記ネジ軸部との間に設けられた非ネジ軸部とを有し、前記軸Aのネジ軸部を挿入可能であり前記ネジ軸部と螺合可能なネジ溝が内周面に形成された軸挿入穴が前記軸Bの端面に開口するように形成されており、前記連結構造部において、前記軸Aに設けられた前記ネジ軸部が前記軸Bに設けられた前記軸挿入穴に挿入され、前記ネジ軸部が前記ネジ溝と螺合され、前記軸Aのフランジ部が前記軸Bの前記端面に面接触する
と共に、
前記軸Aの先端部と前記軸Bに設けられた前記軸挿入穴の底部との間に隙間が形成され、前記非ネジ軸部が前記軸挿入穴内に挿入された状態で前記軸A及び前記軸Bが連結されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、ネジ軸部とネジ溝との螺合により被接続軸(駆動側軸体及び/又は受動側軸体)とフレキシブルロッドとをがたつきが生じないように容易に連結することが可能である。また、連結構造部において軸Aのフランジ部が軸Bの端面に面接触した状態で軸Aと軸Bとが連結されるため、偏心回転に伴って繰り返し作用する曲げモーメントを、ネジの引っ張り力により生じる弾性効果を利用して面接触部分において受け止めることが可能である。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、連結構造部が極めてシンプルな構造であるにもかかわらず、被接続軸及びフレキシブルロッド(軸A,B)にがたつきが生じないように強固に連結することが可能である。さらに、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、被接続軸及びフレキシブルロッド(軸A,B)のフレッティング摩耗、及び応力集中に伴う破損が生じない。
【0016】
また、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、連結構造部において軸Aのフランジ部と軸Bの端面とが面接触しており、ネジ軸部及びネジ溝を介する流動物の侵入を確実に防止できる。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、流動物の侵入に伴う被接続軸及びフレキシブルロッド(軸A,B)の腐食等の問題が発生しない。
【0017】
本発明の一軸偏心ねじポンプにおいて、連結構造部は、ネジ軸部及びネジ溝を螺合させ、フレキシブルロッドと被接続軸とを面接触させたものであり、上述した焼き嵌めによって形成したものと同等のシンプルさをもちながら、着脱性、量産性に優れるだけでなく、その他の従来構造によって形成したものと比べて極めてシンプルである。これにより、本発明の一軸偏心ねじポンプは、製造コストを最小限に抑制することが可能である。また、本発明の一軸偏心ねじポンプは、ネジ軸部及びネジ溝を螺合させることにより組み立て可能であり、両者の螺合を解除することにより分解することが可能な構造であるため、メンテナンスの手間も最小限に抑制できる。
【0018】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、前記軸Aの先端部と、前記軸Bに設けられた前記軸挿入穴の底部との間に隙間が形成されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、偏心回転に伴って軸方向及び軸回転方向に作用するモーメントを、軸Aのフランジ部と軸Bの端面とが面接触している部分に確実に作用させることが可能となる。これにより、偏心回転に伴うモーメントに起因する被接続軸及びフレキシブルロッド(軸A,B)の破損を確実に防止することができる。
【0020】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸Aが、ネジ軸部とフランジ部とに分割可能なものであってもよい。
【0021】
かかる構成とした場合は、ネジ軸部をフランジ部に対して装着することにより軸Aが形成されると共に、ネジ軸部を軸Bに螺合させることにより軸A,Bを連結することが可能となる。
【0022】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、軸Aにおいて前記フランジ部と前記ネジ軸部との間に非ネジ軸部が存在し、前記連結構造部において、前記非ネジ軸部が前記軸挿入穴内に挿入されているものであることが好ましい。
【0023】
かかる構成とした場合、軸Aのフランジ部及び軸Bの端面の面接触部分と、ネジ軸部及び非ネジ軸部の境界部分と軸挿入穴の内周面との接触部分の2カ所において偏心回転に伴うモーメントを受け止めることが可能となる。これにより、偏心回転に伴うモーメントに起因する被接続軸及びフレキシブルロッド(軸A,B)の破損を確実に防止することができる。また、上述したような非ネジ軸部を設けることにより、偏心回転時に非ネジ軸部が軸方向に伸び、軸A,Bを連結固定しているネジが緩むことを防止しうる。
【0024】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸Aのフランジ部が、前記軸Bの端面に面接触する接触面を有し、前記軸Aの前記接触面、及び/又は前記軸Bの端面が、平滑に形成されているものであることが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、軸A,Bを連結した際に、軸Aの接触面と軸Bの端面とが略隙間なく面接触し略密着した状態になり、ネジ軸部とネジ溝とが螺合により接触面及び端面に作用する面圧が高くなる。これにより、連結構造部において流動物の侵入に伴う腐食等が発生することを確実に防止することが可能となる。
【0026】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、軸Aのフランジ部の端面、及び/又は前記軸Bの端面に溝部が設けられており、前記溝部にシール部材が嵌め込まれていることが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、軸Aのフランジ部及び軸Bの端面の面接触によるシール効果に加え、シール部材によるシール効果により連結構造部への流動物の侵入を防止できる。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、流動物の侵入に伴う被接続軸及びフレキシブルロッド(軸A,B)の腐食等の問題を確実に防止することができる。
【0028】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記被接続軸が主として所定の回転方向に回転するものであり、前記ネジ軸部が、前記被接続軸の回転方向に対して逆方向となるようにネジを形成したものであることが望ましい。
【0029】
本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、被接続軸の回転方向とは逆向きにネジ軸部及びネジ溝部のネジが形成されているため、被接続軸及びフレキシブルロッドの回転に伴い連結構造部における連結力が低下することを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ロータとフレキシブルロッドとをがたつきが生じないように容易に連結可能であると共に、フレッティング摩耗、応力集中に伴う軸の破損、及び流動物の侵入による腐食等の問題を防止可能な一軸偏心ねじポンプを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
続いて、本発明の一実施形態に係る一軸偏心ねじポンプ10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、一軸偏心ねじポンプ10は、後に詳述するようにフレキシブルロッド62と、このフレキシブルロッド62に接続される被接続軸たるロータ30(受動側軸体)の連結部分(連結構造部100)の構造に特徴を有するものであるが、以下の説明ではこれらの説明に先立って全体構造について説明する。
【0033】
≪一軸偏心ねじポンプ10の全体構造について≫
一軸偏心ねじポンプ10は、いわゆる回転容積型のポンプであり、
図1に示すように、ケーシング12の内部にステータ20や、ロータ30、動力伝達機構50などが収容された構成とされている。ケーシング12は、金属製で筒状の部材であり、長手方向一端側に取り付けられた円板形のエンドスタッド12aに第1開口14aが設けられている。また、ケーシング12の外周部分には、第2開口14bが設けられている。第2開口14bは、ケーシング12の長手方向中間部分に位置する中間部12dにおいてケーシング12の内部空間に連通している。
【0034】
第1,2開口14a,14bは、それぞれ一軸偏心ねじポンプ10の吸込口および吐出口として機能する部分である。さらに詳細に説明すると、本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10は、ロータ30を正方向に回転させることにより、第1開口14aが吐出口として機能し、第2開口14bが吸込口として機能するように流動物(流体)を圧送することが可能である。またこれとは逆に、一軸偏心ねじポンプ10は、ロータ30を逆方向に回転させることにより、第1開口14aが吸込口として機能し、第2開口14bが吐出口として機能するように流動物を圧送させることが可能である。本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10は、第1開口14aが吐出口として機能し、第2開口14bが吸込口として機能するように作動する。本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10においては、特別な場合を除いてロータ30が正方向に回転するため、第1開口14aが吐出口、第2開口14bが吸込口として機能する。
【0035】
ステータ20は、ゴムに代表される弾性体や樹脂などで作成されている。ステータ20には、円筒形のものの他、断面形状が多角形で筒状のものを用いることが可能である。本実施形態においては、ステータ20として、外観形状がほぼ円筒形の外観形状を有するものが使用されている。ステータ20の材質は、一軸偏心ねじポンプ10を用いて移送する被搬送物である流動物の種類や性状などにあわせて適宜選択される。ステータ20は、ケーシング12において第1開口14aに隣接する位置にあるステータ取付部12b内に存在している。ステータ20の外径は、ステータ取付部12bの内径とほぼ同一である。そのため、ステータ20は、その外周面がステータ取付部12bの内周面にほぼ密着するような状態で取り付けられている。また、ステータ20は、一端側にあるフランジ部20aをケーシング12の端部においてエンドスタッド12aによって挟み込み、エンドスタッド12aとケーシング12の本体部分とに亘ってステーボルト16を取り付けて締め付けることにより固定されている。そのため、ステータ20は、ケーシング12のステータ取付部12b内において位置ずれ等を起こさない。ステータ20の内周面24は、n条で単段あるいは多段の雌ねじ形状とされている。本実施形態では、
図1や
図2に示すように2条で多段の形状とされている。
【0036】
ロータ30は、金属製の軸体であり、n−1条で単段あるいは多段の雌ネジ形状とされている。本実施形態においては、ロータ30は、1条で多段とされている。ロータ30は、後に詳述するフレキシブルロッド62が接続される軸体(被接続軸)である。また、ロータ30は、フレキシブルロッド62を介して伝達された動力により偏心回転する軸体(受動側軸体)でもある。さらに詳細には、ロータ30は、ステータ20の内側において自転しつつ、ステータ20の内周面24に沿うように公転する。ロータ30は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状がほぼ真円形となるように形成されている。ロータ30は、上述したステータ20に形成された貫通孔22に挿通され、貫通孔22の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0037】
ロータ30をステータ20に対して挿通すると、ロータ30の外周面32とステータ20の内周面24とが両者の接線にわたって当接した状態になる。また、この状態において、貫通孔22を形成しているステータ20の内周面24と、ロータ30の外周面との間には、流体搬送路40が形成される。流体搬送路40は、上述したステータ20やロータ30のリードの長さLを基準長Sとした場合に、ステータ20やロータ30の軸方向にリードの基準長Sのd倍の長さを有する多段(d段)の流路となっている。
【0038】
流体搬送路40は、ステータ20やロータ30の長手方向に向けて螺旋状に延びている。また、流体搬送路40は、ロータ30をステータ20の貫通孔22内において回転させると、ステータ20内を回転しながらステータ20の長手方向に進む。そのため、ロータ30を回転させると、ステータ20の一端側から流体搬送路40内に流動物を吸い込むと共に、この流動物を流体搬送路40内に閉じこめた状態でステータ20の他端側に向けて移送し、ステータ20の他端側において吐出させることが可能である。すなわち、ロータ30を正方向に回転させると、第2開口14bから吸い込んだ流動物を圧送し、第1開口14aから吐出することが可能である。また、ロータ30を逆方向に回転させると、第1開口14aから吸い込んだ流動物を第2開口14bから吐出することが可能である。
【0039】
動力伝達機構50は、ケーシング12の外部に設けられたモータなどの動力源(図示せず)から上述したロータ30に対して動力を伝達するために設けられている。動力伝達機構50は、動力接続部52と偏心回転部54とを有する。動力接続部52は、ケーシング12の長手方向の一端側、さらに詳細には上述したエンドスタッド12aやステータ取付部12bが設けられたのとは反対側(以下、単に「基端側」とも称す)に設けられた軸収容部12c内に設けられている。また、偏心回転部54は、軸収容部12cとステータ取付部12bとの間に形成された中間部12dに設けられている。
【0040】
動力接続部52は、ドライブシャフト56を有し、これが2つの軸受58a,58bによって自由に回転可能なように支持されている。ドライブシャフト56は、ケーシング12の基端側の閉塞部分から外部に取り出されており、動力源に接続されている。そのため、動力源を作動させることにより、ドライブシャフト56を回転させることが可能である。動力接続部52が設けられた軸収容部12cと中間部12dとの間には、例えばメカニカルシールやグランドパッキンなどからなる軸封装置60が設けられており、これにより中間部12d側から軸収容部12c側に被搬送物たる流動物が漏れ出さない構造とされている。
【0041】
偏心回転部54は、上述したドライブシャフト56とロータ30とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部54は、フレキシブルロッド62と、ユニバーサルジョイント80とを有する。フレキシブルロッド62は、ユニバーサルジョイント80を介してドライブシャフト56と連結されている。また、フレキシブルロッド62は、後に詳述する連結構造部100を介してロータ30に連結されている。これらの構成により、偏心回転部54は、ドライブシャフト56を介して伝達されてきた回転動力をロータ30に伝達し、ロータ30を偏心回転させることが可能である。
【0042】
≪連結構造部100の構造について≫
続いて、連結構造部100の構造について、図面を参照しつつ詳細に説明する。連結構造部100は、フレキシブルロッド62(軸A)とロータ30(軸B)とを連結する部分である。
図2に示すように、フレキシブルロッド62は、連結構造部100側(以下、「先端側」とも称す)の端部にフランジ部102、ネジ軸部104、及び非ネジ軸部106を有する。フランジ部102は、フレキシブルロッド62の径方向外側に突出した鍔状の部分である。
【0043】
フランジ部102は、連結構造部100を形成した状態において、ロータ30の端面112に面接触する面(以下、「座面102a」とも称す)が略平滑となるように表面仕上げ加工が施されている。座面102aの表面仕上げ加工は、様々な方法により実施することが可能であるが、例えば旋盤による切削加工、砥石等による研削加工、ラッピング仕上げによる研磨加工等により実施することが可能である。座面102aを旋盤による切削加工により表面仕上げ加工した場合には、Ra=1.6程度の表面粗さとなるように形成することが可能である。また、砥石等による研削加工を施した場合には、Ra=0.1〜0.8程度の表面粗さとなるように座面102aを形成することが可能である。さらに、ラッピング仕上げによる研磨加工を行うことにより、Ra=0.1以下の表面粗さとなるように座面102aを形成することが可能である。
【0044】
また、ネジ軸部104は、フランジ部102よりもさらに先端側に位置し、ロータ30の正回転方向を基準として逆方向に雄ネジ104aが形成された部分である。非ネジ軸部106は、ネジ軸部104とフランジ部102との間に位置する部分である。非ネジ軸部106においてはネジが形成されておらず、表面が平滑とされている。ネジ軸部104及び非ネジ軸部106は、フランジ部102の略中央に設けられている。
【0045】
ロータ30は、上述した基本的構成の他、基端側に軸挿入穴110が設けられている。軸挿入穴110は、ロータ30の基端側の端面112に開口しており、ロータ30の長手方向に向けてフレキシブルロッド62のネジ軸部104を挿入可能な穴である。軸挿入穴110の内側には、ネジ軸部104のネジと螺合可能なネジ溝110aが形成されている。
【0046】
また、ロータ30の端面112は、上述したフレキシブルロッド62の座面102a(接触面)と同様に略平滑となるように表面仕上げ加工が施されている。端面112の表面仕上げ加工は、様々な方法により実施することが可能であるが、上述した座面102aと同様に、例えば旋盤による切削加工、砥石等による研削加工、ラッピング仕上げによる研磨加工等により実施することが可能である。
【0047】
連結構造部100は、
図3(a)に示すように上述したフレキシブルロッド62のネジ軸部104をロータ30の軸挿入穴110に挿入し、その後
図3(b)に示すように両者を螺合させることにより形成される。このようにして連結構造部100を形成することにより、フレキシブルロッド62をロータ30と接続すると、
図2(b)及び
図3(c)に示すようにフレキシブルロッド62側に設けられたフランジ部102がロータ30の端面112に面接触した状態になる。また、フレキシブルロッド62の先端部と、軸挿入穴110の底部110bとの間には隙間が形成される。さらに、非ネジ軸部106が軸挿入穴110の内側に挿入された状態になる。
【0048】
上述したように、本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10においては、ネジ軸部104とネジ溝110aとを螺合させることによりフレキシブルロッド62をロータ30に対して接続可能であるため、両軸の接続作業及び分解作業を極めて容易に行える。また、上述した連結構造部100によりフレキシブルロッド62とロータ30とを接続すると、フレキシブルロッド62のフランジ部102がロータ30の端面112に面接触した状態になる。これにより、偏心回転に伴って繰り返し作用する曲げモーメントを、ネジの引っ張り力に起因して生じる弾性効果により、座面102aと端面112との面接触部分において受け止めることが可能である。従って、連結構造部100を上述したような構成とすることにより、ロータ30及びフレキシブルロッド62をがたつきが生じないように連結することが可能であり、フレッティング摩耗、ロータ30及びフレキシブルロッド62の破損等の問題を確実に防止することができる。
【0049】
また、上述した連結構造部100は、ネジ軸部104を軸挿入穴110に挿入し螺合させるだけでフレキシブルロッド62とロータ30とを連結し、座面102aと端面112とを面接触させることが可能である。これにより、従来技術として説明した焼き嵌めによってフレキシブルロッド62とロータ30とを連結する場合と同等のシンプルさをもちながら、着脱性、量産性に優れるだけでなく、その他の従来構造によって連結する場合に比べて、極めてシンプルな構成でありながら、組み立て及び分解を容易に実施可能としうる。従って、一軸偏心ねじポンプ10は、製作コスト、及びメンテナンスの手間等が最小限で済む。
【0050】
さらに、連結構造部100においては、フレキシブルロッド62の先端部と、ロータ30に設けられた軸挿入穴110の底部110bとの間に隙間が形成される。このような構成であるため、偏心回転に伴って軸方向及び軸回転方向に作用するモーメントを、フレキシブルロッド62のフランジ部102及びロータ30の端面112の面接触部分に作用させることが可能となる。従って、連結構造部100を上述したような構成とすることにより、ロータ30及びフレキシブルロッド62をより一層がたつきが生じないように連結し、フレッティング摩耗等を防止することができる。
【0051】
上述した構成に加えて、本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10では、フレキシブルロッド62においてフランジ部102とネジ軸部104との間に非ネジ軸部106が存在している。これにより、偏心回転に伴うモーメントを、フレキシブルロッド62のフランジ部102とロータ30の端面112との面接触部分に加えて、ネジ軸部104及び非ネジ軸部106の境界部分と軸挿入穴110の内周面との接触部P(
図3(c)参照)の2カ所に分散させて受け止めることが可能となる。従って、フレキシブルロッド62及びロータ30のフレッティング摩耗、及びこれらの破損を確実に防止することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、非ネジ軸部106を設けることにより、フランジ部102と端面112との面接触部分、及び接触部Pの2カ所においてモーメントを分散支持する構造を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、非ネジ軸部106を設けない構成としてもよい。かかる構成とした場合についても、偏心回転に伴うモーメントをフランジ部102と端面112との面接触部分において十分に受け止めることが可能であり、フレッティング摩耗等の問題が生じない。
【0053】
また、フレキシブルロッド62のフランジ部102とロータ30の端面112とが連結構造部100において面接触している。また、フランジ部102の座面102a及び端面112が表面仕上げ加工により略平滑とされていることから、座面102aと端面112とが略密着している。従って、連結構造部100においては、ネジ軸部104及びネジ溝110a等の隙間に流動物が侵入することを確実に防止できる。従って、一軸偏心ねじポンプ10においては、流動物の侵入に伴うロータ30及びフレキシブルロッド62の腐食等の問題が発生しない。
【0054】
連結構造部100においては、偏心回転によるがたつきが生じないため、ロータ30及びフレキシブルロッド62のフレッティング摩耗による摩耗粉が発生しない。また、フレキシブルロッド62とロータ30との間には流動物が侵入しない。そのため、一軸偏心ねじポンプ10は、食品等のサニタリー関連の用途に好適に使用可能である。
【0055】
なお、フランジ部102及び端面112が面接触した部分において流動物が侵入することを防止するために、上述した構成に加えてOリング等のシール部材によってシールを施した構成とすることも可能である。具体的には、例えば
図4に示すようにフランジ部102のネジ軸部104側の面に溝108を設け、この溝108内にOリング等のシール部材116を嵌め込んだ構成としてもよい。また同様に、
図5(a)に示すように、端面112側に溝108を設け、この溝108内にシール部材116を嵌め込んだ構造とすることも可能である。さらに、
図5(b)に示すようにフランジ部102及び端面112を面接触させた状態において互いに連通するように溝108,118を設け、溝108,118内にシール部材116を嵌め込んだ構成としてもよい。また、
図5(c)に示すように、溝108を設ける位置をフランジ部102の外縁部分よりも径方向内側に外れた位置に設け、シール部材116を嵌め込んだ構成としてもよい。また、
図5(d)に示すように、溝108をフランジ部102の外縁部分、及び外縁部分よりも径方向内側に外れた位置の双方に設け、両者にシール部材116を嵌め込んだ構成としてもよい。これらの構造とすることにより、流動物の侵入をより一層確実に防止することができる。
【0056】
また、上述したシール部材116等を用いることによりフランジ部102及び端面112の間をシールする他、液状ガスケットをフランジ部102及び端面112に塗布することによりシールすることも可能である。かかる構成とすることにより、フランジ部102及び端面112の間に流動物の侵入防止効果をより一層向上させることが可能となる。
【0057】
また、一軸偏心ねじポンプ10のおいては、フレキシブルロッド62のネジ軸部104及びロータ30のネジ溝110aに形成されたネジが、いずれもロータ30が主として回転する方向とは逆向きに形成されている。言い換えれば、ネジ軸部104及びネジ溝110aに形成されたネジは、ロータ30及びフレキシブルロッド62の回転時に締まり勝手となるように形成されている。そのため、一軸偏心ねじポンプ10においては、運転中に連結構造部100における連結力が低下しない。さらに、本実施形態では、フランジ部102の座面102a及び端面112が表面仕上げ加工により略平滑とされていることから、一軸偏心ねじポンプ10の作動時に作用するトルクの影響による連結構造部100の連結力の低下が生じにくい。すなわち、本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10においては、連結構造部100を形成する際の締め付けトルクT1と、連結構造部100を分解する際の緩みトルクT2とが略同一(T2≒T1)である。
【0058】
本実施形態では、フレキシブルロッド62のネジ軸部104及びロータ30のネジ溝110aに形成されたネジが一軸偏心ねじポンプ10を通常運転させた場合に締まり勝手となるように形成した例を示したが、本発明はこれに限定される訳ではない。すなわち、ネジ軸部104及びネジ溝110aのネジを緩み勝手となる方向、すなわちロータ30の回転と同一方向に形成したものであってもよい。なお、前述したようにネジを緩み勝手方向に形成する場合には、連結構造部100における締結力が低下しないよう、緩み止めのための構成を付加することが好ましい。
【0059】
また、本実施形態では、連結構造部100における締結力の維持、座面102aと端面112との間に隙間が形成されることによる不具合の防止等の観点から、フランジ部102の座面102a及び端面112の双方を表面仕上げ加工により略平滑とした例を示したが、本発明はこれに限定される訳ではない。すなわち、座面102a及び端面112のいずれか一方のみを表面状態が平滑となるように表面仕上げ加工を施したものであってもよい。また、座面102a及び端面112を平滑としなかった場合に連結構造部100において生じる隙間、あるいは連結構造部100における締結力低下の程度が運転を実施する上で影響のない程度と想定される場合には、座面102a及び端面112のいずれか一方、又は双方に表面仕上げ加工を施さないこととしてもよい。また、連結構造部100は、ロータ30の端面112及びフレキシブルロッド62の座面102aの間にゴムシート等のシール性を有するシール部材を介在させることとしてもよい。このような構成とすることにより、端面112及び座面102aの間に流動物が噛み込むことを防止することが可能となる。
【0060】
本実施形態では、フレキシブルロッド62の先端側に、フレキシブルロッド62と同心であって円盤状のフランジ部102を設け、フランジ部102の座面102aをロータ30の端面112に面接触させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、
図6(a)に示すように、フレキシブルロッド62の先端側を縮径させることによりネジ軸部104及び非ネジ軸部106を形成した構成とすることが可能である。かかる構成とした場合、ネジ軸部104をロータ30の軸挿入穴110に挿入し、螺合させることにより、フレキシブルロッド62本体と、ネジ軸部104及び非ネジ軸部106が形成された部位との境界に形成された段部114をなす面が座面114aとなり、ロータ30の端面112と面接触した状態になる。これにより、座面114aが上述したフランジ部102の座面102aと同様の機能を発揮することになり、フランジ部102を設けた場合と同様の作用効果が得られる。
【0061】
また、上述したようなフレキシブルロッド62の全周に亘って径方向に突出したフランジ部102を設ける代わりに、
図6(b)に示すようにフレキシブルロッド62の周方向一部の領域において径方向外側に突出した突出部116を設けることにより、座面116aを形成したものであってもよい。このような構成とすることにより、座面116aがロータ30の端面112と面接触させることが可能となる。これにより、座面116aが上述したフランジ部102の座面102aと同様の機能を発揮することになり、フランジ部102を設けた場合と同様の作用効果が得られる。
【0062】
本実施形態では、フレキシブルロッド62側にフランジ部102、ネジ軸部104、及び非ネジ軸部106を設け、ロータ30側にネジ溝110aを有する軸挿入穴110、及びフランジ部102と面接触可能な端面112を設けた構成を例示したが、両者の構成が逆転していてもよい。具体的には、ロータ30側にフランジ部102、ネジ軸部104、及び非ネジ軸部106を設け、フレキシブルロッド62側び軸挿入穴110、及び端面112を設けた構成としてもよい。かかる構成とした場合についても、本実施形態において示した連結構造部100と同様の作用、効果が得られる。
【0063】
本実施形態では、フレキシブルロッド62の一端側とロータ30とを連結構造部100を介して連結し、フレキシブルロッド62の他端側とドライブシャフト56とをユニバーサルジョイント80によって連結した構造を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、ユニバーサルジョイント80に代え、連結構造部100によってフレキシブルロッド62とドライブシャフト56とを連結した構造としてもよい。すなわち、ドライブシャフト56をフレキシブルロッド62が接続される被接続軸としてもよい。また、上述したようにフレキシブルロッド62とロータ30との接続部分に連結構造部100を形成する代わりに、フレキシブルロッド62とドライブシャフト56との接続部分に連結構造部100を形成してもよい。すなわち、一軸偏心ねじポンプ10は、フレキシブルロッド62の一端側にのみ連結構造部100を設けた構成、あるいはフレキシブルロッド62の両端に連結構造部100を設けた構成のいずれであってもよい。
【0064】
また、本実施形態においては、フレキシブルロッド62に対してロータ30を直接接続する構成を例示したが、本発明はこれに限定される訳ではなく、ロータ30とフレキシブルロッド62との間に別途軸体(以下、「中間軸」とも称す)を設け、この中間軸を介してフレキシブルロッド62を接続した構造としてもよい。この場合、ロータ30の端面112に設けた軸挿入穴110に相当するものを中間軸に設けることにより上述した連結構造部100に相当するものを形成し、同様の作用効果を得ることが可能となる。また、中間軸とロータ30との接続部分についても、連結構造部100に相当するものを形成することにより、同様の作用効果が得られる。同様に、フレキシブルロッド62とドライブシャフト56との接続部分についても、両軸間に中間軸を設けることが可能である。この場合、中間軸とフレキシブルロッド62の接続部分、及び中間軸とドライブシャフト56との接続部分のいずれか一方又は双方に連結構造部100に相当するものを形成することにより、本実施形態において説明したものと同様の作用効果が得られる。
【0065】
また、本実施形態においては、フレキシブルロッド62の先端部において、フランジ部102に対してネジ軸部104を一体的に形成したものを例示したが、本発明はこれに限定される訳ではない。具体的には、例えば
図7に示すように、上述したネジ軸部104を形成するもの(ネジ軸120)を別部材として準備し、このネジ軸120を介してフレキシブルロッド62とロータ30とを連結する構造としてもよい。
【0066】
本変形例についてさらに詳細に説明すると、本変形例においては、
図7(a)に示すように両端に雄ネジ120a,120bが形成されたネジ軸120がフレキシブルロッド62に対して着脱可能な部材として準備される。また、本変形例においては、フレキシブルロッド62の先端側に設けられたフランジ部102の略中央に突出部108を設けると共に、突出部108にネジ軸120を螺合させることが可能な雌ネジからなるネジ穴109を設ける。ネジ穴109に対してネジ軸120を螺合により装着すると、上述したフレキシブルロッド62と同等のものが形成される。すなわち、ネジ軸120の雄ネジ120aがネジ軸部104に相当し、突出部108が非ネジ軸部106に相当する。
【0067】
また、本変形例においては、
図7(a)に示すように、ネジ軸部104及び非ネジ軸部106に相当する部分をネジ軸120及び突出部108によって形成することにより、フレキシブルロッド62の形状及び構造が変更される。これに伴い、ロータ30側に設ける軸挿入穴110の形状及び構造についても一部変更される。具体的には、軸挿入穴110の入口部分に突出部108が収まる大きさの穴(突出部収容部110x)が形成され、突出部収容部110xの奥側にネジ軸120を螺合させるための雌ネジからなるネジ穴110yが形成される。
【0068】
上述したような構成とした場合、突出部108に形成されたネジ穴109にネジ軸120を装着すると共に、フレキシブルロッド62の先端部に接続されたネジ軸120及び突出部108をロータ30の軸挿入穴110に挿入して螺合させることにより、ロータ30とフレキシブルロッド62とを連結することが可能となる(
図7(b)参照)。また、このようにして両軸30,62を連結した場合についても、上記実施形態において説明した構造を採用した場合と同様の作用効果が得られる。
【0069】
なお、上述したネジ軸120に雄ネジ120a,120bを形成し、雌ネジからなるネジ穴109,110yを設けた構成を例示したが、雄ネジ及び雌ネジの関係が逆転していても良い。また、フランジ部102の略中央部に突出部108を設け、この突出部108に非ネジ軸部106に相当する機能を持たせた構成を例示したが、突出部108に相当する部分を設けない構成としてもよい。このような構成とする場合には、フランジ部102の座面102を平坦なものとし、略中央部に雄ネジ120bが螺合可能なネジ穴を設けることにより、ネジ軸120とフランジ部102とを連結可能とすることができる。また、突出部108を設けない場合には、ネジ軸120の雄ネジ120a,102bの間にネジが形成されていない部分を設け、この部分を非ネジ軸部106に相当するものとして利用することも可能である。
【実施例】
【0070】
続いて、上述した一軸偏心ねじポンプ10において、フレキシブルロッド62とロータ30との間に形成された連結構造部100における締結トルクT1と緩みトルクT2との関係についての実験結果について説明する。上述した一軸偏心ねじポンプ10において、フレキシブルロッド62のネジ軸部104に設けたネジ、及びロータ30の軸挿入穴110内に形成されたネジ溝110aのネジのネジ径M、締結トルクT1、緩みトルクT2、及びロータ30の偏心量の関係を調べる実験を行った。この実験における一軸偏心ねじポンプ10の運転時間は1ヶ月〜3ヶ月、回転速度は300[min
−1]であった。また、フレキシブルロッド62の材質は、SUS630あるいはチタン合金 (Ti−6Al−4V)であった。また、ドライブシャフト及びロータ30の材質は、SUS316であった。本実験においては、可変式トルクレンチを用いることによりフレキシブルロッド62とロータ30とを連結し、連結時の設定トルクを締結トルクT1とした。また、連結構造部100を分解する際に、可変式トルクレンチの設定トルクを徐々に大きくしていき、連結構造部100において緩みが生じたときの設定値を緩みトルクT2とした。実験結果を下記の表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
上記表1に示すように、いかなる条件下において締結トルクT1及び緩みトルクT2を計測した場合についても、緩みトルクT2が締結トルクT1と略同等であった。これにより、座面102aと端面112とを面接触させた状態で連結させることにより、フレキシブルロッド62とロータ30とを強固かつ緩みが生じないように連結可能であることが判明した。