(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記直列補償手段は、それぞれ電流路を備え、各自に供給される制御信号に応答して各自の電流路をオン及びオフするスイッチであって、各自の電流路を、オンしたとき双方向に実質的に導通させ、オフしたとき電流路の所定の一端から他端の一方向にのみ実質的に導通させる第1乃至第4のスイッチと、一端が前記第1のスイッチの電流路の前記他端及び前記第3のスイッチの電流路の前記他端に接続され、他端が前記第2のスイッチの電流路の前記一端及び前記第4のスイッチの電流路の前記一端に接続されたコンデンサと、より構成されており、前記第1のスイッチの電流路の前記一端及び前記第2のスイッチの電流路の前記他端が前記交流電源に接続され、前記第3のスイッチの電流路の前記一端及び前記第4のスイッチの電流路の前記他端が前記誘導電動機が接続されるものであり、
前記制御信号供給手段は、前記第2及び第3のスイッチの電流路をオンさせ前記第1及び第4のスイッチの電流路をオフさせる第1の前記制御信号を第1の前記タイミングで前記第1乃至第4のスイッチの各制御端に供給し、前記第2及び第3のスイッチの電流路をオフさせ前記第1及び第4のスイッチの電流路をオンさせる第2の前記制御信号を第2の前記タイミングで前記第1乃至第4のスイッチの各制御端に供給するものである、
請求項1に記載の誘導電動機制御装置。
前記直列補償手段は、それぞれ電流路を備え、各自に供給される制御信号に応答して各自の電流路をオン及びオフするスイッチであって、各自の電流路を、オンしたとき双方向に実質的に導通させ、オフしたとき電流路の所定の一端から他端の一方向にのみ実質的に導通させる第1及び第2のスイッチと、各自の電流路が所定の一端から他端の一方向にのみ実質的に導通する第1及び第2の整流素子と、一端が前記第1のスイッチの電流路の前記他端及び前記第1の整流素子の電流路の前記他端に接続された第1のコンデンサと、一端が前記第2のスイッチの電流路の前記一端及び前記第2の整流素子の電流路の前記一端に接続された第2のコンデンサと、より構成されており、前記第1のスイッチの電流路の前記一端及び前記第2のスイッチの電流路の前記他端が前記交流電源に接続され、前記第1の整流素子の電流路の前記一端、前記第2の整流素子の電流路の前記他端、前記第1のコンデンサの前記他端及び前記第2のコンデンサの前記他端が互いに結合されて前記誘導電動機に接続されるものであり、
前記制御信号供給手段は、前記第2のスイッチの電流路をオンさせ前記第1のスイッチの電流路をオフさせる第1の前記制御信号を第1の前記タイミングで前記第1及び第2のスイッチの各制御端に供給し、前記第2のスイッチの電流路をオフさせ前記第1のスイッチの電流路をオンさせる第2の前記制御信号を第2の前記タイミングで前記第1及び第2のスイッチの各制御端に供給するものである、
請求項1に記載の誘導電動機制御装置。
前記タイミング決定手段は、前記負荷電圧検出手段が生成した前記信号が示す前記p個の相の負荷電圧の、実質的にp分の1周期分の区間における基本波成分の実効値の平均量を特定して、特定された当該平均量が所定値へと収束するように、それぞれの前記直列補償手段につき前記タイミングを決定する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の誘導電動機制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、誘導電動機駆動装置を例として、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(第1の実施の形態:構成)
本発明の第1の実施の形態に係る誘導電動機駆動装置10は、
図1に示すように、3個のMERS(磁気エネルギー回生スイッチ:Magnetic Energy Recovery Switch)100u、100v及び100wと、電圧検出部VMと、制御部200とから構成されている。
【0013】
MERS100uは、たとえば
図2に示すようなフルブリッジ型MERSからなる。
図1のMERS100uは、4個の逆導通型半導体スイッチSW1,SW2,SW3及びSW4と、コンデンサCMとから構成されている。
【0014】
逆導通型半導体スイッチSW1は、逆方向導通部D1及びスイッチ部S1から構成されている。同様に、逆導通型半導体スイッチSW2は逆方向導通部D2及びスイッチ部S2から構成され、逆導通型半導体スイッチSW3は逆方向導通部D3及びスイッチ部S3から構成され、逆導通型半導体スイッチSW4は逆方向導通部D4及びスイッチ部S4から構成されている。
【0015】
スイッチ部S1〜S4はいずれも、たとえばMOSFET(Metal-Oxide-Silicon Field Effect Transistor)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)あるいはその他の半導体スイッチング素子からなり、それぞれ電流路と制御端とを備えている。そして、各自の制御端に後述のオン信号が供給されると電流路を導通させ、オフ信号が供給されると電流路を遮断する。
【0016】
逆方向導通部D1〜D4はいずれも、たとえばダイオード等の整流素子からなり、電流を一方向にのみ導通させる電流路を備える。このダイオードはたとえば、スイッチ部を構成する半導体スイッチの寄生ダイオードであってもよい。
【0017】
以下の説明では、各実施形態を通じ、断りのない限り各逆方向導通部はいずれもダイオードからなり、各スイッチ部はいずれもnチャネルMOSFETからなるものとして説明する。この場合、このMOSFETのドレイン−ソース間がスイッチ部の電流路をなし、ゲートが制御端をなすものである。
【0018】
それぞれの逆導通型半導体スイッチにつき、逆方向導通部のアノードはスイッチ部のソースに接続されており、逆方向導通部のカソードはスイッチ部のドレインに接続されており、スイッチ部の電流路と逆方向導通部の電流路とが、合わせて逆導通型半導体スイッチの電流路をなす。
このような接続関係をとる結果、各逆導通型半導体スイッチはいずれも、スイッチ部のドレインからソースに向かう方向(順方向)に流れる電流を、当該スイッチ部のゲートに印加される信号の値に応じてオン/オフする。一方、当該スイッチ部のソースからドレインに向かう方向(逆方向)の電流については、逆方向導通部がこの電流のバイパスを確保する結果、常にオン状態を保つ。
【0019】
スイッチ部S1及びS3の各ドレインはいずれもコンデンサCMの一端(以下、正極と呼ぶ)に接続されている。スイッチ部S2及びS4の各ソースはいずれもコンデンサCMの他端(以下、負極と呼ぶ)に接続されている。
【0020】
スイッチ部S1のソースは、スイッチ部S2のドレインに接続され、交流入力端子AC1をなしている。スイッチ部S3のソースはスイッチ部S4のドレインに接続されて交流出力端子AC2をなしている。
【0021】
MERS100uの交流入力端子AC1は、たとえば3個の極U,V及びWを備える三相交流電源からなる外部の交流電源VSの極Uに接続され、MERS100uの交流出力端子AC2は、たとえば3個の極u,v及びwを備える三相誘導電動機からなる外部の誘導電動機Mの極Uに接続される。
【0022】
なお、交流電源VSの極U,V及びWはいずれも正弦波交流電圧を出力するものとし、極Vが出力する電圧の位相は極Uの電圧の位相に対して(2π/3)ラジアン遅れており、極Wが出力する電圧の位相は極Uの電圧の位相に対して(4π/3)ラジアン遅れているものとする。
【0023】
なお、誘導電動機Mは、図示するように3個の誘導性負荷LD1、LD2及びLD3からなるネットワークとして表すことができるものである。誘導性負荷LD1、LD2及びLD3は、それぞれ、インダクタL1と抵抗R1との直列回路、インダクタL2と抵抗R2との直列回路、及びインダクタL3と抵抗R3との直列回路として表すことができ、誘導性負荷LD1、LD2及びLD3の一端が、それぞれ誘導電動機Mの極u、v及びwをなし、誘導性負荷LD1、LD2及びLD3の他端同士が互いに接続されているものとして表すことができる。
【0024】
MERS100uのスイッチ部S1,S2,S3及びS4の各ゲート(順に、G1u,G2u,G3u及びG4u)は、MERS100uの制御端をなすもので、いずれも制御部200に接続されている。
【0025】
MERS100v及び100wは、いずれもMERS100uと実質的に同一の構成を有している。
MERS100vの交流入力端子AC1は、交流電源VSの極Vに接続され、MERS100vの交流出力端子AC2は、誘導電動機Mの極vに接続される。MERS100wの交流入力端子AC1は、交流電源VSの極Wに接続され、MERS100wの交流出力端子AC2は、誘導電動機Mの極wに接続される。
【0026】
なお、本明細書及び図面では、MERS100uを構成する各要素に付された参照符号については、末尾に更に「u」を付した表記も行う場合があるものとする。たとえば、MERS100uの交流入力端子AC1、逆導通型半導体スイッチSW1、コンデンサCMは、それぞれ「交流入力端子AC1u」、「逆導通型半導体スイッチSW1u」、「コンデンサCMu」とも表記する。
同様に、本明細書及び図面では、MERS100vを構成する要素に付された参照符号については、末尾に更に「v」を付した表記も行う場合があるものとし、MERS100wを構成する要素に付された参照符号については、末尾に更に「w」を付した表記も行う場合があるものとする。
【0027】
電圧検出部VMは、たとえば交流電圧の瞬時値を検出可能な公知の電気回路からなっており、誘導電動機Mの極vに対する極uの線間電圧Vuvの値と、誘導電動機Mの極wに対する極vの線間電圧Vvwの値と、誘導電動機Mの極uに対する極wの線間電圧Vwuの値とを継続的に検出し、検出した各線間電圧Vuv、Vvw及びVwuの値を表す信号を生成して、制御部200へと継続的に供給する。(なお、以下では、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuの三者を総称する場合は「Vload」と記す。)
【0028】
制御部200は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置とを備えたコンピュータから構成されている。
【0029】
また、制御部200は、たとえば電圧検出部VMが供給する信号(すなわち電圧Vloadの値を示す信号)をデジタル信号に変換するためのA/D(Analog-to-Digital)コンバータを備えている。ただし、電圧検出部VMが電圧Vloadの各値を示す信号をデジタル形式で供給するものである場合、制御部200は上述のA/Dコンバータを備えている必要はない。
【0030】
制御部200は、たとえば自己の記憶装置が予め記憶するプログラムを自己のプロセッサが読み出して実行することにより、後述する処理、たとえば、
図3に示す離散フーリエ変換部DFT、ローパスフィルタLPF、差分生成部DFR、比例積分制御部PI及びゲート論理生成部GLの機能を行う処理を実行する。
【0031】
離散フーリエ変換部DFTは、電圧検出部VMが供給する信号を取得し、この信号に含まれる、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuの各値にそれぞれ離散フーリエ変換を施した結果を表す周波数ドメインのデータ3個を生成して、ローパスフィルタLPFへと供給する。
【0032】
ローパスフィルタLPFは、離散フーリエ変換部DFTが供給する周波数ドメインの各データを取得し、このデータのそれぞれから高調波成分を除去して、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuの各基本波成分を抽出する。そして、抽出された各基本波成分の実効値の平均Vrmsを示すデータを生成し、差分生成部DFRへと供給する。
【0033】
制御部200は、離散フーリエ変換部DFT及びローパスフィルタLPFの機能を実現するために上述のVrmsの値を特定する処理として、具体的には、たとえば、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuのそれぞれにつき、1周期前の基本波成分方向の単位ベクトルとの内積の実効値を1周期にわたって求め、これら3個の実効値の算術平均をとることにより、誘導電動機Mの各極の相電圧の基本波成分の実効値の平均に相当する値として値Vrmsを特定すればよい。すなわち、たとえば、以下に示す数式1の右辺を計算する処理を実行すればよい。
なお、数式1及び後述の数式2において、Vuv(t)、Vvw(t)及びVwu(t)は、それぞれ、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuを時刻tのベクトル関数として表記したものであり、ωは交流電源VSが出力する三相交流電圧の角周波数であり、Tは当該三相交流電圧の周期すなわち(2π/ω)である。なお、jは虚数単位である。
【0035】
数式1の値Vrmsは、計算対象である期間を時刻(t−T)から時刻tまでの1周期分の期間として、Vuv(t)と1周期前の線間電圧Vuvの基本波成分方向の単位ベクトルとの内積、Vvw(t)と1周期前の線間電圧Vvwの基本波成分方向の単位ベクトルとの内積、及びVwu(t)と1周期前の線間電圧Vwuの基本波成分方向の単位ベクトルとの内積についてそれぞれ上記計算対象である期間全域内での実効値を求め、得られる計3個の実効値の算術平均をとり、更に、これらの線間電圧の絶対値が計算上は誘導電動機Mの各極の相電圧の(√3)倍になることに鑑みて当該算術平均を(√3)で除したものに相当する。
なお、「ある電圧とその基本波成分方向の単位ベクトルとの内積の、ある期間全域内での実効値」とは、具体的には、当該電圧及び当該単位ベクトルの両者を複素表現した場合における、両者の実部の係数同士の積を当該期間全域で定積分した値と、両者の虚部の係数同士の積を当該期間全域で定積分した値との幾何平均をいう。また、「1周期前」とは、(t−2T)から時刻(t−T)までの1周期分の期間を指す。
【0036】
差分生成部DFRは、ローパスフィルタLPFが供給するデータを取得し、このデータが示す実効値Vrmsと実効値の目標値Vsetとの差Verrを表すデータを生成して、比例積分制御部PIへと供給する。目標値Vsetの値を示すデータは、たとえば予め制御部200の記憶装置が記憶していてもよいし、図示しない公知のインターフェース回路を介して外部から取得してもよい。そして差分生成部DFRは当該データを参照し、当該データが示す値が目標値Vsetであるものとして、差Verrを表すデータを生成すればよい。
【0037】
比例積分制御部PIは、差分生成部DFRが供給するデータを取得し、このデータが示す値Verrに基づいて、後述のゲート位相角θsetを決定する。そして、決定したゲート位相角θsetの値を示すデータを生成して、ゲート論理生成部GLへと供給する。
【0038】
θsetの値を決定する処理として、比例積分制御部PIは、たとえば以下(a)〜(c)として述べる処理を行う。
(a) 比例積分制御部PIは、値Verrを表す最新のデータを供給されるたびにこのデータを取得して記憶し、当該最新のデータを含め直近の過去の所定回数にわたって供給された値Verrを表すデータも、引き続き記憶する。また、θsetの最新の値を決定し、当該値を示すデータを生成するたびに、このデータも記憶する。ただし、θsetの値がまだ1個も決定されていない間は、たとえばθsetの所定の初期値(初期位相)を示すデータを記憶する。
(b) 一方、比例積分制御部PIは、値Verrを表す最新データを供給されるたびに、当該最新のデータを参照し、当該最新のデータが示す値Verrに所定の第1の比例係数を乗じたものに相当する値(第1の値)を求める。また、記憶している過去の所定回数分の値Verrを表す各データを参照し、これらのデータの値に基づいて、値Verrを直近の所定期間積分して所定の第2の比例定数を乗じたものに相当する値(第2の値)を求める。値Verrを積分する所定期間は、たとえば、値Verrを表すデータとして記憶している最も古いデータの生成に用いられた電圧Vloadの値が測定された時点から、最新のデータの生成に用いられた電圧Vloadの値が測定された時点までの期間であればよい。
(c) そして、比例積分制御部PIは、過去最新のθsetの値を示すデータとして記憶しているデータを参照し、このデータの値、上述の第1及び第2の値の三者を互いに加算し、得られた値を最新のθsetの値として決定する。(そして上述した通り、決定したこの新たなθsetの値を示すデータを生成して記憶する。)
【0039】
ゲート論理生成部GLは、比例積分制御部PIが供給するデータを取得し、このデータが示すゲート位相角θsetの値に基づいて、MERS100u〜100wの各逆導通型半導体スイッチをオンするタイミングを後述のように決定し、決定結果に従って、ゲート信号SGG1u,SGG2u,SGG3u,SGG4u,SGG1v,SGG2v,SGG3v,SGG4v,SGG1w,SGG2w,SGG3w及びSGG4wを生成して、それぞれ、ゲートG1u,G2u,G3u,G4u,G1v,G2v,G3v,G4v,G1w,G2w,G3w及びG4wへと供給する。
【0040】
それぞれのゲート信号は、当該ゲート信号の供給先であるゲートを備える半導体スイッチのオン又はオフを指示する信号である。たとえば、オンを指示するときの当該ゲート信号(オン信号)は、当該半導体スイッチをオンさせるに足る電圧(ハイレベル電圧)をとり、オフを指示するときの当該ゲート信号(オフ信号)は、当該半導体スイッチをオフさせるに足る電圧(ローレベル電圧)をとる。
【0041】
(第1の実施の形態:動作)
次に、上記構成の誘導電動機駆動装置10の動作を説明する。
まず、制御部200により制御されるMERS100uが交流電源VSの極Uから誘導電動機Mへと交流電圧を供給する動作は、たとえば上記特許文献の段落0055〜0066に記載されている、MERSが交流電源からモータへと電圧を供給する動作と実質的に同一である。
【0042】
すなわち、制御部200は、逆導通型半導体スイッチSW2及びSW3からなるペア(以下「ペアP1」と呼ぶ。特許文献1における逆導通型半導体スイッチ113及び111からなるペアに相当する。)と、逆導通型半導体スイッチSW1及びSW4からなるペア(以下「ペアP2」と呼ぶ。特許文献1における逆導通型半導体スイッチ114及び112からなるペアに相当する。)とが交互にON/OFFされるようなパターンを有するゲート信号SGG1u〜SGG4uを生成し、MERS100uに供給する。
このようなゲート信号により制御部200は、(i)まずペアP1がONしてペアP2がOFFする動作と、(ii)極Uの電圧が負に転じてからペアP1がOFFしてペアP2がONする動作と、を併せて1サイクルとして、このサイクルを極Uの電圧の周期と実質的に等しい周期でMERS100uに繰り返し行わせる。
【0043】
ただし、本実施形態においては、特許文献1における「ゲート位相角α」に代わる値として、上述のゲート位相角θsetが用いられる。制御部200のゲート論理生成部GLは、ゲート信号SGG1u〜SGG4uの各状態遷移の位相が、比例積分制御部PIが供給するデータが示す最新のゲート位相角θset(θsetの値がまだ1個も決定されていない状態においては、上述した初期位相)に実質的に等しい位相となるように、これらのゲート信号の生成を行うものとする。
【0044】
なお、ゲート位相角θsetは、交流電源VSの極Uの相電圧(図示しない基準電位に対する電圧)が負から正に転じるゼロクロスポイントを位相0とした位相角である。
制御部200は、このゼロクロスポイントを検出するため、たとえば、極Uの相電圧の極性を検出して検出結果を示す信号を生成する公知の電気回路を備えていればよい。具体的には、たとえば制御部200は単に極Uに接続されていればよく、あるいは極Uの相電圧を図示しない分圧抵抗等により分圧して得られる電圧を、極性の検出結果を示す信号として扱うこととしてもよい。
【0045】
ペアP1がONしてペアP2がOFFすることにより、コンデンサCMの負極は極Uに電気的に接続され、正極は極Uから電気的に切り離され、誘導電動機Mの極uに電気的に接続される。この結果、交流電源VSとコンデンサCMとは直列回路(第1の向きの直列回路)を形成することになり、極uには、極Uの相電圧と、コンデンサCMの負極に対する正極の電圧との和に相当する電圧が印加される。
一方、ペアP1がOFFしてペアP2がONすることにより、コンデンサCMの正極は極Uに電気的に接続され、負極は極Uから電気的に切り離され、極uに電気的に接続される。この結果、交流電源VSとコンデンサCMとは、極Uに接続されるコンデンサCMの極が上記第1の向きの直列回路とは異なる第2の直列回路を形成することになる。このとき極uには、極Uの相電圧と、コンデンサCMの正極に対する負極の電圧との和に相当する電圧が印加される。
そして、コンデンサCMの両端間に発生する電圧は、極Uの相電圧に対してθsetだけ変動したものとなるから、交流電源VSとコンデンサCMとの直列回路の両端間に発生する電圧は、交流電源VSの電圧に位相補償が加えられたものに相当するということができる。
【0046】
一方、MERS100v及び100wの動作は、以下(A)〜(C)として述べる各点を除き、MERS100uの動作と実質的に同一である。
(A) 交流電源VSの極V及び極Wの位相は、極Uの相電圧の位相に対しそれぞれ(2π/3)ラジアン及び(4π/3)ラジアン遅れている。
(B) ゲート信号SGG1v,SGG2v,SGG3v及びSGG4vは、それぞれゲート信号SGG1u,SGG2u,SGG3u及びSGG4uの位相を(2π/3)ラジアン遅らせたものとなる。また、ゲート信号SGG1w,SGG2w,SGG3w及びSGG4wは、それぞれゲート信号SGG1u,SGG2u,SGG3u及びSGG4uの位相を(4π/3)ラジアン遅らせたものとなる。
(C) 交流電源VSとMERS100vとの間に流れる電流は、極V及び交流入力端子AC1vを介して流れ、誘導電動機MとMERS100vとの間に流れる電流は、交流出力端子AC2v及び極vを介して流れる。同様に、交流電源VSとMERS100wとの間に流れる電流は、極W及び交流入力端子AC1wを介して流れ、誘導電動機MとMERS100wとの間に流れる電流は、交流出力端子AC2w及び極wを介して流れる。
【0047】
以上説明した動作を行うことにより、この誘導電動機駆動装置10は、誘導電動機Mに三相交流電圧を供給する。一方、誘導電動機駆動装置10は、この三相交流電圧の基本波成分を抽出してその量Vrmsを特定し、当該量Vrmsが一定量Vsetに収束するように、ゲート位相角θsetの値を比例積分制御する。
【0048】
これに対し、本実施の形態とは異なり、たとえば従来行われていた手法として、誘導電動機Mの各相の負荷電圧の実効値(基本波及び高調波の両成分を含んだ実効値)を一定値に収束させるようにMERS100u,100v及び100wを制御する手法によった場合、誘導電動機Mが安定して起動しないことがあり得る。本実施の形態に係る誘導電動機駆動装置10は、この弊害を抑制して誘導電動機Mの安定な起動を容易にするものである。
【0049】
すなわち、まず、誘導電動機Mの各相の、基本波及び高調波の両成分を含む負荷電圧実効値を一定値に収束させるような制御を行った場合、たとえば
図4に示すように、誘導電動機Mの回転速度を所望の目標値に収束させること(すなわち、誘導電動機Mを正常に起動すること)に失敗する場合がある。
なお、
図4は、誘導電動機Mの回転速度の目標値が1800[min
−1]である場合の負荷電流、負荷電圧、負荷電圧の基本波成分、回転速度及びゲート位相角の推移を図示するものである。
図4からは、起動時からの経過時間が10秒程度たった後、回転速度の増加が頭打ちとなって上記目標値に達しなくなっていることが分かる。
【0050】
このような現象が起こる理由としては、負荷電圧に含まれている高調波成分が、MERS100u,100v及び100wを介して行う誘導電動機Mへのフィードバック制御を誤らせている、というものが考えられる。
すなわち、まず、負荷電圧の各成分のうち誘導電動機Mの正常な回転に寄与するのは基本波成分であるといえる。一方、負荷電圧の各成分のうちMERS100u,100v及び100wのゲート位相角を変化させることにより制御できるのもまた基本波成分であると考えられる。このため、MERS100u,100v及び100wのゲート位相角を制御する制御部200が、負荷電圧ないし負荷電流の総量を制御対象としてこの総量を所定量に収束させるようにゲート位相角を決定したとしても、MERS100u,100v及び100wが供給する負荷電圧ないし負荷電流の基本波成分は、必ずしも所定量に収束するような値とならない(すなわち、当該基本波成分の量とこの所定量との差が0に収束しない)。このことは、たとえば
図4に示す負荷電圧の推移において、起動時から14秒程度経過した時点で負荷電圧の総量に対する高調波成分の比率が高まり、負荷電圧の基本波成分の量が低下していることからもうかがえる通りである。この現象が、誘導電動機Mの正常な起動を妨げる原因と考えられるのである。
【0051】
一方、本実施の形態に係る誘導電動機駆動装置10により誘導電動機Mを起動した場合の負荷電流、負荷電圧、負荷電圧の基本波成分、回転速度及びゲート位相角の推移は、たとえば
図5に示すようなものとなる(ただし、
図5においては、誘導電動機Mの回転速度の目標値は1500[min
−1]である)。
図5から分かるように、負荷電圧の基本波成分の量は起動時よりほぼ一定となり、誘導電動機Mの回転速度は、起動から4秒程度で目標値に達している。このことから、負荷電圧の基本波成分を十分な所定量に収束させれば誘導電動機Mの正常な起動が確保される、という関係の存在が推察される。
【0052】
なお、この誘導電動機駆動装置10の構成は上述のものに限られない。
たとえば、交流電源VS及び誘導電動機Mの相の数は3より多くてもよい。交流電源VSがp相交流電源からなり(pは3以上の整数)、誘導電動機Mがp相誘導電動機からなる場合、誘導電動機起動装置10は、それぞれMERS100uと実質的に同一の構成を有するp個のMERSを備えていればよい。この場合、これらp個のMERSの計p個の交流入力端子AC1は、交流電源VSのp個の極に1対1に接続されればよい。そして、計p個の交流出力端子AC2は、誘導電動機Mのp個の極に1対1に接続されればよい。
そして、たとえば交流電源VSのq番目の極(qはp以下の自然数)の相電圧の位相が、1番目の極の相電圧に対して{2π(q−1)/p}ラジアン遅れているとすれば、制御部200は、交流電源VSの1番目の極に接続されたMERSのスイッチ部S1,S2,S3及びS4に供給するゲート信号の位相をそれぞれ{2π(q−1)/p}ラジアン遅らせたものを、交流電源VSのq番目の極に接続されたMERSのスイッチ部S1,S2,S3及びS4に供給するものとすればよい。
【0053】
また、制御部200は必ずしも電圧Vloadをフーリエ変換する必要はなく、電圧Vloadに任意の手法によるフィルタリングを施すことにより基本波成分を抽出し、得られた値に基づいて値Vrmsを示すデータを生成すればよい。
【0054】
(第2の実施の形態)
上述の第1の実施の形態では、制御部200は、誘導電動機Mの各極の相電圧の基本波成分の実効値の平均に相当する値Vrmsを特定するため、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuのそれぞれにつき、1周期前の基本波成分方向の単位ベクトルとの内積の実効値を1周期にわたって求め、これら3個の実効値の算術平均をとっていた。しかし、制御部200は、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuのそれぞれにつき、3分の1周期前の基本波成分方向の単位ベクトルとの内積の実効値を3分の1周期にわたって求め、これら3個の実効値の算術平均をとることにより値Vrmsを特定してもよい。
この場合、制御部200は、具体的には、例えば、以下に示す数式2の右辺を計算する処理を実行することによってVrmsの値を特定すればよい。
【0056】
数式2の値Vrmsは、計算対象である期間を時刻{t−(T/3)}から時刻tまでの3分の1周期分の期間として、Vuv(t)と3分の1周期前の線間電圧Vuvの基本波成分方向の単位ベクトルとの内積、Vvw(t)と3分の1周期前の線間電圧Vvwの基本波成分方向の単位ベクトルとの内積、及びVwu(t)と3分の1周期前の線間電圧Vwuの基本波成分方向の単位ベクトルとの内積についてそれぞれ上記計算対象である期間全域内での実効値を求め、得られる計3個の実効値の算術平均をとり、更に(√3)で除したものに相当する。なお、「3分の1周期前」とは、{t−(2T/3)}から時刻{t−(T/3)}までの3分の1周期分の期間を指す。
【0057】
値Vrmsを特定するための処理として、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuのそれぞれにつき、3分の1周期前の基本波成分方向の単位ベクトルとの内積の実効値を3分の1周期にわたって求めるようにすれば、制御部200は、当該内積の実効値を1周期にわたって求める場合より短い周期でゲート位相角θsetの最新の値を得ることができる。このため、負荷電圧の基本波成分をより迅速に一定へと収束させることが可能となり、誘導電動機Mの起動をより安定的に行うことが可能となる。
そして、第2の実施の形態の誘導電動機駆動装置によれば、第1の実施の形態の誘導電動機制御装置10により誘導電動機Mを起動した場合になお生じ得る弊害が抑制される。
【0058】
すなわち、第1の実施の形態の誘導電動機駆動装置10により誘導電動機Mを起動した場合、たとえば
図5あるいは
図6に示すように負荷電流が振動する場合がある(
図5に示す例では、起動時から1秒〜3秒程度経過した期間で負荷電流が振動している)。この振動は、Vrmsの値をVsetへと収束させるフィードバック制御が十分高速に行われていないことに起因するものである。このような振動の結果として、たとえばフィードバック制御が発散し、ないしは誘導電動機Mの起動に失敗する、などの異常が生じることもあり得る。また、このような振動は誘導電動機Mの軸トルクの振動に繋がり、これが、誘導電動機Mに接続されている機械系との間に軸ねじり共振を生じさせ、その結果として軸破断を起こすこともあり得る。
なお、
図6は、誘導電動機Mの回転速度の目標値が1500[min
−1]である場合の負荷電流、負荷電圧、負荷電圧の基本波成分、回転速度及びゲート位相角の推移を図示するものである。
図6に示す例では、起動時からの経過時間が3秒〜5秒程度の期間で負荷電流が振動している。
【0059】
これに対し、第2の実施の形態に係る誘導電動機駆動装置により誘導電動機Mを起動した場合の負荷電流、負荷電圧、負荷電圧の基本波成分、回転速度及びゲート位相角の推移は、たとえば
図7に示すようなものとなる。
図7から分かるように、負荷電圧の基本波成分の量は起動時よりほぼ一定となるのに加え、負荷電流は
図5に示すものに比べて振動が抑制されている。また、誘導電動機Mの回転速度は、起動から4秒程度で目標値に達している。また、目標値Vsetとして、第1の実施の形態においてVrmsの値を収束させることが可能な最低値より低い値を用いても、誘導電動機Mを正常に起動することができる。
【0060】
なお、交流電源VS及び誘導電動機Mの相の数がp(pは3より大きい整数)である場合も同様に、制御部200は、p相交流における各線間電圧の値のそれぞれにつきp分の1周期前の基本波成分方向の単位ベクトルとの内積の実効値を計p個求め、これらの実効値の算術平均をとることにより値Vrmsを特定すればよい。
【0061】
(第3の実施の形態)
また、制御部200は、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuの各値に基づいて、仮想の(3・2
n)相交流における各相電圧に相当する(3・2
n)個の値を生成し(ただしnはゼロを含む任意の自然数)、生成したこれらの値のそれぞれにつき、{1/(3・2
n)}周期にわたって上述の内積の実効値を計(3・2
n)個求め、これらの実効値の算術平均をとることにより値Vrmsを特定してもよい。
仮想の(3・2
k+1)相交流(kは0以上n−1以下の自然数)における各相電圧の値は、たとえば、(3・2
k)相交流における各相電圧の値に基づいて生成できる。また、三相交流における各線間電圧の値を用いて、当該三相交流における各相電圧の値を導くこともできる。
【0062】
具体的にはまず、極u、v及びwの各相電圧Vu、Vv及びVwと、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuとをいずれもベクトル表現した場合、Vu、Vv及びVwが互いに(2π/3)ラジアン位相を異にするとすれば、Vu、Vv及びVwの各値は、Vuv、Vvw及びVwuの各値を用いて表すことができる。一方、(3・2
k)相交流における各相電圧は、相電圧の値をベクトル表現するとすれば、基点がいずれも座標平面の原点にあって{2π/(3・2
k)}ラジアン間隔で放射状に配置される(3・2
k)個のベクトルとして表すことができる。たとえば、k=1とした場合、三相交流における各相電圧の値は、たとえば
図8に示すような、基点がいずれも座標平面の原点にあって(2π/3)ラジアン間隔で放射状に配置される3個のベクトルv1,v5及びv9として表すことができる。ベクトルv1,v5及びv9はそれぞれ、たとえば上述の相電圧Vw、Vv及びVuを表すものとみることができる。
そして、これら(3・2
k)個のベクトルにつき、座標平面上で隣り合う2個のベクトルの値同士を加算し、得られたベクトルをスカラー倍することで当該ベクトルを規格化する(すなわち、当該ベクトルの絶対値を、上述の加算に用いた各ベクトルの絶対値に等しくする)ことにより、これらのベクトルの中間に配置される(3・2
k)個のベクトルを生成することができる。このようにベクトルの値を生成することで、ベクトルの総数を計(3・2
k+1)個へと倍増させることができる。
【0063】
ベクトルを倍増させるこのような演算を、kの値を0からn−1まで1ずつ増加させつつ(n−1)回繰り返して行うことにより、制御部200は、三相交流における各相電圧の値から、仮想の(3・2
n)相交流における各相電圧に相当する(3・2
n)個の値を生成することができる。
そして制御部200は、生成したこれらの値のそれぞれにつき、{1/(3・2
n)}周期前の基本波成分方向の単位ベクトルとの内積の実効値を計(3・2
n)個求め、これらの実効値の算術平均をとることにより値Vrmsを特定すればよい。
【0064】
図8は、三相交流における各相電圧の値から、仮想の12相交流における各相電圧に相当するものとして12個のベクトルを生成した場合(すなわち、上述のnの値が2で、kの初期値が0である場合)における当該12個のベクトルを例示する図である。
相電圧Vw、Vv及びVuの各値を表すベクトルが
図8に示すベクトルv1,v5及びv9であるとすると、まず、ベクトルv1及びv5を用いてベクトルv3を、ベクトルv5及びv9を用いてベクトルv7を、ベクトルv9及びv1を用いてベクトルv11を、それぞれ生成することができる。
次いで、ベクトルv1及びv3を用いてベクトルv2を、ベクトルv3及びv5を用いてベクトルv4を、ベクトルv5及びv7を用いてベクトルv6を、ベクトルv7及びv9を用いてベクトルv8を、ベクトルv9及びv11を用いてベクトルv10を、ベクトルv11及びv1を用いてベクトルv12を、それぞれ生成することができる。
【0065】
このようにして生成されたベクトルv2〜v4、v6〜v8及びv10〜v12と、ベクトルv1,v5及びv9とからなる計12個のベクトルが、図示するような仮想の12相交流の12個の相電圧の値を表すことになる。
そして、図示するように、これら12個の相電圧の波形を、互いに共通する12分の1周期分の期間で切り出し、切り出された波形をつなぎ合わせると、1周期分の単相交流電圧に相当する波形を合成することができる。
以上から分かるように、制御部200は、三相交流における各線間電圧の値から、仮想の12相交流における各相電圧に相当する12個の値を生成することができ、生成したこれらの値のそれぞれにつき、12分の1周期にわたって上述の内積の実効値を計12個求め、これらの実効値の算術平均をとることにより、値Vrmsに相当する値を得ることができる。
【0066】
以上述べたように、値Vrmsを特定するための処理として、線間電圧Vuv、Vvw及びVwuの値に基づいて求められた(3・2
n)個の値のそれぞれにつき、上述の内積の実効値を{1/(3・2
n)}周期にわたって求めるようにすれば、制御部200は、当該内積の実効値を3分の1周期にわたって求める場合と比べても更に短い周期でゲート位相角θsetの最新の値を得ることができる。このため、負荷電圧の基本波成分をより迅速に一定へと収束させることが可能となり、誘導電動機Mの起動をより安定的に行うことが可能となる。
【0067】
なお、交流電源VS及び誘導電動機Mの相の数がp(pは3より大きい整数)である場合も同様に、制御部200は、p相交流における各線間電圧の値から、仮想の(p・2
n)相交流における各相電圧に相当する(p・2
n)個の値を生成し、生成したこれらの値のそれぞれにつき、{1/(p・2
n)}周期前の基本波成分方向の単位ベクトルとの内積の実効値を計(p・2
n)個求め、これらの実効値の算術平均をとることにより値Vrmsを特定すればよい。
【0068】
以上、本発明の第1〜第3の実施の形態を説明したが、本発明の実施の形態は上述のものに限られない。
たとえば、誘導電動機駆動装置10は、交流電流の量を検出可能な公知の電気回路からなる電流検出部を備えていてもよい。この場合、電流検出部は、たとえば誘導電動機Mに流れる負荷電流の量を継続的に検出し、検出した負荷電流の量を表す信号を生成して、制御部200へと継続的に供給すればよい。
一方、制御部200はたとえば、電流検出部が供給する信号をデジタル信号に変換するためのA/D(Analog-to-Digital)コンバータを備えていればよい。ただし、電流検出部が負荷電流の量を示す信号をデジタル形式で供給するものである場合、制御部200はこのA/Dコンバータを備えている必要はない。
そして、制御部200は、電流検出部が供給した信号が示す値を特定し、特定した値に基づいて、値Vsetを決定してもよい。決定の手法は任意であり、たとえば、負荷電流の量と値Vsetとの対応関係を指定するデータを含むテーブルを制御部200が記憶し、電流検出部が供給した信号が示す値を検索キーとしてこのテーブルを検索することにより決定してもよい。また、Vsetの値を負荷電流の関数として表す所定の数式を示すデータを記憶し、電流検出部が供給した信号が示す値をこのデータが示す数式に代入して得られる値を算出することにより決定してもよい。
【0069】
また、制御部200は、必ずしもθsetの値について比例積分制御を行う必要はなく、Vrmsの値をVsetへと収束させ得る任意のフィードバック制御を行えばよい。
【0070】
また、MERS100u,100v及び100wは、いずれも縦ハーフブリッジ型MERSより構成されていてもよい。
たとえばMERS100uが縦ハーフブリッジ型MERSから構成される場合、MERS100uは、たとえば
図9に示すように、2個の逆導通型半導体スイッチSW1及びSW2と、整流部D3及びD4と、コンデンサCM1及びCM2とから構成されている。
【0071】
逆導通型半導体スイッチSW1及びSW2はいずれも、
図2の逆導通型半導体スイッチSW1及びSW2と実質的に同一の構成を有する。
図9の構成において、逆導通型半導体スイッチSW1及びSW2をそれぞれ構成するスイッチ部S1及びS2の各ゲート(順に、G1u,G2u)は、いずれも制御部200に接続されている。
また、スイッチ部S1のドレインはコンデンサCM1の一端に接続されており、スイッチ部S1のソースはスイッチS2のドレインに接続されている。スイッチS2のソースはコンデンサCM2の一端に接続されている。コンデンサCM1及びCM2の他端同士は互いに接続されて交流出力端子AC2をなしている。
【0072】
整流部D3及びD4はいずれも、たとえばダイオード等の整流素子からなる。以下、整流部D3及びD4はいずれもダイオードからなるものとして説明すると、整流部D3のアノード及び整流部D4のカソードは交流出力端子AC2に接続され、整流部D3のカソードはコンデンサCM1の上述の一端に接続され、整流部D4のアノードはコンデンサCM2の上述の一端に接続されている。
【0073】
MERS100uが
図9に示す構成をとるとき、制御部200は、(i’)まず逆導通型半導体スイッチSW2がONしてSW1がOFFする動作と、(ii’)交流電源VSの極Uの相電圧が負に転じてから逆導通型半導体スイッチSW2がOFFしてSW1がONする動作と、を併せて1サイクルとして、このサイクルを極Uの相電圧の周期と実質的に等しい周期でMERS100uに繰り返し行わせればよい。
【0074】
図9のMERS100uにおいては、逆導通型半導体スイッチSW1がONしてSW2がOFFすることにより、コンデンサCM1が極Uに電気的に接続される。この結果、交流電源VSとコンデンサCM1とは直列回路を形成することになり、極uには、基準電位に対する極Uの相電圧と、コンデンサCM1の両端間の電圧との和に相当する電圧が印加される。
一方、逆導通型半導体スイッチSW1がOFFしてSW2がONすることにより、コンデンサCM2が極Uに電気的に接続される。この結果、交流電源VSとコンデンサCM2とが直列回路を形成することになり、極uには、基準電位に対する極Uの相電圧と、コンデンサCM2の両端間の電圧との和に相当する電圧が印加される。
【0075】
また、MERS100u,100v及び100wは、いずれも横ハーフブリッジ型MERSより構成されていてもよい。
たとえばMERS100uが横ハーフブリッジ型MERSから構成される場合、MERS100uは、たとえば
図10に示すように、2個の逆導通型半導体スイッチSW2及びSW4と、コンデンサCM1及びCM2とから構成されている。
【0076】
逆導通型半導体スイッチSW2及びSW4はいずれも、
図9の逆導通型半導体スイッチSW2及びSW4と実質的に同一の構成を有する。
図10の構成においても、
図9の構成と同様、逆導通型半導体スイッチSW1及びSW2をそれぞれ構成するスイッチ部S2及びS4の各ゲート(順に、G2u,G4u)はいずれも制御部200に接続されている。
一方、
図10の構成では、スイッチ部S2のドレインはコンデンサCM1の一端に接続されて交流入力端子AC1をなしており、スイッチ部S2のソースはスイッチS4のソースに接続されている。スイッチS4のドレインはコンデンサCM2の一端に接続されて交流出力端子AC2をなしている。コンデンサCM1及びCM2の各他端は、いずれもスイッチ部S2及びS4のソース同士の接続点に接続されている。
【0077】
MERS100uが
図10に示す構成をとるとき、制御部200は、(i’’)まず逆導通型半導体スイッチSW2がONしてSW4がOFFする動作と、(ii’’)交流電源VSの極Uの相電圧が負に転じてから逆導通型半導体スイッチSW2がOFFしてSW4がONする動作と、を併せて1サイクルとして、このサイクルを極Uの相電圧の周期と実質的に等しい周期でMERS100uに繰り返し行わせればよい。
【0078】
また、MERS100u,100v及び100wは、いずれもワンコンデンサ横ハーフブリッジ型MERSより構成されていてもよい。
たとえばMERS100uがワンコンデンサ横ハーフブリッジ型MERSから構成される場合、MERS100uは、たとえば
図11に示すように、2個の逆導通型半導体スイッチSW2及びSW4と、コンデンサCMとから構成されている。
【0079】
逆導通型半導体スイッチSW2及びSW4はいずれも、
図9の逆導通型半導体スイッチSW2及びSW4と実質的に同一の構成を有する。
図11の構成においても、逆導通型半導体スイッチSW2及びSW4をそれぞれ構成するスイッチ部S2及びS4の各ゲート(順に、G2u,G4u)はいずれも制御部200に接続されている。
一方、
図11の構成では、スイッチ部S2のドレインはコンデンサCMの一端に接続されて交流入力端子AC1をなしており、スイッチ部S2のソースはスイッチS2のソースに接続されている。スイッチS4のドレインはコンデンサCMの他端に接続されて交流出力端子AC2をなしている。
【0080】
MERS100uが
図11に示す構成をとるときも、制御部200は、
図10の構成におけると同様、まず逆導通型半導体スイッチSW2がONしてSW4がOFFする動作と、交流電源VSの極Uの相電圧が負に転じてから逆導通型半導体スイッチSW2がOFFしてSW4がONする動作と、を併せて1サイクルとして、このサイクルを極Uの相電圧の周期と実質的に等しい周期でMERS100uに繰り返し行わせればよい。
【0081】
また、MERS100u,100v及び100wは、いずれも、たとえば
図12に示すように、双方向サイリスタであるサイリスタZと、コンデンサCMとより構成されていてもよい。
図12の構成では、サイリスタZの電流路の一端をなす第1の主電極は交流入力端子AC1をなし、当該電流路の他端をなす第2の主電極は交流出力端子AC2をなす。サイリスタZのゲートは制御部200に接続されており、コンデンサCMはサイリスタZの電流路に並列に接続されている。
【0082】
また、上記各実施の形態における制御部200は、コンパレータ、フリップフロップ、タイマ等からなる専用の電子回路から構成されていてもよい。
【0083】
一方、上記各実施の形態における制御部200の構成は、通常のコンピュータシステムを用いても実現することができる。
例えば、制御部200が行う上述の処理を実行させるためのプログラムを、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)あるいはその他のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、このプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の制御部200を構成することができる。
【0084】
また、プログラムをインターネット等の通信ネットワーク上の所定のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロード等するようにしてもよい。更に、通信ネットワークを介してプログラムを転送しながら起動実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
また、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等してもよい。