(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記近位の展開可能な部材及び前記遠位の展開可能な部材は、それぞれ、前記収縮状態において、ほぼまっすぐな形状を有しており、前記フック部材は前記近位の展開可能な部材の近位側へ伸長している、ことを特徴とする請求項1に記載の鋲留め器具。
該鋲留め器具を送達するようになされた挿入器具であって、中空ルーメンを有しており、前記近位の展開可能な部材及び前記遠位の展開可能な部材が収縮状態にある送達中に該鋲留め器具が前記中空ルーメン内に配置される、挿入器具と、
近位端及び遠位端を有し且つ前記挿入器具の前記中空ルーメン内で長手方向に移動できるように設けら、該鋲留め器具の送達中に該鋲留め器具の近位側に配置されるスタイレットと、
前記スタイレットの前記遠位端から伸長しているループ部材と、を更に備えており、
前記ループ部材は、前記近位の展開可能な部材が前記収縮状態にあるときに前記フック部材と連結する構造とされており、更に、前記近位の展開可能な部材が前記拡張状態にあるときに前記フック部材から分離される構造とされている、ことを特徴とする請求項1に記載の鋲留め器具。
前記フック部材が、前記近位の展開可能な部材のうちの少なくとも1つの端部領域から伸長して先端で終端する湾曲部分を有し、該湾曲部分は、前記端部領域と前記先端との間で約180度〜約270度の角度に亘って延びている、ことを特徴とする請求項1に記載の鋲留め器具。
前記近位の展開可能な部材及び前記遠位の展開可能な部材が、前記拡張状態においてフック状の凹状形状へと自己拡張するようになされたニッケル−チタン合金からなる、請求項1に記載の鋲留め器具。
前記遠位の展開可能な部材が予備位置において少なくとも部分的に拡張された後に、前記スタイレットを近位へ後退させることによって前記ループ部材に連結されている前記フック部材を介して前記遠位の展開可能な部材を近位へ後退させて、それによって前記遠位の展開可能な部材の前記挿入器具の前記中空ルーメン内への収縮が可能になって最終的な位置への再位置決めが可能になるようになされた、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
前記遠位の展開可能な部材が予備位置において少なくとも部分的に拡張された後に、前記スタイレットが静止状態に保持され且つ前記ループ部材と前記フック部材とが相互に係合している状態で、前記挿入器具を前記鋲留め器具に対して遠位方向へと進めることによって、前記遠位の展開可能な部材が前記挿入器具の前記中空ルーメン内で収縮して最終位置への再位置決めが可能になるようになされた、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
前記近位の展開可能な部材及び前記遠位の展開可能な部材が、それぞれ、前記拡張状態において前記本体に対してほぼ凹状であるフック形状の構造を有しており、前記フック部材は、前記近位及び遠位の展開可能な部材が前記拡張状態にあるときに、前記本体に対して凸状の湾曲を有している、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
前記近位の展開可能な部材及び前記遠位の展開可能な部材が、前記拡張状態において前記フック形状の凹状の構造へと自己拡張するようになされたニッケル−チタン合金からなる、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
前記フック部材が、前記近位の展開可能な部材のうちの少なくとも1つの端部領域から伸長して先端で終端する湾曲部分を有し、該湾曲部分は、前記端部領域と前記先端との間で約180度〜約270度の角度の範囲に亘って延びている、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願において、“近位”という用語は、医療処置中において医師に概ね近づく方法を指しており、一方、“遠位”という用語は、医療処置中における患者の解剖学的構造の目標部位に概ね近づく方向を指している。
【0015】
図1を参照すると、鋲留め器具20の第一の実施例が示されている。この実施例においては、鋲留め器具20は、近位端24と遠位端26とを有している少なくとも1つの管状部材22を備えている。鋲留め器具20は更に、近位の展開機構32と遠位の展開機構42とを備えている。
図1の実施例においては、近位の展開機構32は3つの近位の展開可能な部材35〜37からなり、一方、遠位の展開機構42は3つの遠位の展開可能な部材45〜47からなる。
図1に示されているように、近位の展開可能な部材35〜37は管状部材22の近位端24から近位方向へ伸長しており、遠位の展開可能な部材45〜47は管状部材22の遠位端26から遠位方向へ伸長している。
図1の実施例においては、該器具は対称であるので、以下に説明するように、最初にどちらの端部を挿入器具内へ装填しても良い。
【0016】
近位の展開可能な部材35〜37と遠位の展開可能な部材45〜47とは、各々、管状部材22に対して固定されている。一つの実施例においては、近位の展開可能な部材35〜37及び遠位の展開可能な部材45〜47は別々の或いは別個の部材である。従って、6個の別々の展開可能な部材が提供されている。特に、3つの近位の展開可能な部材35〜37は管状部材22の近位端24の近くで管状部材22に結合されている。3つの近位の展開可能な部材35〜37は、管状部材22の近位端24に、接着剤、摩擦嵌合、機械的器具、又はその他の適当な機構若しくは方法を使用して結合される。同様に、3つの遠位の展開可能な部材45〜47は、管状部材22の遠位端26に、接着剤、摩擦嵌合、機械的器具、又はその他の適当な機構若しくは方法を使用して結合される。
【0017】
別の実施例においては、6個の別個の展開可能な部材を提供する代わりに3つのワイヤーが管状部材22内に設けられている。この実施例においては、第1のワイヤーは、展開可能な部材35を形成している近位端と、遠位の展開可能な部材45を形成している遠位端とを備えており、一方、同じワイヤーの中心部分は、管状部材22内に配置されている。同様に、第二及び第三のワイヤーは、管状部材22内に配置されていて残りの近位及び遠位の展開可能な部材を形成している。この実施例においては、管状部材22の全長内を伸長している3つのワイヤーが、管状部材22の内面に、例えば接着剤又は機械的器具を使用して固定される。これらの3つのワイヤーはまた、相互の摩擦嵌合や管状部材22の内面に対する摩擦嵌合を形成して、近位の展開可能な部材35〜37及び遠位の展開可能な部材45〜47が管状部材22に関して長手方向に動くのを防止している。
【0018】
鋲留め器具20の近位端と遠位端との両方に3個ずつ合計で6個の展開可能な部材35〜37及び45〜47が図示されているけれども、更に多いか少ない展開可能な部材を使用しても良いことは明らかである。更に、展開可能な部材35〜37及び45〜47は、以下において更に説明する目的のために、組織に対する係合、貫通及び/又は当接に適したあらゆる形状を有していても良く、必ずしも
図1〜2に示されている拡張形状を呈する必要はない。
【0019】
管状部材22は、あらゆる適切な形状及び材料によって形成することができる。単なる例示として、管状部材22は、ステンレス鋼又は生体適合性プラスチックによって構成することができる。管状部材22は、
図1に示されている円筒形状とすることができ、この形状は挿入器具50の管腔内への挿入を容易にする。更に、管状部材22は、1つの中空の管、又は代替的には例えば
図10〜11の実施例に関して以下に示し且つ説明するように、長穴、穴、切り吹き領域を含む1つ又は複数の管としても良い。
【0020】
別の方法として、以下において
図10に関して更に説明するように、第一のワイヤー125が近位の展開可能な部材135及び遠位の展開可能な部材145を一体に形成しており、第二のワイヤー126が近位の展開可能な部材136と遠位の展開可能な部材146とを一体に形成しており、第三のワイヤーが、近位の展開可能な部材137と遠位の展開可能な部材147とを一体に形成している場合には、管状部材22の全体を省略しても良い。後者の実施例においては、第一、第二、及び第三のワイヤー125〜127の中心部分は、例えば、ハンダ付け又は溶着を使用して相互に固着して部品の構造的剛性が維持される。
【0021】
同じく
図1〜3を参照すると、近位の展開可能な部材35〜37と遠位の展開可能な部材45〜47とは、各々、
図3に示されている収縮した送達形状を有しており、更に、
図1に示されている拡張した展開形状を有している。一つの実施例においては、展開可能な部材35〜37及び45〜47の各々は、前記の拡張した状態においてはフック形状の構造を有している。例えば、展開可能な部材35〜37及び45〜47は、
図1〜2に示されているように、前記の拡張状態においては約90度〜約360度に亘る湾曲を有しており、好ましくは約180度の湾曲を有している。展開可能な部材35〜37及び45〜47が“反り返っており”且つ180度の湾曲を有している場合には、近位及び遠位の展開可能な部材の端部領域39及び49は、管状部材22に対してほぼ平行に向く。更に、端部領域39及び49は、
図1に示されている拡張状態においては相対的に径方向に隔置されている。この構造においては、端部領域39及び49は、組織又は移植片部材に対する係合、穿刺、及び/又は当接に好適である。
【0022】
更に、鋲留め器具20の端部領域39と49との間の長手方向の距離L
1は、所望の方法で組織と係合するように変更することができる。例えば、長手方向の距離L
1は、
図8に示されているように、各々、組織74の厚みt
1と移植片部材80の厚みt
2とを合わせた厚みにほぼ等しいかそれ以上の寸法にして、組織74と移植片部材80とに所望の圧縮力を付与するようにすることができる。
【0023】
鋲留め器具20の寸法は、特別な外科処置や、特別な患者の解剖学的構造、その他の要因に合わせられる。しかしながら、例示的に、腹壁ヘルニア修復手術においては、管状部材22の長手方向の長さは、約2mm〜約10mmの範囲とされ、近位の展開可能な部材35〜37の真直ぐに伸ばされた(送達又は非湾曲状態の)長さは約5mm〜約50mmの範囲とされ、遠位の展開可能な部材45〜47の真直ぐに伸ばされた(送達又は非湾曲状態の)長さも約5mm〜約50mmの範囲とされ、端部領域39と49との間の長手方向の距離L
1は約5mm〜約30mmの範囲とされ、管状部材22の外径は約0.3mm〜約1.5mmの範囲とすることができ、展開可能な部材35〜37及び45〜47の外径は約0.1mm〜約0.5mmの範囲内とされる。このような寸法は参照のために提供しただけであり、限定することは意図されていない。
【0024】
展開可能な部材35〜37及び45〜47は、ニッケル−チタン合金(ニチノ―ル)のような形状記憶材料によって構成することができる。ニチノ―ルのような形状記憶材料が使用される場合には、展開可能な部材35〜37及び45〜47は、ある種の冷却媒体又は加熱媒体を適用されると
図1に示されている予め設定された拡張状態を呈することができるように製造される。更に特定すると、形状記憶材料は、以前の形状又は構造を“思い出して”以前の形状又は構造に戻るのを可能にするほぼ可逆的な相変態を受ける。例えば、ニチノ―ルの場合には、オーステナイト相とマルテンサイト相との間の変態は、冷却や加熱(形状記憶作用)又は一定温度下での応力の負荷や除去(超弾性作用)によって生じる。オーステナイトは比較的強い相であり、マルテンサイトは比較的容易に変形可能な相であることが特徴的である。
【0025】
形状記憶作用の一つの例においては、初期形態がオーステナイト相にあるニッケル−チタン合金は変態温度(M
f)より低い温度まで冷却されてマルテンサイトとなり、次いで、第二の形態へ変形する。別の変態温度(A
f)まで加熱されると、該材料は、自発的にに
図1に示されているその初期の形態へ戻る。一般的に、記憶作用は一方向性である。一方向性とは、一つの形態からの別の形態への自発的な変化が加熱されたときにのみ生じることを意味している。しかしながら、二方向性形状記憶作用、すなわち、形状記憶材料が冷却された場合だけでなく加熱された場合にも自発的に形状を変える作用を得ることができる。
【0026】
別の方法として、展開可能な部材35〜37及び45〜47は、他の金属及び合金であって、展開前は挿入器具50によって保持されているが、展開されると弛緩した拡張形態へ戻る傾向があるように付勢された他の金属や合金によって作ることができる。単なる例示として、展開可能な部材35〜37及び45〜47は、ステンレス鋼、コバルト−クロム合金、アモルファス金属、タンタル、プラチナ、金、及びチタンのような他の材料によって構成しても良い。展開可能な部材35〜37及び45〜47はまた、熱可塑性樹脂やその他の重合体のような非金属材料によって作ることもできる。上記したように、展開可能な部材35〜37及び45〜47は、以下に更に説明する目的で、組織に係合し、貫通し、及び/又は当接するのに適した形状を有することができ、必ずしも
図1〜2に示されている湾曲形状を呈する必要はない。
【0027】
図2〜3を参照すると、1以上の鋲留め器具20は、挿入器具50を使用して患者の解剖学的構造内の目標部位へ送り込まれる。一つの実施例においては、挿入器具50は、
図9に示され且つ以下に説明する例えば6個の鋲留め器具20a〜20fのような多くの異なる鋲留め器具を坦持することができる。
図3には、1つの完全な鋲留め器具20aが収縮状態で示されており、一方、別の鋲留め器具20bの遠位の展開機構42b及び別の鋲留め器具20fの近位の展開機構32fも示されている。
【0028】
一つの実施例においては、挿入器具50は、
図2〜3に示されているように、尖った遠位端52と中空ルーメン54とを備えた針状本体を含んでいる。挿入器具50は、ステンレス鋼又は何らかの他の適切な材料によって製造することができ且つ内視鏡超音波検査用(EUS)すなわちエコー源性の針を含んでいる。単なる例示として、挿入器具50は、EchoTip(登録商標)Ultrasound Needle又はEchoTip(登録商標)Ultra Endoscopic Ultrasound Needleからなり、これらは共にCook Endoscopy of Winston-Salem, N.C.によって製造されたものである。
【0029】
挿入器具50の中空ルーメン54は、鋲留め器具20の外径より大きい内径を有している。従って、
図3に示されているように、送達形態では、例えば6個の鋲留め器具20a〜20fのような1以上の鋲留め器具が中空ルーメン54内に装填される。送達形態においては、各鋲留め器具20a〜20fの近位及び遠位の展開可能な部材35〜37及び45〜47は、ほぼ長手方向に配向された即ち挿入器具50の長手軸線に沿って配向された外形を有している。
【0030】
多数の鋲留め器具20a〜20fは、連続形態で挿入器具50の中空ルーメン54内に挿入され、その結果、
図3に示されているように、第一の鋲留め器具20aの近位の展開機構32aは第二の鋲留め器具20bの遠位の展開機構42bに当接する。第一の鋲留め器具20aの遠位の展開機構42aは、不意の展開を防止するために、挿入器具50の尖った遠位先端52からある距離だけ離れた位置に装填される。
【0031】
図3に示されているように、スタイレット60は、挿入器具50の中空ルーメン52内で長手方向に移動できるように配置されている。スタイレット60は、ステンレス鋼又はその他のあらゆる適切な材料によって作られる。
図3に示されているように、スタイレット60は、最後尾の連続している鋲留め器具20fの近位の展開機構32fの近位側に設けられる。使用時には、挿入器具50は近位側へと後退され、一方、スタイレット60は、長手方向において固定されて保持されていて、以下に説明するように鋲留め器具20a〜20fの各々の連続的な展開を補助する。
【0032】
挿入器具50は、
図2〜3に示されているように、1以上のマーカー56を備えており、これらのマーカーは、挿入器具50の遠位端の近くに配置されている。マーカー56は、
図7〜8に示されているように、挿入器具の遠位端の配置を補助して医師が挿入器具50を組織74内へどの程度まで貫入させたかを判断できるように、他の撮像技術によるX線透視法によって視覚化できる構造とされている。任意ではあるが、以下において更に説明する種々の目的のために、
図2に示されているように、内径が挿入器具50の外径よりも大きいシース部材58が挿入器具50の外周に沿って長手方向に進められる。以下において更に説明するように、挿入器具50は、例えば内視鏡のような別の器具と組み合わせて使用し且つ内視鏡又はこれと似た器具の作動管腔内を送り込むことができる。
【0033】
図4〜9を参照すると、上記した1以上の鋲留め器具20は、移植片部材80を使用した穿孔75の治療を補助するために使用することができる。図示されている例においては、穿孔75は腹壁74にできている腹壁ヘルニアである。患者70の右脚72と左脚73とが図示目的で示されている。例示目的で腹壁ヘルニアの治療方法が示されているけれども、ここに記載されている鋲留め器具は、限定的ではないがここに記載されている例示的な処置を含む広範囲の医療処置において使用することができることは明らかである。
【0034】
腹壁ヘルニアの修復の初期段階は公知の技術を使用して行なわれる。特に、開腹技術又は腹腔鏡技術を採用することができる。開腹技術においては、腹壁の切開が行われ、切開した部分から膨れた傷跡組識が除去される。次いで、
図5に示されているように、移植片部材80が、好ましくは、各方向において数ミリメートル又は数センチメートルだけ穿孔75に重なるように適用される。腹腔鏡技術においてはヘルニア部位にアクセスするために2〜3の比較的小さな切開がなされる。腹腔鏡が1つの切開部に挿入され、外科器具が他方の切開部内に挿入されて組織が除去され、開腹処置と同じ位置に移植片部材80が配置される。
【0035】
移植片部材80は、穿孔75を覆い且つ腹内物質が飛び出すのを実質的に又は完全に防止できるどのような適当な材料によっても作ることができる。一つの実施例においては、移植片部材80は、インジアナ州ウエストラファイエットにあるCook Biotech, Inc.から市販されているSURGISIS BIODESIGN(登録商標)Soft Tissue Graftのような小腸粘膜下組織(SIS)からなり、これは、宿主組織細胞及び血管によってコロニー形成されるその三次元細胞外マトリクス(ECM)によって、きちんとした組織の再構築を提供し且つ結合及び上皮組織の成長のための骨組み及びECM構成要素に沿った分化を提供する。移植片部材80は、幾らかの数の組織培養物によって作られた1〜4個の層からなる凍結乾燥軟組織移植片である。再生された又は天然由来のコラーゲン物質を使用することができ、少なくとも生体再吸収性であるこのような物質は利点を提供し、生体再生可能であり且つ細胞内進入及び内部成長を促進する物質は特別な利点を提供する。適切な生体再生物質は、生体親和性を有し且つある種の形態の血管形成コラーゲン性細胞外マトリックス物質を含むコラーゲン性ECMによって提供される。例えば、適切なコラーゲン性物質としては、粘膜下組織のようなECM、腎被膜、真皮コラーゲン、硬膜、心膜、大腿筋膜、漿膜、又は肝臓基底膜を含む腹膜又は基底膜層がある。これらの目的のための適切な粘膜下組織物質としては、例えば、小腸粘膜下組織、胃粘膜下組織、膀胱粘膜下組織、及び子宮粘膜下組織を含む腸粘膜下組織がある。移植片部材80はまた、生体材料と生分解性重合体との複合物をも含んでいても良い。更なる詳細は、Cookらに付与された米国特許第6,206,931号に見ることができる。該米国特許の開示内容は、これに言及することによりその全体が参考として本明細書に組み込まれている。
【0036】
図6〜7を参照すると、移植片部材80が穿孔75を覆うように配置された後に、挿入器具50が、遠位方向へ進められて移植片部材80を貫通し、更に、穿孔75の周囲の第一の位置で少なくとも部分的に組織74内へ穿刺している。この例においては、挿入器具50は6個の連続している鋲留め器具20a〜20fを坦持しており、これらの鋲留め器具は、図示され且つ
図3に関して先に説明したように、挿入器具50の中空ルーメン54内に配置されている。鋲留め器具20a〜20fの各々が収縮した送達状態にある状態では、挿入器具50の尖った先端52は、組織74内の所定の深さまで進められる。
図2〜3のマ−カ−56は、
図7に示されているように、挿入器具50が組織74内へどの程度まで深く貫入しているのかを判断する補助となる。
【0037】
次のステップにおいて、挿入器具50が近位方向へ後退される間、
図3のスタイレット60は挿入器具50に関して静止状態に保持される。このことによって、
図7に示されているように、最も遠位の鋲留め器具20aの遠位の展開可能な部材45〜47は、挿入器具50の尖った先端52まで遠位方向に伸長することとなる。遠位の展開可能な部材45〜47がもはや挿入器具50によって径方向に拘束されなくなると、これらの部材は所定の拡張形態を呈し、この状態で、組織74に係合し、組織を貫通し、及び/又は組織に当接する。挿入器具50が鋲留め器具20aに対して更に近位方向に後退されると、近位の展開可能な部材35〜37が、
図7に示されているように、もはや径方向に拘束されなくなって所定の拡張形態を呈する。この拡張形態において、近位の展開可能な部材35〜37は、移植片部材80と係合し、貫通し、且つ/又は当接し、任意に組織74内へ貫入する。このようにして、鋲留め器具20aは移植片部材80を組織74に固定する補助となる。特に、近位の展開可能な部材35〜37のほぼ180度のフック形状により、移植片部材80が組織74に向けて遠位方向に付勢される。
【0038】
第一の鋲留め器具20aが配備された後に、挿入器具50は、別の鋲留め器具を穿孔75の周りに配備するために再度位置決めされる。後続の鋲留め器具20b〜20fの各々は、鋲留め器具20aと同じ方法で配備される。このようにして、鋲留め器具20a〜20fは、
図9に示されているように、移植片部材80を穿孔75の周りに固定する。更に多くの又は更に少ない鋲留め器具を使用しても良いことは明らかであり、鋲留め器具の配置は、穿孔75を実質的に密閉するために組織74に対する移植片部材80の固定を最適化するように変更することができる。
【0039】
任意であるが、例えば、挿入器具50が再度位置決めされている間に挿入器具50の尖った遠位端52を保護する必要がある場合に、
図2のシース部材58が挿入器具50の外周に沿って長手方向に進められる。更に、シース部材58は、近位の展開可能な部材35〜37の配備を補助するために、挿入器具50の外周に沿って遠位方向へ進められる。例えば、シース部材58が移植片部材80に対して周期的に押し付けられて移植片部材80及び/又は組織74を一時的に遠位方向に付勢する。このとき、挿入器具50が近位方向に後退されて近位の展開可能な部材35〜37を圧縮された組織74及び移植片部材80の近位側の位置に配備させる間、シース部材58は不動状態に保持される。近位の展開可能な部材35〜37がひとたび配備されると、シース部材58によってかけられていた圧縮力が除去され、その結果、移植片部材80と組織74とは展開された近位の展開可能な部材35〜37と係合する。
【0040】
図4〜9の実施例においては、組織74の厚みは例示的にt
1であり、移植片部材80の厚みはt
2である。遠位の展開可能な部材45〜47は、
図8に示されているように全体が組織74内に配置されても良く、別の方法として、組織74の遠位の端縁に当接するか貫入した状態で組織74の遠位側に配備されても良い。後者の実施例においては、鋲留め器具20の端部領域39と49との間の長手方向の距離L
1は、組織74と移植片部材80との合計の厚みt
1+t
2にほぼ等しいか又はこれより若干小さい寸法にされる。この長手方向の距離L
1は、移植片部材80と組織74とに所望の力をかけるために、所望に応じて別の長さ及び形状としても良い。
【0041】
図4〜9は、腹部の腹壁に形成されている穿孔75を覆うために1以上の鋲留め器具20を使用する方法を示しているけれども、ここに開示されている鋲留め器具は多くの他の処置においても有用である。単なる例示として、例えば胃壁のような内臓の壁の穿孔を治療するために1以上の鋲留め器具20を使用することができる。このような場合には、内視鏡のような適当な挿入器具が消化管のような体内管腔内を目標位置の近くの位置まで進められる。1以上の構成要素を内視鏡の作動管腔内を進入させることができる。穿孔を閉じるためには、移植片部材80が穿孔を覆い且つ1以上の鋲留め器具20を使用して穿孔に重なる位置に固定される。鋲留め器具20は上記した方法で配備される。
【0042】
図10を参照すると、別の実施例において、鋲留め器具120は、縫合好ましくは巾着型縫合を補助する1以上の構造を有している。鋲留め器具120は、以下に述べる点を除いて
図1の鋲留め器具20と同様である。鋲留め器具120は、各々、近位及び遠位の展開可能な部材135〜137及び145〜147を備えている。この実施例においては、
図10に示されているように、鋲留め器具120は、近位の管部分122と遠位の管部分123とを備えており、該近位の管部分と遠位の管部分との間に穴、長穴、又は切り欠きを有している。
図10に示されているように、第一、第二及び第三のワイヤー125〜127が近位及び遠位の管部分122及び123の全体に亘って設けられている。
【0043】
第一のワイヤー125は、展開可能な部材135を形成している近位端と、展開可能な部材145を形成している遠位端とを有していて、第一のワイヤー125の中央部分が管状部分122及び123の両方を貫通して配置されている。同様に、第二のワイヤー126及び第三のワイヤー127も、管状部分122及び123の全体を貫通して配置されている。第二のワイヤー126は展開可能な部材136を形成している近位端と、展開可能な部材146を形成している遠位端とを有しており、一方、第三のワイヤー127は、展開可能な部材137を形成している近位端と、展開可能な部材147を形成している遠位端とを有している。3本のワイヤー125〜127は、例えば、接着剤、摩擦嵌合、又は機械的器具を使用して管部分122及び123の内面に固定されている。別の方法として管部分122及び123は省略しても良く、第一、第二及び第三のワイヤー125〜127の中央部分を例えばハンダ付け又は溶着を使用して相互に固定しても良い。
【0044】
図示されている実施例においては、第二のワイヤー126はループ部材150を備えており、該ループ部材は、
図10に示されているように、管部分122と123との間に設けられているワイヤーの中央部分を曲げることによって形成することができる。第二のワイヤー126は、穴152を有する弓状のループ部材150を形成するように曲げられている。例えば
図11に示されているように、ループ150の穴152内に縫合糸160が通される。
【0045】
別の実施例においては、近位及び遠位の管部分122及び123の代わりに、一つの単一の管部材が採用され、該単一の管部材は長穴又は切り欠きを有していてループ部材150が該長穴又は切り欠き内を通って径方向に伸長している。近位の管部分122と遠位の管部分123とを結合している単一のストリップ材もまた設けられている。更に、ループ部材150は、ワイヤー125〜127のうちのいずれかと一体に形成される必要はなく、むしろ、近位の管部分122と遠位の管部分123との外面上に設けられるループとして形成されるか、又は一つの管のみが使用されている場合には単一の管部材の外面に設けられる。更に、ループ部材150は、ほぼ中央部分に位置しているものとして示されているけれども、鋲留め器具120の近位端又は遠位端の更に近くに配置されても良い。
【0046】
図11を参照すると、鋲留め器具120を使用する例示的な方法が示されている。一つのステップにおいて、移植片部材80が穿孔75を覆うように配置され、多数の鋲留め器具120が、
図4〜9に関して先に詳細に説明したように、挿入器具を使用して配備されて移植片部材80を組織74に固定している。
図11の実施例においては、多数の鋲留め器具120は、
図11に概略的に示されているように、鋲留め器具120の各々のループ部材150を介して摺動可能に結合される単一の縫合糸160によって相互に連結されている。縫合糸160の2つの自由端161及び162が設けられており、これらは、穿孔75の閉塞を補助するために互いに独立して引っ張られる。
【0047】
ループ部材150を備えている多数の鋲留め器具120は、例えば
図9に示されているように、穿孔75の周りに半環状又は環状に連続させて配置するのが好ましい。次いで、縫合糸160の端部161及び162が引っ張られて鋲留め器具間の距離が縮められ、穿孔75の周りの組織74が引き締められる。縫合糸の端部161及び162は、例えば、結び目を形成するか、又はクランプ、リベット等を使用することによる適当な技術を使用して組織74を引き締められた状態に維持するように固定される。
【0048】
更に、ここで記載したループ部材150の代わりに、縫合糸と係合したり縫合糸を保持したりする他の機構を鋲留め器具120と一体に形成されるか又は外付けされても良い。単なる例示として、このような縫合保持機構は、2007年11月28日に出願された米国特許出願第11/946,565号に説明されている。該米国特許出願の全開示内容は、これに言及することにより参考として本明細書に組み入れられている。
【0049】
図10〜11の実施例と組み合わせて種々のタイプの縫合糸160を使用することができる。例えば、合成縫合糸は、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアミド、ポリエチレン、及び、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルによって作られる。これらの材料は、モノフィラメント縫合糸ストラッド、又は編み上げた構造、撚られた構造、又はその他のマルチフィラメント構造のマルチフィラメント縫合糸ストランドとして使用される。
【0050】
図12〜13を参照すると、別の実施例において、鋲留め器具220は、鋲留め器具が少なくとも部分的に展開された後の“再捕捉”又は再位置決めを補助する1以上の構造を備えている。鋲留め器具220は、以下に記載する主要な点を除いて
図1の鋲留め20と同様である。鋲留め器具220は、近位端224と遠位端226とを有している本体222を備えている。近位の展開可能な部材235〜237は本体222の近位端224から近位方向に伸長しており、一方、遠位の展開可能な部材245〜247は、本体222の遠位端226から遠位方向に伸長している。近位の展開可能な部材235〜237と遠位の展開可能な部材245〜247とは、各々端部領域239及び249を備えている。
【0051】
図12〜13の実施例においては、フック部材250が、近位の展開可能な部材235〜237のうちの少なくとも1つから伸長しており、鋲留め器具220の再位置決めを補助するために使用されている。特に、遠位の展開可能な部材245〜247が予備位置で少なくとも部分的に拡張された後に、遠位の展開可能な部材245〜247は、以下に更に詳細に説明するように、異なる最終的な位置での再位置決めを可能にするために、収縮されて挿入器具内へ入れられる。
【0052】
この実施例においては、1つのフック部材250が、近位の展開可能な部材237の端部領域239から伸長している。フック部材250は、近位の展開可能な部材237と一体に、すなわち、端部領域239と一体の伸長部として形成されている。別の方法として、フック部材250は、近位の展開可能な部材235〜237がそれらの所定の拡張形状へと展開するように熱的に硬化した後に、例えばハンダ付け又は溶着を使用して近位の展開可能な部材237の端部領域239に結合されても良い。フック部材250は、熱処理されず、従って、近位及び遠位の展開可能な部材が、各々、
図12〜13に示されている拡張状態にあるか又は収縮状態にあるか否かに拘わらずほぼ一定の形状を維持するのが好ましい。
【0053】
一つの実施例においては、フック部材250は、近位の展開可能な部材235〜237が拡張状態にあるときに、本体222に対してほぼ凸状の湾曲を有している。しかしながら、別の代替的な実施例においては、フック部材250は、近位の展開可能な部材235〜237が拡張状態にあるとき、すなわち、フック部材250と近位の展開可能な部材235〜237とが両方とも同じ方向に湾曲しているときに、本体222に対してほぼ凹状の湾曲を有していても良い。
【0054】
湾曲部252は、近位の展開可能な部材235〜237と比較すると小さい曲率半径を有している。一つの実施例においては、フック部材250の湾曲部252の曲率半径は、近位の展開可能な部材235〜237の曲率半径の約2〜15倍小さく、従って、フック部材250ははなり小さな外形を有している。
【0055】
フック部材250の湾曲部分252は、端部領域239から先端259までに亘って弧状に伸長していて内側に開口部分256を形成している。湾曲部分252の弧は、約60〜330度の範囲更に好ましくは
図12〜13に示されているように180〜270度の範囲に亘っている。この弧は、約60度を超える範囲に亘っていて、
図13に示されているようにループ部材262が挿入器具50内に配置されているときにループ部材262がこの弧に結合されたままであるようになされている。更に、この弧は、
図18に関して更に説明されているように、ループ部材262が挿入器具50から解放されたときにフック部材250から分離できるように330度までの範囲であるのが好ましい。
図12〜13の実施例において使用されている“ループ部材262”という用語は、図示されている360度に亘る閉じられたループを包含しているだけでなく、部分的なループ形状例えば60度より大きく360度未満の範囲に亘るフック形状をも包含している。
【0056】
図13を参照すると、鋲留め器具220は、
図2〜3に関して説明した挿入器具50を使用して収縮状態で目標部位へと送達することができる。収縮状態においては、近位の展開可能な部材235〜237と遠位の展開可能な部材245〜247とは、ほぼまっすぐな外形を有しており、すなわち挿入器具50の長手軸線に沿って配向されている。鋲留め器具220が収縮状態にあるときに、近位の展開可能な部材237から伸長しているフック部材250は、
図13に示されているように、他の近位の展開可能な部材235及び236の端部領域239より近位側へと伸長しているのが好ましい。近位の展開可能な部材と遠位の展開可能な部材とが収縮状態にあるときに、フック部材250は、約60度〜約330度に亘る湾曲を維持しているのが好ましく、
図13に示されているように180度〜270度に亘る湾曲を維持しているのが更に好ましい。
【0057】
鋲留め器具220を配備するのに適しているスタイレットは、穴263を有しているループ部材262が
図13に示されているように、スタイレット260の遠位端266から遠位方向に伸長しているという主たる点を除いて、
図3に関し説明したスタイレット60と同様である。使用の際に、ループ部材262は、体の外側でフック部材250に連結される。例えば、一つの方法においては、スタイレット260は、ループ部材262が挿入器具50の尖った先端52まで遠位方向に伸長するように中空ルーメン54内に位置決めされる。次いで、フック部材250は、フック部材250の先端252をループ部材262の穴263を通して配置することによってループ部材262に連結される。近位の展開可能な部材235〜237が収縮され、次いで、スタイレット260が近位方向に後退され、その結果、鋲留め器具220が挿入器具50の中空ルーメン54内を遠位から近位へ向かう方向に引っ張られる。しかしながら、他の適当な装填方法を使用しても良い。
【0058】
鋲留め器具220が挿入器具50の中へ装填されると、ループ部材262は、挿入器具50がループ部材262とフック部材250との連結部を覆っている限りフック部材250から分離させることが出来ないことは注目されるべきことである。フック部材250の湾曲部分252と挿入器具50の内壁との間の距離は、ループ部材262の断面の幅よりも小さいのが好ましい。従って、フック部材250は、挿入器具50内へ装填されたときに大きくあちこち移動することができず、ループ部材262は挿入器具50に装填されたときにフック部材250から分離しない。この時点で、スタイレット260を近位方向へ後退させると、鋲留め器具220がそれに対応して近位方向へと後退され、これと反対に、スタイレット60が遠位方向に進められると、鋲留め具220がそれに対応して遠位方向へと進められる。
【0059】
図14〜19を参照すると、既に先に説明した腹壁ヘルニアの穿孔75の治療を補助するための鋲留め器具の一つの例示的な使用方法が示されている。
図14に示されているように、開腹技術又は腹腔鏡技術を使用して、移植片部材80は各方向において好ましくは数ミリメートル又は数センチメートルだけ穿孔75を覆うように適用される。移植片部材80が穿孔75を覆うように配置された後に、挿入器具50は、穿孔の周囲の近くの予備位置271において、遠位方向に進められて移植片部材80を貫通し且つ少なくとも部分的に組織74内へ貫入する。この時点では、鋲留め器具220は
図13に示されている収縮した送達状態にある。挿入器具50の尖った先端52は組織74内の所定の深さまで進められ、このとき、
図2〜3のマ−カ−56は挿入器具50が組織74内へどの程度の深さまで貫入したかを判断する補助となる。
【0060】
次のステップにおいて、
図13に示されているスタイレット260が挿入器具50に対して動かない状態に保持される一方で、挿入器具50は鋲留め器具220に対して近位方向へ後退される。別の方法として、挿入器具50が動かない状態に保持されている間にスタイレット260が遠位方向に進められ、鋲留め器具220が挿入器具50に対して遠位方向に進められる。このことにより、鋲留め器具220の遠位の展開可能な部材245〜247は、
図15に示されているように、挿入器具50の尖った先端52まで遠位方向に伸長する。遠位の展開可能な部材245〜247が挿入器具50によって径方向に拘束されない状態になると、これらの展開可能な部材は、所定の拡張形状を呈して、組織74と係合し、組織を貫入し、且つ/又は組織に当接する。
【0061】
一つの特徴によると、医師は、鋲留め器具220が所望の位置に配備されつつある状態にないことを判定することができる。例えば、医師は、本体222及び/又は遠位の展開可能な部材245〜247が組織74内の穿孔75に近すぎるか又は遠すぎる位置に配備されたこと、及び遠位の展開可能な部材245〜247が不所望な向きで配備されたことを確認することができる。ループ部材262は
図13に関して説明したように依然として挿入器具50内でフック部材250と係合しているので、医師は、鋲留め器具220を“再度捕捉し”、続いて該鋲留め器具220を再度位置決めすることができる。特に、一つの方法においては、医師は、スタイレット260を動かない状態に保持しつつ挿入器具50を鋲留め器具220に対して遠位方向に進入させ且つ遠位の展開可能な部材245〜247を覆うように配置させて遠位の展開可能な部材245〜247が収縮して中空ルーメン54内へ入った状態となるようにする。別の代替的な方法においては、医師は、挿入器具50を動かない状態に保持しつつスタイレット260を近位方向に後退させ、このことにより、鋲留め器具220を挿入器具50の中空ルーメン54内へと戻らせ且つ
図13に示されている収縮状態へと戻らせる。医師は、遠位の展開可能な部材245〜247を配備した方法と同じ方法で再度捕捉するのが好ましい。すなわち、挿入器具50は、スタイレットが常に動かない状態に保持されている間に、進められたり後退されたり又はその逆にされたりするのが好ましい。
【0062】
図16〜17を参照すると、次のステップにおいて、医師は、挿入器具50を、例えば第一の最終位置272のような組織74内の別の位置に再度位置決めする。任意ではあるが、挿入器具50が再度位置決めされつつある間に挿入器具50の尖った先端52を保護する必要がある場合には、
図2のシース部材58を挿入器具50の外周に沿って長手方向に進入させることができる。挿入器具50は、
図16に示されているように、第一の最終的な位置272において組織74に穿刺され、鋲留め器具220が挿入器具50に対して遠位方向に進められ、
図17に示し且つ上記したように遠位の展開可能な部材245〜247が組織74と係合される。
【0063】
図18を参照すると、第一の鋲留め器具220aの配置が許容できるものであるとみなされる場合には、医師は、次いで、第一の鋲留め器具220aを解放する。特に、スタイレット260が動かない状態に保持されている状態で挿入器具50が第一の鋲留め器具220aに対して近位方向に後退され、フック部材250とループ部材262との間の連結部が露呈される。挿入器具50がフック部材250及びループ部材262を通り過ぎると、これらの部材は互いに分離され且つ解放される。これらの部材は、挿入器具50がひとたび前記の連結部を覆わない状態になると自動的に分離し、又はループ部材262が近位の展開可能な部材237又はフック部材250を覆った配置のままである場合には、医師が必要に応じてスタイレット260を操作してループ部材262を分離させることができる。第一の鋲留め器具220aは、遠位の展開可能な部材245〜247が前記の拡張状態で組織74と係合した状態であり且つ近位の展開可能な部材235〜237が前記の拡張状態で移植片部材80と係合している状態で、身体の内部に残されて移植片部材80を組織74にしっかりと結合させる。
【0064】
次のステップにおいて、挿入器具50は、遠位の先端52が該挿入器具及び患者の身体の外側に位置するようになるまで近位方向に後退される。次いで、第二の鋲留め器具220bが、好ましくは上記と同じやり方で挿入器具50内へ装填される。特に、第二の鋲留め器具220bのフック部材250がスタイレット260のループ部材262に連結される。次いで、第二の鋲留め器具220bが遠位から近位に向かう方向で挿入器具50内へ装填され、
図13に示されている収縮状態となる。第二の鋲留め器具220bは、第一の鋲留め器具220aに関して上記した方法で組織74内の最終的な位置に配備される。このようにして、如何なる個数の鋲留め器具220をも連続して挿入でき且つ穿孔75の周囲を部分的に取り巻くように配備して移植片部材80を組織74に固定することができる。
【0065】
別の実施例においては、フック部材250は弧形状とは別の形状を有している。例えば、湾曲部分252は無く、フック部材250は、半分の四角若しくは四分の三の四角のような1以上の直角部分を有する形状、又はループ部材262と係合するのに適した他のあらゆる形状を有していても良い。更に、近位の展開可能な部材237の端部領域239を通り越して伸長している一つのフック部材250が示されているけれども、このようなフック部材は、近位の展開可能な部材235〜237のいずれかに沿った別の位置、例えば、本体222に更に近い位置に位置決めしても良い。更に、フック部材250は単一の近位の展開可能な部材237上に示されているけれども、多数のフック部材が採用され且つこれらは近位の展開可能な部材235〜237の各々から伸長していても良い。
【0066】
更に別の実施形態においては、近位及び遠位の展開可能な部材235〜237及び245〜247が
図19に示されているように完全に展開された後に、把持部材を使用して展開された鋲留め器具220a及び220bのうちの1以上が再度捕捉されても良い。例えば、該把持部材はループ部分を備えていても良く、該ループ部分は、端部をループ部分の大きさ及び形状を調整するように作動させることができる第一及び第二の細長い部分を備えていても良い。該ループ部分は、拡大されたループ形状内で、近位の展開可能な部材235〜237のうちの少なくとも1つの下方でガイドされ、次いで、前記第一及び第二の細長い部分を引っ張ることによって、より小さい直径となるように動作させることができる。該ループ部分は、次いで、近位方向に後退させて近位の展開可能な部材235〜237を
図13に示されている収縮した状態となるように押しつぶし、この時点で、フック部材250は、スタイレット260に結合されているループ部材262に再度係合させることができ、スタイレット260が後退されて近位の展開可能な部材235〜237を挿入器具内へと後退させる。次いで、遠位の展開可能な部材245〜247は、上記した方法を使用して再度捕捉して既に完全に展開された鋲留め器具を取り除くことができる。
【0067】
上に示した実施例は、穿孔を覆い且つ密閉するために移植片部材を組織に結合させるのに有用な鋲留め器具を例示的に記載したものであるが、鋲留め器具20,120及び220はまた、他の処置において使用することもできる。上記したように、鋲留め器具20,120及び220は、経管腔処置中に体壁を治療するために使用することができる。更に、鋲留め器具20,120及び220は、局部的な組織等を再形成するために移植片部材を組織に固定するために使用しても良い。
【0068】
本実施例の範囲に含まれる更に別の用途においては、鋲留め器具20,120及び220は、移植片部材を組織に結合するために使用される必要はない。例えば、鋲留め器具20,120及び220は吻合処置において使用しても良い。吻合を形成するためには、例えば多数の鋲留め器具20,120及び220を円形に配備して、近位の血管、導管、若しくは器官を、遠位の血管、導管、若しくは器官に結合することができる。このような場合には、内視鏡のような適当な挿入器具が消化管のような体内管腔を介して目標位置の近くの位置まで進められる。挿入器具50のような1以上の構成要素が内視鏡の作動管腔を介して進められる。挿入器具50の遠位端は、X線透視法によって又は内視鏡の光学的構成要素を介して又は何らかの他の視覚化方法によって観察される。適当な視覚化方法においては、多数の鋲留め器具を、例えば挿入器具50を使用して一度に送り込むことができる。次いで、配備された鋲留め器具の中間に穴を開けて近位の血管/導管/器官と遠位の血管/導管/器官との間に流路が形成される。鋲留め器具20,120及び220の更に別の用途も可能であることは明らかであろう。更に、挿入器具50は、内視鏡又はこれと同様の器具と共に使用しても又はこれらの器具と共にではなく使用しても良い。
【0069】
更に別の実施例においては、ここに記載した装置及び方法は、材料の層に係合させるために使用することができ、外科手術又は治療方法による人間又は動物の体の治療方法に限定されない。例えば、近位の展開可能な部材と遠位の展開可能な部材とが収縮した状態で鋲留め器具を挿入し、遠位の展開可能な部材を少なくとも部分的に拡張させて仮の位置において材料の層と係合させることができる。次いで、近位の展開可能な部材の少なくとも1つから伸長しているフック部材を、近位方向に後退させて遠位の展開可能な部材を近位方向に後退させ且つ収縮させる。鋲留め器具は、第一の最終的な位置に再位置決めされ、遠位の展開可能な部材は、展開させて上記した第一の最終位置において拡張状態にある材料の層と係合させることができる。
【0070】
以上、本発明の種々の実施例を説明したが、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物が参考にされること以外では限定されない。更に、ここに記載されている利点は、必ずしも本発明の唯一の利点ではなく、また、必ずしも本発明の各実施例がここに記載した利点の全てを達成できるわけではない。