(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のはんだ印刷機では、チューブから供給されたはんだがスキージによりローリングされて、印刷対象物である基板の幅(スキージが移動する方向とは直交する方向の幅)と同等の長さに伸展されるまでに時間がかかる場合がある。例えば、基板が大面積化するとそのような問題は顕著になる。
【0006】
また、上記はんだ供給装置のチューブから1度に大量のはんだが供給される場合には、スキージの長さ方向に均一にはんだが伸展されず、はんだのローリング径にその長手方向で偏りが生じることが考えられる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、処理時間の効率化を図ることができ、また、ペースト材の塗布時に、スキージの長さ方向で均一なローリング径を有するペースト材を形成することができるスクリーン印刷装置、ペースト材供給方法及び印刷対象物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るスクリーン印刷装置は、支持機構と、スクリーンと、スキージと、供給ユニットと、移動機構と、制御手段とを具備する。
前記支持機構は、印刷対象物を支持する。
前記スクリーンは、前記支持機構により支持された印刷対象物に対面するように配置される。
前記スキージは、前記スクリーン上に配置される。
前記供給ユニットは、前記スキージの長さ方向に沿って移動可能に設けられ、前記スクリーン上にペースト材を供給する。
前記移動機構は、前記供給されたペースト材を前記スクリーン上に伸展させるために、前記スキージを移動させる。
前記制御手段は、前記スクリーン上の、前記スキージの前記長さ方向に沿って予め設定された複数の領域に前記ペースト材を選択的に前記供給ユニットにより供給するために、前記供給ユニットの移動を制御する。
【0009】
供給ユニットは、例えば1回の供給時間を従来までのそれより長くせず、異なるタイミングで複数回に分けてペースト材を供給することにより、処理時間の効率化を図ることができ、また、スキージの長さ方向で均一なローリング径を有するペースト材を形成することができる。
【0010】
前記移動機構は、前記スクリーン上の第1の位置と前記第2の位置との間で前記スキージを往復移動させてもよい。その場合、前記制御手段は、前記スキージが前記第1の位置からの移動を開始して前記第1の位置に戻るまでの第1の往復動作の間に、前記複数の領域のうち第1の領域に前記ペースト材を前記供給ユニットにより供給させ、前記スキージが前記第1の位置からの移動を開始して前記第1の位置に戻るまでの、前記第1の往復動作とは異なるタイミングでの第2の往復動作の間に、前記複数の領域のうち第1の領域とは異なる第2の領域に前記ペースト材を前記供給ユニットにより供給させる。
【0011】
このように、スキージの異なるタイミングでの往復動作時に、異なる領域にペースト材が供給されることにより、スキージの複数回の往復動作の間でも、スキージの長さ方向で均一なローリング径を有するペースト材を形成することができる。
【0012】
前記スクリーン印刷装置は、前記スクリーン印刷装置内に順次搬送される複数の前記印刷対象物を順次印刷処理可能であってもよい。その場合、前記制御手段は、順次搬送される前記印刷対象物のうち、第1の印刷対象物の印刷処理が終了してから、次の第2の印刷対象物の印刷処理が開始されるまでの間に、前記ペースト材を前記供給ユニットにより供給させる。すなわち、スクリーン印刷装置内での印刷対象物の交換時間を利用してペースト材が供給ユニットにより供給される。したがって、印刷処理の時間効率を向上させることができる。
【0013】
供給ユニットは、前記ペースト材を点状に前記スクリーン上に供給してもよい。これにより、その供給ユニットのペースト材の吐出部分を、スキージの長さ方向(長手方向)に沿って長く形成する必要がない。したがって、供給ユニットの洗浄等のメンテナンスが容易になる。
【0014】
本発明の一形態に係るペースト材の供給方法は、印刷対象物に対面するスクリーン上に配置されたスキージの長さ方向に沿って予め設定された複数の領域のうち、第1の領域にペースト材を供給する。
前記第1の領域に供給された前記ペースト材が前記スキージにより前記スクリーン上に伸展させられる。
前記複数の領域のうち、前記スクリーン上の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に前記ペースト材が供給される。
前記第2の領域に供給された前記ペースト材が前記スキージにより前記スクリーン上に伸展させられる。
【0015】
例えば供給ユニットは、1回の供給時間を従来までのそれより長くせず、異なるタイミングでそれらの2つの領域にペースト材をそれぞれ供給すればよい。これにより、処理時間の効率化を図ることができ、、またスキージの長さ方向で均一なローリング径を有するペースト材を形成することができる。ペースト材は点状にスクリーン上に供給されてもよい。
【0016】
上記供給方法では、前記ペースト材を前記スクリーン上に伸展させるために、前記スキージが、前記スクリーン上の前記第1の位置からの移動を開始し、第2の位置で折り返して前記第1の位置に戻るまでの第1の往復動作を実行してもよい。また、前記ペースト材を前記スクリーン上に伸展させるために、前記スキージが、前記スクリーン上の前記第1の位置からの移動を開始し、第2の位置で折り返して前記第1の位置に戻るまでの、前記第1の往復動作とは異なるタイミングでの第2の往復動作を実行してもよい。前記第1の往復動作の間に、前記第1の領域に前記ペースト材が供給され、前記第2の往復動作の間に、前記第2の領域に前記ペースト材が供給される。
【0017】
複数の前記印刷対象物が順次印刷処理されてもよい。その場合、前記複数の印刷対象物のうち、第1の印刷対象物の印刷処理が終了してから、次の第2の印刷対象物の印刷処理が開始されるまでの間に、前記ペースト材が前記供給ユニットにより供給される。
【0018】
本発明の一形態に係る印刷対象物の製造方法は、印刷対象物に対面するスクリーン上に配置されたスキージの長さ方向に沿って予め設定された複数の領域のうち、第1の領域にペースト材を供給する。
前記第1の領域に供給された前記ペースト材が前記スキージにより前記スクリーン上に伸展させられる。
前記複数の領域のうち、前記スクリーン上の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に前記ペースト材が供給される。
前記第2の領域に供給された前記ペースト材が前記スキージにより前記スクリーン上に伸展させられる。
【発明の効果】
【0019】
以上、本発明によれば、処理時間の効率化を図ることができ、また、ペースト材の塗布時に、スキージの長さ方向で均一なローリング径を有するペースト材を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
[はんだ印刷装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るスクリーン印刷装置として、例えばはんだ印刷装置を示す模式的な側面図である。
図2は、
図1に示したはんだ印刷装置100の模式的な平面図であり、このはんだ印刷装置100の制御システムの構成を示すブロック図を含む。このはんだ印刷装置100は、ペースト状のはんだ、つまりクリームはんだを、印刷対象物としての回路基板Wに印刷する装置である。以降の説明では、説明をわかりやすくするため、便宜的に、
図1及び2においてY軸方向で右側をはんだ印刷装置100の前部とし、左側をはんだ印刷装置100の後部とする。
【0023】
はんだ印刷装置100は、回路基板Wが載置され、この基板を支持する支持機構としてのステージ機構30と、ステージ機構30に支持された回路基板Wに対面するように配置されたスクリーン5とを備える。また、はんだ印刷装置100は、はんだ印刷装置100の前部側でスクリーン5上に配置されたスキージユニット20と、このスキージユニット20をY軸方向に沿って移動させるスキージ移動機構19と、はんだ印刷装置100の後部側でスクリーン5上にクリームはんだを供給する供給ユニット10と、供給ユニット10をX及びY軸に沿って移動させる供給ユニット移動機構18とを備える。
【0024】
スクリーン5は、例えばフレーム5aとフレーム5a内のマスク部5bとを有する。ステージ機構30の上部には、スクリーン5のフレーム5aを固定して支持するスクリーン支持機構6が設けられている。なお、
図2では、スクリーン5及びスクリーン支持機構6等を図示していない。
【0025】
回路基板Wは、複数の導電パッドであるランドを有するものであり、このランド上にマスク部5bを介してクリームはんだが塗布される。すなわち、マスク部5bには、回路基板Wのランドの配置パターンに対応した、多数の孔(
図16参照)5cが設けられており、それらの孔5cを介してマスク部5b上からクリームはんだP(
図16参照)がランド上に供給される。
【0026】
ステージ機構30は、回路基板Wが載置される載置台32と、載置台32に載置された回路基板Wの両側をクランプするクランプ機構31と、載置台32をX、Y及びZ軸で移動させる駆動ユニット33を有する。クランプ機構31は、例えば図示しないバネを有するアクチュエータ等により作動するものである。載置台32は、真空チャックにより回路基板Wを保持するための装置を有していてもよい。
【0027】
駆動ユニット33は、載置台32をX及びY軸に移動させることにより、スクリーン支持機構6に支持されたスクリーン5に対して、X−Y平面内で回路基板Wのアライメントを行う。また、駆動ユニット33は、載置台32をZ軸方向で昇降させることにより、載置台32に載置された回路基板Wをスクリーン5に接触させる。
【0028】
図2に示すように、供給ユニット移動機構18は、スクリーン5の上部に配置されている。供給ユニット移動機構18は、供給ユニット10をX軸方向に沿って移動させるX軸移動機構16と、そのX軸移動機構16に沿って延設され、供給ユニット10のX軸方向に沿った移動をガイドするガイドレール17aとを備える。また、供給ユニット移動機構18は、供給ユニット10をY軸方向に沿って移動させるY軸移動機構17と、Y軸移動機構17に沿って延設され、供給ユニット10のY軸方向に沿った移動をガイドするガイドレール17aとを備える。Y軸移動機構17では、2本のガイドレール17aが設けられている。これらのガイドレール17aにX軸移動機構16が接続されている。
【0029】
X軸移動機構16は、図示しないエアシリンダを有し、後述するようにX軸方向で2つの位置で位置決めされるようになっている。Y軸移動機構17は、ボールネジ駆動機構であるが、これに代えてベルト、ラックアンドピニオン、またはリニアモータ等の駆動機構であってもよい。
【0030】
図3は、供給ユニット10を示す模式的な図である。供給ユニット10は、クリームはんだが収容された容器13と、容器13の開口部13aから挿入されたピストン3と、ピストン3の下部に取り付けられたチューブ14と、容器13をZ軸方向に昇降させる昇降モータ2とを備えている。
【0031】
容器13は、上記供給ユニット移動機構18に接続された支持具12(
図1及び2参照)により、容器13の開口部13aが下方に向くように支持されている。また、容器13は昇降モータ2の駆動により図示しない昇降ガイド等によって昇降できるように支持具12に支持されている。ピストン3の中央には上下方向に延びる貫通穴3aが設けられており、その貫通穴3aとチューブ14の内部とが連通している。
【0032】
チューブ14の下端部には、そのチューブ14の下端部を挟むことが可能な開閉部材4が設けられている。開閉部材4は、エアシリンダ7により水平方向に移動することで、チューブ14を挟んでその下端部の開口を塞ぎ、また、その挟みを解除することによりその開口を開放する。開閉部材4はチューブ14を挟んで、チューブ14から垂れ落ちようとするクリームはんだをチューブ14を介して切断するように動作することにより、スクリーン5上へのクリームはんだの供給を規制する。
【0033】
利便性を向上させるため、容器13は市販の容器13そのまま設置することが可能となっており、具体的には、供給ユニット10は、容器13を取り付けるための図示しない取り付け部材が支持具12に設けられている。
【0034】
このような供給ユニット10では、昇降モータ2の駆動により容器13が下降することで、相対的にピストン3が容器13の開口部13aを介して内部に挿入される。そのピストン3の容器13内への挿入により容器13内に圧力が発生し、その圧力により容器13内のクリームはんだがピストン3の貫通穴3a及びチューブ14を介してスクリーン5上に点状に供給される。
【0035】
クリームはんだが点状に供給されるとは、X−Y平面で見て、X及びY軸方向で実質的に均等または均等に近い大きさの塊の状態で、クリームはんだがスクリーン5上に供給されることを意味する。例えば、基板の一辺の長さ(あるいは長辺の長さ)が1m以内(例えば750mm)である場合に、点状に供給されたクリームはんだのそのX軸及びY軸方向での大きさは10mm〜30mmとなるが、この範囲に限られない。その範囲は、もちろん供給ユニット10からのクリームはんだの供給量によって異なる。クリームはんだの粘度は、200(Pa・s)程度のものが用いられるが、これに限られない。
【0036】
なお、供給ユニット10は、昇降モータ2のほか、容器13をX−Y平面内で回転させながら昇降させる駆動機構を備えていてもよい。容器13が回転しながら下降して容器13内に相対的にピストン3が挿入されることにより、その挿入時の容器13に加えられる力を軽減することができる。
【0037】
図2に示すように、スキージユニット20は、上記したようにスキージ移動機構19によって駆動され、このスキージ移動機構19は、上記Y軸移動機構17のガイドレール17aを共用している。スキージ移動機構19は、ガイドレール17aに沿って移動し、スキージユニット20を支持するフレーム部材9を有する。スキージ移動機構19の駆動源となるモータと、供給ユニット10のY軸移動機構17の駆動源となるモータとは別のものであり、供給ユニット10と、スキージ21(21a及び21b)とはそれぞれ独立して駆動される。スキージ移動機構19も、上記供給ユニット10の移動機構のY軸移動機構17と同様にボールネジ駆動機構であるが、これに代えてベルト、ラックアンドピニオン、またはリニアモータ等の駆動機構であってもよい。
【0038】
図4は、スキージユニット20を示す模式的な側面図である。スキージユニット20は、例えばスキージ21(前側スキージ21a及び後側スキージ21b)をスクリーン5に対面するように、かつ、これらのスキージ21a及び21bをスキージユニット20の移動方向であるY軸方向に沿って並ぶように保持するスキージホルダ22(22a及び22b)を有する。また、スキージホルダ22a及び22bは、前側スキージ21a及び後側スキージ21bの長さ方向をX軸方向に沿わせるようにそれらを保持する。スキージホルダ22は、図示しないエアシリンダにより上下方向にそれぞれ独立して駆動するようになっている。
【0039】
以降の説明では、前側スキージ21a及び後側スキージ21bについて、両者の異なる点の説明の必要性やそれらの比較の説明の必要性がない限り、両者のうち1つのスキージをスキージ21として説明する。
【0040】
図5は、一方のスキージユニット20を示す模式的な斜視図である。このように、スキージホルダ22は、例えばスキージ21の進行方向(
図5中右矢印で示す)の面が斜め下方向に向くように、スキージ21を保持する。符号Pは、スキージ21によりスクリーン5上でローリングされるクリームはんだを示している。なお、スキージホルダ22は、この
図5に示すようにX軸方向に沿ってスキージ21の上部の全体を保持しているが、このような形態に限られず、スキージ21の上部のX軸方向の中央部のみを保持するもの、あるいは、中央部及び両端部など複数箇所を保持するものであってもよい。
【0041】
図4に示すように、スキージユニット20には、後側スキージ21bが位置する側に距離センサ57が設けられている。距離センサ57は、その距離センサ57と、前側スキージ21aでローリングされているクリームはんだPとの間の距離を計測する。距離センサ57は、例えば反射型の光センサが用いられる。この距離センサ57によるその距離の計測によって、前側スキージ21aでローリングされているクリームはんだPの径または量が推定される。
【0042】
図1に示すように、はんだ印刷装置100は、載置台32に載置され支持された回路基板Wと、スクリーン5との間の高さ位置に配置された、移動可能なカメラ58を備えている。カメラ58は、回路基板Wのアライメントのため、X及びY軸方向の2次元で移動して例えば回路基板Wの複数箇所に予め設けられたアライメントマークの画像を取得する。
【0043】
また、はんだ印刷装置100に回路基板Wを搬入し、その回路基板Wの印刷終了後にその回路基板Wを搬出するための、図示しないコンベヤがはんだ印刷装置100に接続される。コンベヤは例えばベルトやローラ方式のものが用いられ、
図1及び2で示すX軸方向で回路基板Wを搬送する。
【0044】
図2に示すように、はんだ印刷装置100の制御システムは、ホストコンピュータ50、X軸移動機構コントローラ51、Y軸移動機構コントローラ52、供給ユニットコントローラ53、ステージ機構コントローラ54、スキージ移動機構コントローラ55、スキージユニットコントローラ56を備えている。
【0045】
X軸移動機構コントローラ51は、供給ユニット10のX軸移動機構16の駆動を制御する。Y軸移動機構コントローラ52は、供給ユニット10のY軸移動機構17の駆動を制御する。供給ユニットコントローラ53は、供給ユニット10の昇降モータ2や開閉部材4等の駆動を制御する。ステージ機構コントローラ54は、ステージ機構30による載置台32の水平面内の駆動及び昇降駆動を制御する。スキージ移動機構コントローラ55は、スキージユニット20のY軸方向に沿った移動を制御する。スキージユニットコントローラ56は、前側スキージ21a及び後側スキージ21bの上下移動等を制御する。
【0046】
ホストコンピュータ50は、上記各コントローラを統括して制御する。また、ホストコンピュータ50は、距離センサ57及びカメラ58にも接続されている。ホストコンピュータ50は、距離センサ57及びカメラ58から取得された情報を受信し、その情報に基づいて後述する所定の処理を実行する。
【0047】
上記の各コントローラは、ハードウェアで実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの両方で実現されてもよい。ソフトウェア及びハードウェアの両方で実現される場合、そのハードウェアは、ソフトウェアのプログラムを格納する記憶デバイスを少なくとも含む。ホストコンピュータ50も同様である。これら、ホストコンピュータ50及び各コントローラのうち少なくとも1つは、制御手段として機能する。
【0048】
上記ハードウェアは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ネットワークインターフェース等、その他公知のハードウェアにより実現される。ホストコンピュータ50も同様である。
【0049】
[はんだ印刷装置の動作]
以上のように構成されたはんだ印刷装置100の動作を説明する。
図6は、その動作における処理のフローチャートである。また、
図7〜13は、その動作を説明するためのはんだ印刷装置100の図である。
図7〜13において、(A−1)及び(A−2)は、互いに同じタイミングでのはんだ印刷装置100の側面図及び平面図をそれぞれ示している。また、(B−1)及び(B−2)も同様に、互いに同じタイミングでのはんだ印刷装置100の側面図及び平面図をそれぞれ示している。また、
図7〜13の各図の(B−1)及び(B−2)には、スクリーン5やステージ機構30等の図示を省略している。
【0050】
例えばはんだ印刷装置100に電源が投入され、はんだ印刷装置100の前部側に設置された、図示しない操作入力部を介して印刷開始ボタン等がオペレータにより押される(ステップ101)。あるいは、後述するステップ110の後に、回路基板Wへの印刷処理が開始される(ステップ101)。
【0051】
以降の説明では、既に最初に1枚または複数枚の回路基板Wの印刷処理が終了し、新たな次の回路基板Wがはんだ印刷装置100に搬入されて印刷処理が開始された時点からのフローを主に説明する。
【0052】
印刷処理が開始されると、ホストコンピュータ50は、今からスキージユニット20がはんだ印刷装置100の前部側から後部側へ移動するのか、その逆であるのかを判断する(ステップ102)。例えば、ホストコンピュータ50は、スキージ移動機構19によるスキージユニット20の現在の位置を確認することで、その判断が可能となる。
【0053】
スキージユニット20がはんだ印刷装置100の前部側から後部側へ移動する場合(ステップ102のyes)、スキージユニット20は次のように動作する。すなわち、
図7(A−1)及び(A−2)から
図7(B−1)及び(B−2)までに示すように、前側スキージ21aが下降し、その前側スキージ21aの下端がスクリーン5に接触しながら、スキージ移動機構19によりY軸方向に沿って前部側から後部側へ移動する。これにより、クリームはんだがスクリーン5上に伸展され、回路基板Wに所定の印刷パターンではんだが塗布される。
【0054】
後述するように、ステップ101の印刷開始前に、載置台32が駆動ユニット33による駆動によって上昇して、回路基板Wとスクリーン5の裏面とが接触している。
【0055】
なお、本実施形態では、一方のスキージ、例えば前側スキージ21aが前部側から後部側へ移動することにより、1枚の回路基板Wの印刷処理が完了する。また、後側スキージ21bが後部側から前部側へ移動することにより、また別の1枚の回路基板Wの印刷処理が完了する。すなわち、スキージユニット20のY軸方向の1回の往復動作により、2枚の回路基板Wの印刷処理が完了する。
【0056】
ここで、往復動作とは、スキージユニット20がホーム位置から、スキージユニット20がY軸方向に沿って移動して、回路基板Wの後端側より後部側に対応する位置で折り返し、再びホーム位置に戻るまでの動作である。スキージユニット20のホーム位置とは、前側スキージ21aが、回路基板Wの前端(
図1及び2において回路基板Wの右端)に対応する位置より前部側にある時の、スキージユニット20の位置、例えば
図1及び2に示したスキージユニット20の位置である。
【0057】
上記ステップ102のyesの場合、ホストコンピュータ50は、供給ユニット10によるクリームはんだの供給を判断するためのフラグをfalseに設定する(ステップ103)。フラグがfalseの場合、距離センサ57によりはんだのローリング径が計測(推定)される(ステップ104)。この場合、少なくとも距離センサ57は計測手段として機能する。
【0058】
ホストコンピュータ50は、このローリング径の情報に基づいて、供給ユニット10によるクリームはんだの供給が必要であるか否かを判断する(ステップ105)。例えば、ローリング径が予め設定された閾値より大きい場合、クリームはんだの供給は必要なく、それが閾値より小さい場合、クリームはんだの供給が必要になる。ステップ105でクリームはんだの供給が必要であると判断した場合、ホストコンピュータ50は、後述するステップ111以降の処理の実行のために上記フラグをtrueに設定する(ステップ106)。
【0059】
なお、最初にはんだ印刷装置100に電源が投入され、最初にスキージが駆動するときは、クリームはんだがスクリーン5上に供給されていないので、ステップ105ではyesと判断される。
【0060】
印刷処理が終了すると(ステップ107のyes)、
図8(A−1)及び(A−2)に示すように、版離れ(スクリーン5から回路基板Wが離れる)が行われる。そすると、
図8(B−1)及び(B−2)に示すように、これまで載置台32に載置されていた回路基板Wがコンベヤにより搬出され(ステップ108、)。
図9(A−1)及び(A−2)に示すように、次に印刷処理が行われるべき回路基板Wがはんだ印刷装置100に搬入される。そして、
図9(B−1)及び(B−2)に示すように、載置台32上に回路基板Wが載置されて支持される(ステップ109)。このように回路基板Wははんだ印刷装置100に順次搬送されてくる。
【0061】
そして、
図10(A−1)及び(A−2)に示すように、カメラ58及びステージ機構30により、載置台32上にある基板のアライメントが実行される(ステップ110)。アライメントが終わると、ステップ101に戻る。そして、
図10(B−1)及び(B−2)に示すように、ステージ機構30が駆動して回路基板Wがスクリーン5上に接触し、後側スキージ21bによりクリームはんだがスクリーン5上に伸展されていく。
【0062】
上記ステップ102において、スキージユニット20がはんだ印刷装置100の後部側から前部側へ移動する場合(ステップ102のno)、ホストコンピュータ50は、クリームはんだのスクリーン5上への供給が必要であるか否かを判断する(ステップ111)。すなわち、はんだ印刷装置100の状態が、
図7(B−1)及び(B−2)に示した状態にある時、ホストコンピュータ50は、距離センサ57(
図4参照)によりクリームはんだのローリング径の情報を受信し、上記ステップ103の判断を実行する。
【0063】
クリームはんだの供給が必要でない場合(ステップ111のno)、
図10(A−1)、(A−2)、(B−1)及び(B−2)に示すように、印刷処理が実行される。
【0064】
上記ステップ111において、クリームはんだの供給が必要な場合(yes)、以下のように処理される。
【0065】
クリームはんだの供給が必要な場合、供給ユニット移動機構18により、供給ユニット10が所定の位置に移動する(ステップ112)。
図14(A)及び(B)は、クリームはんだの供給位置を説明するための図である。これら
図14(A)及び(B)、また
図5に示すように、供給ユニット10は、スクリーン5上の予め設定された点状の領域である領域A及びBのうち、いずれか一方に選択的にクリームはんだを供給する。なお、典型的には、領域A及びBにそれぞれ供給されるクリームはんだPA及びPBの量は実質的に一定である。
【0066】
これら領域A及びBの位置設定は、回路基板W及びスキージ21(後側スキージ21b)の配置による。回路基板WのX軸方向での中心位置と、後側スキージ21bのX軸方向での中心位置とが実質的に一致している場合、これら領域A及びBのX軸方向での位置は、その後側スキージ21bの中心から両端部側へ所定距離ずれた位置とされる。所定距離とは、例えば100mm〜300mmであるが、この範囲に限られない。
【0067】
また、例えば領域AにクリームはんだPAを供給するときの、X軸方向での供給ユニット10の位置は、そのX軸方向でのホーム位置とされる。そして、供給ユニット移動機構18のX軸移動機構16、例えば上記エアシリンダの駆動により移動された供給ユニット10の位置が、領域BにクリームはんだPBを供給するときの、X軸方向での供給ユニット10の位置となる。
【0068】
また、
図14(B)に示すように、領域A及びBのY軸方向での位置は、それぞれ、例えば回路基板Wの後端側(図中左側)より後部側(はんだ印刷装置100の後部側)の位置となる。
【0069】
図5を参照して、ステップ112の後、前回のクリームはんだの供給領域が領域Aであった場合(ステップ113のyes)、供給ユニット10は、供給ユニット移動機構18によって今回は領域Bに移動する(ステップ114)。一方、前回のクリームはんだの供給領域が領域Bであった場合(ステップ113のno)、供給ユニット10は、供給ユニット移動機構18によって今回は領域Aに移動する(ステップ115)。そして、
図11(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)、
図12(A−1)及び(A−2)に示すように、供給ユニット10は、領域AまたはBである、スクリーン5上の点状領域にクリームはんだPAまたはPBを供給する。クリームはんだが供給された後、
図12(B−1)及び(B−2)に示すように、供給ユニット10は供給ユニット移動機構18の駆動により、元の後部側の退避位置(ホーム位置)に戻る。
【0070】
そして、ステップ101に戻り、
図13(A−1)、(A−2)、(B−1)及び(B−2)に示すように、前側スキージ21aによる印刷処理が開始される。この前側スキージ21aによる印刷処理により、前側スキージ21aが回路基板Wの後端側まで移動すると、
図13(B−2)に一点鎖線で示すように、領域Aに供給されたクリームはんだPAと、現在前側スキージ21aがローリングしているクリームはんだPとが合体する。このような動作によって、所望のローリング径を有するクリームはんだを自動的に形成することができる。
【0071】
次回のクリームはんだの供給は、ステップ113の判断処理の結果、領域Bへなされる。
【0072】
図10〜12からも明らかなように、現在の回路基板Wの印刷処理が終了し、次の回路基板Wの印刷処理が開始されるまでに、供給ユニット10によるクリームはんだの供給処理が完了している。これにより、印刷処理の時間効率を向上させることができる。
図15は、これをわかりやすくしたフローチャートである。N回目の印刷処理から、N+1回目の印刷処理までの間の時間は、典型的には15s程度であり、この15sの間に、領域A及びBのうちいずれか一方にクリームはんだが1回供給される。
【0073】
以上のように、本実施形態では、2つの領域A及びBに連続してクリームはんだが供給されるのではなく、本実施形態のようにN回目の供給時には領域Aに供給され、N+1回目の供給時には領域Bに供給される。このように異なる領域A及びBに、交互に異なるタイミングでクリームはんだが供給されることにより、1回の供給時間を従来までのそれより長くすることを回避することができる。したがって、処理時間の効率化を図ることができ、また、ペースト材の塗布時に、スキージの長さ方向で均一なローリング径を有するペースト材を形成することができる。
【0074】
また、そのような処理により、次のようなメリットもある。例えば、1回の供給時間が予め決まっている場合に、上記のように、2つの領域A及びBに連続してクリームはんだを供給することは困難である。この場合、はんだ印刷装置100を一時停止しなければならなくなる。本実施形態では、はんだ印刷装置100の一時停止を行うことなく、スキージの長さ方向で均一なローリング径を有するクリームはんだを形成することができる。
【0075】
さらに本実施形態では、スキージ21の異なるタイミングでの往復動作時(第1の往復動作と、それとは別のタイミングになされる往復動作である第2の往復動作)に、異なる2点の領域A及びBにクリームはんだが供給される。これにより、スキージ21の複数回の往復動作の間でも、スキージ21の長さ方向で均一なローリング径を有するクリームはんだPを形成することができる。
【0076】
また、本実施形態では、供給ユニット10によりチューブ14を介してクリームはんだがスクリーン5上に点状に供給される。つまり、例えばX軸方向に長い、複数ノズルタイプやスリットタイプノズルのようなノズルを用いていないので、供給ユニット10の洗浄が容易になる。これによりメンテナンスの労力及び時間を軽減することができる。
【0077】
例えば、チューブ14からはんだが供給される構成ではなく、例えば特許文献1の
図2、11に示されたスキージブロックを用いて、つまりスリット(溝)タイプノズルのような装置によりはんだが供給される場合、そのノズルを洗浄するのに手間がかかるという問題がある。スキージブロックの目詰まり等の発生を抑えるため、はんだ印刷機を構成する構造及び装置のうちではスキージブロックは比較的メンテナンス回数が多くなる。しかしながら、本実施形態では上述のようにそのような問題もない。
【0078】
図16は、スキージ21及びスクリーン5の拡大側面図である。スキージ21の、クリームはんだPが接触する面と、スクリーン5の表面との間の角度をアタック角θとし、θは60°程度に設定される。
【0079】
クリームはんだPのローリング径が小さすぎると、スクリーン5の孔5cに十分な量のクリームはんだが充填されなくなる場合がある。この場合、回路基板Wのランド等、塗布対象となる部分に付着するクリームはんだの量が不十分となり不良の原因になるおそれがある。一方、クリームはんだPのローリング径が変わると、クリームはんだPの密度や、圧力(回路基板Wのランドへの圧力)が異なることが起こる。このような問題から、ローリング径を極力一定にしておくことが要求される。
【0080】
<その他の実施形態>
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態がある。
【0081】
上記実施形態では、領域A及びBに順に交代してクリームはんだが供給された。しかし、例えばN回目供給時は領域A、N+1回目供給時は領域A、N+2回目供給時は領域B、N+4回目供給時は領域A、・・・というように、A→A→B→A→A→B→・・・という供給方法であってもよい。この場合も、領域A及びBにそれぞれ供給されるクリームはんだの量は実質的に一定とされる。
【0082】
あるいは、例えば回路基板Wの印刷すべきパターンに応じて、クリームはんだの供給領域への供給回数または順序等が設定されてもよい。例えば上記のように、領域A→A→B→A→A→B→・・・という供給方法は、回路基板WのX軸方向において領域Aに対応する側の孔の総数(孔による総開口面積)が、領域Bのそれよりも大きい場合に有効となる。
【0083】
このように、はんだ印刷装置100のホストコンピュータ50は、複数の供給領域への供給回数、順序等を、ユーザの設定に応じて変更できるようにしてもよい。例えば、領域Aのみに供給するモードや、領域Bのみに供給するモードがあってもよい。あるいは、領域A及びBに連続してクリームはんだが供給されるモードがあってもよい。
【0084】
上記の供給ユニット10では、容器13が昇降する形態であったが、ピストン3が昇降する形態であってもよい。この場合、容器13が開口部13aを上方に向けて支持具12により支持され、また、容器13の下部に吐出穴が設けられ、ピストン3がその開口部13aを介して容器13内に挿入されてもよい。
【0085】
供給ユニット移動機構18は、エアシリンダの駆動により2つの位置で供給ユニット10を位置決めし、2つの点状領域A及びBにクリームはんだが供給された。しかし、供給ユニット10は、3つ以上の位置で位置決めされる構成であってもよく、その場合、3つ以上のスクリーン5上の点状領域にクリームはんだが供給されてもよい。
【0086】
上記実施形態では、前側スキージ21a及び後側スキージ21bが設けられていたが、スキージは少なくとも1つでもよい。この場合、往復動作において往路または復路のみに、そのスキージによりクリームはんだがスクリーン上に伸展されればよい。あるいは、スキージが1つでも、例えば往復動作の往路及び復路において、スキージの傾きが交互に変わり、つまりスキージの両面が使用されてもよい。あるいは、スキージが1つの場合でも、そのスキージが、往路及び復路において交互に、X−Y平面内で180度回転することにより、往路及び復路でクリームはんだを伸展させることができる。
【0087】
供給ユニット移動機構18、あるいは上記したその他の駆動機構は、エアシリンダに限られず、例えばボールネジ、ラックアンドピニオン、ベルト、リニアモータ等が用いられればよい。
【0088】
スクリーン5上の領域A及びBが点状ではなく、例えばスキージの長さ方向に沿って線状の領域であってもよい。この場合、X軸移動機構により供給ユニット10がX軸方向に沿って移動しながら、供給ユニット10がクリームはんだを吐出することにより、スクリーン5上の予め設定された複数の領域(複数の線状領域)に線状に供給される。典型的には、複数の線状領域は、スキージの中心に、その長さ方向で2つに分かれた領域である。クリームはんだが線状に供給されるとは、スクリーン5上に供給されたクリームはんだのY及びX軸方向のアスペクト比が異なるように設定されることを意味する。そのアスペクト比は、例えば1:1.5以上(例えば1:3、1:5など)に設定される。
【0089】
このようなクリームはんだが線状に供給されるという形態は、スクリーン5上の2つの領域に限られず、3つ以上の領域にクリームはんだが供給される場合にも適用可能である。あるいは、複数の領域のうち、点状領域と線状領域が混在していてもよい。
【0090】
上記このようなクリームはんだが線状に供給されるという形態は、上記実施形態に係る供給ユニット10により供給される形態に限られず、例えばスリットタイプのノズルが用いられてもよい。
【0091】
上記実施形態では、ペースト材としてクリームはんだが用いられたが、フラックス、絶縁ペースト、その他のペースト材が用いられてもよい。