【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、特定のガスと反応しない非腐食性金属によって構成され開口を有するカップの内面に、前記
特定のガスと反応して腐食する腐食性金属を形成し、前記開口をフィルムで塞ぐことによって前記腐食性金属を前記カップの内部に密封した試験片を形成し、当該試験片を前記
特定のガスの濃度、温度、及び圧力をそれぞれ一定に維持可能な容器内に配置する工程と、前記容器内を予め定めた温度に調整する工程と、前記容器の前記
特定のガスの濃度が予め定めた濃度値となるように前記
特定のガスを前記容器内に供給または前記容器内から排気する工程と、前記容器内の前記圧力が予め定めた大気圧よりも高い圧力値となるように、前記
特定のガスと反応しない他のガスを前記容器内に供給する工程と、前記容器内の前記
特定のガスの濃度、温度、及び圧力を一定に維持し、前記試験片を所定時間保管する工程と、下記式(1)を用いて前記
特定のガスの前記フィルムに対する透過率を評価する工程と、を含むことを特徴とするガス透過性評価方法。
T=m×(M[Gas]/M[Metal])×(δhαρ/A)/(xt)・・・(1)
上記式(1)において、Tはガス透過
度、mは腐食性金属の価数、M[Gas]は透過ガスの分子量、M[Metal]は腐食性金属の分子量、δは腐食性金属の腐食部分の面積、hは腐食性金属の厚み、αは厚み補正係数、ρは腐食性金属の腐食後の密度、Aは腐食性金属の腐食部分と非腐食部分の面積の合計、xは高圧保管時の圧力の大気圧に対する比、tは高圧保管時の保管時間を示す。
請求項2の発明は、前記試験片は、前記フィルムの表面と接するように前記腐食性金属を形成し、前記腐食性金属が前記表面と接する面を除く部分を覆うように前記非腐食性金属を形成することによって前記腐食性金属を前記フィルムと前記非腐食性金属とによって密封している、ことを特徴とする。
【0008】
請求項1および請求項2記載の発明は、既存の金属腐食法では試験片を大気圧で保管するのに対し、大気圧よりも高い圧力をかけ続けることにより上記の目的を達成するガス透過性評価法である。
【0009】
請求項
2において腐食性金属はフィルムに直接接触して存在し(
図1)、請求項
1においては腐食性金属とフィルムの間に空間が存在する
場合も含む(
図2)、という点が異なるが、どちらの腐食性金属も、フィルムを透過したガスとのみ反応し腐食される。
【0010】
ガスバリア機能を持つフィルムにおいて、ガス透過量Qは式(1)で示される。
式(1) Q=PpAt/l
Pはガス透過係数、pは圧力、Aは透過面積、tは透過時間、lはフィルムの厚さを示す。
【0011】
この式(1)から、同一試験片において、圧力を高めるほど、単位時間におけるガス透過量が線形に増えていく。そして、高圧時の圧力が大気圧のx倍(xは1より大きい値)とすると、従来の大気圧環境におけるガス透過量と等しいだけのガス透過量を得るには、1/x倍の透過時間でよい。ここでの透過時間はつまり金属腐食法における保管時間であり、高圧時の保管時間は、大気圧環境でのx倍の保管時間に相当することが分かる。これにより、既存の金属腐食法よりもより短い保管時間で、既存の評価解析法をそのまま使用することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のガス透過性評価方法において、前記
特定のガスが水蒸気であり、前記腐食性金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはその合金のいずれかを含むことを特徴とする。
【0013】
アルカリ金属、アルカリ土類金属あるいはその合金は、反応性に富み、水蒸気によって容易に腐食されるので、水蒸気のガス透過性を示す水蒸気透過度を求めるためには適している組み合わせである。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3に記載のガス透過性評価方法において、前記アルカリ土類金属として、カルシウム、マグネシウムまたはその合金のいずれかを含むことを特徴とする。
【0015】
カルシウム、マグネシウムあるいはその合金は、水蒸気によって容易に腐食される上に、安価であり、かつ蒸着により薄膜を形成しやすいため、水蒸気透過度を求めるために、より一層適している組み合わせである。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガス透過性評価方法に用いるフィルムのガス透過性評価装置であって、前記試験片が保管される内部を有する
前記容器と、前記容器の内部の環境を一定のガス濃度、一定の温度、かつ大気圧より高い一定の圧力に維持する環境維持手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項5に記載のガス透過性評価装置において、前記試験片が前記容器に保管された状態で、前記腐食性金属の腐食が進行する程度を測定する測定装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1および請求項2記載の発明により、保管時の高い圧力により、ガスは通常よりも速いスピードでフィルムを透過することができ、より短い保管時間でガス透過性を評価することができる。
【0019】
請求項3記載の発明により、容易に水蒸気透過度を求めることができる。
【0020】
請求項4記載の発明により、安価かつ容易に水蒸気透過度を求めることができる。
【0021】
請求項5記載の発明によるガス透過性評価装置を用いることで、容器内部を一定ガス濃度、一定温度、大気圧以上の一定圧力に維持し、試験片を保管することが容易に可能となる。そして、保管時間をより短くすることができ、請求項1から請求項4いずれかのガス透過性評価を容易に行うことができる。
【0022】
請求項6記載の発明によるガス透過性評価装置を用いることで、腐食が進行する程度を経時的に測定してガス透過性を評価することができ、さらに試験片が外気に曝されることによる環境変化のガス透過性への影響を抑え、より正確な評価を行う事ができる。