(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724295
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】カラーフィルタ及びそれを用いたカラー液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20150507BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02F1/1335 505
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-242202(P2010-242202)
(22)【出願日】2010年10月28日
(65)【公開番号】特開2012-93622(P2012-93622A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾形 道
【審査官】
横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−311324(JP,A)
【文献】
特開2007−332237(JP,A)
【文献】
特開2008−020904(JP,A)
【文献】
特開平09−145914(JP,A)
【文献】
特開平10−293207(JP,A)
【文献】
特開2005−301289(JP,A)
【文献】
特開2001−183513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPS方式のカラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタであって、透明基板上に透明導電体を形成し、該透明導電体の一端部を除いて覆うように透明絶縁体を形成し、前記透明絶縁体はマスクを介して前記一端部を除いて形成された透明絶縁体であり、更にその上の内側に、赤色画素、緑色画素、青色画素からなる着色層およびブラックマトリクス層を有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記透明導電体の一端部が回路アースに接続することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタを用いたカラー液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横電界方式(In−Plane Switching:以下、IPS方式と記す)のカラー液晶表示装置用カラーフィルタ基板に係わり、特には、静電気帯電防止機能を付与したカラーフィルタ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、パーソナルコン
ピュータ、モニタ、テレビ、携帯電話など、様々な製品に使用されるようになり、急速に普及が進んでいる。カラーフィルタは液晶表示装置のカラー表示化に必要不可欠な部材である。
【0003】
従来のカラー液晶表示装置は、カラーフィルタの上に共通電極を形成し、更に、その上には配向膜を形成したガラス基板と、薄膜トランジスタ(TFT)および画素電極の上に配向膜を形成したガラス基板との間に液晶を封入、前記両ガラス基板の外側に偏光板を設けた構成である。このような構成からなるカラー液晶表示装置は、静電気などの外部電界の影響を受け、ディスプレイに画像欠陥を生じる問題があった。
【0004】
上記の問題に対して、例えば、前記両ガラス基板の外側に透明導電膜を形成して、静電気などの外部電界を回路アースに逃がす提案がされている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、近年、カラー液晶表示装置おいては高画質化が進み、従来のツイストネマチックに代わり、高色再現性や広視野角、高速応答性を備える様々な方式のものが出現してきている。なかでも、IPS方式のカラー液晶表示装置は、優れた視野角特性を有するカラー液晶表示装置として知られている。
【0006】
上記IPS方式は基板面に平行に電圧を印加して、液晶を基板面と平行な内面で回転させる為に、カラーフィルタ側に電極を設けず、TFT側の基板に電極を設けることから、カラーフィルタ側からの外部電界が侵入しやすく、画像表示に悪影響を与え易い問題がある。
【0007】
上記IPS方式での外部電界による表示品位の低下を防ぐ方法として、カラーフィルタ基板の裏面側に透明導電膜を形成する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この方法は、ガラス基板の両面を加工する為、ガラスエッチングによる薄板化処理が難しく、また、製造工程においてガラス基板の表裏反転機構が必要となり、あらたに多額の設備投資を必要とする。また更には、カラーフィルタ面を搬送面にする必要があり、カラーフィルタ表層に搬送保護膜材料が必要となる。いずれもコスト、生産性、品質の安定性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−314522号公報
【特許文献2】特開平10−293207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、IPS方式のカラー液晶表示装置において、液晶駆動の誤動作の原因となる静電気などの外部電界を除去する機能を兼ね備えた、カラーフィルタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、IPS方式のカラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタであって、透明基板上に透明導電体を形成し、該透明導電体の一端部を除いて覆うように透明絶縁体を形成し、
前記透明絶縁体はマスクを介して前記一端部を除いて形成された透明絶縁体であり、更にその上の内側に、赤色画素、緑色画素、青色画素からなる着色層およびブラックマトリクス層を有することを特徴とするカラーフィルタである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記透明導電体の一端部が回路アースに接続することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタを用いたカラー液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のIPS方式のカラー液晶表示装置用カラーフィルタにより、外部電界の侵入を防ぐことができ、画像表示への悪影響をなくす効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。
【
図2】本発明のカラーフィルタの一例を示す平面模式図である。
【
図3】従来のIPS方式のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のIPS方式のカラー液晶表示装置用カラーフィルタを、一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。
図1に示すように、本発明のカラーフィルタは、透明基板(6)の片面に透明導電膜(5)を形成し、次に該透明導電膜(5)の一端部(5a)を除いて覆うように透明絶縁体(4)を形成し、更にその上の内側に、赤色画素、緑色画素、青色画素からなる着色層(2)およびブラックマトリクス層(3)を形成して作製される。そして部前記一端(5a)は回路アースに接続され、その結果、外部電界を除去し、それによる画像欠陥を防ぐことができる。
【0016】
本発明の前記透明基板としては、ソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラス、無アルカリアルミノ硼珪酸ガラスなどのガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板が用いられる。
【0017】
本発明に用いられる前記透明導電体は、ITO,SnO
2、IZO、ZnOなどであり、スパッタリング法や真空蒸着法などにより薄膜を形成する。より具体的には、前記一端部(5a)を除いてその上に覆うように前記透明絶縁体(4)を形成する為、マスクを介して前記透明導電体(5)を形成する。
【0018】
本発明に用いられる前記透明絶縁体は、SiO
2、SiN
xなどの無機化合物や、透明性や耐熱性に優れた感光性アクリル樹脂などである。前者はスパッタリングなどの気相方法で、後者はフォトリソ法により形成することができる。
【0019】
本発明に用いられる赤色画素、緑色画素、青色画素からなる着色層(2)は、例えば着色剤となる顔料、透明な樹脂、光開始剤、重合性モノマー等をミルベース、3本ロール、ジェットミル等様々な分散方法にて溶剤中に分散することで調整される着色樹脂組成物からなる。
【0020】
また、本発明のブラックマトリクス層(3)は、通常のフォトリソ法に使用する感光性
ブラックマトリクス材料を用いることができる。前記感光性ブラックマトリクス材料は少なくとも感光性樹脂と遮光性着色剤を含み、該遮光性着色剤は少なくとも遮光性微粒子(カーボンブラック、チタンブラック、)を含む。
【0021】
本発明の赤色画素、緑色画素、青色画素からなる着色層(2)およびブラックマトリクス層(3)の形成には、それぞれの着色画素を構成する感光性着色樹脂組成物(レジスト)の塗工、UV露光、現像工程からなるフォトリソ法が利用できる。
【実施例】
【0022】
以下に本発明の具体的実施例について説明する。
【0023】
<実施例1>
〔透明導電体の形成〕
無アルカリガラス基板上に、マスクを用いて
図1および
図2に示した形状に、ITOを膜厚20nm、スパッタリングして透明導電体(5)を形成した。
【0024】
〔透明絶縁体の形成〕
次に、上記透明導電体の上に、
図1および
図2に示した形状、すなわち透明導電体の一端部(5a)を除いて、他の透明導電体を覆うような形状に、マスクを用いてSiO
2を膜厚40nm、スパッタリングして透明絶縁体(4)を形成した。
【0025】
〔ブラックマトリクスの形成〕
厚さ0.5mmのガラス基板に、感光性樹脂組成物中とカーボンブラックからなるレジストを、膜厚1.1μmで塗工し、マスクを介してフォトリソ法により、露光・現像・洗浄・乾燥工程を経て、線幅10μm、ピッチ93mmのブラックストライプを形成した。
【0026】
〔赤色画素、緑色画素、青色画素の形成〕
上記ブラックマトリクス上に赤色画素をフォトリソ法を用いて形成した。感光性樹脂組成物に赤色顔料を分散したレジストを、前記ブラックマトリクス上にスピンコート法により膜厚1.5μm塗工し、次に、マスクを介して露光・現像・洗浄・乾燥工程を経て、線幅24μm、ピッチ93mmの赤色画素を形成した。
【0027】
次に、感光性樹脂組成物に緑色顔料および青色顔料を分散したレジストを用いて、順次、上記工程を繰り返して、緑色画素、青色画素を形成しカラーフィルタを作製した。
【0028】
<比較例1>
図3に従って、具体的な説明をする。透明基板(6)である無アルカリガラス基板上に、実施例1と同様の材料および同様の方法で赤色画素、緑色画素、青色画素を形成した。
【0029】
次に、上記赤色画素、緑色画素、青色画素を形成した上に、それを覆うようにSiO
2を膜厚40nm、スパッタリングして透明絶縁体(4)を形成した。
【0030】
次に、上記ブラックマトリクス層と着色層と透明絶縁体を施したガラス基板の裏面の全面に、ITOを膜厚20nm、スパッタリングして透明導電体(5)を形成しカラーフィルタを作製した。
【0031】
<比較結果>
実施例1の本発明品は比較例1の比較品に比べて、外部電界の侵入を防ぐことができ、画像表示への影響を防ぐ良好な効果が得られた
。
【符号の説明】
【0032】
1 液晶
2 赤色画素、緑色画素、青色画素からなる着色層
3 ブラックマトリクス層
4 透明絶縁体
5 透明導電体
5a 透明絶縁体が形成されない透明導電体の一端部
6 透明基板