(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724378
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】洗米装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20150507BHJP
B02B 1/06 20060101ALI20150507BHJP
B02B 7/00 20060101ALI20150507BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
A47J27/14 N
B02B1/06 102
B02B7/00 101Z
A47J27/00 103D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-292077(P2010-292077)
(22)【出願日】2010年12月28日
(65)【公開番号】特開2012-139255(P2012-139255A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷 喜八郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−230483(JP,A)
【文献】
特開平08−019478(JP,A)
【文献】
特開2010−162120(JP,A)
【文献】
特開2000−201818(JP,A)
【文献】
特開平05−200316(JP,A)
【文献】
特開2006−068111(JP,A)
【文献】
特開平06−210270(JP,A)
【文献】
特開2003−093226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
A47J 27/00
B02B 1/06
B02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入した米を洗浄する洗浄工程と、炊飯用の水加減工程を洗米タンクで行なう洗米装置において、洗米タンクに水を供給する水供給管と、水供給管から供給する水量を検出する流量センサと、洗浄工程時の洗浄水を排水するときに使用する洗浄水排水管と、洗米タンク内の水が満水量になったことを検出する満水検出センサと、満水検出センサが満水を検出してから設定水量になるまで水を排水するときに使用する水加減水排水管とを設け、
水加減工程で洗米タンク内の水量を調節するのに、流量センサによる流量調節により設定水量を供給する第一水加減制御を行なうか、満水検出センサが満水を検出してから設定水量になるまで水を排水する第二水加減制御を行なうかを利用者が任意に選択する選択手段を設け、
第二水加減制御時に水の供給開始から設定時間以上経過しても満水検出センサが水を検出しないときには、満水検出センサを異常とし、水供給管からの水の供給を停止し、洗浄水排水管を設定時間開放して洗米タンク内の水を排水した後、洗浄水排水管を閉鎖し、第一水加減制御に基づく水の供給を再開する制御部を設けることを特徴とする洗米装置。
【請求項2】
投入した米を洗浄する洗浄工程と、炊飯用の水加減工程を洗米タンクで行なう洗米装置において、洗米タンクに水を供給する水供給管と、水供給管から供給する水量を検出する流量センサと、洗浄工程時の洗浄水を排水するときに使用する洗浄水排水管と、洗米タンク内の水が満水量になったことを検出する満水検出センサと、満水検出センサが満水を検出してから設定水量になるまで水を排水するときに使用する水加減水排水管とを設け、
水加減工程で洗米タンク内の水量を調節するのに、流量センサによる流量調節により設定水量を供給する第一水加減制御を行なうか、満水検出センサが満水を検出してから設定水量になるまで水を排水する第二水加減制御を行なうかを利用者が任意に選択する選択手段を設け、
第一水加減制御時に流量センサの異常を判定した場合には、水供給管からの水の供給を停止し、洗浄水排水管を設定時間開放して洗米タンク内の水を排水した後、洗浄水排水管を閉鎖し、第二水加減制御に基づく水の供給を再開する制御部を設けることを特徴とする洗米装置。
【請求項3】
第一水加減制御または第二水加減制御の異常を判定したときに他方の水加減制御で水加減を再開するのは、予約で洗米作業を設定操作したときに行なうことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の洗米装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗米及び水加減をする洗米装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の従来技術に水加減に流量センサによる方法と、満水状態から一定時間排水する方法があることが開示されている。そして、通常はいずれかの方式を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−218676
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の2つの水加減の方法は長所・短所がある。本願発明は利用者が状況に適した水加減を行なえるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、かかる技術的課題を解決するために次のような技術的手段を講ずる。すなわち、請求項1記載の発明は、投入した米を洗浄する洗浄工程と、炊飯用の水加減工程を洗米タンクで行なう洗米装置において、洗米タンクに水を供給する水供給管と、水供給管から供給する水量を検出する流量センサと、洗浄工程時の洗浄水を排水するときに使用する洗浄水排水管と、洗米タンク内の水が満水量になったことを検出する満水検出センサと、満水検出センサが満水を検出してから設定水量になるまで水を排水するときに使用する水加減水排水管とを設け、
水加減工程で洗米タンク内の水量を調節するのに、流量センサによる流量調節により設定水量を供給する第一水加減制御を行なうか、満水検出センサが満水を検出してから設定水量になるまで水を排水する第二水加減制御を行なうかを利用者が任意に選択する選択手段を設け
、
第二水加減制御時に水の供給開始から設定時間以上経過しても満水検出センサが水を検出しないときには、満水検出センサを異常とし、水供給管からの水の供給を停止し、洗浄水排水管を設定時間開放して洗米タンク内の水を排水した後、洗浄水排水管を閉鎖し、第一水加減制御に基づく水の供給を再開する制御部を設けることを特徴とする洗米装置とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、投入した米を洗浄する洗浄工程と、炊飯用の水加減工程を洗米タンクで行なう洗米装置において、洗米タンクに水を供給する水供給管と、水供給管から供給する水量を検出する流量センサと、洗浄工程時の洗浄水を排水するときに使用する洗浄水排水管と、洗米タンク内の水が満水量になったことを検出する満水検出センサと、満水検出センサが満水を検出してから設定水量になるまで水を排水するときに使用する水加減水排水管とを設け、
水加減工程で洗米タンク内の水量を調節するのに、流量センサによる流量調節により設定水量を供給する第一水加減制御を行なうか、満水検出センサが満水を検出してから設定水量になるまで水を排水する第二水加減制御を行なうかを利用者が任意に選択する選択手段を設け
、
第一水加減制御時に流量センサの異常を判定した場合には、水供給管からの水の供給を停止し、洗浄水排水管を設定時間開放して洗米タンク内の水を排水した後、洗浄水排水管を閉鎖し、第二水加減制御に基づく水の供給を再開する制御部を設けることを特徴とする洗米装置とする。
【0007】
請求項3記載の発明においては、
第一水加減制御または第二水加減制御の異常を判定したときに他方の水加減制御で水加減を再開するのは、予約で洗米作業を設定操作したときに行なうことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の洗米装置とする。
【0008】
【0009】
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明においては、作業者が水道事情等を考慮して適宜水加減制御を選択できる。
また、第二水加減制御の異常で第一水加減制御に切り替えられるため、水加減作業の停止を防止することができる。
【0011】
請求項2記載の発明においては、
作業者が水道事情等を考慮して適宜水加減制御を選択できる。また、第一水加減制御時に流量センサ(22)の異常を判定した場合には、第二水加減制御に切り替えられるため、水加減作業の停止を防止することができる。
【0012】
請求項3記載の発明においては、洗米装置の傍らに作業者がいない場合が多い予約で洗米作業を設定操作したときに、水加減作業の停止を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態である洗米炊飯装置の基本構成について図に基づいて説明する。
機体フレーム1に貯米庫2を取り付け、貯米庫2の下部には洗米器3を取り付けている。洗米器3の下方には炊飯釜4を設け、炊飯釜4は引き出し5に載置され、前側に引き出し可能に構成している。この実施の形態の洗米炊飯装置は炊飯釜4を左右に2個並列して設け、貯米庫2と洗米器3とが一体となって機体フレーム1に沿って左右の炊飯釜4の上方をスライド移動できる構成としている。
【0015】
貯米庫2の正面側には制御部Bを内蔵する操作盤6を設け、所望の洗米炊飯制御を設定できる。
洗米器3は円錐状のホッパ形状の洗米タンク7を形成している。洗米タンク7の側面には洗米タンク7内の点検用の開閉窓8を形成し、内部には縦軸芯に回転する攪拌棒18を設け、下端部には周囲を覆う平面視円型の覆い体19を取り付けている。覆い体19には洗米タンク7内の下部から洗浄用の水を給水する下給水管9と、洗米タンク7内で洗浄時に気泡を起すための空気を給水する空気管10と、洗浄水を排水するための洗浄水排水管11と、水加減水を排水する水加減用水排水管12を取り付けている。
【0016】
洗米タンク7の上部には満水検出センサ13を設け、満水検出センサ13の上方にはオーバーフロー口14とオーバーフロー排水管15を設ける。そして、洗米タンク7の上面には水加減用の水を給水する上給水管16の給水口16aを設ける。
【0017】
洗浄水と水加減水を給水する水源(水道)17の水栓20の下流側から上給水管16と下給水管とに分岐し、上給水管16には流量センサ22と上給水管バルブ23を設け、下給水管9には下給水管バルブ24を設けている。空気管10はコンプレッサ25に接続している。
【0018】
洗浄水排水管11には洗浄水排水管バルブ26を、水加減用水排水管12には水加減用水排水管バルブ27を設け、洗浄水排水管バルブ26と水加減用水排水管バルブ27の下流側は排水ボックス29に合流する。
【0019】
次に、洗米炊飯工程の概要について説明する。
作業者が操作盤6で炊飯する米の量を設定してスタートスイッチ(図示せず)を操作すると貯米庫内の米を繰出し回転体(図示せず)で設定した米量分、洗米タンク7に供給する(米供給工程)。
【0020】
次に下給水管バルブ24が開き、下給水管9を通過した水が覆い体8を経て洗米タンク7内に給水されながら、コンプレッサ25が駆動し、空気管より空気が供給され洗米タンク7内の水中で気泡が生じる。攪拌棒18と気泡の作用により水流が回転する気泡水により洗米タンク7内の米は洗米される(洗米工程)。洗米工程が終了するときには下給水管バルブ24は閉じられ、コンプレッサ25と攪拌棒18は停止している。そして、洗米工程終了後、洗浄水排水管バルブ26が開き洗浄水が洗浄水排水管11から排水ボックス29へ排水される。
【0021】
洗米工程後には上給水管バルブ23が開き、洗米タンク7内に水加減水が給水される。この水加減水は、洗米タンク7に供給した米量に応じた水量を供給する。水量は後述する流量センサ22による流量調節により設定水量を供給する第一水加減制御に基づくか、満水検出センサ13が満水を検出してから設定水量になるまで水を排水する第二水加減制御に基づくかのいずれかで行なう(水加減工程)。
【0022】
設定水量の調整が終了すると上給水管バルブ23が閉じ、洗米タンク7の底部を開閉する底板(図示せず)が開いて洗米タンク7内の米と水加減用の水が炊飯釜4に落下供給され、炊飯工程が開始される。
【0023】
以上、米供給工程・洗米工程・水加減工程・炊飯工程は連続して自動的に行なうことができる。
また、洗米炊飯の作業形態として操作盤6で設定すると即時に洗米炊飯工程を行なう通常機能と、操作盤6で予め決まった日時を指定して洗米・炊飯する予約機能による洗米・炊飯が可能である。すなわち、この予約機能は前日の夜に、例えば翌日の朝に炊飯された米が完成しているように予め設定する機能である。
【0024】
次に、第一水加減制御と第二水加減制御の概要について説明する。
第一水加減制御は流量センサにより通過水量を検出して水加減水量を供給する制御で、流量センサとは流れる水で羽根車を回転を行い、その回転パルスで流量を検出する形態である。
【0025】
第二水加減制御は洗米タンク7内の満水検出センサ13が水有りを検出するまで給水し、その後、水加減水用排水バルブ27を開いて所定時間洗米タンク7の水が設定された水量になるまで水加減用排水管12から排水する制御である。水加減水用排水管12の径は洗浄水用排水管12の径よりも小さく形成し、精密な水加減を可能としている。
【0026】
次に、
図4に沿って流量センサ22で水量を検出する第一水加減制御と、洗米タンク7内を一旦満水にして、洗米タンク7内が必要な水量になるまで設定時間排水する第二水加減制御の使い分けについて説明する。
【0027】
まず、利用者が予め操作盤6のスイッチで第一水加減制御か第二水加減制御を選択して設定したら、その選択に従い、以後の水加減工程では設定された方法による水加減を行なう(S1)。
【0028】
作業者が、特にいずれかの水加減制御を選択設定しなかった場合には、以後の水加減工程では適切な水加減制御を制御部が自動的に適宜判定する。
次に制御部が2つの制御を判定する場面として、作業者の設定する洗米・炊飯する米量に応じて2つの水加減制御を使い分ける。作業者が洗米炊飯する米量が設定量以下又は未満(例えば4升以下又は未満)を設定すると、水加減工程時に流量センサ22による第一水加減制御による水量調節を行なう(S4)。また、設定量より多く又は以上(例えば4升より多い又は以上)を設定すると、水加減工程時に洗米タンク7内を一旦満水にして、洗米タンク7内が必要な水量になるまで設定時間排水する第二水加減制御を行なう(S9)。これは米量が少ないときに第二水加減制御を行なうと、満水から設定水量になるまで抜取る水の量が増えてしまうため、無駄な水量が多くなったり、排水するのに時間がかかるという欠点を防止するために流量センサ22による逐次式に水供給する第一水加減制御を行なうものである。一方、米量が多いときは水加減に要する水量も増加する分、流量センサ22の誤差が大きくなる場合があるため第二水加減制御を行なうメリットがある。また、同じ米量でも米の粒径や状態で必要な水加減量は変化するが、第二水加減制御は米の体積に影響され難いというメリットがある。
【0029】
次に、2つの水加減制御の一方を利用しているときに異常を検出したときの制御について説明する。
使用している水加減制御が異常を検出した場合(S6又はS7)、例えば第一水加減制御なら流量センサ22を異常と判定した場合や、第二水加減制御なら満水検出センサ13を異常と判定した場合等に制御部Bは以下の処理を行なう。
【0030】
水加減制御が異常を検出したときに通常機能か予約機能により処理が変わってくる。予約機能による洗米炊飯が行われている場合には行なわれている水加減制御を中止して、他方の水加減制御に切り替えて継続して洗米炊飯工程を行なう(S7、S12)。通常機能による洗米炊飯が行なわれている場合には行なわれている水加減制御を中止してその旨を操作盤6の画面等に異常である旨を表示して以降の洗米炊飯の工程を中止する(S8、S13)。
【0031】
すなわち、予約機能の場合には、作業者が洗米炊飯装置の傍にいないことが多く、また、作業者が到着しているときには、米が炊き上がっている状態であることが望ましいためである。また、通常機能の場合には、作業者が洗米炊飯装置の傍らにいる場合が多いと想定されるため、作業者に異常の旨を通知して作業者が対策するのが良いためである。
【0032】
その他に、水加減制御を選択する条件として、水源(水道)17から供給される水圧を検出する手段(図示せず)を設け、水圧が一定圧以下の場合に第一水加減制御に限定するようにしても良い。すなわち、水圧が一定圧以下の場合に第二水加減制御を行なうと、満水検出センサ13が満水を検出するまでに時間がかかるためである。
【符号の説明】
【0033】
7 洗米タンク
11 洗浄水排水管
12 水加減用排水管
13 満水検出センサ
16 水供給管
22 流量センサ
26 洗浄水排水バルブ
B 制御部