特許第5724445号(P5724445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724445
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/56 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   F22B37/56 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-34135(P2011-34135)
(22)【出願日】2011年2月21日
(65)【公開番号】特開2012-172879(P2012-172879A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】上笹 政仁
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−132205(JP,A)
【文献】 特開2009−192110(JP,A)
【文献】 特開2001−248802(JP,A)
【文献】 実開昭60−154733(JP,U)
【文献】 特開平10−339404(JP,A)
【文献】 特開平10−082503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/00 − 37/78
F28G 1/00 − 15/10
F22D 1/00 − 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水管の温度を検出する温度センサと、前記水管への給水ラインへスケール除去剤を注入する薬注装置と、前記温度センサの検出値に基づいて前記薬注装置の作動を制御する制御器とを備えるボイラであって、
前記制御器は、前記温度センサの検出値が第一設定値以上となると前記薬注装置によるスケール除去剤の注入を開始し、設定した注入時間が経過するとスケール除去剤の注入を停止し、
前記注入時間は、前記温度センサの検出値の低下勾配から前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するに要すると推測される時間とすることを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記制御器は、スケールの前記水管からの剥離による前記水管の温度の急激な温度低下を検出し、
急激な温度低下を検出したとき、前記注入時間の経過を検出してスケール除去剤の注入を停止し、急激な温度低下を検出しないときは、前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するとスケール除去剤の注入を停止することを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
水管の温度を検出する温度センサと、前記水管への給水ラインへスケール除去剤を注入する薬注装置と、前記温度センサの検出値に基づいて前記薬注装置の作動を制御する制御器とを備えるボイラであって、
前記制御器は、スケールの前記水管からの剥離による前記水管の温度の急激な温度低下を検出し、
前記温度センサの検出値が第一設定値以上となると前記薬注装置によるスケール除去剤の注入を開始し、急激な温度低下を検出したとき、設定した注入時間の経過を検出してスケール除去剤の注入を停止し、急激な温度低下を検出しないときは、前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するとスケール除去剤の注入を停止することを特徴とすボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水管のスケール除去剤を注入する薬注装置を備えたボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
水管の温度を検出する温度センサと、水管への給水ラインへスケール除去剤を注入する薬注装置と、温度センサの検出値に基づいて薬注装置の作動を制御する制御器とを備えるボイラは、特許文献1にて知られている。
【0003】
特許文献1のボイラは、水管の伝熱壁にスケールが徐々に付着し、この付着に伴って、伝熱壁の温度が上昇し、温度センサの検出値が高温側設定温度(第一設定温度)に達すると、薬注装置を作動させてスケール除去剤の注入を開始する。このスケール除去剤の注入により伝熱壁の温度が下降し、温度センサによる検出値が低温側設定温度(第二設定値)に達すると、制御器は薬注装置の作動を停止しスケール除去剤の注入を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−132205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この出願の発明者は、温度センサ取付部またはその近傍のスケールが剥離すると、水管温度が急激に低下し、第二設定温度に到達して、必要な量のスケール除去剤が注入されていないにも拘わらず、スケール除去剤の注入が停止されるという課題を見出した。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、温度センサ取付部またはその近傍のスケールが剥離しても必要な量のスケール除去剤を注入して所期のスケール除去を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、水管の温度を検出する温度センサと、前記水管への給水ラインへスケール除去剤を注入する薬注装置と、前記温度センサの検出値に基づいて前記薬注装置の作動を制御する制御器とを備えるボイラであって、前記制御器は、前記温度センサの検出値が第一設定値以上となると前記薬注装置によるスケール除去剤の注入を開始し、設定した注入時間が経過するとスケール除去剤の注入を停止し、前記注入時間は、前記温度センサの検出値の低下勾配から前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するに要すると推測される時間とすることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記温度センサ取付部またはその近傍のスケールが剥離しても前記注入時間だけスケール除去剤の注入が継続されるので、必要な量のスケール除去剤を注入して所期のスケール除去を行うことができる。また、前記注入時間を前記温度センサの検出値の低下勾配と前記第二設定値とに基づき求めるので、予め前記注入時間を定めておくものと比較して、より正確に必要な量のスケール除去剤を注入することができるという効果を奏する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記制御器は、スケールの前記水管からの剥離による前記水管の温度の急激な温度低下を検出し、急激な温度低下を検出したとき、前記注入時間が経過するとスケール除去剤の注入を停止し、急激な温度低下を検出しないときは、前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するとスケール除去剤の注入を停止することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、急激な温度低下を検出しないときは、前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するスケール除去剤の注入を停止するので、急激な温度低下を検出しないときも前記注入時間でスケール除去剤の注入を停止するものと比較して、より正確に必要な量のスケール除去剤を注入することができるという効果を奏する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、水管の温度を検出する温度センサと、前記水管への給水ラインへスケール除去剤を注入する薬注装置と、前記温度センサの検出値に基づいて前記薬注装置の作動を制御する制御器とを備えるボイラであって、前記制御器は、スケールの前記水管からの剥離による前記水管の温度の急激な温度低下を検出し、前記温度センサの検出値が第一設定値以上となると前記薬注装置によるスケール除去剤の注入を開始し、急激な温度低下を検出したとき、設定した注入時間が経過するとスケール除去剤の注入を停止し、急激な温度低下を検出しないときは、前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するとスケール除去剤の注入を停止することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記温度センサ取付部またはその近傍のスケールが剥離しても前記注入時間だけスケール除去剤の注入が継続されるので、必要な量のスケール除去剤を注入して所期のスケール除去を行うことができる。また、急激な温度低下を検出しないときは、前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するスケール除去剤の注入を停止するので、急激な温度低下を検出しないときも前記注入時間でスケール除去剤の注入を停止するものと比較して、より正確に必要な量のスケール除去剤を注入することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、温度センサ取付部またはその近傍のスケールが剥離しても必要な量のスケール除去剤を注入して所期のスケール除去を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施例1のボイラの概略構成図である。
図2】同実施例1の制御手順を説明するフローチャート図である。
図3】同実施例1の動作を説明する時間−水管温度特性図である。
図4】この発明の実施例2の制御手順を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、水管への給水ラインへスケール除去剤を注入するボイラに実施される。
【0016】
この実施の形態のボイラは、水管の温度を検出する温度センサと、前記水管への給水ラインへスケール除去剤を注入する薬注装置と、前記温度センサの検出値に基づいて前記薬注装置の作動を制御する制御器とを備えるものである。
【0017】
そして、この実施の形態のボイラの特徴とするところは、前記制御器が、予め記憶した薬注制御手順に基づき、前記温度センサの検出値が第一設定値以上となると前記薬注装置によるスケール除去剤の注入を開始し、設定した注入時間が経過するとスケール除去剤の注入を停止するところにある。
【0018】
この実施の形態のボイラによれば、スケール除去剤の注入は、前記水管の温度が急激に低下して、前記温度センサが注入停止用の第二設定値を検出しても、設定した注入時間だけスケール除去剤の注入を継続する。その結果、前記温度センサ取付部またはその近傍のスケールが剥離しても必要な注入時間の注入により、必要な量のスケール除去剤を注入して所期のスケール除去が行われる。
【0019】
前記注入時間は、好ましくは、前記制御器により、前記温度センサの検出値の低下勾配から前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するに要すると推測される時間に設定する。すなわち、前記制御器は、前記温度センサの検出値を記憶しておき、その記憶値に基づいて低下勾配を算出する。そして、算出した低下勾配に基づき、検出値が前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するに要すると推測される時間を算出し、算出した時間を前記注入時間とする。しかしながら、前記注入時間は、予め実験などにより定めた設定時間とすることができる。
【0020】
前者の温度低下勾配に基づく注入時間の設定方法は、後者の注入時間の設定方法と比較して、注入時間を正確に設定することができる。すなわち、スケールの成分や性状、スケール除去剤の種類や投入量、ボイラの運転状況によって、スケール除去剤によるスケールの除去時間が変わるので、前者の実際の温度勾配に基づく方法の方が、注入時間を正確に設定できる。
【0021】
また、前記制御器による注入停止の条件は、好ましくは、スケールの前記水管からの剥離による前記水管の温度の急激な温度低下を検出する場合としない場合とで異ならせる。すなわち、急激な温度低下を検出したとき、前記注入時間が経過するとスケール除去剤の注入を停止し、急激な温度低下を検出しないときは、前記温度センサの検出値が前記第一設定値より低いスケール除去剤の注入停止用の第二設定値に到達するスケール除去剤の注入を停止するように構成する。
【0022】
このように、急激な温度低下を検出しないときは、前記水管の温度が前記第二設定値となるのを検出してスケール除去剤の注入を停止するので、急激な温度低下を検出しないときも前記注入時間でスケール除去剤の注入を停止するものと比較して、より正確に必要な量のスケール除去剤を注入することができる。
【0023】
ここで、この実施の形態のボイラの構成要素を説明する。前記水管は、好ましくは、貫流ボイラの水管とするが、これに限定されるものではない。
【0024】
また、温度センサは、サーミスタまたは熱電対とすることができる。そして、この温度センサは、前記水管の所定箇所に取り付けられる。
【0025】
前記薬注装置は、ポリアクリル酸塩,ポリマレイン酸塩等の水溶性ポリマーやホスホン酸塩,キレート剤等のスケール除去剤を注入し、注入量を制御できる装置であれば、特定の構成のものに限定されない。この薬注装置によるスケール除去剤の注入箇所は、好ましくは、前記給水ラインの給水ポンプ下流側とするが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
この発明の実施例1のボイラを図面に従い説明する。図1は、この発明の実施例1のボイラの概略構成図であり、図2は、同実施例1の制御手順を説明するフローチャート図であり、図3は、同実施例1の動作を模式的に説明する時間−水管温度特性図である。
【0027】
(実施例1の構成)
図1を参照して、多管式貫流ボイラの缶体1は、上部ヘッダ2と下部ヘッダ3との間を多数の水管4,4,…で連結し、その内部に燃焼室5を形成している。この燃焼室5の上部には、加熱手段としてのバーナ6が配置されている。このバーナ6には、燃料供給ライン7が接続されており、この燃料供給ライン7には、燃料ポンプ(図示省略)および燃料用電磁弁8がそれぞれ設けられている。また、バーナ6には、燃焼用の空気供給ライン9が接続されており、この空気供給ライン9には、送風機10が設けられている。そして、燃料ポンプ,燃料用電磁弁8および送風機10は、それぞれ信号線を介して制御器11と接続されている。
【0028】
そして、缶体1には、各水管4内の水,すなわち缶水の水位を検出するとともに、缶水の水位を制御する水位制御器(図示省略)が付設されている。この水位制御器は、信号線を介して制御器11と接続されている。さらに、缶体1の下部には、各水管4内へ缶水を供給する給水ライン12が接続されており、この給水ライン12には、給水ポンプ13が設けられている。この給水ポンプ13も、信号線を介して制御器11と接続されている。
【0029】
さらに、缶体1には、温度センサ14と水質モニタ15とが設けられている。この温度センサ14は、水管4の温度を検出するためのもので、水管4のうちの1本(必要に応じて複数本)に設けられるもので、水管4の外壁の所定箇所に設けられている。そして、この温度センサ14は、信号線を介して制御器11に接続されている。
【0030】
また、水質モニタ15は、スラッジの堆積を検出するためのもので、下部ヘッダ3内において、水管4の下方で、スラッジが堆積し易い箇所(必要に応じて複数箇所)に設けられている。水質モニタ15は、下部ヘッダ3の缶水中の酸素などにより電流が流れ、スラッジで埋まると電流が流れ難くなる。
【0031】
さらに、給水ライン12に薬注装置16が設けられている。この薬注装置16も、信号線を介して制御器11に接続されている。この薬注装置16は、制御器11からのON作動信号により、スケール除去剤の注入を行うもので、制御器11からの作動ON信号により、給水ライン12へスケール除去剤の注入を開始し、制御器11からの作動OFF信号により、給水ライン12へのスケール除去剤の注入を停止する構成となっている
【0032】
そして、制御器11は、予め記憶した薬注制御手順に基づき、薬注装置16を制御する。この薬注制御手順は、温度センサ11の検出値が第一設定値T1以上となると薬注装置16によるスケール除去剤の注入を開始し、設定注入時間t0が経過するとスケール除去剤の注入を停止する手順である。その手順の概要を図2に示す。
【0033】
(実施例1の動作)
つぎに、実施例1の動作を図1および図2に基づき説明する。ボイラの運転が継続すると、水管4内へ供給される水の水質により、水管4の伝熱壁にスケールが徐々に付着し、この付着に伴って、水管4の伝熱壁の温度が上昇する。この温度上昇による伝熱壁の温度変化を温度センサ14が常時検出し、その検出値を制御器11へ出力する。
【0034】
温度センサ14の検出値が第一設定値T1に達すると、図2の処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、YESが判定され、S2へ移行して、制御器11は、薬注装置16へ作動ON信号を出力する。この作動ON信号を受けると、薬注装置16は、そのポンプ(図示省略)が駆動され、給水ライン12へのスケール除去剤の注入を開始する。
【0035】
ここで、スケール除去剤の注入量について説明すると、スケール除去剤の注入は、前記伝熱壁の温度が比較的短時間で第一設定値T1からスケール剤注入停止を判定する第二設定値T2(<第一設定値T1)以下となるようにするためのもので、第一設定値T1により判定される厚さのスケールを除去する必要があるためのものである。スケール除去剤の注入量は、特許文献1に記載のように、第一設定値T1に応じて決定される。第二設定値T2は、製品毎にバラツキがあるので、ボイラの試運転時に設定することが望ましい。
【0036】
S2のスケール除去剤の注入によりスケール除去剤の効果が現れ、水管4の温度が低下してゆくが、S3にて温度センサ14の検出値を所定間隔で記憶してゆく。より具体的には、スケール除去剤の注入により、水管4の温度(温度センサ14の検出値T)は、模式図である図3の低下特性線L1,L2のように、所定の低下勾配αで低下する。そして、温度センサ14の取付部またはその近傍の水管4に付着したスケールが剥離すると、低下特性線L3のように、温度センサ14の検出値が急激に低下する。なお、低下特性線L2は、スケールの剥離が生じない場合の温度センサ14の検出値を示し、スケールの剥離が生じた場合、勾配αの特性線L1の延長線を示す。
【0037】
スケールが剥離すると、水管4温度が急激に低下したかどうかを判定するS4により、YESが判定されと、処理は、S5へ移行する。水管4温度が急激に低下したかどうかの判定は、つぎのようにして行われる。温度センサ14による検出値Tの単位時間当たりの温度低下勾配が設定値以上となると、急激に低下と判定する。
【0038】
そして、S5で注入時間t0を演算する。この注入時間t0の演算は、つぎのようにして行われる。すなわち、図3を参照して、注入開始時刻taからS5でYESが判定されるまでの時刻tbまでの所定時間t1における温度センサ14の検出値から低下特性線L1の低下勾配αを求める。所定時間t1は、好ましくは、給水時間(給水ポンプ13が作動している時間)または、燃焼時間(バーナ6が燃焼している時間)とし、給水ポンプ13およびバーナ6が燃焼停止している時間は含めない。なお、低下特性線L1が直線でない場合は、直線近似の手法により近似した直線に基づき低下勾配αを求める。
【0039】
つぎに、低下勾配αから第二設定値T2に到達するに要する時間t2を演算する。この時間t2は、時刻tbから低下特性線L1を延長して、第二設定値T2の等温線L4と交わる時刻tcまでの時間であり、推測(予測)により求めた時間である。そして、時刻tbを基準とした注入時間t0をt1+t2とする。なお、注入時間t0は、時刻tbを基準とすると、t2とすることができる。
【0040】
ついで、S6において、S5で求めた注入時間t0が経過したかどうかを判定する。t0が経過するまでは、スケール除去剤の注入が継続される。S6で、YESが判定されると、S7へ移行して、スケール除去剤の注入が停止される。
【0041】
こうして、スケール除去剤の注入は、水管4の温度が急激に低下して、温度センサ14が注入停止用の第二設定値T2を検出しても、設定した注入時間t0だけスケール除去剤の注入が継続される。その結果、温度センサ14の取付部またはその近傍のスケールが剥離しても、必要な量のスケール除去剤を注入して所期のスケール除去を行うことができる。
【0042】
S4で、YESが判定されない場合は、S8へ移行して、水管4温度が第二設定値以下となったかどうかを判定する。S8でYESが判定されると、S7へ移行して、スケール除去剤の注入が停止される。この停止制御は、特許文献1と同様である。
【0043】
このように、この実施例1は、スケールの水管4からの剥離による水管4の温度の急激な温度低下を検出したとき、低下勾配αから演算した注入時間t0が経過するとスケール除去剤の注入を停止し、急激な温度低下を検出しないときは、第二設定値T2に到達するスケール除去剤の注入を停止するように構成している。
【0044】
実施例1の変形例として、注入開始から所定時間の間の温度低下勾配αを求めて、注入時間t0を演算して、急激な温度低下を検出しないときも注入時間t0の経過でスケール除去剤の注入を停止するように構成することも可能である。実施例1の注入制御は、急激な温度低下を検出しないとき、この変形例と比較してより正確に必要な量のスケール除去剤を注入することができる。
【0045】
ところで、この実施例1では、注入開始の条件を温度センサ14の検出値Tが第一設定値t1以上で注入を開始する条件1に加えて、水質モニタ15により、水質モニタ15がスラッジにより埋もれて、その検出値が設定値以下となるとスケール除去剤の注入を開始する条件2を加えることができる。条件1と条件2とは、ORの関係とする。この場合、条件2で注入を開始するとき、注入量は、注入開始の温度センサ14の検出値により求める。注入量の設定以外の制御は、図2に示す制御で行われる。
【実施例2】
【0046】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、制御器11による薬注制御を図4に示すように行う実施例2を含むものである。図4の薬注制御手順は、注入時間t0を低下勾配αから予測するのではなく、予め実験などにより定めた設定時間としたものである。実施例2の制御手順を除くその他の構成は、実施例1と同様であるので、以下の実施例2の説明では、実施例1と異なる部分のみ説明し、その他は説明を省略している。
【0047】
図4を参照して、実施例1と同様に、温度センサ14の検出値が第一設定値T1に達すると、S1でYESが判定され、S2でスケール除去剤の注入を開始する。そして、予め定めた注入時間t0が経過すると、S6でYESが判定されて、S7で注入が停止される。
【符号の説明】
【0048】
4 水管
11 制御器
12 給水ライン
14 温度センサ
16 薬注装置
図1
図2
図3
図4