【実施例1】
【0026】
この発明の実施例1のボイラを図面に従い説明する。
図1は、この発明の実施例1のボイラの概略構成図であり、
図2は、同実施例1の制御手順を説明するフローチャート図であり、
図3は、同実施例1の動作を模式的に説明する時間−水管温度特性図である。
【0027】
(実施例1の構成)
図1を参照して、多管式貫流ボイラの缶体1は、上部ヘッダ2と下部ヘッダ3との間を多数の水管4,4,…で連結し、その内部に燃焼室5を形成している。この燃焼室5の上部には、加熱手段としてのバーナ6が配置されている。このバーナ6には、燃料供給ライン7が接続されており、この燃料供給ライン7には、燃料ポンプ(図示省略)および燃料用電磁弁8がそれぞれ設けられている。また、バーナ6には、燃焼用の空気供給ライン9が接続されており、この空気供給ライン9には、送風機10が設けられている。そして、燃料ポンプ,燃料用電磁弁8および送風機10は、それぞれ信号線を介して制御器11と接続されている。
【0028】
そして、缶体1には、各水管4内の水,すなわち缶水の水位を検出するとともに、缶水の水位を制御する水位制御器(図示省略)が付設されている。この水位制御器は、信号線を介して制御器11と接続されている。さらに、缶体1の下部には、各水管4内へ缶水を供給する給水ライン12が接続されており、この給水ライン12には、給水ポンプ13が設けられている。この給水ポンプ13も、信号線を介して制御器11と接続されている。
【0029】
さらに、缶体1には、温度センサ14と水質モニタ15とが設けられている。この温度センサ14は、水管4の温度を検出するためのもので、水管4のうちの1本(必要に応じて複数本)に設けられるもので、水管4の外壁の所定箇所に設けられている。そして、この温度センサ14は、信号線を介して制御器11に接続されている。
【0030】
また、水質モニタ15は、スラッジの堆積を検出するためのもので、下部ヘッダ3内において、水管4の下方で、スラッジが堆積し易い箇所(必要に応じて複数箇所)に設けられている。水質モニタ15は、下部ヘッダ3の缶水中の酸素などにより電流が流れ、スラッジで埋まると電流が流れ難くなる。
【0031】
さらに、給水ライン12に薬注装置16が設けられている。この薬注装置16も、信号線を介して制御器11に接続されている。この薬注装置16は、制御器11からのON作動信号により、スケール除去剤の注入を行うもので、制御器11からの作動ON信号により、給水ライン12へスケール除去剤の注入を開始し、制御器11からの作動OFF信号により、給水ライン12へのスケール除去剤の注入を停止する構成となっている
【0032】
そして、制御器11は、予め記憶した薬注制御手順に基づき、薬注装置16を制御する。この薬注制御手順は、温度センサ11の検出値が第一設定値T1以上となると薬注装置16によるスケール除去剤の注入を開始し、設定注入時間t0が経過するとスケール除去剤の注入を停止する手順である。その手順の概要を
図2に示す。
【0033】
(実施例1の動作)
つぎに、実施例1の動作を
図1および
図2に基づき説明する。ボイラの運転が継続すると、水管4内へ供給される水の水質により、水管4の伝熱壁にスケールが徐々に付着し、この付着に伴って、水管4の伝熱壁の温度が上昇する。この温度上昇による伝熱壁の温度変化を温度センサ14が常時検出し、その検出値を制御器11へ出力する。
【0034】
温度センサ14の検出値が第一設定値T1に達すると、
図2の処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、YESが判定され、S2へ移行して、制御器11は、薬注装置16へ作動ON信号を出力する。この作動ON信号を受けると、薬注装置16は、そのポンプ(図示省略)が駆動され、給水ライン12へのスケール除去剤の注入を開始する。
【0035】
ここで、スケール除去剤の注入量について説明すると、スケール除去剤の注入は、前記伝熱壁の温度が比較的短時間で第一設定値T1からスケール剤注入停止を判定する第二設定値T2(<第一設定値T1)以下となるようにするためのもので、第一設定値T1により判定される厚さのスケールを除去する必要があるためのものである。スケール除去剤の注入量は、特許文献1に記載のように、第一設定値T1に応じて決定される。第二設定値T2は、製品毎にバラツキがあるので、ボイラの試運転時に設定することが望ましい。
【0036】
S2のスケール除去剤の注入によりスケール除去剤の効果が現れ、水管4の温度が低下してゆくが、S3にて温度センサ14の検出値を所定間隔で記憶してゆく。より具体的には、スケール除去剤の注入により、水管4の温度(温度センサ14の検出値T)は、模式図である
図3の低下特性線L1,L2のように、所定の低下勾配αで低下する。そして、温度センサ14の取付部またはその近傍の水管4に付着したスケールが剥離すると、低下特性線L3のように、温度センサ14の検出値が急激に低下する。なお、低下特性線L2は、スケールの剥離が生じない場合の温度センサ14の検出値を示し、スケールの剥離が生じた場合、勾配αの特性線L1の延長線を示す。
【0037】
スケールが剥離すると、水管4温度が急激に低下したかどうかを判定するS4により、YESが判定されと、処理は、S5へ移行する。水管4温度が急激に低下したかどうかの判定は、つぎのようにして行われる。温度センサ14による検出値Tの単位時間当たりの温度低下勾配が設定値以上となると、急激に低下と判定する。
【0038】
そして、S5で注入時間t0を演算する。この注入時間t0の演算は、つぎのようにして行われる。すなわち、
図3を参照して、注入開始時刻taからS5でYESが判定されるまでの時刻tbまでの所定時間t1における温度センサ14の検出値から低下特性線L1の低下勾配αを求める。所定時間t1は、好ましくは、給水時間(給水ポンプ13が作動している時間)または、燃焼時間(バーナ6が燃焼している時間)とし、給水ポンプ13およびバーナ6が燃焼停止している時間は含めない。なお、低下特性線L1が直線でない場合は、直線近似の手法により近似した直線に基づき低下勾配αを求める。
【0039】
つぎに、低下勾配αから第二設定値T2に到達するに要する時間t2を演算する。この時間t2は、時刻tbから低下特性線L1を延長して、第二設定値T2の等温線L4と交わる時刻tcまでの時間であり、推測(予測)により求めた時間である。そして、時刻tbを基準とした注入時間t0をt1+t2とする。なお、注入時間t0は、時刻tbを基準とすると、t2とすることができる。
【0040】
ついで、S6において、S5で求めた注入時間t0が経過したかどうかを判定する。t0が経過するまでは、スケール除去剤の注入が継続される。S6で、YESが判定されると、S7へ移行して、スケール除去剤の注入が停止される。
【0041】
こうして、スケール除去剤の注入は、水管4の温度が急激に低下して、温度センサ14が注入停止用の第二設定値T2を検出しても、設定した注入時間t0だけスケール除去剤の注入が継続される。その結果、温度センサ14の取付部またはその近傍のスケールが剥離しても、必要な量のスケール除去剤を注入して所期のスケール除去を行うことができる。
【0042】
S4で、YESが判定されない場合は、S8へ移行して、水管4温度が第二設定値以下となったかどうかを判定する。S8でYESが判定されると、S7へ移行して、スケール除去剤の注入が停止される。この停止制御は、特許文献1と同様である。
【0043】
このように、この実施例1は、スケールの水管4からの剥離による水管4の温度の急激な温度低下を検出したとき、低下勾配αから演算した注入時間t0が経過するとスケール除去剤の注入を停止し、急激な温度低下を検出しないときは、第二設定値T2に到達するスケール除去剤の注入を停止するように構成している。
【0044】
実施例1の変形例として、注入開始から所定時間の間の温度低下勾配αを求めて、注入時間t0を演算して、急激な温度低下を検出しないときも注入時間t0の経過でスケール除去剤の注入を停止するように構成することも可能である。実施例1の注入制御は、急激な温度低下を検出しないとき、この変形例と比較してより正確に必要な量のスケール除去剤を注入することができる。
【0045】
ところで、この実施例1では、注入開始の条件を温度センサ14の検出値Tが第一設定値t1以上で注入を開始する条件1に加えて、水質モニタ15により、水質モニタ15がスラッジにより埋もれて、その検出値が設定値以下となるとスケール除去剤の注入を開始する条件2を加えることができる。条件1と条件2とは、ORの関係とする。この場合、条件2で注入を開始するとき、注入量は、注入開始の温度センサ14の検出値により求める。注入量の設定以外の制御は、
図2に示す制御で行われる。