特許第5724552号(P5724552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724552
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】薄板ガラス製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   C03B17/06
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-81961(P2011-81961)
(22)【出願日】2011年4月1日
(65)【公開番号】特開2012-214349(P2012-214349A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2013年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】加埜 智典
(72)【発明者】
【氏名】西浦 徳作
(72)【発明者】
【氏名】上田 孝喜
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆英
(72)【発明者】
【氏名】永田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】織田 英孝
(72)【発明者】
【氏名】岩間 裕史
【審査官】 植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−531452(JP,A)
【文献】 特表2009−535290(JP,A)
【文献】 特開昭63−151633(JP,A)
【文献】 特開2011−178657(JP,A)
【文献】 特表2012−519134(JP,A)
【文献】 特表2013−517217(JP,A)
【文献】 特表2014−508096(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/007681(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部にオーバーフロー溝を有し、前記オーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを略楔状の外側面部に沿って流下させながら下端部で融合一体化させて薄板ガラスを成形する成形体本体と、前記成形体本体の幅方向両端部のそれぞれに外嵌され、前記成形体本体の外側面部に沿って流下する溶融ガラスの幅方向の広がりを規制する規制壁部を形成する一対の覆設部材とを備えた成形体を有する薄板ガラス製造装置において、
前記一対の覆設部材の各規制壁部に、前記成形体本体の下端部を含む下部領域を下方から覆いながら幅方向中央部側に延出する延出部を設け、前記延出部と前記成形体本体との間に隙間を空けるとともに、前記延出部の先端部を前記成形体本体の外側面部に沿って正常に流下する本流溶融ガラスの流下エリアに指向させたことを特徴とする薄板ガラス製造装置。
【請求項2】
前記延出部が、前記成形体本体の下端部に移行するに連れて、幅方向端部から幅方向中央側に漸次接近するように延出していることを特徴とする請求項1に記載の薄板ガラス製造装置。
【請求項3】
前記延出部が、前記成形体本体の外側面部に沿った薄肉部材で構成され、その表面に本流溶融ガラスが乗り上げ可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄板ガラス製造装置。
【請求項4】
前記延出部が、表面に凹凸を有することを特徴とする請求項3に記載の薄板ガラス製造装置。
【請求項5】
前記延出部が、その先端部で本流溶融ガラスの幅方向の広がりを規制可能な厚肉部材で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄板ガラス製造装置。
【請求項6】
前記延出部が、耐熱性及び耐食性を有する金属、これらの合金、又はこれらの複合材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄板ガラス製造装置。
【請求項7】
前記延出部の幅方向の最大延出量が、10〜200mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄板ガラス製造装置。
【請求項8】
前記延出部の高さ方向の延出開始位置が、前記成形体本体の下端部から前記成形体本体の外側面部に沿って上方に30mm以上離反していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の薄板ガラス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーフローダウンドロー法による薄板ガラス製造技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板に代表されるように、各種分野に利用される薄板ガラスには、表面欠陥やうねりに対して厳しい製品品位が要求されるのが実情である。
【0003】
そこで、この種の薄板ガラスの製造方法としては、平滑で欠陥のないガラス表面を実現可能なオーバーフローダウンドロー法が利用される場合がある。
【0004】
この製造方法は、図5に示すように、成形体1の頂部のオーバーフロー溝4に溶融ガラスGを流し込み、このオーバーフロー溝4から両側に溢れ出た溶融ガラスGを略楔状の成形体1の外側面部5(垂直面部5aと傾斜面部5bとを有する)に沿って流下させながら成形体1の下端部5cで融合一体化し、1枚の薄板ガラスを連続成形するというものである。この製造方法の特徴は、成形された薄板ガラスの表裏両表面が、成形過程において、成形体1の如何なる部位とも接触せずに成形されるので、非常に平面度がよく平滑で傷等の欠陥のない火造り面となる点にある。
【0005】
詳細には、この製造方法に使用される成形体1は、例えば、その成形体本体2の外側面部5に沿って流下する溶融ガラスGの幅方向の広がりを規制する規制壁部3bを有している(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。この場合、オーバーフロー溝4から溢れ出た溶融ガラスGの幅方向両端部は、成形体本体2の外側面部5に達した段階で、規制壁部3bに沿うように下方に誘導される。この規制壁部3bは、図6に示すように、成形体本体2の幅方向両端部に、一対の覆設部材3(詳しくは嵌合凹部3a)を外嵌して形成されるのが一般的である。付言すれば、成形体本体2の幅方向両端部に外嵌された覆設部材3の端面が、規制壁部3bとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−526671号公報
【特許文献2】特表2008−539159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、成形体本体2に覆設部材3を外嵌した構造を有する成形体1の場合、図7に示すように、オーバーフロー溝4から溢れ出た溶融ガラスGが、規制壁部3bに沿って下方に流下する過程で成形体本体2と覆設部材3の間に侵入することがある。これは、薄板ガラスを成形する過程で成形体本体2と覆設部材3が共に高温となって、両者2,3の間に熱膨張差に起因した隙間が必然的に生じてしまうためである。そして、成形体本体2と覆設部材3の間の隙間に例えば図7中のB方向から侵入した溶融ガラス(以下、分流溶融ガラスという)Gxは、その隙間を通って成形体本体2の下端部5cにおいて規制壁部3bに沿いながら外部に流出する。
【0008】
一方、成形体本体2の外側面部5に沿って正常に流下している溶融ガラス(以下、本流溶融ガラスという。)Gaは、図7中の矢印Aに示すように、成形体本体2の下端部5cに向かうに連れて幅方向に徐々に収縮を来たし、成形体本体2の下方部において規制壁部3bから離反する。そのため、成形体本体2の下端部において、本流溶融ガラスGaと分流溶融ガラスGxとが合流せず、分流溶融ガラスGxが成形体本体2の下端部5cから単独で筋状に流下する。その結果、分流溶融ガラスGxは、時間の経過と共に、成形体本体2の下端部5cの直下方位置で雫状の塊を形成し、ある程度の大きさになった時点で雫状ガラスGx1として落下する。そして、このように雫状ガラスGx1が落下すると、本流溶融ガラスGaから成形される薄板ガラスの成形工程に種々の悪影響を及ぼす。すなわち、落下した雫状ガラスGx1が落下途中で牽引ローラ等と衝突して破砕するとガラス粉が発生して、薄板ガラスが汚染されるおそれがある。また、落下した雫状ガラスGx1が薄板ガラスに衝突するなどして薄板ガラスが破損するという重大なトラブルが生じるおそれもある。
【0009】
本発明は、上記の実情に鑑み、オーバーフローダウンドロー法によって薄板ガラスを成形する際に、本流溶融ガラスから分離した分流溶融ガラスによって、成形される薄板ガラスに破損などの不具合が生じるという事態を確実に防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために創案された本発明は、頂部にオーバーフロー溝を有し、前記オーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを略楔状の外側面部に沿って流下させながら下端部で融合一体化させて薄板ガラスを成形する成形体本体と、前記成形体本体の幅方向両端部のそれぞれに外嵌され、前記成形体本体の外側面部に沿って流下する溶融ガラスの幅方向の広がりを規制する規制壁部を形成する一対の覆設部材とを備えた成形体を有する薄板ガラス製造装置において、前記一対の覆設部材の各規制壁部に、前記成形体本体の下端部を含む下部領域を下方から覆いながら幅方向中央部側に延出する延出部を設け、前記延出部と前記成形体本体との間に隙間を空けるとともに、前記延出部の先端部を前記成形体の外側面部に沿って正常に流下する本流溶融ガラスの流下エリアに指向させたことに特徴づけられる。
【0011】
このような構成によれば、成形体本体の下端部を含む下部領域で、覆設部材と成形体本体との間の隙間に侵入した分流溶融ガラスを延出部によってと成形体本体との間の隙間を利用して成形体本体の幅方向中央側に誘導し、成形体本体の外側面部に沿って流下する本流溶融ガラスに合流させることができる。したがって、分流溶融ガラスが単独で成形体本体の下端部から流下することがなく、分流溶融ガラスに起因した雫状ガラスが形成されるという事態を確実に防止することができる。
【0012】
上記の構成において、前記延出部が、前記成形体本体の下端部に移行するに連れて、幅方向端部から幅方向中央側に漸次接近するように延出していることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、本流溶融ガラスの幅方向の収縮に倣うように、延出部の形状が変化することになるので、延出部が本流溶融ガラスの流れに与える抵抗を小さくすることができる。
【0014】
上記の構成において、前記延出部が、前記成形体本体の外側面部に沿った薄肉部材で構成され、その表面に本流溶融ガラスが乗り上げ可能であってもよい。
【0015】
このようにすれば、本流溶融ガラスが、延出部に乗り上げることができるので、本流溶融ガラスの幅方向の収縮を最小限に抑えることができる。換言すれば、成形される薄板ガラスの幅方向寸法を維持することが可能となる。
【0016】
この場合、前記延出部が、表面に凹凸を有することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、延出部の表面の凹凸により、本流溶融ガラスの幅方向の収縮をより確実に抑えることができる。なお、本流溶融ガラスと延出部の表面との間の濡れ性が良好である場合には、延出部の表面は平滑であってもよい。
【0018】
上記の構成において、前記延出部が、その先端部で本流溶融ガラスの幅方向の広がりを規制可能な厚肉部材で構成されていてもよい。
【0019】
このようにすれば、延出部の先端部が、本流溶融ガラスの幅方向の広がりを規制する規制壁部として機能する。そのため、延出部によって本流溶融ガラスの幅方向の広がりを規制しつつ、延出部の先端部から外部に流出する分流溶融ガラスを本流溶融ガラスに確実に合流させることが可能となる。なお、延出部は、その先端部に成形体本体の表面に対して略垂直に立設する鍔部を有する構成としてもよい。このようにすれば、仮に延出部を薄肉部材で構成した場合であっても、上述のように厚肉部材で構成した場合と同様の効果を得ることができる。
【0020】
上記の構成において、前記延出部が、耐熱性及び耐食性を有する金属、これらの合金、又はこれらの複合材料で形成されていてもよい。
【0021】
このようにすれば、延出部の機械的な変形や、化学的な侵食による破損を低減することができるため、分流溶融ガラスを本流溶融ガラスに安定的に合流させることができる。
【0022】
上記の構成において、前記延出部の幅方向への最大延出量が、10〜200mmであることが好ましい。
【0023】
すなわち、10mm未満であると、延出部による幅方向中央側への誘導距離が短くなりすぎて、分流溶融ガラスを本流溶融ガラスに合流させることが困難になるおそれがある。一方、200mmを越えると、本流溶融ガラスの流れから受ける抵抗が大きくなりすぎて、延出部が変形を来たすおそれがある。したがって、これらの問題を回避すべく、延出部の幅方向への最大延出量は、上記数値範囲であることが好ましい。
【0024】
上記の構成において、前記延出部の高さ方向の延出開始位置が、前記成形体本体の下端部から前記成形体本体の外側面部に沿って上方に30mm以上離反していることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、本流溶融ガラスの幅方向の収縮開始位置に、延出部を確実に位置させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によれば、成形体本体の下端部を含む下部領域で、覆設部材と成形体本体との間の隙間に侵入した分流溶融ガラスを延出部によって幅方向中央側に誘導し、成形体本体の外側面部に沿って流下する本流溶融ガラスに合流させることができる。したがって、分流溶融ガラスが単独で成形体本体の下端部から流下して、雫状ガラスが形成されるという事態を確実に防止することが可能となる。よって、本流溶融ガラスから分離した分流溶融ガラスによって、成形される薄板ガラスに破損などの不具合が生じるのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る薄板ガラス製造装置の成形体近傍を示す正面図である。
図2図1の延出部を拡大して示す斜視図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る薄板ガラス製造装置の成形体近傍を示す正面図である。
図4図3の延出部を拡大して示す斜視図である。
図5】従来の薄板ガラス製造装置の成形体近傍を示す斜視図である。
図6】従来の成形体の部品分解配列斜視図である。
図7】従来の薄板ガラス製造装置の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態に係る薄板ガラス製造装置の要部を示す正面図である。なお、従来技術で説明した構成に対応する構成については同一符号を付して説明する。この薄板ガラス製造装置は、オーバーフローダウンドロー法を実行するための成形体1を備えている。
【0030】
成形体1は、成形体本体2と、成形体本体2の幅方向両端部にそれぞれ外嵌された一対の覆設部材3とを備えている。
【0031】
成形体本体2は、製造される薄板ガラスの幅方向に対応する方向に沿って長尺であり、頂部にその長手方向に沿って形成されたオーバーフロー溝4と、略楔状に下方に向かって互いに漸次接近する一対の外側面部5とを有する。
【0032】
この成形体本体2の頂部に形成されたオーバーフロー溝4には、溶融ガラスGが流し込まれ、両側に溢れ出た溶融ガラスGのうち、本流溶融ガラスGaが、成形体本体2の略楔状をなす両外側面部5に沿って流下する。成形体本体2の両外側面部5に沿って流下する本流溶融ガラスGaは、成形体本体2の下端部のルートと称される部分で融合一体化され、本流溶融ガラスGaから一枚の薄板ガラスが連続的に成形される。なお、融合一体化された本流溶融ガラスGaの幅方向両端部は、成形体1の下方で牽引ローラ(図示しない)等によって表裏両側から挟持されながら下方へと送られる。
【0033】
成形体本体2の外側面部5は、垂直面部5aと、傾斜面部5bとを上下に連接して構成されており、傾斜面部5bの交点が、上述のルートと称される成形体本体2の下端部5cを構成する。
【0034】
一方、覆設部材3は、成形体本体2の幅方向両端部に外嵌される嵌合凹部3aを有している(詳細には、図5を参照)。そして、覆設部材3は、その嵌合凹部3aを成形体本体2に嵌合させた状態で、成形体本体2の幅方向両端部を覆うと共に、成形体本体2の外側面部5に沿って流下する溶融ガラスGの幅方向の広がりを規制する規制壁部3bを形成する。なお、規制壁部3bは、例えば1〜10mmの厚みを呈する。
【0035】
更に、本実施形態の特徴的な構成として、覆設部材3の規制壁部3bには、成形体本体2の下端部5cを含む下部領域を下方から覆いながら幅方向中央部側に延出する延出部6が設けられている。そして、この延出部6の先端部を、成形体本体2の外側面部5に沿って正常に流下する本流溶融ガラスGa(図中の矢印Aで示す流れ)の流下エリアに指向させている。そのため、延出部6の先端部が、本流溶融ガラスGaの流下エリアと重複している。この延出部6の本流溶融ガラスGaの流下エリアとの重複部分は、少なくとも成形体本体2の下端部5cにおいて形成されていればよい。
【0036】
詳細には、図2に示すように、この実施形態では、延出部6は、成形体本体2の外側面部5に沿った薄肉部材(覆設部材3の規制壁部3bよりも薄い範囲で、例えば0.5〜3mmの厚み)で構成されると共に、成形体本体2の下端部に移行するに連れて、幅方向端部から幅方向中央側に漸次接近するように延出している。換言すれば、延出部6の先端部の下方側がその上方側よりも幅方向中央側に位置するように、延出部6の先端部が傾斜している。そのため、延出部6の表面に、本流溶融ガラスGaが乗り上げるようになっている。すなわち、延出部6の表面の一部が、本流溶融ガラスGaの流下エリアの一部を構成している。
【0037】
このように覆設部材3に延出部6を設ければ、成形体本体2の下端部5cを含む下部領域において、覆設部材3と成形体本体2との熱膨張差に起因して両者2,3の間に形成された隙間に図中の矢印B方向から侵入した分流溶融ガラスGxを延出部6によって幅方向中央側に誘導し、本流溶融ガラスGaに確実に合流させることができる。したがって、分流溶融ガラスGxが単独で成形体本体2の下端部から流下することがなく、分流溶融ガラスGxに起因した雫状ガラス(図7を参照)が形成されるという事態を確実に防止することができる。よって、本流溶融ガラスGaから分離した分流溶融ガラスGxによって、成形される薄板ガラスが汚染されたり、破損するという致命的な問題が生じるという事態を確実に防止し、安定した薄板ガラスの製造を維持することができる。
【0038】
ここで、本流溶融ガラスGaが乗り上げる延出部6の表面は、凹凸を有していることが好ましい。具体的には、延出部6の表面は、例えば、直径1〜2mmで、深さ若しくは突出高さ1〜2mmの凹部若しくは凸部が2〜3mmの間隔で点在するような表面状態であることが好ましい。このようにすれば、本流溶融ガラスGaと延出部6との間の密着性が向上するため、本流溶融ガラスGaの幅方向の収縮を抑えることができる。そのため、本流溶融ガラスGaの幅方向寸法を幅広に維持することが可能となる。
【0039】
また、延出部6は、耐熱性及び耐食性を有する金属、これらの合金、又はこれらの複合材料で形成される。具体的には、例えば、白金、白金合金、セラミック分散複合材料などによって形成される。
【0040】
更に、延出部6の幅方向の最大寸法L1は、10〜200mmであることが好ましく、20〜180mmであることがより好ましく、30〜160mmであることが最も好ましい。また、延出部6の高さ方向の最大寸法L2は、30mm以上であることが好ましく、30mm以上400mm以下であることがより好ましく、30mm以上200mm以下であることが最も好ましい。ただし、L1≦L2とする。
【0041】
次に、以上のように構成された薄板ガラス製造装置によって、薄板ガラスを製造する方法について説明する。
【0042】
図1に示すように、まず、図示しない供給パイプからオーバーフロー溝4の内部に溶融ガラスGを供給し、オーバーフロー溝4から成形体本体2の両側に溶融ガラスGを溢れ出させる。この成形体本体2の両側に溢れ出た溶融ガラスGのうち、本流溶融ガラスGaは、覆設部材3の規制壁部3bによって幅方向の広がりを規制されながら、両外側面部5に沿って流下して、成形体本体2の下端部で融合一体化される。この際、本流溶融ガラスGaから分離して、成形体本体2と覆設部材3との間の隙間に侵入する分流溶融ガラスGxが生じるが、この分流溶融ガラスGxは、成形体本体2の下端部を含む下部領域(図示例では、成形体本体2の下端部)において、延出部6によって下方から受け止められると共に、延出部6に沿って幅方向中央側へと誘導されて本流溶融ガラスGaと合流する。したがって、本流溶融ガラスGaと分流溶融ガラスGxとが成形体本体2の下端部において再び合流した後、成形体本体2の下端部の下方で延伸されながら冷却され、薄板ガラスが連続的に成形される。
【0043】
図3は、本発明の第2実施形態に係る薄板ガラス製造装置の要部を示す正面図である。この第2実施形態に係る薄板ガラス製造装置が、第1実施形態に係る薄板ガラス製造装置と相違するところは、覆設部材3に設けられた延出部6の構造にある。
【0044】
すなわち、延出部6が、その先端縁6aで本流溶融ガラスGaの幅方向の広がりを規制可能な厚肉部材で構成されている点が相違する。このようにすれば、延出部6の先端部6aが、本流溶融ガラスGaの幅方向の広がりを規制する規制壁部として機能する。そのため、延出部6によって本流溶融ガラスGaの幅方向の広がりを規制しつつ、延出部6の先端から外部に流出する分流溶融ガラスGxを本流溶融ガラスGaに確実に合流させることが可能となる。
【0045】
延出部6の幅方向の最大寸法L1や、延出部6の高さ方向の最大寸法L2の好ましい範囲は、上記の第1実施形態と同様とする。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態では、延出部6によって成形体本体5の外側面部5の傾斜面部5bを覆う場合を図示して説明したが、延出部6は外側面部5の傾斜面5bから垂直面部5aまでを連続的に覆っていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 成形体
2 成形体本体
3 覆設部材
3a 嵌合凹部
3b 規制壁部
4 オーバーフロー溝
5 外側面部
5a 垂直面部
5b 傾斜面部
5c 下端部
6 延出部
G 溶融ガラス
Ga 本流溶融ガラス
Gx 分流溶融ガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7