【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部、および質量%を示す。
【0042】
[トナー定着性評価]
スチレン−アクリル系樹脂のトナーを採用したDocu Centre Color f450(富士ゼロックス社製)、ImagePress iR/C(キヤノン社製)並びにポリエステル系樹脂のトナーを採用したIpsio SP C810(リコー社製)を用いて、カラー印刷を行い、3重色で形成した黒印刷を全面に形成した。印刷後、24時間経過した印刷サンプルにセロファンテープ(ニチバン社製)を黒印刷部に貼り付け、180度剥離で約5mm/秒の速さでゆっくりとテープを剥がした。剥離後のトナーの紙への定着度合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。
〔評価基準〕
◎:トナーがテープへ移行せず、ピッキング面に白抜けがない。
○:トナーがテープへ若干(2%の面積以下)移行しているが、ピッキング面もの白抜けは殆ど見られず、実用上問題ない。
△:トナーがテープへ部分的に移行し、ピッキング面の白抜けが見られるレベル
×:トナーがテープへ移行し、ピッキング面の白抜けが目立つレベル。
【0043】
[オフセット印刷適性の評価]
三菱製平版印刷機(型式:ダイヤ4E4型)により、印刷インキ(商品名:Values−G 墨 Sタイプ、DIC社製)を用いて、印刷速度:8000枚/時間で印刷した。
〔評価基準〕
◎:ブランケットの紙粉・印字品質都共に全く問題がない。
○:ブランケットの紙粉・印字品質都共にほとんど問題がない。
△:ブランケットに紙粉が付着、白抜けが僅かに観られる。
×:ブランケットに紙粉の付着が多く、白抜けが観られる。
【0044】
〔トナーブリスターの評価〕
撥水性印刷用紙のトナーブリスター評価は、Docu Centre Color f450(富士ゼロックス社製)を用い、28℃、85%RH、及び、22℃、55%RHの2つの環境下で実施した。コピー原稿は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色の3色の網点面積率100%のものを用い、片面プリント時と両面プリント時の画像が用紙の表裏の同じ位置になるようにし、記録テストを行った。給紙サンプルは、包装開封直後、片面プリントを行い、1分間放置後、両面プリントを実施した。評価基準は、以下の3段階とした。
〔評価基準〕
○:全くトナーブリスターの発生していないもの
△:トナーブリスターが発生しているが、目視では確認できないもの
×:トナーブリスターを目視で確認でき、画像を乱すもの
【0045】
〔コールドオフセット及び汚れの評価〕
上記と同様に連続20枚プリントし、プリント後の画像部に白抜けが観られるか、白紙部に汚れが観られるか、目視で評価した。
〔評価基準〕
○:画像部に白抜けや、白紙部に汚れが発生していないもの
△:画像部に白抜けや、白紙部に汚れが目立たないが若干観られる
×:画像部に白抜けや、白紙部に汚れが観られる
【0046】
〔トナーブロッキングの評価〕
上記と同様に連続100枚プリントし、プリント終了後、排紙部トレー上に積層した印字物を一枚ずつ取り上げ、トナー部分が密着しているものは手で剥がした。剥がした面を目視で評価した。
〔評価基準〕
○:殆どトナー同士が密着することなく、剥がした後も印字面に全く影響がない
△:印字物のトナー同士が密着し剥れ難いものがあり、画像部にザラツキがあるものが2枚以下。
×:印字物のトナー同士が密着し剥れ難いものがあり、画像部にザラツキがあるものが3枚以上発生。酷いものは剥がす際に、相間剥離が生じる場合がある。
【0047】
[撥水性評価]
撥水度はJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.68:2000(紙及び板紙−はっ水性試験方法)に準じて測定した。前記試験方法では、撥水度はR1からR10まで定められ、Rの数値が大きいほど撥水性が良好である。
【0048】
[平滑度の測定]
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000(紙及び板紙−平滑度及び透気度試験方法)に準じて、王研式平滑度を測定した。
【0049】
[透気度の測定]
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000(紙及び板紙−平滑度及び透気度試験方法)に準じて、王研式透気度を測定した。
【0050】
<実施例1>
[パルプ繊維を主成分とする支持体の製造]
100%広葉樹材のクラフトパルプ100部に、湿潤紙力増強剤(商品名:「アラフィックス255」、荒川化学社製)0.4部、サイズ剤(商品名:「ポリストロン」、荒川化学社製)0.3部、硫酸バンド0.8部を配合して抄紙原料とし、公知の長網多筒式抄紙機にて上質紙を製造した。
【0051】
[表面処理液の調製、撥水性印刷用紙の製造]
次いで、パラフィンワックス化合物の撥水剤(商品名:「WR3906」、星光PMC社製)を100部、PVA(クラレ社製)を25部、連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:「OJ2000H」(Tg:−5℃)、JSR社製)を70部、防滑剤としてマレイン酸石油樹脂カリウム塩を5部配合した表面処理液をサイズプレスにより固形分で片面当り2.0g/m
2塗布し、製造直後の含有水分4.5%とし、オンマシンカレンダー処理で平滑度60秒、透気度20秒、坪量81.4g/m
2の撥水性印刷用紙を得た。
【0052】
<実施例2>
実施例1において、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスとして(商品名:「AT−011」(Tg:−12℃)、A&L社製)、撥水剤としてパラフィンワックス系化合物(商品名:「セレスタール60R」、一方社製)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0053】
<実施例3>
実施例1において、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:「OJ2000H」、JSR社製)を40部にし、中空プラスチックピグメント(商品名:「AE852」、JSR社製)を10部添加した以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0054】
<実施例4>
実施例1において、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:「OJ2000H」、JSR社製)を50部に、スチレン−アクリルエマルジョン(商品名:「XP8812」(スチレン含有量:55質量%)、星光PMC社製)を30部、PVA(クラレ社製)を15部添加した以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0055】
<実施例5>
実施例4において、表面処理液中のスチレン−アクリルエマルジョン(商品名:「XP8812」(スチレン含有量:55質量%)、星光PMC社製)をアクリルエマルジョン(商品名:「XP8800」、星光PMC社製)とした以外は実施例4と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0056】
<実施例6>
実施例1において、表面処理液中のPVA(クラレ社製)を55部、連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:「OJ2000H」、JSR社製)を40部とした以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0057】
<実施例7>
実施例1において、表面処理液中のPVA(クラレ社製)を5部、連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:「OJ2000H」、JSR社製)を90部とした以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0058】
<実施例8>
実施例1において、塗布量を固形分で片面当り1.0g/m
2とした以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0059】
<実施例9>
実施例8において、塗布量を固形分で片面当り3.5g/m
2とした以外は実施例8と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0060】
<実施例10>
連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの代わりにコア−シェル型スチレン−ブタジエン系共重合体ラッテクス(商品名:「X300B」(Tg:−13℃)、JSR社製)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0061】
<実施例11>
実施例1において、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:「OJ2000H」、JSR社製)を50部、スチレン−ブタジエン系コア−シェル型バインダーピグメント(商品名:「L−8808」、Tg:50℃、旭化成社製)20部を用いた以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0062】
<実施例12>
実施例1において、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの代わりに下記の連続異組成型アクリル系樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
(連続異組成型アクリル系樹脂の製造)
冷却管、温度計、撹拌機、滴下ロートAを有するセパラブルフラスコに、イオン交換水150部を仕込み75℃に昇温した。予めアニオン性界面活性剤2.5部、アクリル酸ブチル280部、スチレン40部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル12.5部、イオン交換水125部からなる乳化物を滴下ロートAに仕込み、3時間かけてセパラブルフラスコに滴下した。同時にアニオン性界面活性剤2.5部、メタクリル酸メチル167.5部、イオン交換水125部からなる乳化物を滴下ロートBに仕込み、1.5時間かけて撹拌下の滴下ロートAに滴下した。さらに重合開始剤として過硫酸アンモニウムの1%水溶液100部を3時間かけて滴下重合した。滴下終了後、1時間熟成し、連続異組成型アクリル系樹脂エマルジョンを得た(重量平均分子量Mw:180万、Tg:−1.5℃)。
【0063】
<比較例1>
実施例1において、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの代わりに異相構造を有さない単一Tg(−13℃)のスチレン−ブタジエン系共重合体ラッテクス(商品名:「T2550K」、JSR社製)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0064】
<比較例2>
実施例1において、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの代わりに異相構造を有さない高Tg(36℃)のスチレン−ブタジエン系共重合体ラッテクス(商品名:「PA1214」、A&L社製)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0065】
<比較例3>
実施例1において、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの代わりに異相構造を有さず、スチレンモノマー分が55%のスチレン−アクリル系共重合体エマルジョン(商品名:「XP8812」(Tg:−9℃)、星光PMC社製)に変更した以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0066】
<比較例4>
実施例1おいて、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの代わりに異相構造を有さないスチレン−アクリル系共重合体エマルジョン(商品名:「ポリゾールAP2681」(Tg:37℃)、昭和高分子社製)に変更した以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0067】
<比較例5>
実施例1において、表面処理液中の連続異組成型スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスを無添加とし、PVAを95部に変更した以外は実施例1と同様にして撥水性印刷用紙を得た。
【0068】
<比較例6>
市販の耐水コート紙(商品名:「ポエム」、北越紀州製紙社製)について表2に示す特性を評価した。
【0069】
<比較例7>
市販の積層耐水紙(商品名:「ラミフリー」、中川製作所社製)について表2に示す特性を評価した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1から明らかなように実施例1〜12は撥水性、トナー定着性、画像品位、オフセット印刷適性に優れたものである。これに対して、比較例1〜5はトナー定着性が概して劣る。比較例6〜7は、トナー定着性に優れるものの、撥水性、画像品位が劣っている。