(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の構成では、2つの巻線の間の電気的接続は常に維持されたままであったため、一方の巻線だけを利用する際にも、他方の巻線におけるリアクタンスや自己誘導起電力などの影響を受けて作動性能に影響を与える恐れがあった。
【0007】
本発明の目的は、各電機子巻線に対する機能的悪影響を防止しつつ、2つの電機子巻線を円滑に切り替えることができる交流電動機の巻線切替装置及び交流電動機駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、インバータにより給電される交流電動機に備えられた複数相の第1電機子巻線及び第2電機子巻線に係わる巻線切り替えを行う、交流電動機の巻線切替装置であって、前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを直列に接続する接続導電路における当該第1電機子巻線と第2電機子巻線との間に配置され、前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断することで前記第1電機子巻線及び前記第2電機子巻線のうち前記第1電機子巻線に前記インバータからの供給電力を導く第1状態と、前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを電気的に直列接続して前記第1電機子巻線及び前記第2電機子巻線の両方に前記インバータからの供給電力を導く第2状態とを、切替可能な、第1半導体スイッチ手段と、
前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線の間に誘起される電圧が前記第1半導体スイッチ手段の耐圧を超える可能性がある前記インバータ又は前記交流電動機の異常検出状態に対応した、前記巻線切替装置の外部からの非常用切替制御信号に応じて、前記第1電機子巻線及び前記第2電機子巻線の間に誘起される電圧を最小
として前記第1半導体スイッチ手段を過電圧から保護する電流経路を形成するための、経路切替手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
本願第1発明では、第1電機子巻線にインバータからの供給電力を導いて作動させる第1状態においては、第1半導体スイッチ手段により第1電機子巻線と第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断する。これにより、一方の電機子巻線だけを利用する際にも他方の電機子巻線における影響を受ける従来構造と異なり、第1電機子巻線は、第2電機子巻線からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。また、第1電機子巻線及び第2電機子巻線の両方にインバータからの供給電力を導いて作動させる第2状態においては、第1半導体スイッチ手段により第1電機子巻線と第2電機子巻線とを電気的に直列接続する。これにより、両方の電機子巻線の作動性能を定格通りに発揮することができる。
【0010】
また、本願第1発明においては、半導体スイッチ素子で構成する第1半導体スイッチ手段により第1電機子巻線と第2電機子巻線との間の電気的な接続と遮断の切り替えを瞬時に行う。これにより、例えば機械的スイッチ手段の場合に生じるチャタリングなどの電気的衝撃を無くし、2つの電機子巻線の間で上記リアクタンスや自己誘電起電力などによる電磁気的影響を機能的に遮断することができる。
【0011】
これらの結果、各電機子巻線に対する機能的悪影響を防止しつつ、2つの電機子巻線を円滑に切り替えることができる。
また、本願第1発明においては、各半導体スイッチ手段、特に2つの電機子巻線の間に配置されている半導体スイッチ手段を過電圧から保護することができる。この結果、交流電動機の駆動制御における安全性を向上することができる。
【0012】
第2発明は、上記第1発明において、前記第1半導体スイッチ手段は、前記第1状態において当該第1状態に対応した第1電気的中性点と前記第1電機子巻線の前記インバータに接続される側と反対側の第1巻線出力端子とを接続するとともに、前記第2状態において前記第1電気的中性点と前記第1巻線出力端子とを遮断する、第1スイッチ手段と、前記第2状態において前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを直列に接続するとともに、前記第1状態において前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを遮断する、第2スイッチ手段と、を備え、前記第2電機子巻線は、前記第2スイッチ手段に接続される側と反対側の第2巻線出力端子が前記第2状態に対応した第2電気的中性点に接続していることを特徴とする。
【0013】
このように第1半導体スイッチ手段を構成し、第1電気的中性点と第2電気的中性点とを接続することで、2つの電機子巻線を使用したY結線に対する上記第1状態と第2状態との切り替えを簡易な配線構成で実現することができる。また、第1電機子巻線にインバータからの供給電力を導いて作動させる第1状態においては、第2スイッチ手段が第1電機子巻線と第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断することで、第1電機子巻線が第2電機子巻線からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を確実に発揮することができる。また、第1電機子巻線と第2電機子巻線の両方が一つのハウジングに収納されて一つのモータを構成する場合、当該ハウジングの内部で上記第2電気的中性点が第2電機子巻線の巻き終わり部分に形成されることで、外部の配線を省略化して交流電動機の組み立てを容易にし、生産性を向上する効果もある。
【0014】
第3発明は、上記第2発明において、前記第1半導体スイッチ手段は、さらに、前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断して前記第2電機子巻線に前記インバータからの供給電力を導く第3状態と、前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを電気的に並列接続して前記第1電機子巻線及び前記第2電機子巻線の両方に前記インバータからの供給電力を導く第4状態とを、切替可能であり、前記第3状態及び前記第4状態において前記第2電機子巻線の前記第2スイッチ手段に接続される側の第2巻線入力端子を前記インバータに接続するとともに、前記第1状態及び前記第2状態において前記第2巻線入力端子と前記インバータとを遮断する、第3スイッチ手段を備え、前記第1スイッチ手段は、前記第4状態において前記第1電気的中性点と前記第1電機子巻線とを接続し、前記第2スイッチ手段は、前記第3状態及び前記第4状態のいずれにおいても前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを遮断する、ことを特徴とする。
【0015】
上記第2発明の構成に加えてこのように第1半導体スイッチ手段を構成し、第1電気的中性点と第2電気的中性点とを接続することで、第2電機子巻線にインバータからの供給電力を導いて作動させる第3状態と、第1電機子巻線及び第2電機子巻線の両方に並列に前記インバータからの供給電力を導いて作動させる第4状態とが可能となり、2つの電機子巻線を使用したY結線に対する上記4つの状態の切り替えを簡易な配線構成で実現することができる。また、第2電機子巻線にインバータからの供給電力を導いて作動させる第3状態においては、第2スイッチ手段が第1電機子巻線と第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断することで、第2電機子巻線が第1電機子巻線からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。
【0016】
第4発明は、上記第2又は第3発明において、第1スイッチ手段及び前記第2スイッチ手段のそれぞれは、少なくとも、前記複数相の相数と同数の絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子を備えることを特徴とする。
【0017】
これにより、各半導体スイッチ手段における切り替え速度を瞬時に行うことが可能となり、切り替え速度が遅い場合に生じるトルク抜けや制動トルクの発生などの電気的衝撃を大幅に軽減させることができる。
【0018】
第5発明は、上記第4発明において、前記交流電動機の3相の前記第1電機子巻線及び前記第2電機子巻線に対応して、前記第1スイッチ手段及び前記第2スイッチ手段のそれぞれは、3つの絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子を備えることを特徴とする。
【0019】
これにより、一般的に使用されている3相交流電動機への適用が可能となり、各相にそれぞれ対応して個別に接続する各半導体スイッチの素子には耐電流値が比較的低い汎用的な仕様の絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子を使用できる。この結果、発熱を抑制できるとともに巻線切替装置の製造コストを抑えることが可能となる。
【0020】
第6発明は、上記第5発明において、前記第1スイッチ手段の前記3つの絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子と、前記第2スイッチ手段の前記3つの絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子とは、1つの半導体モジュールとして一体化されていることを特徴とする。
【0021】
これにより、巻線切替装置が第1スイッチ手段及び第2スイッチ手段として備える6つの絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子を、その周囲の接続配線も含めて汎用的な一つの半導体モジュールで構成することができる。この結果、巻線切替装置の全体における配線の省略化、小型化、及び軽量化が可能となり、例えば電気自動車に適用する場合などにおいて限定された設置空間における配置レイアウトの自由度が向上する。
【0022】
第7発明は、上記第4乃至第6発明のいずれかにおいて、前記第1スイッチ手段の前記絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子は、ノーマリオンタイプのスイッチであり、前記第2スイッチ手段の前記絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子は、ノーマリオフタイプのスイッチであることを特徴とする。
【0023】
第1スイッチ手段側にノーマリオンタイプを用いて、第2スイッチ手段側には上記と逆のノーマリオフタイプを用いることにより、第1状態と第2状態とで切り替えを行う際、第1スイッチ手段側と第2スイッチ手段側とで駆動信号を共通化することができる。
【0024】
第8発明は、上記第4乃至第6発明のいずれかにおいて、前記第1スイッチ手段の前記絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子は、ノーマリオフタイプのスイッチであり、前記第2スイッチ手段の前記絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ素子は、ノーマリオンタイプのスイッチであることを特徴とする。
【0025】
第2スイッチ手段側にノーマリオンタイプを用いて、第1スイッチ手段側には上記と逆のノーマリオフタイプを用いることにより、第1状態と第2状態とで切り替えを行う際、第1スイッチ手段側と第2スイッチ手段側とで駆動信号を共通化することができる。
【0026】
第9発明は、上記第1発明において、前記インバータに対して前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線のいずれにも並列に配置され、前記第1状態においては、前記インバータと前記第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断して前記第1電機子巻線のみでデルタ結線を構成する前記インバータへの接続と、前記第2状態においては、直列接続した前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線の両方でデルタ結線を構成する前記インバータへの接続とを、切替可能な、第2半導体スイッチ手段を有することを特徴とする。
【0027】
これにより、第1半導体スイッチ手段と第2半導体スイッチ手段の切り替えを組み合わせることで、第1状態では第1電機子巻線のみでデルタ結線を構成してインバータに接続し、第2状態では直列接続した第1電機子巻線と第2電機子巻線の両方でデルタ結線を構成してインバータに接続することができる。そして第1状態においては、第1半導体スイッチ手段が第1電機子巻線と第2電機子巻線との間の直列的な電気的接続を遮断するとともに、第2半導体スイッチ手段がインバータと第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断するため、このときデルタ結線を構成する第1電機子巻線は、第2電機子巻線からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。
【0028】
そして、半導体スイッチ素子で構成する第2半導体スイッチ手段によってもインバータと第2電機子巻線との間の電気的な接続と遮断の切り替えを瞬時に行うため、第1半導体スイッチ手段と同様に電磁気的影響を機能的に遮断することができる。
【0029】
第10発明は、上記第9発明において、前記第1半導体スイッチ手段は、前記第2状態において前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを直列に接続するとともに、前記第1状態において前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを遮断する、第2スイッチ手段を備え、前記第2半導体スイッチ手段は、前記第1状態において前記第1電機子巻線のみでデルタ結線を構成するよう、前記第1電機子巻線の前記インバータに接続される側と反対側の第1巻線出力端子を前記インバータに接続するとともに、前記第2状態において前記第1電機子巻線の前記第1巻線出力端子と前記インバータとを遮断する、第4スイッチ手段と、前記第1状態において前記第2電機子巻線の前記第2スイッチ手段に接続される側と反対側の第2巻線出力端子と前記インバータとを遮断するとともに、第2状態において直列接続した前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線の両方でデルタ結線を構成するよう、前記第2電機子巻線の前記第2巻線出力端子と前記インバータとを接続する、第5スイッチ手段と、を備えることを特徴とする。
【0030】
このように第1半導体スイッチ手段と第2半導体スイッチ手段を構成し、インバータと接続することで、2つの電機子巻線を使用したデルタ結線に対する上記第1状態と第2状態との切り替えを簡易な配線構成で実現することができる。なお、第1電機子巻線にインバータからの供給電力を導いて作動させる第1状態においては、第2スイッチ手段が第1電機子巻線と第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断し、第5スイッチ手段が第2電機子巻線の第2巻線出力端子と前記インバータとの間の電気的接続を遮断することで、第1電機子巻線が第2電機子巻線からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。
【0031】
第11発明は、上記第10発明において、前記第1半導体スイッチ手段と前記第2半導体スイッチ手段は、さらに、前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断して前記第2電機子巻線に前記インバータからの供給電力を導く第3状態と、前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを電気的に並列接続して前記第1電機子巻線及び前記第2電機子巻線の両方に前記インバータからの供給電力を導く第4状態とを、切替可能であり、前記第1半導体スイッチ手段は、前記第3状態及び前記第4状態において前記第2電機子巻線の前記第2スイッチ手段に接続される側の第2巻線入力端子を前記インバータに接続するとともに、前記第1状態及び前記代2状態において前記第2電機子巻線の前記第2巻線入力端子と前記インバータとを遮断する、第3スイッチ手段を備え、前記第2スイッチ手段は、前記第3状態及び前記第4状態のいずれにおいても前記第1電機子巻線と前記第2電機子巻線とを遮断し、前記第4スイッチ手段は、前記第3状態において前記第1電機子巻線の前記第1巻線出力端子と前記インバータとを遮断し、前記第4状態において前記第1電機子巻線のみでデルタ結線を構成するよう、前記第1電機子巻線の前記第1巻線出力端子を前記インバータに接続し、前記第5スイッチ手段は、前記第3状態及び前記第4状態のいずれにおいても前記第2電機子巻線のみでデルタ結線を構成するよう、前記第2電機子巻線の前記第2巻線出力端子を前記インバータに接続する、ことを特徴とする。
【0032】
上記第10発明の構成に加えてこのように第1半導体スイッチ手段及び第2半導体スイッチ手段を構成し、インバータと接続することで、第2電機子巻線にインバータからの供給電力を導いて作動させる第3状態と、第1電機子巻線及び第2電機子巻線の両方に並列に前記インバータからの供給電力を導いて作動させる第4状態とが可能となり、2つの電機子巻線を使用したデルタ結線に対する上記4つの状態の切り替えを簡易な配線構成で実現することができる。なお、第2電機子巻線にインバータからの供給電力を導いて作動させる第3状態においては、第2スイッチ手段が第1電機子巻線と第2電機子巻線との間の電気的接続を遮断することで、第2電機子巻線が第1電機子巻線からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。
【0035】
第12発明は、上記第
9乃至第11発明のいずれかにおいて、前記経路切替手段は、前記第1半導体スイッチ手段及び前記第2半導体スイッチ手段のうち少なくとも一方を兼ねることを特徴とする。
【0036】
これにより、非常時のための専用のスイッチを別途設けることなく、簡易な構成で半導体スイッチ手段を過電圧から保護することができる。
【0037】
第
13発明は、上記第1乃至
12発明のいずれかの交流電動機の巻線切替装置を備えた交流電動機駆動システムであって、前記交流電動機は、各相の巻数が同じである複数の電機子巻線を備え、前記巻線切替装置は、複数の半導体スイッチ素子の導通と遮断を適宜組み合わせることで前記複数の電気子巻線を少なくとも3つの巻線状態に切り替え可能とし、かつ、前記交流電動機を駆動するインバータと前記巻線切替装置の切り替え制御を行う切替制御装置を備えたことを特徴とする。
【0038】
第
14発明は、上記第
13発明において、前記交流電動機駆動システム全体または前記交流電動機駆動システムを備えたアプリケーションにおける各種の異常を検出するセンサをさらに備え、前記切替制御装置が、前記センサの検出信号に基づいて前記巻線切替装置を切替制御することを特徴とするものである。
【0039】
これらにより、交流電動機駆動システムあるいはこれらをアプリケーションに適用できる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、各電機子巻線に対する機能的悪影響を防止しつつ、2つの電機子巻線を円滑に切り替えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0043】
図1は、本発明の一実施形態による巻線切替装置を備えた交流電動機駆動システムの構成を模式的に示したブロック図である。
【0044】
この
図1において、交流電動機駆動システム100は、3相交流モータ2を駆動するものであり、インバータ1と、交流電動機としての上記3相交流モータ2と、巻線切替装置3と、センサ4と、切替制御装置5とを備えている。
【0045】
インバータ1は、この例では半導体で構成する6つのスイッチ素子SWを備えており、そのうち直列に接続した2つのスイッチ素子SWを3組並列に接続したブリッジにより構成されている。このブリッジ全体に単相直流電力を供給し、6つのスイッチ素子SWをそれぞれ適宜の順序により導通と遮断を繰り返すことで、各組における直列接続の2つのスイッチ素子SWの間から3相交流電力U,V,Wがインバータ出力として出力される。
【0046】
3相交流モータ2は、上記インバータ1から出力された3相交流電源により駆動されるモータであり、図中には電機子として界磁制御を行う巻線のみ示している。本実施形態において用いる3相交流モータ2は、同じ巻数である3つの巻線を3相交流の各相U,V,Wに対応して並列に配置した2つの電機子巻線、すなわち第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12を備えている。これら2つの電機子巻線11,12同士は3相交流モータ2内において互いに電気的な接続はなく、それぞれに対し3相交流モータ2外部からの電気的接続が可能な入力端子及び出力端子が設けられている。第1電機子巻線11は、3相交流モータ2外部に対し、第1入力端子(第1巻線入力端子)11a(U1,V1,W1)及び第1出力端子(第1巻線出力端子)11b(U2,V2,W2)で電気的な接続が可能である。第2電機子巻線12は、3相交流モータ2外部に対し、第2入力端子(第2巻線入力端子)12a(U3,V3,W3)及び第2出力端子(第2巻線出力端子)12b(U4,V4,W4)で電気的な接続が可能である(ただし、後述するように第2出力端子12bを外部からは接続させない例外あり)。なお、この3相交流モータ2は、誘導型または同期型、あるいは回転型または直動型のいずれにも適用可能であり、特に図示しないが、2つの電機子巻線11,12はそれら種別の違いに応じて適切に構成・配置すればよい。
【0047】
巻線切替装置3は、後に詳述するように複数の半導体スイッチ素子を備えている。そして、それら複数の半導体スイッチ素子の導通と遮断とを適宜の組み合わせで切り替えることで、上述したインバータ出力U,V,W、第1入力端子11a(U1,V1,W1)、第1出力端子11b(U2,V2,W2)、第2入力端子12a(U3,V3,W3)、及び第2出力端子12b(U4,V4,W4)の間の導通と遮断とを切り替える。巻線切替装置3内部の接続回路構成は、本実施形態及び後述する各変形例でそれぞれ異なる(後に詳述)。
【0048】
センサ4は、上記インバータ1、3相交流モータ2、及び巻線切替装置3を含めた本実施形態の交流電動機駆動システム100の全体、及びこれを備えたアプリケーション(例えば、電車や電気自動車を含む車両や工作機械など)の全体における、各種の異常を検出し切替制御装置5に検出信号を出力する。
【0049】
切替制御装置5は、特に図示しないCPU、RAM、ROM、及びA/D変換器などで構成される。この切替制御装置5は、特に図示しない上位制御装置からの指令に基づいて、インバータ1に対し適宜の周波数で3相交流電力を出力させるよう、内部の6つのスイッチ素子SWのそれぞれの導通と遮断の切り替え制御を行う。またこれとともに、切替制御装置5は、巻線切替装置3による、インバータ出力と各電機子巻線11,12の各端子11a,11b,12a,12bとの間の導通及び遮断の切り替え制御を行う。なお、本実施形態において、巻線切替装置3は、第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12のうち、Y結線とした第1電機子巻線11のみにインバータ出力を導く第1状態と、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とを電気的に直列接続した全体をY結線として両方にインバータ出力を導く第2状態と、センサ4から異常が検出された際に各電機子巻線11,12に加わる電圧を最小にする非常時の状態と、の3つの状態を選択的に切り替える(後に詳述する)。
【0050】
図2は、本実施形態における巻線切替装置3及び3相交流モータ2の回路構成を示す図である。この
図2において、巻線切替装置3では、インバータ出力がそのまま第1入力端子11aに入力するよう、接続されている。また、第1出力端子11bが、第1スイッチ手段としての第1スイッチS1を介して各相の配線を一点に短絡させる第1電気的中性点13に接続されるとともに、第2スイッチ手段としての第2スイッチS2を介して第2入力端子12aに接続されている。なお、本実施形態では、前述の例外として、第2電機子巻線12の第2出力端子12bは巻線切替装置3に接続されず、3相交流モータ2の内部においてそのまま各相の配線が一点に短絡される第2電気的中性点14に対し、接続されている。
【0051】
このうち上記第1スイッチS1と第2スイッチS2は、それぞれ、3相に対応する各配線の電気的な導通と遮断を行う3つの半導体スイッチ素子の集合で構成されている。すなわち、上記切替制御装置5からの切り替え制御によって各スイッチS1,S2単位で個別に切り替え制御が行われ、各スイッチS1,S2のそれぞれにおける3つの半導体スイッチ素子が一括して同じ切り替え動作を行う。
【0052】
また、本実施形態では、各半導体スイッチ素子がIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)素子で構成されている。そして、
図3に示すように第1スイッチS1と第2スイッチS2とを合わせた6つのIGBT素子15A,15B,15C,15D,15E,15Fが、1つの半導体モジュール16Aとして一体化して設けられている。
【0053】
この半導体モジュール16Aにおいては、直列に接続された2つのIGBT素子15A,15D(そして15B,15E、及び15C,15F)が3組並列に配置されており、各組の両端とそれぞれの直列接続の中間点がモジュール端子として接続可能となっている。このような配線構成で6つのIGBT素子15A〜15Fを備えた半導体モジュール16Aは、多様な構成の回路設計に利用できるため汎用性が高く、現在ではこの半導体モジュール16Aを1つ又は複数組み込んだ半導体パッケージが広く一般的に製造・流通されている。この結果、モジュール単位のコストを比較的低くすることができる。
【0054】
本実施形態では、上記3組のそれぞれにおいて直列接続された2つのIGBT素子15A,15D(そして15B,15E、及び15C,15F)のうち、各組の一方側の3つのIGBT素子15D,15E,15Fを第1スイッチS1とし、各組の他方に対応側の3つのIGBT素子15A,15B,15Cを第2スイッチS2として利用することができる。そして、対応する組み合わせの3つのモジュール端子(各組における上記直列接続の中間点)をそれぞれ第1出力端子11b、第2入力端子12a、第1電気的中性点13に接続することができる。
【0055】
以上のように、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とを直列に接続する接続導電路における当該第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間に配置され、半導体スイッチ素子で構成された第1スイッチS1及び第2スイッチS2が、各請求項記載の第1半導体スイッチ手段を構成する。
【0056】
図4は、本実施形態において切替制御装置5が巻線切替装置3の各スイッチS1,S2に対して行う切り替え制御の内容を示すテーブルである。
【0057】
既に述べたように、本実施形態において巻線切替装置3は、Y結線とした第1電機子巻線11にインバータ出力を導く第1状態と、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とを電気的に直列接続した全体をY結線として両方にインバータ出力を導く第2状態と、センサ4から異常が検出された際に各電機子巻線11,12に加わる電圧を最小にする非常時の状態と、の3つの状態を選択的に切り替える。
【0058】
具体的には、
図4に示すように、第1状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3の第1スイッチS1をON(導通;以下同様)とし、第2スイッチS2をOFF(遮断;以下同様)とする。これにより、第1電気的中性点13を接続してY結線された第1電機子巻線11のみがインバータ1に接続される状態、言い換えると、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の電気的接続が遮断されて第1電機子巻線11のみにインバータ1からの供給電力が導かれる、上記第1状態に切り替えられる。この際には、インピーダンスが低いため高周波領域でも十分な電流を流すことができ、3相交流モータ2を高速で駆動するのに好適な状態となる。
【0059】
また、第2状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3の第1スイッチS1をOFFとし、第2スイッチS2をONとする。これにより、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とが直列に接続されその全体が第2電気的中性点14を介したY結線となってインバータ1に接続される状態、言い換えると、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とが電気的に直列接続されて第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12の両方にインバータ1からの供給電力が導かれる、上記第2状態に切り替えられる。この際には、インピーダンスが高いので低周波領域でも十分な電圧を印加することができ、同一電流に対して3相交流モータ2に大きいトルクを発生させることができ、低速駆動に好適な状態となる。
【0060】
なお、以上の第1状態と第2状態との切り替えは、例えば3相交流モータ2の回転速度が所定の閾値速度より速い場合は第1状態、遅い場合は第2状態に切り替えるようにしてもよいし、誘起電圧と直流電圧との関係により切り替えるようにしてもよい。
【0061】
そして上記センサ4から異常が検出された場合には、切替制御装置5が巻線切替装置3の第1スイッチS1をONとし、第2スイッチS2をOFFとすることで、2つの電機子巻線11,12それぞれに加わる電圧を最小にできる上記非常時の状態に切り替えられる。このとき異常を検出したセンサ4から出力される検出信号が各請求項記載の非常用切替制御信号を構成し、第1スイッチS1及び第2スイッチS2が経路切替手段を構成する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態においては、第1電機子巻線11のみにインバータ1からの供給電力を導いて作動させる第1状態において、第2スイッチS2により第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の電気的接続を遮断する。これにより、一方の電機子巻線だけを利用する際にも他方の電機子巻線における影響を受ける従来構造と異なり、第1電機子巻線11は、第2電機子巻線12におけるリアクタンスや自己誘導起電力などの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。また、第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12の両方にインバータ1からの供給電力を導いて作動させる第2状態においては、第2スイッチS2により第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とを電気的に直列接続する。これにより、両方の電機子巻線11,12の作動性能を定格通りに発揮することができる。
【0063】
また、半導体スイッチ素子で構成する第2スイッチS2により、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の電気的な導通と遮断の切り替えを瞬時に行う。これにより、例えば機械的スイッチ手段の場合に生じるチャタリングなどの電気的衝撃を無くし、2つの電機子巻線11,12の間で上記リアクタンスや自己誘電起電力などによる電磁気的影響を機能的に遮断することができる。以上の結果、本実施形態においては、各電機子巻線11,12に対する機能的悪影響を防止しつつ、2つの電機子巻線11,12を円滑に切り替えることができる。
【0064】
また、この実施形態では特に、2つの電機子巻線11,12を使用したY結線に対する上記第1状態と第2状態との切り替えを、簡易な配線構成で実現することができる。なお、第1電機子巻線11のみにインバータ1からの供給電力を導いて作動させる第1状態においては、第2スイッチS2が第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の電気的接続を遮断することで、第1電機子巻線11が第2電機子巻線12からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を確実に発揮することができる。また、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の両方を一つのハウジングに収納して一つの3相交流モータ2を構成するようにすれば、当該ハウジングの内部で上記第2電気的中性点14が第2電機子巻線12の巻き終わり部分に形成されることで、外部の配線を省略化して3相交流モータ2の組み立てを容易にし、生産性を向上する効果もある。
【0065】
また、この実施形態では特に、3相交流モータ2の3相の第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12に対応して、第1スイッチS1と第2スイッチS2のそれぞれが、相数と同数、すなわち3つのIGBT素子15A〜15C(又は15D〜15F)を備えている。これにより、各スイッチS1,S2における切り替え速度を瞬時に行うことが可能となり、切り替え速度が遅い場合に生じるトルク抜けや制動トルクの発生などの電気的衝撃を大幅に軽減させることができる。また、一般的に使用されている3相交流モータ2への適用が可能となり、各相にそれぞれ対応して個別に接続する各半導体スイッチ素子として、耐電流値が比較的低い汎用的な仕様のIGBT素子を使用することができる。この結果、発熱を抑制できるとともに巻線切替装置3の製造コストを抑えることができる。
【0066】
また、この実施形態では特に、第1スイッチS1の3つのIGBT素子15D,15E,15Fと、第2スイッチS2の3つのIGBT素子15A,15B,15Cとが、1つの半導体モジュール16Bとして一体化されている。これにより、巻線切替装置3が第1スイッチS1及び第2スイッチS2として備える6つのIGBT素子15A〜15Fを、その周囲の接続配線も含めて汎用的な1つの半導体モジュール16Bで構成できる。この結果、巻線切替装置3の全体における配線の省略化、小型化、及び軽量化を行うことができ、例えば電気自動車に適用する場合などにおいて限定された設置空間における配置レイアウトの自由度が向上する。
【0067】
また、例えば、3相交流モータ2の高速回転時に巻線切替装置3が第2状態(低速適合状態)となった場合には、2つの電機子巻線11,12の間に誘起される電圧が半導体スイッチ素子の耐圧を超える可能性がある。この対策として、本実施形態では特に、インバータ1又は3相交流モータ2の異常検出状態に対応したセンサ4からの検出信号に応じて、第1スイッチS1と第2スイッチS2が、第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12に加わる電圧を最小とする電流経路を形成する。すなわち、上記センサ4から異常が検出された場合、つまり、例えば3相交流モータ2に設けたロータリエンコーダなどの速度検出器(特に図示せず)の故障、各種信号線の断線、または速度演算器の誤作動などといった速度検出に関わる異常が検出された場合には、非常時とみなして、切替制御装置5が巻線切替装置3の第1スイッチS1をONとし、第2スイッチS2をOFFとする。この結果、2つの電機子巻線11,12それぞれに加わる電圧を最小として、各半導体スイッチ素子、特に2つの電機子巻線11,12の間に配置されている第2スイッチS2を過電圧から保護することができる。
【0068】
このとき、本実施形態では特に、第1スイッチS1及び第2スイッチS2が、第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12に加わる電圧を最小とする上記電流経路を形成する。ことにより、非常時のための専用のスイッチを別途設けることなく、簡易な構成で各半導体スイッチ素子を過電圧から保護することができる。
【0069】
なお、上記
図4の表に示すように、第1状態と第2状態のいずれにおいても、第1スイッチS1と第2スイッチS2は互いにON・OFF状態が逆の関係にあり、また第1状態と第2状態の切り替えに伴って第1スイッチS1と第2スイッチS2がそれぞれ逆のON・OFF状態に切り替わることが分かる。この点に着目して、第1スイッチS1をノーマリオンタイプのIGBT素子で構成し、第2スイッチS2をノーマリオフタイプのIGBT素子で構成して、両方のスイッチを共通の制御線で切替制御する構成としてもよい。
【0070】
この場合、共通の制御線において駆動信号が出力されていな通常状態では、ノーマリオンタイプの第1スイッチS1がONとなり、ノーマリオフタイプの第2スイッチS2がOFFとなるので、巻線切替装置3は第1状態に切り替えられる。また、共通の制御線において駆動信号が出力された非通常状態では、ノーマリオンタイプの第1スイッチS1がOFFとなり、ノーマリオフタイプの第2スイッチS2がONとなるので、巻線切替装置3は第2状態に切り替えられる。これにより、切替制御装置5と巻線切替装置3との間の配線を省略化でき、システム全体の構成を簡易化できる。なお、逆に、第1スイッチS1をノーマリオフタイプとし、第2スイッチS2をノーマリオンタイプとしてもよく、この場合には共通の制御線における駆動信号の出力・非出力の切り替えで、上記と逆に第1状態と第2状態とが切り替わる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。なお、上記実施形態と同等の部分については、同じ符号を付し適宜説明を省略又は簡略化する。
【0072】
(1)Y結線で第1及び第2状態以外の状態(第3状態及び第4状態)にも切り替える場合
上記実施形態では、第1電機子巻線11だけをY結線で利用する第1状態と、直列接続した第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の全体をY結線で利用する第2状態の2通りだけに切り替える構成としていたが、本発明はこれに限られない。例えば、さらに第2電機子巻線12だけをY結線で利用する第3状態と、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の両方をそれぞれY結線として並列に利用する第4状態にも切替可能に構成してもよい。
【0073】
図5は、そのような第1変形例における巻線切替装置3A及び3相交流モータ2A(この例では上記3相交流モータ2と同様の構成である)の回路構成を示す図である。この
図5において、巻線切替装置3Aは、上記実施形態の
図2に示した構成に加えて、第2入力端子12aが第3スイッチ手段としての第3スイッチS3を介してインバータ1に接続されている。特に図示しないが、この第3スイッチS3も、上記同様、また半導体スイッチ素子で構成され、第1スイッチS1及び第2スイッチS2とともに第1半導体スイッチ手段を構成する。
【0074】
図6は、本変形例において切替制御装置5が巻線切替装置3Aの各スイッチS1〜S3に対して行う切り替え制御の内容を示すテーブルである。
【0075】
上述したように、本変形例において巻線切替装置3Aは、第1状態、第2状態、及び非常時に加えて、第2電機子巻線12だけをY結線で利用する第3状態と、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の両方をそれぞれY結線として並列に利用する第4状態の5つの状態を選択的に切り替えるものである。
【0076】
具体的には、
図6のテーブルに示すように、第1状態を実現する際には、切替制御装置5が、巻線切替装置3Aの第3スイッチS3をOFFとした状態で、第1スイッチS1をONとし、第2スイッチS2をOFFとする。これにより、上記第1状態へと切り替えられる。また、第2状態を実現する際には、切替制御装置5は、巻線切替装置3Aの第3スイッチS3をOFFとした状態で、第1スイッチS1をOFFとし、第2スイッチS2をONとする。これにより、上記第2状態へと切り替えられる。
【0077】
さらに、第3状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3Aの第1スイッチS1をOFFとし、第2スイッチS2をOFFとし、第3スイッチS3をONとする。これにより、第2電気的中性点14が接続されてY結線された第2電機子巻線12のみがインバータ1に接続される状態、言い換えると、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の電気的接続が遮断されて第2電機子巻線12のみにインバータ1からの供給電力が導かれる、上記第3状態に切り替えられる。この際には、第1状態と同等にインピーダンスが低いため高周波領域でも十分な電流を流すことができ、3相交流モータ2Aを高速で駆動するのに好適な状態となる。
【0078】
また、第4状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3Aの第1スイッチS1をONとし、第2スイッチS2をOFFとし、第3スイッチS3をONとする。これにより、それぞれY結線された第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との両方が並列にインバータ1に接続される状態、言い換えると、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とが電気的に並列接続されて第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12の両方にインバータ1からの供給電力を導かれる、上記第4状態に切り替えられる。この際には、第1状態と同等にインピーダンスが低いため高周波領域でも十分な電流を流すことができ、3相交流モータ2Aを高速で駆動するのに好適な状態となる。
【0079】
そして上記センサ4から異常が検出された場合には、切替制御装置5が巻線切替装置3Aの第1スイッチS1をONとし、第2スイッチS2をOFFとし、第3スイッチS3をONとすることで、2つの電機子巻線11,12それぞれに加わる電圧を最小にできる上記非常時の状態に切り替えられる。このとき、各スイッチS1〜S3が経路切替手段を構成する。
【0080】
以上説明した本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。また、本変形例においては、上記実施形態の第1状態及び第2状態に加えて、第2電機子巻線12のみにインバータ1からの供給電力を導いて作動させる第3状態と、第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12の両方に並列に前記インバータ1からの供給電力を導いて作動させる第4状態とが可能となる。これにより、2つの電機子巻線11,12を使用したY結線に対する上記4つの状態の切り替えを簡易な配線構成で実現することができる。なお、第2電機子巻線12のみにインバータ1からの供給電力を導いて作動させる第3状態においては、第2スイッチS2が第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の電気的接続を遮断することで、第2電機子巻線12が第1電機子巻線11からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。
【0081】
なお、上記実施形態では第1スイッチS1と第2スイッチS2の組み合わせで、上記
図3に示した一つの半導体モジュール16Aを構成したが、本変形例では第2スイッチS2と第3スイッチS3の組み合わせで一つの半導体モジュールを構成することもできる。
【0082】
(2)デルタ結線で第1状態と第2状態とに切り替える場合
上記実施形態では、第1状態と第2状態でそれぞれ電機子巻線11,12をY結線で利用していたが、本発明はこれに限られない。例えば、第1状態と第2状態でそれぞれ電機子巻線11,12をデルタ結線で利用するよう構成してもよい。
【0083】
図7は、そのような第2変形例における巻線切替装置3B及び3相交流モータ2Bの回路構成を示す図である。この
図7において、巻線切替装置3Bでは、インバータ出力がそのまま第1入力端子11aに入力するよう、接続されている。また、第1出力端子11bが、第2スイッチ手段としての第2スイッチS2を介して第2入力端子12aに接続されるとともに、第4スイッチ手段としての第4スイッチS4を介してインバータ1に接続されている。また、第2出力端子12bは、第5スイッチ手段としての第5スイッチS5を介してインバータ1に接続されている。
【0084】
ここで、第4スイッチS4を介した第1出力端子11bとインバータ1との接続については、対応する相の配線同士を接続するのではなく、第1出力端子11bのU相(図中のU2)をインバータ1のV相(図中のV)に接続し、第1出力端子11bのV相(図中のV2)をインバータ1のW相(図中のW)に接続し、第1出力端子11bのW相(図中のW2)をインバータ1のU相(図中のU)に接続している。これにより、第4スイッチS4を接続した際には、第1電機子巻線11のみでデルタ結線を構成するようになっている。また、第5スイッチS5を介した第2出力端子12bとインバータ1との接続についても同様となっている。
【0085】
以上のように、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とを直列に接続する接続導電路における当該第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間に配置され、半導体スイッチ素子で構成された第2スイッチS2が、各請求項記載の第1半導体スイッチ手段を構成する。また、インバータ1に対して第1電機子巻線11と第2電機子巻線12のいずれにも並列に配置され、半導体スイッチ素子で構成される第4スイッチS4と第5スイッチS5とが各請求項記載の第2半導体スイッチ手段を構成する。
【0086】
図8は、本変形例において切替制御装置5が巻線切替装置3Bの各スイッチS2,S4,S5に対して行う切り替え制御の内容を示すテーブルである。
【0087】
上述したように、本変形例において巻線切替装置3Bは、デルタ結線とした第1電機子巻線11のみにインバータ出力を導く第1状態、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とを電気的に直列接続した全体をデルタ結線として両方にインバータ出力を導く第2状態、及びセンサ4から異常が検出された際に各電機子巻線11,12に加わる電圧を最小にする非常時、の3つの状態を選択的に切り替える。
【0088】
具体的には、
図8のテーブルに示すように、第1状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3Bの第2スイッチS2をOFFとし、第4スイッチS4をONとし、第5スイッチS5をOFFとする。これにより、インバータ1と第2電機子巻線12との間の電気的接続が遮断されて第1電機子巻線11のみでデルタ結線が構成されインバータ1へ接続される、上記第1状態に切り替えられる。この際には、インピーダンスが低いため高周波領域でも十分な電流を流すことができ、3相交流モータ2Bを高速で駆動するのに好適な状態となる。
【0089】
また、第2状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3Bの第2スイッチS2をONとし、第4スイッチS4をOFFとし、第5スイッチS5をONとする。これにより、直列接続した第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との両方でデルタ結線が構成されインバータ1へ接続される、上記第2状態に切り替えられる。この際には、インピーダンスが高いので低周波領域でも十分な電圧を印加することができ、同一電流に対して3相交流モータ2Bに大きいトルクを発生させることができ、低速駆動に好適な状態となる。
【0090】
なお、以上の第1状態と第2状態の切り替えは、例えば3相交流モータ2Bの回転速度が所定の閾値速度より速い場合は第1状態、遅い場合は第2状態に切り替えるようにしてもよいし、誘起電圧と直流電圧との関係により切り替えるようにしてもよい。
【0091】
そして上記センサ4から異常が検出された場合には、切替制御装置5が巻線切替装置3Bの第2スイッチS2をOFFとし、第4スイッチS4をONとし、第5スイッチS5をOFFとすることで、2つの電機子巻線11,12それぞれに加わる電圧を最小にできる上記非常時の状態に切り替えられる。このとき第2スイッチS2、第4スイッチS4、及び第5スイッチS5が経路切替手段を構成する。
【0092】
以上説明したように、本変形例においては、第2スイッチS2、第4スイッチS4、及び第5スイッチS5の切り替えを組み合わせることで、第1状態では第1電機子巻線11のみでデルタ結線を構成してインバータ1に接続し、第2状態では直列接続した第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の両方でデルタ結線を構成してインバータ1に接続することができる。そして第1状態においては、第2スイッチS2が第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の直列的な電気的接続を遮断するとともに、第5スイッチS5がインバータ1と第2電機子巻線12との間の電気的接続を遮断する。これにより、このときデルタ結線を構成する第1電機子巻線11が、上記実施形態と同様、第2電機子巻線12からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。また、半導体スイッチ素子で構成する第5スイッチS5によってもインバータ1と第2電機子巻線12との間の電気的な導通と遮断の切り替えを瞬時に行う。これにより、前述と同様、電磁気的影響を機能的に遮断することができる。
【0093】
また、この変形例では特に、2つの電機子巻線11,12を使用したデルタ結線に対する上記第1状態と第2状態との切り替えを、簡易な配線構成で実現することができる。なお、第1電機子巻線11のみにインバータ1からの供給電力を導いて作動させる第1状態においては、第2スイッチS2が第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の電気的接続を遮断し、第5スイッチS5が第2電機子巻線12の第2出力端子12bとインバータ1との間の電気的接続を遮断することで、第1電機子巻線11が第2電機子巻線12からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。
【0094】
なお、本変形例では第4スイッチS4と第5スイッチS5の組み合わせでも、上記
図3に示したような一つの半導体モジュールを構成できる。
【0095】
(3)デルタ結線で第3状態と第4状態とに切り替える場合
上記第2変形例では、第1電機子巻線11だけをデルタ結線で利用する第1状態と、直列接続した第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の全体をデルタ結線で利用する第2状態との、2通りだけに切り替える構成としていたが、これに限られない。例えば、さらに第2電機子巻線12だけをデルタ結線で利用する第3状態と、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の両方をそれぞれデルタ結線として並列に利用する第4状態にも切替可能に構成してもよい。
【0096】
図9は、そのような第3変形例における巻線切替装置3C及び3相交流モータ2Cの回路構成を示す図である。この
図9において、巻線切替装置3Cでは、上記第2変形例の
図7に示した構成に加えて、第2入力端子12aが、第3スイッチ手段としての第3スイッチS3を介してインバータ1に接続されている。この第3スイッチS3もまた半導体スイッチ素子で構成され、第2スイッチS2とともに第1半導体スイッチ手段を構成する。
【0097】
図10は、本変形例において切替制御装置5が巻線切替装置3Cの各スイッチS2〜S5に対して行う切り替え制御の内容を示すテーブルである。
【0098】
上述したように、本変形例において巻線切替装置3Cは、第1状態、第2状態、及び非常時に加えて、第2電機子巻線12だけをデルタ結線で利用する第3状態と、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の両方をそれぞれデルタ結線として並列に利用する第4状態の5つの状態を選択的に切り替える。
【0099】
具体的には、
図10のテーブルに示すように、第1状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3Cの第2スイッチS2をOFFとし、第3スイッチS3をOFFとし、第4スイッチS4をONとし、第5スイッチS5をOFFとする。これにより、上記第1状態に切り替えられる。また、第2状態を実現する際には、第2スイッチS2をONとし、第3スイッチS3をOFFとし、第4スイッチS4をOFFとし、第5スイッチS5をONとする。これにより、第2状態に切り替えられる。
【0100】
さらに、第3状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3Cの第2スイッチS2をOFFとし、第3スイッチS3をONとし、第4スイッチS4をOFFとし、第5スイッチS5をONとする。これにより、デルタ結線された第2電機子巻線12のみがインバータ1に接続される状態、言い換えると第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の電気的接続が遮断されて第2電機子巻線12のみにインバータ1からの供給電力が導かれる、上記第3状態に切り替えられる。この際には、第2電機子巻線12の巻数にもよるが、第1状態と同等にインピーダンスが低いため高周波領域でも十分な電流を流すことができ、3相交流モータ2Cを高速で駆動するのに好適な状態となる。
【0101】
また、第4状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3Cの第2スイッチS2をOFFとし、第3スイッチS3をONとし、第4スイッチS4をONとし、第5スイッチS5をONとする。これにより、それぞれデルタ結線された第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の両方が並列にインバータ1に接続される状態、言い換えると第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とが電気的に並列接続されて第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12の両方にインバータ1からの供給電力が導かれる、上記第4状態に切り替えられる。この際には、各電機子巻線11,12の巻数にもよるが、第1状態と同等にインピーダンスが低いため高周波領域でも十分な電流を流すことができ、3相交流モータ2Cを高速で駆動するのに好適な状態となる。
【0102】
そして上記センサ4から異常が検出された場合には、切替制御装置5が巻線切替装置3Cの第2スイッチS2をOFFとし、他の第3スイッチS3、第4スイッチS4、及び第5スイッチS5のいずれもONとすることで、2つの電機子巻線11,12それぞれに加わる電圧を最小にできる、上記非常時の状態に切り替えられる。このとき第2スイッチS2、第3スイッチS3、第4スイッチS4、及び第5スイッチS5が経路切替手段を構成する。
【0103】
本変形例においても、上記第2変形例と同様、上記実施形態と同様の効果を得る。また、本変形例においては、上述したように、上記第2変形例の第1状態及び第2状態に加えて、第2電機子巻線12のみにインバータ1からの供給電力を導いて作動させる第3状態と、第1電機子巻線11及び第2電機子巻線12の両方に並列にインバータ1からの供給電力を導いて作動させる第4状態とが可能となり、2つの電機子巻線11,12を使用したデルタ結線に対する上記4つの状態の切り替えを簡易な配線構成で実現することができる。なお、第2電機子巻線12のみにインバータ1からの供給電力を導いて作動させる第3状態においては、第2スイッチS2が第1電機子巻線11と第2電機子巻線12との間の電気的接続を遮断することで、第2電機子巻線12が第1電機子巻線11からの電気的影響を受けずに定格通りの作動性能を発揮することができる。
【0104】
なお、本変形例では、第2スイッチS2と第3スイッチS3の組み合わせの他に、第3スイッチS3と第4スイッチS4の組み合わせや、第4スイッチS4と第5スイッチS5の組み合わせでも、上記
図3に示したような一つの半導体モジュールを構成できる。
【0105】
(4)Y結線とデルタ結線でそれぞれ第1〜4状態に切り替える場合
上記実施形態及び各変形例では、電機子巻線11,12において、Y結線かデルタ結線のいずれか一方だけを利用していたが、本発明はこれに限られない。例えば、Y結線とデルタ結線とを切り替え可能に構成してもよい。
【0106】
図11は、そのような第4変形例における巻線切替装置3D及び3相交流モータ2D(この例では上記3相交流モータ2Cと同様の構成である)の回路構成を示す図である。この
図11において、巻線切替装置3Dは、上記第3変形例の
図9に示した構成に加えて、第1出力端子11bが第1スイッチ手段としての第1スイッチS1を介して第1電気的中性点13に接続され、第2出力端子12bが第6スイッチ手段としての第6スイッチS6を介して第2電気的中性点14に接続されている。この第6スイッチS6もまた半導体スイッチ素子で構成されている。
【0107】
図12は、本変形例において切替制御装置5が巻線切替装置3Dの各スイッチS1〜S6に対して行う切り替え制御の内容を示すテーブルである。
【0108】
基本的に、本変形例における巻線切替装置3Dは、上記実施形態及び各変形例が備えるスイッチを全て備えており、それらの切り替えの組み合わせによってY結線での第1〜第4状態と、デルタ結線での第1〜第4状態と、非常時の状態の合計9つの状態を選択的に切り替えるものである。
【0109】
具体的には、
図12のテーブルに示すように、まずY結線において第1状態を実現する際には、切替制御装置5が巻線切替装置3Dの第1スイッチS1をONとし、第2〜6スイッチS2〜S6を全てOFFとする。これにより、Y結線された第1電機子巻線11のみがインバータ1に接続される上記第1状態に切り替えられる。
【0110】
また、Y結線において第2状態を実現する際には、第1スイッチS1をOFFとし、第2スイッチS2をONとし、第3〜5スイッチS3〜S5をOFFとし、第6スイッチS6をONとする。これにより、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とが直列に接続してその全体が第2電気的中性点14を介したY結線となってインバータ1に接続される上記第2状態に切り替えられる。
【0111】
また、Y結線において第3状態を実現する際には、第1〜2スイッチS1〜S2をOFFとし、第3スイッチS3をONとし、第4〜5スイッチS4〜S5をOFFとし、第6スイッチS6をONとする。これにより、Y結線された第2電機子巻線12のみがインバータ1に接続される上記第3状態に切り替えられる。
【0112】
また、Y結線において第4状態を実現する際には、第1スイッチS1をONとし、第2スイッチS2をOFFとし、第3スイッチS3をONとし、第4〜5スイッチS4〜S5をOFFとし、第6スイッチS6をONとする。これにより、それぞれY結線された第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の両方を並列にインバータ1に接続される上記第4状態に切り替えられる。
【0113】
また、デルタ結線において第1状態を実現する際には、第1〜3スイッチS1〜S3をOFFとし、第4スイッチS4をONとし、第5〜6スイッチS5〜S6をOFFとする。これにより、デルタ結線された第1電機子巻線11のみがインバータ1に接続される上記第1状態に切り替えられる。
【0114】
また、デルタ結線において第2状態を実現する際には、第1〜第2スイッチS1〜S2をOFFとし、第3スイッチS3をONとし、第4スイッチS4をOFFとし、第5スイッチS5をONとし、第6スイッチS6をOFFとする。これにより、第1電機子巻線11と第2電機子巻線12とが直列に接続してその全体がデルタ結線となってインバータ1に接続される上記第2状態に切り替えられる。
【0115】
また、デルタ結線において第3状態を実現する際には、第1〜2スイッチS1〜S2をOFFとし、第3スイッチS3をONとし、第4スイッチS4をOFFとし、第5スイッチS5をONとし、第6スイッチS6をOFFとする。これにより、デルタ結線された第2電機子巻線12のみがインバータ1に接続される上記第3状態に切り替えられる。
【0116】
また、デルタ結線において第4状態を実現する際には、第1〜2スイッチS1〜S2をOFFとし、第3〜5スイッチS3〜S5をONとし、第6スイッチS6をOFFとする。これにより、それぞれデルタ結線された第1電機子巻線11と第2電機子巻線12の両方を並列にインバータ1に接続される上記第4状態に切り替えられる。
【0117】
そして上記センサ4から異常が検出された場合には、切替制御装置5が巻線切替装置3Dの第1スイッチS1と第2スイッチS2だけをONとし、他の第3〜第6スイッチS3〜S6をOFFとすることで、2つの電機子巻線11,12それぞれに加わる電圧を最小にできる非常時の状態に切り替えられる。このとき全ての第1〜6スイッチS1〜S6が経路切替手段を構成する。
【0118】
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。また、上記したように、Y結線での第1〜4状態と、デルタ結線での第1〜4状態の合計8つの状態を選択的に切り替える配線構成を実現できる。
【0119】
(5)その他
以上においては、スイッチS1〜S6のいずれかが、経路切替手段を兼用したが、これに限られない。すなわち、スイッチS1〜S6とは別体の経路切替手段を設け、これによって、複数の電機子巻線に加わる電圧を最小とする電流経路を形成するようにしてもよい。
【0120】
また、以上においては、3相交流モータ2,2A〜Dを駆動制御する交流電動機駆動システムを例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、4相以上の多相の交流モータを駆動制御するシステムとしてもよい。この場合も同様の効果を得ることができる。また、3つ以上の電機子巻線を備えた交流モータに適用してもよく、その場合にも同様の効果を得ることができる。
【0121】
また、各スイッチS1〜S6は、少なくとも半導体スイッチ素子で構成していればよく、上記IGBT素子以外の半導体スイッチ素子でもよい。この場合も、各電機子巻線に対する機能的悪影響を防止しつつ、2つの電機子巻線を円滑に切り替える、という本来の効果を得ることができる。
【0122】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0123】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。