(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる光送信器および光送信装置の各実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
(光送信器の構成)
図1は、実施の形態1にかかる光送信器の構成例を示す断面図である。
図1に示すように、実施の形態1にかかる光送信器100は、半導体レーザチップ110と、サブマウント121と、柱122と、ステム123と、端子124a〜124dと、キャップ125と、レンズ130と、レセプタクル140と、光ファイバスタブ150と、光アイソレータ160と、モニタPD170(Photo Diode:フォトダイオード)と、を備えている。光送信器100は、たとえばTOSA(Transmitter Optical SubAssembly:送信光サブアセンブリ)である。
【0015】
半導体レーザチップ110は、たとえば10[Gb/s]の直接変調レーザ(DML:Directly Modulated Laser)である。半導体レーザチップ110は、サブマウント121に対して半田などで固定されている。サブマウント121は柱122に固定されている。柱122は円柱形のステム123に固定されている。
【0016】
半導体レーザチップ110は、たとえば、サブマウント121および柱122の表面に形成された配線によって端子124a〜124dの少なくともいずれかに電気的に接続され、接続された端子から供給される駆動電流に応じた光を出射する。
【0017】
また、半導体レーザチップ110は、低温になるほど(すなわち半導体レーザチップ110の温度が低くなるほど)光の出射パワーが増加する。たとえば、半導体レーザチップ110の駆動電流は、パルスマスク特性(信号品質)が閾値より低くならないように制御される。この場合は、半導体レーザチップ110の駆動電流は、低温時でも低下しないように制御される。また、半導体レーザの特性により、低温になるほど半導体レーザチップ110の駆動電流に対する出射パワーの比率が高くなる。したがって、半導体レーザチップ110の出射パワーは、低温になるほど増加することになる。
【0018】
または、半導体レーザチップ110の駆動電流は一定値で供給されてもよい。この場合も、半導体レーザチップ110の駆動電流に対する出射パワーの比率は温度が低くなるほど高くなるため、半導体レーザチップ110の出射パワーは、低温になるほど増加することになる。また、この場合も、低温時にも駆動電流のパワーが低下しないため、パルスマスク特性(信号品質)の低下を抑制することができる。
【0019】
また、半導体レーザチップ110は、たとえばチップ内に回折格子を有するDFB(Distributed Feed Back:分布帰還型)の半導体レーザであり、半導体レーザチップ110の両端面には反射防止膜が形成されている。半導体レーザチップ110は、前方からの前方出力光111と、後方からの後方出力光112と、を出射する。
【0020】
また、半導体レーザチップ110は、キャップ125およびステム123によって囲まれた空間内に、乾燥窒素などにより気密封止されている。これにより、湿度変化などによる半導体レーザチップ110の劣化を低減することができる。キャップ125にはレンズ130が設けられている。レンズ130は、半導体レーザチップ110と光ファイバスタブ150とを光学的に結合するように設けられている。レンズ130は、半導体レーザチップ110から出射される前方出力光111を光ファイバスタブ150の光ファイバ152へ集光する。
【0021】
レセプタクル140は、光送信器100と光コネクタとの接続機構である。レセプタクル140は、光ファイバスタブ150および光アイソレータ160を内蔵している。光ファイバスタブ150(出力部)においては、フェルール151に設けられた貫通孔に光ファイバ152が挿入されている。フェルール151はたとえばジルコニアなどのセラミックスによって形成することができる。光ファイバ152はたとえば石英ガラスなどによって形成することができる。光ファイバ152には、レンズ130によって集光された前方出力光111が入射する。光ファイバ152は、入射した光を通過させて出力する。
【0022】
光アイソレータ160は、レンズ130と光ファイバスタブ150との間に設けられており、レンズ130と光ファイバスタブ150とを光学的に結合するように設けられている。光アイソレータ160は、レンズ130から光ファイバスタブ150へ出射される前方出力光111を通過させる。一方、光アイソレータ160は、光ファイバスタブ150の側からレンズ130の側への反射戻り光を遮断する(たとえば
図3−1〜
図3−3参照)。これにより、反射戻り光によって半導体レーザチップ110の特性が不安定となることを回避することができる。
【0023】
また、光アイソレータ160は、半導体レーザチップ110から光ファイバスタブ150へ出射される光について、使用される温度の範囲において低温になるほど光損失が大きくなるように特性が調整されている(たとえば
図4参照)。使用される温度の範囲は、たとえば光送信器100の動作が保証される温度の範囲である。
【0024】
モニタPD170は、ステム123の半導体レーザチップ110に対向する側の面に設けられ、半導体レーザチップ110の後方から出射される後方出力光112を受光する。モニタPD170は、受光した後方出力光112の相対強度をモニタし、モニタ結果を端子124a〜124dの少なくともいずれかから光送信器100の外部へ出力する。これにより、光送信器100の外部の回路において、たとえば半導体レーザチップ110の発光状態を監視することが可能になる。ただし、光送信器100においてモニタPD170を省いた構成とすることも可能である。
【0025】
(光出力パワーおよびパルスマスクマージンの温度特性)
図2−1は、APCを行う送信器における光出力パワーおよびパルスマスクマージンの温度特性の一例を示す参考図である。
図2−1において、横軸は、光送信器100(半導体レーザチップ110)の温度[℃]を示している。また、左側の縦軸は、光送信器100の出力光のパルスマスクマージン[%]を示している。また、右側の縦軸は、光送信器100の光出力パワー[dBm]を示している。
【0026】
また、光出力特性211は、光送信器100の光出力パワーの温度特性を示している。閾値212は、光送信器100の光出力パワーにおける規格割れの閾値(上限)を示している。パルスマスク特性221は、光送信器100の出力光のパルスマスクマージンの温度特性を示している。閾値222は、光送信器100の出力光のパルスマスクマージンにおける規格割れの閾値(下限)を示している。
【0027】
図2−1は、光送信器100の光出力パワーが一定になるように駆動電流を制御するAPCを行うとともに、光アイソレータ160の挿入損失が温度によらず一定であると仮定した場合の各特性を示している。光送信器100においてAPCを行うと仮定すると、
図2−1の光出力特性211に示すように、光送信器100の光出力パワーは温度によらずほぼ一定に保たれる。一方、
図2−1のパルスマスク特性221に示すように、光送信器100の出力光のパルスマスクマージンは、低温になると、APCによる駆動電流の低下にともなって低下する。たとえば−30[℃]以下では、光送信器100の出力光のパルスマスクマージンは閾値222を下回って規格割れとなっている。
【0028】
光送信器100の出力光のパルスマスクマージンを改善するためには、たとえば半導体レーザチップ110の緩和振動周波数を増加させる。半導体レーザチップ110の緩和振動周波数frは、たとえば下記(1)式または(2)式によって示すことができる。下記(1)式または(2)式において、SQRT(X)はXの平方根である。α,βは定数である。Iは半導体レーザチップ110の駆動電流である。Ithは半導体レーザチップ110の閾値電流である。Poは半導体レーザチップ110の光出力パワーである。
【0029】
fr ∝ α×SQRT(I−Ith) …(1)
【0030】
fr ∝ β×SQRT(Po) …(2)
【0031】
すなわち、光送信器100の出力光の低温時におけるパルスマスクマージンを改善するためには、低温時の駆動電流Iを高くし、あるいは低温時の半導体レーザチップ110の前方出力光111の光出力パワーPoを高くすればよい。
【0032】
図2−2は、パルスマスクマージンに基づく制御を行う送信器における光出力パワーおよびパルスマスクマージンの温度特性の一例を示す参考図である。
図2−2において、
図2−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図2−2は、光送信器100の出力光のパルスマスクマージンが閾値222を下回らないように駆動電流を制御するとともに、光アイソレータ160の挿入損失が温度によらず一定であると仮定した場合の各特性を示している。
【0033】
この場合は、低温時にも光送信器100の出力光のパルスマスクマージンが閾値222を下回らないようにするため、低温時における駆動電流は
図2−1に示した場合に比べて高くなる。したがって、低温時における光送信器100の光出力パワーも、
図2−1に示した場合に比べて高くなる。たとえば−30[℃]以下では、光送信器100の光出力パワーが閾値212を上回って規格割れとなっている。
【0034】
図2−3は、実施の形態1にかかる送信器における光出力パワーおよびパルスマスクマージンの温度特性の一例を示す図である。
図2−3において、
図2−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図2−3は、
図1に示した光送信器100のように、たとえば光送信器100の出力光のパルスマスクマージンが閾値222を下回らないように駆動電流を制御するとともに、光アイソレータ160の挿入損失が低温になるほど増加する場合の各特性を示している。
【0035】
この場合は、低温時における半導体レーザチップ110の出射パワーが高くなるが、低温時には光アイソレータ160の挿入損失も大きくなるため、低温時における光送信器100の出力光のパワーの増加を抑えることができる。たとえば、
図2−3に示すように、光送信器100の出力光のパルスマスクマージンが閾値222を下回らないようにしつつ、光送信器100の光出力パワーが閾値212を上回らないようにすることができる。これにより、低温時においても、出力光の波形歪およびパワー超過を抑えることができる。このため、通信品質を向上させることができる。
【0036】
(光アイソレータの構成例)
図3−1は、光アイソレータの構成例を示す図である。
図3−1に示すように、光アイソレータ160は、筒状磁石310と、偏光子320と、ファラデー回転子330と、偏光子340と、を備えている。筒状磁石310は、筒状の磁石である。筒状磁石310の内部には、偏光子320、ファラデー回転子330および偏光子340が直列に配置されている。筒状磁石310はファラデー回転子330を磁化する。
【0037】
偏光子320は、所定方向(偏光方向321)の直線偏光を通過させ、所定方向以外の偏光を遮断する第一偏光子である。以下、偏光子320の偏光方向321を基準の0[°]の方向として説明する。偏光子340は、偏光子320に対して45[°](偏光方向341)の相対角度で配置された第二偏光子である。すなわち、偏光子340は、45[°]の直線偏光を通過させ、45[°]以外の偏光を遮断する。
【0038】
ファラデー回転子330は、偏光子320と偏光子340との間に設けられている。ファラデー回転子330は、通過する光の偏光方向を、温度に応じた角度だけ回転させる。ここでは仮に、ファラデー回転子330は、偏光方向を45[°]回転させるとする。ファラデー回転子330は、たとえばガーネット単結晶膜によって実現することができる。
【0039】
図3−2は、光アイソレータへ順方向に入射された光を示す図である。
図3−2において、
図3−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図3−2に示すように、光アイソレータ160の前段から(すなわち順方向に)入射された光は、偏光子320によって0[°](偏光方向322)の直線偏光のみが通過してファラデー回転子330へ入射される。
【0040】
したがって、ファラデー回転子330によって偏光方向が回転して偏光子340へ出射される光は45[°](偏光方向332)の直線偏光になる。偏光子340は45[°]の直線偏光を通過させるため、ファラデー回転子330から出射された光は偏光子340を通過して光アイソレータ160の後段へ出射される。
【0041】
図3−3は、光アイソレータへ逆方向に入射された光を示す図である。
図3−3において、
図3−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図3−3に示すように、光アイソレータ160の後段から(すなわち逆方向に)入射された光は、偏光子340によって45[°](偏光方向343)の直線偏光のみが通過してファラデー回転子330へ入射される。
【0042】
したがって、ファラデー回転子330によって偏光方向が45[°]回転して偏光子320へ出射される光は90[°](偏光方向333)の直線偏光になる。偏光子320は0[°]の直線偏光のみを通過させるため、ファラデー回転子330から出射された光は偏光子320によって遮断され、光アイソレータ160の前段へ出射されない。
【0043】
図3−2および
図3−3に示したように、光アイソレータ160によれば、順方向に入射された光を通過させるとともに、逆方向に入射された光を遮断することができる。また、ファラデー回転子330は偏光方向を45[°]回転させるとして説明したが、ファラデー回転子330は、温度に応じて偏光方向の回転量が変化する性質を有する。
【0044】
したがって、順方向に入射され、偏光子320およびファラデー回転子330を通過した光の偏光方向と、偏光子340の偏光方向と、の間に温度に応じたずれが生じる。これにより、順方向の光が偏光子340を通過する比率が温度に応じて変化する。このため、温度に応じて光アイソレータ160の挿入損失が変化する。
【0045】
図4は、光アイソレータの温度と挿入損失との関係を示すグラフである。
図4において、横軸は光アイソレータ160の温度[℃]を示している。また、縦軸は光アイソレータ160の挿入損失[dB]を示している。挿入損失特性401は、光アイソレータ160の挿入損失の温度特性である。
【0046】
たとえば、挿入損失特性401に示すように、光送信器100が使用される温度の範囲(たとえば−40[℃]〜80[℃])の高温側において挿入損失が最小となるようにする。このとき、ファラデー回転子330による偏光方向の回転角度は、高温になるほど45[°](所定角度)に近づき、低温になるほど45[°]との差が大きくなる。これにより、光送信器100が使用される温度の範囲において、低温になるほど光アイソレータ160の挿入損失を増加させることができる。
【0047】
挿入損失特性401は、たとえば偏光子320と偏光子340との相対角度の調整によって調整することができる。また、挿入損失特性401は、ファラデー回転子330の材料などの選択によって調整することもできる。たとえば、光送信器100の製造時に、半導体レーザチップ110の温度を変化させながら光送信器100の光出力パワーを監視し、光出力パワーが温度によらずほぼ一定になるように挿入損失特性401を調整する。これにより、光送信器100の光出力パワーを温度によらずほぼ一定にすることができる。
【0048】
(光通信装置の構成例)
図5は、実施の形態1にかかる光通信装置の構成例を示す図である。
図5に示す光通信装置500は、ROSA510(Receiver Optical SubAssembly:受信光サブアセンブリ)と、TOSA520と、プリント基板530と、を備えている。光通信装置500は、TOSA520によって光を送信する光送信装置である。
【0049】
ROSA510は、PDを内蔵し、外部からの光をPDによって受光して光電変換した電気信号をプリント基板530へ出力する受信器である。TOSA520は、半導体レーザを内蔵し、LD駆動部536から供給される駆動電流に応じて半導体レーザから光を出射させることで光信号を外部へ送信する送信器である。
図1に示した光送信器100は、たとえばTOSA520に適用することができる。
【0050】
プリント基板530には、CDR531(Clock and Data Recovery)と、サーミスタ532と、マイクロコントローラ533と、受信制御部534と、CDR535と、LD駆動部536と、送信制御部537と、が設けられている。CDR531は、ROSA510から出力された電気信号を再生し、再生した電気信号を外部へ出力する。
【0051】
サーミスタ532は、周囲の温度を測定する測定部である。サーミスタ532は、測定した温度を示す温度情報をマイクロコントローラ533へ出力する。ここで、TOSA520とサーミスタ532とは同一の光通信装置500に格納されているため、サーミスタ532の周囲の温度とTOSA520の半導体レーザの温度とはほぼ同じ、または連動している。したがって、サーミスタ532は、周囲の温度を測定することによって、TOSA520の半導体レーザの温度を間接的に測定することができる。
【0052】
マイクロコントローラ533は、光通信装置500に組み込まれた制御回路である。たとえば、マイクロコントローラ533は、サーミスタ532から出力された温度情報を受信制御部534へ出力する。受信制御部534は、たとえばマイクロコントローラ533から出力される温度情報に基づいて、ROSA510による光信号の受信を制御する制御回路である。
【0053】
CDR535には、外部からの電気信号が入力される。CDR535は、入力された電気信号を再生し、再生した電気信号をLD駆動部536へ出力する。LD駆動部536は、CDR535から出力された電気信号に応じた駆動電流をTOSA520へ供給することでTOSA520を駆動する。また、LD駆動部536は、送信制御部537の制御にしたがって、TOSA520へ供給する駆動電流の大きさを変化させる。
【0054】
送信制御部537は、TOSA520による光信号の送信を制御する制御回路である。具体的には、送信制御部537は、マイクロコントローラ533から受信制御部534へ出力される温度情報を取得し、取得した温度情報に基づいて、LD駆動部536からTOSA520へ供給される駆動電流の大きさを制御する。これにより、TOSA520の半導体レーザの温度に応じて、TOSA520の半導体レーザの出射パワーを制御することができる。
【0055】
たとえば、光通信装置500は、温度と駆動電流の大きさを対応付けた対応情報を記憶するメモリをさらに備えている。送信制御部537は、取得した温度情報が示す温度に対応する駆動電流の大きさを対応情報から取得し、取得した駆動電流の大きさとなるようにLD駆動部536が供給する駆動電流の大きさを制御する。
【0056】
対応情報は、たとえばあらかじめ作成されてメモリに記憶される。たとえば、TOSA520の温度を変化させながら、サーミスタ532によって温度を測定する。そして、サーミスタ532によって測定される各温度について、駆動電流を変化させながらTOSA520の出力光のパルスマスクマージンを監視し、パルスマスクマージンが閾値を上回る駆動電流の大きさを該当温度に対応する駆動電流の大きさとして決定する。これにより、サーミスタ532によって測定される温度と、TOSA520から出力される光のパルスマスクマージン(波形の品質)が所定の条件(たとえば閾値以上)を満たす駆動電流の大きさと、を対応付ける対応情報を作成することができる。
【0057】
なお、たとえばROSA510、CDR531および受信制御部534などを省き、光通信装置500を光送信装置としてもよい。
【0058】
(送信器の変形例)
図6は、
図1に示した送信器の変形例を示す図である。
図6において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、光送信器100は、
図1に示した構成に加えて光アイソレータ610を備えていてもよい。光アイソレータ610は、レセプタクル140の内部において光アイソレータ160と直列に配置されている。
【0059】
光アイソレータ610は、レンズ130から光ファイバスタブ150へ出射される前方出力光111を通過させる。一方、光アイソレータ610は、光ファイバスタブ150の側からレンズ130の側への反射戻り光を遮断する。光アイソレータ610の構成例は、たとえば、
図3−1〜
図3−3に示した構成例と同様である。
【0060】
このように、複数の光アイソレータ160および光アイソレータ610を設けることで、反射戻り光を抑えるアイソレーション特性を向上させることができる。これにより、低温時に光アイソレータ160の光損失が大きくなることで光アイソレータ160のアイソレーション特性が低下しても、半導体レーザチップ110への反射戻り光を抑えることができる。これにより、反射戻り光によって半導体レーザチップ110の特性が不安定となることを回避することができる。
【0061】
なお、光アイソレータ160,610のそれぞれの挿入損失特性401を合成した挿入損失特性において、低温になるほど挿入損失が大きくなればよい。たとえば、光アイソレータ160,610のそれぞれの挿入損失特性401において、低温になるほど挿入損失が大きくなってもよい。または、光アイソレータ160,610のうちの一方の挿入損失特性401においては低温になるほど挿入損失が大きくなり、他方の挿入損失特性401においては温度によらず挿入損失が一定であってもよい。
【0062】
このように、実施の形態1にかかる光送信器100においては、低温になるほど光の出射パワーが増加する半導体レーザチップ110の後段に、低温になるほど挿入損失が大きくなる光アイソレータ160を設ける。これにより、低温時に駆動電流を低下させなくても、光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができる。
【0063】
駆動電流を低下させないことで、半導体レーザチップ110の緩和振動周波数の低下を抑えられるため、光送信器100の出力光の波形劣化を抑えることができる。また、駆動電流を低下させるとしても、少ない低下量で光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができるため、光送信器100の出力光の波形劣化を抑えることができる。また、光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることで、光送信器100の光出力パワーが光出力規格を超過することを回避することができる。したがって、低温時においても通信品質を向上させることができる。このため、たとえば光送信器100の動作温度範囲を拡張することができる。
【0064】
また、たとえば、パルスマスク特性が閾値より低くならないように半導体レーザチップ110の駆動電流を制御し、駆動電流が低温時に高くなる場合においても、光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができる。
【0065】
また、光送信器100によれば、低温になるほど挿入損失が大きくなる特性を有する光アイソレータ160を用いることで、ヒータなどを設けなくても動作温度範囲を拡張することができる。このため、消費電力の増加や制御の煩雑化を回避することができる。また、たとえば、VOA(Variable Optical Attenuator)を設け、温度に応じてVOAを制御する構成に比べて、消費電力の増加や制御の煩雑化を回避することができる。また、低温になるほど挿入損失が大きくなるエレメントを光アイソレータ160によって実現することで、部品点数を増やさなくても動作温度範囲を拡張することができる。
【0066】
(実施の形態2)
(送信器の構成例)
図7−1は、実施の形態2にかかる送信器の構成例を示す断面図である。
図7−1において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図7−1に示すように、実施の形態2にかかる光送信器100は、
図1に示した構成に加えて、プレート701と、柱702と、を備えている。
【0067】
プレート701は、温度に応じて反り量が変化するプレートである。たとえば、プレート701は、熱膨張率が異なる複数(たとえば2枚)の金属板を張り合わせた複合金属板(バイメタル)によって実現することができる。
【0068】
プレート701として用いるバイメタルは、熱膨張係数差がたとえば10[ppm]〜30[ppm]程度である2枚の金属板を用いることが好ましい。バイメタルを構成する材料は、低熱膨張率の材料として、たとえばNiの重量%が36%〜48%のNi−Fe合金、高熱膨張率の材料として、たとえばCu、Ni、70%Cu−Zn合金、70%Ni−Cu合金、Ni−Cr−Fe合金、20%Ni−Mn−Fe合金を用いることができる。複合金属板についてはたとえば特許文献(特開昭55−080021号公報や特開昭56−133758号公報)に記載されている。
【0069】
プレート701は、半導体レーザチップ110から光ファイバスタブ150へ出射される光の一部を、自身の反り量に応じた量だけ遮断するように調整して設けられている。ここでは、プレート701は、柱702に対して半田などによって固定されている。柱702はステム123に固定されている。
【0070】
また、プレート701は、半導体レーザチップ110から光ファイバスタブ150へ出射される光の遮断量が、低温になるほど増加するように調整されている。プレート701の調整は、たとえば、プレート701に含まれる各金属板の熱膨張率、プレート701の大きさ(たとえば面積や長さ)、プレート701の形状またはプレート701を設ける位置や角度などを変えることによって行うことができる。バイメタルの総厚としては、たとえば0.1[mm]〜0.8[mm]程度、さらに好ましくは0.1[mm]〜0.5[mm]程度が好ましい。
【0071】
たとえば、プレート701は、常温(たとえば室温)において、
図7−1に示すようにほぼ平面となっており、半導体レーザチップ110から光ファイバスタブ150へ出射される光を遮断しないように調整されている(遮断量ゼロ)。なお、実施の形態2においては、光アイソレータ160の挿入損失特性401は、低温になるほど挿入損失が増加する特性に限らない。たとえば、光アイソレータ160の挿入損失特性401は、温度に関わらず挿入損失が一定となる特性であってもよい。
【0072】
図7−2は、低温時におけるプレートの変化の一例を示す図である。
図7−2において、
図7−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。たとえば、プレート701は、低温(たとえば−40[℃])においては、
図7−2に示すように前方出力光111の側へ反り、前方出力光111の一部を遮断する。
【0073】
また、
図7−2に示すように、プレート701が前方出力光111の一部を遮断する際に、プレート701における前方出力光111の一部を遮断する部分の面703が前方出力光111の進行方向に対して斜めになるようにプレート701の角度を調整してもよい。これにより、前方出力光111のうちのプレート701によって遮断された光が、プレート701によって半導体レーザチップ110へ反射することを回避することができる。このため、反射戻り光により半導体レーザチップ110の特性が変化し、雑音が増加することを回避することができる。
【0074】
また、プレート701における前方出力光111の一部を遮断する部分の面703を、光が反射しないようにしてもよい。たとえば、面703をブラスト処理等により粗化したり、面703に反射防止膜を設けることで、前方出力光111のうちのプレート701によって遮断された光が、プレート701によって半導体レーザチップ110へ反射することを回避することができる。このため、反射戻り光により半導体レーザチップ110の特性が変化し、雑音が増加することを回避することができる。
【0075】
図7−3は、高温時におけるプレートの変化の一例を示す図である。
図7−3において、
図7−1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。たとえば、プレート701は、高温(たとえば85[℃])においては、
図7−3に示すように、前方出力光111の反対側へ反り、前方出力光111を遮断しない。このため、プレート701による前方出力光111の損失は発生しない。
【0076】
図7−1〜
図7−3に示したように、温度に応じて反り量が変化するプレート701を用いることで、実施の形態1にかかる光アイソレータ160と同様に、低温になるほど前方出力光111の損失量を増加させることができる。これにより、たとえば
図2−3に示した光出力特性211およびパルスマスク特性221と同様の特性を得ることができる。
【0077】
したがって、低温時に半導体レーザチップ110の出射パワーが増加しても、光送信器100の出力パワーの超過を回避することができる。たとえば、光送信器100の運用前に、半導体レーザチップ110の温度を変化させながら光送信器100の光出力パワーを監視し、光出力パワーが温度によらずほぼ一定になるようにプレート701を調整する。これにより、光送信器100の光出力パワーを温度によらずほぼ一定にすることができる。
【0078】
このように、実施の形態2にかかる光送信器100においては、低温になるほど光の出射パワーが増加する半導体レーザチップ110の後段に、低温になるほど光の遮断量が大きくなるプレート701を設ける。これにより、低温時に駆動電流を低下させなくても、光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができる。
【0079】
駆動電流を低下させないことで、半導体レーザチップ110の緩和振動周波数の低下を抑えられるため、光送信器100の出力光の波形劣化を抑えることができる。また、駆動電流を低下させるとしても、少ない低下量で光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができるため、光送信器100の出力光の波形劣化を抑えることができる。また、光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることで、光送信器100の光出力パワーが光出力規格を超過することを回避することができる。したがって、低温時においても通信品質を向上させることができる。このため、たとえば光送信器100の動作温度範囲を拡張することができる。
【0080】
たとえば、パルスマスク特性が閾値より低くならないように半導体レーザチップ110の駆動電流を制御し、駆動電流が低温時に高くなる場合においても光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができる。また、一定の駆動電流が半導体レーザチップ110へ供給される場合にも、光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができる。
【0081】
また、光送信器100によれば、低温になるほど光の遮断量が大きくなる特性を有するプレート701を用いることで、ヒータなどを設けなくても動作温度範囲を拡張することができる。このため、消費電力の増加や制御の煩雑化を回避することができる。また、たとえば、VOA(Variable Optical Attenuator)を設け、温度に応じてVOAを制御する構成に比べて、消費電力の増加や制御の煩雑化を回避することができる。なお、実施の形態2にかかる光送信器100はたとえば
図5に示したTOSA520に適用することができる。
【0082】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3にかかる送信器の構成例を示す断面図である。
図8において、
図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、実施の形態3にかかる光送信器100は、
図1に示した構成に加えて光フィルタ801を備えている。半導体レーザチップ110は、低温になるほど出射する光の波長(発振波長)が短くなる特性を有する。たとえば、半導体レーザチップ110は、約0.1[nm/℃]の温度特性をもつ。
【0083】
光フィルタ801は、相対的に短い波長に対する透過率が、相対的に長い波長の透過率よりも低い透過特性を有する。たとえば、光フィルタ801は、光送信器100が使用される温度の範囲の低温側において、短い波長ほど透過率が低い透過特性を有する。光フィルタ801は、半導体レーザチップ110と光ファイバスタブ150(出力部)との間に設けられ、半導体レーザチップ110から光ファイバスタブ150へ出射される光を透過させる。
図8に示す例では、光フィルタ801は、レンズ130と光アイソレータ160との間に設けられている。光フィルタ801は、たとえば長波長透過フィルタである。たとえば、光フィルタ801は、誘電体多層膜によって実現することができる。
【0084】
なお、実施の形態3においては、光アイソレータ160の挿入損失特性401は、低温になるほど挿入損失が増加する特性に限らない。たとえば、光アイソレータ160の挿入損失特性401は、温度に関わらず挿入損失が一定となる特性であってもよい。
【0085】
図9は、光フィルタの透過特性の一例を示す図である。
図9において、横軸は、半導体レーザチップ110の温度[℃]と発振波長[nm]を対応付けて示している。たとえば、半導体レーザチップ110は、温度が20[℃]の場合は発振波長が約1310[nm]となる。縦軸は、光フィルタ801の透過特性[dB](透過率)を示している。
【0086】
フィルタ特性901は、波長に対する光フィルタ801の透過特性を示している。光フィルタ801に示すように、光フィルタ801は、主に使用波長の短波長側(たとえば1304[nm]〜1310[nm])において、短い波長ほど透過率が低くなる。また、半導体レーザチップ110の発振波長は低温になるほど短くなる。
【0087】
このため、光フィルタ801を設けることで、実施の形態1にかかる光アイソレータ160と同様に、低温になるほど前方出力光111の損失量を大きくすることができる。これにより、たとえば
図2−3に示した光出力特性211およびパルスマスク特性221と同様の特性を得ることができる。したがって、低温時に半導体レーザチップ110の出射パワーが増加しても、光送信器100の出力パワーの超過を回避することができる。
【0088】
このように、実施の形態3にかかる光送信器100においては、半導体レーザチップ110の後段に、相対的に短い波長に対する透過率が、相対的に長い波長の透過率よりも低い透過特性を有する光フィルタ801を設ける。これにより、低温時に駆動電流を低下させなくても、光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができる。
【0089】
駆動電流を低下させないことで、半導体レーザチップ110の緩和振動周波数の低下を抑えられるため、光送信器100の出力光の波形劣化を抑えることができる。また、駆動電流を低下させるとしても、少ない低下量で光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができるため、光送信器100の出力光の波形劣化を抑えることができる。また、光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることで、光送信器100の光出力パワーが光出力規格を超過することを回避することができる。したがって、低温時においても通信品質を向上させることができる。このため、たとえば光送信器100の動作温度範囲を拡張することができる。
【0090】
たとえば、パルスマスク特性が閾値より低くならないように半導体レーザチップ110の駆動電流を制御し、駆動電流が低温時に高くなる場合においても、光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができる。また、一定の駆動電流が半導体レーザチップ110へ供給される場合にも光送信器100の光出力パワーの増大を抑えることができる。
【0091】
また、光送信器100によれば、相対的に短い波長に対する透過率が、相対的に長い波長の透過率よりも低い透過特性を有する光フィルタ801を用いることで、ヒータなどを設けなくても動作温度範囲を拡張することができる。このため、消費電力の増加や制御の煩雑化を回避することができる。また、たとえば、VOA(Variable Optical Attenuator)を設け、温度に応じてVOAを制御する構成に比べて、消費電力の増加や制御の煩雑化を回避することができる。なお、実施の形態3にかかる光送信器100は、たとえば
図5に示したTOSA520に適用することができる。
【0092】
以上説明したように、光送信器および光送信装置によれば、通信品質を向上させることができる。
【0093】
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0094】
(付記1)低温になるほど光の出射パワーが増加する半導体レーザと、
低温になるほど挿入損失が増加し、前記半導体レーザから出射された光を通過させる光アイソレータと、
前記光アイソレータを通過した光を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする光送信器。
【0095】
(付記2)前記光アイソレータは、
前記半導体レーザから出射された光のうちの所定方向の直線偏光のみを通過させる第一偏光子と、
前記第一偏光子を通過した光の偏光方向を温度に応じた角度だけ回転させて通過させるファラデー回転子と、
前記ファラデー回転子を通過した光のうちの、前記所定方向から所定角度だけ回転させた方向の直線偏光のみを通過させる第二偏光子と、
を備えることを特徴とする付記1に記載の光送信器。
【0096】
(付記3)前記出力部は光ファイバであり、
前記半導体レーザと前記光ファイバとを前記光アイソレータを介して光学的に結合するように設けられたレンズを備えることを特徴とする付記1または2に記載の光送信器。
【0097】
(付記4)前記ファラデー回転子による偏光方向の回転角度は、低温になるほど前記所定角度との差が大きくなることを特徴とする付記3に記載の光送信器。
【0098】
(付記5)前記光アイソレータは、直列に設けられた複数の光アイソレータを含むことを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の光送信器。
【0099】
(付記6)低温になるほど光の出射パワーが増加する半導体レーザと、
低温になるほど挿入損失が増加し、前記半導体レーザから出射された光を通過させる光アイソレータと、
前記光アイソレータを通過した光を出力する出力部と、
前記半導体レーザの温度を測定する測定部と、
前記測定部によって測定される温度と、前記出力部によって出力される光の波形の品質が所定の条件を満たす駆動電流の大きさと、を対応付ける対応情報を記憶するメモリと、
前記測定部によって測定された温度と、前記メモリによって記憶された対応情報と、に基づく大きさの駆動電流により前記半導体レーザを駆動する駆動部と、
を備えることを特徴とする光送信装置。
【0100】
(付記7)低温になるほど光の出射パワーが増加する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光を出力する出力部と、
温度に応じて反り量が変化し、前記半導体レーザから前記出力部へ出射される光の一部を前記反り量に応じて遮断するプレートであって、低温になるほど前記光を遮断する量が増加するプレートと、
を備えることを特徴とする光送信器。
【0101】
(付記8)前記プレートは、熱膨張率が異なる複数の金属板を張り合わせた複合金属板であることを特徴とする付記7に記載の光送信器。
【0102】
(付記9)前記プレートにおける前記光の一部を遮断する部分の面は、前記プレートが前記光の一部を遮断する際に、前記光の一部の進行方向に対して斜めになることを特徴とする付記7または8に記載の光送信器。
【0103】
(付記10)前記プレートにおける前記光の一部を遮断する部分の面は、光を反射させないことを特徴とする付記7〜9のいずれか一つに記載の光送信器。
【0104】
(付記11)低温になるほど光の出射パワーが増加する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光を出力する出力部と、
温度に応じて反り量が変化し、前記半導体レーザから前記出力部へ出射される光の一部を前記反り量に応じて遮断するプレートであって、低温になるほど前記光を遮断する量が増加するプレートと、
前記半導体レーザの温度を測定する測定部と、
前記測定部によって測定される温度と、前記出力部によって出力される光の波形の品質が所定の条件を満たす駆動電流の大きさと、を対応付ける対応情報を記憶するメモリと、
前記測定部によって測定された温度と、前記メモリによって記憶された対応情報と、に基づく大きさの駆動電流により前記半導体レーザを駆動する駆動部と、
を備えることを特徴とする光送信装置。
【0105】
(付記12)低温になるほど光の出射パワーが増加するとともに、低温になるほど前記光の波長が短くなる半導体レーザと、
相対的に短い波長に対する透過率が、相対的に長い波長の透過率よりも低い透過特性を有し、前記半導体レーザから出射された光を透過させる光フィルタと、
前記光フィルタを透過した光を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする光送信器。
【0106】
(付記13)低温になるほど光の出射パワーが増加するとともに、低温になるほど前記光の波長が短くなる半導体レーザと、
相対的に短い波長に対する透過率が、相対的に長い波長の透過率よりも低い透過特性を有し、前記半導体レーザから出射された光を透過させる光フィルタと、
前記光フィルタを透過した光を出力する出力部と、
前記半導体レーザの温度を測定する測定部と、
前記測定部によって測定される温度と、前記出力部によって出力される光の波形の品質が所定の条件を満たす駆動電流の大きさと、を対応付ける対応情報を記憶するメモリと、
前記測定部によって測定された温度と、前記メモリによって記憶された対応情報と、に基づく大きさの駆動電流により前記半導体レーザを駆動する駆動部と、
を備えることを特徴とする光送信装置。