特許第5724712号(P5724712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724712
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】シャフト用スペーサの支持具
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/073 20060101AFI20150507BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20150507BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   F16C35/073
   B66B11/08 A
   F16C17/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-160503(P2011-160503)
(22)【出願日】2011年7月22日
(65)【公開番号】特開2013-24342(P2013-24342A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 稔
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−031719(JP,A)
【文献】 特開2011−133081(JP,A)
【文献】 特許第4089237(JP,B2)
【文献】 特開昭63−012583(JP,A)
【文献】 特開昭61−136021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/073
B66B 11/08
F16C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、このシャフトに固定された回転体と、前記シャフトの端部を回動自在に支持する軸受と、前記回転体と前記軸受との間に設けられたスペーサと、前記スペーサを支持する支持具とを備えたものにおいて、
前記支持具は、前記軸受側に配置される円筒形の第1セットカラーと、前記スペーサ側に配置される円筒形の第2セットカラーとを備え、
前記両セットカラーはそれぞれ複数に分割された部品を連結した構成であり、
前記第1セットカラーは前記軸受の前記スペーサ側に取り付けられ、前記第2セットカラーは前記スペーサの前記軸受側の外側に取り付けられるとともに前記第1セットカラーに取り付けられ、前記シャフトの全周にわたって前記シャフトと前記スペーサの間に隙間を形成するように構成したことを特徴とするシャフト用スペーサの支持具。
【請求項2】
前記軸受には前記スペーサ側に突出した内輪を有しており、この内輪の外径は前記スペーサの外径より大であり、前記第1セットカラーは前記内輪に取り付けられるとともに、その内径は前記第2セットカラーの内径よりも大であることを特徴とする請求項1に記載のシャフト用スペーサの支持具。
【請求項3】
前記第2セットカラーは前記内輪の前記スペーサ側面に接して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャフト用スペーサの支持具。
【請求項4】
前記第1セットカラーの外周面と前記第2セットカラーの外周面とのずれの差が前記各セットカラーの全周にわたって所定値以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のシャフト用スペーサの支持具。
【請求項5】
前記第1セットカラー及び前記第2セットカラーはそれぞれ2分割されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のシャフト用スペーサの支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータやエスカレータ等に使用されるシャフトに設けられるスペーサの支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6はエレベータの一例を示す全体図、図7はスペーサ部の要部を示す部分断面図である。
図において、30は巻上機31により回動するメインシャフト、32はピロブロックからなる軸受、3a,3bはメインシャフト30に固定されたトラクションシーブである。1aは主ロープで、一側はかご2のロープヒッチ部2aに連結され、トラクションシーブ3aを経由して他側はつり合いおもり4aに連結されている。1bも同様の主ロープで、一側はかご2のロープヒッチ部2aの反対側に連結され、トラクションシーブ3bを経由して他側はつり合いおもり4bに連結されている。
【0003】
33はピロブロック32の内輪、10はピロブロック32とトラクションシーブ3bとの間に配置された円筒形のスペーサであり、エレベータ据付時におけるピロブロック32の位置決めなどに使用されるものである。11はクランプボルトで、このクランプボルト11の先端をスペーサ10に空けられたタップ穴を介してメインシャフト30に押圧することにより、スペーサ10をメインシャフト30に取り付けている。これにより、スペーサ10はメインシャフト30とともに回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4089237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の構成では、トラクションシーブ3bに荷重が掛かるとメインシャフト30に撓みが生じる。この様子を図8により説明する。
クランプボルト11が上にあるときは、メインシャフト30は二点鎖線で示すように、上側がクランプボルト11の先端に接し、下側はスペーサ10の内面に接している。このときメインシャフト30が実線のように撓んでいると、メインシャフト30のスペーサ10の端部に位置するA点は浮き上がって外側に移動する。またB点は浮き上がって内側に移動するが、スペーサ10の上部と接触することはない。
【0006】
しかしメインシャフト30及びスペーサ10が半回転すると、A点は上方、B点及びクランプボルト11は下方にくる。そうすると、B点は浮き上がって外側に移動するがスペーサ10に接触することはない。しかしA点は浮き上がって内側に移動するため、スペーサ10の内面に接触してΔLの相対すべりを生じる。このすべりが繰り返されるとフレッティング磨耗を引き起こし、メインシャフト30の折損につながる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シャフトと、このシャフトに固定された回転体と、前記シャフトの端部を回動自在に支持する軸受と、前記回転体と前記軸受との間に設けられたスペーサと、前記スペーサを支持する支持具とを備えたものにおいて、前記支持具は、前記軸受側に配置される円筒形の第1セットカラーと、前記スペーサ側に配置される円筒形の第2セットカラーとを備え、前記両セットカラーはそれぞれ複数に分割された部品を連結した構成であり、前記第1セットカラーは前記軸受の前記スペーサ側に取り付けられ、前記第2セットカラーは前記スペーサの前記軸受側の外側に取り付けられるとともに前記第1セットカラーに取り付けられ、前記シャフトの全周にわたって前記シャフトと前記スペーサの間に隙間を形成するように構成したことを特徴とするシャフト用スペーサの支持具である。
【0008】
また本発明は、前記軸受には前記スペーサ側に突出した内輪を有しており、この内輪の外径は前記スペーサの外径より大であり、前記第1セットカラーは前記内輪に取り付けられるとともに、その内径は、前記第2セットカラーの内径よりも大であることを特徴とするものである。
更に本発明は、前記第2セットカラーは前記内輪の前記スペーサ側面に接して設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記第1セットカラーの外周面と前記第2セットカラーの外周面とのずれの差が、前記各セットカラーの全周にわたって所定値以下であることを特徴とするものである。
更にまた、前記第1セットカラー及び前記第2セットカラーはそれぞれ2分割されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メインシャフトとスペーサとの間に隙間を作る構成であるから、メインシャフトの折損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態による支持具周辺の構成図である。
図2】本発明の実施の形態による支持具の取付完了図である。
図3】本発明の実施の形態の第1,第2セットカラーの取付状態を示す説明図である。
図4】本発明の実施の形態のメインシャフト側からピロブロックを見た図である。
図5】本発明の実施の形態による隙間の確認作業を示す説明図である。
図6】エレベータの一例を示す全体図である。
図7】スペーサ部の要部を示す部分断面図である。
図8】従来装置の解決課題を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図1及び図2により説明する。図1は支持具周辺の構成図、図2は支持具の取付完了図である。図ではトラクションシーブは図示省略しており、図7と同一符号は同一のものを示している。
【0013】
図において、21はリング状の第1セットカラーであり、上側第1セットカラー21Uと、下側第1セットカラー21Dに2分割されている。22はリング状の第2セットカラーであり、上側第2セットカラー22Uと、下側第2セットカラー22Dに2分割されている。前記第1セットカラー21及び第2セットカラー22の外径は同一になっている。第1セットカラー21は内輪33を挟むように取り付けられ、第2セットカラー22はスペーサ10を挟むように取り付けられるものである。そのため内径は、第1セットカラー21の方が第2セットカラー22よりも大きくなっている。これらの第1セットカラー21と第2セットカラー22とで支持具20が構成されている。34はピロブロック32のスリンガ、35は内輪33に設けられた止めねじ用穴、36は上側第1セットカラー21Uに設けられた円周方向位置決め用穴である。
【0014】
次に支持具の取り付けについて説明する。
まず、上側第1セットカラー21Uと上側第2セットカラー22Uとをボルト23a,23bで仮止めする。また、下側第1セットカラー21Dと下側第2セットカラー22Dとをボルト23c,23dで仮止めする。ここで、上下の第2セットカラー22U,22Dにはボルト23a〜23dが貫通できる大きめの丸穴(バカ穴)が空けられており、上下の第1セットカラー21U,21Dにはボルト23a〜23dが螺合するタップ穴が空けられている。
【0015】
次に、上下の第1及び第2セットカラー21U,22U,21D,22Dをボルト24a,24b,25a,25bで仮止めする。ここでも前記と同様に、上側第1セットカラー21U及び上側第2セットカラー22Uにはボルト24a,24b,25a,25bが貫通できる大きめの丸穴が空けられており、下側第1セットカラー21D及び下側第2セットカラー22Dにはボルト24a,24b,25a,25bが螺合するタップ穴が空けられている。
そして、上側第1セットカラー21Uの円周方向位置決め用穴36を内輪33の止めねじ用穴35に合わせて、各ボルト23a〜25bを固定する。円周方向位置決め用穴36を止めねじ用穴35に合わせる方法としては、例えば、両穴に六角レンチを挿入しておき、ボルト締め後に六角レンチを抜くという方法がある。
【0016】
尚、26a〜26dは上下の第2セットカラー22U,22Dの4箇所に設けた調整用の切り欠きであり、各切り欠きは第2セットカラー22の外周面を4等分するように配置されるとともに、第2セットカラー22の外周面から同一の深さに切り欠かれている。
【0017】
次に各構成についてもう少し詳しく説明する。図3は、第1,第2セットカラー21,22の取付状態を示す説明図である。
下側第2セットカラー22Dはスペーサ10に軽く接するとともに、内輪33に押し当てられている。このとき、下側第1セットカラー21Dは内輪33には軽く接しているが、スリンガ34には接していない。この状態で前記のように、円周方向位置決め用穴36を止めねじ用穴35に合わせて、上側第1セットカラー21Uをボルト24a,24bで、下側第1セットカラー21Dに固定する。
次に、スペーサ10を内輪33に押し付けて、上側第2セットカラー22Uをボルト25a,25bで、下側第2セットカラー22Dに固定する。
【0018】
次に、第1セットカラー21と第2セットカラー22との位置調整について説明する。図4はメインシャフト30側からピロブロック32を見た図、図5はスペーサとメインシャフトとの隙間の確認作業を示す説明図であり、何れもトラクションシーブは図示省略している。
各セットカラー21,22は外形及び内形が正確に製作されているので、外形を調整すればそれに応じて内形も調整されるようになっている。そこで、図4に示すように第2セットカラー22の切り欠き26a〜26dの底と第1セットカラー21の外周面との差を調整する。
【0019】
第1セットカラー21の外周面と切り欠き26bの底との差をA1、第1セットカラー21の外周面と切り欠き26cの底との差をA2、第1セットカラー21の外周面と切り欠き26aの底との差をB1、第1セットカラー21の外周面と切り欠き26dの底との差をB2とすると、|A1−A2|及び|B1−B2|がそれそれ所定値以下になるように、第1セットカラー21に対する第2セットカラー22の位置を調整する。所定値としては例えば0.5mm以下とする。これらのA1,A2,B1,B2の測定においては、かご2を手動で動かしてメインシャフト30を回転させることにより、狭い現場においても測定しやすくなる。
|A1−A2|及び|B1−B2|がそれぞれ所定値以下に調整できると、ボルト23a〜23dにより、第1セットカラー21と第2セットカラー22とを固定する。
【0020】
これにより、スペーサ10は第2セットカラー22で支持され、第2セットカラー22は第1セットカラー21で支持され、第1セットカラー21は内輪33で支持されるため、スペーサ10はメインシャフト30とは分離されることになる。また、|A1−A2|及び|B1−B2|が所定値以下になるように調整することにより、スペーサ10とメインシャフト30との隙間は、メインシャフト30の全周にわたってほぼ同一になる。
【0021】
そして、図5に示すように最終確認として、スペーサ10とメインシャフト30との隙間に隙間ゲージやピアノ線などを挿入して、隙間が適正になっているかどうかをチェックする。この場合も前記と同様に、かご2を手動で動かしてメインシャフト30を回転させることにより、狭い現場においても作業が行いやすくなる。
【0022】
これによって、スペーサ10とメインシャフト30との間には適正な隙間が保たれるため、メインシャフト30に多少の撓みが発生しても、スペーサ10とメインシャフト30が接触することがなくなる。
【0023】
以上のように、本実施の形態によれば、スペーサとメインシャフトとのフレッティング磨耗を防止し、メインシャフトの折損を防止することができる。。
【0024】
前記の実施の形態では説明を省略したが、本作業は図6のように機械室のないエレベータの場合は、作業員がかご2に乗って作業を行う。また機械室があるエレベータの場合には機械室で作業を行う。
また本発明は、エレベータのメインシャフトのスペーサに限らず、シーブと軸受との間にスペーサがある箇所なら適用可能である。またシーブの代わりにスプロケットなど他の回転体が設けられるエスカレータや他の装置においても、同様のスペーサを使用している場合には適用可能である。
【0025】
前記の実施の形態では、軸受としてピロブロックを使用した場合を示したが、他の軸受であっても同様に適用することができる。また止めねじ用穴35と円周方向位置決め用穴36による円周方向の位置調整は省略することも可能である。
また、各セットカラーはそれぞれ2分割としたが、これに限ることはない。
【符号の説明】
【0026】
2 かご
3a,3b トラクションシーブ(回転体)
10 スペーサ
20 支持具
21 第1セットカラー
22 第2セットカラー
30 メインシャフト(シャフト)
32 ピロブロック(軸受)
33 内輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8