(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724722
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】グリーンタイヤの保持装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20150507BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20150507BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20150507BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20150507BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29K21:00
B29L30:00
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-163892(P2011-163892)
(22)【出願日】2011年7月27日
(65)【公開番号】特開2013-27996(P2013-27996A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】前川 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝
(72)【発明者】
【氏名】陶山 圭介
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−057733(JP,A)
【文献】
特開昭59−081156(JP,A)
【文献】
特開平02−233235(JP,A)
【文献】
米国特許第04608219(US,A)
【文献】
特開昭52−024281(JP,A)
【文献】
特開平11−123773(JP,A)
【文献】
特開2007−268931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンタイヤが横倒し状態で載置されるタイヤ載置台と、このタイヤ載置台の上方に設置されるベースプレートと、このベースプレートの外周側に突出して、平面視で放射状に取り付けられる少なくとも3枚の折畳み板と、これら折畳み板の上に載置されるゴム製の膨張収縮体とを備え、前記折畳み板の一端部を前記ベースプレートに回転可能に連結して、この折畳み板を前記ベースプレートの外周側に突出した横倒し状態から立ち上がる状態まで折畳み可能にして、横倒し状態の折畳み板の上に膨張して載置されている前記膨張収縮体が、この折畳み板が立ち上がることにより押圧されて、前記ベースプレートの中心側に向かって収容される構成にしたことを特徴とするグリーンタイヤの保持装置。
【請求項2】
前記折畳み板を常時立ち上げる方向に付勢する付勢部材を設けた請求項1に記載のグリーンタイヤの保持装置。
【請求項3】
前記付勢部材が、折畳み板の表面で折畳み板の他端部とベースプレートとを結ぶゴム製部材である請求項2に記載のグリーンタイヤの保持装置。
【請求項4】
前記タイヤ載置台と前記ベースプレートとの上下間隔を調整可能な可変構造にした請求項1〜3のいずれかに記載のグリーンタイヤの保持装置。
【請求項5】
前記膨張収縮体が膨張した際の最大外径が1m〜2mである請求項1〜4のいずれかに記載のグリーンタイヤの保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンタイヤの保持装置に関し、さらに詳しくは、横倒し状態で一時的にグリーンタイヤをストックする際に、グリーンタイヤの変形を防止する膨張収縮体を、グリーンタイヤの内部に円滑にセットすることができるグリーンタイヤの保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造工程では、グリーンタイヤを成形した後、加硫装置で加硫するまでの間に一時的にグリーンタイヤを横倒し状態でストックすることがある。例えば、大型のオフロード車両に装着される重荷重用タイヤは、グリーンタイヤのサイズおよび重量が大きくなる。そのため、グリーンタイヤを横倒し状態でストックしている間に、上側ビード部周辺が下方に落ち込むように変形する。この変形が過大であると、グリーンタイヤの加硫装置(加硫用モールド)へのセッティングが円滑に行ない難くなり、また、タイヤ品質にも悪影響が生じることがある。特に、大型の重荷重用タイヤは1本当たりに要する加硫時間が長くなるため、一時的にグリーンタイヤをストックする時間が長くなる。例えば、半日〜1日程度の期間、ストックされることもあるため、ストック時にグリーンタイヤの変形を防止することは重要である。
【0003】
ストックしているグリーンタイヤの変形を防止するために、グリーンタイヤの内部に環状のチューブを設置する生タイヤ受台が提案されている(特許文献1の第3図参照)。この発明では、グリーンタイヤの下側ビード部周辺を、タイヤ内側から環状のチューブによって保持する。しかしながら、グリーンタイヤを生タイヤ受台に載置する際に、環状のチューブが半径方向に張り出しているため、環状のチューブをグリーンタイヤに円滑に挿入させて内部に配置するのが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭53−125776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、横倒し状態で一時的にグリーンタイヤをストックする際に、グリーンタイヤの変形を防止する膨張収縮体を容易にグリーンタイヤの内部にセットすることができるグリーンタイヤの保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のグリーンタイヤの保持装置は、グリーンタイヤが横倒し状態で載置されるタイヤ載置台と、このタイヤ載置台の上方に設置されるベースプレートと、このベースプレートの外周側に突出して、平面視で放射状に取り付けられる少なくとも3枚の折畳み板と、これら折畳み板の上に載置されるゴム製の膨張収縮体とを備え、前記折畳み板の一端部を前記ベースプレートに回転可能に連結して、この折畳み板を前記ベースプレートの外周側に突出した横倒し状態から立ち上がる状態まで折畳み可能にして、横倒し状態の折畳み板の上に膨張して載置されている前記膨張収縮体が、この折畳み板が立ち上がることにより押圧されて、前記ベースプレートの中心側に向かって収容される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、折畳み板の一端部をベースプレートに回転可能に連結して、この折畳み板をベースプレートの外周側に突出した横倒し状態から立ち上がる状態まで折畳み可能にして、この折畳み板の上に膨張して載置されている膨張収縮体が、この折畳み板が立ち上がることにより押圧される。これにより、膨張収縮体が収縮してベースプレートの中心側に向かってコンパクトに収容される。それ故、横倒し状態で一時的にグリーンタイヤをタイヤ載置台に載置してストックする際に、グリーンタイヤの変形を防止する膨張収縮体を、グリーンタイヤに干渉させることなく、グリーンタイヤの内部に円滑にセットすることができる。
【0008】
ここで、前記折畳み板を常時立ち上げる方向に付勢する付勢部材を設けることもできる。これにより、膨張収縮体の内部の気体を外部に排出して収縮させることにより、付勢部材の付勢力によって折畳み板が立ち上がる。これに伴って、収縮した膨張収縮体が、ベースプレートの中心側に向かってコンパクトに収容される。前記付勢部材としては、例えば、折畳み板の表面で折畳み板の他端部とベースプレートとを結ぶゴム製部材を用いることができる。
【0009】
前記タイヤ載置台と前記ベースプレートとの上下間隔を調整可能な可変構造にすることもできる。これより、様々なサイズのグリーンタイヤを保持することが可能になり、汎用性が高まる。
【0010】
前記膨張収縮体が膨張した際の最大外径は、例えば1m〜2mである。この程度の大きさ膨張収縮体を用いるグリーンタイヤは、非常に大型で重量も大きいので、横倒し状態の際の上側ビード部周辺が下方に落ち込み易い。そのため、上側ビード部周辺の落ち込みを防止するには本発明を適用するのが非常に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】膨張収縮体を膨張させて折畳み板を横倒し状態にしている本発明のグリーンタイヤの保持装置を例示する縦断面図である。
【
図2】膨張収縮体を膨張させて折畳み板を横倒し状態にしている保持装置の平面図である。
【
図3】膨張収縮体を収縮させて折畳み板を立ち上げている状態の本発明のグリーンタイヤの保持装置を例示する縦断面図である。
【
図4】膨張収縮体を収縮させて折畳み板を立ち上げている状態の保持装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のグリーンタイヤの保持装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1、
図2に例示するように本発明のグリーンタイヤの保持装置1は、グリーンタイヤが横倒し状態で載置されるタイヤ載置台2を有している。タイヤ載置台2の中心部には、支柱3a、3bが立設されている。下方の支柱3aに上方の支柱3bが挿入される構造であり、下方の支柱3aから上方の支柱3bを任意の長さだけ突出させて、その位置で固定できる構造になっている。
【0013】
支柱3bには円盤状のベースプレート4が固定されている。このようにタイヤ載置台2の上方に設置されるベースプレート4には、その外周側に突出して、平面視で放射状に取り付けられる少なくとも3枚の折畳み板5が、その一端部をヒンジ6を介して回転可能に連結されている。折畳み板5の数は3枚以上であればよく、例えば、4枚〜10枚程度が連結される。折畳み板5の形状や大きさは適宜決定されるが、ヒンジ6を介して回転した際に、隣り合う折畳み板5に干渉しない範囲でなるべく大きくするとよい。
【0014】
さらに、これら折畳み板5の上に載置されるゴム製の膨張収縮体7を備えている。膨張収縮体7は例えば、環状のゴムチューブ等であり、外形状が円形のものである。膨張収縮体7は、ゴム紐等の固定具により折畳み板5の表面に固定されている。膨張収縮体7には、給排気管10を通じてエアコンプレッサ等の給気手段9が接続されている。
【0015】
それぞれの折畳み板5は、ベースプレート4の外周側に突出した横倒し状態(略水平状態)から立ち上がる状態まで折畳み可能になっている。立ち上がる状態とは略垂直状態または、略垂直状態よりもベースプレート4の中心側に先端を入り込ませて傾けた状態である。
【0016】
横倒し状態の折畳み板5の上には、膨張収縮体7が載置されている。そして、折畳み板5が立ち上がることにより、膨張収縮体7は押圧されてベースプレート4の中心側に向かって収容される構成になっている。
【0017】
この実施形態では、横倒し状態の折畳み板5を、常時立ち上げる方向に付勢する付勢部材8が設けられている。具体的には、付勢部材8としてゴム紐やゴムチューブ等のゴム製部材が用いられる。この付勢部材(ゴム製部材)8の一端部は、折畳み板5の他端部(外周側の先端部)に固定され、付勢部材(ゴム製部材)8の他端部は、ベースプレート4に形成された貫通孔4aに固定されることにより、付勢部材8は折畳み板5の表面上に延設されている。付勢部材8としては、その他、各種バネ等を用いることができる。
【0018】
次いで、この保持装置1を用いてグリーンタイヤGを保持する方法を説明する。まず、グリーンタイヤGをタイヤ載置台2に横倒し状態で載置する。この際に、
図3、
図4に例示するように、膨張収縮体7の内部の気体を排出して収縮させるとともに、折畳み板5を立ち上げた状態にしておく。このようにして膨張収縮体7をベースプレート4の中心側に向かって収容しておく。膨張収縮体7は、立ち上がった折畳み板5により押圧されて、折畳み板5によって囲まれてコンパクトに収容される。
【0019】
この実施形態では、付勢部材8が設けられているので、膨張収縮体7の内部の気体を外部に排出して収縮させることにより、付勢部材8の付勢力によって折畳み板5が自動的に立ち上がる。これに伴って、収縮した膨張収縮体7が、ベースプレート4の中心側に向かってコンパクトに収容される。
【0020】
この状態で、グリーンタイヤGを横倒し状態でクレーン等により下方移動させてタイヤ載置台2に載置する。膨張収縮体7はコンパクトに収容されているので、下方移動させてタイヤ載置台2に載置するグリーンタイヤGに干渉することを防止できる。それ故、グリーンタイヤGの内部に膨張収縮体7を円滑にセットすることができる。膨張収縮体7がグリーンタイヤGの上側ビード部周辺に位置するように、ベースプレート4の高さ位置をセットする、或いは、予めセットしておく。
【0021】
次いで、膨張収縮体7の内部に給排気管10を通じて給気手段9から気体を供給することにより、収縮している膨張収縮体7を膨張させる。膨張収縮体7は、付勢部材8の付勢力に抗して膨張する。これに伴って、立ち上がっていた折畳み板5が横倒し状態になる。そして、さらに膨張収縮体7を膨張させることより、
図1、
図2に例示したように膨張した膨張収縮体7が、グリーンタイヤGの上側ビード部周辺の内側に当接して保持することになる。これにより、経時的に上側ビード部周辺が下方に落ち込んで変形する不具合を防止することが可能になる。
【0022】
保持装置1にストックしていたグリーンタイヤGを加硫するに際しては、先の手順と逆の手順を行なって、グリーンタイヤGを保持装置1から取り外す。
【0023】
まず、給排気管10の排気口等を開口して膨張収縮体7の内部の気体を外部に排出することにより、膨張収縮体7を収縮させる。膨張収縮体7の収縮に伴って、付勢部材8の付勢力によってそれぞれの折畳み板5が立ち上がる。即ち、
図3、
図4の状態になる。
【0024】
この状態で、グリーンタイヤGをクレーン等で上方移動させて加硫装置に移動させる。この際にも、膨張収縮体7はベースプレート4の中心側に向かってコンパクトに収容されているので、タイヤ載置台2から上方移動させるグリーンタイヤGに干渉することを防止できる。
【0025】
この実施形態では、支柱3bの出し入れ量を調整することにより、タイヤ載置台2とベースプレート4との上下間隔を調整可能な可変構造になっている。それ故、タイヤ幅などが異なる様々なサイズのグリーンタイヤGを保持することが可能になり、保持装置1の汎用性が高まる。尚、ベースプレート4に対して、タイヤ載置台2を上下移動させる構造にして、タイヤ載置台2とベースプレート4との上下間隔を調整可能にしてもよい。
【0026】
膨張収縮体7が膨張した際の最大外径は、例えば1m〜2mである。この程度の外径の大きさ膨張収縮体7を用いるグリーンタイヤGは、非常に大型で重量も大きいので、横倒し状態の際の上側ビード部周辺が下方に落ち込み易い。そのため、上側ビード部周辺の落ち込みによるグリーンタイヤGの変形を防止するには、本発明を適用するのが非常に効果的である。タイヤサイズで言うと、リム径の呼びが24インチ〜35インチの重荷重用タイヤに本発明を適用すると効果的である。
【0027】
この実施形態では、グリーンタイヤGの上側ビード部周辺を膨張収縮体7により保持するようになっているが、グリーンタイヤGの内周面を全体的に保持する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 保持装置
2 タイヤ載置台
3a、3b 支柱
4 ベースプレート
4a 貫通孔
5 折畳み板
6 ヒンジ
7 膨張収縮体
8 付勢部材
9 給気手段
10 給排気管
G グリーンタイヤ