(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
パチンコ機などの遊技機には、各種の電子部品を実装した回路基板が数多く設けられている。この種の回路基板は、通常、遊技機の固定部に対して両持ち状態で固定されるが、やむを得ず片持ち固定する場合がある。
例えば、特許文献1に示される遊技機では、回転するドラム(可動物)の内部に、ドラムを内側から照射するLED基板(回路基板)を配置するにあたり、このLED基板を片持ち固定している。
以下、やむを得ず回路基板を片持ち固定する具体例について、
図9を参照して説明する。
【0003】
図9は、従来例に係る遊技機用回路基板の支持構造を示す概略正面図である。
この図に示される遊技機用回路基板の支持構造には、可動物100と、回路基板110と、固定部120とが含まれている。
可動物100は、回転する中空状の円筒部材であり、軸方向の両端部にはそれぞれ軸部101、102が突設され、これらの軸部101、102を固定部120側の軸受部121、122で回転自在に支持している。
また、可動物100の一端部には、後述する基板保持部材111を挿通可能な挿通口103が形成され、他端部には、可動物100を回転駆動させるギヤなどの駆動部104が設けられている。
【0004】
回路基板110は、可動物100の内部に配置されるLED基板であり、一端部に設けられる基板保持部材111を挿通口103を介して可動物100の外部に延出させ、ビスなどで固定部120に固定している。回路基板110の他端部も、一端部と同様に固定部120に固定すれば、回路基板110を両持ち固定することが可能であるが、
図9に示す可動物100の他端部には、駆動部104が設けられており、挿通口103を形成することが困難であるから、回路基板110をやむを得ず片持ち状態で固定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、片持ち固定された回路基板は、遊技機の内外で発生した振動が伝わると、固定部に固定されていない他端部側が揺れてしまうという問題がある。
特に、
図9に示すように、長尺な回路基板110を片持ち固定すると、固定部120に固定されていない他端部が大きく揺れて、基板本体や基板上の実装部品に悪い影響を与える可能性があるだけでなく、揺れによって回路基板110が可動物100に接触し、ノイズや異音を発生させるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、片持ち固定される回路基板でありながら、固定部に固定することができない回路基板の他端部を非接触または接触状態で支持可能とし、回路基板の揺れを抑制することができる遊技機用回路基板の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成によって把握することができる。
すなわち、本発明の遊技機用回路基板の支持構造は、片持ち固定される遊技機用回路基板の支持構造であって、中空状の可動物と、前記可動物の内部に配置される回路基板を含む回路装置と、前記可動物に形成される開口であって、前記回路装置の一端部を挿通可能な挿通口と、前記挿通口を介して前記可動物から突出させた前記回路装置の一端部を固定する固定部と、前記可動物の外面側に設けられ、前記可動物を回転駆動させる駆動部と、前記可動物における前記駆動部の内面側であって、前記回路装置の他端部と近接する近接部と、
前記回路装置の前記他端部に装着された基板装着部材と、前記近接部
の前記回路装置側であって前記可動物が回転駆動される際の回転軸に対応する位置に形成された第1の凹部に嵌めこまれた第1の磁性体と
、前記基板装着部材の前記近接部側に形成された第2の凹部に嵌め込まれた第2の磁性体と
から構成され、前記回路装置の他端部を
前記第1及び第2の磁性体の間の磁力で支持する磁力支持手段とを備えることを特徴とする。
このようにすると、片持ち固定される回路基板でありながら、固定部に固定することができない回路装置の他端部を磁力で支持可能とし、回路基板の揺れを抑制することができる。しかも、磁力による支持は、接触状態に限らず、非接触状態での支持も可能であるため、回路装置と可動物の接触によるノイズや異音の発生も防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の遊技機用回路基板の支持構造によれば、片持ち固定される回路基板でありながら、固定部に固定することができない回路装置の他端部を非接触または接触状態で支持可能とし、回路基板の揺れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る遊技機の遊技盤を示す概略正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板の支持構造を示す図であり、可動物の一部を切り欠いた全体正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板及び一部を切り欠いた可動物の正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板及び一部を切り欠いた可動物の斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る可動物の一部を切り欠いた斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る可動物の一部を切り欠いた斜視図であり、その内部に基板装着部材を配置した図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板及び一部を切り欠いた可動物の正面図であり、可動物の近接部及び駆動部を省略した図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板及び一部を切り欠いた可動物の斜視図であり、可動物の近接部及び駆動部を省略した図である。
【
図9】従来例に係る遊技機用回路基板の支持構造を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0012】
〈遊技機の概略構成〉
図1は、本発明の遊技機の実施態様を示す概略図であって、パチンコ機の機枠に組み込まれる遊技盤10を示した正面図である。
【0013】
図1において、遊技盤10の周辺の若干の領域を除く中央部は遊技領域11となっている。遊技領域11はほぼ円形のガイドレール12に囲まれるように構成され、このガイドレール12は、図中下側から左肩側にかけて外側レール12Aと内側レール12Bを備え、パチンコ球を外側レール12Aと内側レール12Bの間の通路を通して遊技領域11の上方へ導くようになっている。パチンコ球は、図示しない機枠に取り付けられた操作レバーによって駆動される打槌機構によって、図中下側から外側レール12Aと内側レール12Bの間の通路に発射されるようになっている。なお、遊技領域11の上方から落下するパチンコ球は、後述する入賞口、始動口等に入賞したものを除いて、遊技領域11の最下端位置に設けられたアウト口13を通して回収されるようになっている。
【0014】
遊技盤10の遊技領域11のほぼ中央であって若干上側に偏位した位置に矩形状の開口14が形成されている。遊技盤10の裏面にはたとえば液晶表示器からなる画像表示装置15が配置され、この画像表示装置15の表示面15Aは前記開口14を通して目視できるようになっている。画像表示装置15は、たとえば、パチンコ遊技の最中においてインフォメーションを表示し、あるいは入賞の際にその興奮を盛り上げさせるような工夫がされた画像を表示するようになっている。
【0015】
遊技領域11の画像表示装置15の下部には、たとえば、表示面15A(開口14)の下辺に沿い遊技者側に若干突出するステージ16が設けられている。このステージ16の上面はたとえば波状の湾曲面となっており、その水平方向における中央部の下部には排出口17が設けられている。パチンコ球は、表示面15A(開口14)のたとえば左肩近傍からステージ16に連結されるワープルート(図示せず)を通して該ステージ16の上面に至った場合、パチンコ球はステージ16の円弧面上を揺動しながら排出口17に落下できるようになっている。
【0016】
また、遊技領域11の前記排出口17の下部には、始動口18が設けられており、この始動口18の下方には大入賞口19が設けられている。始動口18にパチンコ球が入賞した際に、画像表示装置15の画面上に表示されている特別図柄の変動が所定時間行われるようになっており、画像表示装置15に複数の特別図柄が特定の停止表示態様で停止表示すると、大当たり遊技状態として、大入賞口扉19Aが予め定められた作動条件に従って開閉するようになっている。
【0017】
なお、遊技領域11には、上述した始動口18等の部材の他に、複数の障害釘、風車等が散在されて設けられ、これら障害釘、風車等に当たったパチンコ球は、その当たり方に応じた方向に落下できるようになっている。
【0018】
遊技盤10または遊技盤10の近傍には、回転動作する可動物20が設けられている。たとえば本実施形態の可動物20は、
図1に示すように、遊技盤10の下側に回転軸が左右を向くように配置されている。可動物20は、その構成を後に詳述するが、たとえば画像表示装置15の演出表示内容に合わせて動作させることによって、遊技の興趣を高める手段として用いることができるようになる。また、可動物20は、たとえば入賞によって遊技者に有利となる特別遊技状態(大当たり遊技状態)等が付与された場合に、後述のような動作態様によって、遊技者にその旨を告知し、遊技者の期待を高めることができるようになる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板の支持構造を示す図であり、可動物の一部を切り欠いた全体正面図である。
図2に示すように、本実施形態の可動物20は、可動物20を回転させるモータ30や、可動物20の内部に配置される回路基板40とともに固定部50に組み付けられてユニットを構成し、このユニット状態で遊技機に取り付けられるようになっている。以下、本発明の要部である可動物20、回路基板40及び後述する磁力支持手段60について、
図2〜
図8を参照しつつ順次説明する。
【0020】
〈可動物〉
図3は、本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板及び一部を切り欠いた可動物の正面図である。
図4は、本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板及び一部を切り欠いた可動物の斜視図である。
図5は、本発明の実施形態に係る可動物の一部を切り欠いた斜視図であり、回路基板40を外した状態のものである。
図6は、本発明の実施形態に係る可動物の一部を切り欠いた斜視図であり、その内部に基板装着部材を配置した図である。
図2〜
図6に示すように、本実施形態の可動物20は、回転動作する中空状の円筒部材であり、円筒部21と、右側壁部22と、左側壁部23と、駆動部24と、近接部25とを備えて構成されている。
【0021】
円筒部21は、たとえば透光性を有する樹脂で形成されており、その周面には、凹凸やプリントによって絵柄が形成されている。そして、可動物20を回転動作させると、円筒部21の周面に形成される絵柄が上下方向に移動するという視覚的な演出を行うことができるようになり、また、このような視覚的な演出によって遊技者に可動物20の回転動作(たとえば大当り告知)を認識させることができるようになる。
【0022】
右側壁部22は、円筒部21の右側開口を塞ぐように円筒部21の右端部に一体的に取り付けられる。右側壁部22の外側面部には、円筒状の軸部22aが突設されており、この軸部22aが
図2に示す固定部50の軸受部51で回転自在に支持されるようになっている。
また、
図4〜
図6に示すように、右側壁部22の中心部(軸部22aの内側領域)には、回路基板40の一端部を挿通可能な挿通口22bが形成されている。
【0023】
左側壁部23は、円筒部21の左側開口を塞ぐように円筒部21の左端部に一体的に取り付けられる。左側壁部23の外側面部には、円柱状の軸部23aが突設されており、この軸部23aが固定部50の軸受部52で回転自在に支持されるようになっている。
【0024】
図2〜
図4に示すように、駆動部24は、左側壁部23の外側面部に設けられるギヤなどの伝動部材であり、本実施形態では、ギヤ31、伝動軸32、ギヤ33、モータ出力ギヤ34などからなる伝動経路を介してモータ30に接続され、該モータ30の駆動に応じて可動物20を回転動作させるようになっている。
【0025】
近接部25は、左側壁部23の内側面部、またはその近傍に設けられる部材であり、可動物20の内部に配置される回路基板40の他端部と近接するようになっている。なお、近接部25の構成は後述する磁力支持手段60の説明において詳述する。
【0026】
〈回路基板〉
本実施形態の回路基板40は、可動物200の内部に配置されるLED基板であり、プリント基板からなる基板本体41と、基板本体41の左端部(他端部)に装着される基板装着部材42とを備えて構成されている。なお、基板装着部材42の構成は後述する磁力支持手段60の説明において詳述する。
【0027】
基板本体41の右端部(一端部)は、前述した挿通口22bを介して可動物100の外部に延出し、ビスなどで
図2に示した固定部50に固定されるようになっている。基板本体41の左端部も、右端部と同様に固定部50に固定すれば、基板本体41を両持ち固定することが可能であるが、可動物20の左端部側の外側面部には、駆動部24が設けられ、挿通口を形成することが困難であるため、基板本体41をやむを得ず片持ち状態で固定している。
【0028】
図7は、本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板及び一部を切り欠いた可動物の正面図であり、可動物の近接部及び駆動部を省略した図である。
図8は、本発明の実施形態に係る遊技機用回路基板及び一部を切り欠いた可動物の斜視図であり、可動物の近接部及び駆動部を省略した図である。
回路基板40の右端部は、
図9に示すように、基板保持部材を介して固定部50に固定することも可能である。つまり、本発明の回路装置は、回路基板40と、基板保持部材とを含むものであってもよいし、回路基板40のみによって構成されていてもよい。本実施形態では、
図7及び
図8に示すように、回路装置は、回路基板40により構成され、基板本体41の右端部41aを可動物20の外部に延出して固定部50に直接固定するとともに、右端部41aに設けたコネクタ43にハーネス(図示せず)を接続するようにしている。このようにすると、基板保持部材が不要になるので、部品点数を削減することができる。しかも、可動物20の内部にハーネスを引き込む必要がなくなるので、挿通口22bを可及的に小さくし、可動物20の小径化が可能になる。
【0029】
上記のように片持ち固定された回路基板40は、遊技機の内外で発生した振動が伝わると、固定部50に固定されていない左端部側が揺れてしまう可能性がある。このような問題を解決するために、本発明の実施形態に係る遊技機では、
図3に示すように、可動物20の近接部25と回路基板40の左端部との間に、磁力支持手段60を構成している。以下、磁力支持手段60の具体的な構成について説明する。
【0030】
〈磁力支持手段〉
図3に示したように、本発明の実施形態に係る磁力支持手段60は、回路基板40の左端部を磁力によって非接触または接触状態で支持することを可能にするものであり、たとえば回路基板40の左端部に設けられる磁石61と、近接部25に設けられる磁石62との組み合わせ、または回路基板40の左端部に設けられる磁石61と、近接部25に設けられる強磁性体(図示せず)との組み合わせ、または回路基板40の左端部に設けられる強磁性体(図示せず)と、近接部25に設けられる磁石62との組み合わせによって構成することができる。
【0031】
本実施形態の磁力支持手段60は、回路基板40の左端部に設けられる磁石61と、近接部25に設けられる磁石62とを所定の間隔Kをあけて対向させ、互いの引き合い力で回路基板40の左端部を非接触状態で支持するように構成されている。このようにすると、片持ち固定される回路基板40でありながら、固定部50に固定することができない回路基板40の左端部を磁力で支持可能とし、回路基板40の揺れを抑制することができる。しかも、磁力による支持は、接触状態に限らず、非接触状態での支持もできるので、回路基板40と可動物20の接触によるノイズや異音の発生も防止することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、磁石61、62の異なる極を対向させ、その引き合い力で回路基板40の左端部を支持しているが、磁石61、62の同じ極を対向させ、その反発力で回路基板40の左端部を支持するようにしてもよい。
【0033】
回路基板40の左端部に磁石61を設けるにあたり、一般的なプリント基板の厚さ寸法では、磁石61を基板本体41の端面に設けることは困難である。そこで、本実施形態では、回路基板40の左端部に基板装着部材42を装着し、この基板装着部材42に磁石61を設けている。
【0034】
具体的に説明すると、本実施形態の基板装着部材42は、近接部25と対向する円盤状の傘部42aと、傘部42aの右側面に一体的に突設される基板装着部42bと、基板装着部42bに形成されるボス部42cおよび位置決め凸部42dとを備えて構成されている。このような基板装着部材42を基板本体41に装着する場合は、基板本体41の左端部に形成した位置決め孔41bを基板装着部材42の位置決め凸部42dに嵌合させて位置決めを行った後、基板本体41の左端部に形成した取付孔41cを介してボス部42cにビスを螺込む。そして、磁石61は、傘部42aの左側面の中心部に形成した凹部42e内に接着状態で嵌め込めばよい。ちなみに、本実施形態の近接部25は、円柱形状であり、右側面の中心部に形成した凹部25a内に磁石62が接着状態で嵌め込まれる。
【0035】
なお、本実施形態では、近接部25と回路基板40の左端部を非接触状態としているが、接触状態とすることも可能である。ただし、両者の接触によりノイズが発生するおそれがある場合は、回路基板40におけるノイズの影響を低減させるための手段を設けることが好ましい。たとえば基板装着部材42の傘部42aをノイズが通過しにくい材料で形成すれば、可及的にノイズを遮蔽し、回路基板40への影響を低減することができる。
【0036】
以上のように構成された本実施形態によれば、片持ち固定される遊技機用回路基板の支持構造であって、中空状の可動物20と、可動物20の内部に配置される回路基板40を含む回路装置と、可動物20に形成される開口であって、回路装置の一端部を挿通可能な挿通口22bと、挿通口22bを介して可動物20から突出させた回路装置の一端部を固定する固定部50と、可動物20の外面側に設けられ、可動物20を回転駆動させる駆動部24と、可動物20における駆動部24の内面側であって、回路装置の他端部と近接する近接部25と、近接部25と回路装置の他端部との間に構成され、回路装置の他端部を磁力で支持する磁力支持手段60とを備えるので、片持ち固定される回路基板40でありながら、固定部50に固定することができない回路装置の他端部を磁力で支持可能とし、回路基板40の揺れを抑制することができる。しかも、磁力による支持は、接触状態に限らず、非接触状態での支持も可能であるため、回路装置と可動物20の接触によるノイズや異音の発生も防止することができる。
【0037】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0038】
たとえば上述した実施態様では、遊技機の一例としてパチンコ機を挙げて説明したものである。しかし、パチンコ機に限定されることはなく、たとえばパチスロ機(スロットマシン)のような他の遊技機にも適用することができる。