(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態で使われる露光装置の概要を示す斜視図である。
【
図2A】第1の実施形態で使われるレチクルを示す平面図である。
【
図3A】第1の実施形態で使われる露光マスクを示す平面図である。
【
図4】
図1の露光装置において第1の実施形態による露光マスクを使って行う露光の概要を示す図である。
【
図5】ポリカーボネートの光透過率を示すグラフである。
【
図6】比較対照例による露光マスクを使って行う露光の概要を示す図である。
【
図7A】第1の実施形態によるペリクルの製造工程を示す図(その1)である。
【
図7B】第1の実施形態によるペリクルの製造工程を示す図(その2)である。
【
図7C】第1の実施形態によるペリクルの製造工程を示す図(その3)である。
【
図7D】第1の実施形態によるペリクルの製造工程を示す図(その4)である。
【
図7E】第1の実施形態によるペリクルの製造工程を示す図(その5)である。
【
図7F】第1の実施形態によるペリクルの製造工程を示す図(その6)である。
【
図7G】第1の実施形態によるペリクルの製造工程を示す図(その7)である。
【
図8】第1の実施形態の一変形例を示す断面図である。
【
図9】第2の実施形態で使われるレチクルを示す平面図である。
【
図10】第2の実施形態によるペリクルを示す分解斜視図である。
【
図11】第2の実施形態による露光マスクの一部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態で使われるスキャナとよばれる縮小投影露光装置10の例を示す。
【0011】
図1を参照するに縮小投影露光装置10は光源11と、被処理基板Wを保持して移動させるウェハ走査ステージ12を含み、前記光源11とウェハ走査ステージ12の間には、第1の実施形態による露光マスク14を担持するレチクル走査ステージ13が設けられている。
【0012】
前記光源11は、例えばエキシマレーザなど、遠紫外(DUV)波長の露光ビームを発生する光源であり、前記光源11から出射した露光ビームはミラー15で反射された後、コリメートレンズ系16により前記レチクル走査ステージ13上の露光マスク14に平行光ビームとして照射される。
【0013】
このようにして前記露光マスク14に照射された露光ビームは前記露光マスク14を通過する際に露光マスク14のレチクルが保持している所望の半導体回路パタ―ンに従って整型され、前記レチクル走査ステージ13とウェハ走査ステージ12の間に設けられた投影レンズ系17により、前記被処理基板Wの表面に集束される。
【0014】
図2Aは、前記露光マスク14の一部を構成するレチクル14Aを示す平面図、
図2Bは
図2A中、線A−A’に沿った断面図を示す。
【0015】
図2A,
図2Bを参照するに、前記レチクル14Aは露光ビームの波長の光に対して透過な例えば石英ガラスなどよりなるガラス基板21を有し、前記ガラス基板21のパタ―ン形成面21Aには、前記露光ビームに対して不透過な例えばCrなどの金属膜をパターニングすることにより遮光帯22が形成され、前記遮光帯22は前記パタ―ン形成面21Aにおいて露光領域23を画成している。さらに前記パタ―ン形成面21Aには、前記露光領域23において、露光したい半導体回路のパタ―ンに対応した露光パタ―ン23Aが、前記金属膜をパターニングすることにより形成されている。
【0016】
このようなレチクル14Aを通過することにより、前記露光ビームは、所望の露光パタ―ン23Aに従って整型され、整型された露光ビームを被処理基板W上に前記投影レンズ系17により集束することにより、被処理基板W上に所望の半導体パタ―ンが結像され、所望の露光が行われる。
【0017】
このようなレチクル14Aでは、前記ガラス基板21のパタ―ン形成面21A上、前記遮光帯22の外側、すなわち露光領域23の外側において、前記レチクル14Aを露光装置10のレチクル走査ステージ13上に位置決めするための位置合わせマーク23Bや、オペレータや露光装置の制御システムがレチクル14Aを識別するための様々な記号類23Cなどの非露光パタ―ンが、やはり前記金属膜のパターニングにより書き込まれている。このような記号類には、英数字の他にバーコードなども含まれる。
【0018】
前記レチクル14Aを前記露光装置10上に装着する場合には、このような記号類23Cを読み取り、さらに位置合わせマーク23Bを使って露光マスク14の位置合わせがなされる。このような位置合わせは一般に、露光に使われる紫外光ではなく、可視光を使って行われる。
【0019】
さて
図1に示した露光マスク14では、前記レチクル14Aに、前記パタ―ン形成領域21A上の露光パタ―ン23Aを保護するために、さらにペリクル25が設けられている。すなわち
図1の縮小投影露光装置10において露光マスク14は、前記レチクル14Aとペリクル25とより構成されている。
【0020】
図3Aおよび
図3Bは、このようなペリクル25を設けた状態の露光マスク14を示す、それぞれ平面図および
図3A中、線B−B’に沿った断面図である。
【0021】
図3Aおよび
図3Bを参照するに、ペリクル25はフレーム部材25Aと前記フレーム部材25Aに貼り付けられたペリクル膜25Bとを含み、前記フレーム部材25Aを、前記ガラス基板21のパタ―ン形成面21Aに、接着剤層25aを介して接着することにより、前記露光マスク14に装着される。ペリクル25は、前記パタ―ン形成面21Aに形成された半導体パタ―ン23Aを前記フレーム部材25Aおよびペリクル膜25Bにより覆い、埃などより保護する機能を果たす。前記ペリクル膜25Bは、前記露光波長に対して透過な、例えばフッ素ポリマ膜などより構成されているが、
図3Aの平面図では、図示されていない。
【0022】
前記ペリクル25は例えば2〜7ミリメートル程度の高さを有しており、前記ペリクル膜25B上に埃などが堆積しても、その大きさが数十ミクロン程度以下であれば、その影が被処理基板Wの表面に結像されるのを回避することができる。同様に前記ガラス基板21も2〜7ミリメートル程度の厚さを有しており、ガラス基板21の下面に埃が堆積しても、その影が被処理基板Wの表面に結像されることはない。
【0023】
さらに前記ペリクル25は、前記パタ―ン形成面21Aに近接して、可視光に対しては透過だが露光ビームの波長に対しては不透過な、例えばポリカーボネートや紫外光カットガラス、などよりなる厚さが例えば数十ミクロンから3mm程度のカバー膜25Cを、前記パタ―ン形成面21Aの近傍に有している。その際前記カバー膜25Cは、前記パタ―ン形成面21Aのうち、前記フレーム部材25Aから前記遮光帯22までの領域、すなわち前記パタ―ン形成面21Aのうち、前記非露光パタ―ン23Bや23Cを覆うように形成されている。
【0024】
図示の例では前記カバー膜25Cは前記パタ―ン形成面21Aに前記接着剤層25aにより接着されているが、前記カバー膜25Cは前記フレーム部材25Aにも、同様な接着剤層25b(
図8Gを参照)により接着されている。前記カバー膜25Cは、カバー膜25Cのエッジからの回折光が投影レンズ系17に入射しないように、できるだけ前記基板21のパタ―ン形成面21Aに近接して形成されるのが好ましく、前記パタ―ン形成面21Aに接して形成されてもよいが、カバー膜25Cが前記パタ―ン形成面21Aに接触すると発塵のおそれもあるので、例えば数百ミクロン以上離間して形成するのがより好ましい。
【0025】
図4は、前記縮小投影露光装置10に装着した露光マスク14により、被処理基板Wを露光する際の様子を示す断面図である。
【0026】
図4を参照するに、図示していないレチクル走査ステージ13上には
図3Bに示す構成の露光マスク14が上下反転された状態で装着されており、図示はしないが先に述べたように可視光を使って前記レチクル走査ステージ13上の所定の位置に位置合わせされている。
【0027】
図4の状態では前記光源11からの露光ビーム11Aが図示していない前記コリメートレンズ系16により、平行光の形で前記露光マスク14を構成するレチクル14Aに照射されており、露光ビーム11Aは前記レチクル14Aを通過する際に、前記ガラス基板21のパタ―ン形成面21Aに形成された半導体パタ―ン23Aにより整型される。
【0028】
整型された露光ビーム11Aは前記投影レンズ系17により前記被処理基板W上に集束され、前記被処理基板W上のレジスト膜が所望の露光パタ―ン23Aに従って露光される。
【0029】
ところで、このような縮小投影露光装置10においては、前記光源11からの露光ビーム11Aが、
図4に示すように露光マスク14を構成するレチクル14Aの露光領域13に平行光ビームの形で入射するが、その他に、前記光源11から露光マスク14までの光路の途中において回折や散乱などにより、
図4中に破線で示す迷光11Bが発生することがある。このような迷光11Bは必ずしも平行光ビームにはならず、拡散してレチクル14Aのうち、前記露光領域23の外の位置合わせマーク23Bやオペレータのための記号23Cなどが記入されている領域を照射する場合がある。
【0030】
そこでこのような迷光11Bは、前記位置合わせマーク23Bや記号23Cなどにより整型されてしまい、その後投影レンズ系17に入射すると被処理基板Wの表面に結像されてしまうが、本実施形態では前記ペリクル25に、例えば
図5に示すような可視光には透過だが露光ビーム11Aの波長に対しては不透過なカバー膜25Cを、前記パタ―ン形成面21Aのうち、前記フレーム25Bから前記遮光帯22までの領域を覆うように形成されているため、このような迷光11Bは前記カバー膜25Cにより遮光され、投影レンズ系17を介して被処理基板Wに投影されることはない。ただし
図5はポリカーボネートの光透過率と波長の関係を表したグラフであり、例えばポリカーボネートを前記カバー膜25Cの材料として使うことにより、約400nm以下の紫外光波長を遮光することができるのがわかる。
【0031】
すなわち本実施形態によれば、前記レチクル14Aの露光領域23の外に書き込まれている位置合わせマーク23Bや様々な記号23Cなどの非露光パタ―ンが、迷光11Bにより被処理基板Wに書き込まれてしまう問題が解消される。
【0032】
図6は、前記
図4と類似した露光マスク140による被処理基板Wの露光の比較例を示す断面図である。
図6の比較例では露光マスク140は、先の実施形態と同じレチクル1を使うが、前記ペリクル25の代わりに、カバー膜25Cを省略したペリクル250が使われる。
図6中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0033】
図6を参照するに、この比較例では前記カバー膜25Cが省略されているため前記迷光11Bは前記レチクル14Aを通過した後遮光されることがなく、そのまま投影レンズ系17に入り、前記被処理基板Wの表面に集光される。
【0034】
本実施形態は、前記カバー膜25Cを有するペリクル25を使うことにより、このような迷光11Bによる多重露光を抑制することが可能である。なお前記カバー膜25Cは前記ガラス基板21のパタ―ン形成面21Aのうち、前記位置合わせマーク25Bや記号類25Cなどの非露光パタ―ンを覆っていれば十分であり、前記フレーム部材25Aから遮光帯22までの領域を覆えば十分であるが、露光領域23を覆わない限り、さらに遮光帯22の一部あるいは全体を覆っても差し支えはない。前記カバー膜25Cは可視光に透過であるため、可視光を使って行われるレチクル14Aの位置合わせに支障が生じることはない。
【0035】
また、特に前記カバー膜25Cを前記ペリクル25のうち、前記レチクルとのガラス基板21近傍に形成することにより、迷光11Bによる多重露光をさらに効果的に回避することが可能となる。
【0036】
以下、前記ペリクル25の製造方法について説明する。
【0037】
図7Aを参照するに、まずアルミニウム材などを加工して、前記フレーム部材25Aを作製し、これを洗浄した後、陽極酸化処理を行い、表面を安定化させる。
【0038】
また
図7Bに示すようにガラス板31上に、前記ペリクル膜25Bとなる樹脂材料32を液体状で滴下し、
図7Cに示すように前記ガラス板31を高速回転させ、前記ガラス板31上に前記ペリクル膜25Bを形成する。
【0039】
さらに前記ガラス板31を加熱して、
図7Dに示すように前記ペリクル膜25Bを剥離させる。
【0040】
また一方で、
図7Eに示すようにポリカーボネートや紫外線カットガラスなどの板を切削加工や射出成型などの手段により加工し、前記カバー膜25Cに相当する部材を形成し、これを、接着剤層25bを介して前記フレーム部材25Aの一の側に接着する。前記接着剤層25bについては、後で説明する
図7Gを参照。前記ポリカーボネートや紫外線カットガラスなどの板は、露光マスク14が
図1の投影縮小露光装置10に装着された場合、前記カバー膜25Cを介して位置合わせマーク23Bや記号類23Cが認識できるように、例えば前記フレーム部材25Aの高さの半分以下の厚さに形成するのが好ましく、例えば先に説明したように数十ミクロンから3mm程度の厚さを有するのが好ましい。
【0041】
さらに
図7Fに示すように、一の側にこのようにカバー膜25Cを形成したフレーム部材25Aの他の側に接着剤を塗布し、前記ペリクル膜25Bを接着する。これにより、ペリクル25が完成する。
【0042】
完成したペリクル25は、
図7Gに示すように前記カバー膜25Cの一部に接着剤層25aが形成され、前記レチクル14Aを構成するガラス基板21のパタ―ン形成面21Aに、前記接着剤層25aを介して接着される。かかる構成によれば、前記カバー膜25Cを前記レチクル14Aのガラス基板21にできるだけ近づけて形成できるため、前記
図4からわかるように迷光11Bを、効率的に遮光することが可能となる。
【0043】
その際、
図7Gに示されているように、前記カバー膜25Cを前記ガラス基板21のパタ―ン形成面21Aからわずかに離間させておくことにより、前記カバー膜25Cが前記ガラス基板21に直接に接触した場合に生じるおそれのある発塵の問題を回避することができるので有利である。
【0044】
また本実施形態では、
図7Gの工程において、カバー膜25Cがペリクル25に一体的に設けられているので、ペリクル25とカバー膜25Cを別々に扱う必要がなく、取扱が容易になる。
【0045】
図8は本実施形態の一変形例であり、前記保護カバー25Cを、フレーム部材25Aの一の側に形成した凹部25cに保持した構成を示している。この場合には、前記保護カバー25Cの端が前記凹部25cにおいて、接着剤層25bにより保持され、前記フレーム部材25Aは、前記保護カバー25Cを保持した側が、接着剤層25aを介してレチクル14Aに接着される。
【0046】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態で使われるレチクル14Bの構成を示す平面図である。
図9中、先に
図2Aで説明した部分には同一の参照符号を付し説明を省略する。
【0047】
図9を参照するに、本実施形態ではレチクル14Bのうち、ガラス基板21の外周に沿って、さらに別の記号類23Dが非露光パタ―ンとして書き込まれており、さらに
図10に示すペリクル45を構成するフレーム部材25Aが、
図9中に破線で示すように、非露光パタ―ン23Cと非露光パタ―ン23Dの間において接着されている。
【0048】
図10は、このようなペリクル45よりなる第2の実施形態による構成を示す分解斜視図である。
【0049】
図10を参照するに、ペリクル45は先の実施形態と同様なフレーム部材25A、ペリクル膜25Bおよびカバー膜25Cを有しているが、本実施形態では前記カバー膜25Cがフレーム部材25Aの外側にまで延在し、外側カバー膜25Dを形成している。前記外側カバー膜25Dは前記レチクル14Bを構成するガラス基板21の外周で、スキャナやステッパの吸着保持箇所近辺まで延在し、ペリクル45外周に沿って形成された非露光パタ―ン23Dを覆う。
【0050】
図11は、このようにして形成された露光マスク44の一部を示す拡大断面図である。
【0051】
図11を参照するに、前記露光マスク44では前記非露光パタ―ン23Cを覆うカバー膜25Cが前記フレーム部材25Aの外側まで延在し、非露光パタ―ン23Dを覆う外側カバー膜25Dを形成しているのがわかる。ただし本実施形態において前記外側カバー膜25Dは必ずしも前記ガラス基板21の外周まで延在する必要はなく、前記フレーム部材25Aよりも外側の非露光パタ―ン23Dを覆っていれば十分である。
【0052】
本実施形態においても、前記カバー膜25C,25Dは前記ガラス基板21のパタ―ン形成面21Aから数十ミクロン以上離間させるのが、発塵防止の観点から好ましい。
【0053】
なお以上の説明は、主としていわゆるネガ型の露光マスクを使った例について行ったが、同様の説明は、ポジ型の露光マスクにおいても成立する。
【0054】
また以上の説明は、レチクルがいわゆるバイナリ型のレチクルである場合のみならず、位相シフトを用いたハーフトーン型やレベンソン型のレチクルであった場合でも同様に成立する。
【0055】
また以上の説明では投影縮小露光装置として
図1のスキャナ型の装置10を使った場合を説明したが、本実施形態はステッパを使った露光の場合でも有効である。
【0056】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。