【実施例1】
【0025】
本発明にかかる半導体装置の製造方法の実施例について、以下、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、目的とする半導体デバイスを製造するための半導体ウエハを製品ウエハと記すことにより、ダミーウエハと区別して説明する。また、高温熱処理用のウエハ支持ボートの支持溝に積載して充填された複数の製品ウエハをまとめて製品ウエハ群と言うことがある。半導体ウエハの材料としては、シリコン半導体、炭化珪素半導体、窒化ガリウム半導体などの半導体結晶材料を用いることができる。
【0026】
図1は、本発明の半導体装置の製造方法の実施例にかかる半導体ウエハ支持ボートを用いてバッチ処理で高温熱処理を行う製造プロセスにおいて、ウエハ支持ボート10へのウエハの配置に係わるボート10の上端部近傍を示す断面図である。このうち、製品ウエハ群領域6は、製品ウエハ3aが実際に処理される際に配置される領域であり、ダミーウエハ群領域5は、ダミーウエハ3bが配置される領域である。符号3a、3bの後の括弧内の数字はウエハ群領域内の端部からのウエハの並び順である。
図2は
図1とは反対側の下端部近傍を示す断面図である。
【0027】
図1に示すように、本発明にかかる半導体ウエハ支持ボート10では、第1に、ウエハ支持ボート10に5mm間隔で保持された製品ウエハ群領域6の直上、直下の延長部分にも、少なくともダミーウエハ3bがそれぞれ1枚づつ配置されるようにボートの石英支柱1に支持溝2が同間隔で延長してボート端部付近まで設けられている。このようなダミーウエハ3bの配置により製品ウエハ群領域6の最端部の製品ウエハ3a(1)は、他の製品ウエハ3aと同じ5mm間隔でダミーウエハ3b(1)が5mm間隔で隣接配置されているため、熱処理において使用されるガスの流れ方が中心部と同等になる効果が得られる。この結果、とりわけ、酸素雰囲気で熱処理を行い、熱酸化膜を成長させる製造プロセスにおいては、製品ウエハ間の酸素ガスの流れがウエハ群の中心部と周辺部とで同等となるため、全製品ウエハで同等の酸化膜厚が確保される効果が得られる。
【0028】
一方で、製品ウエハ群領域6の直上及び直下の延長部分にダミーウエハが無い場合には、最周辺部(最上部、最下部)の製品ウエハでは、ガス(酸化性ガス)の流れが中心部の製品ウエハに比べて変わるため、製品ウエハ群の周辺部の製品ウエハの酸化膜厚が中心部の製品ウエハの膜厚と異なることになる。例えば、ダミーウエハが無い場合、ガスが最周辺部の製品ウエハ面に対して接触する量が増えて膜厚が厚くなる。ただし、製品ウエハの酸化膜の膜厚が特性に関係するのは表面側の酸化膜であるので、最下部の製品ウエハでは、裏面側のガスの流れが表面側に比べて変わって裏面側の酸化膜厚が厚くなっても特性面への影響が少ない。しかし、酸化膜厚が厚くなると、熱の伝播による影響は避けられず、拡散深さのばらつきにつながる可能性もあるため、最下部の製品ウエハの下部の延長部にもダミーウエハを配置することが好ましい。
【0029】
第2に、製品ウエハ群領域6の直上、直下の延長部に配置されたダミーウエハ3b(1)のさらに直上および直下には直ちにダミーウエハを配置せず、少なくともウエハ1枚分の空間9aを空けてから、さらに延長部に複数枚のダミーウエハ3bを配置することが好ましい。このようなダミーウエハ3bの配置とすることにより、ダミーウエハ間に空間9aを空けた領域付近では、ウエハの間隔が広がったことと等価の状態となり、ガスの回り込みや熱輻射が改善され、ウエハの温度追従性が高まることにより、温度均一性が向上する効果が得られる。この結果、より厳しい温度制御が求められる高温の熱処理プロセスや、ウエハの大口径化、スリップ耐性の低いFZ結晶などの半導体ウエハに対しても、スリップ欠陥の発生を抑えることが可能となる。この効果については表1を用いて後ほど、明らかにする。
【0030】
また、本発明と従来の半導体ウエハのボートへの配置に関して比較すると、従来は、製品ウエハ群領域6の上下部の延長部に、ダミーウエハ3bを所定の間隔で空間を設けずに連続的に複数枚配置し、熱容量を確保することで、温度の均一性や熱応答性を改善させてきた。その場合、本発明の実施例と比較して、ボートの上部と下部の延長部に配置するダミーウエハの枚数が多く必要となる。その分、従来の方法では、製品ウエハ群領域の範囲を狭めることになる。一方、本発明の実施例では、前述のようにダミーウエハの枚数を減らすことが可能となるため、生産性が向上する。
【0031】
図1で、ダミーウエハ3bが配置されるダミーウエハ群領域5では、製品ウエハ群領域6に隣接するように、製品ウエハ群領域6の直上にダミーウエハ3b(1)が1枚配置されている。さらに、その上部延長部には、ウエハ1枚分の空間9aを空けた状態に続いて、ダミーウエハ3b(2)以下複数枚のダミーウエハ3bが配置されている。
【0032】
このような配列でウエハをウエハ支持ボート10へ保持させることで、製品ウエハ群領域6の直上にダミーウエハ3bが配置されているため、製品ウエハ群領域6の最上部の製品ウエハ3a(1)についても他の製品ウエハ群領域6と同じウエハ間隔を保つことができる。この結果、製造プロセス中に流される所要のプロセスガスは、製品ウエハ3a(1)についても他の製品ウエハ群領域6と同等の流れを作ることが可能となり、とりわけ、酸素ガスを流して熱酸化を行う製造プロセスにおいては、全製品ウエハ群領域6で同等の熱酸化膜厚を得ることを可能とする。
【0033】
また、このダミーウエハ3b(1)は、プロセスガスの流れを決めるウエハ間隔が他の製品ウエハ群領域6と同一になればよいため、製品ウエハ群領域6の直上に少なくとも1枚配置されていればよい。一方、このダミーウエハ3b(1)を2枚以上配置しても、プロセスガスの流れを制御する効果は同様に得られるので悪くはないが、後述するスリップ欠陥の発生を抑制する温度追従性が低くなる方向であり、製品ウエハ群領域6の最上部の製品ウエハ3aでスリップ欠陥が発生し易くなることから、1枚のみ配置するのが好ましい。
【0034】
さらに、製品ウエハ群領域6の製品ウエハ3a(1)の直上に配置されたダミーウエハ3b(1)の上部延長部は、前述のようにウエハ1枚分の空間9aを空けた状態に続いて、複数枚のダミーウエハ3bが配置される。この配置により、空間9aを空けた領域付近では、ウエハの間隔が広がったことと等価の状態となり、ガスの回り込みや熱輻射が改善され、温度追従性が高まることにより、温度均一性が向上する効果が得られる。この影響は、直接的には製品ウエハ群領域6の製品ウエハ3a(1)の直上に配置されたダミーウエハ3b(1)が影響を受けることとなるが、温度追従性と温度均一性が向上したダミーウエハ3b(1)を介して、その下部に配置された製品ウエハ群領域6にも間接的に影響を及ぼす。この結果、製品ウエハ群領域6のウエハ面内温度均一性が向上し、スリップ欠陥の発生が抑制される。
【0035】
図2は、ウエハ支持ボート10への下端部のウエハ配置について示している。このうち、製品ウエハ群領域7は、製品ウエハ3aが実際に処理される際に配置される領域であり、ダミーウエハ群領域8は、ダミーウエハ3bが配置される領域である。
【0036】
ダミーウエハ3bが配置されるダミーウエハ群領域8では、製品ウエハ群領域7に隣接するように、製品ウエハ群領域7の直下にダミーウエハ3b(1)が1枚配置されている。さらに、その下部の延長部には、ウエハ1枚分の空間9bを空けた状態に続いて、ダミーウエハ3b(2)以下の複数枚のダミーウエハ3bが配置されている。
【0037】
このような配列でウエハをウエハ支持ボート10へ保持させることにより、製品ウエハ群領域7の直下にはダミーウエハ3bが配置されているため、製品ウエハ群領域7の最下部の製品ウエハ3a(1)についても他の製品ウエハ群領域7と同じウエハ間隔となる。この結果、製造プロセス中に流されるプロセスガスは、製品ウエハ群領域7の最下部の製品ウエハ3a(1)についても他の製品ウエハ群領域7と同等の流れを作ることが可能となる。一方、最下部の製品ウエハ3a(1)は、半導体デバイス領域が形成される表面側が製品ウエハ群領域7と接しており、他の製品ウエハ群領域7と同じウエハ間隔となっている。このため、酸素ガスによる熱酸化で酸化膜を形成する製造プロセスにおいては、直下に配置されるダミーウエハ3bによって他の製品ウエハ群領域7と同等のガスの流れを作る必要性は必ずしも無いが、熱の伝播による影響は避けられず、拡散深さのばらつきにつながるため、下部の延長部にもダミーウエハ3bを配置することが好ましい。
【0038】
さらに、製品ウエハ群領域7の下部に配置されるダミーウエハ3bの下部の延長部には、ウエハ1枚分の空間9bを空けた状態に続いて、複数枚のダミーウエハ3bが配置される。このようなウエハの配置により、ウエハ支持ボートの上部と同様に、空間9bを空けた領域付近では、ウエハの間隔が広がったことと等価の状態となり、ガスの回り込みや熱輻射が改善され、温度追従性が高まることにより、温度均一性が向上する効果が得られる。この結果、製品ウエハ群領域7はその直下に配置されるダミーウエハ3bを介して、間接的に製品ウエハ3a面内の温度均一性が向上し、スリップ欠陥の発生が抑制される。
【0039】
表1は、8インチウエハを用いて、熱処理温度1150℃で熱処理を行い、従来のダミーウエハを空間9a、9b無く配置した場合と、本発明にかかるウエハ支持ボートへのウエハ配列を適用した場合について、ウエハ支持ボートの上部、及び下部におけるスリップ欠陥の発生の有無を評価した結果を示している。
【0040】
【表1】
スリップ欠陥の確認には、透過型X線トポグラフィを用いた。透過型X線トポグラフィは、結晶面のずれであるスリップ欠陥を感度良く検出可能なため、スリップ欠陥の評価として、一般的に用いられる方法の一つである。
【0041】
前記表1に示すように、本発明の半導体装置の製造方法を適用した場合、ウエハ支持ボートの下端部では、ウエハ支持ボートの上端部から6枚目以降は中心部に向かってでスリップ欠陥の発生が抑えられている。従来の方法では、ウエハ支持ボートの上端部から12枚目までスリップ欠陥が発生している。一方、ウエハ支持ボートの下端部では、本発明の場合、下端部から5枚目以降は中心部に向かってスリップ欠陥の発生が抑えられているが、従来の方法では、下端部から10枚目までスリップ欠陥が発生している。この結果から、前述した本発明にかかるウエハ支持ボートへのウエハ配置とすることによるスリップ欠陥抑制効果が高いことが明らかである。
【0042】
従って、本発明にかかるウエハ支持ボートへのウエハ配置とすることで、従来と比較して、ウエハ支持ボートの上端部と下端部に配置されるダミーウエハの枚数が従来の12枚から5枚に削減され、製品ウエハ群領域の範囲を広げることが可能となるため、生産性を高めることができる。
【0043】
以上、実施例で説明したように、本発明にかかるウエハ支持ボートへのウエハ配列とすることにより、以下に示す効果を得ることが可能となる。
第1に、ウエハ支持ボートの上部と下部領域における温度均一性、追従性が従来よりも向上して熱的な安定性が高まったことにより、スリップ欠陥の発生を抑制することができる。
【0044】
第2に、従来よりも製品ウエハ群領域の上部及び下部に配置されるダミーウエハの枚数を減らすことができる。この結果、製品ウエハ群領域となる範囲を狭めることなく、1回あたりの熱処理で得られる製品ウエハ枚数を増やし、生産性を高めることができる。
【0045】
第3に、本発明では、製品ウエハ群領域直上及び直下にはダミーウエハが隣接して配置されているため、ガスの流れが変わることはなく、酸化膜の形成時にも影響を及ぼさない。
【0046】
第4に、ウエハを大口径化しても、従来と比較して、その影響を軽減でき、スリップ欠陥の発生を抑制することができる。