特許第5724918号(P5724918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724918
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】すべり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 3/14 20060101AFI20150507BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20150507BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20150507BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   F16C3/14
   F16C33/10 Z
   F16J15/16 B
   F02B77/00 Q
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-64240(P2012-64240)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-194860(P2013-194860A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082108
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】田口 幸保
(72)【発明者】
【氏名】疋田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 元一
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−217608(JP,A)
【文献】 特開2012−112492(JP,A)
【文献】 実開昭59−052219(JP,U)
【文献】 実開昭58−038033(JP,U)
【文献】 特開2006−317002(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0263000(US,A1)
【文献】 実開昭55−092009(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26、33/00−33/28
F16C 3/00− 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半円筒状に形成されるとともに、内周面における円周方向の両端にそれぞれ切欠き部からなるクラッシリリーフを有する一対の半割り軸受を備え、それら一対の半割り軸受を相互に抱き合せて円筒状に形成されて、内周面となる摺動面によって回転軸を回転自在に軸支するようにしたすべり軸受において、
上記半割り軸受における軸方向の両端の位置に、該半割り軸受よりも熱膨張率が大きなバイメタルからなるシール部材をそれぞれ設けて、
低中温時においては、縮径した状態の上記シール部材によって上記クラッシリリーフの開口部を閉鎖して上記摺動面から外部へ流出する潤滑油の量を抑制し、
高温時においては、拡径した状態の上記シール部材によって上記クラッシリリーフの開口部を開放して上記摺動面から外部へ流出する潤滑油の量を増加させることを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】
上記シール部材は半割り軸受の円周方向に沿った円弧状に形成されており、また、上記シール部材は、上記半割り軸受における軸方向の両端となる端面に設けられ、かつ、円周方向の中央部を半割り軸受の端面に連結されることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
【請求項3】
上記半割り軸受における軸方向の両端の位置となる内周面に円周方向溝が形成されており、また、上記各シール部材は半割り軸受の円周方向に沿った円弧状に形成されており、かつ、上記円周方向溝に嵌着されていることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
【請求項4】
上記半割り軸受における軸方向の両端の位置には、円周方向における両方の縁部から円周方向の中央部に向けて伸びる左右一対の切欠き部が形成されており、また、上記各シール部材は半割り軸受の円周方向に沿った左右一対の円弧状部材から構成されるとともに、それら左右一対の円弧状部材は上記左右一対の切欠き部に嵌着されていることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
【請求項5】
上記バイメタルとしてのシール部材は、外周部側が鋼板からなり、内周部側が銅又はアルミ合金からなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のすべり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はすべり軸受に関し、より詳しくは、低中温時において潤滑油の流出を抑制することで該潤滑油を昇温可能なすべり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のクランクシャフト用として特殊な構成を備えたすべり軸受が提案されている(例えば特許文献1〜特許文献3)。
すなわち、特許文献1のすべり軸受は、すべり軸受内に供給された潤滑油が周囲に飛散するのを防止するために、すべり軸受の端面に飛散防止用の円弧状プレートを備えている。
次に、特許文献2のすべり軸受は、その摺動面に複数の円周方向溝が形成されるとともに、各円周方向溝内に熱膨張率の大きな収縮材料が充填されている。そして、低中温時においては上記収縮材料が収縮して円周方向溝内に空間部が形成されるので、その空間部内に潤滑油が貯溜される。したがって、低中温時においてエンジンが作動されると上記空間部内に貯溜された潤滑油が隣接位置の摺動面に供給されるので、特許文献2においては耐焼付性が良好なすべり軸受を提供することができる。なお、特許文献2のすべり軸受は、高温時において上記収縮部材が熱膨張して上記空間部内にも充満するので、熱膨張後の収縮部材の表面を含めた摺動面の面積が増大することにより、摺動面の面圧が低下するように構成されている。
次に、特許文献3の軸受装置においては、すべり軸受の一部又は全部として熱膨張材料を採用してあり、低温、中温および高温において熱膨張材料の熱膨張が異なることにより、温度変化に応じた摺動特性が得られるように意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−127864号公報
【特許文献2】特開2007−285456号公報
【特許文献3】特開2008−309199号公報
【特許文献4】特公平7−65615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの暖機運転時においては、すべり軸受に供給される潤滑油を速やかに昇温させて、摺動部分のフリクションロスを低減することが要望されている。しかしながら、従来のすべり軸受においては、次のような理由から暖機時に速やかに潤滑油を昇温させることは困難であった。
つまり、前述したようなクランクシャフト用のすべり軸受は、一対の半割り軸受を抱き合せて円筒状に構成されており、一般的には各半割り軸受の摺動面に円周方向に伸びる油溝が形成されるとともに、突き合わせ面に隣接する内周面にクラッシリリーフ(切欠き部)が形成されている(例えば特許文献4参照)。このクラッシリリーフは、一対の半割り軸受を突き合わせて円筒状に形成する際に、両者の突き合わせ箇所が半径方向内方へ変形できるように設けられている。
そして、円筒状としたすべり軸受によってクランクシャフトを軸支した状態においては、上記クラッシリリーフとクランクシャフトの外周面との間には、すべり軸受の端面に開口する軸方向の隙間が生じている(特許文献4の図1参照)。そのため、エンジンの暖機時において、すべり軸受の摺動面(内周面)に供給された潤滑油は、上記クラッシリリーフとクランクシャフトの外周面との間の軸方向の隙間を介してすべり軸受の外部へ排出されることになる。
このように、エンジンの暖機時に潤滑油を速やかに昇温することが要望されているにも拘らず、従来のすべり軸受においては、暖機時においても上記すべり軸受とクランクシャフトとの間の軸方向の隙間を介して潤滑油がすべり軸受の外部へ排出される。そのため、一対の半割り軸受から構成された従来の一般的なすべり軸受においては、暖機運転時において摺動面に供給される潤滑油が速やかに昇温されないという問題があった。したがって、従来ではすべり軸受に供給される潤滑油の粘度が低いままで暖機運転が行われるので、エンジンのフリクションロスが大きくなり、ひいてはエンジンの燃費が悪くなるという問題点が指摘されていたものである。
一方、上述した低中温時とは異なり、高温時においてはすべり軸受の焼付き防止のためにすべり軸受の摺動面に流通する潤滑油の流通量を増加させることが要望される。
そこで、本発明は、低中温時においては潤滑油の流出量を抑制し、かつ、高温時においては潤滑油の流出量を増加させることが可能なすべり軸受を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、本発明は、半円筒状に形成されるとともに、内周面における円周方向の両端にそれぞれ切欠き部からなるクラッシリリーフを有する一対の半割り軸受を備え、それら一対の半割り軸受を相互に抱き合せて円筒状に形成されて、内周面となる摺動面によって回転軸を回転自在に軸支するようにしたすべり軸受において、
上記半割り軸受における軸方向の両端の位置に、該半割り軸受よりも熱膨張率が大きなバイメタルからなるシール部材をそれぞれ設けて、
低中温時においては、縮径した状態の上記シール部材によって上記クラッシリリーフの開口部を閉鎖して上記摺動面から外部へ流出する潤滑油の量を抑制し、
高温時においては、拡径した状態の上記シール部材によって上記クラッシリリーフの開口部を開放して上記摺動面から外部へ流出する潤滑油の量を増加させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
上述した構成によれば、エンジンの暖機状態の低中温時においては、すべり軸受の摺動面からの潤滑油の流出が抑制されるので、すべり軸受の摺動面の潤滑油が速やかに昇温される。そのため、エンジンの暖機時におけるすべり軸受の摺動部分のフリクションロスを低減させて、燃費を向上させることができる。また、エンジン作動後の高温時においては、すべり軸受の摺動面を流通する潤滑油の量を増加させてすべり軸受の焼付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例の要部を示した斜視図。
図2図1に示したすべり軸受を軸方向の一端側から見た時の正面図。
図3図2の要部の拡大図。
図4図2のIV―IV線に沿う要部の断面図。
図5図2の要部の低中温時と高温時における位置の違いを示す模式図。
図6図1に示す本実施例と従来技術の効果上の違いを示す図。
図7】本発明の他の実施例を示す要部の断面図。
図8】本発明の他の実施例を示す要部の断面図。
図9】本発明の他の実施例を示す要部の正面図。
図10図9の左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図2において、すべり軸受1は、半円筒状をした半割り軸受2を2個抱き合わせて全体として円筒状に形成されている。なお、図1および図2においては、すべり軸受1の上方側の分(上方側の半割り軸受2)のみを表示してあり、下方側の半割り軸受は図示を省略している。すべり軸受1は、図示しないエンジン本体の所要箇所に複数配置されるようになっており、それら複数のすべり軸受1によってクランクシャフト3を回転自在に軸支するようになっている。
【0009】
半円筒状の半割り軸受2は、その外周部側は鋼板からなり、摺動面2Aとなる内周部側はCu合金あるいはAl合金などの軸受合金から構成されている。さらに、最内周面に樹脂コーティングあるいは金属めっきが施される場合もある。半割り軸受2は、その内周面である摺動面2Aに円周方向に伸びる油溝2Bが形成されており、この油溝2Bと連通させて半割り軸受2の円周方向中央部に油孔2Cが穿設されている。さらに、左右一対の突き合わせ面2Dに隣接する内周面には、軸方向の切欠き部からなるクラッシリリーフ2Eが形成されている。上記油孔2Cがないことを除いて、図示しない下方側の半割り軸受も図1図2に示した半割り軸受2と同様に構成されている。
上下一対の半割り軸受2における左右の突き合わせ面2Dを相互に当接させることで全体として円筒状のすべり軸受1が構成されるが、相互に当接した状態の半割り軸受2の突き合わせ面2Dは、クラッシリリーフ2Eの空間部内に半径方向内方へ塑性変形することができる。そのため、すべり軸受1によってクランクシャフト3を軸支した際に、上記突き合わせ面2Dの塑性変形箇所がクランクシャフト3の外周面と当接しないようになっている。
【0010】
上下一対の半割り軸受2からなる円筒状のすべり軸受1は、図示しないエンジン本体の複数箇所に取り付けられるようになっており、それら複数のすべり軸受1によってクランクシャフト3を回転自在に軸支するようになっている。そして、エンジンが作動された際には、オイルパン内の潤滑油がエンジン本体内の油通路を介して各すべり軸受1に向けて給送されると、潤滑油は上記油孔2Cから油溝2Bを経由して摺動面2Aへ供給される。このようにして、すべり軸受1の摺動面2Aに供給された潤滑油は、その後、各クラッシリリーフ2Eとクランクシャフト3の外周面との間の軸方向の隙間4を介して、すべり軸受1の外部へ排出されるようになっている。
【0011】
しかして、本実施例は、上述した構成のすべり軸受1を前提として、潤滑油の温度が低中温時においては上記各クラッシリリーフ2Eの軸方向の開口部2E’、2E’を閉鎖する一方、潤滑油の温度が高温時においては上記各クラッシリリーフ2Eの開口部2E’、2E’を開放するシール部材5、5を追加したものである。本実施例のすべり軸受1は、これらのシール部材5、5を備えているので、暖機運転時においてすべり軸受1内の潤滑油を速やかに昇温させることができるようになっている。
すなわち、図1ないし図2に示すように、上記半割り軸受2における軸方向の両端の位置となる各端面2F、2Fに、半円の円弧状をしたシール部材5、5が取り付けられている。すべり軸受1を構成する図示しない下方側の半割り軸受にも図1図2に示した半割り軸受2と同様のシール部材5、5が取り付けられている。したがって、上下一対の半割り軸受2により円筒状となったすべり軸受1は、その軸方向の両端の位置に円周方向全域にわたってシール部材5、5が取り付けられている。
【0012】
図4に示すように、シール部材5の放射方向における断面は長方形となっており、このシール部材5の肉厚と半径方向寸法は全域において同一に設定されている。また、シール部材5の外径および内径は円周方向全域において同一寸法に設定されている。そして、図3に示すように、このシール部材5は、内周部側に位置する熱膨張率が高い金属5Aと、外周部側に位置する熱膨張率が低い金属5Bとを一体に貼り合せたバイメタルからなっている。内周部側の金属5Aとしては銅やアルミ合金を用いており、他方、外周部側の金属5Bとしては鋼板を用いている。
前述したように、半割り軸受2自体も外周部側が鋼板からなり、かつ、内周部側がCu合金あるいはAl合金などの軸受合金からなるバイメタルとなっているが、上記シール部材5としてすべり軸受1自体よりも熱膨張率が大きなバイメタルを採用している。
さらに、本実施例においては、バイメタルからなる円弧状のシール部材5、5を次のようにして軸方向の両端面2F、2Fに連結している。すなわち、半割り軸受2の各端面2F、2Fにシール部材5、5を重合させ、その状態において各シール部材5、5の円周方向中央部5Eをスポット溶接で各端面2F、2Fの円周方向の中央部に連結している。このように半割り軸受2の端面2F、2Fにそれぞれシール部材5、5を連結してあり、その後、上下一対の半割り軸受2を抱き合せて円筒状のすべり軸受1が形成されるようになっている。
【0013】
円筒状となったすべり軸受1は、その内周面である摺動面2Aと各シール部材5の内周面5Cとが同一円筒面上に位置する。ただし、突き合わせ面2Dの隣接位置に各々クラッシリリーフ2Eが形成されているので、それらの軸方向の両端となる開口部2E’、2E’は、隣接外方位置となる各シール部材5、5の左右の縁部5D、5Dによって覆われた状態となっている。
【0014】
以上のように構成された本実施例のすべり軸受1は、潤滑油の温度の変化に応じてシール部材5、5がすべり軸受1自体よりも大きく熱膨張して拡縮する。それにより、クラッシリリーフ2Eの軸方向の開口部2E’、2E’を覆った箇所、つまり、円周方向の両端部となる左右の縁部5D、5Dが半径方向に縮径又は拡径されるようになっている。すべり軸受1がエンジン本体に装着され、かつクランクシャフト3を軸支している状態において、潤滑油の温度が−35℃〜80℃未満の低中温時では、上記各シール部材5、5は、中央部5Eを中心として左右の縁部5D、5Dが半径方向内方に変位して縮径される(図5の破線参照)。この状態では、各クラッシリリーフ2Eにおける軸方向両端の開口部2E’、2E’がシール部材5、5の縁部5D、5Dによって閉鎖される。つまり、クラッシリリーフ2E、2Eとクランクシャフト3の外周面との間に生じる軸方向の隙間4の両端がシール部材5、5によって閉鎖されるようになっている。
【0015】
そのため、この状態でエンジンの暖機運転が行われると、すべり軸受1の摺動面2Aに供給された潤滑油は、上記軸方向の隙間4を介してすべり軸受1の外部へ流出し難くなる。つまり、すべり軸受1の軸方向両端部に連結されたシール部材5、5の縁部5D、5Dによって開口部2E、2E’から排出される潤滑油の量が抑制される。
これにより、すべり軸受1の摺動面2Aに供給された潤滑油が軸方向の隙間4内に保持された状態となるので、該潤滑油はエンジン本体の熱によって速やかに昇温される。このように、低中温時であるエンジンの暖機時においては、すべり軸受1内の潤滑油が速やかに昇温されることで、該潤滑油の粘度が低下し、その潤滑油は摺動面2Aおよび摺動部分へ速やかに供給される。そのため、本実施例のすべり軸受1によれば、摺動部分のフリクションロスを低減させることができ、ひいてはエンジンの燃費を向上させることができる。
ここで、図6はシール部材5を設けた本実施例のすべり軸受1とシール部材を備えていない従来のすべり軸受との潤滑油の温度変化を比較したものである。この図6から明らかなように、すべり軸受の油温は、従来技術と比較して本実施例の方が速やかに上昇していることが理解できる。
【0016】
一方、上述したエンジンの暖機後において、潤滑油の温度がが80℃以上の高温時となると、前述した低中温時に対してシール部材5、5が熱膨張して、シール部材5の両方の縁部5Dが半径方向外方へ変位して拡径する。図5に実線で示すように、高温時においては、シール部材5の縁部5Dが拡径することによりクラッシリリーフ2E、2Eの開口部2E’、2E’が開放される。そのため、前述した低中温時と比較すると、すべり軸受1の摺動面2Aに供給された潤滑油が軸方向の隙間4を介して外部へ流出する量が増大する。これにより、高温時においては、すべり軸受1の摺動面2Aを流通する潤滑油の量が増加して上記軸方向の隙間4を介してすべり軸受1の外部へ速やかに排出される。したがって、高温時において、すべり軸受1の摺動面2Aにおける焼付きを確実に防止することができる。
このように、本実施例のすべり軸受1によれば、低中温時において潤滑油を速やかに昇温させることができ、かつ高温時においては十分な耐焼付性を得ることができる。
【0017】
次に、上記最初の実施例においては、半割り軸受2の各端面2F、2Fにシール部材5、5を重合させてからスポット溶接しているが、その他の方法で各端面2F、2Fまたはそこに近接する端部の位置にシール部材5を連結するようにしても良い。
すなわち、図7に示した実施例においては、半割り軸受102の端面102Fにおける内周面側に円周方向に沿った係合凹部102Gを形成し、その係合凹部102G内にシール部材105を嵌め込み、その後に該シール部材105を係合凹部102Gの底面にスポット溶接している。なお、この図7の実施例においては、上記第1実施例と対応する部材にそれぞれ100を加算した部材番号を付している。
次に、図8の実施例においては、軸方向の両端の位置となる摺動面202A(内周面)に円周方向に沿った係合溝202Hを形成してあり、そこにシール部材205を嵌着している。なお、この図8の実施例においては、上記第1実施例と対応する部材にそれぞれ200を加算した部材番号を付している。
このような図7図8に示した実施例であっても上記第1実施例と同様の作用、効果を得ることができる。
【0018】
さらに、図9ないし図10は、半割り軸受302に別の方法でシール部材305を連結するようにした実施例を示したものである。すなわち、この図9の実施例においては、半割り軸受302における軸方向の両端の位置に、突き合わせ面302Dから円周方向に沿って中央部に向けて延びる左右一対の切欠き部306を形成している(図9図10においては左右方向の中心よりも左方側のみ図示)。他方、この実施例においては、シール部材305を、左右一対の円弧状部材により構成してあり、それら左右一対の円弧状部材からなるシール部材305を上記左右一対の各切欠き部306に嵌着している。
ここで、半割り軸受302の外周面の半径R1は、シール部材305の外周面の半径R2よりも大きな寸法に設定されている。つまり、R1>R2となっている。このように、図9ないし図10に示す実施例においては、半割り軸受302とは曲率が異なるシール部材305を、半割り軸受302の端部の位置に一体に連結している。
そのため、クラッシリリーフ302Eの軸方向の開口部302E’、302E’は、低中温時において縮径しているシール部材305の縁部305Dによって閉鎖される。他方、高温時においては、シール部材305の縁部305Dが熱膨張して拡径することで開口部302E’、302E’が開放されるようになっている。このような図9ないし図10に示す実施例であっても、上記第1実施例と同等の作用、効果を得ることができる。
なお、上述した各実施例においては、シール部材5(105、205、305)をスポット溶接により半割り軸受2(102、202、302)に連結しているが、スポット溶接の代わりにピンやカシメを用いて連結しても良い。
【符号の説明】
【0019】
1‥すべり軸受 2‥半割り軸受
2A‥摺動面 2D‥突き合わせ面
2E‥クラッシリリーフ 2E’‥開口部
3‥シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10