特許第5724920号(P5724920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724920
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20150507BHJP
   B60R 21/2346 20110101ALI20150507BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   B60R21/231 300
   B60R21/231 500
   B60R21/207
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-67800(P2012-67800)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199167(P2013-199167A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】本田 健作
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇
(72)【発明者】
【氏名】山下 晃
(72)【発明者】
【氏名】後藤 喜明
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/131518(WO,A1)
【文献】 特開2011−255714(JP,A)
【文献】 特開2011−189791(JP,A)
【文献】 特開2011−126497(JP,A)
【文献】 特開2010−228519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ内を高圧膨張室と低圧膨張室とに仕切る仕切部に、それら高圧膨張室と低圧膨張室とを連通する連通路を設け、前記エアバッグに対するガスの供給を同ガスが前記連通路における低圧膨張室寄りの部分から高圧膨張室側に向けて流れるように行うことで、そのガスを前記高圧膨張室内に優先的に供給するエアバッグ装置において、
前記連通路は、前記仕切部から前記高圧膨張室側に延びた状態となるシートを厚さ方向に重ねるとともに、それら重ねられたシート同士を前記低圧膨張室側から前記高圧膨張室側に沿って互いに結合することにより、それら重ねられたシート間に形成されるものであり、
前記重ねられたシート同士における前記連通路を形成する部分のうち前記高圧膨張室寄りの部分は、その高圧膨張室の膨張完了時に互いに接近して同高圧膨張室内から前記低圧膨張室へのガスの流れを抑制する逆止弁として機能するものであり、
前記シートは、前記逆止弁として機能する部分が前記高圧膨張室の膨張完了時に互いに接近したときに前記高圧膨張室側から前記低圧膨張室側に反転することを阻止する反転阻止手段を備え
前記反転阻止手段は、前記重ねられたシート同士の少なくとも一つにおける前記高圧膨張室側の端部に設けられた延設部を前記エアバッグの基布における前記高圧膨張室に対応する部分に結合することによって形成され、
前記エアバッグは、前記基布を厚さ方向に重ねた状態のもと、それら重ねられた基布の外縁同士を縫い合わせることによって形成されており、
前記延設部は、前記重ねられた基布の外縁まで延び、それら基布の互いに縫い合わされる外縁同士と共に縫い合わされることによって同基布と結合されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグの基布は、二つに折ることによって同基布の外縁同士を厚さ方向に重ねた状態とされるものであり、
前記エアバッグは、二つに折られた前記基布の厚さ方向に重ねられた外縁同士を縫い合わせることによって形成されており、
前記仕切部は、前記基布の折り目から前記縫い合わされた外縁同士まで延びることによって、前記エアバッグ内を前記高圧膨張室と前記低圧膨張室とに仕切るものであり、
前記連通路は、前記仕切部における前記基布の折り目寄りの位置に形成されており、
前記延設部は、前記基布の折り目に沿って前記縫い合わされた外縁同士まで延びている請求項記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、座席に着座した乗員を車両の側突等の衝撃から保護するためのエアバッグ装置が設けられている。同装置は、車両の座席に設けられたエアバッグに対しガスを供給することにより、同エアバッグを座席に着座した乗員の側方であって同乗員と車両のボディサイド部との間に膨張展開させるものとなっている。ここで、膨張展開したときの上記エアバッグ内の圧力は、保護しようとする人体側部の各部位、例えば腰や胸といった部位の耐衝撃性に応じて異なる値とすることが好ましい。例えば、エアバッグにおける腰などの耐衝撃性の高い部位を保護する部分を高圧とする一方、同エアバッグにおける胸などの耐衝撃性の低い部位を保護する部分に関しては低圧とすることが好ましい。これを実現するため、例えば特許文献1に示されるようにエアバッグを形成することが考えられる。
【0003】
上記エアバッグにおいては、仕切部によってエアバッグ内が高圧膨張室と低圧膨張室とに仕切られる。更に、上記仕切部から高圧膨張室側に延びた状態となるシートを厚さ方向に重ねるとともに、それら重ねられたシート同士を低圧膨張室側から高圧膨張室側に沿って互いに結合することにより、それら重ねられたシート間に高圧膨張室と低圧膨張室とを連通する連通路が形成される。そして、エアバッグを膨張展開させるための同エアバッグに対するガスの供給は、上記連通路における低圧膨張室寄りの部分から高圧膨張室側に向けての上記ガスの流れが生じるように行われる。これにより、上記ガスがエアバッグ内において高圧膨張室内に優先的に供給される一方、上記ガスの一部が低圧膨張室内にも供給される。なお、上記重ねられたシート同士における連通路を形成する部分のうち高圧膨張室寄りの部分は、その高圧膨張室の膨張完了時に互いに接近して同高圧膨張室内から低圧膨張室へのガスの流れを抑制する逆止弁として機能する。
【0004】
この場合、エアバッグ内に上述したようにガスを供給することで、同エアバッグの高圧膨張室内を高圧とするとともに低圧膨張室内を低圧とすることができる。更に、高圧膨張室の膨張完了時、その高圧膨張室内のガスが上記連通路を介して低圧膨張室に流れようとすると、同連通路を形成するための上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能する部分が互いに接近し、それによって高圧膨張室内から低圧膨張室へのガスの流れが抑制される。これにより、エアバッグにおける低圧膨張室内を低圧に保持しつつ高圧膨張室内を高圧に保持することができる。従って、人体側部における腰などの耐衝撃性の高い部位の保護にエアバッグにおける上記高圧膨張室に対応する部分を用い、人体側部における胸などの耐衝撃性の低い部位の保護にエアバッグにおける上記低圧膨張室に対応する部分を用いることが可能になる。そして、このようにエアバッグを人体側部の保護に用いることにより、人体側部の耐衝撃性が腰や胸などの部位によって異なるとしても、それらの部位を上記エアバッグによって適切に保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−194936公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記エアバッグにおいては、高圧膨張室の膨張完了時、上記連通路を形成するための上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能する部分が互いに接近し、それによって高圧膨張室内から低圧膨張室へのガスの流れが抑制されるようにはなる。ただし、エアバッグの膨張完了した高圧膨張室に対し乗員の体が押し付けられるなどして同高圧膨張室内が高圧になると、上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能する部分が互いに接近した状態のもと、その部分に対する高圧膨張室内の圧力に基づく力の作用により、同部分が低圧膨張室側に反転するおそれがある。このように上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能する部分が低圧膨張室側に反転すると、その部分が互いに接近した状態から離間した状態に変化して逆止弁として機能しなくなる。その結果、高圧膨張室内のガスが連通路を介して低圧膨張室に流れてしまい、高圧膨張室内を高圧に保つことができなくなるとともに低圧膨張室内の低圧に保つことができなくなる。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エアバッグの膨張完了した高圧膨張室内が高圧となったときに、同高圧膨張室内のガスが連通路を介してエアバッグの低圧膨張室に流れることを抑制できるエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、エアバッグ内を高圧膨張室と低圧膨張室とに仕切る仕切部に、それら高圧膨張室と低圧膨張室とを連通する連通路を設け、前記エアバッグに対するガスの供給を同ガスが前記連通路における低圧膨張室寄りの部分から高圧膨張室側に向けて流れるように行うことで、そのガスを前記高圧膨張室内に優先的に供給するエアバッグ装置において、前記連通路は、前記仕切部から前記高圧膨張室側に延びた状態となるシートを厚さ方向に重ねるとともに、それら重ねられたシート同士を前記低圧膨張室側から前記高圧膨張室側に沿って互いに結合することにより、それら重ねられたシート間に形成されるものであり、前記重ねられたシート同士における前記連通路を形成する部分のうち前記高圧膨張室寄りの部分は、その高圧膨張室の膨張完了時に互いに接近して同高圧膨張室内から前記低圧膨張室へのガスの流れを抑制する逆止弁として機能するものであり、前記シートは、前記逆止弁として機能する部分が前記高圧膨張室の膨張完了時に互いに接近したときに前記高圧膨張室側から前記低圧膨張室側に反転することを阻止する反転阻止手段を備えるものとした。
【0009】
上記構成によれば、エアバッグの膨張完了した高圧膨張室に対し乗員の体が押し付けられるなどして同高圧膨張室内が高圧になると、上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能する部分が互いに接近した状態のもと、その部分に対する高圧膨張室内の圧力に基づく力の作用により、同部分が低圧膨張室側に反転しようとする。しかし、こうした反転については反転阻止手段によって阻止される。従って、上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能する部分が低圧膨張室側に反転することにより、その部分が互いに接近した状態から離間した状態に変化して逆止弁として機能しなくなることを抑制できる。そして、上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能すべき部分が、逆止弁として機能しなくなって高圧膨張室内のガスが連通路を介して低圧膨張室に流れることを抑制できる。
【0010】
また、請求項記載の発明では、前記反転阻止手段は、前記重ねられたシート同士の少なくとも一つにおける前記高圧膨張室側の端部に設けられた延設部を前記エアバッグの基布における前記高圧膨張室に対応する部分に結合することによって形成されている
【0011】
上記構成によれば、高圧膨張室内が高圧になったとき、上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能する部分が互いに接近した状態のもとで低圧膨張室側に反転しようとしても、そうした反転がエアバッグの基布における高圧膨張室に対応する部分に結合された上記延設部によって阻止される。
【0012】
また、請求項記載の発明では、前記エアバッグは、前記基布を厚さ方向に重ねた状態のもと、それら重ねられた基布の外縁同士を縫い合わせることによって形成されており、前記延設部は、前記重ねられた基布の外縁まで延び、それら基布の互いに縫い合わされる外縁同士と共に縫い合わされることによって同基布と結合されている
【0013】
上記構成によれば、上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能する部分が低圧膨張室側に反転しようとするとき、その反転を阻止する延設部が低圧膨張室側に引っ張られるとしても、同延設部がエアバッグの基布の互いに縫い合わされる外縁部同士と共に縫い合わされているため、同基布に対する延設部の結合が解けることはない。
【0014】
請求項記載の発明では、請求項記載の発明において、前記エアバッグの基布は、二つに折ることによって同基布の外縁同士を厚さ方向に重ねた状態とされるものであり、前記エアバッグは、二つに折られた前記基布の厚さ方向に重ねられた外縁同士を縫い合わせることによって形成されており、前記仕切部は、前記基布の折り目から前記縫い合わされた外縁同士まで延びることによって、前記エアバッグ内を前記高圧膨張室と前記低圧膨張室とに仕切るものであり、前記連通路は、前記仕切部における前記基布の折り目寄りの位置に形成されており、前記延設部は、前記基布の折り目に沿って前記縫い合わされた外縁同士まで延びていることを要旨とした。
【0015】
上記構成によれば、連通路がエアバッグを形成するための基布の折り目寄りの位置に形成される。そして、上記連通路を形成するための上記重ねられたシート同士における逆止弁として機能する部分の低圧膨張室側への反転は、上記折り目に沿って上記基布の外縁まで延びて同外縁に縫い合わされる延設部によって阻止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エアバッグの膨張完了した高圧膨張室内が高圧となったときに、同高圧膨張室内のガスが連通路を介して低圧膨張室に流れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のエアバッグ装置が適用された自動車の座席を乗員及びエアバッグとともに示す側面図。
図2】同座席の背もたれに組み込まれたエアバッグ及びインフレータを、ボディサイド部とともに示す部分平断面図。
図3図2の状態からエアバッグが背もたれから飛び出して膨張展開した状態を示す部分平断面図。
図4】自動車の座席及びボディサイド部の位置関係を乗員及びエアバッグとともに示す正断面図。
図5】自動車の座席及びボディサイド部の位置関係を乗員及びエアバッグとともに示す平断面図。
図6】エアバッグを拡大して示す側面図。
図7】同エアバッグを形成する基布及びシートを示す平面図。
図8】同シートにおける連通路を形成する部分を示す拡大図。
図9】エアバッグの他の例を示す側面図。
図10】シートにおける連通路を形成する部分の他の例を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を自動車のエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図1図8を参照して説明する。
図1に示されるように、エアバッグ装置1は、自動車において乗員Pが着座する座席2の背もたれ2aに折り畳まれた状態で設けられるエアバッグ4(破線)と、そのエアバッグ4にガスを供給するためのインフレータ5と、そのインフレータ5によるエアバッグ4へのガスの供給を制御する制御装置6とを備えている。この制御装置6には自動車のボディサイド部等に設けられた加速度センサ等からなる衝撃センサ7が接続されており、同衝撃センサ7は自動車のボディサイド部に加えられた衝撃を検出する。そして、制御装置6は、衝撃センサ7からの検出信号に基づきインフレータ5を作動させてエアバッグ4にガスを供給する。
【0021】
図2は、背もたれ2aのエアバッグ4周りの構造を示す拡大平断面図である。同図に示されるように、背もたれ2aの内部における自動車のボディサイド部8に近い部分には、上記エアバッグ4が折り畳まれた状態で収納されるとともに、そのエアバッグ4にガスを供給するための上記インフレータ5が収納されている。このインフレータ5は、背もたれ2aの骨格をなすフレーム9に対し、上記折り畳まれた状態のエアバッグ4とともに固定されている。そして、こうしたエアバッグ4にインフレータ5からのガスが供給されると、折り畳まれた状態のエアバッグ4が膨張展開して図3に示されるようにインフレータ5付近の部分を背もたれ2a内に残しつつ同背もたれ2aから飛び出した状態となる。
【0022】
このようにインフレータ5からのガスの供給を受けて膨張展開した状態のエアバッグ4は、図4及び図5に示されるように座席2に着座した乗員Pの側方であって同乗員Pと自動車のボディサイド部8との間に位置するようになる。言い換えれば、インフレータ5からのガスの供給を受けたエアバッグ4は、上記座席2に着座した乗員Pの側方であって同乗員Pと自動車のボディサイド部8との間に膨張展開されるようになる。図4及び図5から分かるように、膨張展開した上記エアバッグ4は、座席2に着座した乗員Pの側部における腰や胸といった部位に対応して位置する。
【0023】
次に、エアバッグ4の詳細な構造を図6及び図7を参照して説明する。なお、図6はエアバッグ4を広げた状態を示す側面図であり、図7はエアバッグ4を形成するための基布10を示す平面図である。
【0024】
図6に示すエアバッグ4は、基布10を二つに折って同基布10外縁同士を厚さ方向に重ねた状態とし、それら外縁同士を縫い合わせることによって形成されている。エアバッグ4の内部には、同エアバッグ4を乗員P(図1)の腰の保護に用いる高圧膨張室11と同乗員Pの胸の保護に用いる低圧膨張室12とに仕切るためのシート13が設けられている。シート13は、基布10と同様に二つに折られて厚さ方向に重ねられており、且つ、基布10の折り目10aから同基布10における折り目10aと向かい合う位置の外縁(縫い合わされた外縁同士)まで延びている。
【0025】
二つに折られたシート13における低圧膨張室12側の縁部は、互いに厚さ方向に重なった状態とはなるものの、互いに縫い合わされることはなく基布10に対してのみ縫い合わされている。また、二つに折られたシート13における高圧膨張室11寄りの部分は、互いに厚さ方向に重なった状態で縫い目13a,13bに沿って縫い合わされることにより互いに結合されている。縫い目13aは、基布10の折り目10aを始点として低圧膨張室12側から高圧膨張室11側に向かって延びている。一方、縫い目13bは、基布10における折り目10aと向かい合う位置の外縁を始点として折り目10aに向かって同折り目10aとほぼ垂直に延びるとともに、途中で湾曲して上記縫い目13aとほぼ平行となるように低圧膨張室12側から高圧膨張室11側に向かって延びている。
【0026】
二つに折られたシート13において、縫い目13bにおける基布10の折り目10aとほぼ垂直に延びて互いに結合された部分は、エアバッグ4内を高圧膨張室11と低圧膨張室12とに仕切る仕切部として機能する。また、二つに折られたシート13における縫い目13aに沿って互いに結合された部分と、縫い目13bにおける上記縫い目13aとほぼ平行に延びて互いに結合された部分との間には、高圧膨張室11と低圧膨張室12とを連通する連通路14が設けられている。連通路14は、二つに折られたシート13における縫い目13aと縫い目13bとの互いにほぼ平行となる部分であって、厚さ方向に重ねられたシート13間に形成されている。この連通路14は、上記仕切部として機能するシート13における折り目10a寄りに位置している。
【0027】
エアバッグ4を膨張展開させるためのガスを供給するインフレータ5は、エアバッグ4の低圧膨張室12内であって、同インフレータ5におけるガスの噴孔を上記連通路14に対応して位置させるべく折り目10aの近傍に設けられる。同インフレータ5の配置に関しては、上記噴孔が低圧膨張室12内の連通路14近傍に位置するようにインフレータ5を配置することが考えられる。このようにインフレータ5を配置することにより、同インフレータ5からガスを噴射させたとき、上記連通路14における低圧膨張室12寄りの部分から高圧膨張室11に向けてのガスの流れが生じる。そして、インフレータ5から噴射されたガスがエアバッグ4内において高圧膨張室11に優先的に供給される一方、上記ガスの一部が低圧膨張室12にも供給されるようになる。このようにエアバッグ4に対するガスの供給を行うことにより、高圧膨張室11内を高圧とするとともに低圧膨張室12内を低圧とすることができる。
【0028】
また、上記二つに折られたシート13における連通路14を形成する部分のうち、高圧膨張室11寄りの部分は、その高圧膨張室11の膨張完了時に互いに接近して同高圧膨張室11内から低圧膨張室12へのガスの流れを抑制する逆止弁として機能する。このため、高圧膨張室11の膨張完了時、その高圧膨張室11内のガスが上記連通路14を介して低圧膨張室12に流れようとすると、上記二つに折られたシート13における連通路14を形成するための部分であって上記逆止弁として機能する部分が互いに接近し、それによって高圧膨張室11内から低圧膨張室12へのガスの流れが抑制される。その結果、エアバッグ4における低圧膨張室12内を低圧に保持しつつ高圧膨張室11内を高圧に保持することができる。
【0029】
ところで、膨張完了した高圧膨張室11に対し乗員Pの体が押し付けられるなどして同高圧膨張室11内が高圧になると、上記二つに折られたシート13における逆止弁として機能する部分が互いに接近した状態のもと、その部分に対する高圧膨張室11内の圧力に基づく力の作用により、同部分が低圧膨張室12側に反転するおそれがある。このように上記二つに折られたシート13における逆止弁として機能する部分が低圧膨張室12側に反転すると、その部分が互いに接近した状態から離間した状態に変化して逆止弁として機能しなくなる。その結果、高圧膨張室11内のガスが連通路14を介して低圧膨張室12に流れてしまい、高圧膨張室11内を高圧に保つことができなくなるとともに低圧膨張室12内を低圧に保つことができなくなる。こうしたことに対処するため、本実施形態のエアバッグ4は、上記二つに折られたシート13における逆止弁として機能する部分が高圧膨張室11内の高圧時に互いに接近したときに高圧膨張室11側から低圧膨張室12側に反転することを阻止する構造を有している。
【0030】
上記反転を阻止する構造として具体的には、エアバッグ4に次のような構造が採用されている。すなわち、上記二つに折られたシート13における厚さ方向に重なった部分の少なくとも一つであって高圧膨張室11側の端部に延設部15を設ける。そして、この延設部15をエアバッグ4の基布10における高圧膨張室11に対応する部分に結合する。より詳しくは、上記延設部15を基布10における互いに重ねられて縫い合わされた外縁同士の所まで同基布10の折り目10aに沿って延ばし、それら外縁同士と共に縫い合わせる。これにより、延設部15の先端が基布10の外縁における高圧膨張室11に対応する部分に結合される。
【0031】
図7は、図6の基布10における互いに縫い合わされた外縁同士の縫い合わせ、及び、二つに折られて厚さ方向に重ねられたシート13における縫い目13a,13bに沿った縫い合わせを解いて、折り目10aを中心に上記基布10を開いた状態を示す平面図である。同図に示すシート13は、低圧膨張室12側(図中上側)の縁部が基布10に対し縫い合わされている。また、シート13の高圧膨張室11側(図中下側)の端部には上記延設部15が設けられている。そして、図6の基布10及びシート13を折り目10aを中心に二つに折り、それによって基布10の外縁同士を厚さ方向に重ね合わせるとともに、シート13の縫い目13a,13bを重ね合わせる。更に、厚さ方向に重なった状態のシート13同士を縫い目13a,13bに沿って縫い合わせるとともに、厚さ方向に重なった基布10の外縁同士を縫い合わせる。なお、厚さ方向に重なった基布10の外縁同士を縫い合わせる際には、上記二つに折られたシート13の延設部15も上記外縁部同士と共に縫い合わされる。以上のように基布10及びシート13の縫い合わせを行うことによって図7のエアバッグ4が形成される。
【0032】
次に、本実施形態のエアバッグ装置1の作用について説明する。
図6に示すエアバッグ4の高圧膨張室11内が高圧になると、上記二つに折られたシート13における逆止弁として機能する部分が互いに接近した状態のもと、その部分に対する高圧膨張室11内の圧力に基づく力の作用により、同部分が図8に二点鎖線の矢印で示すように低圧膨張室12側に反転しようとする。しかし、こうした反転については、エアバッグ4の基布10における高圧膨張室11に対応する部分の外縁に結合された上記延設部15によって阻止される。この延設部15は、基布10の折り目10a(図6)に沿って同基布10の互いに縫い合わされる外縁部同士の所まで延び、それら外縁部同士と共に縫い合わされている。このため、上記反転を阻止する際に延設部15が低圧膨張室12側に引っ張られるとしても、その際に基布10に対する延設部15の結合が解けることはない。
【0033】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)エアバッグ4の高圧膨張室11の高圧時、上記二つに折られたシート13における逆止弁として機能する部分が低圧膨張室12側に反転することは、上記延設部15によって阻止される。このため、上記二つに折られたシート13における逆止弁として機能する部分が低圧膨張室12側に反転することにより、その部分が互いに接近した状態から離間した状態に変化して逆止弁として機能しなくなることを抑制できる。そして、上記二つに折られたシート13における逆止弁として機能すべき部分が、逆止弁として機能しなくなって高圧膨張室11内のガスが連通路14を介して低圧膨張室12に流れることを抑制できる。
【0034】
(2)インフレータ5及び連通路14がエアバッグ4(基布10)の折り目10a寄りの位置に設けられている。このため、インフレータ5からのガスの供給によって膨張展開したエアバッグ4に関しては、上記折り目10a側が座席2の背もたれ2aに固定されるとともに、基布10における厚さ方向に重ねられて互いに縫い合わされた外縁同士のうち上記折り目10aと向かい合う部分が膨張方向の先端とされる。ちなみに、エアバッグ4では、折り目10a側の部分よりも上記縫い合わされた外縁部分の方が形状を任意に定めやすい。このため、上記縫い合わされた外縁部分がエアバッグ4の膨張方向の先端となれば、上記外縁部分の形状設定を通じて膨張時のエアバッグ4の形状を乗員Pの保護態様等に応じて一層自由に定めることができる。
【0035】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・延設部15は、二つに折られた基布10における互いに縫い合わされた外縁同士の所まで延びている必要はなく、そこよりも連通路14に近い位置で基布10と縫い合わせ等により結合されていてもよい。
【0036】
・エアバッグ4を形成するための基布10は、必ずしも折り目10aで二つに折られて厚さ方向に重ねられるものである必要はない。例えば、二枚の基布を厚さ方向に重ねて外縁部同士全体を縫い合わせることでエアバッグを形成してもよい。
【0037】
・折り目10aで二つに折られて厚さ方向に重ねられるシート13に代えて、二枚のシートを厚さ方向に重ねたものを採用してもよい。
・インフレータ5に関しては、ガスの噴孔が連通路14内における低圧膨張室12寄りの部分に位置するように配置することも可能である。このようにインフレータ5を配置しても、同インフレータ5からガスを噴射させたとき、上記連通路14における低圧膨張室12寄りの部分から高圧膨張室11に向けてのガスの流れが生じる。そして、インフレータ5から噴射されたガスがエアバッグ4内において高圧膨張室11に優先的に供給される一方、上記ガスの一部が低圧膨張室12にも供給されるようになる。
【0038】
・インフレータ5をエアバッグ4の外部に設け、同インフレータ5から噴射されたガスを管等によってエアバッグ4内に供給するようにしてもよい。この場合、エアバッグ4内における上記管の端部(ガスの噴射部分)を、低圧膨張室12内の連通路14近傍に同連通路14の開口に向かけてガスが噴射されるように配置したり、連通路14内における低圧膨張室12寄りの部分に高圧膨張室11に向けてガスが噴射されるように配置したりすることが考えられる。
【0039】
図9に示すように、二つに折られた基布10の外縁同士を縫い合わせる際の縫い目の一部(縫い目10b)を基布10の外縁付近から折り目10a付近まで延ばし、基布10における縫い目10b周りの部分がエアバッグ4内を高圧膨張室11と低圧膨張室12とに仕切る仕切部として機能するようにしてもよい。この場合にも連通路14を形成するために二つに折られたシート13が設けられる。ちなみに、このシート13の低圧膨張室12側の縁部は基布10に対して縫い合わされている。また、同シート13によって連通路14を形成するために、二つにおられたシート13は低圧膨張室12側から高圧膨張室11側に向かって延びる縫い目13cに沿って互いに縫い合わされて結合されている。なお、このシート13には延設部15も設けられている。
【0040】
・二つに折られたシート13における逆止弁として機能する部分が高圧膨張室11内の高圧時に互いに接近したときに高圧膨張室11側から低圧膨張室12側に反転することを阻止する構造として、次のような構造を採用することも可能である。すなわち、二つに折られたシート13における連通路14の高圧膨張室11側の開口を形成する部分であって、その開口の幅方向中央部を図10に示すように互いに縫い合わせて結合するという構造を採用することも可能である。この場合、高圧膨張室11内が過剰に高圧になったとき、上記二つに折られたシート13における逆止弁として機能する部分が互いに接近した状態のもとで低圧膨張室12側に反転しようとしても、そうした反転が次のように阻止される。すなわち、同反転が、上記二つに折られたシート13における上記連通路14の高圧膨張室11側の開口を形成する部分であって、同開口の幅方向中央部を互いに結合した部分によって阻止されるようになる。
【符号の説明】
【0041】
1…エアバッグ装置、2…座席、2a…背もたれ、4…エアバッグ、5…インフレータ、6…制御装置、7…衝撃センサ、8…ボディサイド部、9…フレーム、10…基布、10a…折り目、10b…縫い目、11…高圧膨張室、12…低圧膨張室、13…シート、13a…縫い目、13b…縫い目、13c…縫い目、14…連通路、15…延設部(反転阻止手段)。
図1
図2
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図4
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図6
図7
図8
図9
図10