特許第5724964号(P5724964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5724964ウォータージェット推進装置の吸込ケーシング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724964
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ウォータージェット推進装置の吸込ケーシング
(51)【国際特許分類】
   B63H 11/08 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   B63H11/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-171571(P2012-171571)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-31059(P2014-31059A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2014年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】片山 順一
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−122191(JP,A)
【文献】 特開平04−055192(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/111590(WO,A1)
【文献】 実開平04−062296(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車(3)の主軸(9)が傾斜流路(11)を貫通し、吸込ケーシング(1)に付設した軸受箱(10)で軸支するウォータージェット推進装置(W)において、
軸受箱(10)を連結する軸受フランジ(12)を傾斜流路(11)に固着し、軸受フランジ(12)両端側方から垂直リブ(15)を底部取付板(18)まで延設した
ことを特徴とするウォータージェット推進装置の吸込ケーシング。
【請求項2】
羽根車(3)の主軸(9)が傾斜流路(11)を貫通し、吸込ケーシング(1)に付設した軸受箱(10)で軸支するウォータージェット推進装置(W)において、
底部取付板(18)と傾斜流路(11)との船首側接合部に船首側リブ(16)を立設し、傾斜流路(11)の両端中央部近傍まで連続的に延設した
ことを特徴とするウォータージェット推進装置の吸込ケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船艇の後部船底に開口する吸込口から水を吸い込む吸込ケーシングを有し、吸込ケーシングでポンプ部のスラストを受けるウォータージェット推進装置に関し、吸込ケーシングの流路あるいは船艇への取付板に応力を分散させるウォータージェット推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウォータージェット推進装置の吸込ケーシングは、内部に流水が通過する筒状の吸水部と、船艇の船底およびトランサムに取り付ける取付部で構成され、吸水部は船底からトランサムに向かって上方に傾斜している。吸水部傾斜面の船首側には内部に軸受を有する軸受箱を付設し、羽根車を嵌合している主軸を軸支している。
小型あるいは中型のウォータージェット推進装置を搭載する船艇は、機関室のウォータージェット推進装置が占有するスペースを広くとれないため、上記のようにスラスト軸受を有する軸受箱を付設した吸込ケーシングで構成している。このような構造は特許文献1に開示されているように周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−122191号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のウォータージェット推進装置において、吸込ケーシングの構造材としてアルミニウム鋳物あるいはアルミニウム合金が多く使用されている。流路を形成している筒状の吸水部と船艇、トランサムに取り付ける板状の取付部は、金型・砂型あるいは溶接等で一体の構造体として形成される。吸水部傾斜面に軸受箱を付設すると、軸受箱との連結部材(フランジ)に大きな荷重がかかり、連結部材あるいは連結部材と吸水部傾斜面との接合部に応力集中が発生し、変形・破損する恐れがある。また、筒状の吸水部と板状の取付部との接合部も応力集中が発生し、同様に変形・破損する恐れがある。
本発明は、ウォータージェット推進装置で発生するスラストを受ける吸込ケーシングについて、応力集中がかかる箇所に補強リブを施し、吸込ケーシングの流路あるいは船艇への取付板に応力を分散させて、部材の疲労強度を高めることができるウォータージェット推進装置の吸込ケーシングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
受箱を連結する軸受フランジを傾斜流路に固着し、軸受フランジ両端側方から垂直リブを底部取付板まで延設すると、軸受フランジの船首側への曲げモーメントに対して強度部材である吸込流路で荷重を受けることができる。
【0007】
また、底部取付板と傾斜流路との船首側接合部に船首側リブを立設し、傾斜流路の両端中央部近傍まで連続的に延設すると、傾斜流路と底部取付板との接合強度が増大し、船底のねじり、曲げに対して強度を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るウォータージェット推進装置の吸込ケーシングは、軸系のスラストを軸受箱で軸支し、それにより発生する応力を強度部材へ分散させるので、応力集中を低減できる。また、船艇のねじりや曲げによる吸込ケーシングへの応力を受けるための断面係数をリブによって増加させることができるので、主要部の肉厚を薄くでき、軽量化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願発明に係るウォータージェット推進装置が艤装された船艇の側面図である。
図2】同じく、ウォータージェット推進装置の縦断面図である。
図3】同じく、ウォータージェット推進装置の吸込ケーシングをトランサム側からみた斜傾図である。
図4】同じく、ウォータージェット推進装置の吸込ケーシングを駆動部からみた斜傾図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1はこの発明に係るウォータージェット推進装置が艤装された船艇の側面図であって、ウォータージェット推進装置Wは、船艇Sの後部船底S1に開口する吸込口S2から水を吸い込む吸水部W1と、吸い込んだ水を加圧して船尾のトランサムS3後方へ吐出するポンプ部W2と、吐出された噴流の噴射方向を制御して船艇Sを操舵する操舵部W3とで構成される。ウォータージェット推進装置Wは機関室S4に設けられた駆動部Eと接続している。
【0012】
船艇Sの船底S1とトランサムS3はウォータージェット推進装置Wと接続しており、ウォータージェット推進装置Wから吐出される噴流の反力を受けて船艇Sを前方に推進させる。
【0013】
図2はウォータージェット推進装置の縦断面図であって、船底S1の吸込口S2に連通する吸込ケーシング1の吸水口2から吸引した水をポンプ部W2の羽根車3で加圧し、吐出ケーシング4の噴射ノズル5から船尾後方に加圧水を噴射して船艇Sを推進させるようにしている。噴射水を航走方向変換用のデフレクタ6で回動させることにより左右に噴射する。デフレクタ6は操作杆7により船内から回動させる。また、噴射水を後進用のリバーサ8で方向転換させて船艇方向に噴射させることにより船艇Sを後進させる。前進時にはリバーサ8を上方に回動してあり、噴流がリバーサ8と接触しないようにしている。
【0014】
機関室S4の駆動部Eはウォータージェット推進装置Wの吸込ケーシング1を貫通して延設される主軸9に連結しており、主軸9を介してポンプ部W2で主軸9に嵌合している羽根車3を回転させている。羽根車3から発生する船首方向のスラストは、吸込ケーシング1に付設している軸受箱10で軸支され、吸込ケーシング1を通して船艇Sに伝達される。
【0015】
ウォータージェット推進装置Wは加圧した水を船尾後方の空中へ噴射させる。そのため、吸込ケーシング1の吸水部W1は船底S1に開口する吸込口S2からトランサムS3に向かって斜め上方に傾斜流路11を形成している。トランサムS3近傍では船底S1に略水平な円筒状となり、内部には回転自在な羽根車3を内挿している。羽根車3に嵌合した主軸9は船首側に延設しており、吸込ケーシング1の傾斜流路11に付設している軸受箱10に軸支されている。軸受箱10は吸込ケーシング1の傾斜流路11上方に形成した軸受フランジ12に連結している。
【0016】
図3はウォータージェット推進装置の吸込ケーシングをトランサム側からみた斜傾図であり、図4はウォータージェット推進装置の吸込ケーシングを船首側からみた斜傾図である。
ウォータージェット推進装置Wは、船艇Sの変形による影響で、船底S1やトランサムS3からねじりや曲げ応力を受ける。また同時に、ウォータージェット推進装置Wが発生させるスラストを軸受箱10で受ける。
【0017】
ウォータージェット推進装置Wの羽根車3で発生する船首方向のスラストは、吸込ケーシング1に付設している軸受箱10で軸支され、軸受フランジ12を介して吸込ケーシング1から船艇Sに伝達される。吸込ケーシング1は船底S1とトランサムS3に固定されており、吸込ケーシング1の傾斜流路11を船首側に引張する力が作用することになる。吸込ケーシング1を軸受フランジ12や船底S1、トランサムS3へ取り付ける接合部には応力集中が発生し、最悪の場合、破損して機関室S4に水が浸水することになる。そのため、船首方向のスラストを船艇に伝達する吸込ケーシング1には各所に補強リブ14,15,16,17を設けている。
【0018】
吸込ケーシング1の傾斜流路11上方には軸受箱10と連結する軸受フランジ12が船底S1から略垂直に突設している。
軸受フランジ12の両端中央部からトランサムS3方向に向かって水平リブ14が設けられており、両端の幅を拡大させながら吸込ケーシング1に固着している。水平リブ14は船底S1に対して略平行である。実施例では傾斜流路11の略中心線上まで延設している。
【0019】
羽根車3で発生する船首方向のスラストは軸受箱10で支えるため、軸受箱10と連結している軸受フランジ12は船首方向に引張される。軸受フランジ12と吸込ケーシング1の接合部に応力集中が発生するが、軸受フランジ12両端から延設した水平リブ14により、吸込ケーシング1の略水平な円筒状のポンプ部W2に応力を分散させるので、軸受フランジ12接合部の破損を防止できる。
【0020】
吸込ケーシング1の傾斜流路11に突設している軸受フランジ12の両端側方には垂直リブ15を設けている。軸受フランジ12中央部近傍から側方に幅を拡大させながら吸込ケーシング1の傾斜流路11を介して底部取付板18まで固着している。
【0021】
軸受フランジ12に発生する船首方向のスラストは、軸受フランジ12両端から垂下した垂直リブ15により、吸込ケーシング1の傾斜流路11に応力を分散させるので、軸受フランジ12接合部の破損を防止できる。
【0022】
吸込ケーシング1の船首側には、底部取付板18と傾斜流路と11の接合部に船首側リブ16を設けている。船首側リブ16は底部取付板18と傾斜流路11の船首側接合部から傾斜流路11両端にかけて連続的に設けられており、傾斜流路11の中央部近傍まで延設している。船首側リブ16は一定の高さで立設している。傾斜流路11の中央部近傍では傾斜流路11と船首側リブ16との応力集中を避けるため、船首側リブ16の高さを有しない。
本実施例の吸込ケーシング1は、傾斜流路11下方にスクリーン取付用の凸部19を有しており、凸部19は傾斜流路11の両端まで幅を有しているため、凸部19の両端側壁を船首側リブ16と連続的に連設させている。
【0023】
船艇のねじりや曲げによる吸込ケーシング1への応力は、底部取付板18に設けている船首側リブ16により、吸込ケーシング1の傾斜流路11両端に応力を分散させるので、底部取付板18と傾斜流路11の接合部の破損を防止できる。
【0024】
吸込ケーシング1の船尾側には、底部取付板18と傾斜流路11とを連設させる船尾側リブ17を設けている。傾斜流路11の船尾側下方から底部取付板18まで垂下させて、傾斜流路11と底部取付板18とを連設し、略三角形の船尾側リブ17を形成している。
本実施例では、傾斜流路11両端下部からそれぞれ船尾側リブ17を垂下させ、底部取付板18上に一定の高さで立設させながらトランサム取付板20まで連設させている。トランサム取付板20にも一定の高さで立設させて、上方の円筒状のポンプ部W2の両端に接続している。傾斜流路11両端下部から底部取付板18、トランサム取付板20、ポンプ部W2両端は船尾側リブ17により連続的に連結している。
【0025】
船艇のねじりや曲げによる吸込ケーシング1への応力は、底部取付板18およびトランサム取付板20に設けている船尾側リブ17により、吸込ケーシング1の傾斜流路11両端に応力を分散させるので、底部取付板18、トランサム取付板20と傾斜流路11の接合部の破損を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のウォータージェット推進装置の吸込ケーシングは、応力集中がかかる箇所に補強リブを施して、吸込ケーシングの流路あるいは船艇への取付板等の強度部材に応力を分散させることができる。したがって、部材の疲労強度が高まり、薄肉軽量化、長寿命化が可能となり、吸込ケーシングに付設する軸受箱でスラストを受ける小型あるいは中型のウォータージェット推進装置に有用なものとなる。
【符号の説明】
【0027】
1 吸込ケーシング
3 羽根車
9 主軸
10 軸受箱
11 傾斜流路
12 軸受フランジ
14 水平リブ
15 垂直リブ
16 船首側リブ
17 船尾側リブ
18 底部取付板
20 トランサム取付板
S3 トランサム
W ウォータージェット推進装置
図1
図2
図3
図4