特許第5725021号(P5725021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725021
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】環状化合物の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/72 20060101AFI20150507BHJP
   C07C 39/17 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   C07C37/72
   C07C39/17
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-517127(P2012-517127)
(86)(22)【出願日】2011年5月20日
(86)【国際出願番号】JP2011002825
(87)【国際公開番号】WO2011148603
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2010-120444(P2010-120444)
(32)【優先日】2010年5月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠
(72)【発明者】
【氏名】林 宏美
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】 太田 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−269901(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/153154(WO,A1)
【文献】 特開2009−173623(JP,A)
【文献】 特開2007−314482(JP,A)
【文献】 特開2010−285376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 33/72
C07C 39/17
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式()で示される環状化合物及びトルエン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン及び酢酸エチルから選ばれる有機溶媒を含む溶液と、蓚酸、酒石酸及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種の多価カルボン酸の水溶液とを接触させる工程を含むことを特徴とする環状化合物の精製方法。
【化1】
(式(4)中、Rは独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、複素環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、及び炭素数1〜20のアルキルシリル基からなる群から選択される官能基、又は炭素数2〜20の置換メチル基、炭素数3〜20の1−置換エチル基、炭素数4〜20の1−置換−n−プロピル基、炭素数3〜20の1−分岐アルキル基、炭素数1〜20のシリル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20の1−置換アルコキシアルキル基、炭素数2〜20の環状エーテル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基からなる群から選択される酸解離性官能基であり、Xは水素原子又はハロゲン原子であり、mは1〜4の整数であり、mは0〜3の整数であり、m+m=4であり、pは0〜5の整数である。)
【請求項2】
前記環状化合物の抽出処理を行う工程をさらに含む請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
前記抽出処理後、前記環状化合物及び前記有機溶媒を含む溶液相と、水相とに分離する工程をさらに含む請求項2に記載の精製方法。
【請求項4】
前記環状化合物及び有機溶媒を含む溶液を回収する工程をさらに含む請求項3に記載の精製方法。
【請求項5】
前記酸性の水溶液が、蓚酸の水溶液である請求項1〜4のいずれかに記載の精製方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、シクロヘキサノンである請求項1〜5のいずれかに記載の精製方法。
【請求項7】
前記式(4)で示される化合物が下記式(5)で示される各化合物からなる群から選ばれる請求項1〜6のいずれかに記載の精製方法。
【化2】
(式(5)中、X、R、pは前記と同様であり、mは2であり、mは1である。
【請求項8】
前記式(5)で示される化合物が下記式(6−1)及び(6−2)で示される各化合物からなる群から選ばれる請求項に記載の精製方法。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状化合物の精製方法、特に、金属含有量の低減された環状化合物の工業的に有利な精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低分子量レジスト材料の候補として、少なくても1つのフェノール性水酸基に酸解離性官能基を導入した構造を有する低分子量環状ポリフェノール化合物を主成分として用いるポジ型のレジスト組成物(特許文献1〜9、非特許文献1及び2を参照。)、あるいは低分子量環状ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のレジスト組成物(特許文献9及び非特許文献3を参照。)が提案されている。
【0003】
これらの低分子量環状ポリフェノール化合物は、低分子量であるため、分子サイズが小さく、解像性が高く、ラフネスが小さいレジストパターンを与えることが期待される。また低分子量環状ポリフェノール化合物は、その骨格に剛直な環状構造を有することにより、低分子量ながらも高耐熱性を与える。
【0004】
また、レジスト組成物には、感度、解像度、ラフネスといった基本性能のほか、特に金属含有量が歩留まり向上のために重要な性能項目となっている。すなわち、金属含有量の多いレジスト組成物を用いた場合には、描かれたパターン中に金属が残存し、半導体の電気特性を低下させることから、金属含有量を低減することが求められている。
【0005】
金属含有量の低減された環状化合物の製造方法として、環状化合物と有機溶媒を含む混合物を、イオン交換樹脂と接触させる方法、フィルターで濾過する方法等が考えられる。しかし、イオン交換樹脂を用いる方法では、種々の金属イオンを含有する場合は、イオン交換樹脂の選択に難があり、金属の種類によっては除去が困難であるという問題、非イオン性の金属の除去が困難であるという問題、さらには、ランニングコストが大きいという問題が有る。一方、フィルターで濾過する方法では、イオン性金属の除去が困難であるという問題がある。したがって、金属含有量の低減された環状化合物の工業的に有利な精製方法の確立が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−153863号公報
【特許文献2】特開平11−322656号公報
【特許文献3】特開2002−328473号公報
【特許文献4】特開2003−321423号公報
【特許文献5】特開2005−170902号公報
【特許文献6】特開2006−276459号公報
【特許文献7】特開2006−276742号公報
【特許文献8】特開2007−8875号公報
【特許文献9】特開2009−173623号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Seung Wook Chang et al.,““Materials for Future Lithography””,Proc. SPIE,Vol.5753,p.1
【非特許文献2】Daniel Bratton et al.,““Molecular Glass Resists for Next Generation Lithography””,Proc. SPIE,Vol.6153,61531D−1
【非特許文献3】T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、金属含有量の低減された環状化合物の、工業的に有利な精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、環状化合物と有機溶媒を含む溶液を、水又は酸性の水溶液と接触させることにより、種々の金属の含有量が著しく低下することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明はつぎの通りである。
1. 下記式(1)で示される環状化合物及び有機溶媒を含む溶液と、水又は酸性の水溶液とを接触させる工程を含むことを特徴とする金属含有量の低減された環状化合物の精製方法。
【化1】
(式(1)中、Lは、独立して、単結合、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−N(R)−C(=O)−、−N(R)−C(=O)O−、−S−、−SO−、−SO−及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり、Rは独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、複素環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、炭素数2〜20の置換メチル基、炭素数3〜20の1−置換エチル基、炭素数4〜20の1−置換−n−プロピル基、炭素数3〜20の1−分岐アルキル基、炭素数1〜20のシリル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20の1−置換アルコキシアルキル基、炭素数2〜20の環状エーテル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基からなる群から選択される酸解離性官能基、又は水素原子であり、R’は独立して、炭素数2〜20のアルキル基、又は下記式
【化2】

で表わされる基であり、Rは独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、複素環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、及び炭素数1〜20のアルキルシリル基からなる群から選択される官能基、又は炭素数2〜20の置換メチル基、炭素数3〜20の1−置換エチル基、炭素数4〜20の1−置換−n−プロピル基、炭素数3〜20の1−分岐アルキル基、炭素数1〜20のシリル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20の1−置換アルコキシアルキル基、炭素数2〜20の環状エーテル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基からなる群から選択される酸解離性官能基であり、Rは水素又は炭素数1〜10のアルキル基であり、mは1〜4の整数であり、pは0〜5の整数である。)
2. 前記環状化合物の抽出処理を行う工程をさらに含む第1項に記載の精製方法。
3. 前記抽出処理後、前記環状化合物及び前記有機溶媒を含む溶液相と、水相とに分離する工程をさらに含む第2項に記載の精製方法。
4. 前記環状化合物及び有機溶媒を含む溶液を回収する工程をさらに含む第3項に記載の精製方法。
5. 前記酸性の水溶液が、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸の水溶液である第1項〜第4項のいずれかに記載の精製方法。
6. 前記酸性の水溶液が、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸の水溶液である第1項〜第4項のいずれかに記載の精製方法。
7. 前記酸性の水溶液が、蓚酸、酒石酸及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種の多価カルボン酸の水溶液である第1項〜第4項のいずれかに記載の精製方法。
8. 前記酸性の水溶液が、蓚酸の水溶液である第6項に記載の精製方法。
9. 前記有機溶媒が、トルエン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、又は酢酸エチルである第1項〜第8項のいずれかに記載の精製方法。
10. 前記有機溶媒が、シクロヘキサノンである第9項に記載の精製方法。
11. 前記式(1)で示される環状化合物が下記式(2)で示される各化合物からなる群から選ばれる第1項〜第10項のいずれかに記載の精製方法。
【化3】
(式(2)中、R、R、p、mは前記と同様である。Xは水素原子又はハロゲン原子であり、mは0〜3の整数であり、m+m=4である。)
12. 前記式(2)で示される化合物が下記式(3)で示される各化合物からなる群から選ばれる第11項に記載の精製方法。
【化4】
(式(3)中、R、R、X、pは前記と同様である。mは2であり、mは1である。)
13. 前記式(2)で示される化合物が下記式(4)で示される各化合物からなる群から選ばれる第11項に記載の精製方法。
【化5】
(式(4)中、R、X、m、m、pは前記と同様である。)
14. 前記式(4)で示される化合物が下記式(5)で示される各化合物からなる群から選ばれる第13項に記載の精製方法。
【化6】
(式(5)中、X、R、m、m、pは前記と同様である。)
15. 前記式(5)で示される化合物が下記式(6−1)及び(6−2)で示される各化合物からなる群から選ばれる第14項に記載の精製方法。
【化7】
16. 前記式(1)で示される環状化合物が下記式(7)で示される各化合物からなる群から選ばれる第1項〜第10項のいずれかに記載の精製方法。
【化8】
(式(7)中、R、R、p、mは前記と同様である。但し、その少なくともひとつのRは酸解離性官能基である。Xは水素原子又はハロゲン原子であり、mは0〜3の整数であり、m+m=4である。)
17. 前記式(7)で示される化合物が下記式(8)で示される各化合物からなる群から選ばれる第16項に記載の精製方法。
【化9】
(式(8)中、R、R、X、pは前記と同様である。但し、その少なくともひとつのRは酸解離性官能基である。mは2であり、mは1である。)
18. 前記式(8)で示される化合物が下記式(9−1)及び(9−2)で示される各化合物からなる群から選ばれる第17項に記載の精製方法。
【化10】
(式(9−1)及び(9−2)中、Rは前記と同様である。但し、その少なくともひとつのRは酸解離性官能基である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明により、種々の金属の含有量が、著しく低減された環状化合物の精製方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、環状化合物を有機溶媒に溶解させ、その溶液を水又は酸性水溶液と接触させることにより、該溶液に含まれていた金属分を水相に移行させ、金属含有量の低減された環状化合物を精製する方法である。
【0012】
本発明で使用される環状化合物は下記式(1)で示される環状化合物である。
【0013】
【化11】
(式(1)中、Lは、独立して、単結合、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜24のアリーレン基、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−N(R)−C(=O)−、−N(R)−C(=O)O−、−S−、−SO−、−SO−及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり、Rは独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、複素環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキルシリル基、これらの誘導体からなる群から選択される官能基、炭素数2〜20の置換メチル基、炭素数3〜20の1−置換エチル基、炭素数4〜20の1−置換−n−プロピル基、炭素数3〜20の1−分岐アルキル基、炭素数1〜20のシリル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20の1−置換アルコキシアルキル基、炭素数2〜20の環状エーテル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基からなる群から選択される酸解離性官能基、又は水素原子であり、R’は独立して、炭素数2〜20のアルキル基、又は下記式
【化12】

で表わされる基であり、Rは独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、複素環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、及び炭素数1〜20のアルキルシリル基からなる群から選択される官能基、又は炭素数2〜20の置換メチル基、炭素数3〜20の1−置換エチル基、炭素数4〜20の1−置換−n−プロピル基、炭素数3〜20の1−分岐アルキル基、炭素数1〜20のシリル基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20の1−置換アルコキシアルキル基、炭素数2〜20の環状エーテル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基からなる群から選択される酸解離性官能基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、mは1〜4の整数であり、pは0〜5の整数である。)
【0014】
上記式(1)で表わされる環状化合物としては、好ましくは以下の化合物があげられる。
【0015】
【化13】
【0016】
【化14】
(式(2)及び(3)中、R、R、p、mは前記と同様である。Xは水素原子又はハロゲン原子であり、mは0〜3の整数であり、m+m=4であり、mは2であり、mは1である。)
【0017】
環状化合物が、該化合物中に、上記酸解離性官能基が無い場合、環状化合物はネガ型レジスト組成物の主成分として有用である環状化合物(A)となり、該化合物中に、上記酸解離性官能基を1つ以上有する場合、環状化合物はポジ型レジスト組成物の主成分として有用である環状化合物(B)となる。
【0018】
本発明において、環状化合物(A)としては、以下のものが好ましい。
下記式(4)及び(5)で示される環状化合物(A)が好ましい。
【0019】
【化15】
【0020】
【化16】
(式(4)及び(5)中、R、X、m、m、m、m、pは前記と同様である。)
【0021】
本発明において、上記環状化合物(A)としては、下記式(6−1)又は(6−2)で示される化合物であることがより好ましい。
【0022】
【化17】
【0023】
本発明において、環状化合物(B)としては、以下のものが好ましい。
下記式(7)及び(8)で示される環状化合物(B)が好ましい。
【0024】
【化18】
【0025】
【化19】
(式(7)及び(8)中、R、R、p、mは前記と同様である。但し、その少なくともひとつのRは酸解離性官能基である。Xは水素原子又はハロゲン原子であり、mは0〜3の整数であり、m+m=4であり、mは2であり、mは1である。)
【0026】
本発明において、上記環状化合物(B)としては、下記式(9−1)又は(9−2)で示される化合物であることがより好ましい。
【0027】
【化20】
(式(9−1)及び(9−2)中、Rは前記と同様である。但し、その少なくともひとつのRは酸解離性官能基である。)
【0028】
前記酸解離性官能基は、KrFやArF用の化学増幅型レジスト組成物に用いられるヒドロキシスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂等において提案されているもののなかから適宜選択して用いることができる。例えば、置換メチル基、1−置換エチル基、1−置換−n−プロピル基、1−分岐アルキル基、シリル基、アシル基、1−置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、及びアルコキシカルボニル基などが好ましく挙げられる。前記酸解離性官能基は、架橋性官能基を有さないことが好ましい。
【0029】
置換メチル基としては、通常、炭素数2〜20の置換メチル基であり、炭素数4〜18の置換メチル基が好ましく、炭素数6〜16の置換メチル基がさらに好ましい。例えば、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、2−メチルプロポキシメチル基、エチルチオメチル基、メトキシエトキシメチル基、フェニルオキシメチル基、1−シクロペンチルオキシメチル基、1−シクロヘキシルオキシメチル基、ベンジルチオメチル基、フェナシル基、4−ブロモフェナシル基、4−メトキシフェナシル基、ピペロニル基、及び下記式(11)で示される置換基等を挙げることができる。
【0030】
【化21】
(式(11)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基等が挙げられる。)
【0031】
1−置換エチル基としては、通常、炭素数3〜20の1−置換エチル基であり、炭素数5〜18の1−置換エチル基が好ましく、炭素数7〜16の置換エチル基がさらに好ましい。例えば、1−メトキシエチル基、1−メチルチオエチル基、1,1−ジメトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−エチルチオエチル基、1,1−ジエトキシエチル基、n−プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、t−ブトキシエチル基、2−メチルプロポキシエチル基、1−フェノキシエチル基、1−フェニルチオエチル基、1,1−ジフェノキシエチル基、1−シクロペンチルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−フェニルエチル基、1,1−ジフェニルエチル基、及び下記式(12)で示される置換基等を挙げることができる。
【0032】
【化22】
(式(12)中、Rは、前記と同様である。)
【0033】
1−置換−n−プロピル基としては、通常、炭素数4〜20の1−置換−n−プロピル基であり、炭素数6〜18の1−置換−n−プロピル基が好ましく、炭素数8〜16の1−置換−n−プロピル基がさらに好ましい。例えば、1−メトキシ−n−プロピル基及び1−エトキシ−n−プロピル基等を挙げることができる。
【0034】
1−分岐アルキル基としては、通常、炭素数3〜20の1−分岐アルキル基であり、炭素数5〜18の1−分岐アルキル基が好ましく、炭素数7〜16の分岐アルキル基がさらに好ましい。例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−メチルアダマンチル基、及び2−エチルアダマンチル基等を挙げることができる。
【0035】
シリル基としては、通常、炭素数1〜20のシリル基であり、炭素数3〜18のシリル基が好ましく、炭素数5〜16のシリル基がさらに好ましい。例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジエチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基及びトリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0036】
アシル基としては、通常、炭素数2〜20のアシル基であり、炭素数4〜18のアシル基が好ましく、炭素数6〜16のアシル基がさらに好ましい。例えば、アセチル基、フェノキシアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、アダマンチルカルボニル基、ベンゾイル基及びナフトイル基等を挙げることができる。
【0037】
1−置換アルコキシメチル基としては、通常、炭素数2〜20の1−置換アルコキシメチル基であり、炭素数4〜18の1−置換アルコキシメチル基が好ましく、炭素数6〜16の1−置換アルコキシメチル基がさらに好ましい。例えば、1−シクロペンチルメトキシメチル基、1−シクロペンチルエトキシメチル基、1−シクロヘキシルメトキシメチル基、1−シクロヘキシルエトキシメチル基、1−シクロオクチルメトキシメチル基及び1−アダマンチルメトキシメチル基等を挙げることができる。
【0038】
環状エーテル基としては、通常、炭素数2〜20の環状エーテル基であり、炭素数4〜18の環状エーテル基が好ましく、炭素数6〜16の環状エーテル基がさらに好ましい。例えば、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基及び4−メトキシテトラヒドロチオピラニル基等を挙げることができる。
【0039】
アルコキシカルボニル基としては、通常、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であり、炭素数4〜18のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数6〜16のアルコキシカルボニル基がさらに好ましい。例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基又は下記式(13)のn=0で示される酸解離性官能基等を挙げることができる。
【0040】
アルコキシカルボニルアルキル基としては、通常、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアルキル基であり、炭素数4〜18のアルコキシカルボニルアルキル基が好ましく、炭素数6〜16のアルコキシカルボニルアルキル基がさらに好ましい。例えば、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n−プロポキシカルボニルメチル基、イソプロポキシカルボニルメチル基、n−ブトキシカルボニルメチル基又は下記式(13)のn=1〜4で示される酸解離性官能基等を挙げることができる。
【0041】
【化23】

(式(13)中、Rは、前記と同様であり、nは0〜4の整数である。)
【0042】
これらの酸解離性官能基のうち、置換メチル基、1−置換エチル基、1−置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルアルキル基が好ましく、置換メチル基、1−置換エチル基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基が高感度であるためより好ましく、さらに炭素数3〜12のシクロアルカン、ラクトン及び6〜12の芳香族環から選ばれる構造を有する酸解離性官能基がより好ましい。
【0043】
炭素数3〜12のシクロアルカンとしては、単環でも多環でも良いが、多環であることがより好ましい。具体例には、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等が挙げられ、より具体的には、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロデカン等のポリシクロアルカンが挙げられる。これらの中でも、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロデカンが好ましく、特にアダマンタン、トリシクロデカンが好ましい。炭素数3〜12のシクロアルカンは置換基を有しても良い。ラクトンとしては、ブチロラクトン又はラクトン基を有する炭素数3〜12のシクロアルカン基が挙げられる。6〜12の芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、特にナフタレン環が好ましい。
【0044】
特に、下記式(10)で示される各基からなる群から選ばれる酸解離性官能基が、解像性が高い点で好ましい。
【0045】
【化24】
(式(10)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基であり、Rは、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、カルボキシル基であり、nは0〜4の整数、nは1〜5の整数、nは0〜4の整数である。)
【0046】
また、酸解離性官能基Rは、本発明の効果が損なわれない限りで、下記式(14)で示される繰り返し単位と、下記式(15)又はR(Rは上記と同様)で示される末端基からなる置換基であっても良い。
【0047】
【化25】


【0048】
【化26】
【0049】
式(14)及び/又は(15)において、Rは前記と同様ある。Lは前記と同様であり、好ましくは単結合、メチレン基、エチレン基又はカルボニル基である。複数個のQは、同一でも異なっていても良い。nは0〜4の整数、nは1〜3の整数、xは0〜3の整数であり、1≦n+n≦5を満たす。複数個のn、n、xは、同一でも異なっていても良い。
【0050】
は、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキロイルオキシ基、アリーロイルオキシ基、シアノ基、及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基である。
【0051】
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ;アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基が挙げられ;シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられ;アリール基としてはフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフキル基等が挙げられ;アラルキル基としてはベンジル基、ヒドロキシベンジル基、ジヒドロキシベンジル基等が挙げられ;アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素原子数1〜4のアルコキシ基が挙げられ;アリールオキシ基としてはフェノキシ基等が挙げられ;アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素原子数2〜4のアルケニル基が挙げられ;アシル基としてはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基等の炭素原子数1〜6の脂肪族アシル基、及びベンゾイル基、トルオイル基等の芳香族アシル基が挙げられ;アルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基が挙げられ;アルキロイルオキシ基としてはアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基等が挙げられ;アリーロイルオキシ基としてはベンゾイルオキシ基等が挙げられる。複数個のRは、同一でも異なっていても良い。
【0052】
本発明において、酸解離性官能基とは、酸の存在下で開裂して、アルカリ可溶性基を生じる特性基をいう。アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、ヘキサフルオロイソプロパノール基などが挙げられ、フェノール性水酸基及びカルボキシル基が好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。前記酸解離性官能基は、更に高感度・高解像度なパターン形成を可能にするために、酸の存在下で連鎖的に開裂反応を起こす性質を有することが好ましい。
【0053】
これらの環状化合物は、単独でも良いが、2種以上混合することもできる。また、環状化合物は、各種界面活性剤、各種架橋剤、各種酸発生剤、各種安定剤等を含有したものであっても良い。
【0054】
本発明で使用される有機溶媒としては、水と任意に混和しない有機溶媒であれば特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。使用する有機溶媒の量は、使用する重合体に対して、通常1〜100重量倍程度使用される。
【0055】
使用される溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2‐ヘプタノン、2−ペンタノン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類、n‐ヘキサン、n‐ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等が好ましく、特にシクロヘキサノンが好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0056】
前記環状化合物及び有機溶媒を含む溶液との接触に用いる液体は、水又は酸性水溶液である。本発明で使用される酸性の水溶液としては、一般に知られる有機、無機系化合物を水に溶解させた水溶液の中から適宜選択される。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸を水に溶解させた水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を水に溶解させた水溶液が挙げられる。これら酸性の水溶液は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら酸性の水溶液の中でも、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸の水溶液が好ましく、更に、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液が好ましく、特に蓚酸の水溶液が好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸は金属イオンに配位し、キレート効果が生じるために、より金属を除去できると考えられる。また、ここで用いる水は、本発明の目的に沿って、金属含有量の少ないもの、例えばイオン交換水等が好ましい。
【0057】
本発明で使用する酸性の水溶液のpHは特に制限されないが、水溶液の酸性度が大きくなりすぎると環状化合物に悪影響を及ぼすことがあり好ましくない。通常、pH範囲は0〜5程度であり、より好ましくはpH0〜3程度である。
【0058】
本発明で使用する酸性の水溶液の使用量は特に制限されないが、その量が少なすぎると、金属除去のための抽出回数多くする必要があり、逆に水溶液の量があまりに多いと全体の液量が多くなり操作上の問題を生ずることがある。水溶液の使用量は、通常、有機溶媒に溶解した環状化合物溶液100質量部に対して10〜200質量部であり、好ましくは20〜100質量部である。
【0059】
本発明では、上記環状化合物と上記有機溶媒を含む溶液を、水又は上記酸性の水溶液と接触させることにより抽出処理を行う。抽出処理を行う際の温度は通常、20〜90℃であり、好ましくは30〜80℃の範囲である。抽出操作は、例えば、攪拌等によりよく混合させることによって環状化合物と有機溶媒を含む溶液に含まれていた金属分が水相に移行する。
【0060】
その後、静置により環状化合物と有機溶媒を含む溶液相と水相とに分離する。その後、例えばデカンテーション等により、環状化合物と有機溶媒を含む溶液を回収する。静置する時間は特に制限されないが、静置する時間が短すぎると環状化合物と有機溶媒を含む溶液相と水相との分離が悪くなり好ましくない。通常、静置する時間は10分以上であり、好ましくは30分以上である。
また、抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。
【0061】
酸性の水溶液を用いてこのような抽出処理を行った場合には、該抽出処理を行った後、該水溶液から抽出・回収した環状化合物及び有機溶媒を含む溶液は、さらに水を用いた抽出処理を行うことが好ましい。ここで用いる水は、本発明の目的に沿って、金属含有量の少ないもの、例えばイオン交換水等が好ましい。この抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。また、抽出処理における両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に制限されないが、先の酸性の水溶液との接触処理の場合と同様で構わない。
【0062】
こうして得られた環状化合物及び有機溶媒を含む溶液に混入する水分は、減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要に応じて有機溶媒を加え、環状化合物の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0063】
得られた環状化合物と有機溶媒を含む溶液から、環状化合物のみ得る方法は、例えば、減圧除去や再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定はされない。以下の合成例において、化合物の構造はH−NMR測定で確認した。
【0065】
<合成例> 環状化合物(CR−1)の合成
十分乾燥し、窒素置換した滴下漏斗、ジム・ロート冷却管、温度計、攪拌翼を設置した四つ口フラスコ(1000mL)に、窒素気流下で、関東化学社製レゾルシノール(22g、0.2mol)と、4−シクロヘキシルベンズアルデヒド(46.0g,0.2mol)と、脱水エタノール(200mL)を投入し、エタノール溶液を調製した。この溶液を攪拌しながらマントルヒーターで85℃まで加熱した。次いで濃塩酸(35%)75mLを、滴下漏斗により30分かけて滴下した後、引き続き85℃で3時間攪拌した。反応終了後、放冷し、室温に到達させた後、氷浴で冷却した。1時間静置後、淡黄色の目的粗結晶が生成し、これを濾別した。粗結晶をメタノール500mlで2回洗浄し、濾別、真空乾燥させることにより、目的生成物(以下、CR−1と示す)(50g、収率91%)を得た。
この化合物の構造は、LC−MSで分析した結果、目的物の分子量1121を示した。また重ジメチルスルホキシド溶媒中でのH−NMRのケミカルシフト値(δppm,TMS基準)は1.2〜1.4(m,20H)、1.7〜1.9(m,20H)、2.2〜2.4(m,4H)5.5、5.6(d,4H)、6.0〜6.8(m,24H)、8.4〜8.5(m,8H)であった。
【0066】
【化27】
【0067】
<実施例> 金属含有量の低減された環状化合物の製造
(実施例1)
1000mL容量の四つ口フラスコ(底抜き型)に、CR−1をシクロヘキサノンに溶解させた溶液(1.7wt%)を650g仕込み、攪拌しながら75℃まで加熱した。次いで、蓚酸水溶液(pH 0.9)130gを加え、3分間攪拌後、1時間静置した。これにより油相と水相に分離したので、水相を除去した。得られた油相に、超純水130gを仕込み、3分間攪拌後、1時間静置し、水相を除去した。この操作を4回繰り返すことにより、環状化合物のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0068】
(実施例2)
実施例1における蓚酸水溶液(pH 0.9)130gを仕込む代わりに、クエン酸水溶液(pH 1.8)130gを仕込んだこと以外は同様に処理して環状化合物のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0069】
(実施例3)
実施例1における蓚酸水溶液(pH 0.9)130gを仕込む代わりに、酒石酸水溶液(pH 1.8)130gを仕込んだこと以外は同様に処理して環状化合物のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0070】
(実施例4)
実施例1における蓚酸水溶液(pH 0.9)130gを仕込む代わりに、酢酸水溶液(pH 2.8)130gを仕込んだこと以外は同様に処理して環状化合物のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0071】
(実施例5)
実施例1における蓚酸水溶液(pH 0.9)130gを仕込む代わりに、イオン交換水130gを仕込んだこと以外は同様に処理して環状化合物のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0072】
<比較例> イオン交換樹脂による金属含有量の低減された環状化合物の製造
(比較例1)
イオン交換樹脂(三菱化学ダイヤイオン:SMT100-ミックス樹脂)25gをシクロヘキサノンで膨潤後、テフロン(登録商標)カラムに充填し、1,3-ジオキソランを500mL通液することで溶媒置換した。次いでCR−1を1,3-ジオキソランに溶解させた溶液(1.7wt%)500gを通液することで環状化合物を得た。
【0073】
処理前のCR‐1のシクロヘキサノン溶液、実施例1〜5及び比較例1において得られた環状化合物について、各種金属含有量をICP−MSによって測定した。測定結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、金属含有量の低減された環状化合物を工業的に有利に精製することができる。