特許第5725066号(P5725066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725066
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】自動搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20150507BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   G05D1/02 P
   B65G1/00 501C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-58994(P2013-58994)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-186377(P2014-186377A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2014年10月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 伸
【審査官】 川東 孝至
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−63961(JP,A)
【文献】 特開2010−55183(JP,A)
【文献】 特開平10−210676(JP,A)
【文献】 特開2012−204259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温環境と冷凍環境との間で荷を搬送する作業を行うバッテリー駆動式の自動搬送台車を有する自動搬送システムであって、
前記自動搬送台車を複数有しており、
前記自動搬送台車の前記冷凍環境での滞在長さに基づいて、次の前記作業を、複数の前記自動搬送台車のいずれか一つに割り付ける制御装置を有する、ことを特徴とする自動搬送システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記滞在長さとして、前記自動搬送台車の前記作業の連続回数をカウントする、ことを特徴とする請求項1に記載の自動搬送システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記連続回数が既定回数以上となったとき、次の前記作業を、当該自動搬送台車とは別の前記自動搬送台車に割り付ける、ことを特徴とする請求項2に記載の自動搬送システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記連続回数が既定回数以上となった前記自動搬送台車を前記常温環境で待機させる、ことを特徴とする請求項3に記載の自動搬送システム。
【請求項5】
前記制御装置は、次の前記作業において搬送対象となる荷に最も近くにいる前記自動搬送台車に対して、次の前記作業を優先的に割り付ける、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動搬送システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記滞在長さとして、前記自動搬送台車の前記冷凍環境での連続作業時間をカウントする、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動搬送システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記連続作業時間が既定時間以上となったとき、当該自動搬送台車を前記冷凍環境から退避させる、ことを特徴とする請求項6に記載の自動搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動搬送台車(AGV(Automated Guided Vehicle))を用いて荷の搬送を行う自動搬送システムが知られている。この自動搬送台車は、例えば走行駆動兼操向車輪、キャスター車輪、制御機器等を備えた車体フレームの前後に、床面に敷設した誘導線の位置を検出する追従用センサを設けており、追従用センサの検出結果に基づいて車体が誘導線に沿って追従走行しながら自動走行するように、走行駆動兼操向車輪に連動された駆動モータを制御する構成とされている。また、車体フレームには、通常、電源として充電式バッテリーが搭載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−330131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷凍設備を有する自動倉庫等においては、常温環境と冷凍環境との間で荷の受け渡しをする必要がある。このような場合、従来では、常温環境、冷凍環境のそれぞれに、通常電源で駆動するコンベヤやクレーン等の常設設備を個別に設置して荷の受け渡しを行っていた。しかし、クレーンを用いる高層の自動倉庫とは異なり、天井高さの低い低倉庫の場合は、このような常設設備を各環境に個別に設置すると、荷の保管スペースを占領してしまい、倉庫内スペースの有効利用を図れないという問題がある。
【0005】
そこで、本願発明者は、常温環境と冷凍環境との間で上記自動搬送台車を往復させて荷の搬出入、保管を行うことを考えた。しかしながら、自動搬送台車に搭載されるバッテリーは、零下において放電能力が低下するため、電源不足に陥り易いという問題がある。このような場合には、冷凍環境で人手により自動搬送台車の復旧作業を行わなければならなくなるため、上記自動搬送システムを安易に運用することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、常温環境と冷凍環境との間を往復する自動搬送台車が低温になって動作不良となることを防止することができる自動搬送システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、常温環境と冷凍環境との間で荷を搬送する作業を行うバッテリー駆動式の自動搬送台車を有する自動搬送システムであって、前記自動搬送台車を複数有しており、前記自動搬送台車の前記冷凍環境での滞在長さに基づいて、次の前記作業を、複数の前記自動搬送台車のいずれか一つに割り付ける制御装置を有する、という構成を採用する。
【0008】
また、本発明においては、前記制御装置は、前記滞在長さとして、前記自動搬送台車の前記作業の連続回数をカウントする、という構成を採用する。
【0009】
また、本発明においては、前記制御装置は、前記連続回数が既定回数以上となったとき、次の前記作業を、当該自動搬送台車とは別の前記自動搬送台車に割り付ける、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明においては、前記制御装置は、前記連続回数が既定回数以上となった前記自動搬送台車を前記常温環境で待機させる、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、前記制御装置は、次の前記作業において搬送対象となる荷に最も近くにいる前記自動搬送台車に対して、次の前記作業を優先的に割り付ける、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明においては、前記制御装置は、前記滞在長さとして、前記自動搬送台車の前記冷凍環境での連続作業時間をカウントする、という構成を採用する。
【0013】
また、本発明においては、前記制御装置は、前記連続作業時間が既定時間以上となったとき、当該自動搬送台車を前記冷凍環境から退避させる、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、自動搬送台車の冷凍環境での滞在長さに基づいて次の作業を割り付けることで、例えば冷凍環境での滞在長さが長い自動搬送台車には次の作業を割り付けないようにし、別の自動搬送台車で次の作業を行わせることができる。このように、本発明では、バッテリー温度が零下にならないように、自動搬送台車の冷凍環境での滞在長さに基づいて、複数の自動搬送台車を交互に運用することで、冷凍環境での自動搬送台車の動作不良を回避することができる。
したがって、本発明によれば、常温環境と冷凍環境との間を往復する自動搬送台車が低温になって動作不良となることを防止することができる自動搬送システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態における自動搬送システムを適用した冷凍冷蔵設備の平面図である。
図2】本発明の第1実施形態における自動搬送システムの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態における作業指示に基づくAGVの運行パターンを示す図である。
図4】本発明の第1実施形態におけるAGV運行制御盤の制御フローを示す図である。
図5】本発明の第2実施形態における自動搬送システムを適用した冷凍冷蔵設備の平面図である。
図6】本発明の第2実施形態におけるAGV運行制御盤の制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における自動搬送システム1を適用した冷凍冷蔵設備2の平面図である。図2は、本発明の第1実施形態における自動搬送システム1の構成を示すブロック図である。
本実施形態の自動搬送システム1は、図1に示すように、AGV一号機(自動搬送台車)10Aと、AGV二号機(自動搬送台車)10Bとを有している。図1中、符号Lは、AGV一号機10A及びAGV二号機10Bの走行経路である。
【0018】
本実施形態の自動搬送システム1は、冷凍冷蔵設備2に適用されている。冷凍冷蔵設備2は、二種類の製品(A製品、B製品)を扱う設備である。この冷凍冷蔵設備2は、製造作業室(常温環境)3と、前室4と、冷凍室(冷凍環境)5と、冷蔵室6と、凍結室7とを有する。本実施形態では、隣り合う室内同士が扉を隔てて連設されており、室内に入室する場合には扉を開けるようになっている。なお、冷凍冷蔵設備2の保管対象物としては、例えば、冷凍食品、冷凍鮮魚、バイオ製品(生物の精子・卵子)、血液製剤等が挙げられる。
【0019】
製造作業室3は、室温が20℃程度に保たれた常温環境である。製造作業室3は、前室4に連設している。製造作業室3には、待機ステーション3aと、梱包ステーション3bと、入庫ステーション3cとが設けられている。
待機ステーション3aは、AGV一号機10A及びAGV二号機10Bのホームポジションである。この待機ステーション3aには、電源装置3a1が設けられている。電源装置3a1は、AGV充電用電極と、AGVヒーティング用電源電極(車体及び駆動バッテリー11(後述)の加温用)とを有している。
【0020】
梱包ステーション3bは、作業台3b1の近傍に設けられている。作業台3b1では、人手による製品の梱包や、製品の仕分け分別等の所定の作業が行われる。
入庫ステーション3cは、台車スペース3c1の近傍に設けられている。台車スペース3c1には、製造作業室3に入庫されてきた製品(A製品、B製品)を載せる台車(図1において符号8で示す)が配置されるスペースである。本実施形態の自動搬送システム1は、製品を載せた台車8を、AGV一号機10AまたはAGV二号機10Bで搬送するようになっている。
【0021】
前室4は、室温が5℃程度に保たれた環境である。前室4は、製造作業室3、冷凍室5、冷蔵室6、凍結室7に連設している。前室4には、出荷ステーション4aが設けられている。出荷ステーション4aは、梱包された製品を載せた台車8が配置されるスペースである。出荷ステーション4aに配置された製品は、出荷ステーション4aの上方に位置する扉を開けることで、冷凍冷蔵設備2から出荷される。
【0022】
冷凍室5は、室温が−30℃程度に保たれた冷凍環境である。冷凍室5は、前室4に連設している。冷凍室5は、−25℃以下でA製品を保存するためのものであり、A製品を載せた複数の台車8を収容可能なスペースを有する。
冷蔵室6は、室温が4℃程度に保たれた環境である。冷蔵室6は、前室4に連設している。冷蔵室6は、0℃以上でB製品を保存するためのものであり、B製品を載せた複数の台車8を収容可能なスペースを有する。
【0023】
凍結室7は、入庫されてきたA製品を急速凍結させる部屋であり、室温を−55℃程度まで低下できるようになっている。凍結室7は、前室4に連設している。凍結室7は、B製品を載せた台車8を一台分収容可能なスペースを有する。本実施形態の凍結室7は、5つ設けられている。なお、A製品を急速凍結させるとき、AGV一号機10A及びAGV二号機10Bは、凍結室7から退出する。
【0024】
自動搬送システム1は、図2に示すように、AGV一号機10Aと、AGV二号機10Bと、AGV運行制御盤(制御装置)20と、ホスト装置30とを有する。
AGV一号機10A及びAGV二号機10Bは、周知のように、駆動兼操向車輪、キャスター車輪、制御機器等を備えた車体フレームの前後に、床面に敷設した誘導線の位置を検出する追従用センサを設けており、追従用センサの検出結果に基づいて車体が誘導線に沿って追従走行しながら自動走行するように、駆動兼操向車輪に連動された駆動モータを制御する構成とされている。
【0025】
AGV一号機10A及びAGV二号機10Bはそれぞれ、駆動バッテリー11と、ヒーティング装置12とを有する。駆動バッテリー11は、車体フレーム内部に搭載され、駆動モータ等に電力を供給するものである。ヒーティング装置12は、車体フレーム内部に張り巡らされた自己温度制御型電熱線を有し、温度変化に応じて電熱線自体の抵抗値が変化することにより発熱量を自動制御するものである。ヒーティングは、冷凍室5での大幅な温度低下を防ぐと共に、常温環境帰還時の結露発生を防ぐ目的がある。
【0026】
駆動バッテリー11の電極は、待機ステーション3aの電源装置3a1のAGV充電用電極と接触して通電するようになっている。また、ヒーティング装置12の電源電極は、待機ステーション3aの電源装置3a1のAGVヒーティング用電源電極と接触して通電するようになっている。本実施形態では、駆動バッテリー11及びヒーティング装置12の電源電極が車体フレームに対して出し入れ自在となっており、AGV一号機10A及びAGV二号機10Bが待機ステーション3aに帰還したときに、これら電極が電源装置3a1の電極と接触することで、充電とヒーティングとが同時に行われるようになっている。
【0027】
AGV運行制御盤20は、無線通信を行い、AGV一号機10A及びAGV二号機10Bの運行を制御するものである。AGV運行制御盤20は、ホスト装置30との間で、作業指令と作業結果の信号をやり取りする構成となっている。AGV運行制御盤20は、作業指令をメモリに所定数(例えば10個)ストックし、ストック順に作業指令をAGV一号機10A及びAGV二号機10Bに割り付けるようになっている。
【0028】
本実施形態のAGV運行制御盤20は、AGV一号機10A,AGV二号機10Bそれぞれの冷凍室5での滞在長さに基づいて、次の作業を、AGV一号機10AあるいはAGV二号機10Bに割り付ける構成となっている(詳しくは後述)。また、本実施形態のAGV運行制御盤20は、滞在長さとして、AGV一号機10A,AGV二号機10Bそれぞれの冷凍室5での作業の連続回数をカウントするようになっている。
【0029】
ホスト装置30は、内部メモリ、CPU(Central Processing Unit)等と、それらの間でデータ授受を行う各種入出力インターフェイス等から構成されており、設備管理者からの指令を受け付けるようになっている。ホスト装置30は、AGV運行制御盤20に対し、次のような作業指示をする。
図3は、本発明の第1実施形態における作業指示に基づくAGVの運行パターンを示す図である。
【0030】
図3に示すように、運行パターンは、A製品と、B製品とで異なっている。本実施形態のA製品の運行パターンは、1〜6の6通りある。また、本実施形態のB製品の運行パターンは7〜9の3通りある。
運行パターン1は、A製品の凍結作業であり、AGVが走行経路Lに沿って、待機ステーション3aから入庫ステーション3cに移動し、A製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を凍結室7に運んだ後、待機ステーション3aに戻る作業である。
【0031】
運行パターン2は、凍結半製品(凍結したA製品)入庫作業であり、AGVが走行経路Lに沿って、待機ステーション3aから凍結室7に移動し、凍結したA製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を冷凍室5に運んだ後、待機ステーション3aに戻る作業である。
運行パターン3は、製品化出庫作業であり、AGVが走行経路Lに沿って、待機ステーション3aから冷凍室5に移動し、冷凍されていたA製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を梱包ステーション3bに運んだ後、待機ステーション3aに戻る作業である。
【0032】
運行パターン4は、製品化済入庫作業であり、AGVが走行経路Lに沿って、待機ステーション3aから梱包ステーション3bに移動し、梱包されたA製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を冷凍室5に運んだ後、待機ステーション3aに戻る作業である。
運行パターン5は、出荷作業であり、AGVが走行経路Lに沿って、待機ステーション3aから冷凍室5に移動し、梱包されたA製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を出荷ステーション4aに運んだ後、待機ステーション3aに戻る作業である。
【0033】
運行パターン6は、A製品の製品化済入庫作業と製品化出庫作業の複合作業であり、AGVが走行経路Lに沿って、待機ステーション3aから梱包ステーション3bに移動し、梱包されたA製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を冷凍室5に運んだ後、その中で出庫する別のA製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を出荷ステーション4aに運んだ後、待機ステーション3aに戻る作業である。
【0034】
運行パターン7は、半製品(B製品)入庫作業であり、AGVが走行経路Lに沿って、待機ステーション3aから入庫ステーション3cに移動し、B製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を冷蔵室6に運んだ後、待機ステーション3aに戻る作業である。
運行パターン8は、製品化出庫作業であり、AGVが走行経路Lに沿って、待機ステーション3aから冷蔵室6に移動し、冷蔵されていたB製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を梱包ステーション3bに運んだ後、待機ステーション3aに戻る作業である。
【0035】
運行パターン9は、出荷作業であり、AGVが走行経路Lに沿って、待機ステーション3aから梱包ステーション3bに移動し、梱包されたB製品を載せた台車8を受け取り、その台車8を出荷ステーション4aに運んだ後、待機ステーション3aに戻る作業である。
これらの運行パターンの中で、AGVが常温環境と冷凍環境との間を移動し、製品を搬送する作業を行うものは、運行パターン2〜6である。なお、冷凍環境での1回の作業時間は、駆動バッテリー11の温度低下によるAGVの動作不良が起こらない長さに設定されており、例えば各作業平均して5分程度である。
【0036】
続いて、AGV運行制御盤20による冷凍冷蔵設備2におけるAGV一号機10A及びAGV二号機10Bの運行制御について、図4を参照して説明する。
図4は、本発明の第1実施形態におけるAGV運行制御盤20の制御フローを示す図である。
【0037】
先ず、AGV運行制御盤20は、ホスト装置30から作業指令を受信する(ステップS1)。作業指令は、図3に示す9パターンの作業である。
次に、AGV運行制御盤20は、受信した順番で作業指示をメモリにスタックし、スタック順に作業を、AGV一号機10AあるいはAGV二号機10Bに割り付ける準備をする(ステップS2)。
【0038】
次に、AGV運行制御盤20は、アイドル状態のAGVの中で、割り付ける作業の搬送対象物に最も近くにいるAGVを優先的に選択する(ステップS3)。ここで、アイドル状態とは、AGVが作業を行っておらず作業の受け付けが可能な状態のことをいい、待機状態のみならず走行状態も含む。AGV運行制御盤20は、AGV一号機10A及びAGV二号機10Bと無線通信を行ってそれらの位置を把握し、指示する作業の搬送対象物の受け取り位置に一番近いAGV号機を探す。
【0039】
次に、AGV運行制御盤20は、割り付ける作業が冷凍環境であるか否かを判定する(ステップS4)。具体的に、AGV運行制御盤20は、割り付ける作業の運行パターンが図3に示す運行パターン2〜6であるか否かを判定する。ステップS4で「Yes」の場合、ステップS5に移行する。一方、ステップS4で「No」の場合、すなわちAGVが冷凍室5に入室しない作業である場合(運行パターン1、7〜9の場合)には、選択したそのAGV号機にその作業を割り付ける(ステップS7)。
【0040】
また、ステップS7において、AGV運行制御盤20は、メモリに記憶していたそのAGVの冷凍室内入室連続回数をリセットする。すなわち、運行パターン1、7〜9の場合、AGVは冷凍室5に入室せず、また、モータの走行熱等により駆動バッテリー11の温度が上昇し、放電能力の低下が殆ど問題とならなくなるためである。そのAGVに作業を割り付けたら、AGV運行制御盤20は、スタック内に作業指示があるか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9で「Yes」の場合には、ステップS3に戻り、その次の作業を割り付けるAGV号機を選択する。一方、ステップS9で「No」の場合には、終了となる。
【0041】
ステップS4からステップS5に移行した場合、AGV運行制御盤20は、選択したAGVの冷凍室内入室連続回数が既定回数以上か否かを判定する。ここでいう既定回数とは、AGVが動作不良を起こしてしまう程に駆動バッテリー11の温度が低下してしまう虞がある回数であり、本実施形態では例えば3回に設定されている。ステップS5で「Yes」の場合、ステップS6に移行する。一方、ステップS5で「No」の場合、すなわち選択したAGVの冷凍室内入室連続回数が3回未満である場合には、選択したそのAGV号機にその作業を割り付ける(ステップS8)。
【0042】
また、ステップS8において、AGV運行制御盤20は、メモリに記憶していたそのAGVの冷凍室内入室連続回数をカウントアップする。そのAGVに作業を割り付けたら、AGV運行制御盤20は、スタック内に作業指示があるか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9で「Yes」の場合には、ステップS3に戻り、その次の作業を割り付けるAGV号機を選択する。一方、ステップS9で「No」の場合には、終了となる。
【0043】
ステップS5からステップS6に移行した場合、AGV運行制御盤20は、選択したAGVへの作業割り付けを除外する。そして、ステップS3に戻り、その作業を割り付ける別のAGV号機を選択する。すなわち、本実施形態では、AGVの冷凍環境での滞在長さに基づいて次の作業を割り付けることで、例えば、冷凍環境での滞在長さが長く動作不良の虞のあるAGV一号機10Aには次の作業を割り付けないようにし、別のAGV二号機10Bで次の作業を行わせるようにしている。
【0044】
また、ステップS6において、AGV運行制御盤20は、既定回数を超えたAGVに対しホームポジションリターン指示を行い、常温環境の待機ステーション3aで待機させ、充電及びヒーティングを行わせる。また、ステップS6において、AGV運行制御盤20は、メモリに記憶していたそのAGVの冷凍室内入室連続回数をリセットする。
以上のように、本実施形態では、駆動バッテリー11の温度が零下にならないように、AGVの冷凍環境での滞在長さとして冷凍室5での作業の連続回数を管理し、AGV一号機10A及びAGV二号機10Bを交互に運用することで、冷凍環境でのAGVの動作不良を回避することができる。
【0045】
このように、上述の本実施形態によれば、常温環境と冷凍環境との間で荷を搬送する作業を行うバッテリー駆動式のAGV一号機10A及びAGV二号機10Bを有する自動搬送システム1であって、AGVの冷凍環境での滞在長さに基づいて、次の作業を、AGV一号機10A及びAGV二号機10Bのいずれかに割り付けるAGV運行制御盤20を有する、という構成を採用することによって、常温環境と冷凍環境との間を往復するAGVが低温になって動作不良となることを防止することができる。また、AGVによる自動搬送システム1を採用することで、天井高さの低い冷凍室5内で床上に固定機器がないため、製品ストックスペースを確保することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略化若しくは省略する。
【0047】
図5は、本発明の第2実施形態における自動搬送システム1を適用した冷凍冷蔵設備2の平面図である。図6は、本発明の第2実施形態におけるAGV運行制御盤20の制御フローを示す図である。
第2実施形態では、図5に示すように、冷凍室5に非常用台車スペース5aが設けられている点で、上記実施形態と異なる。また、第2実施形態では、図6に示すように、AGV運行制御盤20が、滞在長さとして、AGVの冷凍環境での連続作業時間をカウントする点で、上記実施形態と異なる。
【0048】
非常用台車スペース5aは、図5に示すように、台車8を複数台配置可能な予備スペースである。第2実施形態では、後述するように、AGVの連続作業時間が既定時間以上となったときに、AGVを冷凍室5から退室させる制御を行う。このとき、AGVに台車8が搭載されたままだと、台車8に乗っているA製品もまた冷凍室5から退室してしまい、A製品が解凍されて製品不良となってしまう。このため、第2実施形態では、冷凍室5に予備スペースを設け、退室前に、AGVに搭載している台車8を下すことができるようになっている。
【0049】
第2実施形態のAGV運行制御盤20は、AGVの冷凍環境での滞在長さとして、上記冷凍室5での連続作業回数だけでなく、冷凍室5での連続作業時間をカウントする構成となっている。例えば、図3に示す運行パターン6では、製品化済入庫作業と製品化出庫作業との複合サイクルとなっており、冷凍室5における一回の作業時間が長くなる。このため、第2実施形態のAGV運行制御盤20は、より安全にAGVを運行するべく、AGVの冷凍室5での連続作業時間をカウントする構成となっている。
【0050】
具体的には、図6に示すように、AGV運行制御盤20は、AGVの冷凍室5の入室を検出し、そのAGVの連続作業時間のカウントアップを行う(ステップS10)。AGVの冷凍室5の入室は、冷凍室5の扉の開閉やAGVの現在位置により検出することができる。
次に、AGV運行制御盤20は、AGVの冷凍室内連続作業時間が既定時間以上か否かを判定する(ステップS11)。ここでいう既定時間とは、AGVが動作不良を起こしてしまう程に駆動バッテリー11の温度が低下してしまう虞がある連続作業時間であり、本実施形態では例えば15分に設定されている。
【0051】
ステップS11で「No」の場合、すなわちAGVの冷凍室内連続作業時間が15分未満である場合には、ステップS12に移行する。ステップS12において、AGV運行制御盤20は、冷凍室5内での作業が完了したか否かを判定する(ステップS12)。作業が完了していない場合は、ステップS10に戻り、AGVの連続作業時間をカウントアップし、作業が完了した場合は、ステップS13に移行する。ステップS13において、AGV運行制御盤20は、冷凍室5内のAGVに対しホームポジションリターン指示を行い、常温環境の待機ステーション3aで待機させ、充電及びヒーティングを行わせる。
【0052】
一方、ステップS11で「Yes」の場合、すなわちAGVの冷凍室内連続作業時間が15分以上である場合には、ステップS13に移行する。ステップS13において、AGV運行制御盤20は、冷凍室5内のAGVに対しホームポジションリターン指示を行い、現在の作業を中断し、台車8を搭載している場合にはその台車8を非常用台車スペース5aに下させたうえで、そのAGVを冷凍室5内から退避させる。
このように、上述した第2実施形態によれば、AGVの冷凍環境での滞在長さとして、上記冷凍室5での連続作業回数だけでなく、冷凍室5での連続作業時間をカウントすることによって、常温環境と冷凍環境との間を往復するAGVが低温になって動作不良となることをより確実に防止することができる。
【0053】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、2台のAGVを運用する自動搬送システムの形態について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、AGVを3台以上運用する構成であってもよい。
【0055】
また、例えば、上記実施形態では、比較的小規模な冷凍冷蔵設備に自動搬送システムを適用したが、大規模の冷凍設備を有する自動倉庫に適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…自動搬送システム、3…製造作業室(常温環境)、5…冷凍室(冷凍環境)、10A…AGV一号機(自動搬送台車)、10B…AGV二号機(自動搬送台車)、20…AGV運行制御盤(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6